PandoraPartyProject

シナリオ詳細

我ら、チュートリアル山賊団!!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●初仕事!
 冒険者には、誰にも初心者の頃がある。
 最初からすべてを経験して出発できる者などいない。
 そんなレベル1の冒険者たちがパーティを組み、初依頼に向かう。

「オラの夢は、冒険でうーんと銭っ子を貯めて畑を買うことだ!」
「畑って、いくらくらいするの?」

 先頭を歩くのは、どこかのんびりした雰囲気の戦士ダイムとまだビキニアーマーの胸当てに詰め物をしていると思わしき女戦士リカ。

「おおい、待ってくれ……! よ、鎧が重い……」

 このふたりについていく重騎士ケイン。鎧に着られていると言ったほうがいい印象だ。
 続いて、覆面姿の忍者バコヤシと虚無僧の神官ムソーが続く。この辺、実力はよくわからないふたりだ。

「なんか来ても、わたしの氷結魔法でカチコチよ! わたしの師匠は偉大な氷系魔術師の弟子だったんだもの」

 ここでノッコが自慢げに言う。
 つまりは、孫弟子なわけでそれがどの程度の威力なのかは推して知るべし。どんなにイキっても、1レベルである。

「あ、あのう……。ボクたちレベル1なんですから、もっと慎重に進んだほうが」

 後列で妙にビクビクしているのは、盗賊のショータである。
 見るからに弱気そうだが、パッと見はかわいい。
 サキュバスとかの餌食になりやすいタイプだ。

「大丈夫だって! なんたって俺にはこの文明の利器スマホがある!」

 勇者ホタローは、自慢のスマホを得意げに見せる。
 ホタローは異世界から来たウォーカーの少年である。
 そこから持ってきたスマホがあれば、大抵のことはクリアーできると思っている。
 と言っても、そのスマホが使えるのは、便利な魔術具程度でしかないのだが。
 まだ5Gに対応しておらず、メモリ4GBのストレージ64GBとローエンドっぽい性能だ。
 彼が向かうのは、山賊退治である。

●チュートリアル山賊の出番!
「というわけで、チュートリアル山賊団の仕事だぜ」

 『黒猫の』ショウ(p3n000005)がローレットのメンバーたちに言う。
 チュートリアル山賊とは何か?
 ギルド・ローレットでは、新人冒険者の育成のために山賊退治の実地試験を行なうことがある。
 このとき、こっそり手加減できるメンバーを山賊に扮装させてこれに当たらせるという役目がある。
 新人冒険者は、実戦(そう思っているのは新人たちだけだが)をくぐり抜け、知らぬ間に自信と経験を備えると、こういうわけだ。

「じゃ、今回の新人たちのリストだ」

 ショウがリストを読み上げる。

・農民上がりの戦士ダイム(♂ 18)
・ビキニアーマーサイズ違い女戦士リカ(♀ 14)
・タンク騎士ケイン(♂ 20)
・自称忍者バコヤシ(♂ 16)
・魔法使いの弟子の弟子ノッコ(♀ 17)
・虚無僧の神官ムソー(? ?)
・弱虫若年盗賊ショータ(♂ 13)
・スマホ勇者ホタロー(♂ 15)

「まあ、前歴はいろいろあるが、全員1レベルだ。ちょっと冒険した相手なら本気でかかりゃあ、あっという間にのしちまうだろう。今回の依頼のポイントは、キミたちがうまーく戦い方を教えながら鍛え、ほどよく負けてやることにある」

 負けてやる、ここがチュートリアル山賊団の難しいところである。新人のなまっちょろい攻撃に、あえて負けてやらなければならない。しかも、ちゃんと実戦さながらに。

「いや、まあ舐めたやつは重傷くらい与えてやってもいいぜ? 後で回復してやるし。それと、無事帰ってきたらネタばれパーティもする予定だ。ドッキリってやつだな」

 ショウは言った。このネタばれパーティへの出席は自由だそうだ。
 山賊が根城にする砦跡で待ち受け、地図を相手にやってくる新人たちをほどよく厳しく、ほどよく優しく導いてやってほしい。

GMコメント

■このシナリオについて
 皆様こんちは、解谷アキラです。
 今回、皆さんには山賊役をやってもらいます。
 あくまでも役ですので、新人を鍛える一環です。
 新人メンバーは依頼にあるとおりです。
 全員レベル1、通常なら山賊などに負けない戦力です。
 しかし、ちょっと油断すると危険がいっぱいなわけで、チュートリアルのように導いて新人育成に協力してください。
 なお、彼らはパンドラやギフトは使わないです。
 仮に使えるのだとしても、このシナリオにおいては使用しません(PCと違って、使いこなせないのだと思ってください)。

