シナリオ詳細
妖精さんのあずかりものです
オープニング
●迷子の妖精
狩人は、鈴の音のような何かに足を止めた。
りん。
森の中、小さな小さな音がした。あまりに小さかったが、それは声だ。耳をすませば、声とわかる。
りん。
「おや、きみは妖精かい?」
りん、と返事。
どうやら妖精は恥ずかしがり屋らしかった。姿を現すことはなかった。
そういえば、妖精郷の門(アーカンシェル)が見つかったのだったか。古くからの『妖精伝承』(フェアリーテイル)。まさか、自分も妖精と会うことになるとは思ってもいなかったが……。
おっと、うかうかしている暇はない。魔物が門の近くで目撃されている、というのだ。
「魔物が出るそうだ。ココは危ないよ。キミも帰った方がいいだろう。帰れるうちに」
ちょっと迷った末に、りん。
「何か用があるのかい?」
りん。
狩人は迷った。
だが、「気をつけて」と言うにとどめた。
何か大切なものを……”探し”ているような気がしたから。
●遺品博物館
幻想某所、遺品博物館。
「うーん、今日はとってもいい天気なのです」
少しずつ、暖かくなってきたように思われる。
遺品博物館、館長代理。ノラ・グースはステッキを伸ばし、遺品博物館の表示を「開館中」へと変える。
暖かいのは良いな、と、ぐんと背伸びをする。
「遺品博物館」は、宛先の分からない遺品を集め、それをあるべき場へ帰す取り組みをしている。
届かなかった手紙。欠けた剣。
大切だった耳飾り。
誰かが失くした逸失物たちが、今日も主人を待っている。
ノラは今日も館長の代理として、この博物館にいる。
ノラが手に取ったのは、可愛らしい小さなコンパスだ。花の装飾が入った、美しく小さなコンパス。
壊れてしまって、もう動かないものだ。どこを指し示すことはなく、ただフルフルと、たまに針が揺れるだけ。
そんなものでも、待っている人はいるかもしれない。それが、遺品博物館の役目だ。
「持ち主のところに、いつか帰れるといいですね」
逸失物を手入れしながら、そっとつぶやくと。
コンパスが震えた。
「おや?」
ノラの手を抜け出し、コンパスは浮かび上がる。針はぐるぐると回って、ピン、と一点を指した。
「あっちは、たしか……」
妖精郷の門(アーカンシェル)が見つかった場所ではなかろうか。
●館長代理からの依頼
「というわけで、このコンパスの行く先を調べてきてほしいのです」
ノラがイレギュラーズたちを頼った経緯は、そんなところだ。
深緑の迷宮森林を指すコンパス。おそらく、このコンパスが活性化したのは、妖精の門が開いたからだろうということだ。
「そちらの指し示す方に、きっと待っている人がいると思うんです。魔物が目撃されたと聞いてますので、くれぐれも油断なさらないでください。ノラは館長代理ですから、ここを離れるわけにはいきませんが……お茶会の準備をして待っています!」
- 妖精さんのあずかりものです完了
- GM名布川
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年04月03日 22時20分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●持ち主を探して
「ノラは変わらず元気そうだな」
「ですです!」
『再び描き出す物語』ラデリ・マグノリア(p3p001706)はちらりと館の奥を見やるが、もう一人の職員はいないようだ。おずおずと顔を見上げる様子のノラに、ラデリはやんわりと首を振る。
「……前みたいに暴れたりはしないさ、親父がいないならな」
彼ら父子の間にある複雑な因縁について紐とかれるのはまた別の話になるだろう。
「さて、コンパスの指した先に……妖精郷の門か。となると、この針は門から出てきた何者か……を指しているのだろうか」
ラデリはじ、とコンパスを眺めた。
「不思議なコンパスだね」
「なるほどね。コンパス! それも、一定の方角を指すためではないものだとは」
