PandoraPartyProject

シナリオ詳細

再会は毒と共に

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ラサの噂
 その日、ローレットへと顔を出した『小指の糸』アイラ(p3p006523)は、イレギュラーズの仲間と共に依頼を探してた。
 人気の依頼はどこも埋まっているようだし、出来れば知人友人仲間と共に受けれるものが望ましい。
 うーん、と首を捻りながら探していると、一つ眼に止まった依頼書があった。
「ラサでの護衛依頼? 商人の輸送する商品の護衛ですか」
 要項を確かめてみれば、どうやら仲間と一緒に受けることが出来そうだった。
「これなら大丈夫でしょうか? うん、皆さんに聞いてみましょう」
 そう言って、仲間の待つテーブルへと戻ると、早速尋ねて見る。
「商人の護衛かい? いいんじゃないかな? 手頃な依頼な気がするよ」
 依頼書を確認した『小指の糸』ラピス(p3p007373)が言うと、隣に座っていた『風の囁き』サンディ・カルタ(p3p000438)も、
「ま、護衛依頼ならそう難しくないだろ、よくありそうな奴だしな」
 と、軽い感じに頷いた。
「それで、護衛する商品ってなんなんだい? まさか危ないものじゃないよね?」
 『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)が確認すると、アイラは「そう言えば確認してませんでした」と、依頼書をもう一度よく見てみる。
「えーっと……商品は観賞用の蠍って書いてありますね」
「蠍! 蠍を観賞用にするってことは飼うみたいなものだよね? ふぇー、高そう」
 『特異運命座標』小神野 陽花(p3p007751)がそう驚くと、『宝飾眼の執行人』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)がへらりと笑う。
「きっとタダの蠍なんかじゃなくて強烈な毒をもってる奴じゃないかい? 扱いが難しいほど希少価値が作ってもんさ」
「しかし、毒蠍と言えど護衛を雇うほどに稀少なものがいるのでありますか? 自分には皆目見当もつきませんが」
 『八紘一宇』鮫島 寿彰(p3p007662)の疑問も尤もなところで、如何に稀少とはいえ護衛を雇う――しかもローレットに頼むというのは事が大きい気がした。
 同席していた『熱砂への憧憬』Erstine・Winstein(p3p007325)は話を聞いていて、ふと思い出す。
「そういえば、最近ラサで毒蠍が大量に殺されてるって噂を聞いたわね……確か『黒髪で緋と蒼の目を持つ男』が犯人だとか……」
 その話を聞いた瞬間、アイラは直感的に犯人が誰なのか気づいた。
「お師さまだ……」
「お師さまって、アイラが生き方を学んだっていう――?」
 ラピスの言葉にこくりと頷く。
 共に過ごしながら様々なことを教えてくれたお師さま。しかし、ある日言伝もなく行方を眩ませた相手である。
 アイラは、ずっと探していたのだ。何も言わずに消えたお師さまのことを。
「お師さまが毒蠍を狙っているのだとしたら……きっと、この依頼の商品も狙ってくるはず――ボクのわがままになってしまいますが、この依頼受けてもいいですか?」
 アイラが尋ねると、仲間達は「もちろん」と二つ返事に頷いた。

 果たして、アイラはお師さまと再会することはできるのか。そして、その先に待つのは――

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 シナリオリクエストありがとうございました。
 アイラさんと関係者の再会となります。
 難易度はノーマル同程度となります。

●依頼達成条件
 お師さま【紫茨】アカシ・ローリイットを撤退させる。

■オプション
 商品の毒蠍を守り切る

●情報確度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は起きません。

●このシナリオについて
 今回は敵の襲撃ポイントが確定していますので、イレギュラーズは敵の探索や誘き出しは考慮しなくて構いません。
 
●敵のデータ
 敵はアカシ・ローリイットとアカシの操る練達式オートマトン八体となります。

 毒の研究を行っているアカシは、研究成果を試すために様々な毒を使用します。
 毒、猛毒、致死毒付与の他、神経毒によって停滞を付与してきます。
 耐久力は高めで、現在HPが三割を切ると撤退します。

