PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ディア、スパークリングフロート

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●しゅわしゅわメロンソーダ
 淵広の長型グラスに緑のソーダが注ぎ込まれ、側面にしゅわしゅわとした炭酸飲料独特のあわが生まれていく。
 そこへまるくかたどったバニラフレーバーのアイスクリームを、グラスの淵につまるほどに放り込む。
 堂々と乗ったバニラアイスのつややかな表面と、メロンソーダと混じり合って緩やかにとけゆく裏面。そこへチェリーを一個のせれば美しくも懐かしいクリームソーダフロートのできあがりである。
「うちはクリームソーダの老舗でね。朝狩ってきたばかりのクリームと天然のメロンソーダ、活きの良いチェリーはどこにも負けない特産品さ」
 ごらんよ、とカフェの老婆が窓の外をゆびさすと、チェリーカモメがばっさばっさと飛んでいくのが見えた。
 店に飾られた写真には広く美しいメロンソーダの湖であるメロソ湖、その中を元気に泳ぐバニラアイスフィッシュがうつっている。
「こいつぁ海洋の味さ。いまアクアリアで頑張ってる兵隊さんたちにも届けてやりたくてね。今回はいつもより沢山材料を狩っておきたいのさ。やってくれるね」
「モチのロンなのです!」
 長細い銀のスプーンを手に取って、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はクリームソーダに手をつけた。

●野生のバニラアイスと野生のチェリー
 この島スパークリングフロートはクリームソーダの原料というか素材そのものとなるバニラフィッシュとチェリーカモメの群生地である。
 バニラフィッシュはまあるいお魚の形をしているがシメるとバニラアイスにかわるという不思議な魚で、チェリーカモメはその羽根から沢山のチェリーがとれるというそれぞれ美味しい動物たちである。
 島中央に広がるメロソ湖は天然のメロンソーダが湧き出ており、ここからひいたメロンソーダ水道からは一年中おいしいメロンソーダが出ることでも知られている。
 この三つがあるからにはそりゃあ特産品はクリームソーダにきまってるし海洋民はデパートの屋上とかでだいたいコレを食べてるもんだとカフェの老婆は豪語した。
 そしてそれは(若干の脚色と誇張はあるものの)本当のことらしく、海洋海軍にはクリームソーダを懐かしむ兵士たちも少なくない。そんな彼らに新鮮なクリームソーダを届けてやればどんなに喜ぶだろう……というハナシだ。

「バニラフィッシュは魔法の膜に覆われていて、殺してしまうまではバニラが外に溶け出すことはないのです。
 だから生け捕りが必須になります。高威力の【不殺】攻撃で倒したり、小さなダメージをちくちく与えて弱ったところを網でとらえたりしてください。ボックスに詰める作業は地元の人たちが総出でやってくれるので安心ですね」
 ただしバニラフィッシュをとるためにはメロソ湖に潜る必要があり、メロソ湖にはメロンワニやメロンザメといったモンスターもちょこちょこ生息するので、これが襲ってきたらちゃんと対応する準備もしておこう。

「次にチェリーカモメですが、これはメロソ湖上空を飛んでいるのでどのみち飛行戦闘かボートからの射撃が必要になるのです。
 羽根のチェリーに爆破の魔法をかけて投擲するチェリーボムという攻撃がとても厄介なので、戦う際は注意してくださいね」
 飛行戦闘中は、特に大きなダメージを受けると墜落してしまうことも考慮しておこう。もちろん下は湖なので落ちて死んだりはしないが、ダメージの受けすぎに注意して損はない。

「この二つを交互にってわけにはいかないので、今からバニラ係とチェリー係の二つのグループに分かれて出発してもらうことになるのです。
 自分の得意な方をえらんでくださいね!」

GMコメント

■オーダー
 バニラとチェリーを沢山確保すること

・バニラフィッシュ
 水中に生息する魚です。ちくちく攻撃してから網でとったり、不殺攻撃で倒したりして生け捕りにしてください。
 漁の最中、メロンワニやメロンザメが襲ってくることがあります。これに倒されてしまわないように、ちゃんと迎撃する準備をしておきましょう。
 『水中行動』のスキルがあるとよいですが、もしない場合は『水中呼吸(微弱)』程度の装備が支給されます。

