PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ラド・バウの幽霊~ワクワクどうぶつ大会

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 鉄帝は大闘技場、その場所には一つの噂があった――C級戦には『幽霊が出る』

 名だたる戦士たちがそう口々にいうものだから、ラド・バウの七不思議として数えられる事も多い。その幽霊は在る時ふらりとラド・バウにやってきては勝利をもぎ取り、また消えるのだという。
 そして、幽霊が現れた後、必ず闘技場に残るものがある。
 そう、ウォンバットだ。

 でっぷりとしたまん丸フォルムに円らな瞳。
 短い手足でてこてこと幽霊が消え去った方向へと一生懸命走っていく。
 一度、闘技場の係員がウォンバットを捕まえようとしたことがあるのだが……どうにもそのウォンバットも『強い』のだそうだ。
 何処までが真実であるかは分からないが、兎にも角にも捕まらない。
 後に係員は云う。
「ああ、『マイケル』さんか。うん、強いよ。そりゃあね、皆も戦ってみればいいさ」


「……イレギュラーズ、今日は、どうも」
 ラド・バウの幽霊ことウォロク・ウォンバットはラド・バウC級闘士である。穏やかに頭を下げたウォロクは相も変わらず性別も年齢も分からぬ独特の気配を纏っている。
 曰く、ウォロクはマイケルとレクリエーションマッチに参加する事が多いため、ランク戦にあまり参加していない。
「……実は、マイケルから、仕事」
 でっぷり太ったウォンバットはラド・バウで行われる『動物マッチ』というレクリエーションマッチにイレギュラーズが来てほしいという。さながら『動物園のおにいさん&おねえさん』状態になってしまうがそれも止むを得ないだろう。
「……マイケルが言ってた。ラド・バウは楽しいぞって……子供たちに夢を与えるらしい……」
 ――親友のウォンバット、マイケルが嬉しそうにそう言った。
「……マイケルも、手伝ってくれたらお礼する……後で、打ち上げ、ご飯とか……」
 アウターケアもばっちりのウォンバットだ。
 動物マッチは強靭に鍛えられた動物たちと楽しく可愛らしく戦い、闘士達が動物たちにも勝てるんだぞとアピールするイベントだそうだ。流石は鉄帝国、子供たちも動物には勝てるぞと筋肉(やる気)を満ち溢れさせるのだろう。
 普通に動物たちと楽しく戦って、その後、ウォロクとマイケルがレクリエーションマッチのお給料で焼き肉を食べに行こうという事だ。
「……敵、教えとくね……タピオカピとか……ドスコイマンモスとか……。
 あと、なんだっけ……山口さん……? 忘れた……」
 ウォロクをてしてしと叩いたマイケル。ウォロクはハッとしたように顔を上げた。
「そこに、偽物のマイケルも出てくるみたい……」
 曰く、マイケルの振りをした別のウォンバットが動物マッチには参加して来るそうだ。
 ウォロクとマイケルはそれを聞きつけて、参戦し、偽マイケルを捕縛せねばならないという決意に燃えているらしい。「私も、手伝う……」とイレギュラーズへと向き直る。

(マイケルが言って居たそうだが、)動物たちとのレクリエーションマッチには飛び入り参加もOKだそうだ。それに観客席も空いている。友人を呼び出すなら呼び出しても大丈夫だそうだ。
 ちなみに、動物たちは割と強いが、ウォロクが気を利かせて体力さえ削り切れば不殺などの工夫をしなくても良いようにしてくれている。
 まあ、動物たちもラド・バウの戦士だ。強さはお墨付きなのだろう。
 動物なのに? ゴリラやウォンバットも居る。よくわからない世界である……。

GMコメント

 夏あかねです。
 ウォロクはリヴァイアサン戦に居る!?PBWなので時系列は気にしないでください

●成功条件
 『偽マイケル』の捕縛

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●レクリエーションマッチ(第二回目)
 ラド・バウを目指す子供達や近所の子供達を招いてのイベントです。時折、パルスがライブをしているのと同じような明るく楽しく元気なイベントです。
 パルスがライブで留守にして居る為、動物枠としてマイケルが招集されました。ついでにウォロク付きです。(マイケルが優先されても「……そう」としかウォロクは云わなかったようです)
 
 ――今回はそのレクリエーションマッチに『偽マイケル』が参入!?
 偽マイケルをウォロク&マイケルと協力して並み居る強豪動物たちを退けながら『偽マイケル』を捕縛してください。

●強豪動物たち
 以下、強豪動物たちです。レクリエーションマッチですので、殺さぬ様にだけ注意してください(不殺を使用しなくても自動的にHPが0になるとノックダウンされます!)

