PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ランプの森に照らされた

完了

参加者 : 7 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 夜明けの雨が去り、濡れた花びらが地をじっとりと覆っている。
 姿を見せた木漏れ日は少し眩しく、儚い彩りを慈しむように――

 一人の男が大樹ファルカウの麓(!)へ現れたのは、そんな時だった。
「やあやあー、ちょっとすまないネ」
「……何者だ!?」
 ひどく芝居がかった声音の方へ、迷宮森林警備隊が鋭い視線を送る。
 そこに居たのは双頭の弦楽器を背負った、一人の吟遊詩人であった。
「僕は……ああー、そう。そうだネ。じゃあさ、こうしよう。『桜の精』とかどうかナ」
 おどけた男へ注ぐレンジャーの視線は剣のような鋭さを帯び、弓に指を添え――
「わるかった、わるかった。からかってすまなかったヨ」
 男は観念したように両手を挙げた。

 深緑――ここアルティオ=エルムは閉鎖的な性質で知られていた。
 ハーモニア達が暮らす集落は、部外者の出入りを赦さぬ迷宮森林に位置している。
 温和な種族故に完全な排他とは言えないが、ルールを侵す者への容赦無さも相まってか、異邦人はあまり歓迎されない気風があるのだった。
 いくらかの例外を除いて。たとえば古くからの知人や、あるいは特異運命座標でもなければ――

「ここは問題ない、貴殿は下がってくれ」
「かしこまりました」
 部下を追いやった『迷宮森林警備隊長』ルドラ・ヘス(p3n000085)が腰掛ける。
「ライエル殿、貴殿はまだそんなことをやっているのか」
 聞こえたのは、どこか呆れたような口調であった。
 どうやらこのライエルは、いくらかの例外である『古くからの知人』にでも相当するらしい。
「やあやあールドラチャン、ひさしぶりだネ。
 でもでもー。その態度はちょーっと、お客さんに失礼! だったりしないカナ? なんちゃって」
「隊員をからかった分を、さっ引いているまでだ。
 それに貴殿とて事情は承知済の筈だ。第一、首を突っ込んできたのは貴殿であって――」
「あー、わかった、わかったよ。ごめんネ。この通りダヨ」
 ライエルが頭を下げる。

「それで貴殿の目的は何だ」
 今回もルドラはイレギュラーズへ、ゲートを荒らす魔物へ対処する依頼を立ち上げた。
 そこへ一連の事件へ興味を持ったライエルが、依頼への同行を願い出てきたのだ。
 依頼主(ルドラ)としては、ライエルへ目的を問うのが当然の成り行きであろう。
「そうだねえ……ほら、僕等は最近やっと『人の数』に含んでもらえるようになったじゃない?」
 精霊種グリムアザースは古くから存在するが、イレギュラーズがこの世界に新たな可能性をもたらした結果として、純種として数えられるようになった。
「けど僕等グリムアザースは、ほら。元々は『現象』みたいなものだからサ」
「何が言いたい?」
「あ、ははー。怖い顔は美人が台無しダヨ? つまりね。
 僕は『虹の精』で『アーカンシェルは虹の門』。何か力になれるんじゃないかと思ってサ」

 一理はある。一理はあるが。
 ルドラはしばし考え込み、結論を出した。
 イレギュラーズなら上手くやってくれるだろう。と。
 したためる依頼書に一抹の申し訳なさを添えて――


 この日イレギュラーズは、例によって妖精のゲートを襲撃する魔物退治の依頼を受けていた。

 依頼は深緑で立て続けに発生する妖精事件に類するものだ。
 発端はアルヴィオンと呼ばれる伝承の場所から、ゲートを通じて妖精が現れた事に遡る。
 そこから魔物によるゲート襲撃事件が立て続けに起きているのだった。
 ゲートを襲撃する魔物は、イレギュラーズの報告によると人為的な手合いが混ざっているらしい。
 イレギュラーズが持ち帰った魔物の死骸は、貴重な資料として調査中だ。
 魔物達の目的は不明だが、これもイレギュラーズの報告によれば魔種が絡んでいるともされ、一連の事件は由々しき自体だと認識されつつあるのであった。
 最近は通常の魔物自体が強くなっているという感覚もあり、迷宮森林警備隊は手を焼いていた。
 そういった事情から、帰れなくなった妖精達を助け、魔物へ対処するため、深緑は多くの依頼をイレギュラーズへ持ちかけていたのだった。

