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シナリオ詳細

<物語の娘>帽子のない帽子屋

完了

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●帽子はどこ?
 ねぇ、アリス。アリスの好きなお歌はなあに? とチューリップが聞く。アリスの好きな歌はおかしな歌ね。私たちが好きなお歌はこれよ。花たちはいっせいに歌い出す。
 この歌の名前はなんていうの? と聞けば、ユリからこう返ってくるだろう。アリスったら、いつだって可笑しいんだから。このお歌に名前なんてないのよ。なんでお歌に名前が必要なのかしら?
 大切なモノには名前をつけたほうが呼びやすい? そう聞いたら、花たちはくすくすと笑って、そんなに大切なモノなら、いっそ名前なんてつけずに大切に持ち続けていればいいのにね。あの帽子屋ったら、大切に大切に金庫に仕舞っておいた帽子を失くしたらしいわよ。くすくすくす。
「アリスに何を言いふらしてるんだ!」
 突然現れたおじさんに花たちはいっせいにだんまり。だって、そのおじさんは本当は帽子がトレードマークの帽子屋なんだから。
 帽子のない帽子屋は「アリス、お茶でもどうかな?」と決まり悪そうにお茶会へとアリスを誘ったのだ。

「帽子のない帽子屋じゃあ何屋なんだか分からない。そんなの紅茶のないお茶会みたいなものさ。そう思うだろう? アリス」
 と痛烈に帽子屋を批判するのは三月ウサギだ。
「むにゃむにゃ……、金庫のヤツも頑固過ぎるんだよ……ぐー……。むにゃ……帽子を仕舞うなり、暗号を教えないと帽子は返さないっていうんだから……ぐー……。」
 ヤマネはコーヒーポットに入ったまま、夢見ごこちに金庫の悪口を言う。
「金庫よ、開け! 開かないとお前を食べちゃうからな!」
「どうぞ、ご自由に。私にナイフが刺さるとは思えませんけれどね」
「なんて頑固なヤツだ。そんな暗号覚えてるわけないじゃないか。」
「だから、貴方はちゃんと暗号を解くための暗号を書き記しておいたというのにそれを解けもしないのですか?」
 帽子屋は金庫と喧嘩している。暗号を解くための暗号とは金庫に貼ってあるこの2枚の紙のことだろうか。アリスは覗き込む。

 ——1枚目の紙
ありす
   はどん
      どんあ
         なのな
            かそこ
               はまる
                  でどー
                     るはう
                        すこゆ
                     びのつ
                  めほど
               のひと
            びとに
         うえは
      ーすの
   やねた
のしい
 ————
 それを読んでいるとヤマネがむにゃむにゃ独り言。
「むにゃむにゃ……、左は右で右は左、真ん中は真ん中さ。当たり前だろう?」

 ——2枚目の紙
 □の□び□□そ□□と□め□は□□い□
 ——
 1枚目と比較すると格段に短い。1枚目と2枚目の違いはなんだろう。そんなことをかんがえていると、三月ウサギは耳を撫でつけながら、言う。
「化粧をしない悪魔はロマンチックでできてるものさ。ロマンチックなものっていったら、そりゃ音楽にお菓子に丸い葉っぱでできたマークだろう。勿論順番だって大事に決まってる」
 
「それにしたって、アリスが僕達と楽しくお茶をしてくれることが一番だから、帽子屋のことはほっといたっていいんだぞ」
「むにゃむにゃ……そうだ、そうだ……ぐー」

●暗号を解く? それともお茶を楽しむ?
 ポルックスは黄金の昼下がりという本を広げて、困った様子だ。貴方達を見つけてポルックスは泣くように言うのだ。
「……そんな帽子屋さんの帽子がないなんて、そんなの酷すぎると思わない?!」
 確かに帽子のない帽子屋なんて、聞いたこともない。
「しかも、謎を解かないと帽子が取り戻せないみたいなの。うーん、うーん、わたしには難しいわ。ねぇ、あなたならこれを解けるかしら?」
 ポルックスが本を広げて、貴方達へと質問する。貴方達はそういわれて、その部分を読む。謎解きか。なんだか不思議な書き方だが、そこに意味があるのだろうか。
「その上、三月ウサギさんとヤマネさんはお茶会をしたくてしたくて仕方ないみたいなのよね。あんまり帽子屋さんの謎解きばっかりに気を取られてたら、この二人が怒って謎解きの邪魔をしてくるかもしれないわ」
 謎解きの邪魔をされるのは困る。謎解きをしつつ、お茶会も楽しまないといけないのか。
「頑張って、お茶会を楽しみながら、謎を解いて、帽子屋さんに帽子を返してあげてね。応援しているから!」
 可愛い女の子に応援されると、やる気がでるものだ。少なくとも著者はやる気が出る。やる気が出た貴方は是非この窮地を助けてほしい。

