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シナリオ詳細

青の湖を守って

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●狙われた青の湖
 先代主様が消えて数か月。
 優しかった主様がいなくなった寂しさを胸に残したまま、主様に恥じないようにと日々を過ごしていた青の湖の平穏が破られたのは、突然のことだった。
「何事です!?」
 まだ不慣れな新しい主が声を上げれば、臆病な妖精たちは身を隠しながら答える。
「ケルピーと黒妖犬たちが突然この湖に……!!」
 穏やかだった先代主様に見合うように、この青の湖付近に住まう妖精は皆穏やかで平和を好む。半面、争いには不慣れだった。
 だけど先代主様は強い力を持つ妖精で、その力を持ってこの近隣を守っていた。
「主様が消えて、この湖を奪いに来たのか……!?」
 愕然とする新しい主の周りに、どうすればと妖精たちが集まってくる。
「……助けとなってくれる存在に心当たりは……?」
「ケルピーと黒妖犬相手じゃ……」
 同じ水に属する妖精と言え、戦いになればその差は歴然としている。
(考えろ。皆を守る方法を考えろ……!)
 ぎり。と拳を握りしめ、助けてくれそうな知り合いを考える。
 クルラホーンは酒作りに特化した妖精。
 シルキーは家事。小妖精たちは戦力になるわけもなく。
 そこまで考えて、ふとシルキーたちのもとに顔を出すようになった人間のことを思い出す。彼らは、主様を看取ってくれた人間の仲間だと言っていたはず。
「すぐにシルキーに彼らを呼んでもらえないか伝えてください」
 今は手段を選んでいる暇はない。
 この湖を、主様の帰る場所を守るために悪妖精たちを撤退させなければいけない。

●緑の案内人
「……フェリーチェ、君の知り合いがピンチだよ」
「え?」
 黒衣を纏った穏やかな境界案内人仲間の声に、フェリーチェは読んでいた本を置いてフォレスの元へ駆け寄った。
「図書館内では走らないの」
 やんわりと叱った後、問題の本、フェアリーテイルを差し出す。
 ざっと本に目を通したフェリーチェは慌てて周囲にいたイレギュラーズに向かって叫んだ。
「今すぐフェアリーテイルに行って、悪妖精を撤退させるの手伝ってくれる人ー!!」
「だから、図書館で騒がない……」
 フォレスの呟きは、フェリーチェの声でかき消された。
「騒がしくてごめんね? あぁ、僕はフォレス。また君たちを案内すると思うけど、その時は宜しくね」

NMコメント

 青の湖防衛戦です。
 妖精たちは皆戦う力を持っていないので、代わりに悪妖精から青の湖を守ってください。

●成功条件
・悪妖精を全て倒す。
 ケルピーが4体と黒妖犬が沢山います。
 黒妖犬は強くはないですが、数が多いです。
 ケルピーは4体だけですがそれなりに強いです。
 協力してもよし、個別で無双してもよしなので、すべて倒して青の湖を守ってください。

●妖精たち
・新しい主
 現青の湖の主。まだ未熟で、自分が主で良いのかと悩んでいる。
・ケルピー
 捻じれた角を持つ馬のような妖精。
 水属性で、水中に引きずり込んだ獲物を食らう。
・黒妖犬
 大型の黒い犬のような妖精。

●その他
・湖の中に入っても、普通に呼吸や会話は可能。
・初期は悪妖精たちはまだ湖から少し離れたところにいます。

穏やかな日常を取り戻し始めた青の湖の平和を守るために、皆さんの助力をお願いします。

  • 青の湖を守って完了
  • NM名ゆーき
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年04月20日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

リプレイ

●揺れる水辺に映るは
「皆さん、よろしくお願いします」
 震える手を握りしめて頭を下げる主に、『特異運命座標』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)が顔を上げるように促す。
「顔を上げてくれ湖の主。俺の力で良ければ、喜んでこの力を貸そう」
「あたしも出来る限りのことはするわ! まぁ、基本は皆のサポートだけど」
 『旋律を知る者』リア・クォーツ(p3p004937)の言葉に、主は心強いと強張った顔で小さく微笑んだ。
「あぁ、湖の主の言う通りだ。クォーツの存在はとても心強い」
「あら、じゃぁ期待に応えられるように頑張らないとね」
 くすくす笑うリアたちと少し離れたところで、『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)がフォレスとの再会に喜びを表していた。
「まさかフォレスに案内されるとは思っていなかったよ!」
「僕もだよ。初めて運命特異点を案内したけど、リゲルと同行出来て良かった」
「確かに、これがフォレスとの初めての任務となるんだな。嬉しいけど、情けないところは見せられないな」
 少し困ったように頬を掻くリゲルの耳に、『新米の稲荷様』長月・イナリ(p3p008096)の呟きが届く。
「ケルピー、確か水辺に住む馬の幻獣だったかしらね? 湖を狙う理由は分からないけど、依頼だから阻止させてもらうわよ!」
 すらりと天叢雲剣のレプリカを構えるイナリの視線の先には、まだ小さな黒妖犬の姿。
「湖の主とも少し会話をしたかったが……今はそれ処では無いな。先ずは悪妖精を全てこの場から追い出す事にするとしよう」
 ベネディクトも双槍を構える。陽光を反射して、切っ先が煌めく。
 それを合図とするかのように、黒妖犬が駆け出した。

