PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Gear Basilica>その回転に慈悲は無く

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ごろごろごろごろごろ
 鉄帝の、とある雪原の中の小さな家屋で起きた『略奪』はものの数十秒の出来事であった。

「うわあっ!?」
 嘘みたいに晴れ渡ったある冬の昼のこと、突如あらわれた奇妙な丸い影が小屋の前で薪を運んでいた男を弾き飛ばし、ドアを、周囲の壁ごと蹴破って建物内に侵入したのだ。
 突然の奇襲に骨が折れ苦しがる男を気にすることも無くその丸い何かは小屋の中を荒らしていく。
 何かを弾き飛ばすような音は次第に鈍く曇った音へと変わり、まるで咀嚼するかのように壁に立てかけられた薪割り斧を取り込んでいく。
「や、やめてくれ。そいつがないと俺は……」
 男がよろよろと赤く染まった雪の上をはいずり、手を伸ばす……しかしそれは、続いて通り抜けた車輪の群れに弾き飛ばされてしまう。
「ぐあっ、ひ、ひぃっ……!?」
『邪魔をするな』と言わんばかりに、痙攣する男の胸へ車輪の主は冷たく銃口を向け――。

 銃声が、ツンドラの大地に響いた。

●まわれ回れイレギュラーズ
「みんな聞いて……動き出した鉄帝の古代兵器がスチールグラードに侵攻を始めたの」
 慌ただしく情報屋達が駆け巡るローレットの中、【いねむりどらごん】カルア・キルシュテン(p3n000040)がイレギュラーズ達を呼び集める。
 動き出した古代兵器の名は『歯車大聖堂(ギアバジリカ)』――魔種を動力源として動き出した兵器群は、進路上のあらゆる物を略奪しながら鉄帝首都へと直進しているのだという。
「きっと復活を邪魔されていたからおなか、ぺこぺこなんだと思うの……だから何もかも、こいつらは取って行っちゃう」
 そういってカルアが示した紙に描かれていたのは――不気味な金属製の丸い球体。

 その感情の無い機械兵団の一小隊は『ローリング・ボール』と名付けられ、寒村に散らばる『誰かが命よりも大切にする物』をその名のとおり転がりながらなにもかも略奪し尽くしてしまうのだという。止めるべきは歯車大聖堂、しかし、この機械兵団を止めねば補給線となってしまう上に更なる被害は避けられない。
「鉄帝のファイター達も応援に来てくれて、おびき寄せる地点はもう決めてるんだけど……村人を避難させなくちゃ。だからみんなは……機械の方を倒してほしい」

『みんなに遺された時間は短いのはわかってるけれど……お願いします』
 そうカルアは深々と頭を下げて、イレギュラーズ達にお願いをするのであった。

GMコメント

 お久しぶりです、塩魔法使いです。
 魔種となったアナスタシアと歯車大聖堂が遂に行動を開始したようです。

●成功条件
 ・歯車大聖堂(ギアバジリカ)が放った兵器群の停止

●地形
 鉄帝の寒村、除雪で積み上げられた雪山や石作りの家がまばらに立ち並んでいます。
 村全体の広さとしては十分ですが、死角からの攻撃に注意です。

●敵の情報
・ローリング・ボール(ボール)×1
 真鍮色の金属に黒い溝が刻まれた歪な物体です。
 転がっては人々を襲う制圧兼索敵装置。
 BSの類が若干通り辛く、頑丈さ(HP)と行動回数に優れます。

 激突されると体に衝撃が伝わり動けなくなる事があります。
 またある程度破損すると燃え盛る本体が現れ敵味方関係なく暴れまわります。

・パンジャン・ホイ―ル(ホイール)×10前後
 2つの巨大な黒い歯車型の車輪と機銃の付いた連結部でゴロゴロと転がる殺戮兼エネルギー回収兵器。
 その車輪は【必殺】の効果を持ち、弾丸には痺れ毒が塗られています。