 練達式オートマトンは通常攻撃の他、パルス照射による痺れを誘発してきます。
 耐久力はそこそこですが、行動が遅いです。
 アカシが撤退後も、戦闘行動を続けます。

●戦闘地域について
 砂漠での戦闘となります。
 やや走りにくい地形ではありますが、戦闘行動に支障はありません。
 暑さ対策や水分補給は忘れないようにしましょう。

 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • 再会は毒と共に完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年02月20日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
優しき咆哮
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
アイラ・ディアグレイス(p3p006523)
生命の蝶
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
ラピス・ディアグレイス(p3p007373)
瑠璃の光
鮫島 寿彰(p3p007662)
八紘一宇
小神野 陽花(p3p007751)
特異運命座標

リプレイ

●待ち伏せ
 燃えさかる太陽の炎が降り注ぐ熱砂の砂漠を、商人とイレギュラーズ一行は進んでいた。
 観賞用の蠍を護衛するという依頼。ただ一行の目的はもう一つあった。
 それは『小指の糸』アイラ(p3p006523)が忘れることのできない相手――お師さまアカシ・ローリイットとの再会を期待するものだ。
 毒蠍を大量に殺して回る犯人――『黒髪で緋と蒼の目を持つ男』。特徴はお師さまのそれと一致している。アイラにしてみれば、直感に頼らずとも分かるというものだ。
 砂漠の熱気に当てられながら、お師さまと過ごした時を思い出すアイラ。
 かけがえのない時間、幸せだった時は突然に終わりを告げた。
 居なくなったお師さまを探して、何度も呼び声をあげたことは忘れられない記憶だ。
(でも、今度は、絶対に――)
 この依頼で出会ったら、絶対に掴まえて見せる。どこにも逃がしてなんてあげないのだと、アイラは固く心に誓う。
 その想いは行動へと結びついた。
 商人達に話をつけて、一行は砂漠の交易路の中で特に大きな岩場を休息地とした。隆起した岩山が迷路のような道を作り、襲撃者の現れる方向を特定しやすい。そしてそれは転じて、襲撃者の退路を予想しやすくするものだ。
「お師さまなら、きっとこの道を使うはず」
 アイラはお師さまのことをよく理解している。きっと使うであろう退路に罠を張り、決して逃がさない心づもりでいた。
「アイラ、休憩しよう。今から気を張っていては、必要な時に疲れてしまうよ」
 そんなアイラに『小指の糸』ラピス(p3p007373)が水を差し出しながら言う。恋人であるラピスは、どこか忙しないアイラを心配していた。
(それに、アイラの師……か、一体どんな人なのだろう)
 恋人の師という存在に、ラピスは気を揉んだ。できれば良い関係を築きたいと考えてはいたが、それは会ってみないとわからないことだ。特に今回に関して言えば、相手は毒蠍を狙う襲撃者の可能性が高い。穏便に、そしてアイラが落ち着いて話すことができればいいが――ラピスは頬を伝う汗を拭いながら、そう考えるのだった。
 アイラとラピスが罠を仕掛けている頃、守るべき商人の荷馬車では、依頼に同行したイレギュラーズが護衛対象である蠍を確認していた。
「ほー、なかなか格好いいじゃないか。この強そうなフォルム、イカすぜ」
 『風の囁き』サンディ・カルタ(p3p000438)が個別にケースに入れられた毒蠍を見て言う。なるほど、大量の蠍と想像するとやや気味悪いようにも思えるが、個別ケースで一体だけとなると、その独特のフォルムは男子の心を擽るかもしれない。
「しかし、毒蠍とはいえ鑑賞用だ。こんなものを大量に殺して回るだなんて、一体どういうつもりなんだろうねぇ?」
 『宝飾眼の執行人』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)がポケットからギフトで小さくした水を取り出し、元の大きさに戻すと皆に配る。その水を喉に流し込みながら今回の事件について疑問を持つと、『熱砂への憧憬』Erstine・Winstein(p3p007325)も同様に考える。
「毒蠍というのがポイントかしらね……アイラさんのお師さまは薬師と聞いていたけれど、蠍の毒を使って薬でも作ろうっていうのかしら?」
「そう単純で、善良な話ならいいけどね……辺り構わず殺して回ってる上に、こうした”商品”にまで手を伸ばしている以上、そう簡単な話にはならないんじゃないの」
 周囲の警戒をしながら『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)が会話に参加する。
 ルフナの言葉は頷ける話だ。見目から善良なアイラの慕うお師さまと目される人物が、善良であるとは限らない。襲ってくる可能性が高い以上、それに対抗しなければならないのは自明だった。
「そうなると、アイラちゃんが心配だね。
 アイラちゃんにとって大切な時は今だと思うの。お師さまと出会えたアイラちゃんがしたいこと、出来るだけサポートしてあげたいな」
 アイラは大切な友人であり恩人であると、『特異運命座標』小神野 陽花(p3p007751)は言う。そんなアイラの為に自分に出来ることをしてあげたいと、気持ちを強く持った。
「そのとおりでありますな。どのような相手であれアイラ殿のために力を奮いたいところであります。それに陸上とはいえ戦は戦。軍人として血が騒ぐであります」
 今回はお国の為……ではないが、自身の経験を積むことや、アイラ、そして仲間の為に力を奮うと約束する『八紘一宇』鮫島 寿彰(p3p007662)が、胸を叩く。軍服の上から砂漠用の外套を纏うのは暑いが、時折吹く砂塵を考えれば、用意して正解だったというべきだろう。
 熱砂の砂漠でイレギュラーズが襲撃者を待つ。
 傍から見れば、それは一時的な休息のようにも見える。否、見えるように仕向けている。
 果たして、イレギュラーズの思惑通りに待ち人はやってきた。
「――この音は……」
 ルフナがその長い耳を澄ませて注視する。
 砂漠に似つかわしくない、機械めいた電子音。整然と駆動音を響かせながら、熱砂を踏みつけ向かってくる。
「練達製のオートマトンか――!」
 サンディが迫る機械を確認して叫んだ。
 この混沌における機械的存在は大凡二つの国が目星にあげられる。生態的な要素や古代文明的要素を含む鉄帝式か、異界よりもたらされた未来科学的創造物たる練達式だ。
 見る者が見れば、その違いはすぐにわかる。
 まさに近未来的フォルムを持った自動人形達が、独特の形状の四つ足を虫のように動かして、商人達の荷馬車を取り囲もうとしていた。
 だが、その襲撃は先の通りイレギュラーズの想定内だ。囲まれきる前に、陣形を広げたイレギュラーズがオートマトンの行く手を遮る。
 敵対者の動きを自動認識するオートマトン達が、警戒し止まる。機械達の狙いは、分かりやすく商人達が抱え込んだ商品に他ならないが、それ以上に周辺を警護する護衛を排除する目的がありそうだ。敵戦力を確認するように、搭載されたモノアイがイレギュラーズ達を用心深く見つめていた。
「――あ……」
 そして、そのオートマトン達の向こうから――黒一色に染まった――人影が悠然と歩いて来た。
「お師さま!!」
 アイラの声が、その人物の正体を告げていた。

