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シナリオ詳細

ゴーストキャットを捕まえろ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「いやあ、実に見事な猫だ!」
 男が声を上げた。
 此処は幻想のやや閑静な住宅街。とある豪邸で、家主が一人と客が二人、歓談を楽しんでいる。
 家主はキャラウェル夫人という。愛猫家として有名で、多くの猫を飼っているのだが――その中でもとりわけ大切にされているのが、今膝に乗っているオミーである。
 ……え? 膝の上に何もいないって? よくごらんなさい。毛並みに沿って白い輝き、ぱちくり瞬きする緑の目。それから欠伸をすれば、猫らしい並んだ牙と口腔が見えるでしょう。

 でも、その姿は見えない。
 そう、「オミー」は「ゴーストキャット」。何故生まれたか、何処から来たかも判らない、姿の見えない幽霊猫である。

「毛並みに沿って白く輝いているのがいい。全く見えなければ撫でようもないからね」
「そうですねえ。其れでもやっぱり見えにくくて、少し困っちゃうときはあるのよ」
 キャラウェル夫人は鷹揚に笑う。抱いてみますか? と来客の男性に猫をそっと抱かせた。おお、と歓声が上がる。隣にいた女性――男性の妻である――が物珍し気に白く輝く毛並みの端をなぞる。
「ね? 抱いてみれば普通の猫ちゃんなのですよ。食べ物もおんなじ」
「確かに、暖かいしふわふわしている……触り心地は普通の猫ですな」
「幽霊猫、だなんて名前だから、冷たいとばっかり……私、お恥ずかしい」
「いいえ、いいのよ。幽霊は冷たいってご本にもよく書いてあるものねえ」
「サンクス、ミセス・キャラウェル。オミー君をお返し……お、っと、っと」
 猫を抱きなれない男が、一通りオミーの触り心地を堪能して返そうとしたその時。ぐらり、と彼はバランスを崩してしまった。猫は往々にして、予想より重いものだから。

 ――にゃあん!

「ああっ!? オミー君!?」
「きゃあ! 足元!」
「オミー!? オミー! ああ、なんてこと……!」

 或いは不運だったのは、春ののどかさにつられて窓を開けていたこと。
 或いは不運だったのは、他の猫が出入りしやすいように窓を大きめに作っていたこと。
 或いは不運だったのは、オミーが外に興味を持ってしまった事。

 つまり――



「逃げたんだ、幽霊猫が」
 グレモリー・グレモリー(p3n000074)は表情一つ変えず言った。
「幽霊猫。ゴーストキャット。どうやって生まれたのか来歴は一切不明で、偶然――本当に偶然泥に汚れていたところをキャラウェル夫人に拾われたそうだよ。だからかな、外の世界にもう一度、なんて考えていたのかもしれない。客人がバランスを崩したところで、窓から飛び出してしまったそうだ」
 猫は外で暮らすのが幸せか、家の中で暮らすのが幸せか。
 其れって割と、永遠の問題めいたところがあるけれどね。
 なんて、グレモリーはわずかに首を傾げて。
「でも、キャラウェル夫人は一度拾った猫は最後まで面倒をみる人だ。だから、連れ戻して欲しいって。例えそれがオミーを自由から遠ざける事になっても。……多少の汚れは仕方ないとして、出来るだけ無傷での捕獲を希望している。殺したりしちゃ駄目だよ」
 スケッチブックをぺらぺらめくりながら言うと、ある1ページで彼は手を止め、イレギュラーズに見せた。猫……のようなものだ。輪郭があって、目は緑。
「オミー君の似顔絵。目と口の中、其れから毛並みの端っこだけは視認できるそうだ。なので、頑張ってね」
 カラーボールとかあったら、楽かもしれないね。
 そう助言をして、グレモリーは君たちを送り出した。

GMコメント

 こんにちは、奇古譚です。
 猫ちゃんってかわいいよね。

●目標
 ゴーストキャット「オミー」を捕まえろ

●立地
 幻想の住宅街です。
 貴族ではないけれどお金は持っている……例えば成功した商人などが好んで住むような立地です。其れなりに静かですが、貴族の住居ほど閑静でもありません。
 夫人曰くオミーは臆病な性質なので、余り遠くへは行っていないだろう、との事。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●エネミー
 「オミー」x1

