PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Are you having fun??

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●New Open!
「やあ、特異運命座標(アリス)。ご機嫌は如何かな」
 にこやかに、かつ回りくどい言い方をするこの男──『Dr.』マッドハッター(p3n000088)。彼は練達首都セフィロトの三塔主の1人であるのだが、それよりもこの独特な言い回しと物語に登場する『帽子屋』のような佇まいの方が印象的かもしれない。
「君たちに招待状だよ、アリス」
 彼が取り出したのは1通の手紙。招待状だと言うそれは中身を見ると、確かにそのような記述がされている。
 けれど、『MasteryPark』とは?
「練達で作られた遊戯の舞台さ」
 成る程全くわからん。
 その後も質問を重ね、『練達製テーマパーク』のことであると聞き出したイレギュラーズ。すでにそこで些かの疲れを感じながらも、試験的に遊んでもらいたいと言う依頼の本質まで聞き取れたことは褒められたって良いと思う。
 ともあれ、練達からの依頼だ。ただのテーマパークでないことは間違いない。
 情報屋はイレギュラーズへその旨も伝えておこう、と心の中で呟きながら依頼書を作成したのだった。


●で?
「ねえちょっと、これ一体どう言うこと???」
 錫蘭 ルフナ (p3p004350)が盛大にはてなマークを飛ばしながら問う。誰しもが自分とか隣の人のことでいっぱいいっぱいだったので聞いてなかったけど。
「ねえゼファー。これで良いの?」
「ん? アリス、そこは体を通すところじゃありませんよ。こっちこっち」
 ナチュラルに間違えて準備していたアリス (p3p002021)を見てゼファー (p3p007625)が自分の格好を見せる。アリスは成る程と頷いて1人用のセーフティバーを正しく付け直した。
「この先にはどんな物語が待っているのかな」
「楽しみだな」
 シキ・ナイトアッシュ (p3p000229)はワクワクと目の前に広がる深淵を見つめているし、レイリ―=シュタイン (p3p007270)はよく考えていなさそうな表情でうんうんと頷く。いいのかそれで。
「ラピス、ラピス。手、ぎゅって、」
「手? うん、いいよ」
 はい、とラピス (p3p007373)が手を差し出すとアイラ (p3p006523)が近いほうの手を差し出す。2人顔を見合わせ、にっこりと微笑む様はお砂糖生産機なのだが周りをもうちょっと見てくれ。何かおかしいだろう。ほら。
「ねえ、なんでわたしたちこんな乗り物に乗ってるのかな?」
「そうそれ! 普通思うよね!? なんで皆いつも通りなの!?」
 ルアナ・テルフォード (p3p000291)の問いかけにルフナが立ち上がろうとして──セーフティバーに遮られる。打った腿が痛い。割と痛い。
 そうこうしている間にブザーが鳴り響き、電子的な声がスピーカーから流れる。
『間も無く発車となります。セーフティバーを必ず装着し、立ち上がらずお待ち下さい』
「は? いやだから僕たち何も聞いてないって、」
 ルフナの言葉は途中で切れる。ガタン、という機械の音とともに──機体が猛スピードで走り出したからだ。


 というわけで、Good luck☆

GMコメント

●すること
 『MasteryPark』を遊び倒すこと


●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。……が、主に皆さんがプレイングで送ってくる不測の事態だと思います。


●MasteryParkとは?
 練達製テーマパーク。マッドハッターが楽しそうです。
 通常と似たようなアトラクションが確か存在していますが、練達製です。意味はわかるな?
 どれも安全装置は付いています。練達の良心と呼ばれる存在が付けたようです。良かったね。

 ちなみに入園はOPの通り、ジェットコースターで向かっています。つまり退園も同様です。コースは行きと違うらしいですよ。
 ちなみにアトラクション例は以下の通り。ここになくてもプレイングに書いて頂ければあるものとします。まともなものはないと思ってください。