・チェリーカモメ
 主に空中戦もしくはボートからの射撃戦が必要になります。
 爆弾による攻撃に注意して戦ってください。
 飛行戦闘を行う際は適切なスキルを用いてください。

  • ディア、スパークリングフロート完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年04月14日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
ロゼット=テイ(p3p004150)
砂漠に燈る智恵
ネリ(p3p007055)
妖怪・白うねり
ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐
シルヴェストル=ロラン(p3p008123)
デイウォーカー
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

リプレイ

●混沌ではよくあること
「ばにら……ふぃっしゅ……」
 水槽でちゃぷちゃぷ泳ぐ乳白色のおさかな(?)を見て、『特異運命座標』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)はシリアスな顔をした。
 例えるならあのゴム風船みたいなやつんなかにバニラアイスが入ってて徐々に溶かしながらちゅーちゅーすうあれ、あれのアイスがそのままお魚型になったみたいな見た目をしていた。
「ほう……中々興味深い生態をしている生き物が居るんだな。
 俺の世界にはここまで食用に向いた生き物は居なかった」
 マナガルムは眉間に指を当てて小さくいきをついた。
「つくづく、この世界に呼び出されてから自分の固定観念という物は壊れてしまうな。いい意味でだが」
「案外、受け入れるのがはやい、な……」
 うしろでビミョーな顔(差分画像がないとわかんないレベルの変化)をしていた『深海の金魚』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)が髪をぐねぐねにネジレさせていた。
 ちらりと見ると、チェリーカモメの写真があった。翼のつけね内側んとこにさくらんぼがわさーってブドウみたいについてるややピンク色のカモメである。
「……深くは、考えまい。此処は、混沌、だ。
 今回の仕事は、狩猟。それだけわかれば、十分、だな」
 別の意味で慣れはじめたエクスマリア。
 『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)は太い腕をくんで頷いた。
「混沌に来る前だったら驚いていただろうが、空飛ぶ海苔弁とかを知っている今となってはそれほど大きなインパクトはないな。
 何はともあれ、メロンクリームソーダにはバニラアイスとチェリーは欠かせないだろう」
「欠かせないというか、もはやすべてだとおもいしもの」
 二人の後ろからスゥーってスライドアウト式に顔をだす『探究者』ロゼット=テイ(p3p004150)。
「思い返せば真面目な海戦しかしたことなかったなあ、この者の行動基準においてお金はとても重要だけど、それはそれとして、こういう変わった景色をたくさん見たくていろんな国で依頼を受けているというのも、嘘偽りない気持ちではあるのだ」
「わかるぞ。見聞を広げると、それだけ世界が鮮やかに、そして楽しく見えるものだ」
 ゲオルグが含蓄のありそうなことを言ったが、彼の脳内に流れてるのは世界各地のもふもふ生物たちの思い出である。いやこれも大事な見聞やねんで?
「クリームソーダをお腹が破裂するくらい飲める依頼なんだもの。お掃除屋さんは休業よ」
 モップをかばんにしまって、手ぶら状態をアピールする『妖怪・白うねり』ネリ(p3p007055)。
「ま、スパークリングフロートに来たからにはクリームソーダを食べない手はないよな」
 『鳥種勇者』カイト・シャルラハ(p3p000684)は詳しいひと特有の目つきで小刻みに頷いた。
 横浜に来たら肉まん食わなきゃダメだろ的な、カイトからみた常識である。
「親父も俺もスパークリングフロートは好きだしな。海洋の味って感じだぜ」
 自称漁師の父を持つだけあって海洋の食用生物には詳しいカイト。もちろんチェリーカモメについてもそれなりに詳しいようだ。
「養殖のチェリーカモメも悪くないんだが、やっぱり天然物を直接狩るのがイチバンなんだよな。現地生態系に勝る飼育環境はないんだ」
 などとうんちくを語りつつ、カイトたちは湖の船着き場へと移動した。
 移動してきた小型船を湖におろし、『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)は甲板へとおりたった。
「おにーさん甘いものとかアレだからアレだけど、まあ人々が求めるならばお手伝いするよ? それにコレお仕事だしね」
「アレってなに? まあ、僕もそう山ほど食べたりしないけど……それよりメロソ湖に転落するのは嫌だな」
 同じく甲板におりたった『白夜月』シルヴェストル=ロラン(p3p008123)。
 ヴォルペは一瞬同族を見るような目でみたが、すぐにいつもの表情に戻って両手をかざした。
「だよね。今日はよろしく! さ、狩りの時間だ。船を出すよ!」

