PandoraPartyProject

シナリオ詳細

黄昏却人忌憚

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――響く。

●XX年XX組 XXXXさんの話
 ねえ、知ってる? セフィロトの中に或る研究者養成学校の話なんだけど。
 下校時刻を過ぎた後に、居残りをしてる人が居たんだって。
 ……そしたら、なる訳もないチャイムが鳴って、声がしたんだって。
『帰れなくなるよ』って。悪戯かなあ、それとも残ってるのを咎めている先生かな? って思うじゃない。そしたら、違うの。先生たちに聞いても誰も聞いてないんだって。
 だから、翌日も同じように残ったんだって。
 そしたら、声が聞こえてきて―――……え? 続き。

 やだなあ、そんなのないよ。だって、その子、いなくなっちゃったんだもん。


 そこまでの映像を流してから『実践』の塔、塔主の佐伯操は溜息を吐いた。
「まるで私が『召喚される前の世界』での話のようだな」と呟く彼女は所謂、現代日本の出身であり、そうした非科学的な事象には多く携わってきたそうだ。
「さて、諸君を呼び出したのはDr.マッドハッターの様に『茶会をしたい』という訳ではない。
 この映像は私が入手したもので――実の所誰なのかは分かっていない」
 ビデオテープと呼ばれる保存媒体に入っており、それを再生できるようにしたそうだが……ビデオテープには何かタイトルが記入された形跡だけが残されており、それを上から黒く塗りつぶしてあるのだそうだ。
「見て貰った通り、このムービーの登場人物は口から下、胸元迄しか映っていない。
 声とその骨格から男である事は分かるのだが、どうしてこうした内容を録画したのかも謎だ」
 そして、そのテープが『佐伯操様』と書かれて郵送されてきている事もまた謎のひとつである。
「さて、諸君にお願いしたいのは――このビデオの内容通りだ」
 そこまで口にしてから操は曖昧な顔をした。
 実践の塔として彼女が運営管理する『研究者養成学校』のひとつ『ダレット学院』。
 其処では先程のビデオレターの通りに居残りをしていた生徒が忽然と姿を消したのだそうだ。
 非科学的な事象ではあるが生徒達の間では都市伝説が本当であっただとか、放課後のチャイムを聞いたら帰らねば消えてしまうだとか口々に言われているのだとか。
「……勉学にも身が入らねば無用な存在である事には違いないのだが、それでも私の管轄の生徒ではある。
 そして、このビデオレターにも非常に興味があるのも、また、否定はできない。誰が、どのような理由で私にこれを送付したのか。そうした事柄も全ては一つに繋がる筈――だとはもうのだが、尻尾を掴むために協力をしてくれないだろうか」
 其処に犯人が姿を現すかは分からないが……都市伝説を一つ解決することができるならば一先ずは安心だ。
 放課後のチャイムの後、しばらくすると一人きりの教室で聞こえた放送アナウンス。
 二人組で行動し、一方は教室に、もう一方は放送室に。
 放送が聞こえたという連絡を受けて『扉を開けっぱなしにしていた』放送室には誰も居ない事を確認して教室に戻れば教室に待機していた生徒が消えていたのだという。
「ところで、幽霊というのは信じるかね?」
 旅人でそう言う者がいる事を認識しているがそう言う意味ではない。
 混沌世界で『旅人』として存在していない怪異を信じるか、と操は訊いた。
「私は――うん、信じていない訳ではないさ」

GMコメント

 都市伝説って信じますか? 私は割と信じます。冬ですが夏です。

●成功条件
『都市伝説』の解決

●都市伝説
 ダレット学院にて放課後の下校時刻を過ぎたあと教室で一人きりで放送を『最期まで』『しっかりと』聞いた人は姿を消す。

 都市伝説を呼び出す為に生徒はみんな下校済、特異運命座標は一人が囮となって『都市伝説』を呼び出してください。
 都市伝説は教室に呼び出すことが可能です。囮の許に現れます。
 また、それと同時に放送室にも『扉をきちんと占めて居れば、放送中は鍵が開かなくなり』何かが現れているようです。そうした場合、放送室内に居た生徒も放送終了後に失踪しています。
 つまり、教室及び放送室のどちらに対しても何らかの対策が必要そうです。
 都市伝説は通常の攻撃が可能です。何らかの作用にて『必殺』で倒す必要があります。
 どのような姿をしているかは――
(PL情報:とても怖いオバケです。結構きっちり都市伝説的な都市伝説をしています。
 髪のだらりと長い女だとか……そう言うオーソドックスな幽霊です。)