・ジェットコースター(とてつもなく体が振られるし逆さになる箇所も沢山ある)
・メリーゴーランド(途中から機体それぞれがパーク内を駆け回り出す)
・コーヒーカップ(回せば回すほど発電。1回の遊戯であり得ないくらい発電すると豪華商品プレゼント!)
・売店(宇宙人になれるカチューシャとか沢山味のあるグミとか)


●ご挨拶
 リクエストありがとうございます。愁です。
 私にギャグなんぞ任せてええんか……?? と思いつつも全力で書かせて頂きたく思います。
 難易度EASY想定です。皆で楽しく回っても何グループかに分かれて楽しんでも良いと思います。お先にご相談ください。
 どうぞよろしくお願い致します!

  • Are you having fun??完了
  • GM名
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年04月09日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
優しき咆哮
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
魔王と生きる勇者
アリス(p3p002021)
オーラムレジーナ
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
アイラ・ディアグレイス(p3p006523)
生命の蝶
レイリー=シュタイン(p3p007270)
騎兵隊一番槍
ラピス・ディアグレイス(p3p007373)
瑠璃の光
ゼファー(p3p007625)
祝福の風

リプレイ

●絶叫と共に

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”……ッ!!!」

 女性の、凡そ乙女らしからぬ声が木霊する。もはや声にならぬ悲鳴をあげる者も数名だ。イレギュラーズという存在をこうも簡単に翻弄したジェットコースターは最高度地点を一気に滑り降り、ぐるんぐるんとねじ穴のように渦巻いたレールを勢い殺さず走っていく。
「また上がってくね!」
「ま、また……!?」
 上るためのレールへ入ったらしく、突然速度を落とすジェットコースター。セーフティバーに腹を押され誰かがカエルの潰れたような声をあげた。
「手、手を」
「大丈夫、握ってるよ」
 などというイチャイチャが聞こえたのも束の間、再び最高度地点まで上がり切ったイレギュラーズの眼前にMasteryParkの景色が広がった。わあ綺麗。
 次の瞬間、風が全身に叩きつけられ、体がシートへ押さえつけられる。浮遊感の下にレールの感触が──あれっ?
「「「えっっ」」」
 ないじゃん。レール。
 レールという道を失ったジェットコースターは落ちる──ということは流石になく、着地点へ向けて一直線に飛び始めた。……これまで以上のスピードで。