 - 強靭なる砂漠の主『パカダクラ』
 - 大海原の天使『鯨太郎』
 - 大好物は未亡人とアリクイ『ドスコイマンモス』
 - 可愛いものが大好き『タピオカピ』
 - 山口さん(←!?)

 -偽マイケル(結構強い/乱戦で逃げ惑います)

 また、「イレギュラーズがんばえー!」してもらうために悪役にならない様にだけ注意してくださいね!

●焼き肉
 レクリエーションマッチが成功したら食べれます。人の金で!
 鉄帝では結構有名なお店だそうですよ。好きなだけ食べよう! マイケルも一緒。

●ウォロク(ウォロク・ウォンバット)
 ラド・バウC級の幽霊。そう呼ばれるほどに希薄な存在感と中性的な外見をしています。
 ローブを身に纏い男女どちらであるかは不明です。美しく、そしてはかなげな外見をしています。
 戦闘スタイルは所謂魔術師タイプ。但しウォロクは手加減があまり得意ではありません。
 ウォンバットのマイケルが親友です。

●マイケル(ウォンバット)
 ウォロクの親友。オスのウォンバットです。非常に可愛らしい外見をしています。
 マイケル自体も非常に強いファイターだそうです。しかも成長株。
 ヒーラーかつタンクタイプ。非常に耐久に優れているそうです。
 手加減や気遣いは得意です。オスなので。

●EXプレイング機能
 ・ラド・バウの観客/応援
 ・ご一緒にレクリエーションマッチに参加(傍で別の動物と楽しく戦います)
 ・焼き肉のお財布!
 ・そのほか色々!
 何かございましたら是非ご利用くださいませ。

 それでは、『面白おかしく』よろしくお願いいたします!

  • ラド・バウの幽霊~ワクワクどうぶつ大会完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年06月17日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
杠・修也(p3p000378)
壁を超えよ
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
ユースティア・ノート・フィアス(p3p007794)
夢為天鳴
かんな(p3p007880)
ホワイトリリィ

リプレイ


 ふわふわとした毛並みのパカダクラ。それと挨拶をした小さなウォンバットのマイケルがてこてこと歩いていく。その様子を眺めてうっとりと息を吐いた『夢為天鳴』ユースティア・ノート・フィアス(p3p007794)は「もふもふ……」と目を細める。
「このもふもふ達と戯れるお仕事だなんて素敵……で……えっと……?」
 うっとりとマイケルの後を辿ればユースティアが辿り着いたのは熱狂のラド・バウ。鉄帝国が誇る闘技場だ。
「……あれ?」
「もふもふでかわいいアニマル……って思ってたら、あっという間に押し倒されそうだ。
 それを、このラド・バウで戦うってんだから……油断は禁物だぜ……!」
 焦りを滲ませる『理想のにーちゃん』清水 洸汰(p3p000845)のその言葉にユースティアは「ラド・バウ」ともう一度呟く。そう、ここは鉄帝国の国技ともいわれる熱狂の闘技場、その命を削り合い上位を目指す場所ラド・バウだ。そんな場所でもふもふと戯れる――?
「ラド・バウはほのぼのとした戦いもやるんですね……!
 未来ある子供たちにこうやって戦いを教育するのでしょうか。教育は大事ですね!
 ――もふもふした動物達と楽しく戦い、盛り上げていかなくては!」
 寧ろもふもふとの戦いを楽しみにしている『朝を呼ぶ剱』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)はレクリエーションマッチが楽しみだと笑みを浮かべている。
「普段のラド・バウではなくてレクリエーションマッチ……それも魅せる方か……。
 そんなものに地味なイレギュラーズの自分が参加するのは良いのでしょうか……」
 何処か悩ましげである『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)の事をくいくいと引っ張ったのはラド・バウC級闘士であるウォロク・ウォンバットその人だ。
「……地味、一緒」
 そう言って首を傾げるウォロクはラド・バウの幽霊とも称されるほどに柳の下に立っていることがお似合いなファイターだ。美貌の人ではあるが、口数も少なく、その存在は余り把握されていないらしい。
「一緒、か。……精一杯頑張ります。
 携行品で鎧に鉄帝の紋章を描いたりして、少しでも見栄えを良くしておきましょう。
 目立つのは苦手なのですが、引き受けた以上はベストを目指します」
「……ん、良いと思う」
 頷いたウォロクに『実験台ならまかせて』かんな(p3p007880)は『笑顔の練習』をして見せる。
「動物さん、とっても可愛いわよね。可愛い動物さんは大好きよ。
 明るく楽しくという所は少し自信が無いのだけれど…これでも、お声がけをもらってとっても嬉しいのよ。ね、…こんな感じかしら…?」
 笑顔にはまだ慣れていないのと言ったかんなに「どう?」とウォロクも笑い返す。
「……同じくらい、かしら?」
「……一緒」
 どうやらイレギュラーズと一緒である事が喜ばしいらしい。その様子を微笑ましく眺め、今日の大戦豹をまじまじと眺めていた『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)はうんと唸る。
「タピオカピってイッタイ何者なの? タピオカってアレ? 黒い丸いヤツ?」
「黒い丸いタピオカの様なオカピなのかもしれないが……。なんにせよ混沌世界は不思議が一杯だな。
 俺はドスコイなマンモスを相手にしようと思う。だが、ドスコイマンモスか。見せ物でもあるしこの鉄帝って国だと搦め手とか使わずに正面から正々堂々ってのが受けが良さそうだとは思ったが――力負けする可能性もあるな」
 悩まし気な杠・修也(p3p000378)は解き放たれる動物を眺めてから、ドスコイと鳴いているマンモスに「成程」と呟いたのだった。