『魔動機仕掛けの好奇心』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)が覗き込んだので、『六枚羽の騎士』カイト・C・ロストレイン(p3p007200)はチャロロにも良く見えるように身体をずらす。
「いやはや、このコンパスの用途を考えるとロマンチックだね?」
コンパスには、対の模様が刻まれているのだ。
「もう一つ、同じようなものがあるとすれば……。相手と惹かれ合うためのコンパスか、いつか再開を願うため」
「このコンパスが指してる先に誰かが待ってるんだよね? これを探しに来たのかもしれないし、ちゃんと届けてあげないと」
『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は、針の指し示す先を見た。
「これを持ってた人はどこへいったんだろ……」
チャロロが首をかしげる。
「まあ、博物館にあったのなら、もはやその持ち主は……」
カイトはそこで言葉を止め、首を横に振った。
「いや、野暮だね。きっとこのコンパスの片割れを持っている存在も相手の安否が気になってるはずだ」
「妖精門が開くと反応したという事は、妖精に関する品物か……最近は妖精を狙った事件が多いから心配だね」
『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は僅かに表情を曇らせる。元来、争い事は好まない性質だ。もっとも、その憂いは魔物がいるのならば、きっかりと討伐することまで含んでいるが。
「門が開いてから反応した妖精サイズのコンパス……つまりコンパスの先にいるのは妖精だよな……? だとしたらやばいな……ただでさえ最近妖精関連の依頼で物騒なことが多くて、俺もその対処で過労状態になるくらい大変な状況なのに……」
『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は疲れた顔をしている。ここのところの事件で、だいぶオーバーワーク気味だ。
「そんな状況で妖精が一人でいるとか魔種が作った生物に襲ってくださいと言ってるようなもんだよ!? 急いで安全を確認しないと!」
困ってる妖精を見ると助けたくなってしまうのは、妖精の魔鎌であるからだろうか。
「ようせいさんを たべちゃうなんて わるいおはなが いるのね。こらしめてあげなくちゃ だめね」
『ゆるふわ薔薇乙女』ポムグラニット(p3p007218)は可愛らしく小首をかしげる。
「慌て過ぎるのはよくないけれど、確かに出来るだけ急いだほうが良さそうだ」
「ああ。だが、早いところ救助に行くのも大事だが、ちゃんと準備しないと二次遭難を引き起こすぞ。行きはコンパスに従えばいいが、帰り道もしっかりと考えておくべきだ」
『彼方の銀狼』天狼 カナタ(p3p007224)に、一同は頷いた。
●森の小道をたどって
「ここだね」
「コンパスが指してる先は……森の中みたいだね」
焔とチャロロは背伸びをして森の遠くを見渡した。
「結構遠いのかな? 十分に注意して歩かなきゃね」
「バランスを崩さないようにね」
ウィリアムはのんびりとしているが、森には慣れているようですいすいと進んでいく。
「一応、ラサ傭兵時代でこういう森の中の行軍もしたにはしたが……さてこの不思議の森、どこまで通用するもんかね」
カナタは先陣を切って警戒しながら、慎重に森に踏み込んでいく。行きの頼りはコンパスだが、一定方向を指しているに過ぎないので道は必要だ。
「こっちこれそう?」
焔はひょいと大きな木の根を飛び越える。ふわふわとしているポムグラニットに、カグツチ天火の柄を差し出した。
「ありがとう」
「うん!」
ポムグラニットはちょっと服の裾をつまんで持ち上げる。こういうところを歩く心得はないけれど、親切にされるのは慣れているのだ。
「きれいな ぶきね」
「なるほど、妖精。僕の友人にも妖精がいる」
カイトは友人を思い出したのか、ちょっと懐かしそうな表情を浮かべる。
「彼女もあちらこちらへ飛ぶのが好きだ」
「じっとしててもらえれば楽なんだが、そうもいかねぇよな」
そう言いつつも、サイズの声音は優しい。
「妖精は気まぐれに外の世界へ出るのがお好きなようだ。いや、きちんと目的があるから外へ出るのだろう」