●味方情報
 鉄帝地方闘技場のD級闘士とカルアが事前に民衆の避難をしてくれています。
 どちらか片方なら若干遅れますが戦闘に呼び出す事も可能です。
 D級闘士は攻撃力と範囲攻撃に優れ、カルアは防御力と再生力に「ちょっと自信はある」との事。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 変なボールはサクッと倒しちゃいましょう。
 では、よろしくお願いします。

  • <Gear Basilica>その回転に慈悲は無く完了
  • GM名塩魔法使い
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年03月01日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
拵え鋼
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先
実験体37号(p3p002277)
鉄拳超制裁!
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ジェック・アーロン(p3p004755)
お姉チャン
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
アクア・フィーリス(p3p006784)
闇と炎

リプレイ

●みはれ、てきはそこにいる
 まるで冬の厳しい寒さが雲を切り裂いたかの様な晴天の昼、はるか彼方の『歯車大聖堂』の重い足音がはっきりと感じられるほど静まり返った雪の村。清々しい天気に反して、辺りには張り詰めた空気が漂っていた。
『奴ら』は既にこの周囲に居る。雪山に、物陰に。音を立てず潜み冷たいレンズでこちらを監視し、ひっそりと銃口を向けている。そうやって見張り続け気が緩んだ村人達を襲い、遺物を喰らってきたのだろう。 
「心の込められたものに力が宿る、なんて発想は昔からございますが。……これはそういった目的ではなくて、自傷じみたものを感じますわねー」
『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)は胸に手を当て心の痛みを零す。例えこの兵器群を止めようとも村へ向かう途中見て来たいくつもの悲劇はもう取り返しは付かないのだと。
 その言葉に『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は頷き、息を殺し物陰の兵器達をにらみつけ、銀剣をしっかりと握り直した。
「略奪とは残酷なものだ……これ以上犠牲を出してなるものか!」
「こっちも気がついてる事には気が付いてないみたいだけどねぇ」
 言われてたボールみたいな奴はいないし……そう『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は放った鴉に監視を続ける様に指示をして、壁の向こう側のパンジャンドラムの様な兵器群を呆れた様な笑みで注視し続ける。
「ごろごろ転がられてるのも見張られてるのも鬱陶しいし、ちゃっちゃと壊して終わらせようか」
 ルーキスの無言の合図に『イギョウノショウジョ』実験体37号(p3p002277)は頷くと宙ぶらりんになった足を揺らし、ピンと片足の先で敵が潜んでいる方角を刺した。
「……機械さん達にもそれぞれの思いとかがあるのかも知れない。ワタシには分からない。
もしかしたら、やむを得ない事情かも知れない」
 雪の精霊達に感謝の笑みを投げかけてから、実験体37号はそれが潜んでいる方角へ向き直る。
「でも、ああやって人を傷つけたり物を壊したりするのは絶対にダメだよ!」
 その言葉に皆が頷くと、意を決して特異運命座標達は隊列を整えながら突撃した。飛び出した隙を狙う作戦は機械には通用しない、ならば先に動き先手を取るまで。
『闇と炎』アクア・フィーリス(p3p006784)もまた黒い炎を纏った刀を抜き、一歩踏み込んだ瞬間――その違和感に思わず後ろに飛び退いた。
「……!」
 アクアが着地した瞬間。彼女の立っていた場所から激しい雪煙が立ち上り、爆風と共に丸い影が現出したのだ!
「これが情報に言われてた……!」
『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)がその姿に驚愕したように、それはまさしく真鍮色に輝く2mほどの巨大な金属の球であった。ローリング・ボールと名づけられたその球型の略奪兵器は溝から蒸気を噴くと、その場で激しく回転し攻撃の準備を始めだす。降り積もった雪がその回転に引きずられ、竜巻の様に渦を巻きしていく。そのボールを取り囲むように隠れていた兵器群が車輪の歯車を唸らせ、静かに銃口をこちらへと向けている。
「ウヘ、痛ソウなボールだなぁ……当たんナイよう遠くにイルね……」
『ガスマスクガール』ジェック(p3p004755)は突然の奇襲に舌打ちをすると、セーフティを外した長銃を構えボールの溝部に狙いを定める。
「ボールと、何だろうあれ……タイヤ……? おもちゃみたい、だけど、ギアバジリカの兵器、なんだよね」
「はい、形状だけは結構好きだけどやっていることは全然格好良くないデス」
『古代兵器』らしからぬ形状に思わず気を取られたアクアに対して、『歯車の決意』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)は肯定を示しながらもボール達を睨みつける。
「こんなものが地下に眠っていただなんて……これ以上の被害を出すわけにはいきませんわ!」
 略奪と殺戮だけの兵器など存在してはいけない。戦棍に魔力を込め立ち向かおうするヴァレーリヤの声に、アクアは武器を構え直す。
「……そんなの嫌だ、みんなは悪くないのに……行こう、ここで、終わらせよう!」

