シナリオ詳細
ストップ・ザ・闇市 ~抹殺せよ、下着商人!~
オープニング
●事の顛末
「――なんでこんなものがならんでいるんだ!!!」
それは新月の夜の事であった。
闇市、毎日の様に焦点が立ち並びゴミから曰く付きまで同じ価格て売り飛ばされるその欲望の塊で『真実穿つ銀弾』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)が際どい黒の下地に可愛らしい白のフリルがあしらわれたその下着を見つけてしまった時は――
「どうしたんですかクロバさん――!?」
隣で剣を眺めていたであろう『朝を呼ぶ剱』シフォリィ・シリア・アルテロンド (p3p000174)が彼の叫びに気付きその視線の先を見つめると……絶句。
「なんでこれがお店にあるんですか!!!」
「ああ、お客さんお目が高いねえ、それはあまり大きな声でいえないが絶世の美女、女騎士のシフォリィ・シリ――」
「私です!!!」
叫ぶシフォリィ、仰天する商人。クロバは怒りに目をギラギラと黒く燃え上がらせると、剣先を商人に向け。
「覚悟はできているんだろうな?」
「ひいっ!?」
「ちょっとクロバさん!? 落ち着いてください! すみませんそれ買います!」
「……って事がありまして」
「はあ……」
もみくちゃ騒ぎの騒動に慌てて集まった仲間のイレギュラーズに対し頭を下げるシフォリィ。
「まさか自分のぱんつが流れる事になるなんて……需要が無いと思ったのに……」
「クロバ、落ち着くんだ! 元を絶たなければ意味がない!」
「そうだ、だから剣を納めて今は我慢するんだ!」
がっちり両面からクロバを堅めブロックする『優心の恩寵』ポテト=アークライト( p3p000294)と『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)。その傍らで『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)がてってこ誘導に徹していた。
「オーホッホッホ! この場は……(パチン)」
\きらめけ!/
\ぼくらの!/
\\\タント様!///
「……が、なんとかするので皆様どうかはなれてくださいまし!」
「五月蠅い! こんな所があるから悪いんだ!」
暴れまわり闇市全てを滅却しようと剣を振り回すクロバを食い止める仲間達を横目に、『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は大きなため息をつく。
「御主はもう少し自分の需要を知っておくべきだったと思うぞ……」
「このまま放置しておくわけにはいかないわね、せめて根源を絶ってこれ以上の流出を塞がなきゃ」
『銀青の戦乙女』アルテミア・フィルティスは項垂れるシフォリィを励ましつつ、内心クロバと同じくぱんつ商人に対する暴虐に対し怒りを燃やしていた。
「それだけど、さっきの商人から仕入れた人の特徴を聞いておいたよ」
一方、偶然近くにいた『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)がシフォリィに情報を伝えようとすると、クロバは剣を振る手を止め、即座に彼女へ情報を求めるのであった。
「なんて奴だ!」
「えっと、パンツ・ド・トールっていう――」
●ぱんつ売りの商人
「何やら辺りが騒がしいですぜ、旦那」
一方その頃、サンド・バザールの街外れ。一人の東洋風の鎧を身にまとった男が座った小太りの男に耳打ちをする。
「それに旦那ァ、どんどん近づいてる気がしますぜ……もしかして取り返しに来たんじゃあ」
その小太りな男の周りには醜悪な男どもが商品を求めて銀貨を1枚差し出していた。その男――『パンツ・ド・トール』と名乗る商人は客へ商品を手早く手渡しながら銀貨を受け取ると立ち上がった。
「もう気付いたか? 何、問題ない」
大きな黒い帽子を深くかぶり、肌を隠しながら笑みを浮かべる商人。その肉体からはスパイシーな香りが漂い、より客たちを虚ろな目にさせていく。
「作戦は言った通りだ、奴らが来た瞬間に退路を断って挟み撃ちにしてやれ」