●邪魔はさせない
「おや、誰かと思えば……久しぶりだね? いつ依頼になるのかな」
 声を上げたアイラを見つけると、その人影――お師さまである――アカシ・ローリイットはニコリと微笑んだ。
 変わらない微笑み、変わらない姿にアイラは思わず駆け出した。
(お師さま! お師さま!)
 伝えたいこと、想いが沢山あった。
 溢れ出そうになる言葉を声に乗せようとする。笑顔でそれを迎えようとするお師さまに、アイラは飛び込むように走って――瞬間、お師さまの腕が動くと同時に、人影がアイラを守るように割り込んできた。
「くっ……!」
「ラピス!」
 割り込んだ影はラピスだった。
 アイラが「どうして?」と思う前に、ラピスの顔が苦痛に歪む。
「おっと、邪魔が入ったかな?」
 笑顔のお師さまの手には、小ぶりの瓶が握られている。
 それは毒液の入った瓶だった。
 お師さまアカシ・ローリイットは、笑顔で再会を祝うのでは無く、毒によって再会の挨拶に代えようとしたのだ。
「どうして……」
 疑問の言葉を口にしたのはラピスだ。
 アイラから聞いていたお師さまのこと。アイラが慕う人ならば、友好的な関係を結べると思っていた。なのに、アカシはアイラを傷つけようと平気で毒を撒いていた。何故このようなことをするのか、問いただす必要があった。
「何故も何も無いさ。
 俺の研究の為にキミらが守る毒蠍が必要なんだ。研究の邪魔をするなら誰であろうと容赦はしない。たとえそれがアイラ、キミだとしてもね」
 当たり前だと言うようにアカシが笑う。
「お師さま……!」
 悲しみに顔を歪めるアイラに、ラピスが声を掛ける。
「アイラ、君のことは僕が守る。だから、彼へ伝えるべき事を伝えるんだ。君の想いを、全部」
 ラピスの言葉に、アイラが頷く。
 その様子を見ていたアカシは、なにか得心したように目を細め。そして、当初の目的を遂行するようにオートマトンへ命令を下した。
「さあ、いけ。研究材料を奪うんだ」
 動き出すオートマトンに、イレギュラーズ達がすぐさま反応する。
「そうはさせないわよ」
「コイツらの相手は自分達に任せるであります! ラピス殿、アイラ殿は貴殿に任せるであります!」
「ええ、任されました!」
 流れるように戦いが始まる。
 機械な四つ足を高速で動かしながらオートマトン達が、パルスを照射しイレギュラーズを足止めしようとする。
 これに高い反応を見せたのは、サンディだ。
「アイラちゃんにゃ可愛いナイトがついてるしな。お前ら機械人形まで押し寄せちゃ無粋ってやつだ。お前らの相手は俺達だぜ!」
 纏まったオートマトン達にサンディが声を上げ、注意を引く。敵視を高めてしまえば、その間に仲間が倒してくれるだろうという考えだ。
 そして何よりも、サンディが仲間達を先導し勇ましい戦いぶりを見せれば、それだけで周囲の仲間達の戦意が上がる。
 新人もいる現場だ。こうした先輩(アニキ)な動きは、大いに心強いだろう。
「少年! 機械人形の相手も良いが、蠍たちの保護も重要だ。そっちも頼むよ!」
 シキがオートマトンを斬り飛ばしながらサンディに言う。シキの言うように商人達の商品を守るのがこの依頼の一番の目的である。
 敵の出現を待つと言うことは、同時に、敵に囲まれる形を作りやすくなる。イレギュラーズを停滞させながらオートマトン達はどんどんと商品へ近づいている以上対処が必要だ。
「了解、悪いけどしばらく頼むぜ」
 サンディは頷き、やや後退しながら商品の保護へと向かう。
「さてと、それじゃ少年が仕事を終えるまでこいつらの相手をしようか」
 シキが全身の力を右手に集中し、踏み込みと同時に解き放つ。燃えさかる火炎となった力が、商品を取り囲もうとしていたオートマトン達を焼き払う。
 業炎に塗れながらオートマトン達がパルスは照射するが、シキは涼しい顔を見せる。
「痺れさせてその内に……ってつもりだろうけど、私に痺れは効かないよ。
