シナリオ詳細
<Breaking Blue>サックスブルーの鎮魂歌
オープニング
●最期の歌
勝っても、負けても、きっと私はこの世界にいないでしょう。
1人ぼっちで死んでいったのでしょう。
ええ、ええ、構わない。嘘。怖いわ。
だって、何をしたって、いつかはみーんな忘れてしまうの。
私と言う1人のディープシーがいたこと。●●●と言う名前があったこと。
嫌よ。忘れないで。
嫌よ。覚えていて。
どうかどうか、●●●を忘れてしまわないで──。
●再び、絶望の青へ
「……アルバニア、出てきませんね」
海洋からもたらされる情報を整理しながらブラウ(p3n000090)は唸っていた。その原因は先の発言の通り──絶望の青のどこかにいるだろうアルバニアだ。
鉄帝、深緑を始めとして各地へ飛ぶイレギュラーズだが、その幾人かが発症した廃滅病(アルバニア・シンドローム)は未だに彼らを蝕んでいた。
早くアルバニアを倒さなければ。
早く呪いを解かなければ。
情報屋やイレギュラーズたちの小さな焦りを感じてか、アルバニアはその身を一向に表さない。当然だろう、ここで出来る限り対面を引き延ばしておけば、彼の敵となるイレギュラーズは消えていくのだから。
実際、アルバニアを引き釣り出すためには絶望の青へ向かわねばならず、絶望の青へ踏み込めば新規発症の疑いがある。
「……それでも、行かないわけには……行かせないわけには、いかないんですよね」
ブラウは何とも言えぬ表情を浮かべながら羊皮紙を1枚咥える。イレギュラーズへ新たに見せる依頼書だ。
せめて向かうのが自分であったなら。いいや、あっという間に食われてしまうだろうけれども──危険な地へ知人たちを送り、自分たちは安全な場所にいるこのモヤモヤとした感情からは解き放たれるだろう。
うーうーと唸ったブラウはがばりと顔を上げ、その勢いに体勢を崩してコロンと転がる。机から落ちなかったことが幸いだ。
「その分、他のことでイレギュラーズの皆さんを煩わせないよう頑張らないとですねっ!」
最大限のバックアップがブラウを始めとした情報屋たちにできることだろう、とブラウはイレギュラーズの元へ依頼書を持って行く。
イレギュラーズたちの呪いを解くため──そして、新天地(ネオ・フロンティア)を目指すため。
後半の海へ、進撃開始だ。
●うたがきこえる
橋頭保となったアクエリアを発ち、イレギュラーズを乗せた船と友軍2隻が後半の海を行く。先ほどまでは強風の吹き荒れていた海上も今ではすっかり穏やかだ。
「だが、次は何が来るか分かったもんじゃないな」
舵を切る海軍人は海洋国でも精鋭。隣り合った友軍たちもまた然り。他にも同じような者が海へと出ているのだろうが──それでも被害を避けられないのは、流石『絶望の青』と言ったところか。
不意に軍人が顔を上げる。その唇が「歌?」と怪訝そうに紡いだ時、風に乗ったそれがイレギュラーズの耳にも届いた。
誰かが歌う声。女の声だ。悲痛に、心の柔らかい部分を切り裂くような歌。
「一体こんな場所で誰が……、っ!」
海軍人は海のうねりを見て咄嗟に舵を切り、イレギュラーズは慌てて船に捕まる。同時に海から上がった何かが勢いよく水しぶきを飛ばした。
『狂王種1体、確認!』
『迎撃態勢を取れ! 砲撃の準備だ!』
友軍とつながった通信機器からそんな言葉が聞こえる。軍人は狂王種に潰されてしまわないよう舵を取りながらイレギュラーズへ叫んだ。
「倒さなきゃ進めん! 頼むぜ、イレギュラーズ!」
●残すもの
最期の歌をどこへ隠そうか。
見つからない場所でないと、すぐに壊されてしまう。
でも聞こえる場所でなければ意味がない。
ああ、そうだわ。ここなら良いでしょう。
食べちゃダメ。飲み込んでもダメよ。そう、いい子。
──それじゃあ、さようなら。
- <Breaking Blue>サックスブルーの鎮魂歌完了
- GM名愁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年05月02日 22時00分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●Requiem
忘れないで。
忘れないで。
この声を。
この歌を。
私を、消えてしまった●●●を忘れてしまわないで──。
●打倒、狂王種!
