PandoraPartyProject

シナリオ詳細

境界怪奇譚 退紅館霊幻事件

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●帝都に広まるあの噂

 舞台は退紅(あらぞめ)色の屋根が映える西洋館。
 その噂を聞いたが最後、貴方はもう眠れないーー。

 夜ごとひとりでにメロディーを紡ぎ出すアコーディオンと蓄音機。
 窓を閉じ切った部屋には生ぬるい風が吹き、無人の廊下からは子供の笑い声と駆ける音が響き出す。

 地域の住民の声を聞き、様子を見に向かった憲兵達は皆、
 青ざめてくちゃくちゃの顔になりながら帰ってくる始末。そして口を揃えてこう言うのだ。

 あの館は沢山"いる"のだと。

●怪奇を全て吸い尽くせ
「ビックリ人間のバーゲンセールみたいな貴方がたでしたら、幽霊騒ぎは日常のうちでしょう?」
 集まった特異運命座標へ悪戯のような笑みを浮かべて『境界案内人』ロベリア=カーネイジが語るのは、その手に持つレトロな本の内情だった。

 時は浪漫溢れる大正の頃。日本とやらにほど近い異世界での物語。
 帝都に暮らす仲睦まじい発明家の夫婦。その2人が近々引っ越す予定の西洋館が、お化けの巣窟となっているらしいのだ。
 これを聞いた夫妻は研究を重ね、霊を閉じ込める摩訶不思議なカメラと、霊が見えるゴーグルを開発したのだがーー多勢に無勢。たった2人で挑んだ末に、あっさり追い返されてしまった。

 夫婦はいわば、このライブノベルの主人公。
 新たな一歩を踏み出せなければ、物語は進まない。

「ですから皆さんには、夫妻がこの西洋館ーー退紅館に無事住めるよう、退魔のお仕事をして欲しいの。
 嗚呼、いつものように神秘術で力任せに辺り一帯を吹き飛ばすなんて論外よ?
 歴史あるお屋敷ですもの、壊したものがうん万Gの値打ちがある……なんて事もあり得るのだから」
 そこで活躍するのが開発された例のゴーグルとカメラという訳だ。
 写真を撮るだけなら屋敷の物に触れず、霊を捕まえる事ができる。

「もしも物を壊して、それが恐ろしい値段だったら……私が借金を肩代わりしてもいいのだけれど、その時は」
 ニヤァ、とロベリアは嗤う。まるでこれが本来の目的だったと言わんばかりに。
「暫くの間、私の下僕になって戴こうかしら?」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 掃除機にするかカメラにするか迷いました。

●目的
 退紅館の除霊に参加する

●幽霊について
 幽霊の種類は様々です。夜ごと音楽に合わせて踊り続ける貴族令嬢の霊や、好奇心旺盛な子犬の霊。中にはスライムの霊やパンツ収集癖のある悪霊などの凶悪(?)な霊まで……!?
 とはいえ、彼らの悪戯は死人や怪我人が出ない程度のものだそうです。

●場所
 異世界の西洋屋敷『退紅館(あらぞめかん)』
 二階建てのレトロな館。
 居心地の良さからすっかり色んな幽霊のたまり場になってしまいました。
 玄関ホールから連なる廊下には沢山の扉があり、色々な部屋があります。

●捜索可能な部屋
 玄関ロビー、廊下、応接室、客室、寝室、お手洗い、キッチン、浴室、食堂、階段、祈祷室、地下倉庫、中庭……などなど。記載外の場所もプレイングに書けば採用される場合があります。

●発明品
 発明家夫妻からは以下の2つがセットで託されます。

『退魔カメラ』
  見た目は普通のスプリングカメラ。写真を撮ると、インスタントカメラのように吐き出し口からすぐ写真が出てきます。幽霊を写すと写真の中に封印出来るようです。
『霊視ゴーグル』
  スチームパンク風のゴーグル。ちょっと重い。暗視に加え、幽霊を見る事が出来る不思議なゴーグルです。

●できる事
1、幽霊退治
 捜索場所を決めて幽霊を探し出し、フィルムに収めて退治します。
 貸し与えられた道具の他に、ギフトや非戦スキル、持ち込んだアイテム等も使えるので、効率よく除霊していきましょう。
 捕まえたい霊は指定しても、お任せでも問題ありません。

2、幽霊にイタズラされる
 霊もただ黙って駆除される訳ではありません。貴方に悪戯して屋敷から追い返そうとしてきます。
 悪戯の内容は様々。貴方にとり憑いて秘密を大声でバラしたり、実体化して抱き着いてきたり……。
 どんな悪戯をされるかはプレイングで指定しても、お任せでも構いません。
 お任せの場合は悪戯の方向性を以下から選んでください。

 こわい、かわいい、へっち、きれい、おもしろい、芸人向け(激辛とか電流など)

●書式
 一行目に何をするかの番号(1:除霊退治/2:幽霊にイタズラされる)、
 二行目に同行者がいる場合は相手のIDもしくはグループタグを記載してください。
 三行目からはプレイングをお願い致します。

例)
 一行目:1
 二行目:【特攻野郎Pチーム】
 三行目:食堂で大食い幽霊達とフードファイト!
     勝利の瞬間をカメラにおさめて除霊しちゃうぜ!