 とはいえ、痛いのはやだなぁ。出来る限り避けていこっか――!」
 回避行動を優先しながら、シキが巨大剣を横溜めに構えれば、刹那の後に紫電が走る。巨大剣より繰り出される一閃が、オートマトン達の装甲を拉げ修復不可能な傷を与えた。
「こっちの作戦通りな展開にはなっているけれど……」
 ルフナが周囲を見渡しながら状況を分析する。
 今回の依頼、集まったイレギュラーズは皆アイラの力になりたいという意思があった。
 その上で、お師さまが現れた場合、どのような作戦を行うかが練られていた。
 そして、イレギュラーズが選んだ作戦は、アイラにお師さまとの会話の機会を与え、その間に周囲の邪魔者を相手取るというものだった。
(普通に戦うより仲間の負担が大きくなるけれど――君のやりたいようにすればいい)
 アカシと対面しながら想いの限りをぶつけているアイラを見ながら、ルフナは思う。
 姪っ子みたいに可愛がっている子のお願いに、やぶさかではないのだ。
 仲間達を回復しながら、ルフナはアイラの願いが届くことを祈る。
「毒と痺れ。組み合わさると厄介だけど、私には効かないよ」
 中衛に位置してオートマトンを狙う陽花。構えた弓の狙いはブレることなく。力を籠めて矢を引けば、集中力が研ぎ澄まされる。
 放たれる精密な射撃は、オートマトンのモノアイを狙い通りに撃ち貫いた。
 陽花は特に仲間との連携を意識しながら、的確にオートマトン達に矢を放っていく。また、オートマトン達が前衛を抜けて商品である蠍へと迫ろうとすれば、大量の矢を放って牽制し、行く手を遮って足止めを成功させる。
「アイラちゃんのやりたいことを、悔いが残らないように」
 戦いの中、声は届かないけれど、想いを言葉にする陽花。
 ――大丈夫、きっと伝わるよ。
 大切だって想いは大事にしなくてはダメだと思う。けれど、もしアイラに危険が迫るなら――陽花はきっと黙ってはいられないだろう。
 大切な友人を心配しながらも、陽花は目の前の敵へと攻撃を続けた。
「練達の機械はいろいろあると聞いていたけれど、まさか悪用までされるなんて……酷い話だわ」
 氷刃を振るいながらErstineがぼやく様に呟く。
 前衛で至近攻撃を主体に戦うErstineの動きは、実に美しくも恐ろしい。オートマトンのパルス照射を回避し、続く格闘攻撃を身体を回転させながら紙一重で躱せば、流れるように魔術を走らせ叩き込む。剣と魔術の双撃を、プログラムで思考する機械人形は対処することができない。為す術なく内部回路をやられショートすると、盛大な爆発音を立てて四散した。
「アイラさんがちゃんとお話出来るように、こちらは抑えなきゃ! 鮫島さん!」
「承知! 吶喊であります!」
 Erstineは同じ前衛配置である寿彰との共闘に積極的だ。経験的に未熟な寿彰をフォローしながら、連係攻撃で次々にオートマトンを倒していく。
「エルスティーネ殿のフォローもあって、自分の力が遺憾なく発揮できるでありますな! 命を大事に、そして全力で戦うであります!」
 砂漠の外套を翻しながら、ダイナマイトキックを放つ寿彰が、着地と同時に大きく踏み込みオートマトンへ肉薄する。背水を背負った気迫は、そのまま力と変わり、握った拳の破壊力を高めていく。
 オートマトンのモノアイが光る。イレギュラーズに何度となく浴びせてきたパルス照射だ。痛みは鋭く、ともすれば神経に電流が流れ痺れを齎すものだが、電撃体制を持つ寿彰には無縁のものだ。
 パルス照射を無視しながら更なる一歩を踏み出して、全身全霊のブロウを叩き込めば、生まれた衝撃波がオートマトンの装甲を大きく歪ませて吹き飛ばした。
「とどめであります!」
 動作不良を起こしたオートマトンへと止めの渾身の一撃を見舞う。駆動回路を潰されたオートマトンは完全に沈黙した。
 一つ、また一つとオートマトン達が停止していく。
 オートマトン達との戦いはイレギュラーズに軍配があがるようだった。

