シナリオ詳細
<Breaking Blue>なべて崩れゆけ、善きも悪しきも
オープニング
●『棺牢(コフィン・ゲージ)』
幽霊船団を引き連れた指定反社会団体『化骨衆』の装甲船が、備え付けた砲台から次々と魔術砲弾を発射する。
同様の砲弾が弧を描き飛来するなかで、海洋王国でも有名な貴族組合をバックにもつうろこ諸島連合艦隊が潤沢な装備による砲撃で対抗していた。
互いの船が一隻また一隻と沈み、投げ出された人々は戦場を海中に移し死闘を繰り広げている。
実力はおよそ互角。
しかしアクアリア島による補給によってリソースに余裕のあるうろこ諸島連合艦隊に利があり、そしてこのまま戦い続ければ勝利は確実である……と指揮にしてうろこ諸島八家紋のまとめ役を担う欧鰐法重郎は確信していた。
していたが、しかし。
「不気味だ。あの狡猾な『人喰和邇』……八十神劫流が負けると分かった戦いになぜ姿を見せた」
「悲観しすぎですぜ大旦那様。奴らもギリギリなんでしょう。きっと首がまわらねえんだ」
水夫のひとりがどこか余裕そうに笑った。
飛行能力を備えた海蛇ディープシーの男で、彼もまた廃滅病にかかってはいたが先だったローレットの活躍によりいまだ余命も潤沢らしい。
「あっしらはアクアリアを抑えて装備は万全物資も潤沢。要塞からすぐのこの海域じゃあ兵站で勝るこっちが有利に決まってまさぁ。
一方あっちはこのまま攻められれば絶望の青の最終ラインに到達しちまう。アルバニアにキレられるのが怖くて少ねえ命を張るハメになるって寸法でさぁな」
からからと笑う水夫の口調に、相手への侮りを感じて欧鰐は顔をしかめた。
いや、彼に限ったことではない。
艦隊全体にはどこか楽観のムードが漂っていた。
きっとこの戦いには勝つだろう。
敵はしっぽをまいて逃げるだろう。
八十神たちが持ってる物資をどう奪うかだの、いいものを持っていたら誰がもらうかだの、そんな話までしだす始末だ。
だが同時に、皆の間に『前に進まねばならない』という切迫感もまたあった。それが一方向に噴出し、全員が同じ行動をとってしまっているのだ。
だが欧鰐は知っている。
『次にすることが一つしか無い』というのは、将棋で極論すれば敗北と同義。
それを、あの八十神が分からぬはずもなく……。
「「――!!」」
兵士達がばらばらに驚きの声をあげる。
八十神の装甲船が半壊し、兵隊が二人ほど飛び出していくのが見えた。
一瞬、砲撃によって破壊された船を捨てて離脱したものかと思われたが、ちがう。
自ら船を壊し、暴走したように出撃したのだ。
それも、ただの兵隊ではない。
水面に立ったような巨大な蟹。
空中を飛行する巨大なホタテ貝。
蟹はグロテスクに増幅した腕を次々と新規発生させながら、数十メートル先の船を直接槍のように貫いていく。
ホタテ貝は開いた貝のうちから巨大眼球のような真珠をのぞかせ、七色の光線を次々に発射してうろこ諸島連合艦隊の船を破壊しはじめた。
「なんだ……あれは……」
怪物の出現に目を疑う欧鰐。
そんな彼に、いつのまにか船に乗り込んできた八十神がさも楽しそうに語りかけた。
「『変異種(アナザータイプ)』ってやつだ。廃滅病に犯されたヤツが棺牢(コフィン・ゲージ)に取り憑かれるとああなっちまうんだよ。どうだ、イイ壊れっぷりだろう?」
「廃滅病……憑依……あれは、人間だというのか!」
