PandoraPartyProject

シナリオ詳細

各々の罪過
各々の罪過

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●裏切りという罪
 レガド・イルシオンが王都『メフ・メフィート』、その王都の路地裏で人間種の男が飛行種の少女に懇願するように頭を下げていました。
「仲間を止める為に力を貸してくれ! あんた情報屋なんだろ?」
 男の名はレナード、王都で果ての迷宮の踏破を目指している冒険家です。
「急に力をと言われても……何があったか説明をお願いなのです」
「す、済まない。実は……」
 飛行種の少女、ユリーカ・ユリカ(p3n00002)に宥めるように言われたレナードは語り始めました。

 曰く、レナードを含む件の仲間は冒険家として『クライウィッシュ』というパーティを組み、果ての迷宮に挑んでいたという。
 そんなある時幸か不幸か迷宮に挑み失敗して息絶えたと思われる冒険者達を見つけ、彼らの遺した大量の戦利品を遺品として持ち帰り王都にて身寄りの人物を探すという出来事があった。
 しかし身寄りは見つからない。そのまま時間が経ちある日仲間うちの1人がこう言ったのです。
「なぁ、これもう俺達がもらっていいんじゃないか? 迷宮で拾ったようなものだろ?」
 それを言った者が悪いわけではない。だがその言葉でレナード達のまとめ役のロウガという男が最悪の行為を思いついてしまいました。
「お前それいいな。ああそうだ、迷宮に落ちてんだから拾って何が悪い。ならそいつを増やせれば――」
 その行為とは即ち迷宮を往く冒険者の不慮の死を増やすということ。
 直接殺れば証拠も残るかもしれないだろう、しかし迷宮の罠を気付き難いよう細工することや獣等が徘徊する地帯に対人罠を設置するなどならば後で問い詰められたとしても言い訳が効くのです。
「ハハハッ! こいつぁいいな! 真面目に迷宮潜るのが馬鹿らしくならぁ。なぁそう思うだろ?」
 笑うロウガに説明され、最終的にレナードを除く残りのメンバーはその話に乗ってしまいました。

「普段からロウガは粗暴だったが幾らなんでも流石に冗談だと思った。だが後日アジトに俺が顔を出した時には、既に数度実行して同じ冒険者を罠に嵌めた成果物がアジトに溢れていた。奴らは今更分けてやんねぇからなって……俺がもう少し早く止めていれば!」
 事情を話し終えたレナードは過去の口惜しさを思い出したのか拳を強く握ります。
「内容は把握しました。でもボクに頼れば仲間の人は良くて怪我、最悪命を落とすかもしれない……そこは覚悟してくださいなのです」
 レナードの言葉にユリーカは本当にそれでいいのかと確認するように言葉にします。
「これ以上あいつらに罪を犯させるわけにはいかない。それと、協力できるようなら俺も手伝うから手伝わせてくれ」
「わかりました。手伝いは保留しておきますが、一先ずボクに任せてください。そうと決まればすぐに調べないとなのです!」
 こうしてレナードより情報を得たユリーカはロウガ達を調べに行動を始めました。


●罪過に与えるは報いか赦しか
「イレギュラーズの皆さん、お集まりありがとなのです!」
 とある酒場、ロウガ達の情報を集め終わったユリーカは集めたイレギュラーズ達へ感謝の意を伝えると早速本題に入りました。
「依頼内容は冒険者パーティ『クライウィッシュ』アジトの制圧とレナードさんを除くメンバーの拿捕、特にアジトそのものを燃やしたりして中の証拠品を始末されないようお願いなのです」
 そう言うとユリーカはアジトの見取り図を広げて内部の説明に移ります。
「アジトは元酒場の二階建て、一階は元酒場スペースで広いですが階段と二階は狭いので戦い方には注意が必要なのです。入り口は一階の正面と裏口が一つずつ、それと二階に普段は使っていない出入口があるみたいなのです」
 ユリーカはそう言うと先は実際に内部を知っているレナードが話した方がいいと考え目でレナードに先を促しました。
「出入口というよりは非常口だが……それにアレは降りる時にしか使えない。というのも二階出入口は普段はただのベランダだ。そこに梯子が設置してありそれを使えば降りることもできるってだけだ」
 それ以外の細かな部屋配置などもレナードは説明していき、最後にイレギュラーズ達へ頭を下げます。
「俺に手伝える事なら言ってくれ、出来る範囲で力になる。だから頼む、奴らを止めてくれ!」
「ボクからもお願いなのです。そしてできれば彼らをどうするかについても皆さんの考えを聞かせてください、その方がボク1人がどうするか決めるより公平になる……なのです!」
 その言葉に各々反応するイレギュラーズ達、それを見たレナードは再度頭を下げます。
「償えというなら俺の仲間の事だ。俺も共に償おう、だからこそまずは制圧……改めて宜しく頼む!」
 レナードの言葉に、果たしてイレギュラーズ達はどう応えるのか……こうして物語は動き出し始めました。