 ばさり、と翼を広げたのは『水神の加護』カイト・シャルラハ(p3p000684)。ワクワクどうぶつ大会と銘打っていると言うのに動物枠に鳥がいないとはどういうことだと異を投じる。
「とりさんだあー」と楽し気な声が観客席より上がるのを聞きながら一気に飛び立ったカイトは「俺は漁師だ!」と子供たちにも分かり易く自身を紹介した。
「だからこそ、クジラは対応できる! 捕鯨だな! ……いや釣ったことはねーな? 鯨太郎、勝負だ!!」
 びしりと指させばずずんと音が立つ。ドスコイマンモスが立ち上がった其れに子供たちがおお、と声を上げた。それを眺めていたのはダン・ドラゴフライ。文官である彼は今日はラド・バウの観戦に赴く子供たちの相手を担当していた。ふと、彼が視線で追ったのは『見知った』風貌の鷹の姿だ。
(……ああ、あれはファクルではないな。アレの倅か)
 一人納得した彼は、一時はカイトの父とのタッグの経験があったそうだ。父とそっくりの美しい緋翼を大仰に揺らしたそれを眺める彼へ「見てみてー」と子供たちから声が上がる。
 どすん、と座ったままのパカダクラが重い腰を上げている。ラクダにアルパカの毛をもふりと生やしたそれは強豪らしきその動きを見せる。
「肝心の戦闘は、パカダクラの相手をさせてもらうわね。
 私、ちゃんと調べてきたのよ。キュイーって鳴くのよね。可愛いわ」
「ダカァ」
 野太い声であった。ぴた、と止まったかんなは「あれ……?」と首を傾げる。傍らに立っていたユースティアは「キュイーはパカダクラじゃなかったと思います……!」と助け船。
「……えっ、キュイーって鳴くのはパカダクラじゃない? ……そう、残念だわ……」
 驚くほどの落胆を見せた。因みにキュイーと泣くのはカピブタさんなのだ。その様子にウォロクはカピブタを呼んでおいたほうが良かっただろうかと小さく瞬いたのだった。
 パカダクラを相手取るかんながふわりと舞うようにそのモフモフへと飛び込んで行く。あまりに血塗れであるのは情操教育に悪いと戦闘には一応、こだわりを一つ。
(私はどちらかというと悪役になってしまいそうで、少し不安だけれど。
 動物さんたちも強豪なのよね……胸を借りるつもりで、戦わせてもらいましょう)
 ナンバーレスを振るいあげるかんなが地面を踏みしめる。ステップを踏んでパカダクラに接近すれば乱戦状態のドスコイマンモスがドスコイと叫んでいる。
 ユースティアは修也を支援するように応援を交えた。応援だけ――? 気のせいだ。
「少年! もっと腰入れろー!
 格好良いところ見せたら、ユーフィーと一緒にオマエの為にご奉仕してやるぞ」
「先生!?」
 気まぐれにもラド・バウに訪れていたシシル・ガルムヒルド・オフェリアスは戦う中に見慣れた剣が在る事に気付いた。ユースティアの師の一人である彼女は可愛らしいかんばせをしているが熟練の鍛冶師だ。
 揶揄う様なその声音を聞いて慌てて振り向いたユースティアに「オマエも頑張れよ!」とシシルの檄が飛ぶ。
「ハッ……偽マイケルさん……!」
 もふもふとしたい衝動を抑える。程よい所で降参してくださいと願うユースティアの出した交換条件はあとで毛繕いや身だしなみを整えるというものだ。だが、偽マイケルはそれで止まることはしない。
「シャルラハさん、そっちに行きました!」
 鯨太郎の相手を取りながら、偽マイケルをその視線の端で見遣る。子供向けのレクリエーションで色々不味い事はあるだろうが手を抜いて居れば負けてしまう程に鯨太郎は凶暴だ。
「それに至近距離での殴り合いですから、勢いで誤魔化せるはずです!」
「おう! 誤魔化しも立派な武器だ!」
 そう叫んだカイトにオリーブは大きく頷いた。鉄帝の紋を背負い堂々と立ちまわるオリーブが一気呵成、その拳を鯨太郎へと放てば、どすんどすんと大仰な音を立てて鯨太郎が跳ねまわる。
「暴れん坊だな!?」
 まるで陸に打ち上げられたかのようにのた打ち回る鯨を見遣ってカイトがそう呟いた傍ら、イグナートはタピオカピとまじまじと見つめ合っていた。
「偽マイケルを捕まえるジャマをするっていうならヨウシャはしないからね! ところでタピオカピって喰えるのかな?」
「食べれないわ。タピオカ的に映えるけどオカピだもの」
 その声に――イグナートは頭痛がした。見たくなかった。見ようとは思わなかった。それがどうして此処に居るのだと不安が首を擡げたのだから。
 観客席で微笑んでいたのはメンタリア・ノプシス。ヒトヨタケの美しい精霊の淑女である。
「何を普通に戦おうとしているのかしら? 相手は可愛いものが好きなのでしょう?」
「………ウソでしょ……見なかったことにしよう」
「イグナート?」