振り向き、拳銃を発砲。しかし八十神は銃撃を回避し、つめより、欧鰐の手首を握ってひねり上げた。
「ヤツは蟹壊と貝墓だろう! 貴様の部下が怪物に堕ちたことの、何がそんなに……!」
「愉快さ。遊興至極。だいたい、いつまで他人事のつもりだ? オマエもとっくに……」
人差し指をつきだし、水夫をさした。
水夫は自分の喉や頭を抑え、苦しみ、しばしもがいたのち……ぼこぼこと身体を激しく膨張させ巨大な翼をもつ蛇へと変貌してしまった。
「ぼぼぼ……ぼ……ボ……!」
笑うように歯をみせ、そして欧鰐へと振り返る。
「や、やめ――」
次の瞬間、欧鰐の上半身は水夫だったものに食いちぎられた。
●きっと彼が見たかったもの
「………………」
一連の報告を聞き終えて、燕黒 姫喬(p3p000406)はギリギリと歯を鳴らした。
「八十神直属、裏八家紋のメンバー蟹壊タカアシと貝墓ホタテ。そしてうろこ諸島連合艦隊所属の水夫や兵士のうち三名が棺牢(コフィン・ゲージ)の憑依によって変異種化。
自我を失い同海域に残っています。
調査隊はその半数が襲撃にあい壊滅。過去の人格や所属に関係なく、ただの怪物と成り果ててしまった模様……です」
ギプスをはめ腕をつるした水平が、読み上げたファイルを机へと投げ出した。
「くそっ! 変異種なんて聞いてないぞ!
敵も味方も怪物になるんじゃあ、一体どうやって……!」
取り乱す水平を、横についていた仲間が取り押さえて部屋から連れ出した。
かわりに姫喬がファイルをとりあげ、ページをめくる。
「八十神は……今回引っ込んだみたいだねぇ。
あたしらの仕事は、海域に放置された変異種の討伐、か。1チームで事足りる案件かい?」
仲間のイレギュラーズがファイルのページを遡っていくと、どうやら変異種たちには艦隊や調査隊が既にけっこうなダメージを与えているらしく、あと一押しで倒せるところまではいっているということらしい。
「ふうん……」
いくらもう一押しの状態といえど大勢の艦隊を投入すれば被害の拡大がおこりうる。
かといって放置していられるような状況ではない。
一刻も早く進撃せねばという状況において、いやらしく足止めをしてきた形である。
少数精鋭。つまりはローレット1チームによる攻撃が今は適切なのだ。
「それはいいけど、あたしらが『こう』なる心配はないのよね?」
姫喬の言うとおり、ローレット・イレギュラーズたちは特別な加護を受けているため変異種化はおこらないということらしかった。
そういう意味でも、適切な戦力なのだ。
「敵も味方も、国も人も、みんな壊れて狂っていく……か。確かに好きそうなシチュエーションね。食い破ってやろうじゃないの……いっひひひ!」
- <Breaking Blue>なべて崩れゆけ、善きも悪しきもLv:15以上完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2020年04月23日 22時15分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●こうして全て壊れていった
「クソがっ……!」
船の手すりを殴りつけ、『蛸髭 Jr.』プラック・クラケーン(p3p006804)は毒気付いた。
「死兆がどうにかなったと思ったら変異種だぁ?
