PandoraPartyProject

シナリオ詳細

雨の波紋

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ぴちゃん。ぱた、ぱたぱた。
 空が雫をこぼして、世界を濡らしていた。
 雫が落ちて、水たまりを作る。雫が落ちて、小さく跳ねる。

 大人が急げと走っていく。
 子供が遊びに駆けていく。

 無数の波紋が生まれ広がり揺らめいて。消えゆく前に新たな波紋が生まれていく。
 その様子を飽きずに眺めるモノがいた。小さな、実体を持たない存在。精霊である。
 自我を持つ彼──いや、彼女だろうか──はずっとそれを眺めていた。朝から、それこそ夕方まで。けれどもう少しで止んでしまいそうな雨に、消えてしまいそうな波紋に、なんとも言い難い気持ちになる。

 ずーっと降っていれば良いのに!

 精霊は自身の言葉に思いついた。ずっと降ってくれないのなら、降らせてしまえば良いのだ。天が降らせてくれないのなら、自分で降らせてしまえば良い。
 こうして次の日から、その町で晴れることはなくなった。



「これは大変ですね」
 ブラウ(p3n000090)のまとめた依頼書を見て『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は唸る。ひよこはカウンターの上でこくこくと頷いた。
「本当に。川も貯水池も溢れそうだし、何よりずーっとこの調子ですから町の皆さんが参ってるみたいです」
「カウンセラーさんが大忙しなのです……」
 うわぁ、と遠い目になるユリーカ。カウンセラーが鬱になる日もそう遠くなさそうだ。
「フレイムタンさん曰く『悪戯精霊マイヤ』の仕業だそうですよ」
 かの精霊種が同胞に問うたところ、一様に同じ答えだったらしい。精霊の中では有名な存在のようだ。
 マイヤは元々水を司る精霊で、その力で人々や同胞に悪戯を繰り返している。依頼のあった町に降りかかった『止まない雨』という災厄は十中八九その力だろう。
「普段は大したことをしないから見逃されていた、ですか」
 依頼書に書いてあった補足事項には、本当に些細なことばかり。人の顔に水を飛ばしたとか、池でこけた子供を水柱で持ち上げたとか。まさか町の人々も精霊が雨を降らせ続けるようになるとは思うまい。
「早く何とかしてあげないと……あっイレギュラーズの皆さん! こちらですよー!」
 ぴよ! とブラウがぴょこぴょこ跳ねる。気づいたイレギュラーズたちはどうやらこの依頼を受ける者たちのようだ。
 ブラウは経緯を説明し、情報のまとまった羊皮紙を差し出す。
「倒さなければいけないのはこの……多分、スライムだと思うのですが。それっぽいモンスターです」
 羊皮紙に描かれたくねくねの線はスライムの形状に迷った跡のようだ。補足を見る限り、人を飲み込めるほどの大きさと見て良いだろう。
「正体は不明ですが、雨が降り出した直後に町の皆さんが目撃しています。それと、よくマイヤが来るようになったと」
 マイヤはふわふわと飛びながら町を巡ったり、モンスターの様子を見たりしているらしい。最もあまりに高速なものだから『おそらくマイヤだろう』という程度だが。
「スライムは雨を受けて大きくなっているようですが、たまに小さいことがあるそうです。何をしているのかまではわかりませんでしたが、何かのきっかけがあるのだと思います」
 スライムを倒したところで雨が止むのかもわからないが、マイヤを捕まえ問い詰めることができれば分かることだろう。すばしっこい妖精を捕まえられるかどうかは、置いておいて。
「ことは急を要します。どうか、町の皆さんに早く晴れ間を見せてあげて下さい!」



 昨日も雨。
 今日も雨。
 明日も雨。

 波紋がたくさん、たくさん。生まれて広がって消えていく。
 ほんの小さな願い事。実現したら、嗚呼、なんて素敵なんでしょう!

GMコメント

●成功条件
 ウォータースライムの討伐

●情報精度
 ここのシナリオの情報精度はBです。
 嘘はありませんが不明点があります。

●ウォータースライム
 人よりも大きな……というより一軒家並みの大きさをしたスライムです。雨を吸収して膨れるようです。定期的に何かのタイミングで若干しぼみます。
 HPと特殊抵抗に優れており、回避はそうでもありません。
 近距離〜中距離が主な攻撃レンジです。

吸収:PCを1〜2名取り込みます。取り込まれたPCは自動的にBSを付与され、これはスライムの体内から救出された時のみ治癒されます。また、毎ターンHPを100失います。【苦鳴】【呪縛】
放出:自分を中心に、全範囲へ勢いよく水を放出します。【飛】【泥沼】