●離れて行く者、抱き寄せる者
 仲間がオートマトン達と戦っている中、アイラとラピスはお師さま――アカシ・ローリイットと戦いを迫られていた。
 アカシは毒蠍を狙うことを止めない。止めたいのならば全力で抵抗してみせるんだ、と昔見たときと同じように笑う。
「お師さま。ボク、伝えたいことがたくさんあるんです――」
 アカシの振りまく毒に咳き込みながら、アイラは健気に言葉と想いを投げかける。
 独りだったときのこと。そして恋人ができたことは勿論、ローレットで友達や仲間ができたことも。
 アイラが独りになってからの想いを、アカシは興味深げに聞いて、しかし首を横に振るう。
「良かったじゃないか。けれど、それは俺には関係のないことだよ。思い出話が済んだのなら、蠍を置いて帰ってくれないかな?」
 興味がないわけではない。しかし、目の前にいるアカシはアイラを必要としていない。その事実を突きつけられたようで、アイラは悲しく瞳を伏せる。
 そうして居る間も、アカシは多種多様な毒で二人を制圧しようとする。
 アイラは悔しそうに歯噛みして、そして決意した。
「できれば攻撃はしたくなかった。
 でも貴方は攻撃を仕掛けてくるから。ボクには盾がいる――」
 身を守る盾。それは恋人であるラピスに他ならない。
 力強い瞳を湛えたラピスがアイラを守るように立つ。彼は、彼だけは決してアイラの傍を離れないのだ。
「そうだ。僕は彼女から離れない。彼女を離さない――」
 永遠に共にいると誓ったのだ。ラピスはその決意と誓いを必ず守る。
 二人の力強い眼差しに、攻撃を続けるアカシは「ふむ」と思案顔を浮かべた。

