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シナリオ詳細

逆光騎士団と亡命馬車のゆくえ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●これまでのあらすじ
 天義ノフノ街を治める逆光教会は、聖女と誠実な騎士団のもと街の平和と安全を守っていた。
 街を脅かしていた『醜悪の魔女』事件を新米騎士プリクルと共に解決したローレット・イレギュラーズは、この町に再び安息をもたらした……はずであった。
 そんなある日より、牧師バイラムによる魔女裁判が頻発。明らかに魔とは無関係の者たちが次々と処刑され、ついに街の守護者であった逆光騎士団までもが処刑台にあげられてしまった。
 これを阻止すべく、唯一逃げ延びた新米騎士プリクルと共に処刑式へ乱入したイレギュラーたち。
 イレギュラーズたちを魔女とそのシンパであると疑い発狂する牧師バイラムを見事打ち倒した……が……。
 バイラムに寄生していた謎の怪物が処刑台に拘束されていた聖女『逆光』及び逆光騎士団へと新たに寄生。
 逆光騎士団はイレギュラーズとそれに味方するプリクルを魔女であると糾弾し、影響をうけた市民たちもそれに賛同。
 ノフノでは新たな指導者のもと全く同じ魔女裁判が繰り返されることとなった。

●プリクル亡命
 ぼろけた麻の布を被り、騎士プリクルは震えていた。
 民家の間にある日陰に身を押し込めて、通り過ぎるすべての足音に恐怖していた。
「ヒッ! ――あ、あなた、でしたか……あ、はは。すみません。みっともないところを……」
 美しく切りそろえられたベリーショートの金髪はいまや汚らしく伸び、その隙間から片目をのぞかせるようにして、プリクルは『あなた』を見た。
 この住所ともいえぬ住所を暗号文によって伝えられ、それをローレットへの依頼であると判断したがゆえにやってきたあなたたちを、である。
 何日も食事や睡眠をとっていないのだろう。頬はやせこけ、身体もふらついていた。
 『茨』の称号とともに授かった剣や鎧は、重くて身につけていられないからとそばに転がっている。
 そこにいるのはただの、おびえきった若い女でしかなかった。
 だから。
「も、もう……この国には、いられません。おねがっ……おねがい、します」
 嗚咽を漏らしながら、うつむきながら、落ちる涙で地面をぬらしながら。
 彼女はあなたの足にすがった。
「この国から、逃がしてください」

 ここはノフノから少しばかり離れた街。
 つい最近おこったアストリア魔種発覚騒動の混乱をうけ管理者不在のまま都市機能だけが回り続けている管理空白地帯である。
 プリクルはこの街から馬車で出発し、一つの街を経由して国外へと逃亡するという計画になっていた。
 しかし元々実直で誠実な彼女である。亡命のツテなどまるでなく、唯一たよれる相手としてローレットを選んだのだった。
 道中でどんな妨害がはいるかわかったものではない。
 できる限りの注意をしつつ、国外への脱出を図るのだ。

 ある人が言った。
 『前に進むためには、一度逃げなければならないことがあります』と。

GMコメント

このシナリオは『逆光騎士団とバイラム魔女裁判』のアフターシナリオであります。
ですが状況は一度リセットされておりますので、新規参加も歓迎しております。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2600

■■■オーダー■■■
・成功条件:プリクルが国外へ脱出する
・オプションA:ノフノ周辺の街の様子等情報を獲得する
・オプションB:ノフノで今なにが起きているかを探る
・オプションC:逆光騎士団に接触する(※危険!)

 成功条件を満たすだけであれば、全員で力を合わせてプリクル国外脱出を目指すことになるでしょう。
 ですが歪んだ魔女裁判が今も行われているのか、その影響はどのように出ているのか、そして現在の首謀者であるところの逆光騎士団たちはどうなっているのか。これらの情報を獲得するにはチームを分断し、情報収集を行う必要があります。
 ひとりでAB両方の情報収集を満たすのはキャパシティ的に無理があるので、手分けするなら『亡命、A、B、C』といった具合に振り分けるとよいでしょう。

 まずは皆さんの間で相談をして『どこまでのオプション条件達成を目指すか』を決定してください。
 目指す条件の多さに応じて実質的な難易度は変わり、求められる内容の厳しさも上がっていくでしょう。