無言で武器に手をかけ構える傭兵達を一瞥すると客を薙ぎ払い、商人の笑いはますます侮蔑と自信に満ち溢れたものとなった。
「怒りに震えた連中を御するなど、赤子の手を捻るよりも簡単な事だ……」
男の余裕の溢れた笑みは、闇市の喧噪に呑まれて消えて行った。
- ストップ・ザ・闇市 ~抹殺せよ、下着商人!~完了
- GM名塩魔法使い
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年04月18日 22時06分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費---RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●北風と太陽
「まさしく死神の名にふさわしい暴れっぷりだったな」
その日の彼を目撃した行商人はそう語る。
双刀を乱暴に振り回し、目に入るもの全てを薙ぎ払う『真実穿つ銀弾』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)。彼の露店の日光除けの屋根を切り裂き炎上させ、怪しい商人という商人へと八つ当たりするかのように暴れまわる姿はまるで憤怒がこの場に具現化したかの様であった。
「トール! どこに隠れてやがる!」
「クロバさん! お願いですから止まってください!」
黒く染まった左目を赤黒く燃やしながら暴れるクロバ――そしてその腕を必死に掴み止める『朝を呼ぶ剱』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)――あの二人を見て冷静さがほんのひと欠片でも残っているとは見物客はともかく仲間ですら納得し難いものがあっただろう。
「私のぱんつに命かけすぎなくていいですからね! クロバさん!」
そう叫びながらずるずると引きずられていくシフォリィ、暴走し続けるクロバ。二人が通った後に取り残された商人が燃え盛る露店の中でわなわなと震えているとその視界の外からぬっと『銀青の戦乙女』アルテミア・フィルティス(p3p001981)の顔が飛び出し思わず彼は悲鳴をあげる。
「こんにちは、あなたもぱんつ商人ですね?」
「ひっ!?」
一歩足が後ろへ下がった商人の腕を力強くつかむとアルテミアは殺意を堪えた笑みを浮かべながら静かに問いかける。目は笑っておらず、利き手は今にも剣を引き抜こうと震えている――闇市の行商人といえど、その鬼気迫る勢いに悲鳴をあげないのが不思議なほどであった。
「パンツ・ド・トールさん、知ってますよね? 私の大切な親友のぱんつが流出しているのよ、どこにいるのか教えてくれないかしら?」
「し、知らな」
更に逃げようとする商人、しかしその足は差し込んだアルテミアの足に食い止められ、更にか弱い声をあげる。
「教えてくれないかしら」
「ひいっ!? こ、このあたりうろついてる以外知らねえ……!」
商人を吐くやいなや、アルテミアは「そう、ありがとう」と勢いよく付き飛ばすとその様子に尻込みした次の商人へとにっこりとほほ笑んだ。
「なんか向こうで何かあったのか? やけに騒がしいが」
「気にするな、ここではよくある事だろう?」
一方その頃、妖しい香りの漂う別の地区では『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が指を折り商人達と交渉を続けていた。毎度の事ではあるが友達を助けるべく、汰磨羈は動揺する下着商人達を宥めながら、言葉巧みに情報を聞き出していていた。
「実は、少々入用でな。音に聞くパンツ・ド・トールと交渉をしたいのだよ」
「んだ? 冷やかしかよ」
「すまぬのう、持ち合わせがなくてな……御主とは、また別の機会で交渉してやるから」
目をウルウルと輝かせながら問いかける汰磨羈に対し、その商人はトールさんかぁと頭をぽりぽりと掻くと困ったようにつぶやく。
「あの人は危険な物も売るから。人気の少ない広場を探せばいいんじゃないか?」