 状況はすでにイレギュラーズに傾いていた。
 アカシとしても今回のアイラ、そしてイレギュラーズとの遭遇は想定外だ。用意していた毒も尽きようとしている。
 アイラは自分を殺さないつもりのようだが、拘束されれば研究を続けることがまた難しくなる。それでは昔に逆戻りだ。研究が進まなくなるのは大変困る。
 そこまで考えれば、あとは潔く撤退するだけだった。
 噴霧型の毒を放つと、楽しんだ後のように別れの言葉を残した。
「久々に会えて楽しかったよ。でもここまでだ。今日は潔く帰るとしよう」
「ダメ! お師さま、ボクを置いていかないで」
 ずっとそばに居たい。どうして置いていくの――アイラの悲鳴にも似た声に消えかかったアカシは答えない。
 走り出して追いかけようとするアイラの身体が止まる。ラピスがアイラの手を掴み止めたのだ。
「深追いは駄目だよ、アイラ。――僕が君の傍に居る。だから……どうか落ち着いて、アイラ……」
 悲しげに揺れる瞳でラピスとアカシの影を見つめるアイラ。
 毒の霧が晴れると、そこにお師さまの姿はなくなっていた。
 依頼は完遂したが、アイラは残念そうに俯いた。
 ラピスは思う。
 ……アカシ。たとえ彼女とどんな関係にあったとしても――彼女を傷つけたお前を、僕は永劫許さないだろう、と。
 重ねた手を強く、強く、握るのだった。

成否

成功

MVP

ラピス・ディアグレイス(p3p007373)
瑠璃の光

状態異常

なし

あとがき

 依頼お疲れ様でした。

 MVPはラピスさんに送ります。おめでとうございます。

 リクエストありがとうございました。またよろしくお願い致します。

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