 世にも珍しいゴーストキャット――その体の殆どが透けて見えない猫です。
 毛並みの先だけ僅かに白く輝き、目は緑色です。
 猫の種類としては長毛で、メインクーンが近いでしょう。
 本来は人懐っこいですが、飛び出してしまった見知らぬ外の状況にパニックを起こしている可能性があります。

 キャラウェル夫人は出来るだけ無傷での捕獲を希望していますが、多少の汚れなどは仕方ないとのお考えです。
「だって、お外だものねえ。目印に色を付ける事もあるでしょうし、そこはローレットの皆さんの手腕にお任せするわね」


 アドリブが多くなる傾向にあります。
 NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写致します。
 では、いってらっしゃい。

  • ゴーストキャットを捕まえろ!完了
  • GM名奇古譚
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年05月06日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター
ノースポール(p3p004381)
差し伸べる翼
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
シラス(p3p004421)
超える者
糸巻 パティリア(p3p007389)
跳躍する星
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
花房 てまり(p3p007748)
猫又の

リプレイ


「ふふ。文字通り猫の手も借りたいっちゅう事態やろか?」
「そうですね……オミーくんは見つかりにくいとはいえ、珍しいから変な人や野良猫に襲われないとも限りません。早く保護してあげないと!」
 猫と鳥が会話している。
 いや、違う。猫又の姿になった『猫又の』花房 てまり(p3p007748)と、シマエナガの姿になった『差し伸べる翼』ノースポール(p3p004381)である。
「なんとも珍しい猫もあったもんだね。透明、かあ……でも触れるんだよな?」
 うまく想像できないな、と『ラド・バウC級闘士』シラス(p3p004421)が悩ましい顔をする。
「そうですわね……とはいえ、引き受けてしまったものは致し方なし! どうにかしてオミー君を見つけ出さないと、ですわね……あ、てまりさん、少し離れていて下さいまし」
 『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が瓶に筆を漬け、ノースポールの白い毛皮に何やら塗っていく。てまりは甘あい香りがつんと鼻をつくのを感じた。これは……マタタビか。
「そうねぇ。久々の外を楽しんでいるのならいいけど、おびえてたら可哀想だわぁ。早く見つけて、あーーー!!」
「ぴよーーーーー!!! わっ私は食料じゃないですーー!!!」
 ノースポールが悲鳴を上げる。黒猫がちょんちょんと前足で彼女をつついているからだ。彼の名前はツェリ。 『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)のファミリア―である。
 慌ててアーリアはツェリを抱き上げる。もうっ、めっ! と叱るが、ツェリはどこ吹く風。一方でノースポールのストレス指数はガン上がりしていた。大丈夫だろうか。
「大丈夫? あなた、本当に食べられるかもしれないわよ」
  『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベル(p3p007440) が鞄の中身を確認しながら言う。心配している訳ではない。だって、お仲間が傷付いたらお優しい皆さんが悲しむでしょう? だったら一応、そういう素振りは見せておかないと。
「が、頑張ります……」
「うむっ! いざとなったら拙者を頼ってくれていいのでござるよ、ノースポール殿! 食べられるとまではいかないかも知れぬが、追いかけられそうだとは拙者も感じる故!」
 『跳躍する星』糸巻 パティリア(p3p007389)が頷く。機動なら任せてくれ、まさにそんな顔。流石だ。
「じゃ、俺は他の野良猫たちを集めてくるよ。そうしたらオミーは逆に目立つだろ」
「そうねぇ。私もちょっとお買い物するわねぇ?」
 シラスとアーリアが、作戦行動のために歩いていく。アーリアはツェリを抱いたまま。ある程度離れてから解放するのだろう。
「うふふ、みんな頼もしいわね~。じゃ、おばさんもちょっと頑張っちゃうわね~」
 『遠足ガイドさん』レスト・リゾート(p3p003959)が何かのタネらしきものをつまんで、ウィンクした。