●ダレット学院
 制服またはスーツなどで学生or教員に見える様にカモフラージュしてください。
 何かがあると思い学生が面白がって残ってしまった場合は良い結果にならない可能性があります。
 練達にある研究者養成学校です。『実践』の塔が運営しているそうです。

●佐伯操
 謎のビデオレターが届きました。本当にその都市伝説が身近で起こっているために気になっているそうです。
 ちなみに、ビデオレターが誰からなのか、そして、どうして自分できたのかを解き明かしてほしいとも言っていましたが……今回は始まりに過ぎないという認識もしているようです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 よろしくお願いします。

  • 黄昏却人忌憚完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年03月01日 01時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リュグナー(p3p000614)
虚言の境界
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
ロク(p3p005176)
クソ犬
白薊 小夜(p3p006668)
永夜
遠野・マヤ(p3p007463)
ヲタ活
クリスティーネ=アルベルツ(p3p008006)
偽竜退治の伝説

リプレイ


 ダレット学院の理事室にて、練達三塔『実践』の塔主である佐伯操は8人のイレギュラーズを迎え入れた。
「やあ、よく来てくれた」
 穏やかな言葉を投げかける叡智に満ちた淑女の言葉に『特異運命座標』遠野・マヤ(p3p007463)は頷いた。操がここでイレギュラーズを迎え入れたのはこれからの『学院潜入』を支援するためである。
「佐伯女史が口添えをし、潜入する必要をなくしてくれるのも手ではあるが」
「何、私がそうしては『イレギュラーズが介入しなくてはならない事件が起こった』と知らすようだろう?」
 その通りであると『虚言の境界』リュグナー(p3p000614)は肩を竦めて頷いた。彼女はあくまで学徒達には安全無事に学園生活を過ごし、学業を全うしてほしいのだろう――そう思えば、潜入し『何事もなかったように』というのが一番だ。
「さて、質問はあるだろうか?」
「まずはイレギュラーズを迎え入れてくれて有難う。どうぞ、よろしく」
 穏やかな笑みを浮かべた『女王忠節』秋宮・史之(p3p002233)。ちら、と操を見遣って彼は小さく首を傾げる。ベビーフェイスではあるがキレ者というのが佐伯操博士の外聞だが、目の前に立たれてみれば随分と幼く感じるものだ。
(年上? ちょっとイイかも……)
 史之の感想はさて置いて、操は「ああ」と穏やかに笑みを返しイレギュラーズへと信頼を向ける。
「わたしね、あれが気になる。そう、あれ!
 しっかりしてまじめそうな操さんには縁がないのかもしれないけれど、練達には後暗い歴史を持つ女の子たちがたくさんいるんだよ! わたし知ってる!」
『クソ犬』ロク(p3p005176)が尾をぶんぶんと揺らしながら口にした言葉に操は「ふむ」と小さく呟く。どうやら、ロクが興味を持ったのは黒塗りにされたタイトル部分であった。
「黒塗り、墨塗りされたモノを見ると無性に解読したくなっちゃう古の解析班なんだよォ!
 それが意味のないただの落書きであっても……判読できただけで満足なんだよ」
 遠い目をするロクであるが操は『ある意味で様々なことに造詣が深い』女である。ロクの言わんとする古の黒き歴史を何と無く考えたのか「ああ、ティファや遥の様な……」とここには居ない誰かの古傷を抉っていた。
「それじゃあ仕事を始めましょう。……自前の制服だけれど、学生に見えるでしょう?」
 何時もの通りのクラシカルなセーラー服を纏った『真昼の月』白薊 小夜(p3p006668)は静かに息を吐く。
 ダレット学院の制服を着用した『ホンノムシ』赤羽・大地(p3p004151)は「学生って、本当にソウイウ話が好きだナ」と呟いたのだった。


