PandoraPartyProject

シナリオ詳細

花摘む少女の帰り道

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●フェアリーコール
 りん、りん、りん。多い茂る木々をすり抜けて軽やかに鈴が鳴る。
「花弁集めて、鍋で煮て。
 瓶に詰めて、お菓子を焼こう」
 明るい歌声と共に釣鐘状の透き通る花弁を一枚頂戴して、小さな人影は透き通る小さな羽を震わせてふわりと宙に舞い上がった。高度を上げる度に、細い足に結いつけられた鈴が鳴る。
 咲き誇る花から花へ、ミツバチのように愛らしく忙しなく飛び回るのは一人の妖精だった。せっせと甘い蜜を壺に集めては、花弁を摘み集めていく。
 この用事を済ませれば、あとは家に戻って鍋で煮詰めれば美味しいジャムのできあがり。氷砂糖につけ込んでシロップにしてもいい。これは病避けの薬とされ村では重宝されている、一人前にならなければ任せられない大切な仕事だった。
「これでよし、十分ね」
 仕事の成果を自画自賛した彼女は元来た道を振り返る。視線の先には木漏れ日が降り注ぐ森が帰り道である妖精郷の門(アーカンシェル)まで続いている筈だった。
 そこにあったのは人種でも魔物でもない『何か』だった。
 確かに分かることは『それ』はのっぺりとした白い肌をしており、二本の足で立ち腕らしき器官を持っていた。錐のように尖った腕の先端を向けると、ゴムのように撓らせながら鋭く振るった。たった一つの動作で門の一部と枝を軽々と貫いてしまう。そしてもう片方の手を薄く平らに変形させると、アーカンシェルへ向かって乱暴に斬り付けた。そうして零れ落ちた光の滴を、鋏で切り開いた傷のような真っ赤な口で食らっていく。
「あ、あっ……」
 恐ろしさに喉が凍り付いて言葉が出てこない。そんな少女を尻目に、カタカタと音を立てて人骨が起き上がった。
「きゃああああっ!」
 とうとう恐ろしさに耐えかねた少女は、悲鳴を上げて門とは反対方向へと飛んでいってしまった。

●ローレットの小さな来客
「本当に、ほんっとうに怖かったんだから!」
「……へえ、そうかい」
「もうっ、折角話しているのに真剣に聞いてるの?」
 眦に涙を溜めぴいぴいと耳元で叫ぶ小さな『彼女』を片手で制しながら曖昧な返事をしていた『砂礫の鴉』バシル・ハーフィズ(p3n000139)は、イレギュラーズが集まったことを確認すると口を開こうとした。
「あなた達ね、フィーリをお家に返してくれるのは。もう一秒だって惜しいのよ、早く出発しましょう!」
 サングラスの向こうでバシルが眉を潜めるよりも早く、小さな客人が口火を切った。
「もう大変なのよ、早くしないとアーカンシェルが壊れちゃう! そうなる前にあの変な白い化け物を倒して欲しいの!」
「……だそうだ。今の説明で分かった奴はいるか」
 首を傾げるイレギュラーズの反応を見て、バシルは大きなため息を吐いた。
「俺が代わりに説明しよう。この五月蠅い……いってぇ」
「可憐な!」
 バシルの頭を小突いた後、一音ずつ強調するように訂正を求める声に思わず睨み付けそうになったが、すくみ上がった肩を見て気まずそうに視線を逸らして誤魔化した。
「元気な彼女はフィーリ、『妖精郷アルヴィオン』から迷宮森林へクリスタベルの花を摘みにやってきた妖精族だ。収穫を終えたあとアルヴィオンへと繋がる門、アーカンシェルを通り帰還するはずだったんだが思わぬ邪魔者がいてな、そいつを倒してフィーリをアルヴィオンへと帰して欲しいと深緑を通して依頼があった」
「そういう事よ」
 フィーリが顎先をツンと突き出してそっぽを向くと、バシルは表情を変えないまま依頼書をテーブルに乗せ軽く指先で叩き示した。
「魔物についてだが、人に似た形をして両手両足そして頭部を持ち、表面は真っ白い粘土で作り上げたようなのっぺりとした肌と顔をしているらしい。ゴムのように撓る腕は先端が尖っていて、槍のように突きだして攻撃してくる。それだけじゃねぇ、どうやら腕は刃のように変形することも可能らしい」
「腕は尖っていたかと思えば、骨がないみたいに伸び縮みして自由に形を変えていたわ」
 報告書を読み上げるバシルの言葉を聞いて白い腕がアーカンシェルを穿ち音が再び聞こえた気がして、フィーリは震える声で続けた。
「骨がないようなといえば海種にもみられるが、ここまで形を変えることは不可能だ。最近報告が上がっている未知の魔物かも知れねぇから十分に気をつけてくれ。
 他はスケルトンが六体現われる。うち四体が襤褸の剣、二体が弓矢でそれぞれ単純に斬った撃ったで攻撃してくる。こちらは攻撃は単純だが油断はするな」
 戦場を潜り抜けてきた傭兵はそう締めくくり静かに語りた。するとバシルは徐にフィーリをイレギュラーズへと押し出すと、両手で耳を塞いだ。
「な、何よ……」
 そのまま彼は真剣な表情でこう言った。
「できれば俺が頭痛を起こす前に、コイツを家に帰してくれると大変助かる。後は頼んだ」
「あなたってほんっとうに失礼ね!」
 当てつけるようにバシルの耳元で叫んだフィーリが、肩を怒らせながらローレットから出て行ったのはこのすぐ後のことだった。
「一つ言い忘れていた」
 追いかけようとするイレギュラーズを呼び止めたバシルは、一転して神妙な面持ちでもう一つの事実を告げた。
「食われているのはアーカンシェルだけじゃねぇ、アルヴィオンへ帰るために潜る妖精達を待ち伏せして食ってやがる。既に何人かはやられた後だ。奴らはアーカンシェルの近くで待ち伏せして餌がくるのを待っているらしい。ここまで言えば十分だな、皆まで言わねえ――頼んだぞ」
 そう念を押して、今度こそバシルは彼らを送り出したのだった。

