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シナリオ詳細

<百石物語>ネオ・コーガ隠密戦線

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●眠らない街、ネオ・コーガシティ
 瓦屋根の高層ビルが並び、絶えずネオンが辺りを照らす華やかなりし近未来都市ネオ・コーガシティ。
 不夜の都とまで称されるこの場所にも、光があれば影もある。

(ーー走れ。疾風の如く、魂が焦げ付く程に!)
 闇に紛れるように、屋根の上を一人の男が駆けている。手元は滑らかに印を結び、最期に腿を叩いた瞬間ーーぱっ、と足袋の裏へ鳥居の紋が燐光を帯びて現れた。
「おのれ風遁プログラムか! 曲者め……であえ、であえーーっ!!」
 遥か下の方で人通りに揉まれながら、岡っ引きがビーム十手を男へ向ける。放たれた光線をひらりと容易く避けながら、男は額あてを軽く押さえた。
「NAGATO、凧の用意を頼む」
『御意。発着まで残り2分17秒、合流地点の計測に入ります』
 ネオ・コーガシティの最南端には大河が流れている。そこまで来れば追手をまけるーーそう予測していた男は、南地区でひと際高い建物の屋上まで走り抜けた。
 飛び降りた直後、彼方より飛来した大凧型の飛行デバイスに身を預け、そのまま颯爽と行方をくらませようとしたのだがーー。
(……何奴!)
 射貫くような鋭い殺気に振り向けば、そこには煙管を咥えながらビームライフルを構える一人の人物。
「ごきげんよう、お師様。……そして、おさらばです!」
「ゴッドエル、貴様ぁあああーーーッツ!!」
 大凧の死角を突き、閃光が放たれる。空中で爆発が巻き起こり、ネオ・コーガの街並みを赤く照らし出した後、大凧は大河へと沈んでいったのだった。

●暗躍する影達
「もっちー、お見舞いに来たよ! ……って、思ってた以上にひどい怪我!」
 ネオ・コーガシティ地下区画。都の賑わいも届かない薄暗い部屋に今回の依頼人は隠遁していた。
 無精髭を生やした黒髪の中年男性が、体中に包帯を巻いて布団の上に寝ている。
 客人が来たと分かれば上半身を起こそうとするが、痛みがあるようで整った顔が微かに歪んだ。
「すまぬ、蒼矢殿、特異運命座標殿。はるばる遠方より助太刀に来てくださった皆様へ、何の持て成しも出来ずーー」
「僕達の事はいいから寝てなよ! あぁっ、包帯から血が滲んでる!」
「蒼矢殿は心配性でござるなぁ。依頼人として、最低限の説明はさせてくだされ。
 改めて、お初にお目にかかる。拙者の名は百地・サンダーユ。サイバネティクス・イガ流忍者の上忍だ。そして此方の額宛が拙者の相棒」
 示されたテーブルの上では額あてが置かれており、微かな電子音の後に彫り込まれた牙の紋様を光らせた。
『インテリジェント・デバイスのNAGATOと申します。平たく言えば、人工知能の付いた額あて……という表現が正しいでしょうか。以後お見知りおきを』

 軽い自己紹介を終えた後、サンダーユは今回の依頼について語り出す。
 彼らサイバネティクス・イガ流忍者はこの異世界の忍一族の末裔で、どこの勢力にも属さず、ひっそりと歴史の裏で暗躍し続けてきたのだという。
 生き延びたくば、里の掟は絶対だ。しかしある時、裏切り者が現れた。サンダーユの弟子、ゴッドエルという青年だ。
 弟子の不始末は師である己がつけなければならないと、サンダーユは彼を追ってこのネオ・コーガシティまでやって来たのだがーーご覧の通りの有様である。

「拙者はしばらく動けぬ。しかし、こうしている間にもゴッドエルはネオ・コーガシティでイシカワグループという怪しい組織を立ち上げて、その勢力を拡大していっている……。
 その勢いはすさまじく、もはや拙者だけであ奴の凶行は止められん。この怪我が治るまでに、奴らの情報を出来るだけ集めてはくれまいか?」

「任せてもっちー! 僕は役に立たないけど、特異運命座標は話した通り、皆すごい人達だから! 泥船に乗った気で任せてよ!」
「大船の間違いではないか? 蒼矢殿。それと……その、もっちーという呼び名はそろそろ止めて欲しいので御座るが……」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 今回は諜報活動と救援活動の依頼になります。