 こうして、彼らの波乱万丈な1日は幕を開けた。


「な、なんで入場からこんなにハードなの!」
 すでにぜーはーと息を切らせた『守護の勇者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)。乙女らしからぬ大絶叫者その1である。反して『宝飾眼の処刑人』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)は楽し気にけらけらと笑っていた。
「あっははー! 入場から振り回してくれるなぁ」
 最初からこんなに面白いのなら、この次は、さらにその次はどんなものが待っているのだろう。そんな先の見えないワクワク感。兎に角楽しくて面白いものが待っているのは間違いない。
「終わったね。ジェットコースターはいいんだよ、うん、いいよ」
 『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)は深いため息をつきながらセーフティバーを外し、ジェットコースターから降りる。ワケも分からないように体が振られて終わるアトラクションだ、ちょっとばかり疲れたようにも思うがまあそれもまだ良いだろう。
(でも入場前に身長測られたのだけは許さないからね)
 入場口──今しがた滑ってきたレールの向こうを睨みつけるルフナ。乗り場のスタッフときたら、ルフナを見た途端「はいこっちね」なんて言って規定身長に伸びた棒の隣へルフナを立たせたのだ。さらにはブーツのヒールを見ながら、
「うーん……ま、いっか!」
 である。許しがたい。
(根に持つからね僕は。顔覚えたからね)
 幻想種は見た目と実年齢のそぐわない例が決して珍しくない。ルフナとてその1人、この8人の中では最年長なのだ。それが最年少並みの扱いとなれば誰だって恨みもするだろう。
「アリスだいじょうぶ? おーい」
 大分スリルのある入場だった、と辺りを見回したゼファー(p3p007625)は隣のアリス(p3p002021)が放心していることに気づく。目の前で手をひらひらと振ると、暫ししてようやくその瞳が瞬きを1度、2度。
「……ふう、何ら問題ないわ」
 素知らぬ顔で告げてはいるが、乙女らしからぬ大絶叫者その2は彼女である。
 突然の展開に目を丸くし、ぽかんとした様子の『君に幸あれ』アイラ(p3p006523)。しかしパークの景色が視界に入ってくれば、その瞳には喜色が浮かぶ。
「わぁ……! 遊園地、すっごく広いですね!」
「そうだね。練達の遊園地に来るのは2回目……だったかな?」
 先に降り、アイラへ手を差し伸べる『君に幸あれ』ラピス(p3p007373)。その視線は愛する少女からジェットコースターへ、そして途中で途切れたレールへ。
(前と違って、こっちのは少々……少々……? 変わってるみたいだけれど)
 などと思っていれば、すぐ傍から自らの名を呼ぶ声が。
「ラピス、ボクはね、ふふ。とってもわくわくしています」
「うん。僕も結構……わくわくしてる」
 ラピスはアイラへそう返しながらも、口元に笑みが零れることを自覚した。そう、最初は驚いたけれど今はどんなものがあるかとわくわくしている。
「よし、何事も全力で楽しむよ! 何でも来い!」
 『展開式増加装甲』レイリ―=シュタイン(p3p007270)はパークを見渡しながら笑みを浮かべる。今回の依頼はこのテーマパークで遊びつくすことだ。ならば何だってやってやろうじゃないか!
 何から行こうか、と近くにあった案内板を見る一同。ゼファーとアリスはふとワゴン型の売店へ目を付ける。
「こういうとこに来たら、先ずは形から入るのがマナーってやつね」
 ということで皆に声をかけ売店へ赴いた2人。今日という日を幸せに過ごせるグッズを求め、お揃いで購入する。
「何だか……」
 ぺかぺか。
「ええ……」
 ぴこぴこ。
 2人は顔を見合わせ、互いの頭に乗った其れを見る。
「凄い浮かれてる子みたいね、此れ」
「のっけから羽目を外してる感凄いわね?」
 思わず笑ってしまうようなそれに、ジェットコースターに追い抜かされていたわくわくどきどき、そんな高揚感が追いついてくる。
 いざ参らん、トンデモアトラクション!
「おーい、2人とも! 最初は皆で遊ばないかい?」
 シキが手を振って2人を呼ぶ。その後ろではアイラがこれに乗ってみないかと手にしたパンフレットの中を指していた。
「来る時にジェットコースター乗ったのに、また別のに乗るの?」
 呆れたようにそれを覗き込むルフナ。その言葉を聞いてしょんぼりとしてしまったアイラを見て彼は気まずそうに頬を掻く。
「ダメ、でしょうか……」
「……ああもう! 女の子の泣き顔には弱いんだ、好きにしなよ」
 後ろにいる彼女の『王子様』も怖いしね、とラピスをちらりと見るルフナ。彼の言葉にぱっと表情を輝かせたアイラにルフナは小さくため息をつく。
 女の子の泣き顔は勿論、笑顔も弱いのだ。これ以上野暮なことは言うまい。
 アトラクション乗り場へ向かう道すがら、一同はパンフレットでどのようなアトラクションか説明を読む。
「ふむふむ、なんか怖いやつに乗るんだな?」
「お化け屋敷も通るのは凄いね。どんなのか楽しみだ」
 パンフレットを見ながらそう言葉を交わすシキとラピス。その隣でアイラはぎゅっと彼の服の袖を握る。
「アイラ?」
「ラピス、その……ずっと、手を握っていてくれませんか?」
 あくまでも提案したのは自分なのだけれど。近づくにつれて、話として聞くにつれて、怖くなってきてしまったのだ。
 いいよという返事にほっとした表情を浮かべる彼女。ちょうどアトラクションへ到着し、一同はそろって乗り物へ乗り込む。
「これ、ここに来るときにのってきたやつじゃないよね……?」
 大丈夫だよねあの時の再来にならないよねと不安そうなルアナ。しかしそれを解消する前にアトラクションは始まって──ルアナの声なき悲鳴が上がった。
「おお、ジェットコースターは風が気持ちいーっ!! 高いところたーのしー!」
「またレールがないよ!?」
 風に髪をなびかせ笑うシキ。その先を見たレイリーが目を剥く。またか、また飛ぶのか。
 一同を一瞬の浮遊感が襲って──室内らしき場所へ飛び込んだ機体は急ブレーキをかけた。ガッタン、ゴットンと今にも止まりそうなほどのブレーキ。絶対マッドハッターに文句を言ってやる。
「ふふん、お化けがいるんだろう?友達になれるかねー♪」
「もうこれ目閉じてていいかな」
 いきなり雰囲気が変わってもにこにことしているシキ、周りを見るなり呟くルフナ。本当にここはテーマパークなのかと思うほどにリアルな内装は、いかにもな匂いと薄暗さを兼ねている。
(これで宇宙とかなら綺麗なんだけど……)
 ゆっくりと動き出した機体は一同へ崩れた内装や怪しげなモノクロ写真を見せつけるように動いていく。曲がり角に一瞬這いずる人の影を見たレイリーは悲鳴をあげた。それにつられてルアナも悲鳴をあげ、連鎖反応のようにアイラが肩を大きく跳ねさせる。
「あ、君はお化けさんかい? 私と友達に……あれ違う?」
 残念残念、とお化けへ手を振るシキは楽し気で、しかしそれ以外は概ねアトラクションの目的通りに怖がっている。新たに声を上げたのはずっと目を瞑っていたルフナだった。
「ウォアッッ何今の感触、ねえ何今の誰か耳に息をふーってしたでしょハーモニア耳は敏感なんだからね?!」
「キャーーーーーーー!!」
 勢いのままに振り返ったルフナとそちらを見たレイリー。その間に現れた幽霊の姿に彼女は本気で悲鳴をあげる。
「ラ、ラピスぅぅ」
「大丈夫、大丈夫だから」
 えぐえぐと泣き出したアイラを必死に宥めるラピス。そんな光景と驚かしてくる仕掛けの数々をゼファーは鑑賞物として楽しんでいた。
(アンデッドだとかなんだとか、見慣れてて体勢がありすぎるのよねえ)
 自分でもスレていると思う。だがまあ、仕方がない。
 アトラクションの終わりを告げるようにセーフティバーが上がり、一同はぞろぞろと出口へ向かっていく。ゼファーはぎゅっと抱きしめられた腕の方を見下ろした。
「ゼファー……」
 そこにはほろほろと涙を流すアリスの姿。お化け屋敷ですっかり泣かされてしまったらしい。ゼファーは彼女を抱きとめて頭を撫でて──こそっと。
『蜂蜜ちゃん、目薬差したでしょう?』
『……ふふ、バレちゃった?』
 こそりと返された声音に怯えはなく。間近にある瞳は充血してもいない。互いにこういったものが苦手ではないとわかっているからこその看破であった。
 明るい室外へ出れば怖がっていた者も一様に安堵の表情を見せる。ここからは自由行動で、と手を振って一同は解散した。


