PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<魔女集会・前夜祭>楽しく正しく、さあ進もう!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「ほっほっほ、魔女集会か」
 ピーコックは自らが手にするには可愛らしい、ポップな招待状を手に笑みを浮かべた。夜(ナハト)をまとめる長は、1通ずつニコニコしながら書いたのだろうか。皆へ届けと、魔法でもかけながら。
 本日2度目のおやつをつまみ、ピーコックは手紙の先へ視線を向けた。魔女集会の会場付近は長の魔法でダンジョンのようになっている。この老体1人では進めないかもしれない。
「まずは行ってみなくてはな」
 できるのか、できぬのか。まずはそこが問題だ。できぬのならば素直に助力を請えば良い。苦行のように1人で挑む必要はないのだから。
 ピーコックは荷をまとめ、魔女集会の会場へと進路を変える。元より旅をしているのだ、その先が多少変わったところで何も問題ないだろう。
 彼の通った後には道しるべのように、彼の歌が余韻を残す。その行く先々で人を笑顔にして進む彼は霧深き渓谷へ辿り着いた。
「ふむ」
 うっすらと感じ取れるのはかの魔女による魔力。微量なそれは知る者でなければ判別できないだろうが、判別さえできればこの先は魔法によって作られた空間だと分かるだろう。
 試しに、1歩。何も起きない。もう1歩。もう1歩。もう──。
「おや? 戻ってきてしまったか」
 これはこれは、と辺りを見渡したピーコックは楽しそうに目を細める。成程、この先は惑わし迷わせ入口へ戻す魔法か。
(歌が聞こえていたようじゃが、あれか)
 奥からか細く聞こえてくる歌。あの声が魔力を持ち、この魔法を発動させているようだ。ピーコックの演奏でもいくらか緩和することはできるだろうが。
「足りんな。それに折角じゃ、大人数で楽しく通る方が良かろうて」
 歌って奏でて、進むに支障がなければ踊っても魅せても良いだろう。

 【誄歌の魔女】ピーコック。彷徨う魂を鎮め、天へ導く魔女はかくしてローレットへと訪れた。



「『幻惑の渓谷』ですか」
「そうじゃよ、ひよこのおちびさん」
 ピーコックとブラウ(p3n000090)は揃って仲良くお菓子を食べていた。というのも、依頼人がおやつの気分であったから。
 これ美味しいですね、そうじゃろうそうじゃろうほっほっほと和やかに語り合う姿はともすれば祖父と孫である。
「ピーコック……?」
「おお、ヨタカ」
 既知の姿に目を瞬かせるヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)にピーコックが手招きすれば、傍らにいた武器商人(p3p001107)も共に席へやってくる。
「どうして……ここに……?」
「なに、儂も依頼に来ただけじゃよ。ヨタカ、手伝ってくれんか」
 楽し気に目を細めたピーコックは、先ほどブラウへ聞かせたようにヨタカと武器商人へ『幻惑の渓谷』について話して聞かせた。
「ああ、魔女集会。【断頭の魔女】を始めとして魔女たちが準備しているね」
 頷く武器商人。夜の長とも既知の間柄である。
「儂も向かわねばならんのじゃが、そのためにはあの歌を退けないといかんのじゃ。大きな声で、楽しく、惑いの歌を吹き飛ばすほどの歌でな」
「お2人が受けられそうでしたら、お願いして良いですか? ピーコックさんも知っている方に受けてもらったほうが安心かと思いますし」
 ブラウはヨタカと武器商人を見て返答を求めるように首を傾げる。もちろん強制する権利も受ける義務も発生しているわけではないが。
「ああ。……受けよう」
 頷くヨタカ。かの小鳥が行くならばと武器商人も首肯する。ピーコックは嬉しそうに笑うと「では」と2人へ告げた。
「あともう少し……そうじゃの、儂らを合わせて9人ほどで出発じゃ。深くまで行けば何があるかも知れんからの、用意は周到に──もちろん、楽しむ心とスマイルを忘れずに、じゃぞ」