■亡命にあたって
 街をひとつ経由して国外へと脱出します。
 この際とくに用意がなければ駅馬車を用いますが、自前の馬車を使うことも可能です。その場合は必ず自分でアイテムとして装備するようにしてください。

 移動にはまる一日かかります。
 ですので食事と睡眠をそれぞれ必要とするでしょう。
 少なくともプリクルは衰弱しているので、休ませなければ途中で倒れてしまいます。

■メタ情報フック
 PCはこの情報を知りませんが、PL情報として以下の情報をもとにプレイングおよび相談を行うことができます。

・亡命が知られており、先回りした3~5名ほどの逆光騎士団先輩騎士との遭遇戦闘がおこります。彼らは索敵および探索能力に優れており、逃げ切るのは困難でしょう。
 彼らはイレギュラーズやローレットを『魔女の手先』であると盲信しており、必ず息の根を止め正義を成そうと考えています。
 これは『謎の怪物』の寄生によるものですが、解除する方法をまだ知りません。
 唯一知っている解除方法は非寄生対象を殺害することであります。

・周辺の街の人々は異様に親切にしてくれます。
 その理由はわかりませんが、それがひどく不気味であることは確かです。

・通過する街は一般的な街です。
 閑静な住宅街で、店も一般的なものが並んでいます。
 人通りは多くも少なくもありません。

・道中の人々は今回の依頼参加者の顔や特徴をなぜか知っているように見えます。

・逆光騎士団の収めるノフノでは毎日のように魔女裁判が行われ、処刑が続いています。
 処刑される人物の共通点は『ローレットに協力したことのある人物』でした。
 逆光騎士団自身がその代表であるはずですが、なぜか一切糾弾がなされていません。

・逆光騎士団はプリクルを覗いて二十二名おり、それとは別に聖女『逆光』がそのトップとして騎士団を管理しています。そして彼らは全員怪物に寄生されています。
 騎士たちの強さにはばらつきがあるので正確にははかれませんが、ローレットのイレギュラーズと同じくらいだと思われます。
 もし戦闘を挑むなら、かならず戦力差を意識してのぞむようにしてください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
 また、場合によっては高い重傷リスクを負います。

  • 逆光騎士団と亡命馬車のゆくえ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年03月04日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

グドルフ・ボイデル(p3p000694)
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
セリア=ファンベル(p3p004040)
初日吊り候補
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌

リプレイ

●不安は人間を動かし、正論は人間を止める
「この国から、逃がしてください」
 足にすがる『茨の騎士』プリクルに、『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)はほんの一瞬だけ山賊らしからぬ顔をした。
 そしていかにもワルそうに笑ってかがみ込む。
「やれやれ……こりゃ美人が台無しだぜえ。
 安心しな。この最強のグドルフさまが居りゃあ何も心配要らねえよ」
「センパイ……な、なんでもします。お金だって、なんでも……」
 汚れた布袋に入れたプリクルの手をそっと押さえて、『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は首を振った。
「不安、だったんだね。ごめんね。いちどここを離れてゆっくり休もう」
 ね、と振り返る焔。
 『女王忠節』秋宮・史之(p3p002233)はドンと自分の胸を叩いてみせる。
「よく俺達のことを思い出してくれたね、うれしいよ。今はね、自分の事だけ考えて、もう少しだけ我慢してね」
 そういって、焔の持ち込んだ馬車に借りてきた馬をつないだ。
「さ、乗って。俺たちが安全な場所まで送り届けてあげるから」

 いざ立ち上がろうとして、プリクルはよろめいた。
 縮こまるばかりの時間を過ごしたせいで身体がなまったのか、それとも恐怖や不安で平衡感覚すら鈍ったか。
 どちらにせよ、支えてあげねば心身共に倒れてしまう。
 『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は彼女の肩を掴み、優しく語りかけてやった。
「逃げることは決して『負け』じゃない。私は逃げには一家言あるのよ」
 捨ててしまえば幸せになれる、なんて言うつもりじゃあない。
 距離を置いてこそ初めてできることがある。アーリアはそれを知っていた。
 更に言えば、プリクルをいずれ連れていくべき場所も、心当たりがついていた。
 コホンと咳払いをする『聖剣解放者』サクラ(p3p005004)。
(天義からの亡命を手伝うのは複雑なものがあるけど……あんな事になったノフノにいる訳にはいかないよね)
「大丈夫だよ。ロウライトの名に賭けて、必ず貴女を送り届けるから」