何処までも悪辣な呪いだな、クソがっ!!!」
そのむかし。実に二十二年前、外洋遠征に挑んだ海洋王国の猛者達は一人たりとも帰ってこなかったという。
国家の威信と世界の未来をかけたプロジェクトである。地球で言えば宇宙飛行士のように屈強な肉体や精神を備えた戦士達が挑み、どんな困難も乗り越えられると華々しく送り出されたものだったが……そんな者たちでさえ死を免れなかったわけを、二十二年越しにプラックたちは知ることになった。
その一つが廃滅病。絶望の青に立ち入った者たちがかなりの確率で罹患するアルバニアの呪いである。
当初、この呪いによって絶望の青攻略前にタイムリミットが迫り、全ての兵が潰えたものと思われていた。
しかしそれを覆すようにもたらされたモスカの加護によって廃滅病の進行は大きく遅れ、勝ち筋を見いだしたかのように思えた……が。
「んかこう。うーってなるね……」
顔をしかめる『猫さんと宝探し』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)に対して、『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)はより露骨なリアクションをした。
「人が目の前で怪物なっちゃうとかどこのパニックホラーモノってやつよ。
悪い海産物は生け作りにしちゃわないとね」
「人が獣になる瞬間、か。他の世界でも何度か見てきたが……慣れないもんだねぇ、こういうのは」
船の手すりによりかかり、首をこきりと鳴らす『茜色の恐怖』天之空・ミーナ(p3p005003)。
海にただよう無念の亡霊ことコフィンゲージが廃滅病罹患者に憑依することで、当人の意思を奪い肉体を暴走させ、怪物『変異種』へと変えてしまうという。
たとえ進行を遅らせたとしても、仲間達がみな怪物となってしまえば意味が無い。
一刻も早く攻略を目指す理由が、またひとつ増えたのだった。
『二代野心』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)は腕組みをして渋い顔をしていた。
「イレギュラーズに起こらなくても、死兆を迎えた後はどうなるのでしょうか。
……あの方は大丈夫なのでしょうか」
『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)はいまここにはいない誰かのことを想って胸に手を当てた。
「不安がっていても仕方ないですね。
僕は僕の出来ることをするまでのこと。
例え、元人間だったとしても、あの方の為、容赦など致しません」
「…………」
『夢為天鳴』ユースティア・ノート・フィアス(p3p007794)は仲間の話を聞きながら、遠い海を見た。
(既に多くの方に振り撒かれた廃滅病、死兆。
今此処に、この目に映るものも、其の犠牲者。
救う方法が有るのなら、と。
思い耽るほどの時間は有りません)
「元人間、ねえ……」
『猫鮫姫』燕黒 姫喬(p3p000406)はチョコレートバーをかじると、どこか苦々しい顔をした。
「あたしゃ、化骨衆の気持ちは分からなくはないんだよ。圧倒的な力ってのは魅力だよねぇ」
化骨衆のひとり蟹壊と貝墓を思い出す。あまりいい思い出ではないが、化物になって醜く死ぬべきとまではおもえない。
「……っし!」
頬を叩いて、腰の剣に手をかけた。
海から、空から、無数の変異種たちが迫ってくる。
この戦い、容易には終わりそうにない。
●群衆を抜けてゆけ
大空を泳ぐように、翼のはえた蛇や臓物でできた雲や、巨大な脳味噌や頭や足の多い鳥が群れを成して迫ってくる。
ずっとその先で待ち構える巨大な変異種蟹壊と貝墓は、まだこちらに攻め入るつもりはないようだが……。
「合流されれば面倒だ。こっちから突っ込むぜ!」
プラックは甲板で短く準備運動をすると、助走をつけてジャンプ。
海中を進むグロテスクな変異種たちめがけ、『大津波』の魔術を繰り出した。
海面を激しく蹴りつけたプラックの衝撃が魔術となって伝わり、海中の巨大魚や鮫や頭の多い人魚たちを巻き込んでいく。