GMコメント

 妖精です、賑やかです! 可愛いですね、思わずにこにこしてしまいます。水平彼方です。
 今回は深緑より妖精を門へと送り届けて欲しいと依頼がありました。

●成功条件
 全てのモンスターの討伐

●戦場
 時刻は昼、森の中での戦闘となりますが程よく手が入っており明るいです。
 アーカンシェルの付近に到達すると戦闘開始になります。

●敵の情報
 戦闘中、敵は邪魔に入ったイレギュラーズの方へと集中します。

・白い魔物×1体
 粘土で作り上げたのっぺりとした人型の魔物です。両腕をそれぞれ錐やナイフのように変形して攻撃してきます。
みぎうで:物近単。錐のように尖った腕で攻撃します。ダメージ大+流血
ひだりうで:物近範。細長い刃に変形させた腕で周囲を薙ぎ払います。ダメージ
かじりつく:物至単。相手に齧り付いて血を啜ります。ダメージ+HP吸収

・スケルトン(剣)×4体
 動く人骨とみられる魔物。生前手にしていた襤褸の剣で攻撃してくる。
斬撃:物至単。剣で攻撃します。ダメージ
骨砕き:物近単。自身の体の一部を折り、敵に突き立てます。ダメージ+毒

・スケルトン(弓)×2体
 やや後方に控えて弓矢を撃ってくる動く人骨の魔物。
射撃:物遠単。自身の骨で作った弓矢で攻撃します。ダメージ

●フィーリ
 基本的に戦闘が始まれば物陰に隠れて出てきません。戦闘が終われば声をかけてあげるといいでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしております。

  • 花摘む少女の帰り道完了
  • GM名水平彼方
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年04月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
罪のアントニウム
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)
わるいおおかみさん
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
希望の蒼穹
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女
月羽 紡(p3p007862)
二天一流
ハルア・フィーン(p3p007983)
仲間がいるから
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
黒狼の勇者