 美しい声音が厳しくも飛んでくる。鉄火仙門下最古参にして『朔日ノ帳』『黒墨の魔女』の異名をわがものとする美女は微笑を浮かべて弟弟子を呼びつける。その動きにタピオカピも楽し気に追従した。
「もう一度聞くわ。相手は可愛いものが好きなのでしょう?
 じゃあ、アナタの可愛いところを見せつけていかないと。そうでしょう?」
「……ソウデスネ」
 イグナートの視線が明後日へ、明後日へと向いていく。しかし、それを許さないのが姉弟子の強さだ。
「ワタシはパルスちゃんの歌や踊りなんて可愛らしいと思うわ。それをアナタがやりなさいイグナート」
 微笑んで彼女のその言葉を聞きながら、凄まじいものがあると洸汰は感じていた。寧ろ、それを聞いて攻撃をすることなくカワイイを楽しみにしているタピオカピもすごい猛者なのではあるが……。
「すみません! どいてください!」
 ばたばたと走ってくるシフォリィの背後を一生懸命にマイケルが走っている。戦っている間にマイケルと偽マイケルを待ちあげる事ないようにとシフォリィはマイケルに可愛らしいリボンをきちっと付けてやったのだった。ウォロクはぼんやりとその『追いかけっこ』を眺めているが、シフォリィは偽マイケルを追いかけ、マイケルはシフォリィを追いかけている。ウォンバットサンドイッチ状態だ。
「マイケルさん、大丈夫ですか!」
 ふすふすと疲労を滲ませてはいるがマイケルはまだまだ頑張ると言った調子だ。子供たちからも「マイケルーがんばえー!」の応援の声が聞こえてくる。
「マイケルさんって人気なんですね! 偽物のマイケルさんが参戦してくると聞いていたので、まさかとは思っていましたが……ですが、人気にあやかるのはいけません! 本物のマイケルさんの方がすごいというところ、見せつけてやりましょう!」
 ――あと偽物とはいえマイケルさんと同等ならばもふもふします!
 その言葉にマイケルが微妙にショックを受けて居た事をウォロクは感じ取っていた。リボンをつけてくれて可愛いとモフモフしてくれたシフォリィにマイケルは心を許していた。
 マイケルは人懐っこい生き物だ。それ故に可愛いと言われてリボンまでプレゼントしてもらえたことで嬉しかったのだろう。てこてこと短い脚を必死に動かし続けている。
「マイケルさん、もう少しです! ……って、ああっ! こんなに逃げなくっても!」
 偽マイケルを待てーと追いかけるシフォリィ。その様子に子供たちは楽し気にきゃっきゃと笑い続けている。
「オレの相手は山口さん! オレには山下……山本……山梨さん? がついてるからな! 負けないぞー!」
 私が考えた最強の従者があいまいな顔を見せた。そんな洸汰に山口さんは何やら理系なことを伝えてくる。
「そ、そうやって賢い事を言って困らすつもりだろー!? オレだって、知ってるぜ、すいへーりーべー!」
 何やら理系勝負になってくる洸汰と山口さん。耐えて耐えて、必死の洸汰へと振る「負けないで―!」の声。洸汰が視線を明後日にやれば必死にマイケルが偽マイケルを追いかけまわしている。
 マイケルvsマイケルと言う好カードが気になってくるのはあるが、必死に山口さんを倒さなくてはならないのだ。
「このコータ様が居るんだ、オレに任せとけー!」
 その宣言を聞きながらイグナートは汗を垂らしていた。先ほど、姉弟子はなんて――?
「イグナート、分かったでしょう?」
 そう、囁く姉弟子の言葉にイグナートはタピオカピへとゆっくり振り返る。
「――ミュージックスタート!」
 パルス・パッション。それはラド・バウのアイドル闘士だ。新曲『君へ放て☆烈火業炎撃』を振り付けも完コピ状態でかわいく歌って踊るイグナートにタピオカピの体が揺れ始める。
「サア! 戦おう! キラッ☆彡」
 そんなにパルスのファンではないがこの作戦に失敗した場合は(タピオカピと言うよりも背後の姉弟子的な意味で)命が危ないのだ。カワイイ歌と踊りで全てを乗り越えるしかない。
「キラッ☆彡」
 タピオカピは嬉しそうに踊り出す。それをそっと確保してイグナートはマイケルと偽マイケルの許へと向かった。
「マイケル! イッショに戦ってくれるかな?」
 ふんす、とマイケルがお返事を返す。どうやらイグナートの事が気に入ったタピオカピも協力してくれるらしい。
「エ? パルスちゃん? モウしないよ」
 タピオカピはやさぐれた。一方でのたうつ鯨太郎をオリーブが必死に押さえつけ、カイトがぐんとその身を上空へと持ち上げる。
「採った―――!」
 もはやそこにあったのは狩猟である。残る、パカダクラと言えばかんなをその背に乗せて偽物マイケルを追いかけまわし、ドスコイマンモスはと言えば――