GMコメント

●成功条件
 ピーコックを魔女集会の会場まで送り届ける

●情報精度
 このシナリオにおける情報精度はAです。不測の事態は起こりません。

●詳細
・幻惑の渓谷
 夜(ナハト)の長『ワルプルギス』が張り巡らせた人避けダンジョンです。
 最奥の方から歌が聞こえ、此れが人を惑わせる不気味な霧を発生させています。
 皆様はピーコックの奏でる楽器の音色に合わせ、歌を歌いその効力を打ち消しながら進む必要があります。これは大きな声であればあるほど、そして楽しそうにしていれば楽しそうにしているほど効力を発します。

・濃霧
 エネミーモンスター。出口に近づくと魔法の歌声も大きくなるため、入口へ戻そうとする思念が固まって出来上がります。
 対処しなければ入口へまとめて戻されるでしょう。また、これは歌い踊り楽しい雰囲気に弱体化します。楽しくやっつけよう!
霧の体:物理ダメージを0に変換しますが、BS判定は通常通り行われます。

●NPC
・ピーコック
 ヨタカさんの関係者。誄歌の魔女と呼ばれるおじいさんです。旅人(ウォーカー)であり、自身が作った楽器の音色と歌で彷徨える魂を天へ導きます。
 今回は皆様の護衛対象として同行します。

●ご挨拶
 リクエストありがとうございます。愁です。
 行きはよいよい、帰りはこわい──の逆バージョン。行く事さえできれば帰りは容易です。往路を楽しく進みましょう!
 それでは、プレイングをお待ちしています。

  • <魔女集会・前夜祭>楽しく正しく、さあ進もう!完了
  • GM名
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月19日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌
Rêve=amas=Dētoiles(p3p006642)
星屑達の夢のゆめ
プラック・クラケーン(p3p006804)
昔日の青年
メーコ・メープル(p3p008206)
ふわふわめぇめぇ
雨紅(p3p008287)
愛星

リプレイ


 『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)はピーコックの姿に目を瞬かせ、次いで「失礼」と謝罪した。それは不躾に見てしまったことも理由であるが──『魔女』と言うから、まさか男性とは思わなかったという先入観を詫びたものでもある。
 そんな彼女の謝罪を正しく受け取ったピーコックは朗らかに笑った。
「お恥ずかしい限りです。僕はこの世界に来て浅いものですから……」
 まだまだ知らないことはいっぱいだ、と感じる幻は小さな歌声を聴いて顔を上げる。ピーコックではなく、仲間たちの声でもない。上がった視界には一面の霧が飛び込んできた。
「……俺たちを阻むための、警告」
 『小鳥の翼』ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)は霧をそう称する。ただでは通さない、魔女集会に向かうための試練──いや、試練と言うほどのものであるかはわからないが。傍らにいた『闇之雲』武器商人(p3p001107)はその奥から響いてくる歌声を耳にする。
「ウタが聴こえるね」
「そう。あの歌を無力化しなければいけないのじゃよ」
 ピーコック1人では力が足りず、何度試しても入り口に戻されてしまう。故に集められたのがこのメンバーだ。
「歌や踊りで無力化できるなんて、ちょっと楽しくて可愛らしい魔法ですめぇ?」
「ええ。お仕事ですし、危険が無いわけではない、のですが。少し、わくわくする気持ちもあります」
 ふふりと笑う『すやすやひつじの夢歩き』メーコ・メープル(p3p008206)に『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)が頷く。その赤い唇も言葉通りだと示すかのように弧を描いていた。
 とはいえ遊びだと気を抜くつもりは毛頭ない。これはあくまで依頼なのだから。
「ピーコックさんを歌って踊ってお届けすればいいのですね」
「えっと、歌が重要なんじゃなくて、歌う事が重要なんすよね?」
 依頼概要を確かめる『協調の白薔薇』ラクリマ・イース(p3p004247)に続き、『三賊を追いし者』プラック・クラケーン(p3p006804)はピーコックに確認を取る。『歌』が重要なのか、『歌う事』自体が重要なのか。これによってイレギュラーズたちの行動は変わる。
「その通りじゃよ。歌は何でも良い。歌い踊り、奥からの歌声より強い魔法にするのじゃ」
 皆の歌があの歌声を弱体化する。それは一種の魔法と言って良いのだろう。
「つーと、ギフトで歌を代用は駄目か」
 プラックは腕を組んで霧を睨みつける。歌うことが大切ならばセルフBGMには任せられない。自らの声帯を震わせる必要がありそうだ。