「って、そんなワケで。よ・ろ・し・く・ネ♪」
 虹の精霊ライエル・クライサーを名乗る吟遊詩人は、。ゲートについて調べたいことがあるらしい。
 深緑側からは「もうしわけないが……」といった形で同行をお願いされたのである。
 無碍に断る訳にもいかなかったのだが。なんというか、胡散臭いやかましい男だ。

 そんな一行が向かう先――ゲートがあるのは迷宮森林内にある『幻灯の森』と云う地域の一角である。
 古い記憶を映し出すとされるランプ状の植物『幻灯花』が咲く不思議な場所であると伝えられていた。
「いやー、想い出を映すなんてエモーショナルだネエ!
 迷宮森林なんて久っしぶりだなあー、みんなはどう? あっはっは!」

 ゲートは妖精達が現れる際に神秘的なエネルギーと共に出現するらしい。
 魔物はどうも、そのエネルギーを狙ったり、あるいは出現したゲートへの攻撃を行っているようだ。
 逆を取るならば、そうした魔物が現れる場所にはゲートがあるとも言える。
 この依頼はそちら側『そうした魔物が居るから、ゲートもあるのだろう』という話になる。
 そうだとすると、現場で妖精が困っている可能性も高い。
 ならばとにもかくにも迷宮森林へ出発し、ゲートの元へたどり着かねばなるまい。

「じゃあサ、じゃあサ。自己紹介なんかしようヨ!
 はじめまして、僕ぁね。んー、まあ。しがない詩人ダヨ。
 皆がどんな冒険をしてきたかトカ。ほら、僕が詩にするからサ! ネ!?」

 んで。こいつ。やる気あるんだろうか?

GMコメント

 pipiです。
 妖精ちゃん系の普通の依頼です。
 またの方も、まだの方も、是非。お待ちしております。

●目的
 主目的は、幻灯の森に現れた魔物の退治です。

 出来れば以下も行って欲しいと言われています。
・同行者ライエルに、妖精郷へ通じるゲート『アーカンシェル』の調査をさせる。
・現場で妖精が困っていたら助ける。
・他に何かあれば。

 半分ぐらい戦闘して、半分ぐらい調査やおしゃべりしときましょう。

●ロケーション
 幻灯の森です。到着は夜。
 あちこちにランプのような不思議な花が咲いており、幻想的に淡く光っています。
 花はその場で発生した古い記録を投影することがあります。
 不思議ですね!
 繰り返しておきますが、不思議ですね!!

 現場に到着したあたりで開始します。
 そこに魔物達がいます。
 おそらくゲートもあります。
 もしかしたら妖精が困っています。

●魔物
・ルクスリアン・オートマタ×6
 手足が刃物になっている自動人形の怪物です。
 意外とタフで素早いです。
 物理至~近距離主体で攻撃。列攻撃あり。
 出血系のBSを保有しています。

・人工精霊『炎』×4
 燃えさかるトカゲのような炎の魔物です。
 攻撃力が高く、HPとAPが少ないです。
 神秘遠近両用。範囲攻撃あり。
 炎系のBSを保有しています。

・人工精霊『氷』×4
 透き通った少女のような氷の魔物です。
 攻撃力が高く、HPとAPが少ないです。
 神秘中距離主体の攻撃。範囲攻撃あり。
 氷系のBSを保有しています。