汰磨羈は礼を言うとちらりと遥か後方を見やり、『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)の様子をうかがう。そのリゲルの前に並べられていたのは、丁寧に折りたたまれ鞄に入ったぱんつの山のコレクション。
「いかがでしょう? これだけのレア物は中々ありませんよ?」
リゲルは笑顔を見せながら目の前の妖しい香りを漂わせる通行人にそのコレクションを見せていた。彼から漂う香りは、言葉には出さずともその男にあったばかりと言う事実を示していた。
「マジで本物だ、これは」
男は食いつくとその下着達へと向けた震える人差し指を向け、リゲルのコレクションの上をふらふらと選り好みする。
「お目が高い。そのリズ様のぱんつは、特にレアものです」
「本当にこんな眼福物を拝んでもいいのか……!?」
暗殺令嬢の……なぱんつを指さしながら声を震えさせる男に対し、リゲルは駄目押しと言わんばかりに営業スマイルを見せる。
「はい、何ならあの人と出会った場所を教えてさえくだされば特別に触れてもいいですよ?」
「……!」
その誘惑に男が逆らえるはずもなく――
「呆れるような願いで悪いがすまない、変な香水を付けた男を探してほしい」
呼び出した精霊達に頭を下げながら『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)
「リゲル、どうだった?」
「驚くぐらいの食いつきだ、話に聞いていた香水の効果が残っていた様だな」
ポテトに応えリゲルが示した方角からは黒い煙が黙々と立ち上っていた。
「あっちはたしか……普段は人気が少ない広場があるって」
「それにクロバがいる方だ、想像以上だな?」
あまりの暴れっぷりに建物をうっかり幾つか燃やしてしまったのだろう。『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)が精霊達から情報を受け取りながらその煙を眺めていると急スピードで3人の元に着地した汰磨羈の口から同情と呆れが半々のため息が零れる。
「もしかしたらもう見つけてるかもねー?」
「急いで行こう!」
4人は身支度と装備の確認を素早く行うと、喧噪と煙の中へと駆け出した。
「今日は賑やかですねぇ」
暴れまわり、脅かし、ついでにぼったくり商人たちに八つ当たり気味に制裁を加えながら。
怒りをぶつけまわった4人のイレギュラーズ達は闇市の外れにある小さな広場で十数人の男達と相対していた。
高笑いをする男からは不思議な香りが漂っている。この男がアウローラの言っていた商人に違いない。
「探しましたわよ……!」
『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)はぷんぷんと腕を大げさに振りながら前へと躍り出ると、思い切り地を踏みつけその男を睨みつける。
「おや、私をお探しでしたか! では自己紹介はいりませんね!」
男は大げさに大きな籠を一つ見せつけるかのように地面へと置くと手の埃を払う。
「私の商品は少々特殊な物でして。決まった場所での販売はできないのです、ご了承ください――」
その男――トールはシフォリィの方をちらりと見やるとクロバの方へと向き直り、両手を広げ詫びの言葉を投げかけた。挑発のつもりだとしたら随分と舐められたものだ。
「ああ、この香水を辿って随分と探したよ――パンツ・ド・トール!」
クロバはそれに応えるように右手から地獄の焔を噴出すると、神速の勢いでトールへと飛び掛かる。
「特注ですからね……クロバさん!」
トールはその一閃をひらりと躱し、着ていた袖の下から暗器を手のひらへと取り出すと、クロバの腹部へと先端を振りかざした!
「ふん!」
相殺――激しい雷鳴と閃光が走りクロバの左手のガンエッジが唸りを上げると両者は大きく後ろへと下がり距離を取る。
「それがお前の必勝法か?」
「ええ、見切られたのは初めてです」
拍手をするトール、静かに構えなおすクロバ。数秒の静寂が流れ――
「スト―ップですわ! わたくしたちの事をお忘れでして?」
タントが両手を伸ばし静止すると、周囲の目が一斉にタントへと集まる。
「忘れていません、彼らが相手をしてくれますよ」
「そうですか! ならそれでは!」
トールの言葉にタントが頷くと、両手の人差し指を鳴らす。