●マトモを探して
「ルフナ、大丈夫かい?」
「酷い目に遭った……」
 ぐったりとしたルフナはシキと共に、少しでも安全で平和なアトラクションを探し歩き始める。破天荒な乗り物が多いようだが、せめて1つでもマトモなもので遊びたい。
「ちょっと、まさかわざと僕をトンチキなところに連れていこうとしてないだろうね?」
 半眼で視線を向けると、そんなわけないだろうというようにシキが笑う。本当か?
「えへへ、ルフナと遊べるなんて嬉しいな。いい思い出になりそーだっ」
 うきうきしたシキの案内についていったルフナは、そのままアトラクションへ乗ろうとする彼女を必死に押し留める。いやだって、これは。
「『安心安全!』ってこれみよがしに書いてあるけど馬がHMKLB-PMじゃん。出オチだろこれ!」
 軍馬相当の性能を持つメリーゴーランド。安心などできようはずも……なかった。
 一方のルアナとレイリーはマトモそうなアトラクションを発見していた。その名をコーヒーカップ。
(うん、発電するだけなら別に何ともないはず)
 無意識にフラグを打ち立てていくレイリー。ルアナと共に機体へ乗り込んだレイリーは真ん中に生えた円形の手すりをぎゅっと握る。
「ルアナ殿、よろしくね。目指せ豪華賞品!」
「うん! 豪華賞品気になるよね。ぐるぐる回しちゃお!」
 ファンタジックな音楽が流れ、動き始めるアトラクション。2人は掴んだいた円形のそれをぐるぐる回し始める。ピコン、とアトラクション中心のメーターに1つ明かりがついた。
(ゆっくりなうちは全然大丈夫……だけど)
 グロッキーになってきたルアナ。いいやこれは気のせいだと気を確かに持ち、隣のレイリーを見る。
「レイリーさんはとっても平気そう……に見えるけど、だいじょぶ?」
「うん! 負けない、こんなのではまだ負けない!」
 回転を早めていく機体。メーターが上がっていく中、ぱちぱちと静電気が起こり始める。
「え? え??」
「痺れなんかには負けない、いっけー!」
 ばちばちと静電気が弾ける中、レイリーは手すりを回し続けたのだった。