●その他
 同行者には以下の案内人を選ぶ事もできます。彼等はゴーグルのみの貸し出しで、カメラは持っていません。

・神郷 蒼矢(しんごう あおや)
  臆病な境界案内人。勿論、お化けが大の苦手です。ロベリアに騙されて参加する事になりました。
・神郷 赤斗(しんごう あかと)
  仕事人間な境界案内人。お化けは怖くないようです。怖がりな特異運命座標ののよきパートナーになってくれる……はず?
・ロベリア=カーネイジ
  ご存じ弑逆的な境界案内人。霊を怖がるどころか話を合わせて貴方に悪戯する事も!?

 こちらのシナリオは一章完結の予定です。
 5/17(日)終日までプレイングを受け付けます。

 説明は以上です。それでは、よい旅路を!

  • 境界怪奇譚 退紅館霊幻事件完了
  • NM名芳董
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月18日 20時04分
  • 章数1章
  • 総採用数17人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

古木・文(p3p001262)
想心インク

 埃を被った表札に息を吹きかける。
「退紅館、と言うんだね。
 風情があって素敵な建物だなぁ。お芝居に出てきそうだ」

 月明りに照らされた洋館は煉瓦造の躯体の上に蔦が這い、緑や青の光が窓越しに明滅している。
 それは星明りを反射してか、はたまた幽霊の悪戯か。優幻な光景に誘われるがままロビーに足を踏み入れると、背後で軋む音が響く。

 ギィィイ、バタン。

 振り返れば、扉が独りでに閉じていた。
「普通のカメラを持って訪れたい場所だけど、
 今はご夫婦が安心して暮らせるように、がんばろう」

 何処かの部屋で蓄音機が鳴っているようだ。ざらついたメロディを背景に、文は薄暗い廊下を歩く。
(こういう洋館に住めたらと憧れるけれど、こうも広いと迷ってしまいそうだ。
 それに高い品が並んでいるかと思うと……幽霊とは別の意味で怖くなってきた)
 台所なら調度品は少ないだろうか? ふとそんな事を思い、扉を薄く開いて様子を伺う。
 幽霊とは会った事がない。一体どんな行動をする子たちなんだろう。期待を胸にゴーグルをかければーーいた。
 透けたエプロンが風に揺れる。輪郭は希薄だが、メイド服のようだ。小柄な少女がすすり泣きながらお皿を数えている。

『ひぃ、ふぅ、みぃ……ふえぇ、いちまい足りないですぅ!』

 彼女がわっ! と泣き出すと、食器棚から一斉に食器が飛び出して、部屋じゅうを浮遊しはじめた。
 探しやすくなったのに、少女は依然泣いたまま!

成否

成功


第1章 第2節

エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心

『鬼さんこっちらー!』
 悪戯っぽく舌を出し、子供の霊が逃げていく。その姿はどこか余裕げだ。
 捕まるのを恐れるどころか、ちびっ子達は鬼ごっこ気分でいる。
ーーそれもその筈。

「重い……」
 エルシアが行く先はどこも見当違い……というより、まっすぐ歩けていまい。
「こんなゴーグルを被っていたら、倒れてお屋敷のものを壊してしまわないようにするので精一杯です……幽霊は見えるのに、体が追いついてゆきません…!」
 嗚呼、悲しきかなフィジカル-2。筋力を捨て去った彼女に、試作品のゴーグルはあまりにも重すぎたのだ。
『今度はアタシが鬼やるー!』
 いつまでも捕まえる様子のないエルシアに痺れを切らしたのか、
 幽霊少女が近づいてーーふわっ、と彼女の身にとり憑いてくる。
「……っ!」
 異物感と共に血の気が引いて、青ざめながらエルシアは叫んだ。
「力を貸して!」