リプレイ

●森林の中で
 森とは時に恐ろしく、時に恵みをもたらす。まるで善き魔女と悪い魔女そのもののようだ。
 生い茂る木々は程よく日差しを遮り、木の葉模様の影が世界の明度をより鮮明に描いていた。絵本や空想で誰かが思い描いた中を妖精に先導されたパーティはまるで輝かしい英雄譚のよう。視界いっぱいに広がる迷宮森林へと分け入りながら、奥へ奥へと進んでいく。
「森の道で恐ろしい目に遭うのは度々起こる事だけれど、人形と骨というのは見場が良くないねえ。狼や熊の見せ場が無いじゃあないか」
 この舞台にはもっと相応しい者が居ると言いたげな『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)の言葉に、フィーリはその通りだわ、と憤然と頷いた。
「あれならもっと暗い洞窟の方がお似合いよ」
「確かに、そうかも」
「でしょ?」
 『屋台の軽業師』ハルア・フィーン(p3p007983)がフィーリの言葉に頷くと、言い忘れていたと軽く自己紹介をする。
「今日はよろしくね、フィーリ。そういえばフィーリとボク、名前ちょっと似てるね」
「フィーリとフィーン……本当だわ、嬉しい偶然ね」
 ハルアの言葉にローレットで出合ってからずっとどこか固い表情をしていたフィーリが、徐々に明るい表情を取り戻していく。
「しかし妖精郷付近で昨今色々起きているね、何か用事でもあるのか、欲しいものでもあるのかね」
「妖精と、魔物……最近本当にこの手の事件が多いですね。何らかの要因があるのでしょうか?」
 グリムペインの言葉に『祈る者』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)は胸の内で燻っていた疑問を口にする。犠牲になった小さな命を思うと悼まずにはいられない。沈痛の色を隠しながら向けた視線の先には仲間の死を知らないフィーリが、クラリーチェの意図をくみ取ることなく不思議そうな表情で首を傾げていた。
「そんなに多いのね」
「最近ローレットで噂になってる妖精の件かぁ。明らかに何者かの意志の元で行われてるみたいだし、一件一件片付けつつ、真相を探らないとな。人の世の平穏を護る使命、『人』には当然、妖精も含まれるとも!」
 意外だと目を丸くするフィーリに『帰ってきた牙』新道 風牙(p3p005012)は安心させるように明るい笑顔と共に胸を張った。
「しかし、骨以外にも何かいるんですね。こちらの世界は色んな存在がいて、飽きませんね。だからと言って、人を脅かすものを容認するわけではありませんが」
 鋭い視線を投げかけながら『二天一流』月羽 紡(p3p007862)は考え込むと、かねてからの疑問を口にした。
「アーカンシェルとは、移動装置のようなものでしょうか。これを壊すことに意味があるのでしょうかね? 帰れなくするとか、一ヶ所に集めて一網打尽にするとか」
「分からないわ。けれどこちら側と行き来するために通るものだもの、壊されるのは困るわ」
 急ぎましょう、と速度を上げたフィーリを追いかけていく仲間達を少し見送りながら『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)はそっと呟いた。
「……やっぱり誰かが何かの目的で妖精さんを狙ってるのかな」
「もう何人か妖精も食べらてしまっているのね……。これ以上犠牲は出したくないわ。門だって守って見せる」
「これ以上の犠牲者を出さない為にも、この依頼を成功させる事だ」
 『かつての隠者』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)の言葉に『特異運命座標』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)が背負った槍の重さを感じながら頷いた。
「それを突き止めるためにも、まずはみんなを助けないとね!」
 アレクシアの明るい言葉に二人も頷いて答えた。
 その時、風の流れが変わった。周囲を警戒していたハルアがさっと手を伸ばして皆に静止を促した。ベネディクトも静まりかえった小動物達の音に気がついて、召喚した鳥の視覚をたぐり寄せる。
「クリスタベルの花が踏まれてる……」
 フィーリが青ざめた顔でそう呟くと、顔を上げて或る方向をじっと見た。
「ここ、見覚えがあるわ。あっちには、確かアーカンシェルが」
 そう言葉を詰まらせたフィーリを止め、紡は神経を研ぎ澄まして周囲を探る。
「いま、この先で何か動いたようです」
 紡の言葉にベネディクトはすぐさま木々の上を飛ぶ鳥へ指示を出し旋回させ、彼女らが示した方へと真っ直ぐに飛んでいく。僅かな隙間からもれる光と共に蠢く白い影が見えた。鳥の羽ばたきを聞きつけた白い魔物が、頭らしき部位をもたげて空を見る。
 次の瞬間見せつけるようにして鋭い槍のような一撃が虹色の光を穿ち、無残に溢れた欠片を食らっていく。
「いたぞ、こっちだ!」
「やっとか、待ちくたびれたぞ」
 敵対心を感じ取ったグリムペインの毛皮がひりつくような熱を持つ、待ち望んだ役者の気配に毛並みが逆立つのを抑えきれない。
「私はここで待っているわ。……迎えに来てね、必ずよ」
「勿論!」
 風牙は先ほどと変わらぬ笑顔で答えると、木々の向こうへと走り去った。
 