「どうだかな」
「このあたりなら僕でも見れるな。上のほうまで行って確かめてくるよ」
「じゃあ俺は前を見てくる」
妖精状態のサイズは、いつもの3分の1の背丈である。サイズが体躯を生かして先行し、カイトが上空から位置を確かめる。
「木が倒されてるな」
「獣が通ったみたいだね」
「こっちの動物は……ちょっと気が立ってるみたい」
チャロロはこちらをうかがうような敵意に気が付いた。
「……うん、最近、魔物が増えたから、食べ物がとれなくて困っているんだね」
ウィリアムはそっと木の幹に触れ、自然会話を試みる。
「すぐに襲ってくる感じではないけれど、どうしようか」
「たしかに獣の匂いだな……」
カナタは爪痕を刻み付け、帰りの方角を示しておく。と、力を入れすぎて枝が折れてしまった。ため息をつく。
「やっちまった」
「こっちに少し通りやすい道があるそうだ」
ラデリは森の小道に茂るツタに尋ねた。
「……彼らも、いたずらに踏み荒らされたくはないはずだしな」
「なら、そっちにするか」
「でも、こっちには獣がいそうだなあ」
「離れててもらうか」
カナタは岩の上に立ち、空に向かってシリウスの遠吠えを行う。
カナタの勇ましい遠吠えが、辺りに響き渡った。
「魔物を倒せば、きっと森も落ち着くね」
「正常に戻せば、おそらくはな」
ウィリアムがそっと木の幹を撫でた。ラデリは森に思いを馳せる。
妖精門が発見されたこの森は、このままの姿でいられるだろうか。
●食べられる花
コンパスの導きのままに、イレギュラーズたちは花畑にやってきた。
「あの大きな花は……フラワーエディブルか」
ラデリは片眼鏡をかけ直す。
「あれは わるいはな?」
「食虫植物の一種だ、巨大なモノは人間だって捕まえてしまう貪欲な花で……」
「ん? あの花弁だけ閉じてるな」
カイトが言うように、一体だけがぴたりと花を閉じている。
「えっと、針が指してるのはこっちみたいだけど……もしかして、あのお花が探してる人? って、そんなわけないよね?」
「たしかにオイラの人助けセンサーに反応しているような」
焔とチャロロは顔を見合わせる。
ラデリはしばし言葉を失った。
「…………あの中に探し人がいるのか?」
「まさか、何かを喰らってやがる!? 早くしないと溶かされてしまう!」
「早く助け出してあげないと!」
「ならば仕方がないな、殲滅戦だ」
ラデリがロッドを向ける。
「どいてもらわないと ね」
戦闘開始、だ。
先陣を切る。
カナタは素早く戦場に身を躍らせる。
戦鬼暴風陣。カナタの爪が、花々のツタをばっさりと斬り払った。
(植物より肉が食いたい)
食虫植物を前にしてすら。この戦場において、カナタは捕食者だった。花が、わずかに怯んだようにざわめく。
「いけ!」
「よし、まずは捕まってる妖精の救助だ!」
サイズはツタをかわして、花に一直線に突撃していく。攻撃が身体をかすめるが、かまわない。
(紛れた、どれだ!?)
「こんなのが居たなんて……妖精さんはオイラたちが守る! 」
チャロロが勇ましく立ちふさがり、行く手を阻む花をブロッキンブバッシュで弾き飛ばす。手ごたえはあり。
「あれだ、花弁が閉じているものだ!」
ラデリの魔力が、花一体の花弁の一部を枯れさせる。
「こっちだね」
ウィリアムのチェインライトニングがまっすぐに閉じた花弁をかすめて、道を指し示した。
「よし、まずは捕まってる人? の救出を急いだほうがいいよね」
焔のノーギルティが、花の茎だけを燃やし尽くした。炎神の子、炎の巫女。その能力は、この世界でも伊達ではない。
りん、と声がした。
「!」
焔は開いた花に無理やり手を突っ込んで、開いた。掌が痛むが、構わない。
「行って!」
「ああ!」
その隙間に、サイズが飛び込んだ。
焔がツタでの攻撃を受け、花々が群がる。
サイズが、……【カルマブラッド】が震える。……妖精の、血を欲している。Sチェーン【ブルー】がピンと張りつめた。
サイズは花にとりついて、てこの原理で花弁をこじ開けて、中に入る。
(妖精を捕まえてるんだ、妖精サイズの俺なら中に入ることも可能なはずだ!)