『救出』
 主行動を消費してPCの救出に向かうことができます。
 必ず救出できますが、それ以降吸収される可能性が上がります。

●悪戯精霊マイヤ
 すばしっこい精霊です。ふわふわ漂う光で、実体はあるため捕まえられそうです。最近よく見かけられるそうです。
 特殊スキルがなくとも話はできますが、まず捕まえるのに一苦労いるでしょう。

●フィールド
 町にほど近い空き地です。
 広く、雨が降っています。

●ご挨拶
 愁と申します。
 長く続く雨、嫌になってしまいますね。皆様の力で晴れにしてしまいましょう!
 ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

  • 雨の波紋完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年06月15日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

杠・修也(p3p000378)
壁を超えよ
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター
シラス(p3p004421)
超える者
ゼンツィオ(p3p005190)
ポンコツ吸血鬼
アリーシャ=エルミナール(p3p006281)
雷霆騎士・砂牙
湖宝 卵丸(p3p006737)
蒼蘭海賊団団長
フローリカ(p3p007962)
砕月の傭兵

リプレイ


 しとしと、しとしと。
 イレギュラーズが町に近づいてから、ずーっとこんな調子だった。
「卵丸、雨降りよりも晴れた日の空が好きだ……」
 これがずっと続いているのか、と『蒼蘭海賊団団長』湖宝 卵丸(p3p006737)はげんなりした表情を浮かべる。これは町の住人も参ってしまうだろう。正義の海賊としては放っておけない案件である。
「僕の苦手な日光がないのは良い事だけど、ずっと雨は良くないね!」
 空を見上げた『ポンコツ吸血鬼』ゼンツィオ(p3p005190)はむむ、と小さく口を尖らせてみせる。厚い雲が日光を遮ってくれるのはありがたいことだが、『こればかり』はよろしくない。ここにいる人間の血液が不味くなりそうだ。
「足元が滑らないといいですが」
 『雷霆騎士・砂牙』アリーシャ=エルミナール(p3p006281)は足元へ視線を落とす。『砕月の傭兵』フローリカ(p3p007962)も「全くだ」と首肯した。
 止まない雨は戦場においても私生活に置いても、著しく動きを阻害してしまう。あと何より飽きるのだ。ずっとずっとどんよりした曇り空に湿った空気、冷たい雨。たまには違う景色だって見たくなってしまう。
「このお天気じゃ、お洗濯物も乾かないわね~」
 あらまあと言わんばかりに『遠足ガイドさん』レスト・リゾート(p3p003959)は大きな水たまりを見て、ぴょんと飛び越える。傘を差してはいるが、服の裾はすっかり湿ってしまっている。着るものはやはり乾ききった洋服が良いし、お日様の匂いと温かさに包まれた布団で寝たいものだ。
 などと言っている間にも町は近づき、同時にその外れで丸っこいフォルムが見え始める。多分あれだ。
「いや、デカいな」
 顔を引きつらせる『ラド・バウC級闘士』シラス(p3p004421)。まだ若干の距離はあるはずだ。この時点であのサイズだとすると、近づいたらどれだけ大きいか。
「個人的には大きさに比例して危険になると思ってるんだが……かなり大変そうだな」
 シラスと同じくその大きさを感じたのだろう。杠・修也(p3p000378)は眉を寄せてそのフォルムを見据える。一見ドームの天辺にも見える曲線だが、時折揺らめくので間違いないだろう。
 でもさ、と『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は右手を握ったり、開いたり。
「ああいう手合いは殴っても効いてる気がしないから殴りガイがないんだよね」
 もよん、ぷるん、とした柔らかな手ごたえはあまり好きじゃない。殴るなら強靭で硬いものの方が実感がある。
 さりとてこのスライムを放置できるかと言えば否。この場にいる8人のイレギュラーズは、あれの討伐依頼を引き受けた。ハイ・ルールに則って行動せねばならない。雨が憂鬱にさせるけど。かなり濡れるけど。戦闘中に傘差すわけにはいかないからね。
「動けるのかなこいつ?」
 もう少しで到着、人によっては射程内といったところでまず動きを見せたのはシラスだった。デカいウォータースライムの体を高熱で包み込む──にはあまりにもサイズが大きすぎたが、ちょっかいをかけてみる。
 しゅわっと水分が蒸発する音。スライムはぷるんと震えると、のっそりシラスたちの方へと動き出した。
「あ、動けるんだ……」
 動けないなら間合いの外から倒せると思ったのだが、話はそう甘くない。
 シラスの脇をすり抜けていった卵丸が刃仕込みのマントを虹色に輝かせ、勢いよく翻して斬撃を放つ。
「降り続ける雨の中でも、虹の橋は掛る……必殺、蒼・海・斬!」
 ウォータースライムへ命中したそれは輝きと共に霧散し、同じ箇所を狙うようにイグナートの拳が敵を打つ。しかし水が満たされるように傷跡もなにもなくなったそこは、彼の予想通りに何とも言えない手ごたえだった。
(けれどオレはトクベツ何か出来る訳じゃないからね!)