GMコメント

はじめまして! レーサン兄(れーさんあに)と申します。
皆さんの冒険のお供の1人になれれば幸いですがまずは今回、宜しくお願い致します。

下記にシナリオ補足を記載しておきます。行動の参考にしていただければ。

●アジト立地と建物内情報
 中心街から少し外れ位置にある大きめの元酒場。
 一階は広く10数名が暴れられる程度に広く入り口は正面と裏口に一つずつ。
 二階へ続く階段は一階裏口側にあり、裏口から入るとすぐ横。
 階段~二階廊下は2人並ぶと狭く感じる程度の幅。
 ロウガの部屋は二階の一番奥側の部屋、その手前に倉庫があり証拠品はそこに保管されている。
 二階廊下最奥に非常口出口あり。

●敵情報
・ロウガ
 獣種の青年、クライウィッシュのリーダー。
 個人での戦いを得意としており高い反射神経と近接戦闘の技術を併せ持つ。武器はナイフ。
 騒ぎに気づかない限りは自室に居る。

・クライウィッシュメンバー
 全員が人間種、ナイフ装備3名と弓装備2名と大剣装備1名。
 大剣装備の男がクライウィッシュのサブリーダーであり技巧派、実力もロウガに次ぐ二番手。
 正面入口と裏口には常に交代でロウガとサブリーダー以外の誰かが警戒で立っている(正面一名・裏口二名)。
 誰の邪魔も入らなければロウガとサブリーダーは襲撃に気づくと証拠品の始末に向かうかもしれません。


●レナード行動
 イレギュラーズからの指示が特にない場合は正面入口から一階制圧の手伝いを行います。
 武器は片手長剣、強さはサブリーダー>レナード>他クライウィッシュメンバー程度。

  • 各々の罪過完了
  • GM名YAMIDEITEI
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月08日 20時50分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

R.R.(p3p000021)
破滅を滅ぼす者
アラン・アークライト(p3p000365)
勇者の使命
トラオム(p3p000608)
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
お道化て咲いた薔薇人形
ミセリア・バラル(p3p001161)
乱れ撃ち
リリー・プリムローズ(p3p001773)
筋肉信仰者
Pandora Puppet Paradox(p3p002323)
兎人形
玉藻前 久右衛門 佳月(p3p002860)
双刀の朧月