「行く手を遮るモノはぶっ飛ばすのみ!! オールハンデッド! 目標、狂王種!」
『脳筋名医』ヨハン=レーム(p3p001117)の号令が戦の始まりを告げ、同時に美しい2振りの曲刀が舞う。『Ende-r-Kindheit』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)の体は風に乗るように軽やかな動きを見せ、まるで人魚のように海の中を滑っていった。
(何だろう……とても寂しそうな歌……)
水中へ潜ってしまえばその歌はほとんど聞こえない。それでも伝わってくるのだ──この歌を奏でる女の、寂しさと空虚さが。
いったい狂王種のどこから聞こえてくるのだろうか、とミルヴィは刀を構えながらヴァルフィの周囲を泳いでいく。水中から探すミルヴィに対して、『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)は船上から耳を澄ませていた。
(近いように感じる)
遠くから響いているわけではなく、それこそイレギュラーズたちの目の前で歌われているかのような。けれど正確な場所までは分からない。
「歌も気になるところだが、その前に目の前のデカブツを何とかしなくちゃな」
オーダーは狂王種の撃破だ。今回もこれまでと同様全力で、と義弘は力強く甲板を蹴る。ドオンと大きな音を立ててヴァルフィとぶつかり、さしもの巨体も揺れて波が立った。併せて船も揺られ、義弘は甲板から落ちぬようにと体勢を整える。
歌の発生源を探す2人に反して、『探究者』ロゼット=テイ(p3p004150)はこの歌を極力聴かないようにと務めていた。
(魔種絡みの何かしらとの縁なんて、持たないに越した事は無いだろう)
先のアクエリア島制圧では、魔種が狂王種を従えているケースも少なからずあった。この歌とて魔種の命令による何かという可能性は十分あり得る。なので歌を聴かず──できるならばさっさと忘れるためにも──ヴァルフィを倒してしまおう。
自身の力を瞬間的に高め、見えぬ悪意を叩き込むロゼット。その直後に断罪の斬刃がヴァルフィを襲う。
「ゴメンな……こうなってしまったら倒さねばならない」
『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は意識が寄せられたことを感じながら剣を握りしめる。見上げるほどの巨体は頑丈で、絶望の青という厳しい海域を渡ってこられたのもその表皮があってこそなのだろう。
本来は無害だったのかもしれないが、もはや倒す以外にどうすることもできやしない。
ヴァルフィが不意に体を震わせ、その体を海へ沈ませる。イレギュラーズや船員たちが身構える隙も無く、再び飛び出した狂王種によって起きた波は一同を飲み込んだ。
「わ、っぷ……!」
「落ちた者がいれば救助だ!」
そんな言葉が交わされる中、船のヘリを咄嗟に掴んで耐えた『斬城剣』すずな(p3p005307)が前を向く。
「──参ります」
静かな呟き、高速の踏み込み。霊刀を握ったすずなは一息で間合いを詰め刀を突きだした。直前に船が波で揺れるが、胸元に忍ばせたサシェが落ち着かせてくれる。
「海上は落ち着きませんが……止まる訳にも行かないですからね、進まねば!」
ヴァルフィを睨みつけるすずなの視界で小さな水柱が上がる。誰かが海へ落ちた──否。海へ飛び込んだのだ。
『乗りかかった異邦人』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)はすいすいと器用に泳ぎ、敵の攻撃が届かない距離まで離れる。魔力の共鳴から放たれるのはまるで凍えるような冬の風だ。
「……レーさん、歌は楽しいものが好きっきゅ」
しもやけの痛みをこらえながらレーゲンは呟く。聞こえてくるのは悲しい歌声ばかりだ。