 馬車が動き出し、国外へ向けて車輪が回る。
 のびるわだちを眺めてから、『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は自分のリュックサックを開いた。
「さ、私たちはノフノへ行くよ。天義で悪いことが起きているなら見過ごせないし、頑張って尻尾を捕まえなきゃ」
「まったくこれだから天義は。いい加減鳩尾に肘鉄めり込ませるわよ」
 『初日吊り候補』セリア=ファンベル(p3p004040)は腕組みをして、過去に見た天義の大事件を思い出していた。
 彼女がイレギュラーズとして本格的な活動を始めたのも、おもえばその頃からだった。
 決していい国ではなかったし、あの一件で見直されたとはいえ問題が解決したわけじゃない。
 未だにこの国は、どこか神にたいして盲目だ。
「天の法も地の利も人の和に如かず。ここの事件くらいはこれ以上大事にならないうちに片付けたいね」
「…………」
 『虹を齧って歩こう』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)は色々な考えを、まずは一度飲み込んだ。
 ノフノ逆光騎士団を乗っ取ったであろう怪物の正体はおろか、その解決策もわかってはいない。しかし今すぐ無謀に突入するより、情報をあつめるのが先だというのは、よく理解できた。今はまだ、駒の動かしかたを知らずにチェス盤を眺めているようなものだろうから。
「何とか……解決の糸口を見つけないと」

●本当の悪意は悪意の顔をしていない
 はじけるたき火に薪をくべて、グドルフや史之たちは周囲に意識を配っていた。
「ここはノフノとアストラッドの間にある街道だよ。事前情報によれば開拓が進んでいなくて人もいないって話だけど……」
 暗視魔法のかかった眼鏡をかけ、きょろきょろと見回す史之。
 たまに野犬が近寄ろうとしてたき火から遠ざかるといった程度で、とくべつ人が近づいてくる様子はない。
「そういえば、以前の戦い。プリクルさんだけ怪物に狙われなかったね、なんでだろうね」
「わからないっす。きっと、役立たずだったから、っすよ……」
 自虐的に片頬をあげるプリクル。覇気を失ってこそいるが、自虐ができる程度には回復したのだろうか……と史之は判断した。
 史之たちは自分たちの顔が割れていることを警戒して、髪色や服装を変えるなどして変装を試みていた。
 グドルフに至ってはわざと痩せ細り能面と長い白髪をかぶって腰を曲げ、あやしい老人になりすましていた。
 ぎろりと振り返る。
 カラスが近くの木にとまり、こちらをじっと見ていた。
「…………」
 念のために石を投げつけ、追い払っておく。
 一方で、サクラはプリクルの乱れた髪を櫛とぬらした布で整えていた。
「女の子が汚れたままって訳にはいかないからね。あ、ぜシュテル・プロテインたべる?」
「サクラちゃん……」
 焔が若干かわいそうな子を見る目を向けてきたので、サクラは両手をサッとかざした。
「え、栄養はあるし、日持ちするから……」
「でも、確かに、寝て食べるのは大事だよね。眠れは……しないと思うけど」
 プリクルはぼうっとたき火を見つめていた。
「あのとき、ジブンにはもっとできることがあった筈っす。心のどこかで、『頑張れば上手くいく』って思ってたのかも、しれないっす……やるべきことを、差し置いて」
「プリクルちゃん」
 話題を変えるべきだろう。焔は軽く呼びかけて、馬車を指さした。
「勲章は持ってる? 茨の」
「捨てられなかったっす。けど、ジブンなんかが持ってても……」
 そんなことないよ。
 と、言ってあげるにはまだピースが足りない気がした。
 変えるべき場所を取り返してこそ、鍵は意味をもつのだろうから。

 このあと、国外に面した街であるアストラッドへ入ったイレギュラーズ。
 接する人々は以上なまでに親切で、その全員きわめて明確な敵意を、サクラたちに向けているのがわかった。
 敵意を向けられているのにまるで襲いかかってこず、毒を盛ったり窃盗を試みたりといったアプローチもないまま、ただ表面的に親切にし続けられるという不気味な状態がしばらく続いた。
 変化があったのは、街を出るゲートをくぐろうとしたその時であった。
「止まれ。貴様、『魔女の手先』だな」
「この国に、この世界に魔女の呪いを広めることは決して許さない」
 両サイドから槍をクロスさせて道を阻む騎士達。彼らの胸には逆光騎士団のエンブレムがあった。
 すぐに退路を塞ぐように別の騎士たちが飛び出し、剣や銃を抜く。
「この国の民は、平和は、我々逆光騎士団が守る」
「「朽ち滅せよ、魔女め!」」