 呼び声に応えたのは、5人の契約精霊達。
「おいっ、姉貴から出てけ!」
 とプテレアーが背中に飛び蹴り、モレアーが
「そんなに乱暴にしちゃダメよ…こうやるのよ」
 と頭を叩く。目を回したエルシアに
「御免なさい…でもこれもエルのためだわ」
 とクラネイアーは囁いて、首を絞めるように抱きしめながら熱いヴェーゼを唇へ。
 無言で足蹴にしまくるアイゲイロスを真似するカリュアー。
「も、もう大丈ぶッ」
『俺達もねーちゃんと遊ぶ!』
 エルシアの制止の言葉は、群がるちびっ子達に埋もれていった。

成否

成功


第1章 第3節

アレクサンドラ・スターレット(p3p008233)
デザート・ワン・ステップ

 精巧な造りの燭台に、優美な模様の花瓶。
 ひと目見て高価だと分かる品が無人の館に残っているのは、幽霊騒ぎのせいかもしれない。
「価値ある美術品! いいですね」
 持前の機動力を活かし、興奮のままにシャッターを切りまくるアレクサンドラ。

「畑は違いますが、いち商人としては当然こういう品には興味がありますとも。
 とはいえ、ちょっと早まってしまったかも……。
 幽霊とか、苦手なんですよねえ……剣でもお金でも倒せないですし」
 現実を見るほど愛らしい馬耳が垂れていくが、もはや気にしてもしょうがないと考え直し、再び美術品をファインダーに収め始める。
「……しかし、カメラって初めて使いましたけど、面白いですねコレ!」
 旅先で風景を撮る用にひとつ何処かで取り寄せようか。そんな事を思いながら撮影した写真を何枚か見ていると……連写した中に、不気味に光るナニカを見つけた。

 それは一枚の自撮り写真。
 右手にカメラを持ち、なるべく自分が映るように高く掲げて撮った一枚だ。
 画角にひと苦労しただけあって、自分の顔は勿論、美しい半身ーーケンタウロスのような馬の半身も綺麗に写真へ納まっていた。
「……えっ」

 だから気づいてしまったのだ。自分に跨る幽霊に。

「ま、って……カメラで撮ったから、もう除霊出来たんですよね?
 全身綺麗に撮らないとダメ、とか……そんな事は……」

 震える手でゴーグルを着ける。そのままゆっくり、振り向いてーー。

成否

成功


第1章 第4節

クルシェンヌ・セーヌ(p3p000049)
魔女っ娘

「ゆーれいさんゆーれいさん、出てきて写真とろーよー」
 千里の道も一歩から。クルシェンヌは幽霊へ声をかけ、地道に撮影を続けていた。
『うおっ、激マフじゃん』
 声の方へ振り向くと、そこには陽キャな雰囲気の男の霊が立っていた。
「おにーさん一枚どう?」
『独りで写るとかマジお通夜じゃん。一緒なら考えてもいいぜ』
「本当に?」
 カメラには確か、タイマー機能が備わっていたはずだ。余裕を見て10秒後にシャッターを切る設定で、小走りに男の霊へ近寄るクルシェンヌ。
「一緒に同じポーズする? それとも……ひゃっ!?」
 ひんやりとした腕が、唐突に彼女を抱き寄せる。
『ほら、もっとこっち。カメラから見切れるべ?』
 あられもない声に気を良くした男は、馴れた手つきでクルシェンヌの身体へ指先を這わせはじめた。
 細腰を撫で、谷間をなぞり、顎を掴んで上を向かせ……。
「そ、そんなところ触っちゃダメだよぉ~」
 肩で息をしはじめた彼女の唇へ、男の顔が間近に迫る。触れかけたその瞬間。
『やべっ!』
 急に身体を撫でる手の感覚が消え、カシャ! とシャッターの音が部屋に響き渡った。カメラから吐き出された写真には、頬を染めるクルシェンヌの姿のみ。男の霊はカメラの力をどうやら知っていたようだ。それでも彼女はめげていない。

「幽霊さーん、でておいでー? うーん、困ったなぁ……」
 撮影に夢中で、気づけば道に迷っていたようだ。彼女の受難はまだ続く……。

成否

成功


第1章 第5節

月待 真那(p3p008312)
特異運命座標

「えへへー、かっこいいゴーグル! かっこいいカメラ!似合ってるかなぁ?」
「ウン、バッチリダヨ」
 真那に返事をする蒼矢は顔面蒼白だった。恐怖でガチガチに固まる彼の背中を真那は元気づけるようにバシバシ叩く。
「蒼矢君も怖がらんくていいよ、お化けくらい私に任せとき!」
(……って、意気揚々とやってきたけどなんなのこの館……なんかすっごい寒気がするし、急に怖くなってきたわ。。)
 玄関ロビーは何も居ないように見えるが、行ける所は多そうだ。蒼矢に威勢よくあんな事を言った手前、尻込みしてはいられない。

