シナリオ詳細
ポエポエポエミー
オープニング
●ポエム世界『ポエポエポエミー』
ポエムでできた世界、それがポエポエポエミー。ポエポエポエミーの住人達はみんなポエムが大好き。ポエムを詠むことでポエミーが生まれ、ポエミーを消費することで生活が成り立っている。
だが、このポエミーが不足する事態に陥っているのだ。二つの問題がある。一つはポエミーを使った便利な生活に慣れてしまったが故の停滞感。もう一つはポエムを詠むことを秘匿しようとする厨二ポエマーの存在だ。
ポエミーを使った科学技術の進歩は現代日本という世界とほぼ同等だ。技術の進化は人々をポエムだけではないゲームやアウトドアなどの趣味へと走らせてしまった。
もう一つの要因『厨二ポエマー』は、中学生のような若者が今までひっそりと秘密ノートに書き連ねていたポエムがポエミーになるのが嫌だという理由で、ノートにすら書かず、声にすら出さず、脳内だけでポエムをすることがブームになってしまっているのだ。それではポエミーにはならない。大人がポエミーになっても、ポエムが暴かれることはないんだよ、といってもだ。
そこで、今年はポエムコンテストを大々的に開き、ポエムの良さを再認識してもらおうとしているのだ。勿論ポエミーの枯渇という問題もあるのだが。
問題は旧来のポエマーではなく、みんなにアピールできる新たなポエマーが求められていることだ。
役員は只管に叫んだ。
「新たなポエマー求む」、と。
●どんなポエムでもウェルカム
境界図書館をふらついていた貴方は『アルバイト募集』の広告に目がいった。なんだろうと思って近づいてみれば、新しい詩を詠めという。そんなの昔はやってたこともあったけど、今更気恥ずかしいなと思って、去ろうとした貴方の腕を掴むものがいた。カストルだ。
「よく、そのチラシに目をつけてくれたね! ありがとう!」
カストルに逃す気はないらしく、腕に入る力はなかなかのものだ。しかして、いつ鍛えたんだ、カストル?
「実はね、ポエポエポエミーという世界でポエムが不足しているらしいんだ。ポエポエポエミーって言ったとき恥ずかしそうだったとか言うなー!」
いや、だって、頬が赤いよ、カストル?
「とにかく新しいポエムが欲しいんだって! ラップでも、和歌でも、俳句でも、自由律でも、なんでもいいからさ、お願いだ。頼むよ」
困った調子のカストルを見ていると、こっちまで困った気分になってくるから問題だ。
貴方はポエムを詠んでもいいし、詠まなくてもいい。それは自由だ。
只、ポエムを詠むだけで救われる世界が一つはあって、ポエムを詠むだけで貴方はヒーローになれるということだけでは事実だ。
- ポエポエポエミー完了
- NM名綴
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年05月28日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
ポエポエポエミーのポエム大会の様子は熱気でムンムンしていた。静かにポエムをしたためる者、芸術は爆発だーと言わんばかりにポエムをシャウトしている者、音楽とポエムをあわせている者、ポエムと一つ言ってもここまで人によって違うのかという思いを新たにするくらい、自由だった。
「ポエポエポエミー! 今日は実況のポエミーがお送りするよ! 今大会の注目はなんといってもやっぱり異世界人の詠むポエムだよねー! 異世界にもポエムはあるのかなー? 気になる4人を直撃だよー!」
丸っこい体をしたポエミー(着ぐるみ)はポンポンポーンと跳ねながら、詩作中のイレギュラーズ4人の元にやってくる。
スケッチブックを抱えて、夢見る乙女のような目をしているのは、虎の精霊であるソアだ。
「はぁ〜……」
「ため息なんてついて、どうしたのかな? ポエミーが悩みを聞いちゃうよ!」
「っわあああ! ボクのスケッチブック見てないよね?!」
「ポエミーは覗きなんてしないよー! ポエミーはポエムの精霊だよ! はじめまして!」
「はじめまして! 虎の精霊だよ。精霊同士仲良くしようね」
ソアから手を差し伸べられたポエミーの中の人は(……本物の精霊だー! コスプレじゃないんだー!)と動揺していたが、その動揺は着ぐるみで隠す。
「この世界はどうかな?」
ソアは相好を崩す。うっとりした顔になって、縞々の尻尾が揺れる。
「はぁ……とっても素敵な世界! ポエムってとっても人間的だもんね。ボクも憧れちゃう」
「わぁ、それは凄く嬉しいよ!」