「それにこの美しい湖を濁らせてなるものか! 皆と力を合わせれば必ず守り切る事が出来る! さあ、行くぞ!」
 怯える妖精たちを勇気づけるように、リゲルが高らかに声を上げる。
 ふわりとリゲルを中心に光が広がり、湖を優しく包み込む。これで湖や湖周辺が戦いの影響で乱されることはない。
 ギフトで光らせた剣を高く掲げると、リゲルは黒妖犬の群れに向かって走り出した。
「遠慮なく行かせてもらうわ!」
 リゲルと違う方向に駆け出したイナリは、走るリズムに合わせて自らのコンディションを高めていく。
「開きませ、おいでませ。異界より来たるは天宇受賣命。我が身宿りてこの地に顕現されませ!」
 歌うような言葉に合わせ、ゆらりとイナリの体から淡いピンクの薄靄や広がっていく。
 イナリに宿るは異界にいる芸能を司る神。その神を宿す今のイナリは、神のごとく美しく華やかだ。
「ふふ、私の力は、奇麗で動けないでしょう?」
 そう微笑むのはイナリか、それとも――。

「イナリさん!」
 神気が消えたイナリが血を吐くのを見て、リアは己の魔力を両手に集める。
 ふわりと青白い光が集まり、いつの間にかリアの手には優美なヴァイオリンが。
「英雄幻奏第六楽章、慈愛のカルマート」
 一見細くたおやかな、だけど折れることない強さを持つ銀の長剣を弦に添えて深く息を吐く。そして静かな動きで剣を動かせば、深く優しく、包み込むような音が響いていく。
「あの音を止めろ!」
 黒妖犬の後ろから、そんな声が聞こえる。おそらくはケルピーだろう。
「おっと、クォーツは傷つけさせないぞ」
 演奏に集中するリアを守るのはベネディクト。
「どの様な状況下であれ、最善を尽くす。俺に出来る事はそれだけだ、行くぞ!」
 リアを守るように立つベネディクトは、リゲルとイナリの手をすり抜けた黒妖犬に槍を向ける。
 幸いリゲルとイナリの攻撃網を抜けた数は少ない。だからと言って手を抜くことはなく、ベネディクトの槍は風を纏い、黒妖犬を貫いていく。

「後方まで浸透してくる相手はこちらに任せろ!」
 打ち漏らした黒妖犬が演奏に、癒しに集中するリアに向かうのを見て一瞬の焦りを見せるリゲルとイナリだったが、ベネディクトの言葉に前を向く。
「えぇ! リアさんのことはお願いします!」
「任せてくれ!」
 4対多数であるこの状態で、回復を担うリアが倒れたらどうなることか。
 それをわかっているから、ベネディクトはリアが倒れる事が無い様に、彼女を庇う事も判断の一つとして考えていた。万が一の場合、リアが居れば立て直す事も可能だから。

 リアの耳に届くのは、いくつもの声と旋律。
 まっすぐで優しい旋律に、不安で今にも消えてしまいそうな旋律。そして怒りに満ちた旋律。
(これは黒妖犬? それともケルピー? どちらにしろ今は数が減るまでみんなを癒すのがあたしの役目!)
 途切れることなく奏でられるヴァイオリンの音と共に、リアの声が風に響く。
「今回、ベネディクトさんがあたしを守ってくれるみたいだし、そこはがっつり信頼して頼っちゃうわ。頼りにしていますね? 王子様?」
 その声に不安はない。
 仲間を信じ、その身の安全を委ねられる信頼があるからだろう。
「その分、リゲルさんとイナリは絶対に倒れさせないわ。どーぞ、安心して大暴れしてくださいね」
 この状況において笑えるのは彼女の強さ。
 強くしなやかで、仲間を支える強い意志を感じさせる微笑みだ。

「心強いお姫様ね!」
 黒妖犬の黒一色の中、イナリの朱色の服が鮮やかに舞う。
「天宇受賣命の芸も奇麗だけど、迦具土神の炎も素敵でしょう?」
 あたり一面に広がった薄靄を追いかけるように、燃やすように、赤い炎が生まれ、集まり、白い熱線となって周囲を穿つ。
 熱はイナリの体も蝕むけれど、リアの奏でる音が聞こえる限りその手が止まることはない。