 ぱきっ。
「……!? 今なんか物音せぇへんかった?
 って、もう気絶しとる!?」
 振り向けば小枝を踏んで、カーペットの上でぐったりのびている蒼矢の姿。
「真那……今までありがとう。僕はもうダメだ……」
「館入ってまだ5分経っとらんやん! 大丈夫や蒼矢君、私が一緒におるからな!?」

(そうだ、今の僕は独りじゃない!)
 真那の励ましで蒼矢は気を持ち直し、真那を見つめーーそして、見た。
『おいたん、だいじょぶ?』
「〇×%◆△!?」
 真那の頭の上に乗っかって、愛らしい幼女の霊が不思議そうにこちらを見ている。
 声にならない悲鳴を上げて指さしながら、再び気絶する蒼矢。
「何や蒼矢君、そこに居るん?」
 真那が辺りを見回しても、頭に乗った幼女の霊には気づけない。
「あぁ幽霊ってどんな子なんやろ、頼むからあんまり脅かさんとってや……」

成否

成功


第1章 第6節

ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸

「初めまして赤斗。よろしく」
「こちらこそ、宜しくなァ」
 左手を伸ばしたランドウェラに合わせて、赤斗も左手で握手を交わす。
「なんだか君には親近感が湧くよ。どうしてだろうね?」
「そりゃ苦労性って事じゃないのか?」
 冗談めかしたやり取りの裏で互いが感じる魂の歪み。ひとつの身体にふたつの魂ーーそれは幽霊にも好機の的で、近づく霊をサクサクとフィルムに収めていく。
「なかなか素敵な場所だね」
「幽霊が出なけりゃな」
「俺は……知り合いに幽霊がいるからなんとも言えない」
 声のトーンが落ちた気がして、赤斗の眉間に皺が寄る。
「すまん。悪戯する悪霊な」
「気にしてないよ。……玄関ロビーの霊は大体撮れたかな」
 次なる標的を探すため、感情探知で探ろうか。ランドウェラが集中すると、屋敷中に反応が返ってくるが……一番近い距離のものはすぐ隣。
「君も楽しんでいるのか?」
「まぁな。ただ、いきなり幽霊が出てきたらと思うと正直怖ぇ」
「大丈夫だよ。平常心、平常心。なんとかなるって」
 ランドウェラに目を閉じたまま笑いかけられ、赤斗もつられて微笑む。しかし次の瞬間、彼の行動に表情が強張った。
「おい、何やってんだ!」
「写真を撮ると霊を閉じ込められる訳だが、これを破るとどうなるのかな。また死ぬのかな。出てしまうのかな」
ーーなあ、どっちだと思う?
 それは、今までの笑顔とは違う色を含む笑み。
 ゾク、と赤斗の背筋に言いようもない感覚が走った。

成否

成功


第1章 第7節

ボーン・リッチモンド(p3p007860)
嗤う陽気な骨
ヒナゲシ・リッチモンド(p3p008245)
嗤う陽気な殺戮デュラハン
シオン・リッチモンド(p3p008301)
嘲笑うリッチ

「カッカッカッ! アンデッド系モンスターの俺達が幽霊退治なんて皮肉が聞いてるな!」
「本来なら幽霊より優先的に除霊される面子ね」
「ロベリアさん、ズバッと言いますね……」
 アンデット然とした髑髏のボーンに死霊術師のシオン。おまけに付き添う聖女様は不吉を纏う黒染めの聖衣ときた。神父が見たら卒倒しそうなパーティーである。
「HAHAHA! ボク達だってアンデットなんだからもしかして撮られちゃったら除霊されちゃうかもよ?
 まあ、ボクは撮られる前に死を告げちゃうけどね! 何たってデュラハンですから!」
「母さん、ドヤるのはいいけど……まさか、セキトも屋敷に入れるつもり?」
 馬に跨ったまま玄関で立ち往生しているヒナゲシに、シオンが冷や汗混じりに問いかける。
「だって! デュラハン的には……こう…馬に乗ってないとカッコつかない訳で…」
 だめ? とロベリアに許しを請う彼女は、叱られた子猫のように幼気だ。
「いいんじゃないかしら。だってケンタウロスが半身だけで動き回っていたらホラーだもの。けれどーー」
「やったZE★ そうそう、片割れだけ動いてたら変d」
 ゴッ!
「おい、なんか凄い音しなかったか!?」
「お屋敷の扉は低いから、潜る度に頭を外さないとぶつかるのではなくて?」
 時すでに遅し。鈍い音と悶絶するヒナゲシはーー幸か不幸か幽霊達の呼び水になった。寄ってきた霊は無防備だ。撮ろうとシオンがカメラを向けるも、シャッターを切れずに下へと降ろす。
「どうしたの?」
「死霊術師として『カメラで除霊』って抵抗あるんです……リッチとしてもいい気分はしないし…」
 ヒナゲシが馬上から降りないように、シオンにも譲れないものがあるのだ。
 プライドで言えば、ボーンも死霊を総べる身として今回の依頼は思うところがある。
「……んで、実際の所どうなんだ、ロべリアちゃん。これ以外に穏便に除霊とか出来ないのか?」
 この狭い写真の世界に幽霊達を押し込めるのは、魔王として忍びない。
「心外だわ」
「いや悪い。ちょっと感傷に浸っちまっただけさ」
「そうじゃないの」
 俯きかけたボーンの頬へ細い指が絡む。グイ、と顔を向き合わせたロベリアは、頬を少し膨らませていた。
「貴方達、どの世界でも自分のやりたいようにやって来たじゃない。私がいるから遠慮してるの?」