身体が痛む。だが、こらえる。
かすかな血液のにおい。
肝が冷えた。それを求める本能にも。
だが、相手は生きている。生命の鼓動を感じる。
脱出の道が閉ざされようとする。
「この翼も、剣も、誰かの為の騎士! 見逃すわけにはいかない」
カイトは堂々と敵陣に立ち、勇ましく名乗り口上を挙げた。
「こっちを向け!! 魔物たちよ!! 僕が相手だ!! この僕が囮になる。その隙に閉じている花弁の中身を助けてやってくれ!!」
「オイラも、退かない!」
チャロロも勇ましくカイトとともに前衛を担う。機煌重盾。反撃に適した盾。ブロッキングバッシュで弾き飛ばして、名乗りを上げて敵の注意をひきつける。
その隙に、焔はツタを抜け出した。
「ありがとう!」
「わるいはなは そこね うごかないで」
ポムグラニットが、黒いキューブを呼び出した。……スケフィントンの娘。花はもがき苦しんでいるが、ポムグラニットは手を緩めることはない。それどころか、どこか楽しそうに笑ってもいる。
「まだ わからないみたい」
薔薇の花に宿った精霊は、無邪気で、善悪というものを知らない。美しい薔薇の精霊の一撃に、華の足りない毒々しいだけの食虫植物の花は、ただ枯れるしかなかった。
●もう遠慮はいらない
「まだまだ!」
体当たりをしたチャロロは、そのままレジストクラッシュに持ち込んだ。どう、と一体が倒れる。
飲まれたサイズは、中から花弁をこじ開けようとしていた。
カナタが勢いをつけ、クラッシュホーンを放つ。中身を傷つけていない、見事な手腕だ。
「手加減も、傭兵時代の賜物だな」
中でもがいていたサイズの目に光が見える。
りん、と。
小さな鈴のような声がして、それから。
サイズの魔力撃が、内部から花弁を破壊する。
「抜けた!」
妖精を背負ったサイズたちが戻ってきた。
サイズは必死に妖精を背負い、安全な場所へと抜けてゆく。
獲物を求めてツタをしならせる花々。
ツタが伸びる。何かをつかむ。
しかしかすめとったのは、ウィリアムが式神使役で作った紙人形だった。
「この技は、巻き込む心配が無くて便利だね」
ウィリアムのチェインライトニングが、帰り道を明るく照らし出す。
「やった!」
「よくやった!」
ラデリのロベリアの花が、あたりを殺傷の霧で包んだ。
新たな獲物を求めて、ツタが追いすがっている。
「よっと!」
チャロロは、ひらりと攻撃をかわし、リーガルブレイドをつきつけた。
「オイラなんか捕まえても食べるとこほとんどないよ?」
斬神空波。風の恩寵を受けるカイトの一撃が、一斉にツタを切りはらう。
「簡単に囚われたりはしない!」
形勢は完璧にイレギュラーズたちの有利だ。花は、どうすることもできずにざわめいている。
「どうする? 門の近くだしこいつらが居着いてるならなるべく全部倒したいんだけど……」
チャロロが攻撃を受け止めながら言った。
「もちろん、やるよ! もう遠慮はいらないね」
焔が元気よく答える。
「人間が立ち入れるぐらいの場所だしな」
カイトも頷き、同意した。
「めって おしおき しないとね」
ポムグラニットが、美しく笑う。
「ならば、もう一戦だ」
ラデリのメガ・ヒールが仲間の傷を癒していく。
「とりあえず、こっちは大丈夫そうだ。俺も戦おう」
サイズは妖精を寝かせると、防衛しつつ殲滅に回ることにした。
「このままにしておくと危ないし、出来れば皆倒しちゃっておこう」
焔のカグツチ天火から、明るい炎が飛び散った。炎は燃やすどころか、高熱で敵を溶かしていく。
「きれいに しないとね」
ポムグラニットのスケフィントンの娘が、花を捕らえた。
ウィリアムが、本格的に多重積層魔法陣を展開する。
魔光閃熱波。あたりを破壊しつくす、魔力の対流。
カイトの斬神空波が一体を仕留める。
サイズが呪血鎖で相手一体の動きを止める。
ラデリのアウェイクンが、カナタを奮い立たせる。
「手加減なしでいいな!」
カナタの、H・ブランディッシュが、花を豪快に引き裂いた。
●見送り
イレギュラーズたちの活躍により、危険な花は、すべて殲滅した。
「うん、森の動物の敵意もなくなったみたい」
チャロロが顔をほころばせる。
脅威がなくなったところで、妖精がひらひらと寄ってくる。
”助けてくれてありがとう”
「まさか捕まっていたとはね」
カイトは、傷を抑えて笑顔を見せる。そして、改まって姿勢を正した。
「僕達はイレギュラーズ、このコンパスをあるべき所へ返すために来た。それは、君なのだろう」
カイトは妖精に首に下げていたコンパスを差し出す。
妖精は首を傾げて針の先を見た。
「コンパスを持ってた子と離れ離れになって一体どれくらい時間がたっているんだ? 少しだけ気になるんだ」
サイズの呼びかけに、妖精は笑って答える。
”もうずっと、ずっと、前。何十回も、四季が過ぎ去ったくらい前……”
(元持ち主は死んだのか?)
カナタの呼びかけに、コンパスの針が答えた。そうだ、と。
(ひとつの出逢いの終止符に僕はなんと言葉をかけるべきか)
カイトは言葉を詰まらせた。
迷いながら答えが出ず、控えめに笑うことしかできない。
(……相方のコンパスと一緒にいたいか?)
