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シナリオ詳細

<バーティング・サインポスト>島亀討伐戦フジツボ陽動部隊

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●あの亀は今
「おー、あれが例の『島亀』か」
「中央の火山の正体はフジツボだって?」
 先達ての『絶望の青』調査の折り、イレギュラーズ達の活躍で島に擬態した"超巨大海亀型狂王種"が発見された。
 島に擬態した甲羅上だけでも、南北約1.5km・東西約1kmという規格外の大きさの狂王種だ。ただその習性は、『島に擬態し待ち伏せ、上陸する者があれば海へ潜り溺れさせようとする』だけで、肝心の潜水速度は物凄くゆっくりという残念なもので。
 報告を受けたローレットと海洋王国は、差し当たり上陸さえしなければ脅威たり得ないことから、船乗り達へ周知し警戒を促すに留めていた。
『絶望の青』後半の海の足がかりになりうる島『アクエリア』への物資輸送船団が、件の島亀のそばを通りがかった。船員たちが物珍しく眺めていると、航海士が首を捻る。
「報告の場所から随分離れた所にいるわね」
「島じゃなくて亀だもんよ。たまには動くんじゃねぇの?」
「それはそうだけど、気にならない? 元の居場所よりずっとアクエリアに近い場所にいるのよ?」
「偶然だろ」
 船団は島亀を大きく迂回し、改めてアクエリアへ向け舵をきる。しかし、
「……おい。島亀、ついて来てねぇか?」
 物資を満載した船団の航行速度はお世辞にも速いとは言えない。それでも前進はしているのに、思うように島亀が遠ざからないのだ。
「やっぱり島亀はアクエリアを目指して移動しているんだわ! ……それともまさか、この船団を追ってきているの?」
 航海士が青ざめたその時だ。
 島中央の火山がにわかに振動したかと思うと、盛大に噴火した! ――否、正確には島亀の背にある巨大フジツボが、火口めく上部の穴から数十本もの蔓脚を一斉に伸ばしたのだ!
 巨大フジツボの長大な蔓脚は、ざわざわと自らの殻を降り、麓の密林の木をなぎ倒しながら船団のいる方角へ伸びてくる。
「全船全速前進、重い荷から海へ放れ! あんなモン叩きつけられたら一発で沈むぞ!」
 船団長の号令で船団は島亀を引き離しにかかる。
 幸い島亀自体の速度が遅く、フジツボの蔓脚も島の外縁部より少しはみ出る程度の長さであったため、船団は難を逃れた。しかし、アクエリアへ運ぶはずだった物資の大半が波間に消えてしまったのだった。

●フジツボ陽動作戦
 輸送船団の報告を受け、ローレットに依頼が舞い込んだ。
 ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はことのあらましを語り終えると、神妙な顔でイレギュラーズ達を見回す。
「ざんねんな狂王種だった島亀が、どうして船を襲うようになったのか……アクエリア近海にあらわれる狂王種には、魔種の影響を強く受けたり、魔種に従う個体もいるそうです。もしかしたら島亀も魔種の影響で凶暴化したのかもしれません。
 あいかわらず動きが遅かったりとざんねんさは健在ですが、船を襲うなら倒さなければならないのです」
 ただ、とユリーカは続ける。
「亀を倒そうとすれば、火山のフリして陣取っているフジツボの横槍が入ること必至なのです。亀を倒すにはまずフジツボを引きつけないと危険です。皆さんには島亀討伐本隊が亀の胃の中で戦っている間、フジツボの陽動にあたっていただきたいのです」
 何か今しれっとすごいこと言ったぞ……とイレギュラーズ達は顔を見合わせたが、一先ず自分達が胃に入るわけじゃなしと承諾した。

●いざ島亀
 島亀討伐本隊を乗せた船団と、火山めくフジツボ陽動部隊を乗せた船団は、島亀を発見するとその南北へ分かれた。陽動部隊を乗せた船団は南側の砂浜付近へ展開。船団の大砲が一斉に火を吹くと、それに釣られたフジツボが一斉に蔓脚をこちらへ向け伸ばしてくる!
 20本あまりの蔓脚は鞭のようにしなる。邪魔な木々をなぎ倒しながら、その先端が砂浜へ到達した。
「フジツボの本体デカい分だけ長いなぁ」
「その分攻撃力は過ごそうだけど……狙いは甘そうだね」
 陽動しつつ船も死守しなくては帰れなくなってしまう。イレギュラーズ達は迫りくる蔓脚の群れを睨み据えた。