「いっぱい書いてみたの。詩だなんて言えない位に拙いのだけれど。大好きなあの人のことや憧れのお姉さまのこと。でもやってみて分かったよ。この世界の若い人たちがノートにすら書かずに頭の中に留めちゃうの」
「どうして?」
「だって、このポエムは絶対に秘密だもん。とても他の人には見せられないや。もしも本人たちに読まれたりしたらきっとボクはもう生きていけない。ショック過ぎてうん百年って遡って虎にもどっちゃうかも。だからこのスケッチブックは内緒、内緒」
「でも、大会だから1作だけでいいから発表して欲しいな!」
「そうだね。少しだけボクも詠みあげてみなくちゃね」
「ありがとう!」
長い黄金の髪に花の髪飾りをつけたエレシア・クオンタータは悩んでいた。
「はじめましてー、ポエミーだよ!」
突然声をかけられたことに驚いたエレシアだったが、可愛らしいポエミーの姿に悩みも一瞬紛らわされ、頬を緩める。
「詩というのは、なかなか難しいものですね」
「というとー?」
「長い間、自然と親しんで育った私には、きっと森に聳える木々の美しさも、木漏れ日に咲く花の力強さも、万の言葉で表現できるでしょう。でも……その言葉の中から最も美しいものを探して詩を作るのは、大変な仕事なのです」
「難しいよね」
契約精霊達もあの言葉がいい、いやこの言葉がいいと喧々諤々。
カリュアーはドレスを広げる。
(『あたたかな陽のにおい』って言葉を入れたいの)
(だったら対比のために『冷たい嵐』も必要そうさね)
プテレアーはさらっと断言する。それを聞いていたクラネイアーは恋する乙女故に、ロマンチックを想像する。
(太陽と嵐……きっと恋に落ちた二人が試練を乗り越えるのね……)
モレアーは恋する乙女をアイゲイロスに重ねる。
(アイちゃん、詩の中に『黒ポプラ』が入るように考えてあげるわ)
(あー? なんでそこでアタシが出てくんのさー)
アイゲイロスは気怠げだ。その様子を見ていたエレシアは頭を抱える。
(……いつも通り、みんな好き勝手な事言ってて纏まりませんね)
「どうしたのかなー? 頭抱えちゃって」
「あ、あー、なんでもないんです。悩みが深まってしまって……」
「難しく考えず自分の思った通りに書くのが一番だよ」
「ありがとうございます」
「またね」
パステルカラーのユニコーンに見えるネア・ア・メアもまた困惑していた。
「何か困ってるの?」
「ぽえぽえぽえみー。ネア、よく分からんですけど、そもそもポエムってなんでしょうね? 韻を踏む必要がある? 語呂は大事?」
「うーん、韻を踏んだり語呂がいいと気持ちいいけど、ポエムはもっと自由だよ」
「テクニックや文法なんて、ネアわかりかねます……ので。筆の随に。思ったこと、考えたことを書き連ねていきます」
「うん、応援してる!」
ボブの学生服を着て、一見普通の少女である長谷部 朋子は頭を抱えて唸っていた。
「はじめまして、ポエミーだよ!」
「ちょっと、あたし、ポエムなんて分からないんだけど! 古文の成績なんて1なんだから!」
「ポエミーに言われても困るよ! ポエムは古文だけじゃないし頑張ってみようよ!」
「あたしに分かるのは、心に訴えかけるものが何かぐらいだよ!」
「それがポエムだよ!」
「じゃあ、あたしはそれを一夜限りの炎になって魂を謳い上げてやる!」
「いえーい! 期待しているよ!」
会場は熱気に包まれていた。初の異世界人のポエムが聞けるチャンスに人々は興味津々だった。
まずは朋子の番だ。暗い舞台の上で声だけがする。
「ポエポエポエミー!」
「「ポエポエポエミー!」」
「ポエムが枯れて心が乾くテメーらのために、ネアンデルタール・Lady・TOMOKOがクールなビートを届けにきたZE! それじゃあ聞いてくれ……『ネアンデルタール・ビート』!!」
スポットライトが当る。早いビートを刻むドラム、ギターリストは競い合うように相棒を掻き鳴らす。熱いロックが流れる中、下からスモークと共に、やけに存在感のある大きなサングラスを掛けた朋子が登場する。TOMOKOコールで会場が沸く。マイクサイズになった神器ネアンデルタールを小指を立てて持つと、朋子がロックに合わせてシャウトする。
YO! YO!
オレは遠くから流れてきた旅人(ウォーカー)!
悪い奴らぶちのめす戦士(ウォーリア)!
叩き出すぜBIGな戦果! 叩きのめすぜPIGな悪党!
スカっと爽快場外ホームラン! ガツンと退場強制ゴーホーム!
朋子は間奏の間に肩を軸にして体を回転させるウィンドミルから、舞台の上の紐にぶら下がって飛び移るのを繰り返してから、ドラミングで決める。それから、またネアンデルタールを持ち、一回転させてから謳い出す。
華麗にキメるさプリミティブなBEAT!(OMG!)