●真白の禍
「見つけた――白い魔物とスケルトンが六体、情報の通りだ」
 仲間にそう告げると、声だけを置き去りにして一人の戦士が疾風のように駆け抜け戦端を開く。
 風牙は真っ先に飛び出すと、構えた槍を握り戦場の中を猛然と走り抜けた。目指すは敵陣の直中【烙地彗天】の穂先がより多く届く場所へ、白い魔物へと迫る風牙の前に刃こぼれした剣を威嚇するように振り上げたスケルトンが立ちはだかった。
「アンタがオレの相手をしてくれるのか、ならまずは一撃貰っていけ」
 前傾姿勢から後ろに引いた穂先が円を描くように一気に薙ぎ払う。前進の勢いとそれを殺さない巧みな体捌きにより、風牙のもテルチから全てが余す所なく刃に宿り、込められた気と共に撃ち込まれた。傷つけられた骨を見て、カタカタと喚くように音を立てて騒いだ。
「特異運命座標、ベネディクト。悪いがこれ以上、貴様らの好き勝手にはさせる訳にはいかない」
 ベネディクトは名乗り上げると【グロリアス】を器用に操りながら、力任せに身の回りの敵に深手を負わせるべく襲いかかる。二重の刃を受け止めた剣と骨が甲高い音を立ててぶつかり合った。
「その門を壊すのは何故です? ……と言いますか、ただの糧とするならば門じゃなくても良いでしょう。それを食らうことで力が増す等、何か利点があるのですか?」
 クラリーチェは白い魔物へと問いかけながら魔力を高め、戦局を見定めた彼女の頭脳は戦い方そのものを最適化し構築する。答える声は無いが、向けられた敵意をもって返答とした。
「答えを得るには倒すしかないようですね」
「全く、そのようだ!」
 ページの上を彩る物語から世界を渡り旅人へ、舞台を変えながら生きる端役の狼が『現在』未完の物語へと登壇する。警笛は開幕の時を告げ、有象無象を跳ねながら束の間敷かれたレールの上を疾走する。その跡へと青白い陽気をたなびかせる妖刀【不知火】へ赤々と燃える紅の炎を纏わせ紡が走る。
 一振り、息つく間もなくもう一振り。立ち並ぶ敵を焼き滅ぼす戦鬼が現われた。
「一応自分の世界では巫女もしていましたし、骨は地に埋めたいですね。まぁそのためにはまず大人しくなってもらわないといけませんが」
 振りかぶられた剣を【不知火】で受け止める紡。鋼同志がぶつかり合い甲高い悲鳴を上げ火花を散らせると、一旦両者は距離を置いた。
「その気は無いようですね」
 目の前の魔物も動く亡者の骨も声一つあげることは無い。だがそれらの意志は攻撃と共に特異運命座標たる彼らへと叩きつけられていた。
 その答えにも理由があるのかも知れない、ハルアは最近特にそう思うようになった。しかしわかり合うには遠く、横たわる隔たりは深い。
 それでもハルアは道を模索することを止めない。ただ戦って守れるものを護る、まだ今は答えは出ない。その先にハルアだけの答えが見出せることを信じて突き進むのみ。
「負けないよっ!」
 春風を纏ったハルアが足軽にステップを踏みながら駆け抜け仲間の立つ先陣へと肩を並べた。【ヴィクトリアス・フェロー】から生み出された小さな春一番が吹き荒れた。
 突風に抗うように白い魔物が刃物へと変えた左腕を乱暴に振り回して暴れ回る。
 その腕を止めるように【ウニヴェルズム】の表紙を開き『本能』を覚醒させたアルメリアが雷を放つと、白い魔物を中心にうねりのたうち、蛇のように敵を飲み込んだ。
 後方から紡とクラリーチェ目がけて弓矢が撃ち込まれる。だが特異運命座標たる彼らはこの程度で引くはずがない。
「今回も頼りにさせてもらうわね」
「任せて!」
 仲間達の行動を待ち敵戦力を観察していたアレクシアは攻撃の中心が剣をもったスケルトンに集中したことを鑑みて、白い魔物へと狙いを定めた。
 咲き乱れた紫の花弁が意思を持った弾丸のように飛び、孕んだ毒を対象へと運んでいく。衝撃だけが貫通したあとに残った魔力の残滓が、秋にひらく小さな毒の花のように愛らしく咲いた。
「妖精郷にも、みんなにも手出しはさせない! 私が相手だよ!」
 名乗り上げたアレクシアは敵意の眼差しを受け、なお笑っていた。

