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シナリオ詳細

クライクラインと鐘の成る樹

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●コーリングベル
 大樹に実ったベルが揺れ、がらんごろんと一斉に鳴るさまが見えるだろうか。
 風もないのに枝がゆれ、踊るように鐘を成らすこの小さな霊樹は名を『コーリングベル』という。
 てっぺんに立って、まるで指揮棒を振るかのようにまち針を振り回す妖精がいた。
 グリーン・ベリーショートの髪に松の葉を束ねたような羽根をした、身長30センチほどの妖精である。
 妖精は木の下へ集まったイレギュラーズたち……もといあなたを見つけると、小さいのによく通る声で呼びかけてきた。
「やあ! こんな所までよく来てくれたね。迷わなかったかい?」
 ぴょんと枝から飛び、空中をアイススケートのようにつるつると滑りながら螺旋を描いて下りてくる。
 そしてイレギュラーズひとりの手のひらに着地すると、まち針を腰の鞘にさし胸に手を当て、まるで舞台の上で観客を迎えるかのごとく上品に頭を垂れた。
「僕はティンクル。代々コーリングベルの霊樹を守ってきた妖精(精霊種)さ。
 なかなかの風景だろう?」
 言われて再び見上げれば、赤や青や黄色にきらきらと光るベルが枝のあちこちに実り、揺れる木に合わせて音を鳴らしている。一見不規則かつ乱暴にゆられているかに見えるベルだが、一連の音色が奇跡のように重なり美しい音楽を奏でているのがわかるだろう。
 音楽は次第に荘厳さを増し、聞く者の胸がたかなるほどにまで勢いを上げたところで、木の幹にぽっかりと金色のサークルゲートが開いた。
「これを見せたかったんだ。僕らの故郷アルヴィオンへ続く……妖精郷の門(アーカンシェル)」
 ローレットはこの存在を知っていた。
 形こそ異なるが同じ性質をもつ門は深緑のあちこちに開いており、妖精たちはその管理をしたりしなかったりしているという。
 アーカンシェルは妖精郷から来た者(つまりは妖精達)しか通ることができず、彼らにとってのこれは専用の玄関口のようなものなのだ。
 やがてベルの音楽がやみ、黄金の門が閉じていく。
 ティンクルはうっとりと目を閉じ余韻にひたると、ややあってからイレギュラーズへ振り返った。
「知っているかい? このところ、森のあちこちでアーカンシェルが狙われているんだ。
 ここも例外じゃなくてね……見てごらん」
 ティンクルが指さすさき。
 空を巨大なコウモリめいたシルエットが無数に踊っていた。
 彼らはこちらに気づきながらもキーキーと声を上げ、狡猾にも仲間を集めているように見える。
「童話に語られる『クライクライン』という怪物に似ていることから、僕らもその名前で呼んでいるんだけど……彼らはどうやらこの門を狙おうとしているらしい」
 以前は近くに住む人々に頼んで追い払ってもらったらしいが、その際はクライクラインの戦力に圧倒されひどい怪我を負ったという。
「君たちは戦い慣れているって聞いてね。……どうかな?」
 ぴょんと空にとびたち、腰のまち針を抜いてクライクラインたちへと突きつける。
「彼らを、倒せそうかい?」

GMコメント

■オーダー
・成功条件1:クライクラインの撃退
・成功条件2:霊樹コーリングベルの防衛

●エネミーデータ
 約10体ほどいる『クライクライン』へ戦闘をしかけ、この場から追い払う必要があります。
 しかし彼らの呼び声にこたえ、しばらくすると『マザー・クライクライン』が現れることになっています。
 クライクラインの群れと連携されると非常に厄介なので、できるだけ素早くクライクラインの集団を倒しましょう。

●フィールドデータ
 森の中で戦闘を行います。
 木の間隔はほどほど。高さはそれなりにあります。

●クライクライン×10
・飛行能力
・吸血:【呪い】【流血】
・再生能力あり
・APが少なく、回避および反応が高い

●マザー・クライクライン×1
・飛行能力(高高度ペナルティ軽減能力あり)
・吸血:【災厄】【呪い】【失血】
・再生能力、充填能力あり
・戦闘能力が全体的に高く連携して戦う必要あり。
 回避、反応、特殊抵抗が高い。

●オマケ
 童話に語られる『クライクライン』は縞模様のコウモリが子供を攫っていくというお話です。
 このお話は深緑に伝わっており、攫われた子供が知恵を絞ってもとの家に帰るが家には既に自分と全く同じ子供が既におり、帰る場所がなくなってしまうという悲しい結末で知られています。もちろんおとぎ話なのでとくに実在性を信じられたりはしていません。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • クライクラインと鐘の成る樹完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年03月22日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
ユースティア・ノート・フィアス(p3p007794)
夢為天鳴
言葉 深雪(p3p007952)
護りたい意思の欠片
アビゲイル・ティティアナ(p3p007988)
木偶の奴隷
長月・イナリ(p3p008096)
狐です

