PandoraPartyProject

シナリオ詳細

襲撃!メカ・ドラゴン

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●商人からの依頼
 それは、ぽかぽか暖かい春のある日に起こった。

「イレギュラーズの皆さま、お疲れ様です。今回はワタクシのお願いを聞いてくださってホント感謝しきりです」
 依頼を受けたイレギュラーズが着いたのはソーナ村の外れ。
 そこには依頼主である派手な出で立ちの女性が居た。まだ二十代初めだろうか、どこか可愛らしいピエロのような娘だ。
「流しの商人リーナ・シーナと申します。以後よろしくご贔屓に」
 そこは街道から離れた辺鄙な村の、さらに外れであった。
 辺り一面、広大な畑が広がっており、収穫時期を迎えた新鮮なお野菜たちが緑の葉っぱに柔らかな陽光を弾いてキラキラと輝いている。
 それから、リーナの後ろには二人の初老の男性が立っていた。
 二人とも日に良く焼けほどよく筋肉のついた頑強そうな男である。
「えー、こちらご近所村同士、ソーナ村の村長さんとアレナ村の村長さんです」
 ……しかし、イレギュラーズの面々が気になったのはリーナでもふたりの村長でも、美味しそうな春野菜の畑でも無かった。
「それから」
 リーナが指を揃えた掌を背後のソレへ向けた。
「こちらが、アレナ村のメカ・ドラゴンさんです」

 ──ででででーん。
『GAOOOOOO!』

 全長は横になった大人五人分ほど。
 幅は横になった大人一人分ほど。
 高さは大人が四人分ほど(うち、一人分は図太い尻尾である)
 象のように太い手足で四つん這いになったそれは、太陽光にギラギラと輝く鉄板を貼って作ったドラゴンであった。

 一部の世界出身のイレギュラーズは非常に惹かれるかもしれない、そんな感じの鉄板打ち付けたようなシルバーでメカメカしいデザインであった。
「えー、実はこのソーナ村とアレナ村は非常に険悪な状況になっており、アレナ村の方々がメカ・ドラゴンをこさえて襲撃してこられました。
 しかし、ソーナ村は対抗する手段がありません。
 そこでワタクシに武装の発注が来たのですが、流石にメカ・ドラゴンは用意できませんでした。
 だったら、それに匹敵する戦力を用意しよう! となり──あなたたちに依頼したのです」
 メカ・ドラゴンは「そうだ」というように咆哮を上げた。
「あと、メカ・ドラゴンの中にはアレナ村の屈強な村民六名が入っております。
 平和的に力で解決したいのでできれば殺害するような行為、及び、問答無用で行動するような行為はご遠慮ください。
 力で、力のぶつかり合いで解決をお願いします!
 あと、場合が場合なのでソーナ村代表のあなた方が戦闘中野菜を踏むの許可しますが、できれば、ドラゴンによる畑の被害を最小限に食い止めてください」
 すうっと息を吸い込むとリーナは叫んだ。
「勇者様方、お願い、村の平和を守って! あなたたちだけがソーナ村の希望なの!!
 ……てなわけで、宜しくお願いいたしまっす」

GMコメント

●目的
メカ・ドラゴンを行動不能にして畑を守れ!
できるだけ野菜の被害を少なめな状態で!

●ステージ:ソーナ村外の広大な畑(野菜は全て収穫時期)
遠巻きにソーレ村、アレナ村の村民が見守っている
それより少し近い位置で

●メカ・ドラゴン
現在、畑の真ん中に立っている
柱のような手足と横に薙ぎ払う尻尾で畑を滅茶苦茶にしようとする
PCへ攻撃は反撃以外はあまりしない(しないわけではない)
攻撃対象部位:右手,右足,左手,左足,尻尾,胴体
中に村人が入っており、右チーム、左チームに別れて動かしている
ある程度のダメージで壊れる
・胴体を撃破しても手足は「右手・右足/左手・左足/尻尾(右左から余った村人操作)」に別れて動く(被害拡大)
※構造上、同じサイドの手と足は同時に動かせない
※尻尾は右左のチームが協力して動かす(その間担当手足は動かせない)
※イレギュラーズが手もしくは足・尻尾のどれかを押さえるには四人必要
※強力過ぎる攻撃は中の村人を激しく傷つけるのでやめてください(かすり傷OK)