 そうだ。助けを求める声があれば、いつだってがむしゃらに手を伸ばし続けて来た。
「私の力がどれだけ及ぶかわからないけど……やれる事を、やってみなきゃ」
 シオンの呼びかけに周囲の霊が応じて渦巻き、やがて開かれる輪廻への扉。
「彷徨える幽霊達よ……汝等が望むなら、我が力で輪廻の輪に戻そう…」
 ひとつ、またひとつ。彼女の優しさに応えるように、霊が扉を潜りはじめる。
「……できた!」
「よぉーし…そうと決まれば最後に楽しい想い出を作ってやろうか!」
 扉を恐れる霊もいた。還るのが怖いと怯える彼等へ、聞こえてくる不思議なメロディ。
『Etheric O』——青白い霊体のヴァイオリンでボーンが奏でた旋律は、死霊の心を奮い立たせる。
「君達! 俺の曲を聞いてから逝きな~!」

「良いなぁ……ダーリンにシオンも…ボクも霊魂疎通したいZE!
 いいもんー! ボクも幽霊ちゃん達に悪戯されるもん!」
 ヒナゲシには霊の言葉が分からない。代わりに伝えるだけなら叶うだろうかと、辺りのちびっこ霊に呼びかける。
「と言う訳で……さあ、来い! 子供の幽霊達、遊ぼうぜ!」
 わーっと歓声を上げるキッズ達。しかしーーザム! と殺意強めに一匹の霊が写真に撮られて、場が一気に凍り付く。
「あっ、へっちな目的なのは、問答無用で死を告げるZE? ……スカート捲りとか」
 殺戮デュラハン・ダークヒナゲシ降臨。残された霊は、我先にと輪廻の扉へ逃げ出した!

「さすが幽霊屋敷ね。数が多いわ……」
 あれから幾つの霊を救った事か。一息つこうと伸びをしたシオンは、盛り上がるリッチモンド夫妻を遠巻きに眺めるロベリアに気づく。
「シオン。両親がいるって、幸せ?」
「ロベリアさんには、いらっしゃらないんですか?」
「聖女はね、奇跡から生まれるの」
 冗談めかした声だった。そのまま温い笑みで、聖女は割れた花瓶を指さす。
「まさかそれ、うちの馬鹿親たちが……」
 次いで差し出された修繕費の請求書に、褐色の肌が青ざめた。
「シオン。両親がいるって、幸せ?」
「連帯責任は嫌ああぁぁーー!!」

成否

成功


第1章 第8節

ヒドゥン(p3p008417)
虚無の観測者

 白衣をひらめかせ、廊下を歩く旅人がひとり。
 時折辺りをきょろきょろと見回しては、辺りを伺う観測者。彼の名はヒドゥンといった。
「さてと」
 初めて訪れるライブノベルの世界に興味が尽きず、思考は鮮やかに流転する。
「このゴーグルは後ろから接近してくる霊にも対応しているのでしょうか?」

 そもそも、幽霊とは何者なのか。

 退紅館は己が目で見ても立派な屋敷だ。栄華を極めたようなこの場所に幽霊がごっそりいるとなると、元の主人はよっぽどの何かをやらかしたのだろうか。
「嗚呼、土地に憑いてるという線もありますね」
 尽きぬ興味と探求心。屋敷の謎を深堀りしようと彷徨って、迷い込んだのはこの屋敷の書庫だった。本棚が列を成し、革張りの本がきちんと並べられている。

 はてさて、こんな館に住む人間は、どのような本を読むのだろう?
 試しに一冊、手に取ろうとしてーーふわり。鼻孔を擽る甘い香りに意識を奪われる。
「これは……花の香でしょうか?」
 誘われるがままに足が動き、辿り着いたのは一冊の本だった。ゴーグルを外して思わず魅入る。
 表題の文字は掠れて読めない。試しに中身を覗いてみようと、ヒドゥンがページを一枚繰るとーー、
 ばさばさっ!!
「……ッ!」
 青白く光る蝶の群れが、翅音を立てて本の中から飛び出した!

