シナリオ詳細
怪盗キャッツからの予告状
オープニング
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練達……探求都市国家アデプト。
中立国家として知られるこの地は混沌の中でも、あらゆる技術が発展した国だ。
それというのも、この地は旅人を中心に研究者が多く集まっており、様々な世界の叡智が結集していることが理由として挙げられる。
卓越した技術が人々の生活レベルを底上げし、多くの発明品、製品が混沌中に流通している。
混沌にとってオーバーテクノロジーと言える技術であっても、混沌の住人は練達の技術だからという一言で納得し、受け入れてしまうほど。
それでもなお、飽くなき探求心を持つ練達の研究者達は混沌世界の理を解き明かそうとしている。
敷いては、それは旅人が元の世界に戻ることができる為の研究にも繋がっているのだ。
そんな研究者大国であり、賢者の国である練達。
旅人を中心とし、多種多様な文明、種族が入り混じったこの超未来都市ともいえるこの地は、様々な者が暗躍する場所でもある。
時には怪異すら起き、得体も知れない物体が暗躍するこの都市。
やはり、高い技術は非常に魅力的なのか、それらの技術によって作られた貴重品を狙う者の存在も……。
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幻想、ローレット。
掲示板には現状、鉄帝や海洋から多くの依頼が届いている状況だが、それ以外からの場所の依頼もないわけではない。
「大事にまではなっていませんが、練達でちょっとした事件が起こっていまして」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は、練達のとある街で貴金属を狙う女怪盗が現れる事件についてイレギュラーズ達へと説明していた。
これまで、幾つかの宝石店を狙っていた怪盗キャッツ。
猫の仮面に猫耳、猫の尻尾をつけたレオタード姿の女性らしく、一部の練達男性には人気すら出始めているのだとか。
様々な道具を使うその女怪盗は小動物を使役し、狙った物品のみ奪い取っていくのだという。
「犯行予告に当たっては、必ずその店に予告状を出すのだそうです」
狙った物品はスマートに奪取。
そんな鮮やかな犯行で、すでに別の店で2件が予告通りに物品を奪われている状況であり、危険と感じた宝石店の店主がローレットへと依頼してきたようだ。
「ただ、手練れの傭兵らがほとんど相手にならなかったことから、並々ならぬ力を持っているものと思われます」
多種多様な手口で予告した物品を奪う怪盗キャッツの狙いは、練達で造られた永久に正確な時を刻むと言われるオリハルコン製の懐中時計。
半永久的に動き続けるとされるこのオーパーツともいえる品は、店で一番広いフロアの中央、ガラスケースに設置されている。
「普段は別所で展示しているのですが、今回はどこから相手が来るかわからないからこその処置のようですね」
宝石店は20階建ての高層ビル16、17階にあり、設置フロアは17階に設けられている。
この高さの場所の警護は、混沌出身者には慣れない者も多いと思われる。
相手はどこから接近し、如何にして宝石に接触してくるかわからない。
考えられうる手段を講じて、全力でオリハルコン製の懐中時計を守りきりたい。
一通り説明を終え、アクアベルはこう告げる。
「相手の力がどれほどのものか、現地点では分かっていません」
あくまで目的は懐中時計の防衛で、怪盗キャッツを懲らしめるなどとは考えないようにしたい。下手をすると、相手に裏をかかれてしまう可能性があるからだ。
情報の少ない相手から、どれだけのことができるか不透明な部分もあるが、イレギュラーズの力を怪盗へと見せつけてやりたい。
「それでは、よろしくお願いいたします」
アクアベルは丁寧に頭を下げ、改めてこの依頼へと参加を募るのである。