 ぼくのなまえは、オミー。
 路地裏でよごれていたぼくを拾ってくれた人は、そう呼んでくれる。だから、オミー。ぼくは名前がなかったから、ちょっと嬉しい。
 でも、その人がいまはいない。ぼくがケイソツに、外に出てしまったから。
「なぁう……」
 ぼくはとうめいねこ。仲間にも見てもらえない、ぽんこつねこ。
 だから知らない事ばっかりだ。なわばりとか、マーキングとか、ぼくは教わることが出来なかった。おかあさんは教える前に、ぼくを見失ってしまったから。
 ……。また、一人ぼっちになるのかなぁ。
 ぼくは興味本位で外に出たことを、早速後悔し始めている。一人は気楽だけど、とても寂しい。ぼくを拾ってくれた人は、あったかかった。美味しいご飯をくれたし、毛並みもブラシで整えてくれた。みえないのにそうしてくれたあの人は、ぼくの魔法使いだ。
 ……帰りたいけど、道が判らないや。
 かすかに甘い香りを感じながら、ぼくはあてどもなく歩いている。なんだろう、この……くすぐられるような香りは。



「ワンちゃん、手伝ってくれたら後で干し肉をあげる。嫌なら干し肉になってもらうわ。どっちがいい?」
「あらあら、メリーちゃん、脅しはだめよお」
「脅してないわ、これは立派な交渉よ」
「ワン!(干し肉食べたい!)」
「……ほらね」
 メリーとレストは動物や町の植物と疎通しながらオミーを探している。レストは種――マタタビとオナモミを道に埋めて、素敵なじょうろで急成長させた。オナモミなら猫の毛に絡んでも、痛みや苦しみを伴わないだろうとの考えだ。
「オミーちゃん、怪我とかしてないかしらねぇ」
「さあ。怪我をしていたらこのワンちゃんが気付いてくれるんじゃない?」
「わん!わん! (干し肉ちょうだい!)」
「はいはい。お仕事が終わったらよ。ほら、これ。オミー君専用のブラシですって。この匂いを覚えて、追いかけるのよ」
 メリーはカバンの中から猫用のブラシを取り出して、犬に嗅がせる。くんくん、と犬は鼻でブラシを確かめた後、周囲を嗅ぎまわり始めた。やはり犬は良い。従順だからだ。
 ふと犬は顔を上げると、尻尾を振りながら路地へと入っていく。
「……あっちみたいね」
「うふふ、さすがワンちゃんは賢いわね~! じゃあ、この調子でオナモミをまきながらいきましょう~。はい、メリーちゃんの分」
「私もやるの? ……まぁ、良いけど」



 行くあてもなくとぼとぼと歩く。本当は帰りたい。帰っておいしいものを食べて、あの人に撫でてもらいたい。
 とうめいねこのぼくのこと、受け入れてくれた人。珍しいからとかじゃなくて、路地裏で他の猫におそわれた怪我を手当てしてくれた人。
 ……外になんて、いかなきゃよかった、なぁ。
 溜息を吐いたその時、唸り声が聞こえた。顔を上げると、犬が一匹ぼくを見ている。
 その後ろから、ニンゲンが二人。
「このあたりみたいだけど……」
「あら? 見て~。あの辺り……白い毛並みが……」
「何かいるわ。温度を感じる」
 にんげん! いぬ! こわい! やだ!
 ぼくはきがつけば、背を向けて一目散に走り出していた。途中で植物にぶつかったような気がする。野良猫を押しのけたような気がする。まって、と聞こえたような気がする。まてない。だってこわいんだ。
 ぼくは走っていた。走って、走って、走って――



「ところで、何を買い物したのです?」
「うふふ、首輪よぉ。これがあればオミーちゃんも見付けやすくなるんじゃないかと思って」
 別の路地にて。
 ヴァレーリヤが問うと、アーリアが手に持った袋を揺らす。ちりんちりんと甲高く聞こえるのは、恐らく鈴だろう。
「成程! 夫人に提案してみましょう。ツェリくんはどうですの?」
「う~ん、まだ見つからないみたいねぇ。ツェリくんも気紛れだから……」
「しっ」
 ファミリアーの視覚を借りても見つからぬ。首を傾げたアーリアに、ふとヴァレーリヤが静かに、と人差し指を立てた。――何か聞こえる。うおん、うおん。常より敏感な聴力でとらえた其れは。
「犬が吠えていますわ。メリーさんが確か、犬の手を借りると言っていましたわね」
「見つけたのかしらぁ?」
「判りませんけれど、行ってみましょう! オミーくんがいるはずですわー!」