 早速調査に赴こうと教師に扮した『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)が行ったのは学生たちへの聞き込みだった。
「さて、学校の怪談とは……なんというか、練達とは言えこの世界に起きる怪現象にしては随分と現代日本のニオイがするね」
 聴けば、佐伯女史も現代日本の出身なのだと言う。彼女に宛ててのビデオレターと言うこともある。何者かの思惑が絡んでいそうな気さえしてくるのだが――「故郷が恋しいのは誰だろうね」
 黒髪のウィッグを着用し、しっかりと変装をした『竜にあこがれて』クリスティーネ=アルベルツ(p3p008006)は「まさか自国でこんな怪奇現象が起こっているとは」と呟いた。練達出身である身としてはそうした事象が起こっているならば把握しておきたいものだ。
「他にも目を向けないと駄目だね、視野が狭くなっていたよ。
 いくら怖いからと言っても迂闊――あっ、今の無しで!」
 首を振り、生徒として休憩時間にクリスティーネは生徒たちへと話しかける。変装用眼鏡を身につけた彼女はふと「そういえば、最近登校してきてない生徒が居たよね」と思い出したように言った。
「あー……まあ、勉強についていけなくなったとかじゃないかな」
 そう口にした生徒も階段の話が記憶にあるのだろう。どこか歯切れが悪い。ゼフィラは「そういえば、見なくなった生徒も居るね。……あの怪談かな?」と冗談めかした。
 情報収集を行い、一先ずは空き教室を情報交換の場としているイレギュラーズたち。スーツを着用し、生徒たちに帰宅を促すリュグナーは佐伯女史からの依頼に心を躍らせていた。
「差出人不明のビデオテープ、消えた生徒と怪奇現象。
 成程、情報屋として十分に魅力的と言える謎だ! これが何かの始まりだとするならば――さぁ、解き明かしてやろうではないか」
 そう。何かの始まりの予感がするのだ。ビデオテープを見詰め合って黒く塗りつぶされていた文字を眺めるロクも同じく何かの予感を感じている。
「はい、帰った帰った。顔覚えたからな。用もないのに居残るな」
 ひらひらと手を振った史之に生徒たちはぶつぶつと言う。こんな先生居ただろうかと反応する生徒には「酷いな? 歴史と生活指導を教えている先生を忘れるなんて」と彼は冗談めかす。
「いやいや、せんせーだって分かるでしょ? 遊びたい年頃じゃん」
「何? 若すぎる? 悪かったな童顔で、内申下げるよ?」
 げえ、と生徒は言った。早く帰らなければ放送室の怪にやられちゃうと言って逃げ出す学生を見れば『学校だ』と大地もぼんやりと感じる。
(俺の通ってた学校じゃあ、その手のオカルトは流行らなかったけど。しかシ、実害があるなラ、流すわけにもいかないよナ)
 すっと近付いてから彼は「あの噂っていつカラ流行ってル?」と問いかけた。
「あー、いつからだっけ……ほら、A君が」
「そうそう、S君が不登校になってー」
 佐伯女史へとビデオレターが届いた時期とそれは合致しているようだ。放送室の鍵は放課後は何時も保管されており、日中は放送部が使用することがあるということもゼフィラは調査済みである。
「都市伝説、やっぱりこういうゴシップはドキドキするわよね。
 退屈な授業の合間に友人と噂話で盛り上がる、これがそんな唯の噂話であればよかったのだけれど。こうなってしまったからには斬って捨てましょう……斬れるわよね……?」
 顔を上げた小夜にマヤは曖昧な顔をした。「幽霊って斬れるんだろうか」と呟いたクリスティーネの一言に小夜も曖昧な顔をするしかない。
「学院で使用されてる掲示板があるみたいなんだけど、そこでも都市伝説の話は出回ってたわ。
 逆に『ダレット学院』以外じゃそういう噂が無かったみたいなんだけど……」
「『裏掲示板』ってやつだね!」
 ロクの言葉にマヤが頷く。小夜は「学園だけなら放送室にも調査に行きましょうか」とゆっくりと足を向ける。
 依然として生徒が多い廊下を歩みながらマヤは友人に話しかけるように足早に生徒へと近付いた。
「偶然先生の話を聞いてしまったんだけど。今日は緊急の見回りがあるそうよ。
 放課後残っているのが見つかったら大量の課題が出されるんだって。え? 私? 勿論忘れ物を取ったらすぐ帰るわよ」
「さ、行きましょう」
 向かう先は放送室であれど、それを悟られぬように歩く小夜にマヤは頷いた。教師に扮するイレギュラーズ、生徒に扮するイレギュラーズ。その両者からの言葉を総合し、生徒たちは足早に学院を後にするのだった。
「貴様、いつまで残っているつもりだ? ――早々に帰るが良い」
 溜息を混じらせたリュグナーに黒い詰襟を着用していた少年が「大丈夫大丈夫」と小さく笑う。
「忘れ物をとりに来ただけだから。それじゃあ、またね? センセー」
 にんまりと笑って足早に去っていく少年の背を見守ってからリュグナーは異様な気配を感じていた。