 勿論だ――この金属どもは今ここでスクラップにしなければならない!

●ころがれまわれ、うてころせ
 古代兵器達を一刻も早く止めるためには何としてでも相手の興味を引き、その好機を逃さず司令塔であるボールを止めなければならない。
 冷たい銃口が火を噴くその前に、それならばと誰よりも早く敵陣へと斬り込んだのはリゲルであった。
 飛び掛かる歯車を軽く受け流しボールの目の前、胸元にぶら下げた白銀のロザリオを握りしめると見せつけるように掲げ――高らかに宣言した。
「これを見ろ!」
 銃口とボールが、一斉に向きを変えただ一点、リゲルの右手に握りしめられたそれを見つめる。
「これは亡き父上の形見であり俺が当主の証として受け継いだ大切な物だ! 父上、そして代々当主の想い、そして俺の想いも籠められている……略奪できるものなら、やってみるがいい!」
 奪われる事は死にも等しい程の想いが込められた聖十字――機械側にとっては何よりも強い『燃料』に違いないそれを囮にする事はまさしくリゲルにとっての本気の挑発であった。
 ジジ……と異音を鳴らし、全ての機銃がリゲルへの右手へと向けられるほんの1,2秒のその瞬間、1個のホイールの機銃の先端部が激しい爆発により宙へとはじけ飛ばされた!
「……ナンデモ試して見ル者だヨネ」
 玉詰まりを起こし、ぐるぐるとその場を回転するホイールの一つを眺めながらそう静かにジェックは呟くと残りの弾丸を瞬く間に警戒が逸れていたホイール共へと弾倉が空になるまで撃ち尽くしていく。1ミリたりともブレない銃口からは、『撃ち損じ』という言葉があるわけもなく。次々とホイールをボールから引き剥がしていく。
「リゲル、ありがと! それじゃあいくよ!」
 実験体37号は巨大な手に力を込め一気に跳躍すると、ボールの淡い輝きを目掛けて一気に両腕を叩きつける。
「つぶれちゃえー!」
 くぐもった大きな音と共にボールの金属が凹み、ぎしぎしと音が鳴る。警戒対象を変えたホイール達が歯車を激しく回転させ、着地した実験体37号の腕を削ろうとするもそれをまるで削る事は叶わずに。逆に片腕を重そうに上げた実験体37号の右腕に思い切り薙ぎ払われてしまう。
 弾かれたボールはぽてぽてと雪原の上を転がり、何度も不規則に向きを変えつつ、イレギュラーズ達のすべてを薙ぎ払おうと激しく動き回る。
「この程度……なの!」
 風化寸前の骸骨を盾に防ぎながらアクアは刃を憎悪でより黒く染め上げ、その金属へと叩きこんだ。その漆黒はボールを包み込み、瞬く間にボール内部の光センサーの機能を奪っていく。
 動き回る方向があやふやになりだしたそれを目にルーキスはにやりとほくそ笑むと、軽く歯車の車輪達をいなしつつ、ボールへと向けて紫煙の輝きを放つ。
「へえ、そこが弱いんだ、もっとイカれても動けるかい?」
 ボールの周囲より湧き上がった魔の瘴気は暗闇に包まれたボールの動きを次第に停止させ、まるで痙攣させるかの様に動きが次第に弱っていく。
「……おや、効果があったみたいだよ?」
 ルーキスの言う通りボールへと伝わった歪みは臨界へと達し、パキ、パキリ、と卵の様に黒い溝から真鍮の身体へとヒビとなって広がっていった。そして破片となって剥がれ落ちると、その部位から蒸気を噴き上げながら、中の中枢構造を曝け出した。
 それは球の中に小さな球が神秘的な力で中央に浮遊する、マトリョーシカの様な構造であった。外側と内側の球の間の中空には何かドロドロした物が赤黒く揺れ、不思議と激しい運動で零れる事無く赤子を護る羊水の様にその中心部を包んでいる。
 ヴァレーリヤは隙間から白い蒸気を噴き出し、なおも暴れ続ける金属球への攻撃タイミングをうかがいつつそのヒビを見つめていた。
「あれは……あの古代兵器のコアですの? このまま剥がしきれば……!」
「わからないけど、一気に弱らせられそうデス!」
 ヴァレーリヤにボールへと切り込む道を作るべく、リュカシスが焔を宿した戦槌を大きく振り回しながら敵陣へと殴りこむ。『きっと何かがある』……それはボール達と相対し、敵陣の中央で立ち回るリゲルも同じ考えであった。