●目的
 下記のどちらかを満たせば成功です。
 1、なるべく隠密に、ネオ・コーガシティでイシカワグループの情報を収集する。
 2、百地・サンダーユの看護をする

●場所
 異世界にある近未来都市『ネオ・コーガシティ』
 瓦屋根の高層ビルが並び、絶えずネオンが辺りを照らす華やかな都市。
 お江戸の街に未来都市の雰囲気を足したような街で、住民は和装です。
 街のシンボルであるコーガ城の城下町でもあり、活気づいています。

●できる事
 1、潜入捜査
  ネオ・コーガシティの中でイシカワグループの情報を探ります。イシカワグループは色々な所にその勢力を伸ばしています。
  和服に着替えて街の住民から噂を聞き出すのは勿論、街の宿で執り行われている怪しい取引を天井裏から覗いてみたり、遊郭で遊ぶイシカワグループの幹部をもてなすフリをして情報を集めたり。
  色々な情報を探して未来都市を冒険しましょう!

 2、サンダーユの看護
  サンダーユは重傷を負っており、完治まで暫くかかるようです。幸いな事に地下区画には生活するための最低限の機能が備わっているので、料理を作ってあげたり、包帯を取り換えてあげるなど、色々なサポートをする事が可能です。
  彼やNAGATOから話を聞きたい時は、こちらの行動を選ぶ事をお勧めします。

●書式
 一行目に何をするかの番号(1、潜入捜査/2、サンダーユの看護)、
 二行目に同行者がいる場合は相手のIDもしくはグループタグを記載してください。
 三行目からはプレイングをお願い致します。

例)
 一行目:1
 二行目:【服部隠密隊】
 三行目:イシカワグループの息がかかった岡っ引きが、居酒屋に集まっているとか。
  剣客っぽい服に着替えて近くの席に座り、酒をあおりながら話を聞くよ!

●登場人物
 ゴッドエル以外の人物は、プレイングで記載すると登場する場合があります。

◇百地・サンダーユ(ももち さんだーゆ)
  サイバネティクス・イガ流忍者の上忍。30代前半くらいの無精髭を生やした黒髪の男性で、ござる口調の美丈夫。イガの里では結構えらい人らしい。妻を亡くしており、現在は未亡人。

◇NAGATO(ながと)
  額あてのインテリジェント・デバイス。美人秘書のようなキリッとした女性の声で話し、サンダーユのサポートをしている。身に着ければ潜入先に連れて行く事も可能。

◇石川・ゴッドエル(いしかわ ごっどえる)
  百地・サンダーユの元弟子。イシカワグループのトップだが、その素性は謎に包まれている。

◇神郷 蒼矢(しんごう あおや)
  持前のフランクさでサンダーユの信頼を得た境界案内人。
  ヘタレなので戦えない。でも街中に遊びに行きたいなーとか思っている。

◇神郷 赤斗(しんごう あかと)
  仕事人間な境界案内人。街中に潜入する時は剣客風の和装を纏う。一対一で斬り合う分には自己防衛できるが、多勢相手だと守ってやる必要があるかもしれない。

◇ロベリア=カーネイジ
  ご存じ弑逆的な境界案内人。今回の依頼を面倒だと思っているようだが、面白い提案があればついて来るかもしれない。

●その他
 こちらのシナリオは一章完結の予定です。オープニング一覧から消えるまでプレイングを受け付けます。

 それでは、よい旅を!

  • <百石物語>ネオ・コーガ隠密戦線完了
  • NM名芳董
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月30日 16時50分
  • 章数1章
  • 総採用数8人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家

 街の広場に人集りが出来ている。その中心では鬼灯と嫁殿が巧みな腹話術で観客を沸かせていた。
「さあさあ、お目にかけるは黒衣と美しき人形姫の織り成す世界! 御照覧あれ!」
『見れば虜になる事、間違いなしなのだわ!』
「ちょっと! こんなに目立っちゃっていいの?」
 客にもみくちゃにされながら、ビラ配りを終えた蒼矢が鬼灯の元に戻って来る。
「……む?忍者は隠密が仕事では無いのかと?」
「そうだよ」
「まさかこんな目立つことを忍がすると普通の輩は思うまいよ。それに、怪しい動きをしている奴なぞすぐにわかるさ。なにせ俺はーー忍集団『暦』の頭領なのだから」
『鬼灯くん、かっこいい!』
「嫁殿の方こそ、今宵はまた一段と愛らしい!」
 観客に祝福されながら、互いに惚気あい、仲睦まじい姿をこれでもかと見せつける2人。
(ラブラブすぎて僕が入る隙がないよぉ!)