──PC情報ここまで/以下、PL情報
実は村祭りの一環であり、村人はドラゴン戦を手に汗握って観戦しており、
アレナ村民はドラゴン、ソーナ村民はPCを必死に応援する
討伐の後は採れたての春野菜を使った料理で宴会(地酒有)
村人の少しの傷はリーナが治療

・休憩所(対策本部)
戦闘が始まってからリーナが用意した観戦席
テーブルと椅子、ふたりの村長とリーナが座って観戦している
ドラゴンが炎を吹く※と巻き添えで炎上し、場合によって村長の髪や服が犠牲になる
※手足が二つ以上行動不能になった時、暴走して一度だけ大量に炎を吹く
 炎は攻撃力は低いがPL、及び、少量の根菜、休憩所を攻撃



初めまして、宜しくお願い致します。
春の気持ちよい青空の下でメカ・ドラゴンとプロレスしましょう!
手足の連動、尻尾の動きに気をつけてくださいね。

  • 襲撃!メカ・ドラゴン完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年04月14日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
ルミ・アルフォード(p3p000212)
ルミナリアの姫
ナハイベル・バーンスタイン(p3p000654)
佐山・勇司(p3p001514)
赤の憧憬
クィニー・ザルファー(p3p001779)
QZ
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
那須 与一(p3p003103)
紫苑忠狼
シラス(p3p004421)
超える者

リプレイ


●アーユーレディ?
青空の下、だだっ広い畑のど真ん中でメカドラゴンの装甲は陽光を弾いて輝いた。
「メカドラゴン……これって、村のいさかいで出すようなものなのでござろうか……」
 小柄な身体で鎮座するソレを呆然と見上げる那須 与一(p3p003103)。
「よくもまぁ、あんなモノを拵えたものだ。蹴り甲斐がありそうじゃないか」
 そう評した『千法万狩雪宗』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)の後ろで、自身を旅に誘った数々の冒険譚を思い出して『叡智の捕食者』ドラマ・ゲツク(p3p000172)は顔を輝かせていた。
「まぁ、まぁ! これまた随分と大きな絡繰り仕掛けですね! モチーフは……ドラゴン! 御伽噺の山場には欠かせない素敵な存在です。ここは一つ、竜退治と参りましょう!」
 『誰ガ為』佐山・勇司(p3p001514)もグッと拳を握りしめた。
「村人だけでメカ・ドラゴンを作るとかスゲーな。しかも人手が居るとはいえ、動く! ──正直心惹かれるモンがあるが今回は敵同士だ」
 仕方ない、アレは一部の趣向を持つ者の胸を騒がすものがある。
 彼らのようにさして興奮を覚えるわけでもない『pick-pocket』シラス(p3p004421)が商人リーナに確認する。
「要するにあのハリボテと気持ちよく戦ってやればいいわけね」
「はい、ヨロシク了解お願い致します~」
 不思議そうにナハイベル・バーンスタイン(p3p000654)が重ねて問う。
「え~と……つまり、畑の野菜を守る為にあのドラゴンさん? と、戦えば良いのですか?
 あら? なんか村人の皆さんがどこか楽しそうに見えますけど……はて?」
「イレギュラーズさんたちを見て興奮してるんじゃないんですかねー? 気にしないでくださーい」
「これは……」
 サックリ流そうとするリーナと遠巻きに見学する村人、それからきちんと拵えられた「休憩所」を見比べて『ルミナリアの姫』ルミ・アルフォード(p3p000212)が困惑の色を浮かべた。
「まー、やるからには全力でね! 私の全力ってのは、要するに全力で守るってこと。今日は畑の野菜を守る方向に頑張るよ」
 『QZ』クィニー・ザルファー(p3p001779)の一言にイレギュラーズたちは頷いた。
 そうして、ここにイレギュラーズ対メカドラゴン戦のゴングが鳴った。