リプレイ

●罪業の世界
 全くもって嫌気が差す程に――この世の中には悪徳が溢れている。
 キラキラと輝く素晴らしいものも沢山あるのに、それを汚して余りある泥が常に渦巻いている。
 性悪説の語るその通りに、人間は生まれながらにして悪性を抱いているものなのか、そこに答えはないけれど。
『冒険者』なる因果な商売を救世主と兼ねれば、そんなシーンに直面する事もやはり多くなるものだ。
「己の手を穢さず、策謀を以て他者を滅し略奪する。なるほど、臆病で安い破滅者だ」
 唾棄する調子で呟いた『滅びを滅ぼす者』R.R.(p3p000021)の声色には嘲りの色が混ざっていた。
「だが、破滅は破滅だ――――ならば、滅ぼさなくてはな」
『滅びを滅ぼす事』に執心するこの旅人は独特の行動原理を持っている。
 彼をはじめとするイレギュラーズ八人が今日受けた仕事は冒険者パーティ『クライウィッシュ』の制圧、そしてメンバーの捕縛である。
『クライウィッシュ』は元々迷宮探索を得意とする真っ当な冒険者パーティだった。しかしながら、ちょっとした切っ掛けから道を踏み外した不良集団である。彼等は迷宮探索を行う同業者をターゲットに『不慮の事故』を引き起こし、その遺品を漁るという倫理に劣る稼ぎ方を覚えてしまった悪党だった。
「一言で言えば頭にくるな」
 トラオム(p3p000608)の言葉は酷く簡潔で、同時に的確に彼の感情を表している。
「他者を踏みにじり、蹂躙して奪う、そんな連中を好きになれる筈もない」
「ああ。全くとんだ連中だ。下品なスカベンジャー共め」
 ハイエナにも品があろうものを――それすら解さない『クライウィッシュ』に『太陽の勇者様』アラン・アークライト(p3p000365)は辛辣だ。
 元から口が良い方ではないが、尚の事こんな連中には舌鋒鋭い。
「殺してやる、潰してやる……そんな所が『妥当』だが」
 トラオムがちらりと視線を投げた先に、苦笑を浮かべ――同時に落胆の色を隠せないレナードが居た。
「……俺がもう少し早く止めていれば」
 レナードは『クライウィッシュ』のメンバーの一人にして今回の事件の通報者、そして依頼人でもあった。
 リーダーのロウガの言に流されるまま悪事に手を染めた他のメンバーとは異なり、彼はあくまで善良だったという事だ。
 ……故に、と言うべきか。善良な彼はロウガが『本気』だとは思っていなかった、とも言える。
 彼の常識の中には他の冒険者を襲って金品を略奪する等という発想は無かったのだから、責めるも気の毒ではあるのだが――
「アンタの依頼は『止める』ことだ。アンタがそう言うなら、まだそいつらにはきっと『余地』があるんだろう」
「余り自分を責める必要は無いと思うわ」
 トラオムは息を吐き出し、『お道化て咲いた薔薇人形』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)が熱の篭もらない口調で言った。
 人形のような少女はその実本当に人形だ。感情が無い訳ではないが、何処か無機質めいた印象を抱かせるのはそのディティールによるものかも知れない。
「ま、処遇なんざ然るべき所に突きしゃ終ぇだろ。
 こちとら聖母様でも死神でもねぇんだ。今日の俺の飯のタネがこいつ等だったってだけでな――」
 粗雑な『乱れ撃ち』ミセリア・バラル(p3p001161)の言である。まさか『生け捕り』を要求したレナードに配慮してではあるまいが――この言葉は事態を簡単にし、結果的に少し彼を元気づけるものとなっていた。
 そう。これは仕事である。ローレットは公権力では無く、世直しをしに来た訳でも無い。
 レナードという依頼人に望まれて、『たまたま』ブン殴るに適切な相手を締め上げるばかりなのだ。
「ま――仕事やきに。生け捕りも問題ないえ。拙者の刀の錆にもならん」
「うむ、心根からして美しくない連中である。さぞや叩き甲斐もある事であろう!」
「生きて罪を償って欲しいにぇ! 可能な限り、ボクのギフトで生きて捕らえるに!」
 コロコロと口調の一定しない『双刀の朧月』玉藻前 久右衛門 佳月(p3p002860)。『筋肉信仰者』リリー・プリムローズ(p3p001773)が景気良く言い、『兎人形』Pandora Puppet Paradox(p3p002323)が続く。
「一緒に奴らを止めるにぃ、これ以上罪を犯す前に」
「宜しく頼む。俺も可能な限りで手伝う心算だ!」
 そう言ったPandoraにレナードは大きく一つ頷いた。
「時にレナードよ。見張り以外のメンバーは普段どうしている?」
「一階でたむろしているか、二階の部屋で寝ている事が多い。時間帯を考えれば一階にいるかもな」
「成る程」とリリーが頷く。
『クライウィッシュ』のメンバーであるレナードが居るのだ。
 彼等の溜まり場も戦力も、強襲する為に必要な情報は十分である。
 後は証拠を隠滅されたりしないように注意を払いながら――カチ込むのみ。
 そして、結論から言えば、イレギュラーズという連中は往々にしてそういう手段が決して苦手ではないのである。