・注意点
 ほどよく手加減してやってください。
 こいつ舐めてるなって新人は重傷にしちゃっても構いませんが、全員戦闘不能の全滅は失敗です。
 やられ方、負け方が重要です。うまく導き、冒険者の心得を学ばせ、花を持たせたってください。

・ネタばれパーティ
「実は先輩たちでしたー」と種明かしする宴です。
 飲み食いして過ごす予定ですが、自由参加です。

 それでは、一丁揉んでやってください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 我ら、チュートリアル山賊団!!Lv:0以上完了
  • GM名解谷アキラ
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年04月24日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

グドルフ・ボイデル(p3p000694)
カムイ・シロガネ(p3p000782)
血煙の鑑定屋
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
クィニー・ザルファー(p3p001779)
QZ
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
リサ・ディーラング(p3p008016)
蒸気迫撃
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

リプレイ

●登場! チュートリアル山賊団
 見るからに駆け出し風の新米冒険者パーティである。

「山賊なんてあっという間っしょ!」

 別世界からやってきたという勇者ホタローが、余裕こいた態度で山道を進んでいた。
 その世界の文明の利器であったスマホのGPS機能がここでも使えるので、道に迷うことはないと安心しきっている(実際、仕組みはわからないが機能する)。

「ホタロー、そうやって油断しても知らないんだからね」

 女戦士リカは呆れた調子で言いながらも、先頭を進む。
 まだ発育途中なので、ビキニアーマーがサイズ違いである。パッドを入れてなんとか体裁を保っているが、これからの成長に期待だ。
 この新米パーティのメンバーについておさらいしておこう。

農民上がりの戦士ダイム(♂ 18)
ビキニアーマーサイズ違い女戦士リカ(♀ 14)
タンク騎士ケイン(♂ 20)
自称忍者バコヤシ(♂ 16)
魔法使いの弟子の弟子ノッコ(♀ 17)
虚無僧の神官ムソー(? ?)
弱虫若年盗賊ショータ(♂ 13)
スマホ勇者ホタロー(♂ 15)

 以上の8名は、山賊退治の依頼を受けてこの山地にやってきたのだ。
 山賊なんてどうってことはない、みんなそう高を括っている。
 一名、神官ムソーのみ表情はうかがいしれない。虚無僧だからだ。
 そんな彼らを、高台から見下ろす者たちがあった。

「ハッ、ヒヨッコどもを鍛え上げるのも、オトナの役目ってやつか。いいぜ、このグドルフさまに任せておきな!」

 チュートリアル山賊団の頭目、『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)である。どう見ても本物なので、新米たちが疑うことはないだろう。
 やはり、本職は迫力が違った。

「チチッ、チチチッ!」

 その親分の方に懐いている子狐は、『新米の稲荷様』長月・イナリ(p3p008096)が化けたものだ。
 ゴツい親分に懐く小動物のペット役というということである。なかなか心得たチョイスだ。

(私も2カ月前はあんな状態だったわね)

 と小動物形態でしみじみ思い返すイナリである。

「ふうん、今回の相手はずいぶんと教育のし甲斐がありそうじゃないのさ」

 親分役のグドルフの横に立つのは、ワイルドな衣装と目隠れポニテスタイルとなった『銀青の戦乙女』アルテミア・フィルティス(p3p001981)である。
 思わず、姐御と呼びたくなってしまう装いだ。
 くつろいでいるときはヤスリで爪の形を研いでいそうな感じである。
 しかし、親分のグドルフの横にその格好で立つと愛人ポジションなんじゃ? ……なんていう疑問も浮かぶだろう。
 だが、待ってほしい。
 アルテミアといえば美しい姫騎士として評判ではないか。
 にもかかわらず、山賊のオンナ風情になりきっているのは、ひとえに新人教育のため。
 その慈愛あふれる優しさと思い遣りこ讃え、評価するべきであろう。

「へっへっへー、アニキ。連中素人丸出しですぜ」

 こちらも、見事な三下っぷりであった。
 『隘路にヘテロニー』清水 洸汰(p3p000845)は、でかい親分の下につくチビな三下になりきっている。
 ここではグドルフも“親分”と呼ぶより、あえて“おやびん”と言うべきであろうか。