●ドラゴンウォーキンッ!
 ドラマがグリモワールを取り出す。
「攻撃順序を統一しましょう。中には人がいるようですし、平和的な解決が依頼主の意向ですので、殺してしまうほどの攻撃はいけません。私の手持ちの魔法だと……余り威力の高いものは除外するとして……遠術が一番低火力でしょうか。それで、相手側の反応を見てみます」
 囮役を買って出たクィニーがふわりと浮かび上がると、勇司が声をかけた。
「最初から畑の真ん中にドンって構えてたってのは不自然だし、アレを動かした道がある筈だ」
「だね、探してみるよ」
 野菜に気をつけながら畑を駆けて一番初めに接敵したのは勇司だった。
(傷つけたいとかそんな訳じゃねーからな……ん!?)
 右足の関節を狙ってロングソードを構える、その瞬間にメカ・ドラゴンの目が黄色く光った。
「おっと!」
 ──ガツン!
 ドラゴンの右後脚を払うように振るった勇司が叩き込んだ剣が食い止める。土埃が大きく巻き上がった。
『GAoooO!』
「スゲー……!」
 所詮ハリボテである。中に入っているのは普通の村人である。それでも、ギミックは完ぺきだった。なんかこう、胸の奥に滾るものがある。
 ディフェンドオーダーで備えたルミは後衛と村人達のサポートをしようと彼らを視界に入れていたのだが、違和感にもう一度首を捻る。
「険悪……には見えませんが、寧ろ楽しんでいませんか?」
 そうなのだ、勇司がドラゴンと打ち合った瞬間、アレナ村とソーナ村の村人たちが興奮した歓声を上げたのだ。
 まるで、祭りの出し物を喜ぶかのように。
(……ですが、依頼は依頼。全力で事に当たらせていただきます。もちろん怪我人を出さないように、そのためにこの力をつけたのですから)
 相手が人間種であろうとそれは変わらない。
「行きます!」
 勇司がドラゴンから離れた瞬間、ドラマが意識を集中して術を叩き込む。
 巨体は鐘を打ったように蠕動し、再び響くドラゴンの絶叫。
「南無八幡台菩薩……中の人に当たりませぬように……!」
 風を切る矢音と共に与一の長弓から放たれた矢がドラゴンの後ろ脚に突き刺ささり、装甲がバシンと弾け始めた。
「そろそろ私の出番だね」
 メカ・ドラゴンの胸元辺りに浮遊したクィニーが現れた。真珠によって己の護りを固めた彼女は勇ましく名乗り口上を上げる。
「さあ、ソーナ村の希望の星! このQZちゃんが相手だ!」
 その瞬間、二つの村の村人たちがワッと沸き上がった。
『Q・Z! Q・Z!』
「お、ノリいいじゃん」
『GAAAAOO!』
 咆哮が空気をビリビリと震わせ、ドラゴンの太い首がクィニーのすぐ側をブンと通り過ぎた。
 両村一体となったチャントに目を丸くし、すぐに察してにっと笑うクィニー。
 被害を心配して周囲に目を配っていた汰磨羈の脳裏にも閃くことがあった。
 ──もしかして:お祭り。
「ああ、そういう事か」
 女傑ねこ娘は脚甲を着けた足で土を蹴った。
「ならば。ソレらしく、もっと派手に行こうか!」
 身につけた軽業を用いて、のっしりと動くドラゴンの右前脚をわざと派手に飛び越える形で蜻蛉を切って後ろ脚に接近。
「大怪我したく無ければ、この部分から離れる事だ!」
 巨大な尻尾を支える後ろ脚にトドメの蹴撃を仕掛けた。
 ついに弾け飛ぶ装甲。
 どっと沸く観客(ギャラリー)。
「えーっと……次は」
 クィニーの名乗りによって彼女に誘導されたドラゴンが畑の端へと移動しているのを確認して、ナハイベルもまた遠距離術式を試みる。
「尻尾を狙っていきますよ~」
 ドラゴンの中に居るであろう村人を案じて、声を上げるナハイベル。事の成り行きに可愛らしい顔に戸惑いを浮かべながら、ひとまず、怪我を負わせにくいであろう関節を狙って攻撃する。
「口上は効いてるみたいだし、次はこっちだ」
 飛行で近づいたシラスは先端を輪にして縛ったロープをヒュンヒュンと回し始める。
「へへ、見てろよ」
 動きが遅く、さして抵抗もしないドラゴンに輪投げの要領でそれを投げつける。
 どよめく村人たち。
「よし!」
 首に輪が掛かったのを確認して勢いよく飛び降りる。
 地響きと興奮する村人たちの声。
 破損した後ろ脚のせいで大きくよろめいたドラゴンだったが、なんとか地面に激突するのだけは堪えた。
 ……小さくきしむ音。