- 怪盗キャッツからの予告状完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年02月29日 01時30分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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練達のとある高層ビル。
その上層階に、依頼を受けたイレギュラーズ達の姿があり、宝石店店主から直接事情を窺う。
「怪盗とはまた……」
「怪盗キャッツか。麗しの女怪盗って感じなんだろうな。いいねぇ」
機械の四肢を持つ『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)や盗賊上がりのスラム出身者『抗う者』サンディ・カルタ(p3p000438)などは今回の相手に強い関心を抱く。
サンディなどは普通にそのままお茶でも誘いたいなどと、本音も口にしていた。
一方で、マイペースながらも護ることを信条とする『不屈の』銀城 黒羽(p3p000505)は怪盗の美学は理解に苦しむようで。
「怪盗ねぇ……なんで怪盗って奴はわざわざ予告状を出して、妙な格好で盗みに入るんだろうな?」
「泥棒なのに、なんで盗みに行くって、手紙出すの?」
黒い耳を生やす兎の獣種である『ひだまりうさぎ』コゼット(p3p002755)もまた理解できぬと、辛辣なコメント。
「礼儀正しいの? 頭わるいの? かまってちゃんなの? へんなの」
まさに罵詈雑言といった言いようである。
怪盗に対するメンバー達の印象はさておき、その怪盗キャッツから如何にして予告状にて宣言されているオリハルコン製の懐中時計を守り切るかが今回の依頼の肝となる。
「怪盗、ねぇ。まあ私もかつては忍者やアサシンやってたからな」
紅の翼を背に生やす旅人、『ディザスター』天之空・ミーナ(p3p005003)はなんとなくその在り方と、考えそうな手段について口にする。
「怪盗か……手練れの傭兵数人を相手にできるなら、普通に奪った方が楽じゃないかと思わなくも無いが」
気だるげな態度をしたカチューシャと眼鏡が特徴的な青年、『凡才』回言 世界(p3p007315)も小さく唸りつつ。
「まあこちらにとっては盗む時間などがわかる訳だし、ありがたいことこの上ない」
淡い桜色といった色素の薄さを感じさせる少女、『司令官』桜咲 珠緒(p3p004426)は総じて、怪盗の心象をこう纏める。
「行為は愉快犯、主張は自己顕示欲旺盛、顔を隠しながら偉ぶる姿は、歪かつ肥大した承認欲求」
珠緒は悪意を抱くことで、エネミーサーチの対象ともするよう事前準備も兼ねて。
「名前のキャッツ、は……複数形ですかね」
着目するのはその名前。すでにこれまでに猫を使役したこともあるそうだが、複数名ともとれると珠緒は指摘する。
「皆さんと合わせ、検知手段は取り揃えましたが、1人の枠で油断をされませんよう」
そんな大切な珠緒の言葉に、黒目・黒髪の眼鏡っ子『学級委員の方』藤野 蛍(p3p003861)も気合を漲らせて。
「手口が鮮やかだろうがスマートだろうが、犯罪は犯罪。反社会的存在の好き勝手は許さないわよ!」
委員長気質な蛍にとって、怪盗の行為は何一つとして正当化されるものではないのだ。
「そうだな、今回は奴の盗みも失敗に終わるさ」
「私の追跡技能と、向こうの逃走技能。どちらが勝つか勝負といこうか」
黒羽、ミーナも万全の態勢にかなりの自信を見せる。
「今は依頼を受けた身だ。まずはしっかり仕事をこなそうか」
怪盗に関心を抱いていたゼフィラもまた考えを切り替え、懐中時計防衛の為に尽力するのである。
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怪盗キャッツの出現は夜だが、昼間に現地へと到着したメンバー達は十分に準備に取り掛かることができる。