「……フッ、新米冒険者か」

 いろいろ思うところがある『特異運命座標』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160) である。
 かつて、彼には山賊に変装した経験があった。
 ろくでもない事情だと言うので、くわしく知る者はない。
 しかし、人間何事も経験しておくものである。
 まさか、その経験が役に立つ機会が来るとは。
 こうして言葉少なにグドルフの脇になっていると、雇われた騎士崩れの用心棒っぽい。
 ともかくも、山賊気分を出してチュートリアルに挑む。

「よおし、あいつら存分に可愛がってやるか」

 グドルフがにいっと口元を歪めた。
 あくまでも山賊のふりをするのが依頼であるが、本当に山賊行為を働きそうな笑みであった。
 しかし、それはそれとして舐めた雰囲気の新米どもをビビらせるには、それなりのリアリィが必要なわけで、この場合全員に素質があった。
 いよいよ、チュートリアル山賊団が動き出すときである。

●チュートリアルの洗礼
「山賊のアジトはこの先ずらよ」

 農民上がりの戦士ダイムが先頭を進み、新米冒険者パーティはアジトである砦跡の奥へと分け入っていく。

「山賊なぞ、忍者の敵ではござらん」

 バコヤシが忍者であるのは彼の自称でしかない。
 しかし、その自称が自信となって勇気に変わることもある。
 それはそれとして、根拠がその程度だと増長ともいえるのだが。

「気をつけてくださいね? 罠が仕掛けてあることだってありますから」
「あっ」
「『あっ』ってなんですか!? 『あっ』って!」

 弱虫若年盗賊ショータが心配している矢先、これである。
 バコヤシの足元には、トラップのロープが絡まっていた。
 カラカラと、鳴子が音を立てる。

「いやほら、拙者なんやかんや言っても1レベルでござるし?」

 1レベルなのにイキると大抵こうなるのである。
 彼らにも、いい教訓となった。

「げーはっはっは! かかりやがったすね素人どもが」

 『ザ・ハンマーの弟子』リサ・ディーラング(p3p008016)が山賊的なゲスっぽい笑い声を上げて姿を現す。
 見事に仕掛けたトラップに引っかかったわけで、教育効果は抜群であった。

「て、敵だ!?」

 思わず身構えるタンク役の重装騎士ケインであったが、がっしゃんがっしゃん鎧がうるさく、防御力はありそうだが敏捷性は期待できない。

「ヒャッハー! 後ろががら空きだぜぇー!」

 天井から、『QZ』クィニー・ザルファー(p3p001779)が襲いかかる。
 こういう奇襲は、山賊っぽいマニューバーだ。
 山賊団の中には、身軽ではしっこいのがいて、不意打ちや騙し討ちを得意とするものである。
 今回、QZはその役を買って出たのだ。

「アハハッ! 不用心に山賊のアジトに入ってくるなんて、とんだヒヨッコどもだねぇッ!」

 姐御なアルテミアがばあああん! と登場し、中ボス的オーラを醸し出す。

「姐御ぉ、こいつらどう料理してやろうっすかね? 後ろのガキンチョは、仕掛け網に追い込んで吊り下げていたぶってやるのがいいっすかね?」
「……はっ!? 仕掛け網」

 このままじゃ新米もいいとこなしで終わるかな? と思ったリサが、それとなくショータにヒントを出す。
 あくまでも、今回のお仕事はチュートリアルだ。

「ちっ、気づきやがったっすね。でも、私の罠はそう簡単に破れないっすよ。シーブスツールを用意して、いろいろ確かめてから、絡むロープを切っていきでもしなきゃね!」
「……ええと、そうか! ツールを出して、こう?」

 ショータ、なんとか罠を解除する。
 その様子を見守りながら、心の中でガッツポーズをするチュートリアル山賊団一同である。はじめてのお使いをみんなで見守る、あの感じだ。

「魔法! 魔法よ、魔法! ってきゃああ!?」

 偉大な魔法使いの弟子の弟子というノッコが氷結魔法を放とうとするも、足元の漢をひっくり返してしまい、大量の虫をぶちまける。
 これもリサのトラップであった。効果は大きくないが、嫌がらせには十分だ。早々ヒントばかり出すわけにもいかない。

「姐御、そろそろ例の掛け声を!」

 QZが、アルテミアに何かを促す。
 何かを期待する視線が、姐御役のアルテミアに集まった。

「ああ、あれね……」

 すうっ……。アルテミア、大きく息を吸い込んだ。
 皆、アルテミアのアレを待っているのだ。

「――野郎ども、やあっておしまいっ!!」
「あらほらさっさぁっ!!」

 やはり、この号令である。
 これがあるだけで、意気込みがまったく違う。

「それじゃ、やってやろうじゃねえかっす!」
「では、ここは私に任せてもらおう!」

 『血煙の鑑定屋』カムイ・シロガネ(p3p000782)である。

「くっ!」

 ダイムとリカのふたりがカムイとの間合いを図る。

(……さぁ、冒険者! 私をどう倒す!? どう倒してくれるんだ!!)