NMコメント

 綴です。はじめましての方もそうでない方もどうぞご贔屓に。今回は<物語の娘>シリーズの一つとして出させて頂きました。簡単な謎解きにしたつもりです。是非、楽しく謎解きとお茶会をお楽しみ下さい。

◆目標:お茶会を楽しむ
 存分にお茶とおしゃべりをお楽しみ下さい。お茶会に必要なものは大体揃っています。勿論その場で手作りして下さっても構いません。
◆オプション:謎を解いて、帽子を帽子屋に渡す
 存分に謎解きをお楽しみ下さい。数回検証しましたが、ヒントを使えば簡単に解けるはずなので、ヤマネと三月ウサギのいうヒントを上手く使ってください。

●世界観
 アリスシリーズに似た世界観です。参加された皆様は本世界の住人から一律にアリスと呼ばれます。本の名前は黄金の昼下がり。場所の名前はワンダーランドと呼ばれています。

  • <物語の娘>帽子のない帽子屋完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年04月15日 22時05分
  • 参加人数3/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(3人)

シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
冷泉・紗夜(p3p007754)
剣閃連歌

リプレイ

 三月ウサギの庭園は大きなキノコに時計の木、歌う花が咲き誇る。小さな可愛らしい小屋の前には、白いテーブルクロスがかかった大きなテーブル。テーブルの上には沢山のお菓子に何個ものポット。ワンダーランドだけあって、どこか不思議な空間だった。
 虎の精霊のソアはご機嫌な笑顔で青いフリフリしたエプロンドレスを着て、くるっと回って3人に挨拶する。
「今日はお招きありがとー。アリスの格好でお茶会するのが憧れだったんだ! もうアリス気分だよ!」
 三月ウサギは笑う。
「何を言っているんだい、可愛らしいアリス? アリスはいつだってアリスだろう? いつまで経ってもお茶会が終わらないようにね」
 瑞花のように儚くみえる冷泉・紗夜は帽子のない帽子屋を見て柳眉を曇らせる。
「帽子屋さんの帽子が取り出せないのは困った問題ですね」
 帽子屋は憔悴しきった顔で、紗夜に金庫の酷さを訴える。
「そうなんだ、アリス! 全く困った金庫だよ!」
 車椅子の探偵であるシャルロッテ・チェシャは早速、金庫の紙を眺めて、数刻考え込む。解けない。お茶会の最後の最後まで考え続けるつもりではある。だが、悔しさよりも喜びが勝る。世界には解けない謎がまだ沢山ある。そう思えば、世界が謎で満ち溢れることを願うシャルロッテにとって、これほど嬉しいことはない。
「探偵のボクにも解けない謎があるなんて、世界はまだまだ広いね」
 帽子屋は頭を抱える。
「アリス、解けるって言っておくれよ! せめてヒントだけでも!」
 シャルロッテは淡々と言い放つ。
「ボクは確証に至ってない推理やアイディアみたいな中途半端なことは言わない主義なのさ」
 帽子屋は愕然と膝を折る。
「そんな……」
 困った人を放っておけない紗夜は優しく帽子屋の肩を叩く。
「まぁまぁ、そう落ち込まず、お茶会をしている間に思いつくこともあるかもしれません。真剣に肩を怒らせてばかりでは、空気も張り詰めてしまいます。なら、少しだけでも楽しんでいきましょう」
 笑って、微笑んで、そうやって事件は解決を迎えるものですよ、と付け加えて。
 三月ウサギは待ってましたとばかりにニヤリと笑う。
「やっぱりアリスとのお茶会は特別さ。あんな帽子屋など放っておいて、お茶会を楽しもう」
 ソアは無邪気にコーヒーポットの中を覗き込む。