「レオタード姿の女怪盗、ねぇ」
怪盗が用意するものを考える蛍。
猫要素が実用目的なら、猫耳はセンサー、怪音波発生、仮面はガスマスク、尻尾は立体起動の補助……。
多種多様に考えられるその手段に、どう対応するかは非常に難しい。
「とりあえず、雰囲気を出すために探偵のコスプレでもするか」
黒羽などは形から入るのが大切と、ハンチング帽にトレンチコートといった姿となる。
探偵はポエムを詠むと、彼がどこかの本で読んだらしいのはさておき。
早くも黒羽はエコーロケーションを使いながらも、時計の前に陣取って警備に当たり始めていた。
廊下や室内には数名の警備兵もいてくれる。
また宝石店の従業員、オーナーなどへの変装も十分あり得ると、ミーナは全員の顔を直接触って確認する。痛みが伴うのはご愛敬だ。
また、ミーナは1ヵ所だけ窓を少しだけ開けておくように頼んでいた。
「寒い? 我慢してくれ」
まだ冬場で寒い時期ではあるのだが、なんでも、これが彼女の力が発揮できる条件なのだそうだ。
世界もフロアへと罠を張り巡らせるべく動く。
まずは、細い糸が触れると音が鳴る簡素な物で、相手の油断を誘う。
さらに懐中時計のあるガラスケースにも精巧な罠を仕掛け、こちらは触ると電流が流れたり、針が飛び出たりする仕掛けだ。
「……だが、これもブラフ。相手の実力が未知数ならば見破られるのも考慮しないとな」
世界が本命と告げたのは、ケースを開けたときに広がるコゼットの用意した香りだ。
「泥棒の人、動物を使うみたいだから」
コゼットは持ち前の動物知識を活かし、動物が苦手とする香りをハーブから調香する。
「だいたいの動物は、ミントの香りが苦手なんだ」
濃いミントの香りとなるようコゼットは調香し、相手が猫の獣種かもと想定してマタタビの香りもブレンド。
フロア中に充満させるだけでなく、床とか壁にも、香りの原液を染み込ませた物を、あちこちに置いていく。
ガラスケース内にも世界が懐中時計に匂いが付かぬよう、オーナー指示の元でそちらだけ透明な箱に隔離した上で超高濃度のミント、マタタビの香りを仕込む。
コゼット曰く、「他のとはレベルが違うよ」だそうだ。
それが終われば、世界は簡易式召喚陣で精霊を呼び出し、相手の煙幕弾などの対処での使用を想定していた。
また、それらを一通り終えたコゼットは町中で自身が時計の警備を行っているという話を敢えて流布していく。
「泥棒の人が、それ見てたり聞いてたりしたら、あたしに悪意向けるよね」
あとは、その悪意を、コゼットはギフトで感じ取り、警備に役立てようと考えていた。
ゼフィラは室内だけでなく、すでに怪盗が潜入、奪取の為の仕込みをしていないかチェックする。わざわざ、ビル屋上にも足を延ばす力の入れようだ。
特に、彼女は天井裏など、部屋全体を精査して。
「うん、やっぱりあったね」
ゼフィラは巧妙に仕掛けられたカメラを発見する。やはり、事前に怪盗は下見に訪れていたのだろうと判断し、ゼフィラはそのカメラを取り除く。
さらに、ゼフィラは室内をもう一度チェックして。
「逃走の下準備がされているかもしれないからね」
窓際、非常用の縄梯子、通路のダストシュートなどはくまなくチェック。床に落とし穴などを仕掛けて脱出できるようになどは注意を怠らない。
蛍もまた、温度視覚と透視で対策を行う。
「偽装も擬態も透明化も、この目から逃れることはできないわよ! ……たぶん」
胸を張りたいところではあるが、何せ相手の力量がわからないという不気味さがある。
蛍は壁、天井、上下階、このフロアに接するあらゆる地点を見透かして警戒する。
また、相手が小動物を使うのであれば、そちらも事前に潜入させている可能性は十分ある。
念の為と、ゼフィラはネズミなどを捕獲していた。
サンディもエネミーサーチで敵の接近を感知できるようにしていて。