 みずから防御を捨てて、あえて存分に攻撃を食らってしまおうとするカムイに、ふたりは攻めあぐねている。
 なにかある、そう思うとかえって手が出せない。
 まさか、目の前のお姉さんがダメージを受けることで昂ぶってしまう性癖の持ち主だとは思うまい。お釈迦様でも想定外である。

「う、うおおお!」
「ちぇえええい!」

 ふたりの戦士攻撃が繰り出される。これをカムイが歓迎するかのように受ける。

「うっ……! くふぅ……。ぬるい攻撃をするな! もっと連携して私を痛めつけろ! 勇者もちゃんと指示を出せ! お前の仲間が死ぬぞ!」
「うおおおお!」
「でやああああ!」
「おし、Yahooooズタ袋で回答が返ってきたぜ! 左からえぐりこむように、斬るべし斬るべし!」
「んふっ! むふっ……。ううううんっ!」

 攻撃を受けるたび、苦悶の声を上げるカムイ。
 何故だか、ショータはその光景から目が離せない。

(な、なんだろう? この感覚……。あのお姉さんが声を上げるたび、ヘンな気持ちに……)

 1レベルの冒険者には、まだ早すぎる光景である。

「壁役が居ないのに魔法を唱えるなんて、狙ってくれと言っているものよねぇ!」
「きゃああっ、あああっ!」

 アルテミアはうろたえるノッコに、ビッシビシ教育的指導の愛のムチの紅孔雀を振るう。
 もちろん、手加減はしている。ちょっとは気を引き締めてくれるだろうと期待して。

「……あー、アルテミアの姐御ぉ」

 ここで、QZはアルテミアに目配せした。

(そろそろ引き上げない……?)
(そうですね。もう十分だと思います)

 アイコンタクトで意思疎通が完了した。

「く、クソッ! 罠が壊されちゃ勝てっこないじゃないかッ!」
「やめたやめたー! やってられるかー! あとは奥の三人に任せるよ!」

 アルテミア、QZは撤退した。

「あー、姉御ぉ! 置いていかないで~! お願いします、もうこんなことはしないんで助けてくださいっすー!!」

 ここで、リサは命乞いをする。

「……どうしよう?」
「そんなこといわれても」
「ぶおぉぉぉぉ~」

 新米たちは、捕虜の扱いにも困っていた。
 虚無僧の僧侶ムソーは、適当に尺八を吹いた。

「もっと結び目をきつくしろ、私は逃げられると厄介だぞ……」

 抵抗を放棄したカムイも捕らえられたが、これはこれで持て余していた。

「こ、こうでござるか!?」
「……くっ、この肌に食い込む感じ、なかなかテクニシャンだな!」

 自称y忍者バコヤシもカムイを縛りながら、何かが目覚めようとしていた。
 レベルアップへの期待が高まる。

「へっへー、今のうち! 助けておやびーん!!」

 その隙を突いて、リサは見事にトンズラした。

●いよいよボス戦
 新米一行は、カムイを捕虜にしつつ砦奥に進む。
 その部屋には、酒瓶や奪ったものと思しき金貨や宝石などの財宝(フェイク)が転がっている。

「何だあ、てめえら。見張りの連中は何してやがった?」

 ぷはぁっと酒臭い息を吐きながら、かじっていた骨付き肉を放おるグドルフである。
 さすがは本職だけあって、迫力が段違いだ。
 新米たちも、思わず後ずさる。

「まあいい、行け、おめえら! 全員身ぐるみかっぱいで、湖に沈めてやれ!」
「任せてくださいアニキ! アニキの右腕のあっしに任せてくだせえ」
「チチィッ!!」

 洸汰とイナリも、迫真の演義であった。

「……行くぞ」

 そして槍を構える雇われた騎士崩れっぽいベネディクト。

「くっ、こいつ……できる!?」

 スマホ勇者ホタローは思わず言った。
 しかし、ただが1レベル。相手の力量なんでわかるはずもない。そういう空気なので言ってみただけだ。

「邪魔ァすんじゃねえ!」

 グドルフが一喝すると、新米たちも思わず後ずさる。

「待て待て待てーぃ! このオレの目の黒いうちは、アニキに指一歩触れさせやしねーぜー!」

 ここで三下っぽい洸汰も歩みだす。

「やーいやーい! ペーペーのシロート冒険者にオレが負けるかよー!」
「なにおう! スマホの力を舐めんなよ!」

 そして戦いの火蓋は切って落とされ、乱戦となった。
 隅っこまで駆け回っていたイナリが、ドロンと正体を表して奇襲する。

「ちょっ!? あのキツネさんがっ!」
「ただの畜生動物って油断していたかしら? 残念、私もこの山賊のメンバーの一人なのよね!」
「せっかく可愛かったのに!? どうしてよ!」