「いーよ、お茶しよう! 美味しいお茶を入れよっ! 香りのいい葉はどれかな? ボクに教えてちょうだい」
 ヤマネは目を擦りつつ、自分のティーカップを用意する。
「むにゃ……それなら、今の季節はチェリーの香りの紅茶がいいんじゃないかな……ぐー。……美味しいチェリーパイもあることだしね……むにゃ……」
「でしたら、私がお煎れしましょう」
 紗夜は礼儀正しい立ち振る舞いで、紅茶を煎れにポットを準備する。それを聞いたヤマネと三月ウサギは上機嫌だ。あれこれとテーブルに雑多に置かれたお菓子を紗夜に差し出す。
「アリスが紅茶を煎れてくれるのかい!? 今日はなんていい日だ!」
「ボクは紅茶もそうだけど、お菓子! クッキーにショートケーキ、チェリーパイ! お腹すいてるからデザートの前にお肉だって食べられるよ!」
 ソアは密かに三月ウサギとヤマネを見て、心の中だけで舌舐めずりする。虎の精霊だから二人がお肉に見えてしまうのも仕方ない。
 シャルロッテは手元のメモに思いついたことを書き殴り、謎解きをしながらも、お茶会を楽しむ腹づもりだ。だって、こんなに不思議な言動する人々なんて、なかなかいない。
「ボクにも紅茶とケーキをくれないかな」
「はい、お待ちくださいね」
 矢継ぎ早の注文にも、紗夜は落ち着いて対応する。まず、机の上の雑多なお菓子を整理し、それぞれの食べる量に合わせて切り分け、彩り豊かに並べ、配膳する。そして、茶葉をいれておいたポットからフルーティーなチェリーの香りがしてきたら、紅茶を各人のポットへと注ぎ込んだ。
 それはあまりに自然で、話している間、気づかないぐらいだ。そして、紗夜自身もしっかりお茶会を楽しんでいた。
 三月ウサギとヤマネはそれを見て満足そうだ。帽子屋すら、茫然自失としていた先程とは打って変わって、楽しげに話している。ソアはそれを聞きながら、ふーっと何度も紅茶に息を吹きかけて冷ます。猫舌ならぬ虎舌なのだ。
「アリスは知ってるかい? この前、黒の女王様が白い薔薇を黒く染めろってお達しを出して、黒のトランプ兵達が駆り出されて、そりゃあ、もう蜂を巣をつついたような大騒ぎだったのさ」
「……むにゃ……アリス、そんな話より、ここのお茶会に白の女王様が参加したのだけど、目に見えないような速さで紅茶とお菓子を楽しんで、あっという間に去って行ったんだよ……ぐー……。……むにゃ……あれは、全く幻のような光景だったよ……ぐー……」
「いやいや、アリス、聞いておくれよ。百合の花ときたら、どれだけ大きな声を出せるかを試すのに、耳が遠くなりそうなくらい大きな声を出すのだから、全くもう堪らなかったよ!」
 誰も彼もがアリスに話したくて仕方ないようで、話し終わることはなさそうだった。
 シャルロッテは最初から不思議に思っていたことをヤマネに聞いてみることにした。
「ヤマネ殿のそのコーヒーポットには干し草でも入っているのかね?」
「……むにゃ……変なことを聞くアリスだね……ぐー。……むにゃ……干し草なんて入ってないさ……。……あるのは、この紙切れくらいかな……ぐー……」
「『とてと』……。……ん……これはどこかで見かけたことがあるような……。……金庫かな? とっておこう」
 帽子屋は金庫と聞くなり、思い出したかのように、激昂し始める。
「お茶もお菓子も最高なのに、私の帽子はアイツの腹の中のまま! 腹立たしいったらありゃしない!」
「そう落ち込まずにさ、偶には違う帽子にしてみたらいいんじゃない? キャスケットなんて、きっとお似合いなのよ?」
「あの値札のついたシルクハットがいいんだよ!」
 ソアの提案は帽子屋のこだわりで却下されてしまった。どうやっても、あの金庫から帽子を取り出さなければいけないらしい。
 紗夜は金庫の紙を持ってきて、みんなが見れるようにテーブル中央に置く。