●アーカンシェル
 妖精郷へ通じるゲートです。
 向こうから来た人だけが入れるらしい不思議なゲート。
 なぜかよく魔物に狙われています。

●同行NPC
『虹の精』ライエル・クライサー
 双頭の弦楽器を持った胡散臭い男です。
 顔と声が無駄に良く、おじさん構文モドキを多用します。
 皆さんに強い興味をもっており、いろいろ聞きたがります。

 以下のシナリオ『ノルニルは見てるだけ』に登場していますが、知らなくても全く問題ありません。
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2193

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • ランプの森に照らされた完了
  • GM名pipi
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年04月08日 22時05分
  • 参加人数7/7人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 7 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (7人)

アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
蒼騎雷電
秋宮・史之(p3p002233)
浮草
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
恋屍・愛無(p3p007296)
砂の幻
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者

リプレイ


 斜陽が照らす木漏れ日は消えて久しく。
 鬱蒼と重なる広葉樹の枝間から、微かな星明かりが見え隠れする夜――

「オーッホッホッホッ!」
 だが太陽は、『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)は、迷宮森林においても春の日差しのような安心感を一行にもたらしていた。
 軽快なフィンガースナップと共に、ギターのメジャーコードが鳴り響く。

   \きらめけ!/
   \ぼくらの!/
 \\\タント様!///

「――の冒険譚! たっぷりお話しますわーー!」
 タント様のヒロイックポエティックミスティックポーズと共に、ギターがかき鳴らされる。
「よろしくネ!」
 現場到着まではあと数十分といった所か。
 一行が受けている依頼は、例によって件の妖精郷の門を襲撃する魔物退治であった。
 魔物が出るという現場付近はともかく、道中は賑やかなほうが野生動物との遭遇を避けやすいといった事情もあり、一行は努めて音を出すように振る舞っていた。
「ライエル様の伴奏に、このわたくし、物語が止まりませんわー!」
「それじゃタント様。次の詩も、お・ね・が・い・ネ!」
 語られたのは巨大マンボウや巨大スイカ、巨大ミミズにしこたま吹っ飛ばされたお話。

「ライエルさん、チャオー」
「史之クン、チャオー! 君のお話も聞きたいな。それから炒飯について詳しく!」
 手を振る『炒飯作った!』秋宮・史之(p3p002233)にライエルが笑顔で応じる。
 なんだか話しやすいタイプだ。聞きたいことには答えたい。
「故郷の米料理だよ」
「おおー、うるわしのコメ~~ラララ」
 あー、でも。歌下手なのか。もしかして……
 史之は迷わぬよう、木々へ目印をつけている。無論、傷つけぬように。

「妖精に関する詩を聞かせて頂けませんか?」
「そうだねえ、君等としては気になるよネ。それじゃ一曲行こう」
 尋ねた『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)にライエルが頷いた。
 リゲルとしては自身等の冒険が詩になるなら喜んでといった気概だが、まずは事件の解決を優先したい。
 伝承には何らかのヒントが隠されている可能性もあるのだ。

 ――遙か遠きアルヴィオン。
   虹の大橋わたるなら、一つコケモモ置いていけ。

「喜びヶ原にかかる橋――古い詩。関連性が知りたいのサ。何か力になれるんじゃないかと思ってネ」
「いい人ッスね!」
 わざわざ協力を申し出てくれているのだと、『blue』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)は想う。
「照れるネ!」

(ちっくしょう……)
 こめかみを押えた『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)は鋭い表情を覗かせる。
 海洋に鉄帝国、それからお次は深緑の迷宮森林と、あちこちで事件が多い。
「まぁ、やるしかねえか」
 隣のリゲルと頷きあって。
 さて。妖精と言えば『取り替え子』の伝承も有名ではある。
 ローレットには『神隠し』に関する情報もあり、『らぶあんどぴーす』恋屍・愛無(p3p007296)は何らかの関連がないかも考えた。あまりにタイムリーではあるのだ。同時に道中では周囲や仲間との位置関係、そして詩人にも目を光らせて――反響定位にも注意を払って――いる。
(が、先ずは目先の依頼か)