「――ということで、黒塗りにされたタイトルが気になるよ! 実際に記入されてるなら絶対解読できるよ!?」
 理事室で貸与された制服を着た完全なる人間態のロクはぐぬぬと言った。練達では名の通ったほうの愛らしい獣種のロクの完全なる変化を見て操は「帽子屋が知れば悔しがるだろうね」と冗談めかす。
「まずはカメラ! メカ子ロリババア! ビデオテープのタイトルを撮影して! そして黒塗り部分を拡大! うーん……見えない?」
 ロクは悔しかった。明度とコントラストを上げ下げしてチェック。それでも見えないのだ。悔しい、非常に悔しい。
「タイトルを書いた直後に同じ成分のインク、筆圧で黒塗りしてない限り結構読めーーぐぬぬぬ! 鉛筆での転写も駄目!? 最後は心の目で見るんだよ!」
「ふむ。そこまでしたのなら私も手伝おうか。一先ず、放送室に行ってみては?」
 操にロクは頷いて、放送室へと向かう。先んじて調査に向かった小夜たちの様子はどうなのだろうか。一先ずは合流してみれば分かるだろう。

「誰かが放送する生放送形式ではなくて特定の媒体を自動再生する定時放送だったりしないかと思ったのだけれど……私は目が見えないから魔力の流れでみて――それが気になるわ」
 小夜が指差したのは放送室に存在する古びたテープレコーダーであった。リュグナーがそれを見ても「古びた以外に遜色は無い」ものに思われる。
「何かがセットされているわけでもなさそうだな」
「うんうん。オバケ……オバケ本当にいるのかな。がんばれ教室班!」
 そう励ましながらぴたりと閉じられた放送室に何かの気配を感じてロクがすくりと立ち上がる。
 それは小夜も同じだ。魔力の気配が変わったと彼女が告げたそれと共にリュグナーは『落ちていなかった手帳』を見つけて「どこから」と呟いた。
 ジジ――
 何処からか音がする。そして、放送室の扉が閉じられる。異様な気配を感じながらゼフィラが「これは?」と呟くと同時に、そこには女の姿が浮かび上がった。
「オバケーーーー!!?」
「えっ?」
 ロクの声に魔力が動いているように見えていた小夜は振り替える。本当に幽霊なのか、それとも……。落ち着き払ったリュグナーが目配せひとつ、ゆっくりと彼女へと声かける。
「貴様は何者だ? なぜ『帰れなくなるよ』等と警告を挟む?」
 リュグナーがそういうと同時、小夜が一歩踏み込んだ。しかし、その剣が触れるか触れないかのタイミングでブツリと音がする。
(魔力の気配が消えた……?)
 小夜が顔を上げれば、リュグナーが離していたはずの『存在』の気配が僅かにそこに復活する。
「さて、君が放送を流しているのかな?」
 長い黒髪の女が立っていると告げるゼフィラに小夜は「幽霊は斬れないのね……」と呟く。返事は無く――ゼフィラの言葉に女の気配が僅かに揺らいだ、首を傾いだだけだ。
「怪談、というのも嫌いではないんだが、些かこの世界の事象とは違うニオイがするね。どうせなら他にも怪談が無いか聞かせてくれないかな?」
 そして、首をふるふると振るだけだ。それが何者であるかは分からない。しかし、彼女から何か聞きだすことは出来ないのだろう。
 もう一歩、その存在を認識した小夜が一撃放てば、女の姿が掻き消える。
 残ったのは僅かな魔力の気配と、古びた手帳だけであった。