リプレイ

●コーリングベル
 妖精ティンクルに依頼され、妖精の門となっている霊樹コーリングベルの防衛を任されたイレギュラーズ。
 『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は枝枝に鐘が成る木を見上げ、そして振り返るように薄暗く染まった空を見た。
「クランクライン……おとぎ話のコウモリだね」
 深緑に伝わる昔話のひとつであるクランクラインの物語を、ウィリアムは思い出していた。暖かいタッチの絵本だが、悲しい話だったのを覚えている。
「元々住んでいたのか、それともあの話に似せて生まれたのか……後者なら随分悪趣味だけれど。
 まあ、どちらでも構わないか。何が来ようとも新しい友の為に全力で守ってみせるよ」
「さて、今回は飛行系の魔物相手に防衛線か……こいつらも魔種が錬金術とかで生み出した魔物なのかね。
 なんにせよ、妖精の敵なら俺の敵だ、刈り取るだけだ!」
 ウィリアムは魔方陣を、『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は鎌をそれぞれ構えた。
 その後ろから身構える『木偶の奴隷処刑人』アビゲイル・ティティアナ(p3p007988)。
(どっ、どどど奴隷のオレでも役に立てるんだってことを教えてもらった。
 だから、オレにできることをこの依頼でこなしていきたい。
 ところでこの御伽話の子供に親近感を覚え……あ、いや、何でもないです)
 空を埋めるかのように広がっていくクライクラインの群れ。
 自分たちから飛び込んでいってはおそらく防衛にならない。迎え撃つ準備は万端だとばかりに、ウィリアムたちはゆっくりと戦闘隊形へと広がっていく。
 はばたきと共に木の上へ陣取り、ストラディバリウスを構える『猫さんと宝探し』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)。
「それにしれも。木にベルがたくさん吊られてるのは不思議な光景だねー。
 不思議というと妖精郷っていうのも不思議。旅人が来る異世界とはまた違うのかな?」
「同感、というか……」
 『大号令の体現者』秋宮・史之(p3p002233)も『夜の翼』を広げてふわりと浮き上がり、太い枝の上に立つ。
「ベルいっこ持って帰ったらさすがに怒られるかな?
 ま、さておき。無粋な観客にはお引き取り願おうか」
 史之は指輪から不思議な力をあふれさせ、スサノオの権能を展開していく。
「仲間と木は、俺が守る」

 キィン、と音をたてて力の光をわきたたせる煌輝『源の黒蓮』。
 鍔にあしらわれた蓮の花をなで、『護りたい意思の欠片』言葉 深雪(p3p007952)は顔をあげた。
(霊樹を守りながら、クライクラインの討滅……だね。
 相手が飛んでいるのがちょっと難だけど……大丈夫かな。やるだけやってみよう……)
(この樹にとって、私は他人も同然。けれど、如何なる理由が有ろうとも、こうして生きる彼らを脅かすと言うのなら……私は、其の全てを断ち切りましょう)
 また別のことを考えながら、『夢為天鳴』ユースティア・ノート・フィアス(p3p007794)は剣をゆっくりと抜いた。
 刀身にはしる青白い光が空気にふれるたび、まるで霜が砕けたかのように細かな氷が散っていく。
 剣を垂直に、祈るように顔の前に構える。
「今この一時は、守護の誓いを此処に」
 クライクラインの群れが迫り、空をより黒く、より暗く染めていくのがわかった。
 頼れるのはそばにいる仲間達だけ。
 『新米の稲荷様』長月・イナリ(p3p008096)は革袋に収めていた剣を抜き、天へとかざす。
 ただ抜いただけで国に雨が降ったという剣は、混沌肯定の世界ルールを受けたとて、未だ強大な力を感じさせた。
「鐘の鳴る木に、霊樹に守られた国……素敵な場所なのね。
 こんな場所を荒らさせるわけには行かないわ」
 いよいよ戦闘圏内。
 イナリは構えた剣を降り込んで、勇ましく吠えた。
「頑張って、守ってみせるわよ!」