「あ」
『あ』
『Gah』

 思わず、シラスと村人とメカ・ドラゴンの声が一つになった。
 鋼鉄のヒレ耳が一本、スポーンと外れて大きくすっぽ抜けた。
 一緒に外れたロープを持って空中でたたらを踏んだシラスとどことなくポカンとしたドラゴンの目が合った気がした。
「! こいつ口に何か仕込んでるよ」
 黒々とした口の中に、舌の代わりに銃口のような何かを発見して警告するシラス。
 慌ててバクン! と口を閉ざすドラゴン。
 ハッと何故か頭を押さえる村長たち。
「……心なしか明後日の方向を見ているでござるな……?」
 不自然に視線を反らす挙動不審のメカ・ドラゴンを冷静に指摘する与一。
 まるでそれを誤魔化すかのようによたよたと振り回される尻尾が滅茶苦茶に振り回された。。
 クイックアップで素早さを上げている汰磨羈はよろめき不安定な動きをするドラゴンを華麗に避けながらも、その隙を見逃さなかった。
 大地を蹴りつけて振り上げた足がすらりと伸びる。
「その頭、全力で獲る!」
 ビクッとする村長。
 よろめくドラゴンの「中の人」を気遣う反面、汰磨羈の攻撃はドラゴン自身に対しては鱗一枚残さず剥がす勢いで襲い掛かった。飛び上がり放ったそのキックが華麗にメカ・ドラゴンの顎先を捉える。
「衝撃の青ですよ~」
 それに合わせたナハイベルのスキルがドラゴンを尻尾を大きく跳ね飛ばす。
「どうだ!?」
 銀色の装甲がまた弾け飛んだ。
 今度こそ、とメカ・ドラゴンを前に目を輝かせる汰磨羈。
(QZの作戦が効いて進路は絞れているようだ)
 片腕で土埃から目を庇いながら、勇司は次のターゲットである右前脚との距離を測る。
 これなら──。
 大きな声で気合いを入れて必殺技の如くソレを放つ勇司。
「受けろよ、俺の一撃!」
 勇司のダイナマイトキックが炸裂した。


