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シナリオ詳細

逆光騎士団とバイラム魔女裁判

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●魔女を名乗る者は魔女だ。魔女を否認する者も魔女だ。
「聖女『逆光』を魔女と認定する。処遇は火あぶり。
 彼女の洗礼を受けた騎士二十二名とともに柱にくくり聖なる火にくべよ!」
 そんなはずがない。あの人は助けてくれた。なにかの間違いだ。叫ぶ民衆を押しのけるように、兵士たちが槍を突きつける。
 バイラム牧師は手をかざし、高らかに述べた。
「これは聖なる魔女裁判である。反対する者もまた、魔女である」

 信仰と正道の街ノフノ。
 『我々は民の自由と意志を尊重し、罪をまねく心を赦し、悪を憎む心を赦し、未熟なる我らの学びと育みを尊びます』という祈りにあるように、この街のワンソン教会と騎士団は常に民のため戦い、民のため傷ついた。
 されど世が往々にしてそうであるように、主軸のゆがみはあらゆるものへと波及する。
 例えばかつて聖都フォン・ルーベルグで起きた月光人形騒動。七罪の大魔種ベアトリーチェによって差し向けられた騒動は教会のみならず様々なな人々を混乱させ、そして狂気に陥れていった。
 さらには執政官と枢機卿そして異端審問官のによる内側からの破壊は都のみならず国全土に少なからぬ傷跡を残したと、言っていいだろう。
 ここワンソン教会および逆光騎士団においても、それは例外ではない。
 彼らの息がかかっていた者や、月光人形事件によって狂わされた者たち、そして最終決戦に赴き帰ってこなかった者たち。
 ままならぬ欠員によって、教会の力は極めて弱体化していた。
 そうした折りに街へ補充されてきたのが、バイラム牧師であった。
 彼はそつのない仕事ぶりと誠実な振る舞いによって人望を集め、民衆の支持を集めていたが、それは最初のうちだけだかった。
 人員不足によって影響力を失った逆光騎士団及びノフノ教会から裁判をはじめとする権力を実質的に奪い、街の支配を始めたのだった。
 その方法が……。

●逆光騎士団を救い出せ
「魔女裁判、っす……」
 逆光騎士団の心配騎士、『茨』の称号をもつ騎士プリクルは粗末な馬小屋の中で息も絶え絶えに言った。
「奴は実権を持つ人々を次々に魔女として告発して、ねつ造した証拠や買収した裁判官によって次々と処刑していったんです。
 最初は良識ある人々が異を唱えましたが、人望のあるひとから純に処刑されて、抵抗する人は徐々に減っていきました。
 ジブンたちはバイラムの横暴な裁判をやめるように訴えつづけましたし、時には武力的な抵抗もしました。けれど、つい先日……。
 聖女『逆光』様の処刑が、きまったのです」

 聖女をはじめ先輩騎士たちが次々と捕縛されるなか、プリクルは先輩たちにかばわれる形で街の外まで逃げ切ることができたという。
 だが彼女一人で現状を打開することなどできない。
「このままじゃバイラムに街が支配されるっす。
 街の人たちの平和な暮らしを、恐怖におびえることなく眠れる夜を、未来を信じて子を成せる日々を、ジブンたちが守ってきたそんな『当たり前』が……火にくべてもやされるっす」
 そんなことは許せない。
 プリクルの目には、燃える聖義の炎があった。
 そして、騎士に任命される際に授与されたという命と同等に大事な剣を、プリクルは差し出すように水平にかざした。
「ジブンのもってる全財産をあげるっす。
 聖女様やセンパイの騎士を助けてくれなんて言いません。
 ジブンの命だっていりません。
 ただひとり。
 バイラムを、討ってください」

GMコメント

■オーダー
・成功条件:バイラム牧師の死亡
・オプションA:聖女『逆光』の救出
・オプションB:逆光騎士団の救出
・オプションC:『茨の騎士』プリクルとともにこの事件を解決すること

 魔女裁判の悪用によって街を支配しつつあるバイラム牧師。
 逆らう者たちは次々に処刑され、いまや残るは逆光騎士団のみ。
 しかしその騎士団も今、処刑されようとしています。
 ただひとり逃げ延びたプリクルの願いを……いや依頼をうけ、ローレットはノフノへと突入することになりました。