数体を巻き込んだところで、プラックはすぐさま逆方向へと泳いで逃げ始めた。
一部の変異種は全力で泳いだところで追いつけるはずもないプラックを追いかけ、一部のものはそも追いつけないことを察して攻撃対象をうつした。
そこへ豪快に飛び込んでいくエイヴァン。
エイヴァンはイオニアスデイブレイクと自らの能力によって近くの味方を強化すると、ギガクラッシュによって変異種を破壊しはじめた。
燃費の問題からすぐに底打ちするが、途中から『ヴィエルナシチ・ザミルザーニイ』へ戦法を切り替えれば難しくないという考えである。
「しゃーーー! かかってこーーーい!!」
そうして戦うエイヴァンへ更に割り込む形で、姫喬が海へぴょんと飛び込んで変異種たちを呼び寄せた。
頭の多い人魚が姫喬の腕に噛みつき、三本ある腕を伸ばしてしがみついてくる。
姫喬は刀を突き立て、蹴り飛ばすことで離脱。更に群がる何匹もの巨大魚をにらみつけ――たところでエイヴァンが巨大魚に掴みかかっていった。
「無理はするな。いくら個体差があるといっても、一人で相手取るにはつらい数だぞ」
「かもねぇ。けど、悠長に遊んでられるほど『奴ら』もバカじゃないみたいだよ?」
姫喬が指をさしたさき。貝墓と蟹壊がゆっくりとだがこちらへと接近を始めていた。
変異種の群れと合流されれば非常に厄介だ。消耗を抑えつつも、手早く群れを撃退しなければならない。
一方で、アクセルはストラディバリウスを演奏しながら空を激しく飛び回っていた。
蛇や巨大脳が雷や光線を放ってくるが、対抗して『ルーン・H』を発射。連発することでなぎ払っていく。
「そんなに連発しますと、あとがつらいですよ」
蝶の羽根をはばたかせ、横に並ぶ幻。
「ブレイクフィアーの一発分は残しておくから大丈夫!」
そうこうしている間にアクセルめがけ大量に食らいついてくる変異種たち。
知性を失ったとはいえ元兵隊。集中攻撃をする知能くらいは残っていたのかもしれない。
「それ……!」
アクセルは離脱しながら神気閃光を乱射。光のホーミングミサイルが変異種たちへと浴びせられていく。
そうして弱った変異種に、幻は奇術『夢幻泡影』を放った。
飛んでく無数の蝶を通して夢に囚われる変異種たち。
うっとりと空中をただようようになった彼らを、幻は切断魔法をかけたステッキで次々と切り裂いていった。
翼を切り裂かれ、墜落する変異種。
甲板に落ちてのたうつ蛇を、ミーナは剣を突き立てることで殺した。
「このままじゃラチがあかない、か。少しぶん回すぞ……!」
『死神の小鎌』を背から抜き、リミッターを解除。
死の毒を纏わせると、次々と墜落してくる変異種たちへと連続で斬り付けた。
空間を飛び越して変異種たちの心臓を刈り取っていくミーナの鎌。
「よ、っと」
船の手すりに飛び乗り、たかたか走って跳躍する秋奈。
空中で交差した頭がふたつある鳥を真っ二つにしてやると、くるくる回って甲板に着地した。
「あーやだやだ、きもちわるい見た目しちゃって」
刀をふって血をはらうと、ついばもうと急降下してくる人面カラスに刀を突き込んだ。
口から後頭部に抜ける刀。
一方で、ユースティアは腰から二本の剣を抜いて別方向へと構えていた。
氷纏舞奏・結祈飾&結祈燈。氷雪の加護をしめす青白い光で軌跡をひき、ユースティアは甲板を大胆に走る。
翼を畳み、甲板へ着地する怪物たち。元は人間だったとはおもえないようなグロテスクな外観に目を細めつつも、ユースティアは伸ばしてくる無数の触手を剣で切り落としていった。
距離を明けたまま一撃。さらに懐へ飛び込んでもう一撃。
十時に切り裂かれた変異種は青い光を放ちながら崩れ落ちていった。
「幕を下ろす事が、せめて静かに眠る術と信じて……其の悪夢を、此処で断ち切ります」
振り返る。
ごうんごうんと音をたて、巨大なホタテ貝とタカアシガニがすぐそこまで迫っていた。
貝を開き、巨大な虹色の眼球でこちらを見る。
蟹は大量に腕を増やし、船めがけて打ち込んできた。
「迎撃ィ――!」