GMコメント

鮎川と申します。島亀討伐本隊ではありませんが、作戦成功のために欠かせない
大事な陽動作戦となります。なんとか本隊が離脱するまで攻撃をしのぎきってください。
ご縁がありましたらよろしくお願いいたします。

●目的
島亀討伐本隊が離脱するまで、巨大フジツボの蔓脚を引きつけてください
同日公開のシナリオ『<バーティング・サインポスト>島亀討伐戦本隊(但し一旦食べられる)(同GM)』と
同時進行で行われる作戦です。同時参加はご遠慮ください

●ロケーション
陽動部隊を乗せた船団は、島に擬態した島亀の南側(尾側)へ展開します
南側には砂浜があり、そこから20mほどの洋上に船団がいます
開始時の立ち位置を砂浜・あるいは船の甲板から選択できます
(砂浜~船団間の海の中を選択してもOKですが、水中の対策をしてください)

●敵
巨大フジツボ
一見すると、密林に囲まれた火山のように見えます
南北約1.5km・東西約1kmの島の中央に本体がありますが、動けません
代わりに海岸まで届く長く太い蔓脚✕20を伸ばし攻撃してきます
攻撃方法は叩きつける、薙ぎ払う等シンプル
狙いは雑ですが当たれば相当痛いです
船団にも届くため、船団を死守しつつしのぎきってください
(討伐する必要はなく、あくまで本体離脱までしのぎきれば成功です)

●同行船団
3隻のフジツボ陽動船団
砂浜から20mほどの所に展開し、砲撃し続けることで蔓脚を釣り出し続けます
ただし砲撃はフジツボ本体には届かず、動き回る蔓脚に当てることは困難でしょう
指示があれば可能な限り従います

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●重要な備考
<バーティング・サインポスト>ではイレギュラーズが『廃滅病』に罹患する場合があります。
『廃滅病』を発症した場合、キャラクターが『死兆』状態となる場合がありますのでご注意下さい。

  • <バーティング・サインポスト>島亀討伐戦フジツボ陽動部隊完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年03月25日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先
風巻・威降(p3p004719)
気は心、優しさは風
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
緋道 佐那(p3p005064)
緋道を歩む者
ライアー=L=フィサリス(p3p005248)
嘘に塗れた花
ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐
羽住・利一(p3p007934)
特異運命座標