●迎撃
「さあ、始めよう」
 史之は枝から跳躍すると、架空の翼によって飛行状態を維持。
 襲いかかるクライクラインの群れに対して神秘の光を解き放った。
「劇場ってのは騒ぐところじゃないよ。音楽が聞きたいなら、その耳障りな息の根を止めるんだな!」
 次々に群がるクライクライン。
 史之は自らに宿した権能によって無数の『剣をもつ架空の腕』を出現させ、クライクラインへと切り返し始めた。
 そこへ飛び込んでいくアビゲイル。
 史之に保護されつつ格闘によってクライクラインへと殴りかかった。
「吸引力は五分五分……かな? ともあれ、効果があるうちに利用させてもらおう」
 ウィリアムは歯車のように連動した魔方陣をたくみに操作すると、大小全ての魔方陣から雷の鎖を発射した。
 クライクラインの群れへと次々に絡みつき電撃を浴びせていく。
 耐久力や防御力を犠牲にして攻撃の威力と一定の継続力を獲得したウィリアムにとって、史之のように徹底的なカバーを得意とするタンクファイターは相性がよいのだ。
 巻き付けた鎖の一本を、魔方陣をねじるようにして性質転換。クライクラインから魔力を吸い上げ、弱まってきた自らの魔力を増強していく。
「初動でどれだけ倒せるかが鍵……かな。そういうわけだから、『そっち』は任せたよ」
「――任されたわ!」
 ウィリアムと背をつけるようにして後方に構えていたイナリ。
 特別な鉱石によって作られた古剣をじかに握りしめ、念を込める。
 すると剣の表面に青い炎が浮き上がった。
 異界において天叢雲剣に草薙剣という別名があるのは、燃え上がる野火を払ったことに由来するという。その伝説が翻って炎を司るものとされ、混沌証明を通して今――。
「吹き飛びなさい!」
 イナリが剣を一文字に振り込んだだけで、数十メートル離れたクライクラインが突如として炎上。更に内側から切り裂かれて墜落した。
「格下を焼き払うにはいいけど、格上相手にはまだ物足りないわね」
「残った連中は俺たちが処理する」
 サイズとアクセルがそれぞれ飛び上がり、クライクラインへと襲いかかった。
「アイススフィアは温存、だな」
 サイズはリリカルスターを放ってクライクラインを引き寄せると、直接殴りかかることで対抗しはじめた。
 食らいつく牙に血が吹き上がるが、鎌を食い込ませることで防御。
「そいつを抑えておいてね。まとめて吹き飛ばすからっ」
 アクセルはばさばさと翼でホバリングをかけると、ストラディバリウスの演奏によって神聖な空間を生成。
 サイズを中心に展開した光の刃が彼に群がるクライクラインたちだけを切り裂いていく。
「もっと広範囲に打ち込みたいけど、このモンスターって一人に群がるタイプなんだよねえ。クライクラインより早く一人だけ離脱するとかできない?」
「同時に動くんでもない限り無理だな。それより……」
 サイズは枝に着地すると、地上で戦う仲間達をみおろした。

 抜いた剣の青い光。
 ユースティアは噛みつこうと飛びかかるクライクラインの間をジグザグに駆け抜けると、激しいターンをかけて切り裂いた。
「木々がおびえています。乱暴に飛ぶから」
 ギラリと光るパープルカラーの目。
 背後から迫るクライクラインの動きを察知し、器用に逆手持ちした剣を突入するクライクラインの胴体へと突き立てた。
 集合するクライクライン。
 深雪は煌輝『源の黒蓮』を強く握りしめると、跳躍して適切な攻撃ラインをとった。
「第一に霊樹を守る事……だよね、ただ、残すと後が面倒そう、だけど」
 連鳴鈴・霞。気で編んだ無数の刃を発射し、ライン上のクライクラインたちへと突き刺していく。
 次々と墜落するクライクライン。
 深雪は深く息をついて、再び空を見上げた。
 巨大な。
 これまでのクライクラインとは比べものにならないほどの巨大なコウモリ型モンスターが、こちらをじっと観察している。
 まるで深雪たちの力量を確かめるように、もしくは、『最も美味しそうなごちそう』を探すかのように。
 きっと観察の要を全うしたのだろう。
 マザー・クライクラインは強引な降下によって強襲をしかけてきた。

●強襲
 急降下をしかけたマザー・クライクライン。彼女(?)の狙いはアクセルたちだった。
「うわっと!」
 咄嗟に防御姿勢をとったアクセルの翼に牙を立て、切り裂きながら抜けていく。
 あまりの威力にアクセルは飛行を継続できずに転落。
 くるりと身をひねって足から着地すると、迎撃のルーン・Hを放った。
 対するマザー・クライクラインは急速なジグザグ飛行によってアクセルの攻撃を回避。
「うーん、すばしっこいなあ。なんとかかすらせるから、引き留めておける?」
「俺のリリカルスターで怒りを付与して白兵戦に持ち込む。援護射撃を頼む」
 サイズは虹色の星を無数に生み出すと、空をジグザグかつ高速に飛び交うマザー・クライクラインへ発射した。
 直撃……をとるのはどうやら難しい。どころか、その殆どが回避されてしまっているようだ。よしんば命中しても高い抵抗能力によってはじかれてしまうらしい。
「まずいな、この戦法だと相性が悪い。プランBだ」
「プランB?」
 アビゲイルが聞き返したが、史之は肩をすくめてみせた。
「まずは攻撃に転じよう。俺の権能を付与するから、しばらく耐えて」