「今日はもうお家に帰るまで、ボクの手を離さないでくださいね?」
「はいはい。その方が僕も嬉しいし」
 ぎゅっと手を繋いだアイラとラピスは売店へ。先ほどのアトラクション近くだったからか、売り子はお化けの扮装だ。……が、様々な年齢層を考慮してのことだろうか。その姿は怖いというより可愛い印象を抱かせた。
「そうだ。お揃い、しませんか?」
 一緒のカチューシャを購入し、付けた2人はにっこり。偶々目についたグミも購入する。
 次はどこへ行こうか、なんてぶらぶらしていると前方から見覚えのある4人がやってきて。
「お腹すいたから戻ってきたんだっ」
「もうそんな時間なんだね」
 シキの言葉にラピスが付近の時計を見る。なるほど、良い時間だ。聞けば近くに食べ物の売店があるということで、一同は揃ってそちらへ。
「んー。見た目があやしぃんだけど、大丈夫かな……」
「ていうか、食事にも驚きはいらないんだけど。何これ?」
 ルアナが呟く傍らで早速1つ購入するシキ。これはなんだとルフナは商品の説明を見る。栄養剤。こわ。
 練達の者が服用するものだろう。一体どんな効果を秘めているのか。
 などと考えていれば、怖いもの知らずなシキがそれをパクリ。お、と小さく声を上げる。
「結構美味しいよー! 目を閉じてえいって口に入れればいける! ほら、みんなも食べよー?」
 本当かよと言いたげな皆へシキはニコニコと勧める。その傍らでルアナはレイリーの手元を覗き込んだ。
「それなぁに?」
「今日のおすすめの『気まぐれパック』ってお弁当だよ」
 見せられたのは──随分と常識的な弁当。何か仕込んであるのだろうが、ひとまず食べてみなければわからない。レイリーは合唱して弁当を開けた。
「ん、美味しい……あれ? 何この煙」
「レイリーさん、それから離れて──」
 シュワシュワと溢れ出した煙。ルアナの言葉よりも早くそれがレイリーを包み込んで。
「……どうすんのさ」
「わあ、可愛い」
「うーん……しばらくしたら戻るのかな?」
 皆が口々に言い合う中、1匹のウサギが目を瞬かせたのだった。