●バニラフィッシュとメロンソーダの湖
「水中行動は不得手だが、装備の支給があるなら、問題ない」
 エクスマリアはぶかぶかのウェットスーツめいたものを着込むと、首輪についた水晶に手をかざした。
 するとスーツがきゅっとしまって身体にフィットし、首から上を覆うように呼吸の魔法が展開した。
 仕組みはよぉわからんが水中のアレをアレして呼吸ができるようにしているらしい。ちなみに口にくわえるだけで酸素を得られる人工エラっていうアイテムが実際にあるのであまり非現実的な話ではない。
 ……ので、首から下がぴっちりしたエクスマリアを、ロゼットを、どうぞご想像いただきたい。
 ご想像いただいたところで。
「さて、準備運動はこの辺りで良いか」
 中村〇一みたいな声でマナガルムの全身が大写しになった。
「バニラフィッシュの狩猟には不殺攻撃を徹底する。メロソワニとメロソザメの接近にはできるかぎり耳をたてるつもりだが……エネミーサーチをたのむぞ、ネリ!」
「わかったわ」
 おなかのあたりをぽんとたたいて、ネリは桟橋に助走をつけた。
 ててててて、ぴょーん。
 からのどぼん。
 普通の湖ならこれだが、ここはスパークリングフロートのメロソ湖。
 まずはジュワーッという炭酸水めいたしゅわしゅわにつつまれ、どこか甘いメロンソーダの香りに包まれながら透き通った薄緑の湖を潜っていくことになる。
 まるで自分自身がメロンソーダにおちたバニラアイスになったような気分だが、バニラはむしろ今から採取する対象である。やや潜っていけばすぐに見えてくるだろう。ある程度の群れをつくってふよふよと泳ぎ回るバニラフィッシュの姿が。
「目標確認。不殺の大火力で、纏めて、仕留める」
 バニラフィッシュ。水槽にいたものと同じ白くふんわりとした印象の神秘的な魚だ。水槽と違うのは、バニラフレーバーの香りがほんのりとしてくることである。
 魔法のせいっちゃせいだが、水中って案外臭いが伝わるモンである。サメとかよく血の臭いで寄ってくるモンである。
 エクスマリアは頭髪をとげとげに伸ばすと、神気閃光のスパークを発射してバニラフィッシュを気絶させ、目の粗い籠状にした頭髪にくるんで確保した。
「獣人の姿はちょっぴり泳ぎにくいのである。戦闘には心許ないかなって思いしもの」
 ぴっちりのスーツで犬かきみたいにちゃぷちゃぷ動いていたロゼットだが、しばらく動いたらコツを掴んだらしく魔術のスパークをおこしてバニラフィッシュを確保し始める。デンキウナギが電撃で魚を気絶させて食べるあの動きにちょっと似ていた。
「良い調子だ。俺たちも負けてはいられないぞ」
 水中をバタ足で泳ぎ、見つけたバニラフィッシュめがけて蹴りを繰り出すマナガルム。
 ネリもこっくりと頷くと別のバニラフィッシュをぽこぽこ殴って気絶させた。
 素手で掴むとなんだかぷにっと、そしてひんやりとしている。
 それこそバニラアイスボールのようにだ。
 いますぐここで食べたくなったが、そこはこらえてエクスマリアの籠にほうりこんでいく……と。
「はっ」
 ネリの髪の毛が一本ピーンと立った。
「敵が来るわ」
「そのようだ。皆、戦闘態勢……!」
 マナガルムは槍を、ネリは手刀を構えてそれぞれ海底より上昇してくるワニやサメへの戦いへ移っていく。