「……どうでしょう?」
 木々にそっと語りかけたのは『アデニウム』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)である。
 妖精を見なかったか、見たならどちらへ向かったのか。
 今のところ『みたことがある』といった程度のようだが、はてさて。
 本件は動向するライエル・クライサーという詩人に、妖精郷の門を調査させるという依頼ではあるが、妖精郷の門はたびたび魔物に襲われており、現場にも魔物がいる可能性が高いと分析されている。妖精が困っている可能性もあり、仕事にはその双方も含まれるという訳だ。
 それにしても妖精郷の門を食い荒らし、特異運命座標の血等を採取する魔物の狙いは果たして何なのか。
 胸騒ぎを感じる現状、何か良くないことが起こる予感もあり、その辺りまで知りたい所ではあるのだ。
「少なくとも、この辺りに妖精が現れたことがあるのは、おおよそ正解であるようですが」
 リュティスが感じる情報は、まだ遠い。


 半刻程森を進み、一行はランプのような花を目にした。
「むっ、続きはまた後でですわ……!」
「ん。そうダネ」
 古い記憶を映し出すことがあるとされる不思議な花の近くに、ゲートはあると言う。
 色とりどりの幻想的な光の中で、時折ふわりと浮かび上がるのは動物たちの姿。別の季節の木々。
 それからふわりと舞う妖精の姿――
(古い記憶だ……)
 史之は想う。きっと過去を映しているのだろう。或いは誰かの記憶が映ることもあるのだろうか。
「そろそろです」
 リュティスは声を潜めて一行を振り返る。木々の声が新しい情報を告げたのだ。
 俄にぴりっとした緊張が包み込む。

 一行を見回したリゲルが頷き、広範囲に保護の結界が展開された。
「行くッス……っ!」
 一行の目配せと共に。誰よりも早く駆けだしたのはイルミナだ。
 視線の先では二人の妖精が怯えきった表情で魔物から逃げ回っているのだから、事態は急を要した。
「たすけて!」
 小さな身体を恐怖に震わせて、妖精の少女達が悲鳴を上げる。ぎゅっと閉じられた目元に涙が弾けた。
「了解ッス! 後ろに隠れるッス!」
 命じられなくともYESと返す。そんな自由を機械仕掛けの胸に刻んで、戦いの火蓋が切って落とされた。
 ドレス姿の滑稽な自動人形が、両手の刃をイルミナへと突きつける。
 けたたましい音をたて高速回転する刃に、エネルギーフィールド――テールム・アムルルがまばゆい輝きを放った。刃が火花をあげる。
「わたくしの後ろへ!」
「うん! ありがと!」
 もう一人の妖精が懸命に翅を羽ばたかせ、タント様の後ろへ逃げ込んだ。
 大きく両手を広げたタント様が振る可愛らしいポンポンに、一行の士気が一気に高まる。
 タント様は不沈の司令塔、戦場を照らす太陽だ。

「お目覚めになられませ祭神よ。これなるは秋宮の史之。ご加護を賜りませ」
 イルミナと共に最前線に駆けだした史之は祭神根之益荒男の加護をその身へ降ろす。
(この魔物達も魔種の差し金なのか? いや、考えるのは後だ)
 銀の剣を抜き放ったリゲルの一閃――炎星-炎舞。火球の嵐が突撃を始めた敵陣を踊り。
「頼む!」
「任せろ。弾けろや……魔物ども……!」
 更なる太陽――
 アドレナリンを弾けさせたアランの踏み込みから繰り出される神速の刺突が氷精を貫く。
 全身がひび割れた氷精が、甲高い絶叫をあげる。