 一人きり、教室の椅子に腰掛けて大地は周囲漂う霊魂へと語りかける。学校は平和なところではあるが『学校に未練』があるものなら居るだろう。
「俺、転入生だからサ、まだ何もわかっちゃいねぇんダ。この学校の事、何もかモ、よぉく知っておきてぇんだヨ。……頼むよ、先輩。」
 静かにそう言葉にすれば霊魂はそっと彼の言葉へと返した。もう直ぐ、この教室には騒ぎの元が来るのだろう。
 心して待てば、放送が響く。そして、その音に反応したように浮かび上がったのは『放送室で見られた黒髪の女が狂乱』する様であった。
 放送を聴き、史之が教室へ飛び込めば、それに続きマヤとクリスティーネも一歩踏み出す。
「怪談以下のくせに偉そうだね。おまえごときにくれてやる真名はないよ」
 史之のその言葉にがばりと振り向いた黒髪の女の髪が広がった。放送室側ではリュグナーたちが女の相手をしているころあいだ。
 その姿を見てクリスティーネが視線を逸らす。あまりにもホラー然とした女に気後れしたのもある。マヤも落ち着いてはいるが内心、その姿に驚愕を禁じえない。
「――――!」
 声を発したのだろう。その声が攻撃のように周囲へと広がった。大地の傍に居たはずの霊魂が掻き消える。史之が惹きつける様にその女を見るが、それは『映像』のように不明瞭だ。
(ビデオレター……映っている生徒は多分シロと見てもいいだろうし、操さん直轄の生徒なら操さん宛と知って撮影に応じたなら彼女に向けた口調で話すはずだ)
 史之の考察は『誰に送るかの情報を伏せた撮影者』が存在するということだ。郵送されてきたという以上、都市伝説を意図的に発生させているようにさえ思える。
 集荷時間帯や消印、投函日を確認したときに得れたのは佐伯操宛にだけそのビデオレターが発送されていることだ。つまるところ、彼女を起因にこの学院で何らかの『都市伝説事件』を引き起こさんとしている何者かが存在しているということだ。
 史之の眼前にマヤが飛び込む。黒髪を振り乱した女の『幽霊』へと一撃投じたマヤが引きつった表情を浮かべたかと思えば大地が「酷い顔だナ」とぼやく。
 マヤと大地の前でにたりと笑った女は『裂けた口をぐぱりと開いた』。
「全く、幽霊にしてももう少しましな顔くらい出来るでしょう?」
「はは、確かにね。幽霊というよりも人為的に用意された都市伝説に思えることが気味が悪いけれど」
 何があるかわからない混沌世界だからこそ、そうした事象が起こる事だってあるだろうとは史之も大地も、マヤでさえ認識していた。練達出身であるクリスティーネからすれば『自身の出身国』にこうした存在が潜んでいたことが驚愕ではあるのだが。
「さ、お膳立てはお終いだ。幕引きは任せたよ」
 一撃投じたそれに頷いたのはマヤ。大地が一撃放ち――そしてそれにあわせて一刀、神様になんて祈らぬと刃の先に救いを求めるように皮肉を放った。
「……それにしても、あんないかにも見た目だなんて、心臓に悪過ぎよ。
 私、謎は大好きだけど、ホラーは苦手なんだもの」

「ああ、お帰り。先程の解析が終わったよ」
 理事室で待機していた操はロクへとビデオテープを差し出した。塗りつぶされた文字の解析完了なのだと差し出されたそれを見てからロクは首を傾げる。
「ええっと……『黄昏却人忌憚』……?」
 その言葉がどういう意味か分からない。どこか薄気味悪さを感じてから、史之は操を見た。
「操さん、これ焼却処分したほうがいいよ。翌日には同じのが届いてるかもだけど……」
「……ああ、それも試してみようか」
 どうしたものかな、とビデオテープをゴミ袋に入れた彼女は『練達の外で処分して欲しい』とイレギュラーズへと求める。
 何と無く居心地の悪さを感じながらマヤは「それじゃ」と操に頭を下げた。
 彼女たちに聞こえたのは響くはずの無いチャイムの音だった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でしたイレギュラーズ!
 ジャパニーズホラーって後からぞおっとするものですよね。私も学生時代はお化けいるんじゃない?とか思いながら学校を歩いてました。
 さてさて、都市伝説はいろいろと曰くつき……コレから何かあるかもしれませんね!

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