●シチュエーションとオプション選択
 今回の依頼は『成功するだけ』ならゴリ押しでなんとかいけますが、各種オプションを達成するには難易度が段階的に上昇していきます。
 ですがうまくこなすことができれば、ヒロイックな活躍もゆめではないでしょう。

・シチュエーション
 聖女を中心に、騎士団全員が非武装状態で柱にくくられ、今まさに火あぶりの刑にあおうとしています。
 民衆たちは集まってはいますがどうすることもできず、威圧的に槍を向ける兵士たちを前にただ黙って見ていることしかできないようです。

 皆さんはこの現場に、刑罰の火が放たれる直前のタイミングで乱入することができます。
 乱入の仕方はある程度自由に決めてもらってかまいません。
 できないことと言えば大規模すぎることや大量の人員を要することや、事前準備が長くかかりそうなものくらいでしょうか。そこそこ咄嗟にできそうなことを、手持ちのアイテムを持ち寄ったりスキルやギフトを活かしたりプレイングの持ち味をぶつけたりして実行してみてください。

・聖女『逆光』
 目を聖なる黒布で覆ったシスター服の女性です。
 一説には視力を失った代わりに魂の色が見えると言われています。
 そのためバイラムの邪悪なたくらみを見抜き告発しようとしましたが、逆に魔女疑惑をかけられ処刑されようとしています。
 非常に毅然とした態度をした、強い女性であるといいます。
 戦闘能力がどれほどあるかはわかっていません。

・逆光騎士団
 プリクルの先輩騎士たちです。
 今は武装を解除させられ柱にくくりつけられています。
 といっても(皆さんがそうであるように)装備を剥かれてもスキルで戦闘が可能なので、ステータスに不安があるというだけで案外戦力になります。
 聖女もそうですが、彼らを柱にくくりつけたままにしておけば(バイラムたちはわざわざ先に殺す意味が無いので)放置してくれるでしょう。
 ただし戦力に加えて一緒に戦いたい場合は、彼らを事前に救出する必要があります。

・『茨の騎士』プリクル
 今回の依頼人です。
 彼女を現場に連れて行くか、おいていくか。そして連れて行くのであればどのくらい彼女と関わるか(ないしは絡むか)といった所は相談で総意を決めておいてください。全員ないし過半数が承認している状況でない場合、彼女は馬小屋においていくことになります。

 二十代の金髪ベリーショートの女性で、茨をモチーフにした鎧をまとっています。
 高いHPと【反】能力と自己回復という個性によって、味方をかばって逆に敵のダメージを稼ぐという戦法が得意です。
 地味に『名乗り口上』を持っていますが総計命中値が22くらいしかないので彼女ひとりでヘイト戦法に頼るのはムリがありそうです。
 逆に言うと、誰かが高い命中値からヘイトを集めて彼女にかばわせたり、厄介なメインアタッカーを突っ込ませつつ彼女にかばわせたりといった連携プレーで光ります。

●エネミーデータ
・兵士たち
 バイラムに忠実な兵士たちです。
 ですが、一言も喋ったところを見たことがないし全身を鎧で覆っているので非常に不気味です。なんだか話が通じそうにないという所だけはすごくわかります。
 基本装備は槍。
 とにかく『たくさん』いるため、これを突破するのはすごく難しいでしょう。
 一応破れかぶれで真正面から強行突入してどかどか戦ってなんとか一人バイラムの元までたどり着いてワンチャン殺せるかも、といった具合です。その場合味方の損害がだいぶ大きくなります。

・バイラム牧師
 実はどこから来たのか謎の牧師です。
 国から派遣されたという書類がありますが、それらをちゃんと精査する前に一連の事件がおきあやふやになってしまっています。
 戦闘力は未知数。『たぶん強いはず』とプリクルは言っています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • 逆光騎士団とバイラム魔女裁判完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年01月28日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

グドルフ・ボイデル(p3p000694)
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
岩倉・鈴音(p3p006119)
バアルぺオルの魔人
シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵
アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌

リプレイ

●騎士の覚悟と
 捧げられた騎士の剣。逆光教会のエンブレムが刻まれたそれを一度手に取ってから、『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)は再びプリクルの手へと戻した。
「いいねェ、気に入ったぜ嬢ちゃん。だがな、ただ殺すだけじゃ面白くねえ。どうせなら、聖女も騎士団もまるっと救ってハッピーエンド──だろ?」
「山賊センパイ……」
「それにンな剣貰ってもうっぱらえねえしよ。それよかバイラムってやつの身ぐるみでもはいだ方が儲かりそうだぜ。ゲハハッ」
 みすぼらしい剣を肩に担ぎ、汚らしく笑って見せるグドルフ。
 彼にさす光に、プリクルは聖人のそれを見た。
 そばにより、かがんで肩を叩く『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)。
「プリクルちゃん、逆光騎士団の人達が守ってくれた自分の命をいらないなんて言わないで」
 この中では最もプリクルと付き合いの長い焔である。
 彼女の真面目さや心の弱さを、焔は理解していた。
「聖女様も騎士団の人達も、それにプリクルちゃんも、皆で生きてまたあの街に帰らなきゃ!
 あの街には、これからの天義には逆光教会は必要だろうし
 それに、プリクルちゃんは何度も一緒に戦った仲間だもん、助けるのは当然だよ! 一緒に助けに行こう!」
「一緒に……自分も一緒に行って、いいんですか?」
「んん……」
 『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は腕組みをして首をかしげ、目をつぶって考えるようなそぶりをした。
「騎士団のことはよく知らないわぁ。でもこの街を思っているのは解る。
 だからプリクルちゃん、無謀な事をしないって約束して。
 絶対にバイラムを討つし、聖女達を助けるから。
 貴女はこの街の為にも、生きなきゃいけないから……」
 死が解決することは、確かにあるかもしれない。
 しかし生きることで得られることが、もっと確かにあった。
 アーリアはそれを、深く知っていた。
 どん、と胸を叩いてみせる『虹を齧って歩こう』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)。
「そうです。その命を投げ出して戦おうなんて絶対思わないで下さいね。
 どうか、死ぬ覚悟より、生きる覚悟をして下さい。それが騎士道というものです」
 堂々と言われて、プリクルは目尻にたまった涙を指で拭った、
「そう……そうっすね。ジブン、頭に血が上ってたッス。一緒にバイラムを倒しましょう!」
 ウィズィニャラァムたちに手を引っ張られるようにして立ち上がり、肩を叩かれるプリクル。

 ……そんな光景を、『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)とその車椅子を押す『放課後のヴェルフェゴール』岩倉・鈴音(p3p006119)は興味深そうに眺めていた。
「事前の説得は成功した、か。あとは突入方法をどう組み立てるかだね」
「目指せミッションコンプリート? けど、ちょーっとだけ引っかかるんだよねえ……」
 鈴音は眼帯の表面を人差し指でなぞりながら、なにか深く考えているようだった。
「事前に処刑場の様子を見てみたけど、兵士の数はかなりのものだったヨ」
「ボクたちの指揮で味方を強化しても突破できないほどに?」
「うーん……」
 車椅子のハンドルから手を離し、シャーロックハンドをつくる鈴音。
 シャルロッテは唇の片端だけで苦笑した。
「分かっているよ。『たった九人で全て殲滅しきれる』ならこんな依頼にはならないってね」
 味方の強化を得意とする鈴音とシャルロッテ。ローレットの中でもわりと珍しい指揮特化型のイレギュラーズが二人揃ったという状況は、捕まっている騎士団や聖女を助け出してともに戦った方が効率的だ。味方が多ければ多いほど有利が倍化していくのがこの二人なのだから。
「けど、ボクらの作戦は『一点突破でバイラムを抹殺。その後に聖女たちを救出』だったよね」
「アタシはそのほうが効果的だと思ったよ。処刑を指示する人間を消せば、慌てて処刑を早められる危険も減るってネ」
「うん……うん……どうだろう」
 シャルロッテもマネをしてシャーロックハンドをつくった。
「もしただ殺したいだけなら、わざわざ公開処刑なんかしないよね。暗殺してから罪状を掲げて支持を得れば良い。正式な処刑手順を踏む必要が、彼にはあったんじゃないかな。救出を仮に先に行ったとしても処刑担当者が二十人以上いるんでも無い限りは……おっと。いけない。憶測で断定するところだった」
 だめだねこういうのは。と首を振るシャルロッテ。
 鈴音はハンドルを握り直し、仲間たちのもとへと歩いて行った。
 歩いて行く二人を横目に、『パンドラの匣を開けし者』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)は『アウトレイジβ』に弾を込めていた。
(変わらないな……何時だって変わる事は無い)
 彼がなにを思っているのか。なにを背負っているのか。余人にはわかるまい。
 そしてあえて理解をせぬまま、『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)は胸に手を当てて深く呼吸を整えた。
 いつでも歌う準備はできている。
 そこがこの世の果てや地獄の淵であったとしても、どこでも笑顔でいられるのが、彼女の才能(もしかしたらギフトのようなもの)なのだろうから。
「バイラム! 自分勝手な牧師だね。
 都合に悪い事を全部押し付けて悪事を働くなら、アウローラちゃんは赦さないんだよ!
 アウローラちゃんに出来る事を全力でやらせてもらうよ!」
 にっこり笑って、アウローラは七色にラインを発光させるマイクを握りしめた。