 イグナートに出来るのは殴って殴ってダメージを与えていくのみ。少しでもその体を吹き飛ばしていけば体積は減り、小さくなっていくはずだ。
 その後方から2つの莫大なエネルギー。察知したイグナートが飛びのきざま、修也とゼンツィオの魔砲がスライムへ叩き込まれる。
「押し切れ……なさそうかな?」
 ゼンツィオはゆるゆると埋まっていく傷口を見ながら呟く。長期戦になるのならこのままではすぐガス欠してしまうだろう。にこにこと微笑んでいるレストもそうねぇと頷く。
「倒すのは結構大変そうね~」
 レストの衝撃波に続いてハルバードを振るうフローリカ。度重なる攻撃に何かを感じ取ったのか、スライムはぶるぶると震えだして。
「うわっ!?」
 手近な場所にいたイグナートを呑み込んだ。
「早速ですか」
「俺が行くよ」
 アリーシャはサークルより召喚した鎧を強化しつつ、シラスの言葉に頷く。ぶよんぶよんと縦に跳ねるスライムへ大剣を慣れたように捌くと、その切り口へシラスは手を伸ばした。中でもがき暴れようとしていたイグナートがそれに気付いて手を伸ばす。
 シラスの手にイグナートのそれが触れた。勢いよく引くとすっかりびしょ濡れになったイグナートが軽やかに着地する。頑丈な体はこの短時間程度じゃびくともしない。
「タスかった。ゼンエイを減らされるワケにはいかないからね」
 拳を構えるイグナートへ、後方からレストが回復を施す。これは長期戦になりそうだ。
 最初こそのそのそとシラスへ向かっていたウォータースライムだが、殴る手ごたえも無ければ特殊攻撃にも耐性があるらしい。中々に丈夫なスライムは、しかしイレギュラーズの攻撃により少しずつ体積を減らしていた。最も、雨粒を吸収しているようなのでその減り具合は緩やかだ。
 そこへ突然、スライムが大きく震え始める。イレギュラーズたちが怪訝な表情を浮かべる中、仮定を立てていたのは卵丸と修也の2人だ。
(雨を吸収して膨らんで、定期的に若干しぼんでるのは、雨を降らせる為に水を吹きだしてるからかもしれないんだぞ……)
 退治すれば止むかもしれない、と卵丸。
(定期的に萎むのは水を放出する攻撃に関係すると思うんだよな)
 これは前兆であり放出したから萎むのでは、と修也。
 2人の仮定は──どちらも正解と言えよう。全身から勢いよく飛ばされた水がイレギュラーズを飲み込む。より湿度が上がった気配がした。
「は~い大丈夫よ~、おばさんが付いているわ~」
 にこやかなレストが仲間へ回復を施し、修也もまた味方に近づいて傷を癒す。その脇をにゅるりと水の触手が通り抜け、ゼンツィオとフローリカを捕らえた。
 ゼンツィオは流れ込みそうな水に息を止めながら、魔力弾を放つ。内側からでも攻撃できるようだが、その反応は薄い──というか、外側からの攻撃と変わらない。対するフローリカは水中でも容易に動いているが、外へ出るには薄い膜が邪魔をしてしまうようだった。
(やはり、助けがないとダメか)
 少しずつ増えていく体積は雨粒によるもの。スライムが雨を吸収して大きくなっているのは間違いないが、それと同時にこのモンスターは雨の一部なのだろう。そうでなければ、精霊によほど大きな力があるとしか思えない。それくらいに規模が大きいのだ。
 アリーシャとシラスがスライムへ手を突っ込み、2人を救出する。引き出される2人に代わり、シラスはぐいと引っ張られる感覚に目を見張った。
 直後、どぷんと水に入る感触。外側へ手を伸ばしていれば、さほど時間をおかずに助けの手が伸ばされた。
「ぷはっ……ああ、もうっ! ベットベトだよ!」
 再び伸ばされる触手を格闘術で切り落とす。叩き落したのではない、高速の技で以て正真正銘『切り落とした』のだ。
「食らうかよ、そんなトロい攻撃!」
「でっかいから攻撃もオソいね、よくミえるよ!」
 イグナートもまた拳を叩き込み、アリーシャも大剣を振りかざしてスライムの体を削いでいく。フローリカは光学兵器たるハルバードで懐から強烈な一撃を放った。ゼンツィオの魔弾へ追随して卵丸は俊敏に駆けていく。
「海賊は狙った獲物は逃さないんだぞ……今この身を蒼き彗星に変えて、轟天GO!」
 ドリルを掲げた卵丸はその速度を攻撃力へ当て、スライムを強かに貫く。スライムはもっと雨を降らせようとでも言うのか、ぶるぶると震え始めた。
 咄嗟に大剣を前へかざしたアリーシャ。再びの水大放出から身を守り、ぬかるんだ足元に邪魔されぬよう大きく跳躍する。雷の如きひと突きがスライムの脳天から──スライムに脳があるかどうかは置いておいて──落ちた。
「そろそろ……か?」
 シラスが胡乱げに呟く。まだ大きいと言えば大きいが、既に一軒家並の規模ではない。加えて水を大放出したことにより萎んできている。
「タタみかけるよ!」
「おばさんも頑張っちゃうわ~」
 回復の隙を突いてレストも攻撃を放ち、アリーシャは大剣の重さをものともせずにヒットアンドアウェイでスライムに立ち向かっていく。後方からは修也の遠術が飛び、それより前から卵丸とゼンツィオが、そして前衛ではアリーシャとイグナート、シラス、フローリカがひたすらスライムを殴り続け。
「これで終わりです──ラ・ピュセル!」
 戦乙女の加護を纏いしアリーシャが、最後の一撃と大剣でスライムを両断する。一瞬動きを止めたスライムは、最期の足掻きと言わんばかりに震え始めて──。
「え?」
「あ、」
「皆、ハナれて!」
 ──などという言葉も空しく。