\きらめけ!/
\ぼくらの!/
\\\タント様!///
「――が合戦の合図を取り仕切りますわー!」
高笑いを上げるタント。振り上げた右腕を見つめ、はっと我に返る傭兵達。
「お前ら、何乗ってるんだ!」
「旦那ァ、お約束には勝てませんぜ!」
「お約束でしたか……ではお約束通り我々が数の暴力というものを教えてあげましょう!」
トールは高らかに宣言すると、暗器を手に走り出す――数秒後、その勝ち誇った顔が凍り付くとも知らずに。
●処刑の時間
「ちょっとーアウローラちゃんたちもいるよー?」
「ん? 今はVIPの相手をしているのです、買い物は後で――」
亜光速に達したアウローラの虹色の太陽の様な光の玉は余波で闇市中を照らすかの様な強烈な一撃となり、トールの背中で爆発――
「んが!?」
その規格外の魔力はトールの体を大きく弾き飛ばし、宙を舞った彼の体は広場の壁へとめり込んでしまう。急な事態に驚き飛びのいた傭兵達が見た物は、シフォリィ達を囲んだ彼らを更に取り囲む4人の増援達。
「ありえない、こんなふざけた火力、戦いにならない……!」
壁に埋まったトールの言葉にあら?と反応したのはアルテミア。彼女はにっこりと笑みを浮かべると、剣を構えて彼へと。
「始めから『戦い』にする気はないのだけれど?」
そして壁に向けて叩きつけられる紅の朱雀。
「あ、あづ……!」
「戦いならこれであなたは死んでるわよ? でも徹底的に痛めつけないと気が済まないのよねぇ?」
「ひ……!」
アルテミアに前髪を掴まれ、引きちぎれるかのような勢いで壁から引きはがされたトールの口から血と情けない声が漏れる。アルテミアの静かな声から漏れる殺意のオーラを前にしてトールの必死の反撃が功を奏するはずもない。
もっとも、その暗器が誰かの肉体を切り裂こうがほんの数秒で傷口が塞がってしまうわけだが――
「自分のぱんつが闇市に流れると思うと絶対に嫌だしな、悪いが手は抜かない」
「ええ、変態商人は必ずやとっちめますわー!」
ポテトとタントの二人の癒しの歌声が小さな広場全体に広がっていく。四面楚歌とはまさにこのことか。
未曾有の速攻、そして万全の防御と回復。その絶対の実力の前に腕自慢の傭兵達は戦う前から敗北の二文字が頭をよぎらずにはいられなかった。
「ぱんつ売るって大変だねー、アウローラちゃんはぱんつとか下着着けてないし必要もないからねー」
その言葉に怒りを覚えたのか、やられっぱなしの状況に怒りを覚えた傭兵達は刀を抜き背水の覚悟で磨り潰しにかかる、しかし付け焼刃の戦法がうまくいくはずもない。
「おおっと、後ろががらあきだぞ?」
汰磨羈の脚が傭兵の一人の急所へと撃ち込まれ転倒した所を踏みつけられると、彼の目に映るのは首元へと向けられた刃。
「雇い主を捨てて逃げるなら良し。さもなくば、このまま地に伏す事になるぞ」
「断る、まだ報酬を――」
「仕事熱心なのはいい事だが」
続きは聞くまでも無い。汰磨羈は軽く刀を一振りすると、クロバに纏わりつく傭兵どもを薙ぎ払わんと素早く構える。
「相手を見極めるべきだったな」
「そうですよ!」
汰磨羈の言葉に叫び同意を示しながら細剣をふりぬき、傭兵の鎧ごと切り裂く鋭い斬撃をお見舞いしながらシフォリィが叫ぶ。
「私のぱんつなんかを売るために一体いくらで請け負ったんですかこの仕事!」
数秒後、傭兵の口から語られたその報酬は……
「……嬢ちゃんのを何枚か……」
「なんで!」
聞かなきゃよかった――シフォリィの悲鳴が闇市に木霊した。
「トール、よくも!」
リゲルの力強い怒りの刃がクロバを取り囲む敵達を一体残らず屠る勢いで振るわれる。友人たちが置かれた状況がもし自分と愛する人であったならば!そう思うと普段温厚なリゲルですら剣を握りしめる手に必然的に力がこもってしまう。
リゲルはトールの刃を素早く受け流すと、その刃を流れるように彼を取り囲む傭兵達へ躍らせ、華麗に一撃を叩き込む。
「闇ある所に光あり 可憐なる乙女達のぱんつを糧とするその商売……覚悟してもらおうか!」
「げっ!?」
リゲルの一撃で背後の傭兵が力なく崩れ落ちると、トールは顔を青ざめ周囲を見渡す。