●ディス イズ マイヤード!
 強烈な一撃を喰らったドラゴンはへたり込み、閉じた端から、ばふん、と煙が上がった。
 それを見て、シラスがさっきの仕掛けを思い出し叫んだ。
「さっきの口だ、注意だよ!」
 その声が届くか届かないか──メカ・ドラゴンは大量の炎を吐き出した。
『GAaaaa!?』
「おろ!? そんな機能もあったのでござるかぁ!?」
「まぁ、ドラゴンだからな! でも吐き方は考えろ!?」
 与一と汰磨羈がぎりぎりを避ける。
「熱っ!?」
 相対していたために、直撃したクィニーが慌てて距離を取る。
「様子がおかしいです! このままでは畑と休憩所が……!」
 自分の身体を焼きかねない角度で炎を吐き続け、戸惑ったように暴れるドラゴンに対して警告を発した。
 一条の炎が休憩所──しかも、村長たちを狙って直進した。
「伏せてください!」
 いつの間にか戦線離脱していたルミが彼らを庇う。
 この違和感に気付いた彼女は状況を探り、また彼らを庇うために休憩所で待機していたのだ。
 野菜の出来などをお茶を頂きながら優雅に話していたが、それもまた作戦。
「折角生えたのにっ」
「今年は丸焦げか!」
 意味不明なことを叫びパニックになる村長ズだったが。
「名誉は、守ります……」
 真っ直ぐに襲い掛かった炎を、なんとルミがすべて庇ってくれたのだ。
「だ、大丈夫か!?」
 煤けた身体で膝をつくルミに慌てて駆け寄る村長たち。
 だが、休憩所には三人、そして、ルミは一人しかいない。
 ドラゴンの炎は変わらず吐かれたままだ。
 次の危機を察知した勇司の身体が自然と飛び出した。
(危ない! このままだと畑と村長さんたちが!)
 一旦、下がったクィニーはまだ無理をさせられない。ならば……!
「あんた達は確かにいざこざがあるのかもしれない」
 防御用マントをはためかせ、話ながらも勇司は竜の前へ飛び出した。
「でもな、此処には魂があるんだ。泥だらけになって、大切に育てた魂が!
 あんた達だって本当はわかってる筈だ。
 それでも止めないってーなら、掛かって来やがれ。俺が、俺達が止めてやる!」
 熱い魂の篭った勇司の名乗り口上が畑に響き渡る。
 両村の争いを憂い諫める勇司の言葉は、そう、まるでヒーローのようであった。
 村人たちはその熱に引き込まれ、大きな歓声を上げた。
 そうやって休憩所に向かいかけたドラゴンをまた巨大な畦道へとへと誘導する勇司。
「また後で詳しい話を聞かせてくださいね」
「ま、待つんだ!」
 危機が去ったことを察知したルミはそう言い残して戦場へと戻っていく。
「行くでござるよ!」
 与一がキリリと引いた弦から勢い良く弓が放たれた。

 どれくらい経ったろうか。
 ようやく炎の燃料が尽きたらしいドラゴンに向けて放ったナハイベルの術がまた装甲を吹き飛ばす。
 ボスボスと土の中に埋もれていく鋼鉄の雨の中、イレギュラーズも気楽にも構えていられない。
 もう一度、口上を使って前線に戻ったクィニーはメカ・ドラゴンの怯まないファイティングスピリットを感じていた。
「さあて。本気になった私は──メカより硬いぞ」
 槍型の盾を構える。
 ガアアアン!
「──くうっ!」
 ギラリと目を輝かせたドラゴンの最後の左腕を盾で受け止める。
 大きく空洞になったボロボロの尻尾が銅鑼のような音を鳴らし、左腕の装甲が弾け飛んだ。
「──もう止めない? 勝負ついたでしょ」
 降り立ったシラスの前で、メカ・ドラゴンはガシャンと頭を垂れた。


●レスト イン プレイス
「うえーーい! 仲直り!」
 クィニーが嬉しそうに大きなカップを振り上げる。
『いぇーい! 勇者様ばんざーい!』
 村人たちも声を揃えてそれぞれのカップを振り上げる。
「うむ、これを機に諍いなど悲しいことはやめるでござる。その、原因などを話して頂ければ一緒に考え……」
 柔らかな天然水で淹れたお茶を飲みながら優しく語る与一だったが、リーナと二人の村長が沈痛な表情を浮かべているのに気付く。
『すみませんでした』
 揃って頭を下げる三人プラス、両村の村人たち。
「おろ?」