●灰燼へと還れ
 戦いは双方共にダメージを積み重ねる事を優先し、少なくない傷を負っていった。また手数を追った個体から優先的に討伐することで、イレギュラーズはより有利な流れを引き寄せていた。風牙とアルメリアによって数体のスケルトンが砕けた事により、攻撃は徐々に残った敵へと集中していった。
 怒りが解けた白い魔物は反撃だと言わんばかりに錐のように鋭く尖らせた右腕でアレクシアを突き刺した。そのまま傷口のように開いた赤い口でアレクシアの腕に齧り付く。
「アレクシア!!」
「平気だよ!」
 魔物を引き受けるアレクシアは白の魔物の注意を惹きつけ、仲間が攻撃しやすいようにコントロールし続けていた。作戦の要でもある彼女が憂い無くあり続けるように、アルメリアが傷を癒やし奮い立たせていく。彼女の強かさに仲間達も信頼を置いていた、なまじ倒れるわけにはいかないという思いが一層アレクシアの体に力を与えた。
 しかし一度に複数体を対象に攻撃するイレギュラーズの作戦が功を奏し、魔物達は徐々に追い詰められていく。
「骨だけで動く哀れなものよ。その魂は既に天にあり。……動きを止めなさい」
 クラリーチェがかつての肉体の所有者へと祈りを捧げる傍らで、闇が鈴を転がすような声で嗤う。
『見つかっちゃ、いけないよ?』
 黒いレェスの向こう側でころころ嗤う。
『お友達、みぃつけた』
 遊び相手を見つけた幼子のように無邪気な声で囀りながら、闇は白い魔物へと纏わり付き痛みと共に呪いをかけた。
「フハッ!! 神は骨や泥からヒトを作り給うたが、真似事かな?」
 グリムペインが哄笑しながら相手を挑発すると、【腐食結界『ラヴィアンローズ』】によって現われた茨を形作るものが悪意と悦楽の死滅結界を展開させ、じわりじわりと生命力をこそげ取っていく。
「私はまだ大丈夫! さあ、ぱぱっとやっちゃって! ってね!」
 アレクシアは回復した傷を誇示するように腕を振り上げて見せた。
「では、遠慮無くいかせて頂きます」
 それを受けて紡は再び炎を宿し、アレクシアが引き付けた魔物ごと焼き払う。続けてハルアがテンポの速いビートを刻むかのように加速し、敵を惑わせながら大戦斧を振るった。
「骨は肉もありませんでしたから、血も流れませんでしたが……こちらはどうなのでしょうね」
 白い魔物へと狙いを移しながら紡は試しに攻撃しながら正体を見るべく傷口を見た。
「しいて挙げるなら被造物……ゴーレムとかそういう類いでしょうか」
 紡がいた元の世界なら、もしかしたらこんな妖怪がいたのかもしれない。謎は深まるばかりだった。アレクシアが再び後退すると、魔物もそれに釣られて移動する。そこへベネディクトが白い魔物への最適な攻撃手段は無いか探りつつ【グロリアス】を握り直す。
「──済まない、行くぞ、アレクシア!」
 高速の薙ぎ払いを重ねた攻撃に、甲高い音を立ててスケルトンの体が砕け散った。
 よろめきながらも変形させた腕を振り回しながら攻撃する魔物へ、更なる追い打ちをかける。
 骨は砕いたりが有効そうだが、白い魔物は粘土。ならばと払う、突くだけに留まらず、槍に刺したまま力任せに持ち上げると地面へと叩きつけた。
その近くで勢いよく地面に叩きつけられた白い魔物は一度体を震わせると、すると突然魔物はくるりと背を向け
 その行動に嫌な予感を感じ取ったアルメリアは咄嗟に前へと飛び出して白い魔物の行く手を阻もうとする。しかしそれを察したスケルトンの射手がアルメリアの行く手を塞いだ。
「誰か止めを刺して!」
「逃がさねえ!」
 声を聞いた風牙が逃すまいと飛び込んだ勢いのまま【烙地彗天】へとありったけの力を込めて振り下ろし、そのまま間に入ったスケルトンごと巻き込むように薙ぎ払う。左腕を落とされ、腹の辺りを大きく切り裂かたれたものの、体勢を立て直すと傷口を癒合させ森の奥目がけて一目散に逃げていった。
「くっ……!」
 アルメリアが歯がみするのを見て、これは好機ともう一体の射手が矢を番えた。
「おっと悪いが、そこは私の舞台上だぞ。見えなくても目が届かないという事は無い」
 グリムペインは全身の力全てを魔力へと変換し巨砲の弾のように打ち出した。
「ありがとう。今は目の前の事に集中しないといけないわね」
「それではラストスパートと参られましょう!」
 ハルアは快活に宣言すると、切れ目の無い刺突と斬撃を繰り返し手近なスケルトンを強襲する。紡が点した炎は赤々と燃え白い骨を容赦なく灰へと変えていき、埋み火を残してとうとう力尽きた。
 後方でよろめくスケルトンへ、クラリーチェは囀り嗤う闇が呪いをかけた。
 ベネディクトは最後の一体へと駆けた。途中一息に踏み込むと間合いを詰め、次に着地した足が踏み込むと同時にがらんどうの体を貫いた。
 ばきん、と骨が折れる音が森に響く。わななく腕で栄光の槍を掴むもそれまでだった。
 束の間の命で牙を剥いた亡者は、王の槍に貫かれ、果てたのだった。