リプレイ


 その攻防は眼前に存在する島亀を撃退する為には必須であった。
 島亀の背には火山に擬態したフジツボが存在している。島亀を討伐する本隊は『腹の中』へ――そして、外よりフジツボへと攻撃を仕掛けて陽動作戦に徹することとなるイレギュラーズ達の分隊編成での作戦が今、遂行されようとしている。
「狂王種はデカいヤツが多いなぁ……サイズだけで圧倒されそうだ。
 別動隊が安心して戦えるよう、しっかり囮役を務めるとしますかね」
『特異運命座標』羽住・利一(p3p007934)の言葉を否定する者はいない。何せ、『島亀』だ。狂王種の中でも特級に思えるほどのその巨体は一つの小島を思わせるのだ。
「うわぁー……! でっかい亀! でっかいフジツボ!
 凄いケド、今回倒しちゃうンだよネ……亀さんゴメンね……よっし、アタシが全力で囮やるよっ!」
 やる気を漲らせた『Ende-r-Kindheit』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は島にも見えるその亀の背を見遣って「火山にしか見えないね?」と首を傾げて見せる。
「島亀に喰われるよりはマシだろうけど、フジツボかあ。
 あれって甲殻類なんだってね? いや、特にだから何だってこともないけど」
『島』に見えたとしても生物だ。その腹の中の臭いなど――想像するに易いのだと『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)が肩を竦めれば、『嘘に塗れた花』ライアー=L=フィサリス(p3p005248)は頷いた。食われる――という事を想像するよりも、ある意味で彼女にとってこの亀は知己だ。
「あの時の島……ではなくて亀が船を襲うようになっただなんて、一体どのような心境の変化かしらね?
 他のイレギュラーズ様方が胃の中で……胃の中で……? ……溶けていないと良いのですけれど」
「溶け……うん、まあ。あの日上陸した亀と戦う事になるとは……人生は何が起きるか本当に分からないな。亀っていうかフジツボだけど。何食べたらあんなに大きくなるのかな?」
 まさしく生物の突然変異。『悲劇を断つ冴え』風巻・威降(p3p004719)が小さく唸る。上陸した『亀』と称するその言葉を聞いても目の前に存在するものが生物とは思えない『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は大きくため息を吐いた。
「まさかこの島が狂王種の擬態だったなんて……あーあ、良いバカンス場所を見つけたと思ったのになあ」
 こんなご時世であるからこそバカンスで羽根を伸ばしたいというものなのだが――そうも言ってられないのがこの海域に蔓延る死の病のせいであろうか。
「廃滅病か……元の世界に帰って息子に会う為にリスクは避けたいが、人を勝手に保護者にしたアザラシが本隊で頑張ってんだ。保護者で友で一時的とはいえ同じ屋根の下の家族なんだから、俺も全力で頑張らなきゃな」
 きっと、「頑張るキュ」と意気込み、この死のかおり漂う海で努力しているであろう友が腹の中に入っていっているのだ。『守護の獣』ウェール=ナイトボート(p3p000561)はそれを蔑ろにするわけにも行かないと眼前のフジツボに向き直った。
「しかし――」
「ええ、……これが巨大島亀。また随分と大物ねぇ。鈍重だし狙いは大雑把だけれど……」
『斬り応え』がなければナンセンスだ。『緋道を歩む者』緋道 佐那(p3p005064)は火山に擬態したフジツボをまじまじと見遣る。その動きも緩慢としているように見られたのはその図体の大きさからだろうか。やはり斬り応えに限るならば――亀だ。
「陽動だという事は分かっていますとも。けれど……陽動をこなしつつ個人的に楽しむ分には、なんら問題は無いでしょう?」
 唇に余裕を乗せた佐那はその両脚で船の甲板を蹴った。