●Our Time
「折角だもの、いい席に座っちゃいましょう」
 ゼファーとアリスが向かったのはVRアトラクションのあるシアターホール。他の皆には内緒でコッソリ。ポップコーンを齧りながら待つと、やがて映像が飛び出して2人の前へと現れた。
 時には沈む豪華客船から逃げ出して。
 時には何処かの世界にいるヒーローの背を追いかけ、自らもその一員に。
 爆発物を解除するため、ニッパーを手に数本ある導線の1本を手に取ったり。
 そんな一幕にハラハラして、ドキドキして、互いに手をぎゅっと握りあって。
 ほんの一瞬だけ見えた──ような気がした、どこまでも続く花畑のあとに広がったのは豪華絢爛な夜のパレードだ。
(気のせいだったのかしら)
 アリスはほんの少しばかり先ほどの景色に思いを馳せるけれど、嗚呼、でも。今は目の前の光景に目を奪われる。
 作り物だとわかっていてもキラキラと煌めくそれは目に痛いほど輝いて、幻想的で。歌が遠く近く、2人の耳に響く。
「アリス?」
 ゼファーに呼ばれ、アリスは振り向く。その頬を雫が滑り落ちた。
「終わってしまったら置いて行かれそうだわ」
 終わったらこの眩いばかりの幻想は、アリスを置いて消えてしまう。そう言って涙を零すアリスの頬をゼファーは拭った。
「全て消えてしまうわけではないでしょう?」
 此処で共に見た風景も、こうして──触れ合った掌の暖かさも。ゼファーだってこの幻が終わろうと此処にいる。
 うん、と頷くアリス。その間にもシアターホールにかかっていた魔法は溶けてしまって。
「……少し、恥ずかしいから。帰り道は背中に隠してね」
「良いですとも。今日も一緒に帰って、眠るまで沢山お話しをしましょう」
 そうすればきっと、今日という日の思い出は色褪せないから。

「次は、観覧車かい?」
 遊園地に来たら観覧車に乗るものなのだ、友人仕込みの知識をもとに歩くラピスとアイラ。パンフレットによると少人数で乗るもののようで、2人きりならぴったりだろう。
 しかし、ここは練達である。
「きゃあ!? どうしてこうなるんですか!」
 振り回されたびたび座席から体の浮く観覧車。シートベルトがない分、先ほどのジェットコースターよりタチが悪い。
「ラピス、お、重いかもしれませんけど、しっかり受け止めてください!」
 飛びあがるアイラにラピスは目を丸くするも、その腕を伸ばして彼女を受け止める。ほっとした表情を浮かべる彼女からはふわりと良い香りがして。
「アイラは軽いし柔らかいし、いい匂いだね」
 耳元でそう囁かれれば真っ赤になってドギマギしてしまう。アイラの様子にくすりと笑ったラピスはほら、と視線を正面へ向けた。
 あれほどに暴れていたアトラクションも、ここまでくれば一般常識通りに緩やかで。
「外を見てごらん。いい景色だよ」
「外? わぁ、すっごく綺麗……!」
 アイラは広がる景色にぱっと笑みを浮かべる。彼女の笑顔にラピスもまた口元を綻ばせ、2人は観覧車からの光景を瞳に焼き付けたのだった。


 ところで、お忘れではないだろうか? 帰りもただで帰すとは言っていない。
「待って、帰りもジェットコースター?! ナンデ?!」
「うぅ、疲れているのに……」
「でも、なんだかんだ楽しかったね」
「あはは、そーだね! そんじゃ──帰りもいっちょ振り回されますか!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

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ご発注ありがとうございました!

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