 そして見開きに残ったのは、庭園の絵と花の残り香。
 他のページは何が眠っているのだろうと、夢見心地に読みふけるーー。

成否

成功


第1章 第9節

霧裂 魁真(p3p008124)
影殺し

 記憶が無い。
『お前ら全員、抱いてやるよ!』
 薬の高揚感でそんな言葉を口走った気がしたが、次に目覚めた時は、何故か全裸で自宅のベッドに転がっていたものだから。
「ヤマネ先生の時はお世話になりましたぁ……」
 ニタァと笑う魁真の心を推し量れず、赤斗は笑顔を引き攣らせる他なかった。

「カメラを使って幽霊を撃退するなんて、なんか小説みたいだね」
「お、おう」
 別の事が気になっている様子の赤斗に、魁真は悩まし気な溜息をつく。
「あの時は散々な目にあったけど、俺もプロだからね。うん。
 武 器 に し て や っ た わ」
(マジで何があった!?)
『フッ、面白ぇ男』
 突然の第三者の声に気づく頃には、辺りを取り囲む男の霊。警戒して身構える赤斗をよそに、魁真はギャラリーの前へ歩み出る。
「おい、魁真!」
『そんな男と遊んでないで、俺達と遊ぼうぜ』
「アンタら、俺が欲しいの?」
 ゴーグル越しの瞳に蠱惑的な光を宿し、手近な場所にいた男の頬へ手を伸ばす。甘えるように幽霊の元に擦り寄り、そしてーー、

 パシャシャシャッ!!

 群がる者を持前の素早さと連写機能で一気に仕留めた。
「俺、死にたくないからアンタが死んで……いや死んではいるのか」
「魁真」
「何、言いたいことでもあるの? 赤——」
 名を呼ぶ途中で景色が流転する。驚く間もなく、魁真は床に押し倒されていた。
 組み敷く赤斗は何かにとり憑かれているようで。魁真の受難はまだ続くーー。

成否

成功


第1章 第10節

ミミ・エンクィスト(p3p000656)
もふもふバイト長

 細かくガラスの欠片を継ぎ合せたルームランプに、荘厳な空気を纏う肖像画。
「やー、すんごいお屋敷ですねえ…」
 ゴーグルするのも忘れてキョロキョロしては、イイ感じのモノや場所を見つけてパシャッと一枚。
 普段招かれる機会もない豪華なお屋敷に、ミミは目を輝かせっぱなしだ。お化けに対する不安はあれど、それ以上に探索が楽しい。
「ぅわこれすっごい綺麗、この調度品とか装飾ヤバいですねー」
 しばらくウロウロしていると、突然きゅうぅとお腹が切ない音を響かせる。
「そいえばキッチンとかはどーなってるんでしょう? 食材とかふっつーにあったらちょっと面白いですねえ」
 つまみ食いは怒られますか? なんて好奇心とちょっぴりの空腹感を抱えては、パタパタㇳタトタと廊下を駆ける。
「ふう、走ったらなんか、余計にお腹が空いたのです」
 自前の物を先に食べよう。バスケットの中から全粉流のまあるいパンを取り出して、モフッとその場で齧りつく。
 モフモフトタトタトタ。
「……?」
 カクンとミミは首を傾げた。そういえばさっきから聞こえるトタトタっていう謎の音。
 よくよく聞けば足音にも思えるがーー何か数が増えてるような?
「ていっ!」
 振り向きざまにパシャリと試しに撮ってみれば、なんとびっくり。そこには何人もの子供の霊が!
「ミミに気づかれる事なくこんなに沢山……はっ!」
 そこでようやく彼女は気づくーー。
「ゴーグル、すっかり忘れてたのです!」

成否

成功


第1章 第11節

ニャムリ(p3p008365)
繋げる夢

 蒼矢という男は猫派だ。街中で見つけると、つい甘やかしてしまったりするものだがーー目の前でふわふわと浮いているこの猫ちゃんは、苦手なお化けにも似ているようで。
「むにゃ……ぼくはニャムリ…よろしくねぇ…」
「ひえぇ! 壁に頭がめり込んでるぅ!?」
 カクンと舟をこいだ折に、頭が壁をするんとすり抜ける。
「大丈夫……眠いけど、依頼はちゃんとやるから…ふぁあ」
「いや、すでに大丈ばないんだけど……頭打ったりしてないの?」
 問われてようやく、あぁと問いの意味を悟るニャムリ。
「物質透過だよぉ……みた事ない?」
「ない上に紛らわしいよぉ! お、お化けかと思ったじゃないか!」
 その名すら口にするのも憚れるとばかりに、言ってから口を押える蒼矢。