●チェリーカモメとメロンフレーバーの船で
 船の運転席にどっしりと腰掛け、ギアレバーを操作するヴォルペ。
「つかまっててね。安全運転は保証できないよ」
 アクセルを目一杯に踏み込むと、ハンドルを握って額に保持していた赤いサングラスを装着した。
 加速するボート。次々に投下されるチェリー。
 後方で起きる連続爆発を、ヴォルペは激しい蛇行運転によって回避していた。
 急速なカーブによて船から放り出されそうになりつつも、手すりを掴んでしのぐシルヴェストル。
「いくらなんでも荒すぎるんじゃあ?」
「甘ったるそうな湖に潜るよりはマシでしょ!」
「それはたしかに……!」
 急降下突撃を仕掛けてくるチェリーカモメ。おそらく翼の爆弾をまるごと叩きつけてボートを転覆させようというハラだろう、が……。
「下は湖だから安全だと言っても、水の中に落ちるのは勘弁願いたい」
 シルヴェストルは手刀をはらうことで赤いオーラの刃を作り出し、突撃してくるカモメを迎撃。
 空中で爆発をおこしたカモメがぼちゃんと湖へ堕ちていく。きっとサメだかワニだかの餌となるだろう。
 迎撃を確認すると、新たに数羽のチェリーカモメがボートへと集合。爆撃の準備を始めた。
「こりゃあマズそうだな。群れの大部分を引きつける。ゲオルグのおっさん、少し付き合ってくれ」
「いいだろう。無理はするなよ」
 カイトとゲオルグは船の後方からジャンプ。ぱっと見る限りは湖に飛び込む姿勢だが、カイトは翼を、ゲオルグはオーラを展開して飛行状態へと移行。なめらかな上昇をかけてチェリーカモメの群れへとまっすぐに突っ込んだ。
 いくらボートを追いかけているといっても正面から突っ込まれれば対応せざるをえないもの。チェリーカモメたちが回避行動をとろうとしたところで、カイトはわざと翼をぶつけて一体を転落させた。
 すれ違いざま、にやりと挑発的に笑いかける。
 それによって、チェリーカモメの大部分がカイトへの集中攻撃を始めた。
「俺も羽根を飛ばせるんだぜ? 爆ぜちまえ!」
 一斉に投擲してくるチェリーの爆発を回避しながら、自らも羽根による反撃を開始。
 カイトの高度な回避型タンクスタイルは本来回避型の気門とされる対集団戦においても充分な回避値を維持することが可能である。しょぼい命中値の攻撃なら100%回避もありうるだろう。
 が、いまは防御の低下する空中戦闘。チェリーカモメたちもそれなりの集中攻撃をしかけてくる以上、完全に無傷でいられるとも限らない。
 そこでゲオルグが治癒と迎撃を担当するのだ。
「散華せよ」
 手刀によって生み出されたオーラの波。巨大な刃となったそれを回転切りによって上下左右に乱れ打ちすると、カイトに群がっていたチェリーカモメたちが次々と転落していく。
「翼が狙いやすいが、一番美味しい部分がそこだから付け根や胴体を狙うようにしよう。チェリーは見た目も大事だからな」
 体力の残ったチェリーカモメにはカイトが直接爪による斬撃を加え、湖へと転落させていった。
「おっと、勢いよく倒しすぎたな。回収も忘れないようにな」
「わかってる」
 ゲオルグは水面ギリギリを飛行すると、落下してきたチェリーカモメをキャッチしてすれ違うヴォルペの船へと投げ入れた。
 ピッと二本指を立てて敬礼のマネゴトをしてみせるヴォルペ。
 次に腰から光線銃を抜くと、追ってくるわずかなチェリーカモメめがけて乱射しら。
「本来おにーさん、ガンナーやってたんだよね」
「それはいいけど……そろそろこの状態も限界だ。始末をつけようか」
 シルヴェストルはヴォルペにハンドサインを出し、ヴォルペはそれを理解して船を減速。シルヴェストルは空中に赤い魔方陣を描き出すと、大量の血色のコウモリを出現させチェリーカモメたちへと解き放った。
 砲撃をうけ、墜落していくチェリーカモメたち。
 回収しきれなかったチェリーカモメは――バクン、とメロソザメに食いちぎられた。