 まるで水風船が破裂するかのように、ウォータースライムははじけ飛んだ。



 勢いよくはじけたスライムの体液が四方八方へ飛び、交戦していたイレギュラーズたちはモロに被害を被る。
「まあ~、皆びしょ濡れね♪」
 くすくすと楽しそうに笑うレストだが、本当にびしょ濡れだし結構気持ち悪い。やばい。どうせ雨で濡れていると言ってしまえばそれまでなのだが。
 ゼンツィオは体についた水滴──スライムの体液だったものを舐めて目を瞬かせる。水だ。紛れもない、ただの水であった。
(まさか、本当に……)
 アリーシャは髪を鬱陶しそうにかき上げる。予想はしていたが望んではいない展開だ。
「雨は止みそうかな?」
「多少勢いが弱くなったんじゃないか」
 空を見上げる卵丸にフローリカが倣う。未だ降ってはいるものの、若干雲も薄くなったような。ゼンツィオはその様子をどこかホッとした様子で見ていた。
(急に日光が戻らなくて良かった)
 そんな事態になれば日陰を探し、誰かに匿ってもらわなければならないところだった。戦闘で受けた傷も痛いが、日光は日光で痛いのだ。
「でも、ホントに止むかな? マイヤにも話を聞いてみたいね」
「そうだね。同じことをまた繰り返されても大変だ」
 イグナートに頷くシラス。悪戯好きの元凶はまだ姿を見せていない。なら、とレストはにっこり微笑んだ。
「雨の楽し気なお歌で、町を飛び回るマイヤちゃんの気を引いてみようかしら~?」
「あ、じゃあ俺は遊んで興味を引いてみるよ。皆も水切りしない?」
 シラスの提案に水切り? とまず仲間たちが興味を持つ。遊び方を説明している間にも、レストは元スライムの大きな水たまりを歌いながら回った。

 窓に水滴 今日は雨の日 楽しみよ
 好きな雨具に 着替えた私 ワクワクね
 雨の街に出て 灰色のお散歩
 いつもとは違う 雰囲気ね?

 お気に入りの長靴がステップを踏み、波紋が水溜まりへ広がっていく。まるでステージのようだ。行きに差していた傘を開くと雨粒が布地を叩いて、拍手のようにも聞こえてくる。
「! 皆、何か来るんだぞっ!」
 シラスを筆頭に水切りで遊んでいた卵丸が不意にあらぬ方向を向く。そちらから見えたのは──シチュエーションによってはすわお化けかと言われかねない光。漂うというより全速力で飛んでくるそれは、イレギュラーズたちの姿に怯える様子がない。アリーシャは目を瞬かせると、持っていた小石をすっと下ろした。
 走り出そうとしたゼンツィオの脇を疾風が──いや、風の如きスピードでイグナートが走っていく。瞬間加速装置の力にさしもの光もぎょっとしたのか急ブレーキをかけて。
「今日のオレはこのイッシュンだけ! 速い!」
「っぴゃーーーー!?!?」
 なすすべなく、悪戯精霊はイグナートの手に捕らえられたのだった。