カナタの問いかけに、少し考えたように止まって、いいえ、と。
また、新たな出会いのために分かれるものだから、ということなのだろう。
妖精は少し考えて、自分のコンパスをサイズに差し出した。交換して持って帰るようだ。
「失くしものではないが……預けておくべきか?」
「コンパスの件は……妖精さんにも館長代理さんにも正直に話すべきだよね……」
「そうだな。館長には……素直に報告するか」
チャロロの言葉に、ラデリが頷いた。
妖精が門を抜けてゆく。
「じゃあね ようせいさん
こんどは ゆっくり あそびにきてね」
ポムグラニットが、ひらりと舞う。
「あなたの おともだちが みた せかいを ちょっとだけでも かんじてほしいわ」
”うん! ばーんってなって、きらきらして、ざしゅってなって、すごかった! またきたいな!”
あの状況で楽しんでいたようである。サイズは苦笑いした。
(まあ、無事でよかったな)
こうして、妖精は無事に送り届けられた。
ゆっくりと、コンパスの動きが止まる。
「片割れの子もこっちで幸せだったのかな……」
チャロロは消えていった妖精を見送り、つぶやいた。
「そうだね、きっと」
自分の年齢を忘れるほどに長い時を知るウィリアム。その時間に思いを馳せた。
「……さて、帰りも時間がかかりそうだ。館長代理に報告をしたら、茶でも頂いておこう」
館長とお茶会が、博物館で待っている。
「あまい おさとう おはなのかたち」
(菓子か……)
カナタはちょっと尻尾をぴくりとさせた。甘いものも、実は嫌いではない。
「……次はあの子も一緒だと良いね」
ウィリアムが微笑む。
「きっと またきにいってくれる よ」
「オイラたち、新たな伝承になったりしてね」
もしかすると、妖精の国で、彼らは伝説になっているのかもしれない。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
妖精の救出、おつかれさまです!
結構シリアスにピンチだったようですが、
能天気な妖精としてはとても楽しかったようです。
新たなコンパスは博物館に戻り、再び出会う日を心待ちにしているのでしょうか。
機会がありましたら、また一緒に冒険いたしましょうね!
GMコメント
布川です。
館長代理からの依頼です。
●目標
はぐれ妖精を救出し、コンパスを返却すること。
●状況
開始時点、はぐれ妖精は巨大な花の魔物の群れの一匹に捕まっている。
イレギュラーズたちは開始時点でそれを知ることはないが、『引かれ会うコンパス』は妖精の居場所(巨大な花)を指し示し続けている。
●場所
コンパスは迷宮森林、門の近くの花畑を指している。
森の中を、徒歩で3時間程度。コンパスがあるので方向を見失うことはないだろうが、心得が泣ければ結構歩きづらい。工夫して歩いたほうが良いかもしれない。
●登場
・フラワーエディブルの群れ×15体程度
ピンク色の花弁を六枚持った巨大な花。
門近くの花畑に潜み、獲物を待ち伏せして花弁を閉じる。
閉じ込めた生き物を吸収する、食虫植物のようなもの。
何でも食べる。
一体ははぐれ妖精を飲み込み、花弁を閉じている。
ツルを持ち、タネを飛ばして遠距離にも攻撃はするが、移動力は乏しく、執拗に追いかけてくることはない。妖精さえ救出できれば、全滅させる必要はないだろう。
それほど強くないので、全滅させても構いませんが。
捕まらないように注意。
妖精さんはやわらかいので救出には気を使ってあげてください。
・はぐれ妖精
かつて人の世界に迷い込んだ妖精の片割れ。
恥ずかしがり屋で、非常に声が小さい。りん、と羽で返事をする。
妖精の門を通って「なくし物」を探しに来た。
花畑付近に目撃情報があるが、行方不明となっている。
・『遺品博物館館長代理』ノラ・グース
遺品博物館の館長代理を立派に務める少年。
かつてノラも「一つの滅んだ集落の遺品」として、博物館に届けられた過去を持つ。
好きな紅茶はダージリン。
「今日のお茶会も、めもりあるーでぱーふぇくと! な予感がするのですー」
●引かれ会うコンパス
互いの包囲を指し示す二対のコンパス。
近くに持ってくると、喜ぶようにくるくると回る。
使い方を知らなければ、「ただ壊れている」コンパスに思えるだろうが、
お互いを指し示すコンパスだ。
相手のいる方向を知り、懐かしむための別れの品で、別れる時に贈るもの。
●はぐれ妖精の事情
声が小さい妖精さん。
仲良しだった片割れの妖精が行方不明だったが、最近コンパスが反応してこちらに来た。
事情を話すと、伝承に残ったいいつたえにかつての片割れの姿をみとめ、
きっとこちらの世界で幸せに暮らしたんだろう、と思っている。
形見のコンパスだけ故郷に連れ帰ってあげるつもり。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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