「まだだ、その程度でこれを奪えると思うな!」
 ボールに開いた穴を見失う事が無いように目を見開きつつ、自らへと銃口を向けるホイール達を一瞥する。仲間達が攪乱し、注意を逸らそうとし続けるもののホイール達の狙いは依然とリゲルであり、一般の兵士であれば確実に仕留めているに違いない量の尖った弾丸を激しい銃声と共に何十発もぶっ放していく。
 四方から襲い掛かる敵から大切な聖十字を護りながらの戦闘、普通の状況ならば意識が逸れ全力等出せようはずもない。しかしリゲルは限界を超え踏みとどまり、それどころか防御衣へと絡みつき破り去ろうとするホイールに素早い返しの刃を加え、ホイールを一気にボールの方角へと弾き飛ばした!
「あらあら、大変ー……もっとこっちに引き寄せないとですかしらー?」
 リゲルを護る様にかたわらにメリルナートが寄り添いながら、声を高らかに上げ戦いの歌を奏で続ける。それは正義あるものには勇気を、心無き機械には破滅を導き、同時に傷ついたリゲルにあと1歩を踏み出させる活力となり続ける。
「はい、ボクに任せてください!」
 あと一押しなのだ、余計な黒い歯車どもには黙っていてもらおう。リュカシスは戦槌への紅の炎をより強く滾らせると、横に大きく薙ぎ払いながらホイールごとボールの穴を広げる様に激しく叩きつけ。
「バラバラにしてやりマス!」
 リュカシス自慢の黒鉄の逸品は凶悪な唸りを上げながらボールを、ホイールを紅に染め、一気に弱った部位へ閃光となって破壊する!
 更に砕けたボールの殻はその傷口を大きく広げ、次第にぷすぷすと蒸気が黒い焦げ臭い物へと変わり、ゆっくりと中の溶液を垂れ流す。
「やりました――!?」
 だがボールは戸惑う事無くその衝撃をまるでゴムの様に跳ね返すと、リュカシスへと目にも止まらぬ速さで飛び掛かる!自らの損傷を計算に入れぬ金属球の動きにリュカシスは思わず不意を撃たれ、戦槌を両手で構え防御の姿勢を取る――しかし、ボールは天から舞い降りた人影に遮られ大きく弾き飛ばされてしまった。
「……やっぱり、みんななら心配なかったかな」
「カルア様!」
 リュカシスの瞳に映った物は、賞賛と感嘆が半々。そんな声色で槍を構え、ボールの激突した痺れに耐えるカルアの姿。
「これなら見守っててもよかったけど……私もお手伝いしたかったから、いいよね?」
 ウインクと共にリュカシスの方を振り向きながらお茶目に舌を出すカルアに対し、リュカシスは喜びの声をあげた。
「はい! どうか共に、全力で!」
 カルアはその言葉に笑みを浮かべると、傷ついた仲間を庇う為に駆け出していく。
 形勢は完全に押し返した、敵もまばらになった、あとは決定打を与えるのみ。
「よーし! いきますわよ!」
 勢いに乗り攻め込もうとヴァレーリヤが燃え盛るメイスと共に敵陣に出来た隙間を潜り、一気にボールの前へと躍り出ると、そのセンサーを完全に破壊するべく紅蓮の衝撃波を解き放つ。
 流石にこれは効いたと言わんばかりにボールはその中央の何かから火花を放つと、ぐらぐらと揺れ動いた。
 そうだ。早く一気にその殻を破って、弱ったところを叩き割ってやろう。そうヴァレーリヤは祝福の炎を解き放つと、敵対する全てを包み込む竜巻のように全てを鉄の泥へと還さんと解放する!
 主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え――
 その聖句に祝福された鋭い炎はたしかに穴から球の内部へと侵入すると、真鍮の内部の中枢機構を焼き切っていった――!
「やりましたわ!」
「いんヤ、まだみたいダネ……ハア」
 軽いガッツポーズを決めるヴァレーリヤ、しかし、遠くスコープ越しに穴を見つめていたジェックは大きな溜息をついた。
 確かに彼女の炎はボールにとっては致命傷、間もなく機能を停止するだろう……しかし、魔種の狂気に染められた古代兵器がそう簡単に止められるはずもない――炎の様子が変わった事にヴァレーリヤは気付くと、即座に身構え直した。
 自らの機能に終焉を与える紅蓮の輝き。だが相手はそれを逆手に取り、最後の悪あがきをしようとしている――