水面からドルフィンキックで飛び上がり、剣を突き出す姫喬。
秋奈やユースティア、ミーナたちもまた剣をとり、この強大な敵へと挑みかかった。
●壊れた世界
「やだやだ、海の幸からの手厚い歓迎ねぇ……。
っと。戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! 有象無象が赦しても、私の緋剣は赦しはしないわ!」
高らかに名乗り上げ、貝墓へと斬りかかる秋奈。
固い貝殻に攻撃が阻まれ、薄く開いた隙間から虹色の拡散光線が放たれる。
これがどれほど凶悪なものかはわからないが、ただですむとも思えない。
秋奈は直撃はうけまいと防御し、甲板へととびのいていく。
「うまいこといかないわね。こっちも結構アレな筈なんだけど」
「アレな筈とは……」
飛来した光線を剣ではじくように防御しながら、ユースティアは攻撃を機会をうかがっていた。
刀を逆手にもち、こめかみを指でとんとんと叩く秋奈。
「『名乗り口上』がうまいこと乗らないってコト。ワンパンで決まるとまでは思ってないけど、二~三発うったら大体はかかるもんじゃない?」
「相手によると思いますが……」
「よるよねー」
『よってたかれば』完封できる程度の敵なら、苦労などないのだ。それだけの基礎能力の高さがあるとみて間違いはない。
「おっと!」
反射的に飛び退く秋奈とユースティア。それまで立っていた甲板を蟹壊の足が貫き、すぐさま別の足が秋奈をつかみ取った。
「オラっ! テメェの相手は俺だ!」
水面から飛び上がり、『大津波』の魔術を叩きつけるプラック。
うっかり巻き込まれそうになった秋奈を、ユースティアが蟹壊の足ごと切り離すことで離脱させた。
蟹壊は突き出た目で一度だけプラックを見、対するプラックは永遠に引っ張り回してやるとばかりに猛烈な速度で蟹壊から距離をとった……が、蟹壊はすぐにプラックから興味をなくし、むしろ自分の足を斬ったユースティアへ執着しはじめた。
「こりゃ、やべえな……」
プラックの大津波は便利な技だが、効果範囲の広さゆえに仲間を巻き込みやすい欠点があった。
蟹壊と貝墓の連携対策はプラックが永久引き撃ちに成功している前提で組まれたうえ予備策がなかったため、部隊への打撃はすさまじいものになると想われた。
つまりはこれより――。
「いいか皆、プランBだ!」
「プランBってなんです」
防御を抜かれつつも『雪華幻刀・結明紡』による必殺の斬撃で蟹壊の足を次々に斬っていたユースティアが振り返る……と、代わりにエイヴァンが答えた。
「そんなものはない!」
エイヴァンはペテロ・ヘイストを飲み込むと、氷のオーラを纏って大きく跳躍。
貝墓の上へと飛び乗ると、殻を破ろうと斧を叩きつけまくった。
虹色眼球から放たれた光線が異常な屈折をおこしてエイヴァンを貫いていく。
が、歯を食いしばってこらえ、打ち込んだ斧越しに氷の散弾を撃ち込んだ。
殻をわずかに破って侵入する弾。
ダメージはかなりのものの筈だが、貝墓は構わずビームを連射。
更に蟹壊の腕がエイヴァンを貫いたことで、エイヴァンは海へと転落した。
エイヴァンほどの耐久力をもつ戦士を追い詰められるだけのパワーが、蟹壊たちには
あるということだろうか。
「皆集まって、異常状態を回復するよ!」
アクセルは一発分だけ残していたエネルギーで『ブレイクフィアー』を行使。ストラディバリウスで奏でた音楽が仲間の異常状態をかなり高い確率で除去していく。
「これで打ち止め。あとは当たらないように気をつけて!」
といったそばから貝墓の光線が無数に分裂してアクセルへ迫った。
「わわっ!?」
直撃をうけるアクセル。破壊される船。
傾いて今まさに沈みゆく船の上で、ミーナは助走をつけた跳躍と共に『ルージュ・エ・ノワール』の斬撃を浴びせた。
「貝は蒸し焼き、ってな。殻が固いなら内側からじわじわやるんだよ」
APリソースはだいぶ危なかったが、ミーナはハーフ・アムリタを使って即座に回復。
振りかざした聖剣に全身全霊を米、貝墓の殻を思い切り殴りまくった。