「あら、そういったお祭りだったのですね!」
「毎年この催しをやっているのですか?」
 一通り、リーナと共に一通りの治療を終えたドラマとルミが、改めて事情を聞きながら焼き立ての採れたて野菜ピザを齧る。
 かつて二つの村はこの広大な畑を巡って敵対関係にあった。ここを巡って両村の戦士たちが戦ったのが始まり──それがいつの間にか畑の所有権を建前に両村での選りすぐりの戦いを楽しむ祭りへと変化したのだった。
「少し田畑が荒れてしまいましたが、採れる野菜はとっても、美味しそうです!」
「今年の野菜の出来は素晴らしいようですね」
 ドラマが宝石のような野菜の艶を褒めれば、ルミも興味深そうに手近な野菜スティックを摘まみ上げた。
 初めの争いの元となったこの畑は今では両村の共同の所有物となり、同時に祭りの料理を材料となっていた。
「最初から祭だと言ってくれれば……ああ、いや。それだと臨場感が減るか」
 苦言を呈そうとした汰磨羈だったが、すぐに頷く。
「わかってらっしゃる! 今年はアレナ村が張り切ってドラゴンなんぞ作ってしまってどうなるかと思いましたが、お陰で素晴らしい祭りとなりました」
 満面の笑顔のソーナ村の村長が秋から熟成させていた秘蔵の葡萄酒を汰磨羈のカップに注ぎ込む。
「いやー、スミマセン。素人の皆様に事情を知った上で盛り上げてもらうのは酷かなーって思ったんですけど、そんなことなかったですーねー?」
 感心したように「いやあ、素晴らしかった!」と何度も繰り返すリーナ。
「だ、だな!? ヒーローの配役なら俺たちの天職だ──お、美味いな」
 ナゼか顔を赤らめていた勇司だったが、ピカピカの白米おにぎりと漬物、味噌汁に笑顔を浮かべた。
「運動した後のご飯とお酒は美味しいですねぇ♪」
 ナハイベルも勇司の隣で色とりどりの果物ソースのかかったパンケーキを頬張る。
「お野菜の出来はとても素晴らしいです」
 今度は野菜をふんだんに使ったスープにご機嫌のような笑顔のルミ。
「まぁ、何だかんだで楽しかったよ。うむ」
 美味い地酒を堪能しながらご機嫌の汰磨羈。
 そこに、ドラマがすいっと入って来る。
「あらあらあら、お酒まで!」
「あっちにフルーツジュースもありますよ」
「え、私はこう見えても多分、此処の村長さん方よりも、長い時を生きているのですよ? お酒も嗜みます。美味しく、頂きます!」
「おお、それはそれは失礼!」
 すでにお酒が回って顔の赤いアレナ村の村長が自慢の村の地酒を注ぎだす。
「……俺は見た目通りだぜ」
 自分の村の地酒を持ってチラチラ見て来るソーナ村の村長に釘を刺すシラス。
「なら、煮物は? サラダもあるし、フルーツケーキもパイもあるよ!」
 エプロンを装着した村人たちがそれぞれ作って来たらしい自慢の料理を目の前に並べてくる。
「ちょっ……多すぎ……っ」
 報酬の上乗せだ! とばかりに飲み食いするつもりだったシラスの思惑以上に目の前に積まれる料理の数々。
「お野菜やわらか甘うま! おいひい!」
 クィニーがミネストローネによく似たスープに舌鼓を打つ。
「あんな凄い戦い見せてもらったお礼だよ! しかも、ドラゴン役は殆ど怪我ないしなあ。見事なもんだぜ。まったく。手加減なのかねえ、それとも、結構早いうちに出し物だってことに気付いたのか?」
 口々に褒める村人たちに、小さくにっと笑ったクィニーはもう一度カップを掲げた。
「アレナ・ソーナ村民両名と一緒にかんぱーい!」
 ──乾杯!
 クィニーの音頭に合わせて村の人々とイレギュラーズは明るく声を上げた。
 少し位置の変わった太陽が、畑の真ん中で両手を枕に寝ころぶちょっと泥を被ったメカ・ドラゴンを照らしていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました!
メカ・ドラゴンとの戦い(プロレス)いかがでしたか?
連携の取れたプレイングはとても素晴らしかったです。
またよろしくお願い致します。

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