 こうして激突が始まった。
 作戦上、半数程の敵を引き受けることになったリゲルに魔物達が殺到する。
「とめるよ!」
 唸りを上げて迫る自動人形の刃に肩甲をぶつけ弾き飛ばしたリゲルは、更に迫る氷霊の腕を剣の腹で受け止める。拳が痺れ踵が地を抉るほどの強烈な衝撃から、たちまち腕の付け根まで白く覆う凍気が襲う。
 だがそれは極地重装を纏うリゲルの剣捌きを微塵にも揺るがせる事もなく。即座に振り払った剣が火蜥蜴二匹の体当たりを紙一重にいなした。地に転げる火蜥蜴が跳ね起き獰猛な唸りを上げる。

「あれは僕が片付けよう」
 表情一つ変えることもなく、呟いた愛無は音を頼りにその身を宙へ躍らせ――その細い肢体がぶれた。
 鞭のようにしならせた愛無の手先から、あたかも影を切り離すが如く。生じた漆黒の杭を放つ。
 風を劈く爆音と共に、禍津早贄が氷精の二体を貫いた。漆黒がガラスの様な氷精の身を食い破って行く。
 ガラス細工のような顔を歪め、牙を剥き襲いかかる氷霊がアランに迫り――衝撃。
 吹き付ける冷気がアランの身に無数の傷を付け。
「粋がってんじゃねえぞ雑魚が! 死ねやぁ!」
 吹き付ける冷気の中心に、アランはしかし踏み込み剣を突き立てた。
 存在の半ばを砕かれた一体の核が弾け、早くも精霊力が雲散霧消する。

 転がった核へ僅かに視線を走らせたリュティスは、弓柄を構え指を添えた。
 虚空を引き絞ると同時に顕現した魔力弦から、駆ける魔力が収束し漆黒の矢を描く。
 瞳を細め――指を離す。
 放たれた漆黒の矢が戦場を駆け抜けた。
 矢は二体の氷精を貫き、瞬く間に更なる一体が砕かれる。
 砕けて転がった核は、間違いなく人工物であろう。
「精霊力の強制使役とは、感心しませんね」
「ほんと、その通りダネ!」
「てめぇ、少しは働けや!」
 言葉通り『突っ立っていた』ライエルに、アランが怒声を放つ。
「倶に天を戴かずなんて言うじゃない? でもね太陽が二つで二天ならサ」
「うるせえ! そのギターで殴るなりなんなりしろや! 先にお前から殺すぞオラァ!」
「そんな言い方、ひっどいなー! 僕ぁネ。まあ、それじゃ君等に相応しい一曲。英雄叙事詩を――」
「待っておりましたわー!」
「そう? 嬉しいナー! それじゃ歌は君のほ・う・で!」
 イントロのアルペジオが紡がれて。
「とびきりハッピーなメジャースケールで行こう!」
 火炎と冷気を立て続けに浴びたリゲルは身を覆う冷気と火炎の影響を受けていない。
 一行もまた敵から強かな打撃を受けながらも、それらを被っていないタイミングである。
「ならばならば、このわたくし! 御天道タントが最高の歌を披露してみせますわー!」
 タント様の天使の歌は高らかなコード進行に乗り、イレギュラーズを暖かな陽光のように包み込む。


「こっちッス!」
「お願い!」
 妖精を守り続けるイルミナの前に現れた氷精を漆黒の矢が撃ち貫き。
「次はこちらですね」
「歯ごたえがないな」
 叩き付けられた漆黒の杭が粉々に打ち砕く。
「おらぁ!」
 アランの一撃が氷精最後の一体を寸断して。
「いいじゃん、続けて! 俺がそっち行くから!」
 史之が戦場を駆ける。イレギュラーズは司令塔となったタントを中心に陣を展開していた。
「助かるよ!」
 調和の術陣が敵を引き付け続けるリゲルの身体を包み、その傷を完全に消失させ――パチン。
 フィンガースナップが鳴り響く。

   \きらめけ!/
   \ぼくらの!/
 \\\タント様!///

「皆様! 今こそ、炎を払うのですわー!」
 燃えさかる炎のただ中でタント様が高らかに宣言する。
 炎の揺らめき、それが最小となる次の一瞬をタント様の直感――クェーサーアナライズがつかみ取る。
 応じた各々は刹那一斉に、腕を、剣を宙に振った。
 言霊とさえ称することが出来る号令に、イレギュラーズを覆う炎が同時に消滅する。
 次々に吹き付けられる火炎の嵐は強烈だが、史之とタント様の素早い対応の前に、ただこの即興ステージを華やかに彩るばかりだとすら云えよう。
 そして――