●偽られた魔女裁判
「聖女『逆光』を魔女と認定する。処遇は火あぶり。
 彼女の洗礼を受けた騎士二十二名とともに柱にくくり聖なる火にくべよ!
 これは聖なる魔女裁判である。反対する者もまた、魔女である」
 アストリア一派によって怪我されたといわれる聖堂より回収されたという高名な聖書に手を突いて、バイラム牧師は高らかに宣言した。

「――さて」
 小さく手を叩くシャルロッテ。
「牧師の蛮行を、ゆがめられた魔女裁判を破壊しよう」
「というわけで、頼んだよ?」
 シャルロッテと鈴音に後押しされる形で。
「まっかせて――!」
 アウローラは民家の屋根へとよじ登り、勢いよく走り出した。

「その裁判、中止だよ!」
 勢いをつけた跳躍とともに放たれた七色の光線群が、槍で民衆を威嚇していた兵士たちへとたたき込まれていく。
 武装した兵士たちすべてを一撃の下に確殺しうる……とまではいわないが、そのへんの市民であれば一瞬で息の根を止めうる衝撃であった。
 そんな激しい衝撃から身を守りつつ、着地したアウローラへ槍を向け迎撃の構えをとる兵士たち。
 が、しかし。
 アウローラの手の中にはアミュレット『ゼピュロスの息吹』がさがっていた。
「アウローラちゃんのステージは、まだ終わってないよ!」
 ぎゅん、と自らの時間をねじまげ、発射されたはずの七色光線をマイクへと戻すアウローラ。
 兵士たちの一部が目を見開いた、その瞬間。
 さらなる七色光線が兵士たちめがけて発射された。
 きわめて強烈な威力と命中精度によって放たれた二発目の砲撃に、さすがの兵士たちでも吹き飛ばされた。
 肉体が、というより肉体の一部が飛び、回転しながら散っていく。
 この初撃に全てをかけた作戦である。恐ろしく高いファンブル率をすり抜けたことは、アウローラの笑顔が呼び寄せた奇跡だったのだろうか。
 砲撃がおこったのと同時に、彼女に引っ張られる形で飛び込んだアーリア舗装された石煉瓦の道に着地。片手をついた状態で顔を上げる。
「なんだ貴様らは! 魔女の手先か!」
 わざと民衆に聞こえるように声を張り上げるバイラム。
 アーリアはおどけるように肩をすくめ、片眉をあげるコミカルな表情をみせた。
「この国にいて私っていう魔女を知らないなんて、随分モグリじゃない? 気に入らないわぁ!」
 手の甲から放った投げキスが空間を渦巻き状にねじまげ、兵士に激しい乱れを引き起こさせる。
「さあいきますよプリクルさん!」
 ウィズィニャラァムは軽量化された巨大テーブルナイフこと『ハーロヴィット・トゥユー』を右手に握り、左手を片目へかざすようにして走り出す。
「了解っす。茨の騎士プリクル! 参陣ッス!!」
 剣を構えて一緒に突撃するプリクル。
 最初の砲撃に驚いてワッと散った民衆の間を駆け抜けて、咄嗟に槍を構える兵士たちの最前衛――を、あえて飛び越えた。
 敵陣ど真ん中に陣取ると……。
「バイラムっ! お前の独断は、独裁は間違っているっ! 我々はその悪を正しに来た、正義の使者だ!」
「魔女め! 魔女が正義を語るな! その女を殺せ!」
 反転し、取り囲むようにして槍で一斉に攻撃をしかける兵士たち。
 ウィズィニャラァムは繰り出された槍を回転によって平等に打ち落とすと、プリクルへと目で合図した。
「――!」
 プリクルは強力なカウンターアタックによって兵士たちをすべて薙ぎはらっていく。
「やあやあ、よくやってくれたねプリクル。ここからはアタシをかばって貰うよ」
 シャルロッテの車椅子を猛烈な速度で押しながら追いかけてくる鈴音。
「できる限り密集して兵士を引きつけるんだ。いいね?」
「離れた兵士はどうするっすか」
「大丈夫。あっちはあっちで……」