 ──だがしかし。

「俺の歌、雰囲気に合わなかったらどうすっかな……」
 何を歌うかまだ決めてもいないが、もし他に歌う仲間と全く違うジャンルになってしまったら。やはりやめるべきだろう、何か違う気がしてしまうから。
「大丈夫じゃよ。要するに、歌が喧嘩してしまわないなら良いのじゃろう?」
 順繰りに回す──ローテーションにしようと言うピーコック。メインの歌い手を決めて、他の者はそれに合わせていけば良い。
 遠慮して歌わないなんて勿体ないからと笑うピーコックはぴょこんと眼前に現れた『星屑達の夢のゆめ』Rêve=amas=Dētoiles(p3p006642)に目を丸くした。
「ピーコックのお爺ちゃん、久しぶり!」
「ほ、」
「お爺ちゃんは知らないだろうけれど、ボクは会ったことあるんだよ。星の子だからね!」
 ピーコックは目を丸くしたまま空を見上げる。薄霧が空まで流れ、あいにくと見えないが──夜に天へ浮かぶ星は常に自分たちを見下ろしている。その子供だと言うのならば、やはり同様に見下ろしていてもおかしくはない。
「そうか、そうか。久しぶりじゃの」
 彼がそう返すとRêveは嬉しそうに笑う。そして視線を霧の方へ。
「飛んで跳ねて、楽しい行進にしちゃお! ね、ご主人様!」
「ああ……パレードの始まりだ」
 ヨタカは頷くと、ヴァイオリンを構えて前を見据えた。



 一流の奇術師は奇術のみに囚われない。数多の人を楽しませる術を持ってこそなのだ。
 ピーコックに色々な歌を習いながら進む幻は美しく優雅に舞ってみせる。舞台でお客様を楽しませ、楽しむような気持ちと共に。
 そこは重なるラクリマの声音は人を安心させてしまうような、癒しの響きだ。残念ながら踊りは不得意であるが、それでも小さく横に揺れるなどして雰囲気を楽しむ。
 そこにカランと、鐘ひとつ。
 羊飼いの鐘を鳴らすメーコは、チャランゴの音を耳をピクピクさせる。よく聴いて、音を合わせて。そこへ重なってくるのはヴァイオリンの音色──ヨタカだ。
 澄んだ音色が響き、彼の想いを具現化させた光る羽根が周囲に浮かぶ。
「紫月……歌は、好き……?」
「ウタは、そうだね。周りが上手いからね。もちろん、小鳥も」
 ヨタカを小鳥と称して愛でる武器商人は、音を真似るなら苦でもないだろうと考える。あまり歌ったことがないのだろうが、周囲の影響なのか苦手そうな様子はない。
 それを漏れ聞いたプラックは武器商人の歌声に興味を持ち──折よく、と言うべきか。
「そうだ、小鳥。歩きながらでいいから一緒に踊って」
「っ、ええ……? 紫月……俺も、踊るのか……?」
 困ったような、恥ずかしそうな視線が武器商人へ向けられる。ダメかい? なんて首を傾げられたた。ああ、ダメだなんて言えるわけがないじゃないか。
「そうすれば楽しくウタえる気がするのさ。小鳥もそう思わない?」
「ああ……ふふ、ならば踊ろう……俺の月……」
 ヴァイオリンの演奏をやめて、武器商人の手を取るヨタカ。歌いながら2人は歩きながらくるり、くるりと回ってみせたり、戯れるように近づいては離れてみせて。踊りといえば踊りという程度の軽いものだけれど。
「これはこれで良いものさね。ヒヒ!」
 笑う武器商人の前を煌めく星屑が舞う。Rêveの贈り物(ギフト)だ。
「ね、凄い? すごい?」
「おお、凄いとも。まるで夜空の中にいるようじゃ。これなら魔女集会にも迷わず間に合いそうじゃの」
 チャランゴを鳴らしながらピーコックが笑う。霧の中はほんの少し薄暗くて、そこにヨタカやRêveのギフトが重なるものだからまるで星に囲まれているようだ。
(真っ暗で不思議な、惑いの渓谷。でも恐いなんてすっかりなくなっちゃった)
 Rêveはぴょんと跳ねて踊る。これはマーチングだ。楽しい楽しい行進なのだ。迷いも惑いも吹き飛ばして、さあ進め。
 最初こそたどたどしく、小さな声だった雨紅もそろそろ慣れてきた頃合いか。軽やかに舞うようなステップを踏み、仲間たちの音に合わせていく。
(皆様の音、どれもこれも楽し気です)
 そんな音楽が雨紅をより楽しい気持ちにさせていく。『楽しい』が連鎖して、共鳴して、まるで広がっていくようだ。
 ──ああ、そういえば。
 雨紅は思う。歌うという事自体にあまり経験はなかったけれど。こうして多くの者と共に歌い、踊ることも初めてではないか。
「みなもに たゆたう ひとのかげ
 ゆらりゆらりと はっぱのよう
 それは こころをうつす かがみなのさ」
 雨紅の舞を楽しみながら、しかし自らも歌わねばと友人の歌や韻を参考にしたプラックは小さく唸る。何か違う気がする。歌としては皆ともより雰囲気に合っているかもしれないが、自身の歌と考えると何かが決定的に違うのだ。
「ピーコックさん、ポップできます?」
「ぽっぷとな?」
「あー、ハイテンポでラップ歌う様な感じの」
 無理だろうか、ならば自分のギフトでそれらしいBGMを流すか。
 どんな曲が良いか思案を巡らせようとしていたプラックへ、ピーコックは「やってみるかの」とチャランゴを持ち直す。
「皆も合わせられるじゃろうか?」
「ヒヒ、やってみようじゃないか。ねぇ、小鳥?」
「ああ……そうだな、紫月」
 手をぎゅっと握りあう武器商人とヨタカ。ラクリマは「楽しく歌いましょう!」と笑みを浮かべてみせる。
「メーコもいっぱい楽しく頑張りますめぇ!」
 からん、と羊飼いの鐘を鳴らしたメーコもまたにっこり笑う。雨紅や幻も頷いて、Rêveはとびきりキラキラと星屑を輝かせた。
 皆の踊りと音楽に合わせ、プラックはBGMも流す。踊りはフリースタイルで。リズムに乗れば気持ちもほら──ノってきた!
「wowowowoーー!
 熱くなれ、誰かを護る為に強くなれー!
 熱くなれ、あの背中を追い越すくらいにー!」
 プラックの声に、より一層雰囲気が変化していく。少し前までスローテンポだったそれは今やアップテンポに、皆の踊りも歌も雰囲気につられるがままあがっていく。
 雰囲気に合わない歌を歌わない、ではなくて──歌に皆の雰囲気を、合わせて。
「yo、敗北ばかり見ずに Stand up
 燃える魂 standard
 諦めなきゃ不可能は無いぜ 運命なんて変えて見せるぜ
 だって俺達 irregular
 いいや誰だって regular
 運命を覆すのは、誰にだって出来る事」