「ヤマひとつ越えたね。じゃあ次のヤマ行こうか!」
 史之の力強い宣言に一同が呼応する。
 いくらかの時を経て、未だ戦いは続いていた。
 イレギュラーズの猛攻はタフネスに劣る人工精霊から順調に各個撃破してきている。
 敵から幾重にも降り注ぐ苛烈な攻撃はタントと史之、そして時として防ぎきれぬ場面でフォローに回るリュティスの三名によって完全に押さえ込まれた状態だ。
 数に勝る敵であったが徐々に数を減らし、残るは最早自動人形共だけであった。

(ここは深緑だよね……)
 練達ならばともかく――これが自動人形であることに、明らかに作為を感じる。
 唸りを上げて迫る刃に、史之は裏拳を振るうように重い(なぜか!)腕を叩き付ける。
 けたたましい音と共に赤い稲妻が弾け、展開された理力障壁で自動人形を押さえ込んだ。
 籠められた殺意の呪いが自動人形を蝕んで往く。

「一気に殺す!」
 アランは大地を蹴り、自動人形の懐に飛び込んだ。
 唸る自動人形の刃が頬を掠め、だが視線は敵の中心を射貫いたまま外さない。
 引き絞った剣を硬く握りしめ、裂帛の踏み込みと共に凶刃が人形の胸を打ち貫き――残るは一体。
「お願い……やっつけて!」
 妖精の小さな小さな手のひらが、イルミナの背をとん、と押した。
「任せるッス!」
 雷光の如く駆けるイルミナが腕に光のフィールドを展開した。
 すれ違いざまに振り抜かれた光は大気を切り裂くプラズマのように自動人形の腕を弾き飛ばして――
「つまらない、これじゃあつまらない……。喰い応えをよこせ」
 半身となって尚カタカタとうごめき続ける人形から、突き込まれた刃に弾ける漆黒をものともせず。
 脈動する漆黒のうねりを叩き付けた愛無の身が、そのまま自動人形を奥底まで侵食して往く。

 刹那の時を重なり離れる仲間達の間隙、刹那の間合いを静かに見据えて。
 リュティスの可憐な大粒の瞳は千載一遇のタイミングを逃さない。
 放たれ、一直線に駆ける悪夢の矢は自動人形の半身が剥き出しにした核を射貫き、打ち砕く。
 跳ね飛んだ自動人形の腕先が染み込んだ血をすくい取り――
「逃がさないぞ!」
 剣光一閃。リゲルが放つ大気すら凍らせんばかりの終焉の刃が自動人形の残骸を真一文字に切り裂いた。


 戦闘は終わりだ。全員がさしたる怪我もない快勝であり、ほっと一息つける瞬間である。
 時間と共に魔力を回復させる三名の癒やし手は、それぞれ直ちに仲間に残る傷を完全に消し飛ばした。
「ふう……皆大丈夫だね」
 大きく息を吐き剣を払ったリゲルに、ライエルがすかさずギターをかき鳴らす。
「じゃんじゃーん、これにておしまいハッピーエンド! ダネ?」
「そういう所もっていきますの?」
「あっはっはー。こりゃ失礼。じゃ君等の活躍を一曲」
 そうじゃねえだろとアラン。
 ライエルの様子にリュティスも首を傾げる。やはり少しいい加減な人柄のようだ。
「ライエル様! ごーごー!」
 ライエルとタント様が虹色の光環を見つめる。
「それで……なにをしますの?」