●もえさかれ、こわしてしまえ
 ローリング・ボールの殻の亀裂が広がり、そこから溶岩の様に灰や溶けた金属――回収してきたであろう『大切なもの』の残骸――がより強く血液の様に流れ出ていく。そして、透明なガラス球の中を複数の歯車が回り露出する歪な火焔球としてのコアを曝け出した。
『ゴパァァァ!』
 ボールはまるで断末魔の様な悲鳴と共に周りのホイールを弾き飛ばし、螺旋を描くように加速、回転すると目にも止まらぬ速さでイレギュラーズ達へと襲い掛かる!
「ぐっ……!」
 リゲルは剣と体でその猛攻を受け止め、ロザリオを落とさぬ様にしっかりと踏みとどまると音速の反攻を確かにその透明な硬質体へと叩きこんだ。
「あと少しだ!抑えきってみせる!」
 ボールは唸りをあげ失った『燃料』を補充するべく、リゲルの胸元にある十字を求めて身体へと執拗に体当たりを続けるも、リゲルの尽力とメリルナートの絶大な回復力の前に膝をつかせる事は叶わない。
「さー、みんなでなんとかしちゃいましょー♪」
「ええ!」
 神秘術式によって強化されたメイスを空高く掲げ、ヴァレーリヤが神へ、そして遥か彼方への誰かへの祈りを込めた特大の業炎を燃え盛る球体へと、そして蒸気を噴き上げながら、弱弱しく動くホイール達へとトドメの一撃を解き放つ。
「私達が、ここで止めましょう!」
 その強大な魔力はホイールを次々と薙ぎ払い、暴走する球体は過熱とホイールの残骸の衝突により軟化し、中の歯車を露出させながら形を歪めていく。その隙を逃さない様に、ジェックの鋭い弾丸が露出した歯車を一つ残らず冷静に破壊する!
「要すルニ、撃ちコミまくればいいんダヨネ」
 しかし行動が狂い動力源を奪われつつある状態でもボールは動きを止める事無く、闇雲にジェックを狙って紅の業炎を放ち反撃する。しかしその紅はアクアの漆黒に呑まれ、哀れにも消えていく。
「よそ見……しないでよ……!」
 どこか響くアクアの苦悶の声とは裏腹に、その空虚な目は静かに動作を停止し始めている相手を見据えていた。たとえ一秒だろうと相手より早く倒れるものか。そのアクアの執念は、最後の一手を相手に決して与えさせない。
「まだわたしは……諦めきれない!!」
「そうそう、この世界の平和を乱そうとする人はワタシは絶対に許さないからね!」
 牙を剥け喰いしばるアクアの後ろから実験体37号が飛び出すと、弱ったホイール達へ刺したものと同じ構えでボールの懐へ忍び込み自らの肉体よりも巨大な剛腕を豪快に叩きこむ!
「ぜんりょく、アッパー!!」
 快音――ボールは激しく空中数メートルへと浮かび上がりながら僅かに亀裂が走りだす。
「アクアありがと! リュカシスお願い!」
 実験体37号の急な振りにリュカシスは若干の動揺を見せながらも快諾し、大きく飛び上がると垂直落下してきたボールへトドメの一撃を叩きこむ!
「これで、終わりデス!」
 歯を喰いしばり残りの体力を全て絞り切ったリュカシスの会心の一撃が、燃え盛るコアの中心に絶大な破壊の力となって大地へと激突した――次の瞬間、それは閃光の様な業炎を噴き出し、断末魔の様な叫び声と共に粉々に崩れ去った。
「うわっ!」
 異変に飛びのいたリュカシスの瞳に映った物は、透明なガラスの様な物の破片と数えきれない歯車の残骸のみであった。