例えば、誕生を祝う歌。
例えば、春の訪れを呼び寄せるような歌。
例えば、訪れた春を祝う歌。
聞くのならばそんな歌がいい。
「おなかの中で、だれか歌ってるのかな?」
『ひだまりうさぎ』コゼット(p3p002755)が履いた魔法の靴がふわり、ひらり、軽やかに彼女を舞わせる。飛び回り跳ねまわるコゼットは、近づけば大きくなり遠ざかれば小さくなる悲しい声に耳を澄ませた。
腹の中にあるのは人か、それとも録音機器か。いずれにせよ何かは出て来るだろう。
不意に波が不自然な盛り上がりを見せる。その波間に影を見たヨハンは海洋兵へ声をかけた。
「えーと、これ使っていいです?」
示した通信機器にどうぞ! と兵から声が上がる。トランシーバーに似たようなもの、とでも言うのだろうか。海洋も面白いモノを持っているものだと思いながらヨハンは通信機器を手に取った。
『あー、あー。イレギュラーズより各艦へ。
目標シャークライ、噛みついてくるヤツから落とせ。すぐに攻撃してこないやつは反撃してくるぞ、体勢を整えてからで構わん。以上』
通信機器越しに『了解!』と声が上がる。同時にクジラの周囲で新たな狂王種──シャークライが飛び跳ねた。
飛行石の力を借りて海上へ上がったミルヴィは、悲しい声へ重ねるように歌を歌う。少しでも中和し、シャークライが嫌うような音となるように。彼女を守るのは恩人であった義賊アルフレッドの魂だ。
──テメェは危なっかしくて見てられネェ。
そんな声が聞こえてくるようだ。
けれどサメが嫌がる様子はなく、ミルヴィは自身もギターも持ち出して響かせる。既に海上近くまであがってきていたシャークライは甲板のコゼットやヨハンに指示された友軍たちが相手をしているようだが、新たに表れた数体はミルヴィへ威嚇するように近づいてきた。
「お、いー感じに集まってきたネ」
周囲の敵を薙ぎ払うように鋭い回転蹴りをかますミルヴィ。その肌は否応なしに鮫肌が傷つけていく。揺れの大きさと敵の位置から落ちない場所を見抜いたヨハンは周囲の仲間のため天使の福音を響かせた。
「はは、死者の歌と天使の歌のぶつかりあいですねぇ」
笑みを浮かべながらもヨハンの瞳は挑発的に煌めく。負けない。負けられない。この場は何としても押し通るのだ。
「纏めて貫いてみせましょう……!」
すずなの四段突きがシャークライを串刺しにし、ヴァルフィまで届く。シャークライは海の中へと沈んでいったが、彼らばかりを打ち負かしてもどうしようもない。ヴァルフィを、そしてあの歌をどうにかしない事には際限なくシャークライは立ち向かってくるだろう。
海洋兵たちもシャークライを、そしてヴァルフィを狙ってくれている。おかげでイレギュラーズたちも余力が回っていると言うべきか。
「なんとしても、退くわけにはいきません」
だから勝たねばならないとすずなは自身へ告げるように呟き、間髪入れずしてさらに深く踏み込む。より速く、より強力な四段突きがヴァルフィを襲った。
全てはこの先の何処かに居るであろう彼の魔種──冠位アルバニアを討つために。そしてすずな自身が生き抜くために。
「ん……とどかない」
ヴァルフィと船の間が空き、すぐ近くでの攻撃が届かなくなった。コゼットはすぐさま攻撃方法を切り替え、享楽の悪夢をにじり寄らせる。
「皆! 歌の発生源は口の中かもっと奥だヨ!」
ミルヴィの言葉に義弘がぐっと構え、ヴァルフィの口元めがけて突進した。鋭い聴覚を澄ませれば確かにごく近い場所で歌が聞こえてくる。
「口の中になにか仕込まれてるんでありゃあ、殴っていくうちに止まるか、吐き出すかもしれねぇか」
その証拠か定かではないが、ヴァルフィは戦闘中ずっと口を閉じたままである。吐き出さないようにしているのかもしれない。
(この歌は、魔種が謳っているのだろうか?)