 こわい、こわい、こわい!
 ぼくは走りつかれて、路地裏で息を整えていた。いぬは追ってこない。ひとも追ってはこない。ぼくはとうめいねこだから、追ってきてもすぐには見つからないだろう。
 ……でも、あの人たちにつかまっていたら、何かがかわっていたのかな?
 ぼくは考える。あの人たちが新しい飼い主になって、新しい生活がはじまっていたのかも知れない。
 外にはあたらしいものがいっぱいだけど……外はぼくのことが嫌いなんだ。
 ぼくは泣きたくなった。そしてますます、あの人のところへ帰りたくなった。あの人なら、ぼくの事を嫌ったりしないのに。かえりたい、かえりたいよお……
 毛づくろいをしようと前足を上げたら、何かみどりのものがくっついていた。何だろう、これ。草かな。手を振ってみても、壁にこすりつけてみても落ちない。
 ……これ、もしかして体中についてるのかな。
 だとしたら、どうしよう。
 どうして、と、どうしよう、が混ざり合った思考が、甘い香りに徐々にぐずぐずに溶けていく。甘い香りがさっきからする。この香りは、なんだろう……
 ぼくはフラフラと歩き出していた。



「ぜー、ぜー」
 ノースポールは肩で息をしていた。
 マタエナガ作戦(マタタビ+シマエナガである)は成功した。成功している。……いや、成功しすぎているといっても良い。
 シラスがある程度の野良猫を引き付けてくれているとはいえ、其れに乗らない猫もいる。しかしマタタビの香りを纏った小鳥となれば話は別だ。食欲+マタタビの効果は絶大で、ノースポールはオミーを見つけられないまま、他の野良猫に追われ追われて建物の屋上に避難していたのだった。
「大丈夫でござるか?」
 そこにパティリアが着地する。ノースポールのフォロー役として、見守っていたらしい。
「だ、大丈夫、です……ちょっと、疲れ……」
「大分お疲れのご様子……この辺りにオミー殿はいなさそうでござる。別の区域まで拙者が運びましょうぞ!」
「あ、ありがとうございます……お願いします……」
「では、拙者の手の中で動かないようにお願い致す! そーれっ!」
 ノースポールは知らなかった。
 機動力9の恐ろしさを――
「ぴよーーーーーー!? こ、こんな、高低差聞いてな、ぴよーーー!!!」



「これでよろしいね」
 一方てまりは、キャラウェル夫人からあらかじめ借りて来たオミーのおもちゃに命を吹き込んでいた。一緒にオミーを探して貰おう、という心算だ。
「普段遊んでくれてる猫ちゃんを探すんよ。多分、オナモミとか……マタタビの匂いとか、ついとると思うから……普段よりは見つかりやすいんとちゃうかなぁ?」
 オッケー、とおもちゃは歩き出す。
「それから……」
 と、てまりが振り返る。にゃあ、と鳴く。猫が数匹いた。少しシラスから“分けて貰った”野良猫たちだ。
「オミーはんが見付かったら、お魚釣ってあげましょ。見つからんでもあげるから、出来るだけ穏便にしてくださいな」
 なあん、と猫たちが甘い声で鳴く。さてはこいつら、オスだな。
 と、てまりをちょんちょん、式がつついた。
「あら、なぁに?」
 同時に、猫たちが一斉に駆け出したので、てまりは目を丸くする。
「にゃあ! にゃあ!」
「にゃあああ!!」
「あらあら……? これはもしかして」
 てまりはゆっくりと歩き出した。この方向なら――彼がいる。ゆっくりいっても問題はないだろう。



 こわい! こわい! こわい!
 ぼくは走っていた。猫たちが追いかけてきていた。
 いや、ぼくも追いかけていた。すごく甘くて、美味しそうな鳥さんを見つけたから。
 追いかけているのか、追いかけられているのか、わからない。
 けれど、走らないとぼくは酷い目にあうかも知れない。
 走らないと、鳥さんを捕まえられない。
 気持ちがぐちゃぐちゃで、何を考えているのかわからなくなってきた。
 きっとこの甘い香りのせいだ。
 道路に生えている草を潜り抜ける。何かが毛に引っかかる感触がする。それも構わず、ぼくは走り抜ける。
 鳥さんが見えて来た。美味しそうな匂いがするにんげんが、抱えている。
 野良猫たちが集まっている。不思議そうに振り返るけど、その鳥さんは、ぼくのもの!

 ――つかまえた!!