●強襲
『クライウィッシュ』のアジトは中心街から外れた位置にある元酒場である。
 木造二階建てのこの建物は一階正面と裏口に出入り口を持ち、二階への階段は裏口から入ってすぐの位置にある。
 諸悪の根源にして今回一番制圧しなければならないであろうリーダー・ロウガの部屋は二階最奥に位置しており、その先には非常口があるという。
 パーティが確保しなければならない証拠品はそのロウガの部屋の近くにある倉庫に集められているとの事だった。
 制圧し、捕縛するには中々複雑な条件がある仕事である。
 これら情報をレナードとローレットから得たパーティは作戦を立ててこの仕事に当たる事となった。
 制圧すべき『クライウィッシュ』のメンバーは合計で七人。
 アジト正面入口に一人、裏口に二人。ロウガとサブリーダーを除く五人の中から合計三人が見張りに立っている。
 つまり、状況上一階での戦闘がメインとなり、二階は主に証拠品を確実に確保し、ロウガを追い詰める為のフェーズとなるという事だ。
 パーティはこの状況に対して戦力を二つに割る事を決めていた。
 一階正面口はレナードに任せた。一階裏口から見張りを倒し制圧を進めるのがR.R.、アラン、トラオム、ヴァイス、佳月。
 これには当然、階段に近い裏口を素早く制圧する狙いがある。
 一階組の起こす混乱に乗じて素早く二階へ進む手筈となっているのが残るリリー、Pandora、ミセリアである。この内、リリーとミセリアは主に証拠品の確保と正面動線の封鎖。ミセリアは自慢の跳躍力で騒ぎに乗じて二階に直接侵入し、非常口に用意された(そして今は上に巻き上げられている)梯子を破壊するという役割を持っていた。
「自分らが使えねぇから他も使えねぇって思い込みが油断なんだっての。
 ……しかし、便利なギフトなこって、うっらやましぃ」
 ミセリアに水を向けられた佳月が「拙者の得手やわ」とはんなり返した。
 佳月の作り出す分身体は全く戦闘能力を持たないが、見せ戦力としては十分機能する。
 何れも少しだけ佳月と違う姿で作り出された分身達は動く程度の木偶であるが、それを『クライウィッシュ』は見抜けまい。
 裏口非常口下に三体も残しておけば、敵は間違いなくそこが『封鎖されている』と判断するだろう。
「用意はいいか?」
 破滅を滅ぼす事それのみが己が存在意義(レゾンデートル)――どの瞬間にも決してぶれる事のないR.R.の言葉に面々は頷いた。
 そして彼等は己が配置につき――程無く制圧は始まった。
「テメェ、裏切るのか!?」
「裏切ったのは――お前達だろうが!」
 正面入口でレナードが先に仕掛けると裏口の方にまで大きな声が響き渡った。
 ざわめいた裏口の見張りが正面口に意識を向けかけたその時に――パーティの主力は一気に動き出したのである。
「悲鳴とかあげられるわけにはいかないのだけれど」
「!?」
「お兄さんたち、……そこ、退いていただけないかしら」
 人形の口元が微かに歪む。
「これとっても痛そうよね……心配だわ……」
 何処かのんびりとした調子で響くヴァイスの声。
 しかしアルケミストの白い指先が紡ぐ『逆再生』はその優しいタッチとは裏腹に激烈な痛みを見張りの男に与えていた。
 無様な悲鳴を上げた仲間に、もう一人の見張りが顔色を失っている。
 自分達の悪事は棚上げして「何をしやがる」と言葉だけで虚勢を張る彼は即座に得物のナイフを抜くが、イレギュラーズ達は取り合わない。
「不運だな。ま、因果応報と言うべきだろうが」
 敵が動くよりも早く積極的に前に出たアランが強かな一撃で敵を打った。
 レナードのオーダーが『捕縛』である以上、殺す心算までは無い一撃だがアランの痛打はお仕置きにしても十分な威力を持っていた。
「反省しろ、償いをしろってのは後で考えればいい。お前達にはまだ、夢があるんだろ?
 ま、極力加減はするが……俺は不器用だ、簡単に死んでくれるなよ?」
「俺の宿す魔導は破滅そのもの、アンタ達が如きの安い覚悟で耐えられるものか――さあ、破滅よ、破滅を知れ……!」
 まさに怒涛の連続攻撃である。奇襲を受ける事になった見張りの一人は更に続いたトラオムの鋭い蹴撃、徒手より放たれたR.R.の炎を受け簡単に沈黙する。
 その隙を縫い、素早くアジトに侵入し二階への階段を駆け上がるのは無論、リリー、Pandora、佳月の三人、そして佳月の分身体の一であった。
 一階にはロウガ以外の敵戦力もたむろしていたが、裏口より侵入した四つの人影を彼等は阻み得ない。
 彼等の注意は主に正面口のレナードに向いていて、位置関係上もそれは絶対的に不可能だったからだ。
 気付かれず事を運ぶ事が最良と考えていたパーティだったが流石に構造上それは不可能だ。
 見張りが何の為に立っているのかを考えればそれも当然の事だが、実際の所ここまでは何の問題も無かった。
「あの部屋だにぃ!」
 レナードから聞いていた部屋にPandoraが飛び込む。成る程倉庫には冒険者の持ち物だったであろう財産が幾つも転がっていた。
 一方で、リリーと佳月の二人は慌てた調子で部屋から飛び出してきた獣種の男と丁度かちあう形となっていた。
「何者だ、お前等……いや? 馬鹿げた問いか?」
 階下での騒ぎを確認し、目の前の敵をじろりと睨みつけ、ロウガは言った。
「どうやら、俺達のお友達でも仲間でも無いな。おい、お前等――返り討ちにしちまえよ!」
 怒鳴り声めいたロウガの言葉に階下の仲間達は漸く落ち着きを取り戻していた。
 つまり、『戦い』が始まるという知らせであった。