リゲルは真一文字にシャークライたちを薙ぎ払いながら、ヴァルフィへと視線を移す。あの口の中に魔種がいるのか、それとも魔種の残した何かがあるのか。後者であるのなら魔種は今も絶望の青にいるのだろうか。
「……悲しい歌だ」
周囲の注意を引くコゼットを庇いつつ、リゲルは呟く。例えあの歌が狂王種を操り、今なお自分たちの進む道を邪魔していようとも──歌に含まれた悲しみは事実であり、ゆるぎないものだった。
「でも僕、物悲しいやつは好みでないんですよね」
ヨハンは天使の歌で仲間たちを支援しながらヴァルフィの方を睨みつけた。そろそろかの狂王種にも、そしてあの歌の主にもご退場願おうか。
「僕たちは廃滅病の仲間のために戦っている。自分の為だけに歌っているお前などに──負けてたまるかぁ!!」
吠えるヨハン。いくら彼が優れたサポーターであろうと、また時に優れたディフェンダーであろうと廃滅病の仲間を癒す事は出来ない。同時に廃滅病から仲間を守ることだって出来やしない。なればこそ自分が、自分たちができることは仲間を進むために絶望の青を進むことだ。
海の友の声であろう歌を聴きながら、レーゲンはその出所を探す。後方ではない、前方であることはわかるのだが。
「サメも増えてきたっきゅ」
攻撃をするたびにヒレのしもやけが酷くなる。しかし迎撃せねばやられるのはこちらだ。この先へ、明日へと進んでいくためにもやられるわけにはいかない。
ロゼットはアーリーデイズで瞬間的な力を得ながら光り輝く羽根を生やす。仲間には決して触れさせられない、万象より理力を奪う疑似機関だ。
(この歌のような、この手の存在は往々にして、同乗した相手を引き摺り込む手合いだったか)
心の中より追い出そうとしても完全には成らぬのは、やはり魔の者が奏でる歌である故か。
そういった怪異は水辺に少なからずいるのだと聞いたことがある。ラサでは見かけなかったように思うが、海洋は水ばかり。そのような怪異が居てもおかしくないだろう。
「貴方に込められた歌……一緒に唄おう? 誰も寂しくなんてないように、サ」
歌いながら曲刀をひらめかせるミルヴィ。幻想的な剣舞が鋼鉄の如き防御も抜けてヴァルフィを攻め立てる。足掻くようにクジラは暴れ、周囲に大波を起こした。
咄嗟に自身を庇うも、大波に呑まれた者は後方へと流され船から落ちた者も少なくない。咄嗟に船の何処かを掴もうとしたすずなは、その手を滑らせて。
「……っ!」
投げ出される感覚。けれど苦しくないのは──息ができるから。
くるりと1回転したすずなは体勢を整え、ヴァルフィの腹を見やる。
「不得手ではありますが──水中でも戦えます……ッ!」
こうなったらこのまま戦ってしまおうとすずなはヴァルフィへ接近する。タイミングを気にせず、いつでも至近距離まで近づけるのは水中戦闘での利点だ。
蜃気楼の如く剣先が揺らめく居合斬り。ヴァルフィの肌が裂け、朱が海水に滲む。
「まだ終わりませんよ」
返して、もう1撃。すずなの素早い攻撃が幾度も重なっていく。不得手は気合で──できれば早期撃破が望ましいが──乗り切るのみだ。
義弘も同様に海へ落とされ、小さく悪態をつく。イレギュラーズが海に落ちてしまえば敵は友軍の方を向きかねない。幸いにして残った仲間がいるため、まだ正面を向いたままのようであるが油断はできないだろう。
(落ちてしまったんなら仕方ねぇ)
水中で息もできて動けるというのは魚にでもなったようで不思議な心地だが、戦えるのであればどこでだって戦うだけだ。
海に落ちた義弘に気づいたか、残っていたシャークライが近づいてくる。義弘は腕の筋肉を使って海中へ小さな暴風域を──海であるから海流の渦だろうか──作り上げた。
「覚悟は決めてるぜ! さあ、来い!」
鮫肌に傷つけられる覚悟で挑む義弘。その上方では、船に残ったリゲルがヴァルフィへ空気を凍てつかせるような一撃を叩き込む。とうとう苦しむような鳴き声をあげたヴァルフィの口の中には──。
「「……壺?」」
リゲルとコゼットの声が被る。それを見た者はもっと多く、一様に目を丸くした。だが確かにあの壺から歌が聞こえているようで、恐らくは一種の魔法道具なのだろう。
「声を抑えるための布……は、届かなさそうだネ」
懐から圧布を取り出したミルヴィは諦めたように肩を竦める。見えたはいいが、届かない。簡易飛行ではむしろ食べられてしまうかも。
「なら、壊すだけ、だよ」
コゼットの身を黒い炎が包む。魔法の靴は彼女をひらりふわり、軽やかな兎の動きを手助けするが如く舞わせて。敵の攻撃を受けた者はすかさずヨハンが治療し、また船員たちの指揮もとって統率していく。
自らの能力を上げる余裕もなくなったロゼッタはシャークライの出現に合わせ、鮫肌を持たぬ敵から蹂躙していって。
「この歌を忘れないために、全力で終わらせるっきゅ!!」
「ああ。歌っている彼女にはすまないが──ここで終わらせよう!」
レーゲンの起こした冬の風が、そしてリゲルの凍てつく一撃がヴァルフィを突く。ぐらりとその体が傾いだ──いや、海へ沈んだ。