「一通目のお手紙は、ところどころ、反対から読むと単語になったり、繋がっている部分がありますね」
「アリスはどんどん穴の中? たねやで種屋とか、かな? うぅ……わっかんないよぉ! ねぇ、二人ともボクの特製カナッペをあげるから、もっと詳しいヒントをくれないかな?」
 三月ウサギもヤマネもソア特製のカナッペに目が釘付けになっている。
「……ぐう……アリス特製のカナッペ……! むにゃ……左側は右の文字、右側は左の文字、真ん中は真ん中の文字だよ……ぐう」
 ヤマネが最初に落ちた。シャルロッテは猛然とメモに書き出す。そして、おもむろに「さて」というと、皆がシャルロッテに注目した。
「つまり、こういうことか。一番左の『ありす』はこの中で一番左の『す』、一番右の『すこゆ』はこの中で一番右の『す』、上から5番目の『かそこ』は左右から見て真ん中だからこの中で真ん中の『そ』。そうすると、上から順に『すんあなそはでるすびめのとはのたい』。む……! この一枚目の紙に千切れた跡がある。……あっ! さっきのヤマネ殿の紙にも千切れた跡がある……。この二枚の紙をつなげると、ぴったりじゃないか! 最後に左側に『とてと』だから、さっきの文字列に『と』が加わるんだ。この謎はそもそも解けない謎だった訳だ」
 シャルロッテは苦々しい顔をする。謎は謎でも最初から解けない謎なんてモノは解くべき謎ではない。そんなのは時間の無駄だ。
 ヤマネはシャルロッテの鋭い眼光にも素知らぬ顔で、ソアからカナッペをもらって嬉しそうに齧っている。三月ウサギがヤマネを羨ましそうな顔で見る。
「ヤマネ君だけ狡いな。私もアリス特製カナッペが欲しい!」
「ヒントをくれたら、ボクの特製カナッペをあげるよ」
 ソアの言葉に三月ウサギは逡巡して、重い口を開いた。
「アリスのカナッペの為なら仕方ないな……。化粧しないことを素と、悪魔をデビルと言うだろう。それから音楽にソナタ、お菓子に飴、丸い葉の植物に蓮があるね。そしてマークは印とも呼べる」
 シャルロッテは手元のメモを更に書き込んでいく。
「さっきの意味不明な文字列を並べ換えるのか。ふむ……つまり、暗号は『すのでびるはそなたとあめとはすのいん』か」
 帽子屋は嫌な予感がして、二人へと問いかける。
「三月ウサギ、ヤマネ、君達、もしかして暗号を知ってたんじゃないのか?!」
 二人は声を揃える。
「「勿論知ってたさ」」
「むにゃ……だって、キミは僕達に暗号を聞かなかったじゃないか……ぐう」
「そういうことだよ。君の落ち度だね」
 二人の発言に、帽子屋は恨めしそうな顔をしつつ、やけくそになって暗号を金庫へと叫ぶ。無事金庫は開いて、帽子は帽子屋の頭に戻ったのだった。
 ソアは三月ウサギに特製カナッペを渡し、紗夜はここでは珍しい抹茶菓子を皆に配る。
「帽子屋さん、ちゃんと帽子が戻ってよかったね!」
「もう金庫に帽子を入れちゃダメですよ」
「二度と金庫なんか使うもんか! それにしても、この奇妙な緑色のお菓子は美味しいね」
 帽子屋は叫び、金庫も「もうウンザリだ!」と叫び返し、消えた。だがシャルロッテは最初から不思議に思っていたことがあった。
「そもそも帽子屋殿は何故わざわざ帽子を金庫に仕舞い込んだんだい?」
「黒マントの男があの頑固な金庫に帽子を入れれば、ずっと身につけてなくても無くすことないって言うから貰ったんだ。あんな陰気なやつ、ワンダーランドじゃ初めて見たよ」
「……考えすぎるのはボクの悪い癖だな」
 黒マントの男の影が頭に過りながらも、シャルロッテは紅茶を啜る。

 ——これは事件の序章に過ぎないかもしれないなんて。

成否

成功

状態異常

なし

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