 ──そうだろ?

 そう歌い切ったプラックの眼前には、歌を止めんとする一層濃い霧が立ちはだかっていた。すぐさま武器商人の呼び声が濃霧を引き付ける。
「楽しい気分になってきたところを邪魔される、というのは……こうも悲しい気持ちになるのですね」
 呟く雨紅の口元は悲しいとひどく訴える。そう心から感じてしまう。そしてだからこそ──楽しむことをここでやめる訳にはいかない。感じている『楽しい』という気持ちはきっと、心を支える力となるはずだから。
(あなたに止められるような、軟なものではないのです)
 それを行動で示さんと舞い踊り、歌い続ける雨紅。その間を縫ってプラックはガントレットを突き出す。そこに感触はなくとも、想いを込めて!
 濃霧はまずお前からだと呼び声に導かれるまま、武器商人へと霧の体を向ける。負けじと援護するのはいつだって煌めく笑顔を浮かべる星の子Rêve。
「回復は任せてね!」
「ヒヒ、心強いね」
「こちらの守りは任せてください」
 ラクリマは決死の盾となってピーコックとRêveを守らんと背に隠し、これまでとは異なる歌──魔力の籠った歌を響かせる。紡がれた音は蒼き剣の形を取り、霧の頭上から降り注ぐ。祈りと同時に紡がれるのはヨタカの呪いだ。
 葬送歌(レクイエム)。それは冥く冷たい川底から響くような、慟哭にも似ている。そこへ。