「! クジラが、」
あの壺を止めなきゃ、とコゼットが手を伸ばすもやや遅く。
力を失ったヴァルフィの体が海へ沈んでいく。簡単に向かえぬ絶望の青、その海底へと。沈んで沈んで──人の手など届かぬ場所まで、落ちていった。
●愛
ザザ、と波の音だけが響く。先ほどまでの戦闘が嘘のような波間を見つめながら、リゲルは小さく呟いた。
「……リーベ」
Liebe。それはどこかの世界の、どこかの国の言葉で『愛』と言うのではなかったか。
──Liebeを忘れてしまわないで。
忘れられることを怖がった、愛と言う名の女。それが魔種だったのかどうか、これだけでは流石に知る由もない。
(それでも……忘れないでほしいと願うのなら、忘れずにいよう)
覚えている者がいるのだと口に出し、いつまでもそうあれるように紙に記して。
「……歌、きこえなく、なっちゃったね」
コゼットはその耳を揺らして呟く。海に沈んでいったからだろうか──思い返せば、狂王種が出現する直前まで歌も聴こえてこなかった。深い場所まで沈んでしまったのならもう聴こえないだろうか。
終始聞かないように、忘れてしまうようにと考えていたロゼットは終わってから、いや終わったからこそ思い出してしまう。ぼんやりとながらも悲しそうだった歌声と、自らを忘れないでほしいと言う願いを。
最も、彼女からの返答は否であるのだが。
心無いと言われたらそうだと頷く他ない。けれどそれでも、それよりも。明日に向かって生きるべきだと思うのだ。
(過ぎた過去はどれほど惨たらしくとも、引きずるメリットはないからね)
きっとローレットへ戻る頃にはロゼットの頭から消えてなくなっているだろう。過去の何かを気にするよりも、次起こり得る何かを考えた方が建設的で合理的なのだから。
コゼットの予想していた通り、軍人たちの救出活動は俊敏だった。水中で戦っていた仲間を助けて溺れた者がいないことを確認し、船は1度帰還するための準備を整える。船員たちが忙しくする中で、リゲルは沈んでいった海洋生物たちに向けて十字を切った。
聞こえなくなった歌の代わりにミルヴィの澄んだ声が響き渡る。それは狂王種を、狂王種へ歌を忍ばせた女を弔うレクイエムのように──。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れさまでした、イレギュラーズ。
歌はもう聴こえません。誰もの手が届かぬ深海まで、ヴァルフィの遺体ごと眠りにつきました。
さあ行きましょう。さらに先へ。
MVPは回復手を務め仲間を支えた貴方へ。仲間のために頑張りましょうね。
それではまたのご縁がございましたら、よろしくお願い致します。
GMコメント
●重要な備考
<Breaking Blue>ではイレギュラーズが『廃滅病』に罹患する場合があります。
『廃滅病』を発症した場合、キャラクターが『死兆』状態となる場合がありますのでご注意下さい。
●成功条件
狂王種『ヴァルフィ』を倒す
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。不測の事態は起こりません。
●エネミー
・ヴァルフィ
大きなクジラを思わせる狂王種です。その見た目通り耐久性とHPに優れています。
耳を澄ませると、ヴァルフィから歌声が聞こえるようです。
小回りを利かせることが苦手なため、攻撃は全て大振りです。
大波:物超貫:正面へ大波を立てます。【飛】【麻痺】
潜水:物特特:すぐさま海上へ飛び出し、自分を中心に波を起こします。【乱れ】【自分中心、自分以外の2レンジ内を対象】
海の友:歌によりシャークライ×5体を呼び寄せます。
・シャークライ
サメの姿をした狂王種。攻撃力に優れます。
ヴァルフィに、というよりは聞こえてくる歌に従い、絶望の青への侵入者を迎え撃っているようです。
噛みつき:物近単:鋭い牙で噛みつきます。
鮫肌:付自単:傷付ける肌です。【自付】【反】
●フィールド
船の甲板です。広さは十分あります。
天候は今のところ保たれているようです。スキルを所持していれば海中戦闘も可能でしょう。
ヴァルフィが動く際に波が生じるため、船が接近しにくくなっています。近距離までしか届かないことがあります。
また、イレギュラーズの乗る船はヴァルフィの正面に位置します。ここから外れる場合、ヴァルフィは友軍2隻を標的とするでしょう。
●友軍
海洋軍艦×2
海洋軍の精鋭たちが乗った船です。しかし絶望の青では命の保証はありません。
指示がなければ狂王種の左右から砲撃で援護します。いずれもイレギュラーズが全力でことに当たっていればヴァルフィの注意は引きません。
●ご挨拶
愁と申します。海洋続編、開始ですね。
まずはこの大きな大きな狂王種を倒してしまいましょう!
ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。
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