受け入れがたい現実。自分の味方はもういない、それでいて、残っている敵の数は――
「クロバ! トールへ怒りをぶつけてやれ!」
「ああ」
「馬鹿な、ありえない!」
尻もちをつき、必死に後退するトールを呆れて眺める7人のイレギュラーズ。静かに黒紅の銃剣を構え、彼へと歩み寄るクロバ。
「これは俺の我儘なのかもしれない……だとしても――死神の逆鱗に触れた落とし前、きっちり付けさせてもらおう」
「落とし前だと……何万払えというのだ……!」
「要らない。ゼロだ」
横に首を振ったクロバを前に、トールは彼の返答を悟る。
「俺が今一番望んでいる事は――お前を壱秒でも早く潰す事」
――仲間の下着の密売を赦す人間など、この世に存在するはずがないのだと――
「――アンタは死神(おれ)を怒らせた」
ただ痛めつけるためだけに刻み込むクロバの瞬劇は、トールの精神に一生癒えぬ傷を刻み込む事となった……
●そして闇市の夜が明ける
「ゲボァ!」
みぞおちを蹴り飛ばされたトールが再び広場の壁に激突する。
「二度とおパンツ商売などに手に染めないようわからせてやりますわ! クロバ様! やっておしまい!」
クロバに何度も蹴りを加えられ血反吐を吐く商人の姿にタントは黄色い声を出しながら応援し続ける。惨めな光景、だが商人の瞳からは僅かに光が残っている。
「私とてラサの商人、拷問など恐れるに――」
見上げた精神だ、そう棒読みで賞賛した汰磨羈もまたトールを見下しながら言葉を投げかける。
「。なんなら知り合いの商人からEXF100装備を借りてサンドバッグにでもしようか」
「それはいいわね、人間って、痛みだけでは死ぬ事は無いのよ? いつまで耐えていられるかしら?」
「貴様外道か!?」
「お主が言えたことか?」
正論と共に汰磨羈に胸元を足で、アルテミアに急所を鞘で磨り潰され、悲鳴を上げるトール。クロバはそれを静止するとトールの胸倉を掴み、壁に彼の体を叩きつけた。
「ぐ、今すぐ始末してやるということか――」
悶える商人に対し、クロバはそうしてやりたいところだが、と否定する。
「アンタは闇商人なんだ、それなら俺達よりずっと売った物の流れに詳しいだろ?」
「何がいいたい、商品はこの籠の物で全部だ」
トールの言葉にクロバは首を振る。これで全部でもないし、ましてやこれは商品や売り物という言葉で形容していいものではない。
「今すぐあいつの下着の流通をストップさせろ。何としてでも1枚でも多く売った物を買い戻せ……ついでに俺が壊した他の店の建物の弁償もな」
クロバは静かに伝えると自らの利き手に握った刀をトールの首元へとあてがう。
「できなければ……逃げられると思うなよ?」
「畜生……」
選択肢などあるまい、トールは敗北を察して項垂れるとその場で動かなくなってしまった。
クロバはトールの体を付き飛ばすと、彼の置いた籠を取り上げシフォリィに静かに手渡す、これで今ある分は取り戻した。
「ふう、良かったです! これで還ってきますよね!」
「まあ、もう流通することは無いだろうねー」
胸を撫でおろすシフォリィに対し、アウローラが深呼吸をすると辺りを見回した。
「でもどうしよっか? 買った人、素直に渡してくれないと思うよ?」
「そうでした……出回ってしまった以上相場がついてしまったかもしれませんね……」
シフォリィはアウローラの言葉にはっと気付くと肩を落とす、どうやら初めから価値があるとは微塵にも思っていないらしい。
「そうだ! 『今まで出回っていたこのぱんつは全て私が使ったことが無い偽物です! 私が使ったぱんつはここにあります!』と宣伝すれば……」
そしてそう叫びながら籠を開けて中身を確認しようとしたシフォリィがクロバに静止されたのは言うまでも無い。ある意味吹っ切れすぎているシフォリィの様子に思わずポテトはがっくりと項垂れた。
「クロバ、後でみっちりとシフォリィに貞操観念を教育してやってくれ」
「ああ、そうするさ」
「アウローラちゃんもさんせー」
「ええっ!?」
狼狽えるシフォリィ。その様子を黙って眺めながら考えこんでいたリゲルが無言で何かを考えこむとクロバへ耳打ちをする。
「……構わないな?」
「ああ、好きにしていい」