 などと、理不尽な怒りを燃やす女戦士リカ。

「こっちの姿で可愛いでしょうがあ!」

 ぼかすかと殴り合いが始まった。
 とはいえ、新人たちを怪我させてはならない。
 躱しつつ、致命傷とならないところを狙う。
 しかし、新人とはいえ冒険者である。やられてばかりではない。
 元農民の戦士ダムドが鍬打ちの要領で一撃を振り下ろした。

「うわーん! 痛いよおかーちゃーん!!」

 見事命中! ……したわけではないがこのへんでいいだろうと洸汰は逃げていった。

「ようし、もう少し!」
「窮鼠、猫を噛むという。……油断は、ありがたいが?」

 切り込もうとするホタローの前に、できる男としてベネディクトが立つ。

「くそお、スマホで剣術習得した勇者の力、見せてやるかんな!」

 勇者らしく、勇気を奮って攻撃してくる。
 それでいい、ベネディクトは太刀筋を確認するとあえて倒れる。

「みんな、いくぞ!」

 それで自信をつけたホタローは、皆を率いてグドルフに向かった。

「ぐああああ!」
「や、やった!」
「わ、悪かった! もうこの山賊団は解散だあ。おれと、メンバーの7人全員、命だけは助けてくれい!」

 派手にぶっ飛んだグドルフが、命乞いをする。
 新米たちも、勝利の喜びに湧く。

「はい、ここでネタバレ! チュートリアルでしたー」

 イナリがチュートリアル成功とばかりに看板を掲げるのだった。

●ネタバレパーティ
「いやー、チュートリアルだったんですね! すっかり本物だって思いましたよ!」

 そんなわけで、新米を囲んでのネタバレパーティである。

「もう、こんな美人な山賊いるわけないでしょ?」

 QZがウインクしてみせる。
 アルテミアも、姐御スタイルから姫騎士に戻っている。
 こっちが本来の姿である。間違えてはいけない。

「ほら、しっかり動いた後だからおいしいわよ」

 狐巫女のイナリが、塩おにぎりと沢庵を振る舞ってくれた。新米たちも食が進む。
 リサは、見つからないようにこっそり食べている。

「いや、その節はお世話になりました姐御ぉ」
「ですから、私は姐御ではありませんっ」
「いや、何時バレるかと思って冷や冷やしていたが。無事に事が終わって何よりだ」
「いや、おらたちもひやひやしたずらよ。なんで山賊に立派な騎士様がいるのかって」
「さっきはキツい事いっちまってごめんなー。皆大丈夫かー?」
「ぶおおおおおっ~!」
「バコヤシ、同じ忍者としてキミには期待しているぞ」
「過分なお言葉にござる。……まだ縛られているでござるか?」
「ああ、ロープの使い方もなかなかのものだ」

 なかなか、和気藹々のネタバレパーティである。

「オウ、邪魔するぜえ!」

 ここでグドルフの親分が登場した。

「やっぱり、グドルフの親分は迫力が違いますね。アルテミアさんも真に迫ってましたけど」
「ああ、グドルフさんは本職の人だしね」
「えっ!?」

 しれっといったQZの言葉に、一同固まった。

「足を洗って冒険者になったとかじゃなくて?」
「馬鹿言え。あの山賊団『は』解散するんであって、おれさまが山賊を辞めるなんて一言も言ってねえよ!」

 山賊一筋、そういう生き方もあるのだ。
 その本職が認めたのだから、彼らも大したものだ。

「ま、イイ経験になったろ? ここまで手ェ掛けたんだ、簡単に死ぬんじゃねえぞ」
「というわけで、合格! でいいんじゃない?」

 QZからのお墨付きも出た。
 こうして、新米冒険者たちも一皮むけたのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でございました!
 彼らも、無事にチュートリアルをこなして冒険のなんたるかを学んだかと思います。
 山賊役、楽しんでいただけたようで何よりです。
 こういう依頼も楽しかったので、また何か考えておきます。
 それでは、またお会いしましょう。

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