やはり、警戒すべきは依頼主側の人員。
いつの間にか紛れている可能性を示唆し、サンディは警備員や店員にも注意を向け、不意打ちを警戒する。
蛍はギフトで仲間の体調をチェックできるが、それが確認できない相手は敵だと認識できるはずとのこと。
また、蛍は別途、オーナーに懐中時計のすり替え防止にと、本物で分かる目印もと知っているものにだけわかる目印をと加えてもらう。
これだけ万全な警戒態勢の中でも、蛍はその穴を埋める様対策に動いて全力警戒。
そうして、皆が準備を整えたところで、珠緒は現状のこの部屋の状況。
探知・警備手段、現場の物品、警備人員、時計に保護ケースに……見聞きする物を可能な限り瞬間記憶する。
それらと対比し、警備体制に沿わない動き、記憶外の人員、警備開始前と変化した言動に珠緒は細心の注意を払う。
「ええ、見逃しませんとも」
一応、ステルス警戒も行う珠緒だが、1人でステルス使いという線は薄いとみている。
相手は使役を使い、手数を利用する相手。
それだけは間違いないだろうというのがイレギュラーズ達の共通認識だった。
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時は過ぎ、日は沈み、外は練達の技術による照明が多数散らばる状況。
高層ビルの上層階からなら、それらは非常に美しい光景にも見えようというものだが、怪盗との直接対決を前にしてこの場にいる者達は誰1人反応を示さない。
コゼットがピアス「月ノ光」で室内を照らす中、皆神経を研ぎ澄ませて。
(「これで早めに、相手の思惑を察知出来ればいいんだが……」)
変装や潜入、その他何らかの工作に対し、世界は直感を働かせる。
世界はコゼット、サンディ、ゼフィラと共に、特に立ち位置を固定せずに歩く。
ケース付近には黒羽、ミーナが陣取る。
黒羽はメイドロボット橘さんや謎生物のサンにも索敵を願い、警戒を促していた。
ミーナもギフトの力で、この場の全員の居場所を把握し続ける。
位置確認できない者がいれば、それがキャットのはずだとミーナは判断して捕らえる構えだ。
珠緒はその周囲を移動して、極力死角をなくしていた。
彼女はレーダーも展開し、変化があった場合にはハイテレパスやギフトですぐ伝達できるようにしている。
警備員は締め出し、廊下側へ。そちらも透視を使える蛍が視線を走らせていた。
その蛍は窓際へ。敵が小動物に変身して使役中に紛れ込む可能性も考慮する。
「そういや、使役するという小動物に気を付けないとな」
世界も高層ビル上層階にいるはずもない野良犬、猫なども警戒。ファミリアーは十分に可能性がある範疇だ。
そうした敵の出現をメンバー達が脳内シミュレートするうちに、時刻は21時となる。
敵はどこから現れるかと警戒してると……。
なんと、外から鷹に捕まって堂々と現れる仮面を装着したレオタード姿の女性が。
当然、蛍がそちらを塞ぐよう窓に位置取るのだが、同じように鷹に捕まって現れる同じ格好をした2人目の女性が蛍の元居た場所へと突撃して窓を割って突入する。
『敵2体です』
珠緒がテレパスで皆に認識共有する中、内部に突入した女性が煙幕弾を室内に投げ込む。
蛍に遮られていた1人も位置を調整して室内へと飛び込んでいたが、サイバーゴーグルを装着していた蛍が素早く対処に動いていた。
だが、煙幕はすでにメンバーの想定内。
世界がすぐさま風の精霊に煙幕を散らしてもらうよう指示する。
また、ケースそばの黒羽も窓の方へと移動し、サンを投げつけて中に入ってきた怪盗女性を牽制する。
敵は外から一斉に数羽の小鳥などを呼び出し、突入させようとしていたのだが、室内に入ってこないことを訝しむ。
「匂い……?」
どうやら、睡眠ガスなどの対策を仮面には施しており、匂いを感じるのが遅れた怪盗2人。
サンディもまた、室内に入った女性の近くの壁に刺さるよう、カードを投げつけた。