●メロンソーダの湖にサメはある
 一方こちらはメロソ湖内でワニとサメに遭遇したエクスマリアたち。
「もう、お掃除屋さんは休業中って言ったじゃない。ネリの手を煩わせないで頂戴」
 突っ込んでくるワニを槍で防御するマナガルムに変わって、手刀を脳天にべしべし叩きつけるネリ。
 あまりのダメージにワニが根負けしたところで、マナガルムは槍によってワニをなぎ払った。
 そんな彼に横から食らいつこうとするサメ。
 直撃――かに思われたが、間に割り込んだエクスマリアがサメの身体に頭髪を巻き付けて防御。
 動きを殺すと、直接魔力を流し込んでいった。テーザーガンの要領で打ち込まれたエネルギーにしびれるサメ。
 それでもタフにゴリ押ししようとしたが……。
「暴れちゃだめだよ」
 背中にとりついたロゼットが腰の辺りから光りの羽根をはやし、サメの脇腹へずぶりと突き刺していった。エネルギーをどくどくと吸い上げていく。サメはしばらくもがいて暴れていたが、彼女たちが攻撃を続けていくうちに力尽き、そして湖の底へと帰って行ったのだった。
 真上で船がとまる。
 どうやらヴォルペたちも仕事を終えたらしい。
「戻ろう。こちらの収穫も、もう充分だ」
 エクスマリアに言われ、ネリたちはバタ足で水面へと戻っていった。

●クリームソーダ
「採れたての、新鮮なバニラとチェリーならば、さぞ良質なクリームソーダとなる、だろう。……いかん、自分でも、何を言っているのか、わからなくなって、来た」
 喫茶店の椅子にすわり、エクスマリアは自分の額に手を当てた。
 場慣れというのは恐ろしいものである。意味わかんねーような生き物でもいつの間にか普通に食べてる自分がいる。
「でも美味しいんでしょう? ちゃんとお金払うんで、お願いしまーす」
 手をぱたぱたとふるロゼットに、喫茶店のマスターはトレーに乗せたクリームソーダを人数分運んできた。
 伝票を求めるロゼットたちには、『今日は代金はいらない』と無言のジェスチャーで答え、カウンターの奥へと帰って行く。
「クリームソーダ……か。絶対に美味しいに決まっている。飲んでみたいと思ってしまうのも致し方のないことだ……」
 気持ちをむげにしてはならぬとばかりに、ゲオルグは手乗りひつじさんと一緒にクリームソーダをちびちびといただいていた。
 銀の長細いスプーン片手にうーむと唸るマナガルム。
「ジンジャーエールにも似た……炭酸水、だろうか。あれよりずっと美味しいな」
 炭酸水といやあ酒を割るもんっていう文化のなかで生きてたのだろうか。マナガルムは甘くてシュワシュワしたクリームソーダに心地よく酔いしれていた。
「ネリは、アイスもチェリーもぽいぽい放り込めるような、金魚鉢くらいのでっかいのが欲しいわね。それとぱぱとままへのお土産も頂けるかしら?」
 わすれちゃいけないことだが。このクリームソーダはアクエリア拠点へと送られる物資である。言い換えれば、超距離長期間の運搬が可能なボトルタイプのメロンソーダやアイスクリームがちゃんとあるということ。
 といってもアイスクリームは冷蔵必須なので、お土産にできるのは瓶に入ったソーダのみになるが。
 ネリはおおきなグラスにういたアイスクリームをスプーンでちびちびすくっていた。
 そんな光景を眺めるヴォルペとシルヴェストル。
「いいねえ、仕事のあとのこういうまったりした時間は」
「……それは同感だけど、ヴォルペはなんでコーヒー?」
 折角のメロンソーダは飲まないのかい? と首をかしげるシルヴェストルに、ヴォルペは肩をすくめてみせた。
「ほら、おにーさん甘い物アレだから」
「ふうん……」
 この世界でアレルギーもなにもなかろうにと思った一方で、それでも特定の食べ物を拒む理由を、一種の本能としてシルヴェストルは知っていた。彼とて、今すぐニンニクを丸かじりにしろと言われると困る。きっとそれなりの事情があるのだろうと、彼の中で納得した。(そしてそれは側面的な事実でもあった)
「今日の狩りは上々だったな」
 メロンソーダをグラスのなかでゆらしながら、カイトは椅子にもたれかかる。
「やっぱり天然物のカモメチェリーは美味い。養殖も悪くないんだが、やっぱりたまにここへ戻ってきたくなるよな」
 これを届けてやれば、今前線で戦う仲間達の活力になるだろう。
 まだみぬ新天地をゆめみて、カイトは乾杯した。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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