そしてついに打ち破られた殻の先。虹色の眼球をミーナの剣が貫いていく。
「悲恋の別れ、ってやつかねぇ」
言いながら、姫喬は『八尋火』をがじがじとやって光らせると蟹壊の足を切りつけ始めた。
防御の堅さのわりに足自体は弱いようで、すぐに切断されて海中へと没する蟹壊。
「■■■■■■……」
なにか言葉にならぬ言葉を放って、蟹壊は撤退を開始。
水流のジェットで海中を泳いでいく。
「逃がすか。迷わぬように、ここできっちり冥土へ送ってやらぁ!」
追撃をかける姫喬やプラックたち。
回り込んだプラックは蹴り技で強制的にブロックをかけると、あとから追ってきた幻へと合図を送った――と同時に蟹壊からはえた無数の足がプラックを貫いていく。
「夢幻(無限)の奇術師の意地に賭けて絶対負けません。
羨み妬むだけ無駄ですよ。僕も貴方達と同じような嫉妬に狂った化物に違いないのですから」
それが最後であった。幻の作り出した巨大な銛が蟹壊の殻を破り、身を貫いて頭を抜けていく。
びくびくとけいれんするように動いてから、蟹壊は海の底へと沈んでいった。
イレギュラーズは置き去りにされた乗組員不在の船を使い、アクエリア中継基地へと帰還した。
「ボロボロだけど、なんとか勝ったね」
「交戦した海兵隊がダメージを蓄積させてくれていたおかげ、でしょうか……」
変異種。アルバニアの性格の悪さを感じるようなその発生方法もさることながら、敵としての強力さをイレギュラーズたちは知った。
もしこの先、何体ものハイレベル変異種を相手取ることになったなら……。
「八十神、こんなモンが、あんたの見たかった景色なのかい……」
死と崩壊と絶望だらけの海を振り返り、姫喬はため息をついた。
襲いかかる恐れ。それを乗り越える勇気。
イレギュラーズ戦いは、まだ続く。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
――辛勝
――海域突破
GMコメント
■■■変異種の討伐■■■
強力な変異種×2と弱めの変異種複数を討伐します
現場海域までは船を使い、戦闘も主に船上で行うことになるでしょう
■■■戦闘の前半と後半■■■
●前半
戦闘前半は海域へ到着直後に襲ってくる複数の変異種(弱め)との戦闘になります。
変異してしまった人間たちが怪物となって襲いかかってきます。
飛行タイプと水中移動タイプに分かれ、戦闘方法もバラバラです。
統率はとれておらず、個体ごとの戦闘力は(知能含め)低めです。
得意な戦法でこれらを撃滅してください。
逆にここで撃滅しきれないと強力な変異種との戦闘に割り込まれ大変厄介です。
●後半
二体の強力な変異種が敵になります。
この二体はほかと違ってある程度連携を取ってくるので、『この二体ならどんな合わせ技が有効かな』と相手の立場で考えつつ、逆に相手だったらされたくないことを考えて動くとよいでしょう。
・蟹壊アナザータイプ
水面を歩くように移動する巨大なタカアシガニです。
といっても腕が無限に増幅し、伸びた腕で対象を槍のように貫く戦法をとってきます。
EXAと防御、弱点攻撃に優れます。
・貝墓アナザータイプ
空中を浮遊している巨大なホタテ貝です。
虹色の破壊光線を放ち、複数のBS効果を持ちます。
BSの種類までは特定できませんでしたが、スリップダメージ系、ステータス低下系、行動不能系が一通りあり、呪殺効果を併用しているとみられています。
命中と防御に優れます。
■■■アドリブ度■■■
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。
●重要な備考
<Breaking Blue>ではイレギュラーズが『廃滅病』に罹患する場合があります。
『廃滅病』を発症した場合、キャラクターが『死兆』状態となる場合がありますのでご注意下さい。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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