●星よりも遠くて、自分よりも近いもの
 令嬢になりきってアストラッドの街を歩くスティア。
 セリアは彼女について、親切な街の人々の様子を観察することにしていた。
 カフェテラスの椅子に座り、帽子を目深に被るスティア。
 店員は『美しいお嬢さんたちにはサービスをしないとね』と笑顔で述べてチョコレートケーキをオマケしてくれた。
 セリアが観察するかぎり、街の人々におかしな様子はない。
 と言うより、平和そのものだ。
 高い空から巨大な手が人形の群れを操っていたり、洗脳されていたりするなら、もっと挙動が画一的であるべきだ。
 けれど彼らは自由で、平和で、そのうえで親切だった。
 スティアときわめて小声で相談しあう。
「隣の地域へ攻撃を仕掛けたり、洗脳をしたり生贄にしたりってことかと思ったんだけど……」
「そういう様子はないよね。けど、なんだろう……うーん……」
 スティアの煮え切らない表情に、セリアは乗り出し気味に問いかけた。
「どうかしたの?」
「ええと、なんて言ったらいいんだろ。ここの人たち、全員ね、感情が『わかんない』の」

●人は暴力をふるわない。空気が暴力を作るのだ。
 アーリアとウィズィニャラァムは、それぞれ変装をしてロワとファロンという姉妹になりきってノフノに潜入していた。
 少し前に見た街と同じ場所とはとても思えない風景が、そこには広がっていた。
 具体例は、こうだ。
 『魔女は出て行け』

 ノフノの玄関口とも言うべき馬車駅近くのアーケード街には、赤文字で書かれた大きなプレートがあちこちにたち、街全体が『魔女』という存在に対して殺気立っているように見えた。
 しかし打って変わって、街の人々はごく普通に買い物をし、ごく普通に子供をつれて歩き、ごく普通に犬の世話をしている。
 風景の殺気と、人々の平穏が、まるでアンバランスなように見えるのだ。
「行くわよ」
「……はい」
 二人は姉妹を装うために手をつなぎ、アーケード街を歩いて行く。
 元々横のつながりが多い人々なのだろうか、彼女たちに対して『見ない顔だな』という視線を向けてくるのがわかるが、そこに敵意が混じっているかどうかまではわからない。
 少なくとも、彼らはアーリアたちへ積極的に接するつもりがそもそもないようだった。
 しばらく進んでいくと、街の中心である逆光教会へとたどり着く。
 これ以上近づくのは危険だと察して足を止め、ウィズィニャラァムは道行く人に声をかけた。
「すみません、次の裁判はいつでしたっけ?」
「3時からだけど?」
 驚き、しかしそれを悟られないように微笑みで返す。
「喜ばしいことですね。この街が更に浄化されてくれるのですから」
「……?」
 大げさな、という顔で首をかしげこそすれど、相手はそれ以上特に追求もせずに去って行った。
 目を細め、苦々しい顔をするアーリア。
「わかる? ウィズィちゃん」
「『裁判は毎日のように行われている』ってことですか」
「うん、それもだけど……」
 アーリアは、恐ろしいものを見る目で教会を見つめていた。
「あの人達にとって、『魔女の手先を火あぶりにすること』は手のひらをアルコールで消毒するくらい当たり前のことになっているのよ。
 あの人達は悪意や敵意もなく、ただ自然に『魔女』を排斥しようとしている。
 それがあの人達の日常であり、平和になっているのよ」
 民のヘイトは『魔女』ばかりに集まり、彼らは魔女を嫌うという一点で協力し、わかり合い、平和を維持している。
 しかし、その犠牲として。
「――!!!!」
 言葉にならぬ悲鳴と共に、煙があがる。
 アーリアとウィズィニャラァムは、ただそれをじっと見つめていた。
 この煙を幾度もあげてなるものか……と。