 ――良いよな未亡人。少し疲れたような色気のある年上の女性。
 俺もお姉さんな感じの女性が好みだからな。
 あんたとは分かり合えそうな気がするドスコイマンモスーー

 修也とドスコイマンモスは通じ合った。目があった時に、彼の瞳がそう告げていたからだ。
 分かったよとドスコイと鳴いたドスコイマンモスをそっと修也は「有難う」と抱きしめた。未亡人が好きだという事を分かってくれて嬉しいとそのマンモスは只、頷いたのであった。
「偽マイケル、どっちが本物だ??」
 とりあたま発動のカイトにシフォリィは「本物はリボンを付けました!」と宣言してふすふすと言いながら走る偽物を追いかける。
「ッ――!」
 手を伸ばす。そしてシフォリィが偽物のマイケルをもふりと抱きしめた時に大歓声が起こったのだった。


 無事、偽物のマイケルを捕獲するに至ったという事で、リボンを付けたマイケルを腕に抱いていたシフォリィが「良かったですね、マイケルさん」とぎゅっと抱きしめる。
「……マイケル、喜んでる」
 リボンのお礼だって、とウォロクがマイケルを指させば、その小さな前足でドスコイマンモスが潰して見事なメダル状になった瓶の蓋を掴んでいた。
「……宝物、だって」
「いいんですか? 有難うございます。さあ、焼き肉にいきましょう!
 私お肉大好きなのでたくさん食べます! 体を作るのにお肉は必要ですからね!」
 マイケルを抱っこした儘、シフォリィがワクワクと焼き肉店へと足を運ぶ。それを追いかけながら修也は「焼き肉か。どの世界でも人の金で空焼肉は旨いだろう」と頷いた。
「ええ。どんなお肉があるか楽しみですね!」
「俺もこの世界では初めてなんだが……案外普通の焼肉を楽しめるんだろうか」
 その視線の先には鳥。カイトはぐるっと振り返り「俺は猛禽だぞ!」と自身を指した。
「猛禽は肉が好き! 鶏肉だろうが食べるぞ! 好きだしな!」
「……それは、共食いではないんですね」
 オリーブにカイトは「おう!」と快活に笑みを浮かべる。腹いっぱいに食べた後に、鳥が足りないからって丸焼きにしてくれるなよ、と合わせるカイトはどさりと金の入った袋を握っていた。
「そういや、親父の友達? 詳しくは知らないんだけどさ、ダンって人が焼肉代くれたんだ。
 大人の余裕っていうのか? ありがたいよなー。肉を食うぞー!」
「焼き肉!」
 さっさと、座席に着席し、メニューをまわした洸汰に大して、ミセス・ホワイトは「早くドリンクから選びなさいな」とさらりと告げる。
「皆お疲れ様ー! かんぱーい!
 動物達にも、何かご飯あげたいけど……こっちは肉よりもサラダのが良いかな?」
「種別によるでしょう? あまり上げすぎて太らせちゃいけないわ」
 ミセス・ホワイトの言葉に洸汰はそれもそうかと頷いた。イグナートは直ぐに「ウォロク、乾杯」とグラスを掲げる。楽し気なタピオカピは肩を組み、シフォリィの膝の上から移動するマイケルをイグナートは抱っこする。
「マイケルも楽しんでね!」