 熱く燃やすのはイナリだけではない。リゲルもまた、天より落ちる流星群のごとく、火球を黒妖犬に降らせていた。
「もう良い! 下がれ!」
 減っていく黒妖犬の数に、思い通りにならない戦場に焦れたのか、ケルピーたちががリゲルの元へと出てくる。すでにその数は十数匹となっている。
「何故人が邪魔をする」
「助けるのに人も妖精も関係ない!」
 強く踏み込み、刹那に煌めく銀閃と共にケルピーを湖から引きはがす。
 リゲルは例え見ず知らずの人でも、住まう世界が違っても、助けを求めるその声を無下に出来ない。それが知り合いからであれば猶のこと。
「そうそう。助けてって依頼されたんだから、依頼はちゃんと成功させるわ」
 血を流しながらも不敵に笑うイナリに、黒妖犬が小さく一歩下がった。
「おっと、クォーツの元には行かせないぜ?」
 水面を駆けるケルピーにベネディクトの槍が肉薄し、ケルピーはその足を止めた。
「みんな出来るなら程々のところで手を止めてくれない?」
 試したいことがあるというリアの言葉に、三人は小さく頷いた。
 すでに黒妖犬に戦意はない。だけどケルピーの手前、逃げ出すことも出来ないようだ。
「後はお前たちだけのようだな」
 リゲルの剣が白く染まり、周囲が急激に冷える。
「人間如きが調子に乗るな!」
「人と妖精は隣人です! 主様が愛した人を、私たちの良き隣人を侮辱しないでください!」
 震えながらも、先代湖の主様の愛した物ものを守ろうとする主にベネディクトが小さく頷く。
「良き隣人と言ってくれる彼らのためにも負けるわけにはいかないんだ!」
「人も妖精も、手を取り合える!」
 全てを凍てつかせる絶対零度の一撃が、全てを燃やし尽くす炎舞が、全てを貫く槍が、ケルピーたちを倒すのに時間はかからなかった。

●背負うもの
「いい? 貴方達……これ以上痛い目見たくないでしょう?」
 残っていた黒妖犬に静かに話しかけるリアに、黒妖犬はクゥン。と力なく鳴いた。
「この泉の新しい主、あたしの友達なの。だから、今後変なちょっかい出さないでくださいね?
 いいですか? これはあたしからの『お願い』です」
 まっすぐなリアの言葉に、黒妖犬たちは服従を示すように何度も頷いた。
「言うこと聞いてくれるみたいだし、逃がしても大丈夫かしら?」
「そうだな。服従しているようだし大丈夫だろう」
 その言葉を聞いて、黒妖犬たちは一度頭を下げて逃げていった。

「後始末が大変ね、これは」
 湖周辺に残された黒妖犬やケルピーを見て、イナリはうんざりとしている。
「片付けは、するから」
 戦いを任せてしまった分、それぐらいはと手を挙げたシルキーの言葉に、イナリはぱっと顔を輝かせた。

「これだけやったから多分、あいつらもこれから余計なちょっかいを出してくることは無いでしょう」
 奇麗に片付いていく湖周辺を見ながら頷くと、リアは俯いている主の頭を優しく撫でた。
「貴方は最善を尽くしたわ。それと、貴方が新しい主になったって事は、それは誰かに認められたからって事でしょ? 認めてくれた誰かのためにも顔を上げたほうがいいわ」
 撫でられ、驚き顔を上げた主に、ベネディクトも言葉を紡ぐ。
「以前の主がどれだけ主に相応しく、慕われていたのかは実際に会う事が無かった俺には解らない事ではあるが……以前の主も、ただ居たから慕われた訳じゃ決して無い筈だ。
 後継として重圧があるのも解る。尊敬、嫉妬、他にも言葉にすると決して良い感情だけでは語れない父が俺にも一人居るからな」
 前が偉大であればあるほど、後継としての重圧と壁は大きい。
 ベネディクトもその重責と責任を負っているから、主の気持ちは少なからず理解出来る。
「そうです。まだ未熟なら、力を合わせれば良いのです。湖を守りたいという心があれば、その声に応えてくれる相手も集う事でしょう」
 だけど、一人で超えられない壁も、仲間や大切な人と一緒なら超えられる。
「よく俺達を呼んでくれた、その判断がこの湖を守った。君は、主として相応しい仕事をしたんだ」
 立場は違えど、同じ責任を負う者同士、リゲルとべねベネディクトの言葉は主の心に響いた。
「有難うございます……!」
 深く頭を下げる主。だけどその頭は俯いていなかった。

成否

成功

状態異常

なし

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