「……うん、おわったみたいだね!」
 数十秒の警戒の後、実験体37号のそんな陽気な声が戦いの終わりの合図であった。
「恐ろしい兵器だったな」
 既に熱を失った兵器群の残骸を眺めながらリゲルは深く息を吐く。取り込まれた物、人、そして感情の数々。断片的に読み取れた情報だけでもそれがどれほど業の深いものであるか、リゲルに思い知らしめるには十分なほどであったのだ。
「本当にだね。誰も何も盗られたりしてない? 大丈夫なら僥倖だ」
 ルーキスは戦闘の疲労で意識を失ったアクアの身体を翼で受け止め、不敵に仲間達の方へ笑って見せた。
「……ぶい」
「ああ、ついでにカルアもお疲れさまだね」
 死闘の終わりに訪れたほんの少しの緩い空気に表情が若干和らぐイレギュラーズ達。しかし直ぐに彼らは身支度を整えると、被害状況の確認と次の戦場への準備へと向かうのであった。

 再び静まり返った村の跡地に、歯車大聖堂の重い、重い駆動音が鳴り響く。
 小さな一歩かもしれないが、自分達は確かに悲劇を食い止め、事態の収束へと近づいたのだ。

成否

成功

MVP

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣

状態異常

リゲル=アークライト(p3p000442) [重傷]
白獅子剛剣

あとがき

<Gear Basilica>お疲れさまでした。
 状況判断力と戦略、大変素晴らしいと思いました。
 素敵なプレイングに思わず緊張してしまいましたが、大変楽しく執筆する事ができました。ありがとうございます。
 MVPは勝利のために命を賭けた貴方に。

 ありがとうございました、またの機会をよろしくお願いします。

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