 すっかり取り残されてしまい、気落ちしながら蒼矢はステージから離れていった。
「いいよ、僕だって独りでも情報収集くらいーー」
 と愚痴りながら彼が薄暗い路地に入り込んだ所で、キィン! ヒュカカッ!!と刃がぶつかり、風を切る音がする。
「ぐわっ!」
「えっ!?」
 声がした方へ慌てて振り向けば、倒れている忍装束の男と、それを取り押さえる鬼灯の姿。辺りに刺さったクナイや手裏剣が戦いの痕跡を物語っていた。
『大丈夫? 案内人さん』
「う、うん」
「まずは鼠を一匹。御役目、努めさせて頂こう」

成否

成功


第1章 第2節

長月・イナリ(p3p008096)
狐です

 少し前の依頼で、イナリはひとつ学んだ事がある。
 それはズバリ、本の知識を頼る事は有用であるという事だ。
「なるほど、この世界ではこんな感じの喋り方をすればいいのね。よし、郷に入っては郷に従え、ね……」
 読み終えた資料を閉じ、変化でフォックスモードに姿を変える。
 目指すは闇の談合が行われる宿の中。庭園の植え込みに隠れつつ、室内で行われているやり取りに狐の耳をピンと澄ます。
「山吹色の菓子で御座います」
「おお、石川屋、お主も悪よのぅ」
「お代官様程ではありません」
 いかにも悪そうな2人の男の笑い声が響く。
(ベタだけど情報、掴んだわ!)
 撤退しようと一歩うしろ足を下げた瞬間ーーぱきっ、と落ちていた小枝を踏んでしまうイナリ。
「なに奴ッ!?」
(見つかった!? 落ち着くのよ私、こういう時こそ本に習えばいいじゃない!)
 ガサ、と2人の前へ現れるイナリ。そしてペコリと目の前で礼儀正しくお辞儀した。
「ドーモ。アクダイカン=サン、イレギュラーニンジャのフォックス・アイです」
「アイエエエ!!」
「イレギュラーニンジャ!? ニンジャナンデ!?」
「イヤーッ!」
 ボフーン!! とフォックスファイヤーで爆発を巻き起こし、泡を食ってる男2人が増援を呼ぶ前に、走り抜けて夜闇に紛れる。
「失敗したわね、異文化交流」
 しかし収穫はあった。この世界において忍者は恐怖の対象という事だ。
 有益な情報を得られたと、彼女は宿を後にした。

成否

成功


第1章 第3節

寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛

 妓楼の表座敷に三味線の音が鳴り響く。
 身なりの裕福そうな侍の隣に静々とすり足で寄る美しい花魁は、たちまちその男を魅了した。
「寒桜でありんす。どうぞかわいがってくだしゃんせ」
 しなだれかかって愛想を振りまく寒桜——もとい睦月。しかし、すぐに2人の間を牽制するように、長髪美人の花魁が無言のままお酒を運んで割り込んでくる。
(もしかしてしーちゃん、嫉妬してくれてる?)
(違う、例の酒を持って来ただけだよ)
 アイコンタクトで互いに意思疎通しながら、2人は自白剤入りの酒と美貌を武器に、仕事の愚痴を聞くフリをしてイシカワグループの闇に迫る。規模は勿論、直近の取引から悪行に至るまで。
「ええっ、今夜密輸したマグロ・スシの取引があるんですか。大変です!」
 お偉方に調子を合わせて驚いて見せる睦月を眺め、史之は深いため息を吐く。思い出したのは数時間前のやり取り。

「えっ、俺も女装するの? マジで?」
「僕のそばにいてくれなきゃ護衛の意味がないじゃない」

(カンちゃんが我儘言いだしたら俺に拒否権はない……毎度のことだけど!)
「へへへ……寂しそうだねぇ、秋里ちゃん。オジサンがお喋りしてあげようか?」
 へべれけの男が史之の肩に腕を回し、和服の胸元へ手をさし込もうと動く。ブチ、と何かがキレる音がしてーー次の瞬間、男の身体が投げ飛ばされた。
「悪いけど、俺にそういう趣味はないよ」
「お……おと、こ?」
 かけられた声に衝撃を受けつつ、不埒を働いた男がガクリと気絶する。
「しーちゃん、他の侍は上手く酔い潰せたよ。取引現場に向かおう!」
「そう。見逃せない悪事があるんだね。行こうかカンちゃん。……嗚呼、でもその前に」
 すちゃ、と袖口からスマホを取り出す史之。
「カンちゃんにべたべた触りまくってたオッサンどもを柱に括り付けて通報しておこう」
「やっぱりしーちゃん、嫉妬してくれてたんだ!」
「いやべつに、嫉妬なんてしてないよ?」
 史之の苦しい言い訳も、睦月はもはや聞いてない。上機嫌で手を引きながら遊郭の廊下を駆り、取引現場へ走って向かう。

「——ところで、花魁のままなんだけど……さすがに着替えていい?」
「だーめ! 家に帰るまでが花魁です!」
「そんな『家に帰るまでが遠足です』みたいなトーンで言われてもね……」
 話ながら睦月が振り返る。すぐそこには、悩まし気に溜息をつく美人の姿。普段とはまた違う史之の魅力を間近に感じ、思わず頬が熱くなる。
(わあ、しーちゃん似合ってる……ドキドキする…)

ーー美人さんに、いいとこみせなきゃ!