「んー、確かにお化けと同じ事ができるけど……ぼくはお化けじゃないから、大丈夫だよ…」
 その証拠にと、目の前で自撮りをパシャリ。
「これ。幽霊は写真に写るけどぉ……ぼくは写って、ないでしょ?」
「本当だ! なぁんだ、写ってないなら確かに幽霊じゃないよね。いやーびっくりしたーははは……あれ?」

 今撮りで写ったという事は、間近に霊が居た証拠。
「しかもニャムリが写ってないって、それはそれでヤバいじゃんかーー!!」
 ばたんきゅう。
「あ。気絶しちゃった。……まぁいっか……」
 相方が眠っている間は、ぼくだって眠てもいいよねぇ?
 大義名分を得たとばかりに、ニャムリはすぅっと眠りにおちた。

成否

成功


第1章 第12節

エステット=ロン=リリエンナ(p3p008270)
高邁のツバサ

「これほどに静かな宵、騒ぎ立てるのは無粋というものデス」
『いやはや、全く。連日のどんちゃん騒ぎに私も辟易していたもので! 私共のように優雅さを求めて屋敷に住み着いた者には困っているのですよ』
 豪奢な応接室の窓辺、卓上の上ではティーセットが並び、カップからはダージリンの高貴な香りが燻る。
「三千世界を渡り歩いた特異運命座標とて、社交の場での作法を知っているとは限りまセン」
『えぇ。だからこそ、貴方のような人をお待ちしておりましたーーエステット殿』
 モノクルをかけた紳士が手を差し出す。幽体との握手は空を掴むようだが、快く応じて笑みを向けた。
 エステットは考える。家主となる発明家夫婦の品位を落としてはならないと。こうして言葉を交わせる以上、死人に口無しとは言い難い。手荒く彼らを扱えば、その噂が広がって発明の妨げになる可能性もあり得るのだ。
「ワラワはご夫妻の使者として、お迎えに参りマシタ。ご覧くだサイ、このカメラを。叡智を詰め込むだけでなく……芸術品としても素晴らしくは御座いませんカ?」
 手元のカメラを観察して弄る。シャッターには黄金の薔薇の紋。ボディにはロイヤルパターンの模様が施され、随所に芸術面での拘りを感じる。
『私共も、その芸術の一枚として綺麗に残して戴きたいものですな』
「ーーお任せを」
 テーブルを隔てた先で居住まいを正す紳士。その姿をファインダーに収め、彼女は静かにシャッターを切った。

成否

成功


第1章 第13節

長谷部 朋子(p3p008321)
蛮族令嬢

「ここがあのゴーストのハウスだね!」
 屋敷の前で腕を組み、朋子は堂々と仁王立つ。
「なんだか困ってるって話を聞いたから駆けつけてみたけど、ゴーストかぁ……」

 ぽくぽくぽく……ちーん!

「なるほど、つまり謎解きだ!!」
 連想を元に、朋子の飛躍的な推理はまだ続く。ドビューン! と砂埃を上げて屋敷の中を爆走しながら、目指すは目的のアレがある部屋!
「ホラーハウスといえば謎解き! 謎解きといえばギミック! ギミックといえば……ピアノ!!
 ピアノを弾けばきっと何かの仕掛けが動きに違いないよ、だって異世界だもん!」

 悲しきかな、ツッコミ不在である。
 探索の間、気分はちょっとしたホラーゲーム気分。回復用のハーブと称して花瓶に飾られていた疑惑の花をモッシャア! と豪快食し、壁伝いに怪しさ満点の動きでカサカサと這う。
 そして見つけたグランドピアノ! ここまでは超次元推理通りである。
「お、はっけーん! それじゃあ早速……」
 ぴたり。ピアノの前に座った直後、それまでノンストップで動き続けていた朋子が動きを止めた。静寂が部屋を満たす。
「あれ? そういえば何を弾けばいいんだっけ……ま、いっか! 適当に弾いちゃえ!!」