 足元を絡めとる様な砂の海へと降り立った特異運命座標は眼前よりぞろりと伸びあがった蔓――それはもはや火山より突如として伸びた脚とも呼べるかもしれない――を見上げる。
「フジツボの狂王種というのもいくつかは確認されているみたいだけど、これだけ大きいのは初めてかな」
 小さく呟いた利一にミルヴィは「確かに大きいもんね」と快活に笑って見せる。砂浜に降り立った特異運命座標達は敵の眼前に立つ囮だ。陽動部隊の中でも更に隊を分け、離脱の為の船の護衛と真にフジツボを惹きつける係に分かれている。
「一先ず知識としては『狂王種の情報』をある程度は確認したから――戦ってみて、かな?」
「そうだね。まあ、おにーさんはどんな相手だって関係ないんだけど。
 敵から仲間を守って無事に海洋王国に帰島する事だけを考えなくっちゃね」
 くすくすと笑ったヴォルペは満月の銀狼に指先添えてからその柔和な笑みに、僅かに真摯な色を乗せる。
 砂浜に降り立った時に鼻先に感じた気配を特異運命座標の誰もが感じ取っていた。それはライアーとて例外ではなく――その気配の名を口にする。それは逃れられぬ死の兆しにして、大いなる罪の名を冠する絶望の呪い。
「廃滅病(アルバニア・シンドローム)……死へのカウントダウンなんて素敵な響きだけれど、他人ごとだからこそですわね」
 現時点において尚、その呪いに蝕まれる仲間たちがいる。もしも、自分が――いや、『あの子』がそうなった時にどのような感想を抱くかをライアーは分からない。それを理解する必要もないのだと、眼前より迫りくる蔓に視線を送る。
「――さ、おいで。亀さんへの手向けにイイモノ魅せてあげる」
 唇に浮かべたは蠱惑的な笑み。黎明の名を冠するその刃は光を反射し、蔓へと振り下ろされると同時に煌めきを返す。
 空を泳ぐように、周辺を警戒するウェールはフジツボの猛攻を見遣り「流石に陽動が必要という事はあるか」と小さく呟いた。
「ええ、けれど的を絞るという意味では簡単も簡単ですわ! ふふん、どれもこれもがフジツボから伸びているんですもの。これ程狙いやすい的もありませんわねっ!」
 神の教えにもあるではないか。詳らかにしなくてもよい、簡単に言えば――「やられたらやり返せ、ですわよ!」
 鮮やかなる陽の色の髪を揺らし、メイスを手にしたヴァレーリヤが聖句を紡ぐ。その言葉を聞きながら威降は自身の生命力を疑似的な妖刀へ変貌させ蔓へと一手を放つ。
「さて、あまり頑丈でないと嬉しいのですが」
 風巻流を修めた武芸者達が身に着ける鋼の手甲は自身によく馴染む。苛立つように――その距離を詰めんとするフジツボの蔓。その数の多さに翻弄される訳にはいかぬと前線踊るミルヴィの視線がちら、と後方へと向けられた。
 気力を攻撃力に変貌させて。目を伏せた佐那がゆっくりと刃を構え――声を張り上げる。
「絶望染まりし蒼海にて、悪名高き狂王種。如何ほどのものか……拝見させて頂きましょうか。
 ……緋の道の先を見んが為。緋道佐那、参る――!」
 一気呵成に攻め立てるが如く黒髪が大きく靡く。無数の蔓が佐那へと襲い掛かるそれをふわり、ふわりと踊りライアーが前線へと繰り出してゆく。リボンがふわりと揺れれば、可憐なる白百合の花弁揺らすようにその指先が繰り踊る。
「ふふ、ほら、ほら。私とも遊んでちょうだいな」
 まるで少女が拗ねるような声音に「おにーさん達だって『タイクツ』は嫌いだよ?」とヴォルペが笑みを乗せる。周囲の保護と、そして自身を守り、他者を苛む鎧をその身に宿した彼の笑みは底知れぬ。
「遊び相手には丁度、という所かな?」
「さあ、どうカナ? 物足りなくって『もっと』って口にしちゃうかも」
 くすくすと笑うミルヴィに利一は「満員御礼だけどね」とジョークを混じらせた。無数の蔓脚がびたりと叩いた一撃に展開された癒しはこの戦線を鼓舞するかのようであった。