 羽を休めた鳥さんに、ぼくは思い切りとびかかった。



 シラスは餌とマタタビを用いて、周辺の野良猫を空き地に集め、触れ合ってのんびりと過ごしていた。
 別にサボりではない。仕事で人払いすることがあるだろう? それと同じだよ、同じ。
 途中で通りがかった人に怪訝な目を向けられたり、「野良猫にエサをやるのはよくない」と言われたけれど、「ローレットの者で、依頼を受けている」と言えば彼らは黙って立ち去った。どうやら準富裕層の住宅街らしく、心に余裕のある者が多いようだった。
 ――ああ、平和だ。
 猫に枕にされながら、横たわってシラスは思う。海洋のいざこざさえも、今は忘れてしまえそうだ。
 このまま昼寝しても、怒られないかな。猫たちはこんなに気持ちよさそうだしな……

 なーんて考えていたその時、大きな声がシラスの眠りかけの脳を揺らした。

「シラスさーん! ちょ、捕まえ、捕まえて下さい!!」
「…は?」

「ノースポール殿! 落とすでござるよ!」
「お願いしますっ!」
 そんなやり取りが聞こえたと思ったら、ぽふんと白い塊がシラスの腹に落ちて来た。
「……ノースポール!?」
「良いですか、私が食べられる前に捕まえてください! もうすぐきます!」
「来るって、まさか」
 にゃあ! にゃあ!
 猫が一斉に騒ぎだす。“見えない何かが押し通ったように”、猫の群れが割れて、
「今ですーーーー!!」
 反射的にシラスは手を伸ばしていた。ふうわり、柔らかな感触。……何も見えない。しかし、手の中には確かに……
「……つ」
「……た」

「捕まえた……!」
「助かった……!」



 捕まえた、の一報を受けて、イレギュラーズは空き地に集まっていた。
 ノースポールは変化を解いて、猫たちと戯れている。
「ああ、私のもふもふ……」
 ひそかにシマエナガノースポールを可愛がっていたヴァレーリヤは、思い出に浸っている。もっとなでなでしてふわふわしておけばよかった……

「オミー君、ごめんなさいねぇ」
 アーリアは一つ一つ、シラスの腕の中にいる(たぶん)オミーの毛に絡みついたオナモミを取っていく。何かがいるな? と警戒しているツェリくんを牽制しながら。
「結局、猫にはマタタビが一番効くのかしら?」
 メリーは不思議そうにしている。犬には干し肉をあげてお帰り頂いた。
「効きすぎも注意だけれどね~。メリーちゃん、あとで草を抜くの手伝ってくれない? 可哀想だけど、道端にマタタビが生えてるのは危険よね~」
 レストが言う。確かに今、この一帯はマタタビ大繁殖みたいな状態になっているので、他の野良猫の為にもアフターケアは必要だろう。
「……本当にいるんだね、此処に」
「ええ、います。緑色のおめめがきらきら、うふふ」
 シラスは確かめるようにオミーを抱きなおす。てまりは何ともいえない顔をしているシラスに少し笑ってから――オミーに問うた。
「オミーはん。あのな、オミーはんが望むこととか、飼い主はんに言いたいことがあったら、うちらが代わりに伝えますえ。もし、オミーはんが望むんやったら、このまま外に……」
『ううん、ぼく、かえりたい』
「……」
『外には興味があったけど、やっぱりぼくには外はこわいところだったよ。安心してごはんも食べられないし、おともだちだってできない。だから、あの人のところへ帰りたい』
「……そう。なら、ええんよ。」
「何て言ってるんだ?」
「キャラウェルはんのところへ早く帰りたい、言うてます。確かにオミーはんは、野良で過ごすのは難しいかもしれへんね」
 うんうん、とてまり、そしてレストが頷いた。レストもひっそりと、二人の会話を聞いている。

『…あ、あのね』
 なうなう、とオミーが鳴く。
 なんやろか、とてまりが返す。
『お魚の匂いがする。お魚が食べたいな』
「ああ……糸巻はん」
「む? 何でしょうか、てまり殿」
「オミーはんが、あんたさんを食べたいやて」
「ええ!? い、いけません! 拙者は確かにディープシーでござるが!!」
「ふふ、冗談やよ」
『……えへへ』

 臆病な猫はなあん、と鳴いた。其れは確かに、猫の笑い声。

成否

成功

MVP

ノースポール(p3p004381)
差し伸べる翼

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
透明人間は良い事ばかりじゃないですね。そういうサスペンス?映画もありましたしね。
それは猫も同じ事のようです。
MVPは自らを犠牲にして頑張った貴方へ。
ご参加ありがとうございました!

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