 ふんすと頷いたマイケル。てこてこと歩き続けるその背中をじい、と見てからかんなは「マイケルさん、お肉を食べる邪魔にならない程度に触らせて貰ってもいいかしら……?」と恐る恐ると手を伸ばす。
 ふすふすと言いながら膝の上に丸くなったマイケルはそうして撫でられることがどうやら喜ばしいのだ。
「焼き肉は……元々、あまり量が食べられないのよね。こういう時は少し、残念だわ」
「……マイケル、食べる邪魔じゃないなら遊んでほしいって……」
 ウォロクの言葉にかんなは頷いた。とってもかわいい、ともふもふとすればマイケルはどこか擽ったそうだ。ずっと触ってみたいとは願っていたが、お伺いを立てないのも何だか悪い気がするのだ。
「……キュイーって鳴くのはカピブタなのね。キュイー……」
「……今度、呼んどく……」
 ウォロクのその言葉に重なるように、立ち上がったシシルは「ウォロク、モヤシばっかりじゃ力にならないぞ!」とちょっぴりお冠だ。
「あー、洸汰! 肉ばっかり食べない! ウォロクも洸汰も肉と野菜はバランスよく!」
 叱り付けるシシルのその声を聞きながら我関せずなミセス・ホワイトは黙々と肉の一辺倒。
(先生も流石にミセス・ホワイトには言わないんですね……)
 今日のお財布役なのである。それを眺めてからユースティアはバランスよくに肉と野菜を焼き続ける。
「あ! ホワイトおばさんも旨そうなの食ってるー! 良いなー!」
「……何、そんな目をして。このステーキはアタクシの物よ?」
 そんな洸汰とミセス・ホワイトのやり取りに小さく笑うユースティアへと「ユーフィー!」と声が掛かる。
「はい。先生、どうかしましたか?」
「もっとお肉焼かないと間に合わないぞ。山の様に焼いとけ!」
「分かりました。その……こんなにあったのにすぐになくなるもんなんですね」
 ぱちり、と瞬くユースティアは手を上げて店員へと追加の肉を注文する。流石は鉄帝国のラド・バウか。これだけの山の様食事を食べたとしても、まだまだ追加に猶予は在りそうだ。
「決戦の時はパエリアを4000G分食べましたが、今回はどの程度になるでしょうか。ちなみに赤身が好きです」
「赤身なら頼みなさい。なんでもいいわよ。アタクシが払いますもの」
 金額は気にしないで良いのとオリーブへとミセス・ホワイトははっきりと言い切った。カイトがダン・ドラゴフライから持たされた金銭があるとは言えど太っ腹なマダムである。
 人の金で食べる焼肉は旨いのだと修也はもう一度、しっかりと言った。その言葉に楽し気に頷いたタピオカピはもう一度、イグナートと肩を組んだのである。

成否

成功

MVP

イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃

状態異常

なし

あとがき

 ミセス・ホワイトとダンさんからお代頂戴しました!

 MVPは姉弟子にパルスちゃんにされた貴方へ。ビデオ撮っておきますねって姉弟子様が仰ってました。

PAGETOPPAGEBOTTOM