●決着
「――ッ!」
 巨大な剣に見合った威力がアラン目掛けて振り下ろされた。
 アランはこれを受け流さんと同じく大振りの剣を構え、その体を僅かに捻るが――一刀両断の一撃を完全に殺し切るには到らない。
 傷んだ彼を援護せんと、鋭角に閃いたのはトラオムの蹴りである。
 よろめいたサブリーダーの男の圧力が弱まったその瞬間に、
「皆のお手伝いね! こう強い方を相手にしてくれて、助かっているわ」
 ヴァイスによる支援のポーションが瞬間的にアランを癒やした。
「まぁ、とっても怖いわ。怖いから……近寄らないで頂戴。壊してしまうかもしれないわ?」
 そう言うヴァイスも衝術、威嚇術を駆使して弓使いを牽制し、場の優位を保っているのだから『お手伝い』以上の仕事をしていると言えるのだが。
「おら、よっ!」
 強引な戦い方で遅れは取らない。
 同じ大剣使いならば尚更だ――とアランがお返しにやり返す。
「……急ぐ必要があるな」
 敢えて自らを背水に追い込んだトラオムは打撃を受けつつもまだ意気軒昂なサブリーダーの男から視線を外さずに口の中だけで呟いた。
 実際の所、目の前の男はそれなりの強敵だが、パーティが恐れるのは敵の戦力ではない。
 戦力構成自体はパーティが上回っている以上、真に恐るべきは敵が逃げの判断を打つ事だ。
「……くそ、案外強ぇ!」
 舌を打つその弓使いに佳月が肉薄し、食らいついた。
 十分な射程を準備出来なければ真価を発揮し難い弓使いは、至近レンジでの勝負を挑む佳月に不利を免れない。
「悪く思わんで。倒れなさいな」
 まさに一方的な格闘戦に圧倒され、弓使いが崩れ落ちた。
 外の見張りの三、この弓使い。四人目の陥落は『クライウィッシュ』の戦力がほぼ瓦解した事を意味していた。
 サブリーダーの男は中々しぶとく、残るナイフの男も一階に居る以上、逃げ場が無いならばと徹底抗戦の構えだが、パーティ側は多少のダメージこそ受けていても倒れている者は居ない。戦いはかなり優位に進んでいた。
 一方で、二階のリリーとPandoraは階下の戦いよりは状況に苦労していたと言える。
「第一、そなた等は筋肉が無い(うつくしくない)」
 傲然と言い放ったリリーのルビは幾らかおかしな事になっているがそれはさて置き。
「筋肉(りゅうれい)なる我の方が偉いし正しい。よってひれ伏せ!」
 彼女独特の行動論理(マッスルビリーバー)に従う強烈な格闘術式がロウガを襲った。
 始まりの赤で補強されたその攻撃力はかなりの鋭さを誇っているのだが――
「は、簡単に負けるかよ!」
 流石に他とは一線を画す手練であるロウガはこのダメージを上手くそらし、決定打にしていない。
 犬歯をむき出しにしたロウガの猛烈な反撃を防御面のフォローに努めるPandoraが庇って阻む。
 回復手段(SPD)を持ち合わせるPandoraの存在は強敵と相対するリリーを強く支える手段になったが、彼は少なからず傷付いていた。
 戦いは続き、混乱は続く。
「卑劣だの贖罪だのと言った安い説教をするつもりはない。多くの冒険者を破滅させてきたアンタ達を滅ぼす、それだけだ」
 しかし、R.R.の一撃がサブリーダーを倒し。
「気絶した奴らのみる夢……ああ、良いものだと思いたいな」
 瞑目したトラオムの前には最後の一人が寝転んでいる。
 階下の劣勢がいよいよ本格的になるとロウガは一つ大きく舌を打った。
「――潮時か」
 位置関係上、二階の一番奥の部屋にいたロウガの後背には彼が用意していた非常口が存在する。
 当然と言うべきか彼はそちらに転進せんとしたが、悲しいかな。それは『とうの昔に死んだ出口』であった。
「――っ、うお!?」
 悪辣な冒険者にしては幾らか間の抜けた声を上げたロウガにとってこれは完全に不測の事態であった。
 彼を驚かせたのは言わずと知れたミセリアである。
 放たれた弾丸はロウガを掠め、彼をその場に釘付けている。
 彼女が現れたのは当然の事ながら、ロウガが望んだ出口――『一番奥の部屋』である。
「……つーか空気読めよ。弾だってタダじゃねぇんだ」
 意地悪く、余裕たっぷりに。黙っていれば美しいその面立ちに獰猛な表情を乗せて彼女は言う。
「主役の登場はパーティが盛り上がってからってな。良かったな、オーダーは捕縛だ。きっと裁判が受けられるぜ」
 Panddoraが早々に証拠隠滅の動きは潰している。『クライウィッシュ』は兎も角、裁判になってロウガが免れる目は無かろうが――
「……ああ、ったく。ツイてねぇ」
 ちらりと非常出口の先に目をやり、そこに佳月の分身が(ただ)佇んでいるのを確認したロウガは溜息と共に武器を放り出した。
 それはまぁ、完璧とは言わぬまでも見事な捕り物だったに違いない。