熱く燃え上がれよセンシティブなHEAT!(Oh,yes……)
そうさオレは戦士ネアンデルタール!(YEAH!)
「「FOO! ネアンデルタールSOULMATE!(YEAR!)」」
会場は熱狂の渦に飲み込まれた。これが新しい伝説の始まりだった。
次はソアの番だ。スケッチブックいっぱいの詩の中から、これなら公開してもいいかなと思えた詩を謳いあげる。
あこがれ
まるで花のよう
泥の中でも水を吸って根を張って
期待に膨らんだつぼみをつける
やがて枯れて泥に戻っても
繰り返し花を咲かせる
ボクの中で何度でも
それは瑞々しい詩だった。聞いた人々は初心に帰った気持ちになった。本来ポエムとは素直な気持ちを書くものであった、と。
次はネアの番だ。緊張した様子のネアの目に入るのは眼鏡をかけた人々。大好きな眼鏡っ子を見て少し元気がでたネアは詩を読み上げる。
手術台の上でミシンとこうもり傘が出逢えばそれは美しい、とどなたかが言っていましたがネアは横断歩道の上のディレクターズチェアが風に吹かれて揺らぐ姿に親の愛を感じます。
同時に毛布にくるまれた卓上カレンダーのエンジンが震え寒いので子羊は南を目指し遥かな麦茶やひと目でわかるほどに膨らんだお餅がしたたかに私を打ちのめすので図書館はまぼろしである。 新鮮な海賊はだんだんと黒ずんでゆき青二才のラクダが信号待ちをしている間にもニャアオ。にじり寄る。芥子菜のラロッシュポゼを弓矢に番えて民間業者にひるむんではない、進むのです。そうしてネアは目覚めると大宇宙に沈む、眠る、揺蕩う、浮かぶ、その名前を思い出せなくて、もう一度だけサボテンを食べて、その痩せこけたカラスを撫でてやりたかったのに今夜のご主人様は病気です。ニャアオ。熊蜂がうるさいですね。アルミニュームの皿に乗せられて水銀を垂らされたお前にネアは声をかけてやりましょうか、それとも蛸のように、その400ばかりある吸盤のハレムでそっと抱きとめてあげて欲しい。
それは革新的な詩だった。一般的な句読点の使い方すら無視して、まるで狂気へと誘うようだ。まるで理解できないのに、何かを感じてしまう。人々はその新しさに耳を疑った。それは、新しい形式の詩作への原動力となった。
最後はエルシアだ。決意を込めた目で詩を読み上げる。
私は
ここに
おります
たった3行の詩に会場はざわめく。しかし、この3行の詩から感じる力強さはなんであろう。自らの存在の主張は、自らの存在が決して儚く脆いものではないことを主張しているようにとれる。
エルシアが再び口を開く。会場はシーンとして耳を澄ます。
「この詩は、遠い大切な誰かに寄り添う言葉かもしれませんし、自分を認めてくれない相手への抵抗であるのかもしれません。兎に角、巨大な命運や悪意に対し、それらと決別すると宣言する詩なんです……。自分自身に力があると信じて肯定する、そんな意志の表れなんです。詩が力になるこの世界にて、何よりも強い力を得られるような詩――」
(――20年程前より昔の記憶のない、拾われ子の私。特異運命座標として召喚されながらも、戦う術など知らない私。そんな私にも胸を張って生きてゆく価値があるのだと、私自身、この詩を口に出す事で信じたいんです……)
その説明に人々は3行の詩に奥深さと無限の可能性を感じた。それは、人々を力づけた。
こうして、大好評のうちに伝説の異世界人ポエム大会は幕を閉じたのだった。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
はじめましての方もそうでないかたもどうぞご贔屓に。綴です。
ポエポエポエミーってカストルに言わせて頬を染めたいだけでオープニングを書きました。妙に語呂がいいので、何度も声に出したくなりません? いいんですよ、暗い部屋の中、ポエポエポエミーって一人で呟いてみても。僕もやったので。
●世界観『ポエポエポエミー』
ポエムを詠むことで発生するポエミーが元で動く近代日本と似た世界。ポエミー不足に悩まされています。
●目標:ポエムを詠むこと
だけです。何でもいいです。著作権さえ貴方の手の内にあれば。
形もラップ形式から古典的なモノまで何でもOK。
貴方がポエムだと思えばポエムなのです。
●サンプルプレイング
ポエムって言われると、ちょっとこっぱずかしいけど、ポエムで世界を救えるなら安いもんさ
遊ぶのもいいけど自分達の死活問題なんだからポエム詠めよなー
え、もう、順番かよっ!
桜散る世界はこの世のものともあの世のものとも知れぬ
舞い散る花弁がひらりひらりとゆく道は何処であろうか
知るものなぞいない世界へと貴方は行ってしまうのだろうか
これぐらいでいいだろっ!
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