「式符・毒蛇!」
「神気閃光!」
 取引現場に乱れ飛ぶ閃光、爆発。
 特に史之の目は必死だ。
(ひとりも逃がすものか、覚悟しろよーーこの花魁姿、カンちゃん以外の記憶に留めておくもんか!)
 かくして、マグロ・スシの裏取引は見事にご破算。イシカワグループの財力に大きな打撃を与えたそうな。

成否

成功


第1章 第4節

鬼怒川・辰巳(p3p008308)
ギャンブル禁止!

 拝啓、ローレットの皆様。お元気ですか?
 僕は今、血の池地獄にいます。

「根性が足りてねぇんだ、よッ!」
 胸倉を掴んできたギャングに、躊躇ゼロで辰巳がガツッ!! と頭突きを喰らわす。
 グラつかせた相手の顔面へすかさず追撃の拳を叩き込み、邪魔だと遠くへ突き飛ばした。
「ひぃっ!」
 ダウンしたギャングが屍のように目の前へ積み上げられ、退避中の蒼矢が悲鳴をあげる。
「小耳に挟んだんだけど、街ン中根城にしてるギャングチームの一つが最近急に勢いづき始めたらしくてさ。その理由がもっぱらイシカワがバックについたからじゃねえかって話」
 噂を語る辰巳の顔は、何だかとても嬉しそうだ。
「バチバチやってる対抗チームもいるらしいけど劣勢っぽいし、ちょっとテコいれついでに喧嘩に混ぜて貰おうかなってさ。
 木を隠すなら森の中、不良隠すなら喧嘩の中だ。目立たねえし恩も売れる……冴えてね?」
(冴えてるっていうか、辰巳が喧嘩に混ざりたいだけじゃ?)
 喉元まで出かかった言葉を飲み込む蒼矢。機嫌を損ね、置いてかれるのは勘弁だ。
「こそこそ動くのとか得意じゃねえんだよ。……おっ」
 新たな喧騒を見つけて近づくと、今度は殴り合いの中に忍術めいたものを見る。
「すっげ、生忍者とか初めて見たわ」
 それでビビるほど『バラ高』の頭は伊達じゃない。

「よーテメーら、やってんじゃん。俺も混ぜろよ」

 挨拶代わりの飛び膝蹴りが、新たな喧嘩の幕を開けるーー。

成否

成功


第1章 第5節

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚

「そこでイイ子にしてろよ人魚ちゃん」
 ガラス張りの檻にノリアを置いて、研究員達が部屋を出ていく。
(まずは潜入成功ですの!)
 彼女は今、イシカワグループの舞空忍術研究所に囚われていた。——いや。厳密に言えば、あえて捕まりに行ったのだ。監視カメラの位置を確認すると、物質中親和で檻をすり抜け、死角となるルートを探って静かに泳ぐ。敵の情報を知るには、敵の懐に入り込んで聞き耳を立てればいいという、なんとも大胆な作戦だ。
(はっ! 足音が近づいて来ますの!)
 慌てて壁へ隠れるノリア。その手前を研究員の2人組が気を緩ませて話している。
「空飛ぶ人魚を捕まえたってマジ?」
「あぁ。見つけた時は目を疑ったが、捕まえてみたら従順だし可愛いしでさ。おまけにあのつるんとした綺麗な尻尾! かーっ!醤油つけてツルッと踊り食いしてぇ!」
(見つかったら、私……実験の前に食べられてしまいそうですのー!?)
 さぁっと青ざめるノリアをよそに、研究員の会話は続く。
「それにしても、見回りの回数を増やせだなんて……上層部は何を警戒してんだが」
「これは噂だが……抜け忍のゴッドエル様を狙って、追手の忍がネオ・コーガに差し向けられたらしい。おかげでどこの拠点も大混乱だ」
 拠点。新しい単語が出てきてノリアは目をぱちくりさせる。しかも"どこも"という事は、複数あるのではないか?
 この情報、無事に持ち帰らなければ。そろりそろりと脱出路につく。