「すごーい!」「つよーい!」
「あたしビオラ」「わたしはペポ」
 一行の周りを元気よく飛び回る妖精達に、困った表情を浮かべる者、丁寧に名乗る者。
「あー、まあ」
 アランが帽子を目深にかぶる。妖精達がおとなしくなったら話を聞きたい所だが。
 まずアランが調べたのはゲートである。
 魔物が何の用があるのかという観点だ。魔力的なエネルギーを発していると考えられるから、それを餌にする物も居るだろう。だが今回の敵は明らかに全て人為的と見て間違いないだろう。

「君達と友達になりたいんだ」
 せっかく世界が繋がり、縁を持てたのだから――
 膝を立て目線を合わせたリゲルは妻に持たされたハンカチで手を拭った。
「うん!」「仲良くしよー!」
 差し出された手に向けて、リゲルは小さな妖精達と指先で握手する。
 尋ねたのは、魔物や魔種に襲われる理由だ。
 穏やかな日常を確実に守る為、まず敵の動機を知りたい。
「わからないの……」
「でも変な男の人を見た友達が」
 イレギュラーズの前に姿を見せた魔種ブルーベルは、謎の男の存在を口にしたという情報がある。
 礼を述べたリゲルは妖精達から代わる代わるの質問を矢継ぎ早にまくしたてられ、応じながら思案する。
 妖精郷は女王に統治されているらしいが、魔種一党は女王へ何か思う所があるのだろうか。
「何かあったらローレットを頼れよ。俺達がなんとかしてやる」
「お願いする!」「ありがとう!」
 アランの言葉に妖精達が力一杯頷き。

 愛無は一人、ライエルを監視している。
 事件に魔種が関わる以上、注意に越したことはない。保険ではあるが、何事もなければそれでよし。
 まあ。無駄に顔と声が良い男が裏切るとは、講談のお約束だと胸に秘め。

「ところで、調べたいことって何ですかしら? 何でもお手伝いしますわよ!」
「ならちょっと光ってもらえるカナ?」
「合点承知の朝飯前助ですわー! って、なんですのそれ?」
 ライエルが弦を弾く度に、輝くタント様の光が共鳴するように微かに揺れる。
「僕ぁ虹の精でね。光にはちょっと詳しいのサ。太陽の光はチューニングにぴったりでネ」
「そうなんですの!?」
「そうなのサ。うんぴったりだ。助かったよ。それじゃあ調査をはじめようか」
「ライエルさんストップ。妖精を全員門の向こうへ帰そう」
 史之はあまり待たせるのも可哀想だと告げた。
「秋宮クン! 気が利くネ!」
「ええー!?!?」
 大声で渋る妖精達の説得は少々骨を折ったが――

「またねー!」「ばいばーい!」
 虹色の光へ消えていく妖精達を見送って。一行は仕事の総仕上げにかかった。
「タント様は、そこで光ったままで居て欲しいんだ。頼めるカナ?」
「もちろんですわ!」
「私も何かお手伝い出来れば」
「リュティスちゃんは、そうダネ。お茶を煎れてもらえる?」
「いくらでもお煎れしますが、そうではなく」
「イルミナ的には、お花に興味津々ッス……!」
 幻灯花、記憶を映し出すという花。
「そりゃ名案! じゃあ君等はお花の調査なんてどう?
 僕のはそんな精密な作業じゃないからサ。おしゃべりでもしながら行こうよ」
「了解ッス!」
 ライエルが尋ねてきたのは例によって例の如く冒険譚である。イルミナにとっては先の迷宮か。

 イルミナ達の視線の先では、花の放つ光が幻想を描き続けている。
 混じり合う過去の残影は不意に片眼鏡の男を映し出し――これがブルーベルの協力者だろうか。
 一同が息をのむ中。

「共鳴の調査、終わったヨ」
 ライエルが手を振った。
「何かあった時、君等の為に一曲作れるようにネ」

成否

成功

MVP

御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの

状態異常

なし

あとがき

依頼お疲れ様でした。

被害ゼロというのはすごいことです。
今回のMVPは支柱となった方へ。

それではまた、皆さんのご参加を願って。pipiでした。

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