 イグナートの掌にちょこんと乗り、光を消した精霊は小さな女の子のようだった。ぷくぅと膨れっ面をしたマイヤにフローリカが目線を合わせる。
「そもそもマイヤ、お前はなんで雨がふり続けてほしいんだ?」
「イタズラをするってことは構ってほしいのかな?」
 続いたイグナートの言葉にマイヤは「悪戯?」と目を瞬かせる。その様子にイレギュラーズはあれ、と首を傾げた。
「悪戯、してたんだよな?」
「してないよ?」
「んん?」
 おかしい、話が噛み合わない。彼女の仕業ではないという事だろうか?
 その様子を見た修也がもしかして、と問いかける。
「雨が好きで降らせ続けてるのか?」
「うんっ! だって水溜まりに波紋ができるの、楽しいもの! それに雨は大事だって町の人も言っていたわ!」
 悪びれず笑顔を浮かべるマイヤ。イレギュラーズは何となく察した。
 この振り続ける雨も、これまでの『悪戯』だと思われてきた行為も──もしや、彼女なりの親切心だったのかもしれない。
「俺も休みの日に音を楽しみながら読書とかは好きなんだが……ずっと降っていると気が滅入ってきそうだな」
「このままだと、お前の相手をしてくれるやつはここにいなくなるしな」
「えっ」
 修也とフローリカの言葉に目を丸くするマイヤ。そうだろう? とフローリカは続ける。
 雨ばかり降り続く土地は住みづらい。ほどなくして人も動物も、そしてマイヤ以外の精霊も別の土地へ住み着いてしまうことだろう。
「そ、それは困るわ! 見てて、すぐ晴れるから!」
 ひょいと飛び立ったマイヤが空へ手を伸ばすと、束の間雨が強くなる。ゲリラ豪雨だ。
 しかしそれを過ぎれば雨雲も軽くなったのか──空から日光が差し始めた。
「う、うわぁ!?」
 隠して隠して、とゼンツィオが仲間たちの影に隠れる。一同はそれを横目に、マイヤを見て苦笑を浮かべた。彼女は悪戯好きでも何でもない、短絡的で──いや、直情的と言うべきか──猪突猛進な性格なのだろう。
 シラスはドヤ顔を浮かべるマイヤに見ろよ、と指差した。
「雨の後は虹が見えるんだぜ? 虹の下で水遊びなんて町の人も喜ぶよ。みんなマイヤに感謝するね!」
「本当! 素敵だわ!」
 きらきらと光る虹にマイヤが飛び跳ねる。イグナートはその様子に小さく笑みを漏らした。
「ねえ、マイヤ。人間の遊び相手ならローレットでも相手できるヒトがいるだろうし、妖精のトモダチなら妖精郷をツテに紹介できるよ。ずっと雨を降らせたいなら海洋の無人島なんてどうだろう?」
「まあ、まあ、素敵な提案! どれも迷っちゃうわね!」
 マイヤは楽し気に、そして真剣に迷い始める。雨も好きだし人も好き、関わる事が好きだけれど空回りしてしまう彼女。また同じ場所でずっと雨を降らせては嫌がられてしまうだろうけれど、そうでなければ──他にも色々やらかしそうだが──比較的安全な存在だろう。
 レストがいらっしゃいと両手を差し出すと、マイヤは『素敵な歌のお姉さん』と躊躇いなく近づいて行った。
「あのね、大好きな雨が嫌われちゃったら悲しいでしょう?
 でも世界には恵みの雨を心待ちにしている人が、沢山いるはずなの」
「たくさん? じゃあ、色々な所に行って雨を降らせることにするわ! それで、さっきの素敵な架け橋をかけるの!」
 楽しみだわ! とマイヤは笑って──やはり、善は急げと言わんばかりに飛び立っていく。
「またね、大きな人! 雨を見たら私を思い出して!」
 光を纏った彼女はあっという間にどこかへ飛び立って、見えなくなっていった。

 暫しして、季節外れのゲリラ豪雨と鮮やかな虹が各所で見られるようになったのだが、それはまた別の話である。

成否

成功

MVP

レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター

状態異常

ゼンツィオ(p3p005190)[重傷]
ポンコツ吸血鬼

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。

 MVPは楽しくマイヤを引き寄せた貴女へ。

 またのご縁をお待ちしています。

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