「レナードに感謝しろ。奴の嘆願がなければ、俺はアンタ達を殺す気でいた。
 尤も、死に至らずとも破滅は破滅だ。アンタ達がおめおめと生き延びようとも、その先に未来があると思うな」
 フン、と鼻を鳴らしたR.R.は必ずしも本意では無かったが――
 結論から言えば『クライウィッシュ』のメンバーの大半は極刑を免れた。
 罪を告発し、己も現場に立って事件を解決したレナードの嘆願と、それを手伝ったローレットの口添えもかなりの意味を持ったからだ。
「遺品は身寄りの人に渡したいにぃ」
 そう言ったPandoraのギフトは最終的な死人が出なかった事に幾らか貢献した事だろう。
「ま、全て世は事も無し――ならいいんだが」
 アランは肩を竦めて呟いた。
「うむ、素晴らしき筋肉(いっけんらくちゃく)である!」
 何だかとてもリリーらしいそんな言葉に一同は軽く笑った。
 このどうしようもない国がこの程度で変わるとは思えなかったが――仕事が無事に終わったのは、悪い気分では無かったからだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 YAMIDEITEIです。

 本作、代筆となりました。
 お客様に大変ご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。
 その分、喜んで頂けれるものになっていれば幸いです。

 シナリオ、お疲れ様でした。

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