「悪いな、レディ。ここの時計は大怪盗サンディ様が予約済みだぜ」
「へえ……」
サンディの思った通り、その一言で敵が諦めるとはいかなかったが、一種の反応を引き出したことはサンディもプラスと認識する。
そのタイミング、外の女性が僅かに高度を上げてから室内へ飛び込んできた。
「悪いが、大人しく捕まってもらうよ?」
ゼフィラもいつの間にか怪盗の1人へと近づき、その動きを制するべくブロックしていくのである。
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女怪盗達はしばし、どうするべきかと目配せを行う。テレパスなど、意思疎通の手段を持っているのだろう。
外の鳥はこちらに入ってくる様子はなく、事前準備していたものもことごとくイレギュラーズ達に解除されていた。
ほとほと困ってしまったようで、キャッツ達が小さく笑う。
「全く、よくこれだけの警備態勢を……」
「さすがに、これではお手上げだわ」
そうは言いつつも、キャッツ達はアタックオーダーで小動物を召喚するが、攻撃だけ行わせてすぐに引っ込める。
周囲に、展開したワイヤー状のトラップや赤外線の探知が目的をと思われる。
すでに、周囲にはけたたましく警報が鳴り響いていたが、警備員はしっかりと廊下側の守りを固めている状況で、部屋のことはイレギュラーズに任せてくれている。
怪盗キャッツは冷静にこの場のイレギュラーズ達の力量を見定めようとしており、迂闊に懐中時計には近づいてこない。
「なぜ、盗みを働く」
黒羽が状況を見て、問いかけてみるが、怪盗は涼しい笑い声を重ねて。
「こちらにも事情があるのよ」
「大人しく、その懐中時計を私達に渡してくれない?」
自分達がやや不利な状況にも関わらず、上からの立場で交渉してくる怪盗達。
黒羽は相手が近づいてこないかだけ注意を続け、ガラスケースの守りを続ける。
そこで、1人が動き出そうとする。
抑えていたゼフィラが全てを蝕む深き闇を叩きつけたが、怪盗キャッツは息の合った動きでゼフィラを押さえつけ、一気に彼女を蹴り伏せてしまう。
確実に仕留めたとキャッツも手応えを得たのだろう。しかしながら、ゼフィラはパンドラの力で意識を繋ぎ止める。
「嘘でしょ……?」
それに、彼女達は目を丸くする間に、世界も同じ女怪盗のマークに当たる。
彼は精霊を操作して風のドームを作り、敵の逃亡を防ごうとする。
女怪盗の最大の誤算は、ミントの香りによって動物がほとんど使えない状況となったこと。
最悪、次々にファミリアーや同伴の動物をと考えていた彼女達はそれらがほとんど動けぬ状況となっていたことに打つ手がなくなってきていたようだ。
しばし、肉弾戦で戦う女怪盗をここで仕留めようと、イレギュラーズ達は立て続けに攻撃を繰り出して。
蛍は抑える相手に蹴りつけられ、痺れる身体を癒すべく光翼を羽ばたかせる。同タイミングで珠緒も恐怖を打ち払って確実な癒しをと立ち回っていた。
なお、蛍の光翼は女怪盗達を切り刻んで混乱させようとしていたが、どうやら仮面は精神的な異常も防ぐらしい。
「残念だが、あの時計は俺がもらったぜ」
サンディは聞えよがしに相手へと言い放ってから、どこからともなく取り出したワイン瓶を外の鳥に向けて投げつける。
それはビルから外へと飛び出した瞬間、大きく爆ぜ飛んでしまう。
爆炎を浴びたファミリアーらは地面へと落ちるものもいたが、一部は降下して難を逃れていたようだった。
押さえつけられて前進できない敵の隙をついたコゼットが、至近にまで接近した1体をノーモーションで窓際へと弾き飛ばす。
「つっ……!」
コゼットの一撃によって窓際の壁に激突した女怪盗の片割れへ、ミーナが追撃を与えて不可視の刃で切り裂いていく。
その時、仮面が弾け、金髪ブロンドの女性の素顔が露わになる。間違いなく、美女と評する整った顔立ちだ。