 突如おこったプリクルたちの乱入に、聖女『逆光』は息をついた。
「一人でも生きていればと思ったら、あの子……仲間を増やして戻ってくるだなんてね」
 逆光教会の紋様が刺繍された布で目隠しをした尼僧服の女性である。だが布越しに全てが見えているようで、プリクルたちの様子にちいさな口をわずかにほころばせた。
「……」
 そんな聖女『逆光』とそれに連なる『逆光騎士団』はいま、柱にくくられる形で、これから火に炙られる準備が整えられていた。
 兵士の一人がたいまつを持ったままバイラムの指示を待つ……が、その横を駆け抜ける形でグドルフが兵士たちへと突っ込んでいった。
 やや開かれた兵士の群れを、剣による強引ななぎ払いによって一気に倒していく。
 転倒した兵士が後ろの兵士にぶつかり、軽くドミノ倒し状態となる。
「聖女サマと騎士団の癖に山賊に助けられちまうたあ、逆光騎士団の名が泣いちまうねえ?」
 どこか挑発的に笑って見せるグドルフ。
 逆光騎士団の面々はその顔を見てシニカルに笑い返した。
「我々のことはいい。それよりもバイラムを」
「当然」
 グドルフは壇上のバイラムに指を突きつけ、『今から殺しに行くぞ』といったようなプレッシャーをかけた。
「救われたいと願った奴らを掌の上で転がして、邪魔者は力と権力でブッ潰して。さぞ気分が良いだろうよ。
 だがな、思い通りにならねえのが世の常だぜ。分かるか? 次はてめえの番だってんだよ。
 この山賊グドルフさまが、てめえの地位も、カネも、命も──全部、理不尽に奪ってやるぜッ!」
「――ッ!!」
 歯がみし、聖書を乱暴に叩くバイラム。
「何をしている。押し返せ! 頭数の有利を示せ!」
「変わりはしない、都合の悪い物を抑え込み、詭弁を垂れ流し事を為す。
 そしてそれを見るだけの民……反吐が出る」
 そんな兵士たちへと飛び込み、『名乗り口上』を使用するラルフ。
「よく見ておけ、望む未来を手にする為には何時だって戦うしかないという事を!
 そこに正義も悪も無い、力でなく踏み出す意志だ、それが全てを決める!」
 引きつけた兵士たちへ向け、『レイ』による無慈悲な反撃を仕掛けていく。
 そして、すぐそばで戦うグドルフに小声で呼びかけた。
「我々の役割はこの有象無象を倒す事ではない、一秒でも長く、多く引き付ける事だ」
「分かってるよ。こんだけのクソ兵士どもどっからかき集めたかしらねえが、バイラムの周りを固められちゃ面倒だ」
「そういうこと。こっちは任せたよ!」
 よろめく兵士の肩を踏み台にして飛び越え、焔は炎から鍛えたという槍『カグツチ天火』を一閃。
 空に燃え上がる炎が、兵士たちを熱風によってなぎ払っていく。
 最後の一列を払い倒し、焔はバイラムの立つ壇上へと登った。
「なんでこんなことをするの! 逆光騎士団の人達は悪い魔女と戦ったり、皆を守る為に活動してるのに!」
「魔女の主張は嘘である。我々を惑わし魔道に染める企みか。ことごとく燃え死ぬがいい!」
「それはこっちの台詞――じゃないけど!」
 ぐるんと回した槍を構え直し、焔はバイラムへと突撃する。
 聖書を突き出し、聖なる障壁を展開するバイラム。
 炎を吹き出す槍が、障壁へと食い込んで金切り音をあげた。