 史之の指示通り、アビゲイルたちは猛烈な勢いで攻撃を仕掛けてくるマザー・クライクラインに抵抗していた。
「青の流星……当たれっ!」
 深雪は自らに自己暗示をかけて冷酷な一面を見せると、『ブルーコメット・TS』による突撃をしかけた。
 木の幹を駆け上がり、蹴ることでまっすぐにマザー・クライクラインへと突進。 その巨大な翼を斬り付ける。
 と、そこへ大量に集まってくるクライクライン。
 倒しきれなかった個体がマザー・クライクラインの援護に回ったようだ。
 史之はそんなクライクラインを対象にして『名乗り口上』を仕掛け、至近距離への範囲爆撃をし続けた。
 マザー・クライクラインは抵抗力が高くBS攻撃が通じづらいようだが、その子供のクライクラインはそれほどでもないらしい。
 不吉状態を付与してから呪いで絞め殺す戦法がだいぶ有効だった。
 ほとんどのクライクラインを倒されたことで、マザー・クライクラインがさらなる勢いをつけて襲撃をしかけてくる。
 仲間の消耗も激しくなってきたところだ。
 ウィリアムはあえて前に出ると、マザー・クライクラインの攻撃を受け止めた。
 牙が彼の身体に突き刺さり血が吹き上がる。
 が、それでいい。
 防御が弱くダメージを受けやすいということは、それだけ史之の施した【棘】の効果を発揮させやすいということなのだ。
「それに、これだけ近ければ当てやすい」
 ウィリアムは魔方陣を何重にも貼り付けた手のひらをマザー・クライクラインの身体に密着させると、至近距離から爆裂術式を発動。
 ドムンというこもった音と共にクライクラインの身体を魔力が貫いていった。
 今度こそ飛行能力を失ったマザー・クライクラインが墜落。地面をこするように滑り、転がり、このままではまずいと察したのか足でたちあがって逃げ始めた。
「逃がしません」
 回り込むユースティア。
「ここまで来れば捨て身の作戦でも有効そうね」
 その後方を挟み込むイナリ。
 マザー・クライクライン越しに視線を交わし、同時に剣を構えた。
 どちらを先に攻撃するか。マザー・クライクラインは一瞬だけ迷った末、ユースティアへと牙を剥いた。
 が、それは望むところである。
 剣に纏わせた光に星のそれを交え、真正面から突き込んでいく。
 肩に食らいついたマザー・クライクラインの牙と引き換えに、胴体に突き込んだ剣が複雑な魔術炸裂を起こしてマザー・クライクラインの脇腹から激しい出血を引き起こす。
 と同時に、反対側から剣を突き立てたイナリが――。
「天孫降臨――軻遇突智砲」
 自らに迦具土神を宿し、至近距離への熱砲撃を発動させた。
 剣に纏わせた高熱がマザー・クライクラインの肉体をゼリーにスプーンを通すかのごとく切り裂いていき、完全に振り抜いたところでイナリの背後に朱色の鳥居めいた幻が建った。
 握った拳を掲げる史之。
「状況終了……」
「だね」
 ウィリアムはそれに応え、彼の拳をトンと叩いた。

●鐘の成る木は
 これは後日談ではない。
 りんごんりんごんと鳴り響く霊樹コーリングベル。
 不規則なようでいて連なった、美しい音色にイレギュラーズたちはこころにたまった傷や軽微な呪いが取り払われるのを感じていた。
「これ自体が神聖な空間、なんだね」
 興味深い、と言いながらボトルの水を飲むウィリアム。
 アクセルやサイズもその音色をうっとりときき、アビゲイルもまた同じように聞き入っていた。
 剣を袋に収め、腰にさげるイナリ。
 史之はそれをみとめて、イナリへと語りかけた。
「君も祭神の権能を行使する家柄だったりするの?」
「そういうのは、ちょっと分からないわね。この剣だって異界の神の伝説を模したものだし……」
 深雪が倒したクライクラインたちの処理を終えて戻ってくる。
 切り株にこしかけていたユースティアが、そろそろ頃合いかと立ち上がり、収めていた剣の柄を軽く叩いた。
 木のそばで戦いの顛末を見届けていた妖精ティンクルが呼びかけてくる。
「もう行くのかい?」
「はい。また何かあったら、声をかけてください。ローレットは引き受けたいらいには必ず達成努力を果たします。そも、そうでなかったとしても……」
 その先をいいかけて、ユースティアはやめた。横をてくてくと歩くペンギン型マシンのレ・イゾーコがきゅいっと振り向くが、なんでもないとでも言うように歩を早める。
(事実。これで終わるようには思えませんし、ね……)

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――状況終了。
 ――任務達成。

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