丸い耳も確認できた為、人間種かと思われたが、種族特徴的に旅人である可能性もあると珠緒は考える。
「……っ、ここまでね」
窓際で交戦を続けていた1人が外に向けて飛び出すと、素顔をさらした女怪盗も悔しそうに外に飛び出す。
一度ビルから落下する形となったが、一度ワイヤーを外壁に打ち込んで落下速度を和らげ、降下していたファミリアーに拾われる形でその場から逃げ去っていく。
「次会う時には首輪を用意しておくぜ」
窓際まで近づいた黒羽は、逃げ行く女怪盗達へと呼び掛ける。
「なぁ? 子猫ちゃん」
それが聞こえたかどうかは分からないが、彼女達はずっとこちらを苦々しげに見つめていたのだった。
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女怪盗キャッツをうまく撃退して。
さすがに、時計が無事だったこと、何よりこの高度で逃げ去ったこともあり、サンディも深追いはしない。
飛行できるミーナもまた、この場に留まっていて。
「さすがに、これ以上は任務の範疇外か」
無駄なことに手間と時間をかけるのはさすがにもったいないと、ミーナは判断したのだろう。
もっとも、彼女は地の果てまで逃げてでも追跡できる自信はあったが……。
「何かこの時計にあるんだろうな」
それでも、自分が時計を得るというブラフに反応したことをサンディは見逃さない。
「ともあれ、時計は無事でしたね」
蛍も安堵し、ガラスケースを見やる。
怪盗キャッツについて思うことはあれど、まずは依頼を無事に達成したことを喜び合うイレギュラーズ達だ。
「しかし、この懐中時計。過酷な環境でも時間の計測が狂わないなら便利だね」
量産されればいいのにと、ゼフィラは少し残念がる。
それだけの価値がある代物なのか、それとも……。
ともあれ、メンバー達は後片付けに当たりつつ、依頼主へと状況の伝達へと向かうのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ公開です。
MVPは動物の苦手とする匂いを準備したあなたへ。
今回は参加していただき、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
練達で連続して起きている怪盗の宝石奪取事件。怪盗キャッツを名乗る怪盗の対処を願います。
●目的
オリハルコン製の懐中時計の防衛
怪盗キャッツの討伐は含まないものとします。
●敵
○『怪盗キャッツ』
本名不詳、猫耳に尻尾、黒いレオタードを纏い、仮面を被った若い女性。
自ら狙うと宣言した物品しか手に付けないのが矜持と自ら言い放っているそうです。
フック&ロープを使い、飛び回りながらナイフや煙幕弾などを使いこなします。また、いくつもの使役を使いこなし、全ての手の内は晒さぬ油断ならない相手です。
〇使役
これまでの事件でコウモリ、猫等の小動物を使うことが確認されています。手練れのイレギュラーズ達が相手とあり、多数出現させてくることも考えられます。
●状況
とある宝石店に怪盗キャッツから日付指定の上、『21時、オリハルコンの懐中時計、いただきます』予告状が届いております。
宝石店は練達の繁華街、ビルの高層階にあります。
通り側はガラス張り、通りと逆側が通路、他2方は壁となっています。
フロアの中央にあるガラスケースに懐中時計が収納された状態とし、有線、赤外線のシステムをフロア内に配備しています(警備に邪魔ならオフにもできます)。
まだ、怪盗キャッツの犯行手口など情報は少ない為、撃退でもOKと依頼者である宝石店からは言われています。
狙われた懐中時計のみ、怪盗に持ち去られぬよう立ち回っていただければと思います。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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