●黒い天球儀
「後少しだけ無茶をする……さあ、この悪党を正義とやらで砕いて見せろ! 私は正義も悪も憎悪する!」
 『暗天魔弾』を乱れ撃ち、兵士たちを迎撃するラルフ。
 その一方ではグドルフが剣を振り回し、ラルフに集中攻撃を仕掛ける兵士の群れを次々と切り払っていった。
「チッ、数が多すぎるぜ。俺がそばにいてよかったな。えぇ?」
 軽口を述べながらも兵士の槍を打ち払うグドルフ。
 頑丈さはトップクラスだが、取り囲まれて行く手を阻まれる状態になれば浮き駒になってしまう。敵を引きつけているラルフのそばで担当する兵士を分散させるのが、総合的にみて効率的な戦い方だった。
 一方。
「これで、メチャクチャな裁判も終わりよぉ」
 アーリアの放った『プッシー・キャットの我儘』がバイラムの展開する聖なる力の渦を取り払っていく。
「ま、魔女め……!」
「そうよぉ。本当の魔女を、知らなかったのかしらぁ?」
 挑発するように笑いながら、アーリアはさらなる呪いをバイラムに打ち込んでいった。
「アウローラちゃんの唄に聴き惚れて!」
 側面に回り込み、バイラムへむけて強力な『ダストトゥダスト』を発射するアウローラ。
 至近距離から解き放たれた七色の光線群が爆発し、バイラムを光で包む。
 が、バイラムはそんな中から手を伸ばし、アウローラの首を掴んだ。
「魔女め、魔女め魔女め魔女め魔女め魔女め魔女め魔女め魔女め魔女め!」
 自らの肉体からはなった魔力をメチャクチャにたたき込み、アウローラをけいれんさせる。
 が、それ以上はなかった。
 焔の槍がバイラムの肉体を貫いたからである。
「ぁ……」
 白目をむき、よろめくバイラム。
 焔が槍を引き抜くと、バイラムはそのまま壇上から転げ落ち、兵士たちの間へと倒れた。
 固まった表情が動くことはなく、絶命したことが見て取れる。
「終わったね」
 君たちはどうするの。と、兵士たちへ槍を向ける焔。
 兵士たちは転げ落ちたバイラムへ一斉に振り返った後。
 全員一斉にこう述べた。
「「『魔女め』」」
 途端、バイラムの死体が爆発した。

●エピゴウネ
 血肉がはじけ骨が砕けて飛んでいく。
 眼球や脳だったものがそれと分からぬほどに細分化され噴水のように吹き上がった。
 が、その中から。
 どろりと固まったゲル状の血液めいた物体が、空中にふわりと浮かんだ。
「……?」
 目を細める焔。
 ゲル状の血液。もとい『血の怪物』のなかからぽこんと浮かんだ眼球がうごいて、聖女『逆光』を確かに見たその瞬間、ゾッと背筋に悪寒が走った。
「避けて!」
 と叫んだのはアウローラだっただろうか。
 矢のように素早く飛んだ血の怪物は『逆光』の顔面へと張り付き、眼孔や鼻を通して侵入。直後ぶわりと吹き上がった聖なる光が、すぐそばで拘束されていた逆光騎士団へとまるで小虫の群れが巣へかえるかのように侵入していく。
「あ゛、あ゛あ゛っ……!?」
 柱に拘束され抵抗できない彼らはびくびくとけいれんしたのち、眼球を壊して血をだくだくと流し始めた。
 そして。駆け寄った兵士たちによって彼らの拘束が解かれる。

 眼球のない両目からたえまなく出血しながら、逆光は手をかざした。その手には、バイラムが持っていた聖書が握られている。
「魔女め! 魔女プリクル! 私たちをたぶらかし街を乗っ取るつもりですね!」
「魔女め」
「魔女め」
「「魔女め!!」」
 兵士立ちと騎士団、そして聖女逆光が一斉に襲いかかってくる。
 状況を即座に理解したウィズィニャラァムは、すぐそばにいたプリクルの手を引いて走り出す。
「この場にこれ以上いるのは危険です。逃げますよ!」
「で、でも……!」
「そう、そういうことだったんだネ」
 鈴音もまたシャルロッテの車椅子を押しながら撤退を始める。
「これ以上この場で戦うのは命の危険がある。撤退だ」

 『魔女め』と叫ぶ騎士団たちから、イレギュラーズは逃げた。
 処刑場からも。ノフノの街からも。
 もう追ってはこれないだろう場所までやってきたところで、プリクルは膝からがくりと崩れ落ちた。
「大丈夫」
 と、誰かが言って。
「取り返してみせるよ」
 と、誰かが言った。

成否

成功

MVP

グドルフ・ボイデル(p3p000694)

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――成功条件:『バイラムの殺害』を達成しました。
 ――オプション条件:『プリクルと共に解決する』を部分的に達成しました。

 ――ノフノで逆光教会および逆光騎士団による過剰な魔女裁判が始まりました。

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