●戦争が技術を進歩させ、善導が手段を進歩させる
 金装飾のマジックライフルによる水平撃ちを、史之は展開した理力障壁へガードした。
「はいはい全部魔女のせい。その空っぽの目は真実を見ようともしない現われか? 秋宮史之だ! 逃げも隠れもしない!」
 槍を手に襲いかかる二人がかりの逆光騎士。
 史之の障壁を槍が貫くが、すばやく避けて握りこむ。
「こっちは引き受けた。後ろの連中は任せるよ」
「プリクルちゃんは馬車に入ってて」
 焔は手をかざしてプリクルを守るように前進すると、黄金の剣を抜く騎士へと挑みかかった。
 相手の実力がわからない。いつ『トドメ』をさしてしまうかわからない。それゆえ、焔は徹底して『殺さずの炎』を槍に纏わせて殴りつけた。
 剣と槍がぶつかり合い、黄金の火花をバチバチと散らしていく。
 が、そのさなかで騎士はチラリと馬車のほうをみた。
「裏切り者のプリクル……奴を逃がすな! 情報を持ち逃げされるぞ!」
「任せろ、私がやる!」
 マジックライフルを装備した騎士が走って馬車へ逃げるプリクルへと狙いを定める……が、ぬらりと射線に割り込んだグドルフが飛来した弾を小手で受け止めた。
「なんだぁ、オメェ。オレサマに喧嘩を売ろうってか?」
「邪魔をするな。貴様、プリクルに何を吹き込んだ! あの子を返せ!」
「アァ?」
 まるでこちらをワルモノ扱いするかのような言動にグドルフは顔をしかめた。
 悪漢であることには慣れているが、今回のケースはどうにも不自然に感じたのだ。
 急速に距離を詰めるサクラ。
 剣に凍気を纏わせて斬り付けると、素早く相手の襟首を掴んで地面へと投げ落とした。
「目を覚まして! 貴方達の誇りを寄生生物なんかに汚させないで!」
「ぐう……!? だれが魔女の言葉など……に……?」
 抵抗しながらも首を締め付けられ、意識を失う騎士。
 と、その時。
 騎士の口からビュンと赤い物体が飛び出した。
 赤い物体は空中に浮かび、眼球を一つどろりと形成すると、一度きょろきょろ周りを観察したのちグドルフめがけて飛びかかった。
 既視感。
 いや、これは知っている。間近で見ている。
 だから。
「効かねえ!」
 口から侵入しようとする『怪物』を殴りつけ、破壊するグドルフ。
「これは……みんな、『殺さずに倒す』んだ!」
 状況から全てを察した史之は、焔たちに呼びかけた。
 彼らの抱いた優しさが、正体不明の怪物を打ち破る糸口になろうとしていた。

●デマ
 スティアとセリアはある程度の情報収集を終えると、それ以上踏み込むことなく街からの撤退をはかっていた。
 が、その途中でスティアはひとつだけ……。
「すみません。聖女『逆光』様についてどう思いますか?」
「どう、とは? あー、立派な人なんじゃないかな。よく知らないけど。確か魔女を退治してるんだよね」
 そんな風に語る郵便局員に、セリアはこう続けた。
「ありがとうございます。ところで、この辺にお勧めの観光スポットはありませんか」
「ああ!」
 郵便局員はポンと手を叩き、満面の笑みで言った。
「だったら逆光教会しかないよ! あそこはとてもいいところだよ!」
 それが、セリアが見つけた唯一にして最大の、『不自然』であった。

●糸口
 アーリアとウィズィニャラァムが幻想辺境の酒場にやってきたところで、意外な光景にぎょっとした。
「ああ、えっと、これはどうも……」
 金髪ポニーテールの騎士。黒いドレッドヘアの騎士。スキンヘッドに赤眉の騎士。オールバックでいかつい顔の騎士。どれも胸に逆光教会のエンブレムをつけた、逆光騎士団のメンバーであった。
「あんたもローレットのイレギュラーズかい。今回は助かったよ。俺たちはどうも、あの裁判の日以来アタマをいじられていたみたいだな」
 それは紛れもなく、プリクルの先輩騎士たちであった。
「……みつけた」
 そして同時に、ウィズィニャラァムの探してやまぬ『糸口』であった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――プリクルの亡命に成功しました
 ――『怪物』に寄生された人物を『不殺攻撃』によって倒すと寄生状態を解除できることを発見しました
 ――逆光騎士団カリアン、コディマリー、アンスズ、リンゴスノーが仲間になりました

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