 ドッジャーーン♪
 バッシャーーン!!
「ア゛っッッづ!!???」

 音楽家の幽霊の逆鱗に触れたようだ。鍵盤を適当に叩いた瞬間、頭上からバケツで降り注ぐ大量の辛味オイル! 朋子の悲鳴が屋敷全体に響き渡る。

成否

成功


第1章 第14節

ブーケ ガルニ(p3p002361)
兎身創痍
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔

「今の今まで幽霊達のお屋敷だったんだ。それをいきなり立ち退けなんて言われたら意趣返しもしたくなるよね。
 聞くところによれば害意は無いようだし、やりすぎた子達を封印して牽制すればいいか」
「あんまりゴンタクレならオシオキは必要やと思って俺がカメラ借りてきたけど、
 にゃはは、ルーくんゴーグルブカブカやん! 肩まで落ちとるし!」
 返事を変えそうとブーケの方に振り向くルフナ。その間にも目元のゴーグルがずり落ちる。
「これ、手で支えてないといけないの……って、ブーケ、僕たちめっちゃくちゃ囲まれてるんだけど?!」
 散策途中でたまたま入ってみた寝室は幽霊達の溜まり場だったようだ。じり、とルフナがベッドの方へ後ずさる。害意がないと聞いてはいても、警戒せずにはいられない。
 対してブーケはヒゲを揺らし、集まって来た霊の方へご機嫌な様子で歩み出る。
「ちょっ……ブーケ、危ないよ!」
「俺、構ってちゃんのウサちゃんやさかいー、放置プレイ以外のいじめは被虐心満たされて好きよお……?」
 ルフナの警告もブーケはどこ吹く風といった様子で、ふと思いつきでベッドの方へ寄ってくる。
「そういえば幽霊って、えっちなこと嫌うって言うね。試してみる?」
「はぁ?」
「誘惑とか……その気にさせるのは得意なんよね」
 まずい、と気づいた頃にはもう遅い。ブーケに飛びかかられて、ルフナはベッドへ押し倒された。頬を赤らめながら、相手を退けようと身動ぎする。
「なに場酔いしてるのさ! 言っとくけど、僕は君の2倍以上生きてるんだからな?!」
「効くようなら夫婦サンらにも教えてあげられるし……お子さんまだですか、なんてハラスメントやろか」
「それ以前に僕にハラスメントだって! くそ、体格差で押さえつけられるの嫌いって知ってるくせに。……カギは閉めてるんだろうね?」
 最期の一言だけ一段と声を落として囁くルフナ。勿論とブーケは頷いたが、その閉ざされた扉からは騒ぎを聞きつけ、幽霊がすり抜け集まってくる。
 いいぞもっとやれと焚きつけてくる霊だけでなく、中には今まさに始まろうとする行為に興味津々でカメラを持ち出す者まで出る始末。
「ああもう、オバケは集まるな、見せ物じゃない! 撮られるのはお前らの側だってば!」
 ぎゃあぎゃあと喚くルフナ。その間に胸元をはだけさせられ、カフェオレめいた甘い褐色の肌が零れる。
「ブーケ?」
「言うたやろ? 放置プレイは嫌やって」
 お化けばかり構う唇は、こうして塞いでしまおう。
 押さえつけられたまま唇を奪われ、カアァとルフナの頬が赤く染まる。抵抗も次第に薄れ、くぐもった声があがると、ようやくブーケはキスを止めた。
「やーっとこっち見た。優しゅうしてあげるからね」
ーー次は何を見せつけてやろか?
 艶を帯びたブーケの声が、ルフナの耳元へ囁かれる。
 ゴクリ。荒い息を整える事も出来ず、ギャラリーの視線を浴びながら、ルフナは喉を飲み込んだ。

成否

成功


第1章 第15節

「助かりました! 皆さんのおかげで幽霊を退治できて、私達の発明も有効であると実証された。本当に何とお礼を言ったらいいか!」
 礼を告げる発明家夫婦に、ロベリアが一冊のアルバムを取り出して手渡す。
「お役に立てて光栄ですわ。こちらが退治し終えた幽霊達のお写真。悲し気な者もおりますが……神の慈悲を乞い、悔い改める時間を持てるのであれば、これも愛の成せる試練と言えましょう」
 受け取ったアルバムからは、しくしくとすすり泣く声も聞こえる。夫婦は互いに顔を見合わせると、アルバムをめくり幽霊達の様子を見た。

「最初は私どもも躍起になっておりましたが……害意がない幽霊も居るのですよね。館を訪れた後、気がかりだと私どもに伝える特異運命座標が何人かおりまして」
「まぁ! なんと慈悲深い。それではどうなされるおつもりですか?」
 クスクス、悪戯っぽくロベリアが笑う。

「あなた、仲良く出来そうな子は写真から出してあげましょう」
「そうだね、おまえ。私達は子供がいないが……彼らと共に暮らす事が出来れば、今より明るい家庭になるかもしれない」
 そう気づかせてくれたのは、特異運命座標たちに他ならない。

 仲介者のロベリアに改めて2人が礼を言おうとアルバムから顔を上げると、
 彼女は忽然と姿を消していた。それはまるで、突然消えては現れる幽霊のようだった。

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