 ──カラン。カラ、カラン。

 リズムに合わせて、先ほどよりも音を強くして。メーコの鐘が辺りに響く。本来ならば危険を知らせる鐘は、今ばかりは危険を呼び寄せる。
 メーコがくるりとターンするたび。その声を届かせるたび。歌や舞を続ける雨紅たちの力も相まって濃霧がみるみる弱っていく。
「さあ、あっという間ではありますが──」
「楽しいパレードのフィナーレだ……」
 幻の奇術が霧へ夢を見せる。いいや、それが本当に夢を見るのかということではなく──夢のような。引き付けられてしまうひと時を魅せる。
 旅一座の団長たるヨタカが一礼すれば、濃霧は消え去って。

 ゴールは、もうすぐそこにあった。



 ダンジョンの最奥まで到達した一同の眼前で霧が晴れた──いや、晴れたように見えた。
「ダンジョンを……」
「抜けたみたいだね。ヒヒッ」
 ヨタカと武器商人は後方を振り返る。そこにはまだ霧が満ちているものの、何か見えない膜でもあるかのようにイレギュラーズたちを追ってくることはなかった。
「ここまでくれば一安心、ということじゃな」
 朗らかに笑ったピーコックはイレギュラーズたちに礼を言う。これで魔女集会にも向かうことができる、と。
「お爺ちゃん、ボクね、初めて依頼に来て頑張ったんだ! 褒めて欲しいな!」
 ぴょこんと頭を出したRêveへ、勿論だと彼のシワシワな手が乗せられる。音楽を奏でる者の手だ。Rêveはこの手が──ヨタカや、ピーコックのような者の手が大好きだ。
(優しくて、軽やかで……)
 口元を緩めながらお願い事をもうひとつ。またチャランゴを聞かせて欲しい。沢山ピーコックの歌を聴いて、それに合わせて踊るのだ。
「ピーコック」
 1歩、ヨタカが踏み出す。向けられる瞳はただただ優しさに満ちていた。ほんの少しでもいい、話ができるかと問えばその瞳は細まる。
「何か聞きたそうじゃの」
「ああ……旅の、話を……聞かせてくれないか」
 彼は至る場所を旅する魔法使い。不思議な話には事欠かない人物でもある。それはきっと、いや必ず旅一座での演目にできる。旅一座も同じ演目ばかりでは客が離れていってしまうのは他と変わらない。常に新しい刺激を、常に客へ新鮮さを。
「それと……」
 そう濁してヨタカが視線を向けたのは武器商人。なんだい? と言うように近づいてきた武器商人の隣に立ち、ヨタカはピーコックへ視線を向けた。
「大事な……番が、できたんだ……」
「ほ。そうかそうか」
 ヨタカの、その表情に。ピーコックは嬉しそうな笑みを浮かべ、武器商人を見た。視線を受け止めた武器商人が「我(アタシ)の小鳥だよ」と彼の肩へ手を添える。
「本来、儂が言う事でもないじゃろうが……ヨタカを頼むよ、古の夜」
「勿論さ」
 ピーコックとヨタカはひとときの旅を共にした仲。決して家族のような繋がりはないけれど、それでも関わった以上少なからず情は湧く。
 どうか彼が幸せであれと──願わずにはいられないのだろう。いつ、いかなる時であっても笑顔を忘れぬように、と。
(ピーコック様は、歌で魂を送るのでしたか。そのお力あってのもの、ではあるのでしょうが……)
 雨紅は空を見上げ、赤の唇に笑みを浮かべる。天へどれだけの魂が、彼の歌によって導かれたのだろう。きっと雨紅には想像もつかないだけの魂が穏やかな気持ちで彼岸へ旅立った。生きていても、死んでしまっても笑顔になれるのは──良い、素敵なことなのだろう。
「ピーコック様、どうぞお元気で」
「お互いにじゃよ。また元気な姿を見せておくれ」
 にっかりと笑ったピーコックがイレギュラーズたちへ別れを告げる。その背中へ雨紅は視線を送った。

 またどこかで、その歌は聞けるだろうか。聞けると良い。
 そんな日を──楽しみに待とう。

成否

成功

MVP

メーコ・メープル(p3p008206)
ふわふわめぇめぇ

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 無事に会場まで送り届けられましたね。

 MVPは戦いながらも楽しむ心を表現した貴女へ。

 またのご縁をお待ちしています。ご発注ありがとうございました!

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