成否

成功


第1章 第6節

ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者

 スパァン! と肉を打つ音が地下区画に響く。
「情報を整理したい。まずはゴッドエルとやらについてだが、裏切り……いわゆる“抜け忍”というやつか?」
「左様。抜け忍には死。これもまた里の掟ーー」
 バキッ! ドカッ!
「派遣されたのはサンダーユだけなのか」
「ッ……、弟子の不始末をつけるのが師の務め。それにーー」
 ドゴッ! ゴスッ! ミシミシィ!
「くッ! が、はっ……!」
「すまんが、よく聞こえなかったな。もう一度……ん? どうした神郷。尋問現場でも見たような顔をして」
「それ以外の何に見えるって言うんだよ!?」
 様子を見ていた赤斗が耐え切れずに声をあげる。その間にもハロルドはサンダーユ相手に手刀を落とし、頬を叩き、オマケとばかりに腹へ食い込むほど強く掌を押し込んだ。流れるようにコンボを決め、床に倒れた所へ更なる追い打ちをかける。
「これは治療だ」
「あのな、ハロルド。お前さんはハンマーで殴られ馴れてるから、そういう催眠療法的なモンが効くのかもしれないが、普通の人間は痛いだけーー」
「おおっ! 腹まわりの怪我が治ったでござる!」
「嘘だろォ!?」
 聖輝——それはハロルドだからこそ編み出せた、浄化の光を掌から直接叩き込む"癒しの魔法"なのである。
「自分で言うのもなんだが、俺の治療は荒々しい。すまんが歯を食いしばれ」
 向けた笑みは悪鬼のソレ。新たに上がったサンダーユの悲鳴は、叩く音に再び掻き消されたのだった。

成否

成功


第1章 第7節

ニャムリ(p3p008365)
繋げる夢

「ニャムリ殿は充填のために隣に居るのはいいとして……何故、蒼矢殿も寝ているのでござるか?」
 地下区画に川の字に並べられた布団の中は人口密度が偏っていた。眠るニャムリを挟むように、寝間着姿のサンダーユと蒼矢が隣に眠っている。
「ニャムリのこの幸せそうな寝顔を見ながら、僕だけ起きてるってのは拷問だよ! 僕だって寝たい!」
 欲望に忠実な蒼矢を気に留める事もなく、ニャムリはマイペースに大あくび。
「ふぁあ……NAGATO、今まで蓄積された情報を…教えて欲しいな
 こういうのは機械の方が…色々、覚えてられるからね…すぅ……」
『承知。昔むかしある所に、サンダーユという忍がおりました。ある時、彼が里の近くを歩いているとーー』
 気をつかったのか、NAGATOが語る情報はどこか寝物語のようにアレンジが成されていた。充填の気持ちよさも相まって、早々に寝息を立てるサンダーユ。
「ふわぁ。……ねぇ、ニャムリ。僕まで眠くなってきたけど…頭の中、入ってきてる?」
「確かに……ちょっと寝てるけど。でも……睡眠ってね。生物が、情報を整理するための…時間なんだよ…」
 集まる情報になるほど、とニャムリは夢うつつに頷いた。エルゴッドにとって、サンダーユは師であり育ての親でもあるらしい。
「例え寝ぼけながらでも。ぼくは見聞きした事を忘れたりしないよ……今、蒼矢がぼくの頭を撫でようとしている事とかもね」
「だって……猫好きなんだもん…」

成否

成功


第1章 第8節

「お勤めご苦労でござった!」
 一仕事終えた特異運命座標を地下区画で迎え入れたサンダーユは何故か別れる前より身体中叩かれた痕でボロボロだったが、不思議と元気そうだった。大丈夫なのかと問われると、「よく寝たでござるからなぁ」等と腕を組んで頷く。
「何やら街の方では賑やかな事になっていた場所もあるそうだが、拙者の仲間だとは気づかれていないようでござるな。して、何か情報は得られたでござるか?」
 特異運命座標が口々に成果を報告する間、サンダーユは真面目な様子で話を聞いていた。全てが終わるとNAGATOと数度会話した後、姿勢を正して向き直る。
「どうやらイシカワグループは街のあちこちに何かの拠点を作っているようでござるな。……フム。少し探ってみるか。
 ゴッドエルは拙者の弟子であり、育てた子供でもあった。そこまで近しい者でさえあ奴の闇を見抜けなかったのだ。これからもまた、君達の力を頼る事があるだろう。
……その時は、どうかーー力を貸して欲しい」

 深々と頭を下げる彼の声は、いつになく真剣だ。
 再び呼び出される日は近いーー特異運命座標は胸に刻み、ネオ・コーガを後にしたのだった。

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