次に傭兵を一人揺さぶり起こすと、逃げないように拘束しながら命令する。
「お前の主人は負けた、闇市中に宣伝しろ。『姫騎士のぱんつは呪われている、所持していると死神に闇市ごと焼き払われます』と」
「えっ、あっ、その」
「いいな!」
「ひゃい!」
傭兵はふらふらと起き上がると慌てて夜明けの街へと駆け出していく。それを高笑いで見送るリゲルに対し、タントは思わず「リゲル様、案外やりますわね……」と呟かずにはいられなかった。
かくして制裁はこの様な結末を迎えた。悪徳ぱんつ売りは身を滅ぼし、時間がかかろうとクロバの監視下の元シフォリィのぱんつを闇市の隅から隅まで取り除く事になるであろう。
怒りを発散しさわやかな気持ちになった彼女の仲間達は、ラサの夜明けを静かに見つめる――
「ところでリゲル」
……とはいかなかった。
「なんだい、ポテト? もう少し強めに言っておいた方がよかったかな?」
話しかけられたリゲルがポテトの方を振り向くと、彼女は静かに首を振る。
「さっきのぱんつのコレクションは何なんだ? 準備をしたわけでもないのに……」
「「「!」」」
集まる視線、ポテトの優しい瞳……一歩足を後ろに下げたのは、リゲル・アークライト。
「通貨になるからね……銅貨よりは軽くて持ち運びしやすいだろ?」
その言葉を聞くとポテトは目を細め静かに笑みを浮かべた。
「そうか」
――レリックやカースドを持ってそれは無理があるぞ、リゲル――
「リゲル」
「……はい」
跳ねるんだ、リゲル。
―完―
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
リプレイお待たせしました、大幅の遅刻申し訳ございません。
リクエストありがとうございます。
闇市商人『パンツ・ド・トール』は命がけでシフォリィさんのぱんつを回収、返却する事を約束しました。
そう遠くない未来彼女のぱんつの排出は止まるでしょう。
それではありがとうございました。
GMコメント
ハイ、ゴメンナサイ。
この度はリクエストありがとうございます。
以下依頼内容となります。
●依頼内容
シフォリィさんのぱんつが全て売られるまでにサンド・バザールを調査しぱんつ商人を発見してください。
●状況
闇市『サンド・バザール』
深夜であるものの各所に吊るされた明かりにより視界には不利は無い。
またここの住民達は荒事は慣れているため、もし戦闘が始まる事態となれば一目散に逃げ出すため範囲攻撃等で巻き込む心配もないだろう。
ただし目標の商人以外にも多数の通行人や商人がおり、無作為に見つけ出すのは困難と思われる。
●成功条件
・闇市商人『パンツ・ド・トール』を発見し、撃破する。
・『シフォリィのぱんつ』を奪還する。
達成度に応じて、シフォリィさんのぱんつが闇市のリストから除外されるようになります。
●敵
○パンツ・ド・トール
シフォリィさん(p3p000174)のぱんつを売る元締め、利益よりもぱんつを買う男達の愚かな姿を眺める事を望む悪質なヤツ。
黒いテンガロンハットとコートに身を包んだ背の高い男性、取引相手を想定し相手の欲望を刺激する香水を常に使用しているのが特徴。
高攻撃力かつ高命中の短期戦を得意としている。
切り裂く 物至単 大ダメージ【出血】【流血】
魔法道具 神中範 中ダメージ【不吉】【混乱】
○用心棒
商人がイレギュラーズの襲撃を予期してかき集めた用心棒たち。
高いHPと防御技術で鉄壁の壁となるだろう。
アシスト 物至単 中ダメージ【弱点】【不吉】
特攻 物近列 小ダメージ【ブレイク】【反動あり】
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●備考
この依頼は『もっと! ばりゅあぶる ぱんつ』に関連するリクエストシナリオとなります。
OPのみで事態は把握できるように作られておりますが参考までに。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2884
では、よろしくお願いします。
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