●花摘む少女の帰り道
「――うん、周囲に敵はいないみたい」
 残党がいやしないかと探っていたハルアが安全確認を終えると、お疲れ様! と元気よく声を上げた。
「終わったか……さて、こいつらを調べても何か解る事はなさそうか?」
 全ての敵が倒れたのを確認したベネディクトは、その場に残ったスケルトンの残骸と魔物の腕を覗き込みながらまじまじと観察する。アレクシアは怪我人の治療しつつ、魔物をちょっと調べてみよう。
「なんだか自然発生した感じの敵じゃなかったし……そもそも生物なのかどうかとか、調べてみたらなにか判るかも」
「白い魔物は気になるなあ、材質は何だろう。砂? 泥?」
 粘土のようにこね回され形を作っているそれが何なのかグリムペインの見識では分からなかった。
 風牙はアーカンシェルの周りに妖精の死体やそれを匂わせる痕跡がないか足下を探る。きらりと光を弾いた銀の鈴をみた風牙は、居たたまれない表情でそれを拾い上げた。
「探し物?」
「ん? ああ、見つかったけど、見つからない方が良かったな……」
 問いかけたアルメリアに、ばつの悪そうな顔で頬を掻く風牙。フィーリに見つからないようクリスタベルの根元へと埋めて隠した。「(それにしても妖精って美味しいのかね? 他に栄養価が高いモノなんて幾らでもあるだろうにねえ)」
 白い魔物の意図は何だったのか、残りかすの腕はなにも語る事は無い。
「さて、フィーリをそろそろ送り届けてあげなければいけませんね」
 日が傾きオレンジ色へと変わり始めた頃合いに、紡は仕切り直すようにぱんっと手を叩く。クラリーチェは元来た道を戻り、隠れていたフィーリの近くへ膝を着くと優しい微笑みで彼女を迎えた。
「フィーリさん。すべて終わりましたよ」
「本当?」
 信じられないと目を丸くするフィーリへとベネディクトも言葉を重ねる。
「もう終わったよ」
「ううん、疑っているわけじゃ無いわ。ただ、まだ少し実感が無いだけ」
 安堵からぽろりと溢れた涙を隠すように目元を乱暴にこすると、フィーリは笑顔で空へと飛び上がる。
「クリスタベルの花弁は十分に集め終わっているでしょうか」
「もう少し欲しいところだけど」
「なら、皆で集めましょう」
 クラリーチェの提案に一輪ずつで十分だと慌てながら、フィーリは散開し花を摘むイレギュラーズの元へ忙しなく飛び回った。受け取った花弁を詰め込んで、いよいよフィーリは門の前へとたどり着いた。
「これ、お土産あげるね」
 そういってハルアがポケットを叩くと、きらきらと輝くビー玉をプレゼントした。
「元気でね……!」
 手を振って見送るイレギュラーズに負けじと、フィーリも大げさに手を振り返した。
「あなた達も。皆にどうか花の加護がありますように」
 そうして彼女は門を潜り、無事に家路へと着いたのだった。

成否

成功

MVP

ハルア・フィーン(p3p007983)
仲間がいるから

状態異常

なし

あとがき

冒険お疲れ様でした。妖精フィーリが導いた冒険はこれにて終幕となります。
如何でしたでしょうか。
得体の知れない敵に対して、とても果敢なプレイングを頂きました。勇ましい皆さんの姿がとても印象に残りましたので、お楽しみ頂ければ幸いです。
MVPはあらゆる場面でパーティを支え、活躍したハルア・フィーンさんへ贈ります。

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