「触手プレイは趣味じゃないからノーセンキューだよっ♪」
 ずるんと動いた触腕にミルヴィが首を振る。華麗にその翻弄するように『踊る』彼女は二刀を翼の様に広げて、一気呵成飛び込んで行く。
 その背後、残影の様に佐那が走る。鮮やかなるその残影が切り裂けど、触腕は落ちる事無く痛みを堪えたように地面を打つ。
「……あぁ、これは。斬り崩すには難儀な頑丈さだけれど。……ふふ、そうこなくっちゃ……!」
 それでこそ『斬る価値がある』というものだ。にい、と唇に笑みを乗せ、その体を反転させて襲い来るフジツボを退ける彼女の背後より、指を手繰り踊ったライアーがくすりと笑う。
「さあ、呪って差し上げるわ」
 その目はしかと、フジツボの動きを見遣る。先ほどとは違う振り被り――ヒュ、と風切る音をさせ、それが特異運命座標達を横殴る。
(これが薙ぎ払いーー? 成程、広い攻撃ですわね)
 その動きは独特だ。一度見れば理解もできるとライアーが唇にゆったり笑みを浮かべれば、無数の蔓がぐるりと蠢き襲い来る。
 因果を歪める力を使用し利一はその反動で自身の体に感じる痛みを勇者王の剣(レプリカ)を握りしめ耐え続ける。郷愁の想念を内に秘め、悽愴な瘢痕を克服し、そして――彼は立ち続ける。
(此処で失敗してはいけない。さっきの薙ぎ払いを含めてこの攻撃を見切れれば勝機はつかめる筈だ)
 利一の元へと集う触腕より彼を支えるウェールの癒しが広がっていく。そして、利一の前へと滑り込んだヴォルペが薄らと触腕を見遣ってから小さく笑った。
「おにーさん、護るのがお仕事だからね。さ、もっと遊ぼうか」
 庇う動きを見せながら、徐々にテンションが上がり続けるヴォルペはぺろりと舌を覗かせた。恍惚とした笑みが逆境の中で自身を励まし続ける。その生き様を見せつけるようにヴォルペがフジツボの攻撃を受け続ける中、威降のその身の内で可能性が燃え盛る。嵐の中を駆け巡る様な生き様で、島亀の上を駆ける威降は一度、後退した。
(陽動が必要という事だけあって――成程、苦戦するものですね……。
 けど、ここで挫ける訳にも行きません。耐えて、そして、勝利を掴みましょう)
 頬へとぶつかった砂の勢いに首を振ってミルヴィが唇を尖らせる。フジツボの勢いは弱まりつつもあるが――劣勢を悟る狂王種は少しでも道連れにするように特異運命座標へと襲い掛かるのだ。それでも、見切れる。
「もー、もっとお客さん来てくんないと踊り甲斐ないでしょー? 先は見えないケド、頑張っていこう!」
 先が分からなくても、あと少しだと鼓舞し続ける事が大事なのだと笑みを浮かべるミルヴィへ「これでこそ、ですから」と佐那の唇に笑み浮かぶ。
「薙ぎ払いが来ますわ! 気を付けて!」
 ライアーのその声に佐那とミルヴィが頷き、攻撃を避ける。利一は攻撃は全て見切ったと頷き、仲間たちへと伝達した。
「他の仲間や友で家族なアザラシが頑張ってんだ……死にかけてでも時間を稼ぐ!」
 ウェールの決意は固い。砂浜の戦線の維持のために尽力を続け、狂王種を見据え続ける。この島亀の腹の中に友人がいるのだろうか。蠢く『島』の様子を低空飛行で感じ取りながら、ヴァレーリヤは背後で自身らをこの海へと送り出してくれた船員たちの命がその両肩に背負っている実感を確かめる。
「船員さんには、港で帰りを待っている家族がいるはずですもの。何があっても全員生きて帰してみせますわ!!」
 フジツボの触腕がずるりと伸びる。砂浜よりも尚、船を狙わんとしたそれを「どっせーーい!」と強い語調で叫んだヴァレーリヤが退ければ、威降が前線へと復活する。
「足場が揺れてるように感じるのは、亀かな?」
「ええ、亀ですわ! 決して素敵で平和なバカンス地ではありませんもの!」
 憤慨するヴァレーリヤに威降は小さく笑う。唇が紡いだのは神への祈り、安寧、そして、此度の勝利での代償。あの狂い咲いたいのちの行く先への幸福だ。
「――主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え」
 その言葉を聞きながら、ヴォルペはあと少しと触腕を退けた。ずん、と音を立てたそれが巨大なるそのフジツボの最後の力を振り絞ったものだと気づく。苛烈なる勢いはまさに火山だ。
 囂々と音を立てるようなそれを聞き、佐那は「いざ」と静かに言った。
「さあ、ラストスパートだよッ! 踊ろう。それから、見惚れちゃえ?」
 蠱惑的に唇が吊り上がる。その三日月は火山を嘲笑うように美しい。利一が一歩後退する。薙ぎ払うその動きを避け、最後の一打を落とすように悍ましき因果を伴いフジツボを『破壊』する。
 囂々。その音が続いている。フジツボが強かに打ち付けた『地面』が跳ねる動きをしたのは間違いではないだろう。
 完全にそのいのちをしとめたわけではない。しかし、一時的にでもその動きを『止める事』ができたのは定かだ。
(どうして、島亀が暴れたのかは分からないけれど……けれど、これで大人しくなるのなら)
 そう願わずにはいられないと威降は足場を確認し、船団方向へと身を投じる。
 亀島討伐の本隊の離脱及び作戦成功の一報が入った時、ヴァレーリヤは「作戦は完了ですわよ!」と声を張る。頷いたウェールは眼前のフジツボが戦意を喪いへたりゆく様子を眺めた。
「撤退するまでもない、か? それでもここに居続けて廃滅病に罹患するのもごめんだな」
「ええ、ええ。死の呪いは万人に訪れるものだけれど――運命を決定付けられるのもイヤですもの」
 ウェールへとライアーがくすりと笑う。絶望漂うこの海の運命はさだかではないが、一先ずは勝利を喜ぼう。
 願わくば、その先に明るい未来が待ち受けているようにと、願ってはならないのだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした。シナリオの代筆を担当させていただきました夏です。
 この度は弊社クリエイター都合によりお客様には執筆担当変更のご迷惑をおかけして誠に申し訳ございませんでした。

 陽動作戦の成功、お疲れ様です!

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