PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<黒鉄のエクスギア>生贄を救え

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●これまでのあらすじ
 事の発端は、鉄帝で始まったスラムの再開発計画だった。弱肉強食、力こそが全てという鉄帝の在り方に置き去りにされた人々を救うはずだった計画は、将軍ショッケンによって歪められた。金にモノを言わせて鉄帝にはびこるクズ達を走狗にし、スラムの排除を試みたのである。ローレットはこれを退けたが、息を吐く間もなく新たな事件が起きた。スラムを狙った少年少女の拉致事件である。風雲急を告げる事態であったが、迅速な行動により、これもイレギュラーズは救ってみせた。
 しかし、そもそも何故スラムの子供たちを将軍は連れ去ろうとしたのか。そこにいかなる野望があったのか。再びショッケンが動き出した時、最悪の形で明らかになったのである。

●古代遺跡を守れ
「ショッケン将軍の率いる兵士が大挙して押し寄せているのです!」
 新米情報屋、ユリーカ・ユリカ(p3p000003)が慌てた口調で叫ぶ。その間にも伝書鳩が次から次へと飛んできて、ユリーカへ向かって手紙を落としていく。その手紙一枚一枚に素早く目を通しながら、ユリーカはコルクボードに地図を貼り付けた。
「将軍の目的は、このスラムの地下にある遺跡、古代に存在した巨大兵器なのです!」
 ユリーカは君達にも地図を差し出す。地下遺跡の地図だ。羽ペンを取った彼女は、中央から外側に向かうルートに幾つか線を引いていく。
「目標はここにあるパワーコア。ショッケンに率いられた兵士達がどんどん此処へ向かって押し寄せているのです。そこで、皆さんにはこの部屋で守りを固めて、敵を迎え撃って欲しいのです」
 そして少女は地図の中の一点を大きく丸で囲む。
「此処は昔は古代兵器の弾薬庫として使われていたようなのです。朽ちた弾薬が壁代わりになるはずなので、上手く使って必ずここを守って欲しいのです。……もしパワーコアが落とされてしまったら、連れ攫われた子供達どころか、スラム街も全部吹き飛んでしまいかねないのです! ここが踏ん張りどころなのですよ!」
 君達は頷くと、一斉に古代遺跡へ向けて走り出した。

●押し寄せる魔獣の群れ
 かくして君達が飛び込んだのは、暗く狭い空間だった。カビと錆の臭いはあまりに強く、思わず顔を顰めてしまうほどだ。しかし、怯んでいる暇はない。今も廊下の向こうから兵士達が率いる獣の咆哮が聞こえていた。君達は巨大な砲弾の残骸に身を預けると、武器を構えて廊下の先を見据える。
「行け! 走れ!」
 兵士の声が響く。全身を鋼鉄の鎧に包まれ、目を爛々と輝かせた黒く巨大なハイエナの群れが大挙して部屋に突っ込んできた。口に炎を咥えたかと思うと、火の玉へ変えて一気に吐き出して来る。鋼鉄の影に隠れて何とかやり過ごした君達はハイエナへ向かってその得物を突き出した。

GMコメント

●目標
 弾薬庫の死守

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 古代遺跡の弾薬庫で戦闘を行います。ここから直接武器へと弾薬が装填されていたらしく、ベルトコンベアの上に砲弾の残骸が並んでいる。流石に変質しているようで、火薬の暴発は無い。
・簡易MAP
 □□△□△□□
→□□△□△□□→
 □□△□△□□
(□…平地 △…ベルトコンベア及び砲弾の残骸)

●敵
☆フレアハイエナ×12
 火を吐く巨大なハイエナ。顎の力も強靭だが、距離を取っても火の球で攻撃してくるため危険。
・特徴
→鉄の鎧
 ショッケン勢によって飼いならされたハイエナ。頭蓋や背中を覆う鉄の鎧は非常に頑丈。
→毛皮
 フレアハイエナの皮は非常に火に強い。
・攻撃
→噛みつき
[物至単]の攻撃。余り深く噛みつかれると、出血が止まらなくなる可能性もある。
→火の球
[神遠単]の攻撃。直撃すれば火傷は避けられない。

☆ショッケン配下の兵士×6
 ハイエナをけしかけた後に部屋へ侵入してくるショッケン配下の兵士。出世を見込んでいるため非常にやる気に溢れている。
・特徴
→オールドワン
 典型的な鉄騎種です。腕や脚が機械化しています。
・攻撃
→鉄腕
[物至単]の攻撃。鋼鉄化した腕や脚で直接攻撃してきます。武器で攻撃するよりも強力です。
→槍攻撃
[物近単]の攻撃。槍で突いてきます。兵士同士で連携を取られると回避は難しいかもしれません。

●TIPS
☆ハイエナ侵入後から10分ほどしてから兵士が突入してくる。可能ならこの間に全滅させたい。
☆ハイエナは積極的に攻撃を仕掛けてくるが、兵士は不必要な戦闘を避けようとしてきます。


影絵企鵝です。いよいよ事件も佳境に迫っているようですね。
私からはちょっとしたTD風の戦闘をお届けしようと思います。

ではよろしくお願いします。

  • <黒鉄のエクスギア>生贄を救え完了
  • GM名影絵 企鵝
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年01月29日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

奥州 一悟(p3p000194)
彷徨う駿馬
セララ(p3p000273)
魔法騎士
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
フィーゼ・クロイツ(p3p004320)
穿天の魔槍姫
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
シュラ・シルバー(p3p007302)
魔眼破り

リプレイ

●走狗の炎
「ぶはははッ、まさしくドカンッてわけか。景気が良い話だねぇ」
 甲高い吼え声と共に、鎧を纏ったハイエナの群れが次々と飛び込んでくる。口蓋に溜め込んだ火を吐き出し、暗がりの中を赤々と照らした。ゴリョウ・クートン(p3p002081)は素早く鍋底の盾を掲げ、炎を受け止める。
「ま、それも……俺らが居なけりゃの話だがな!」
 ハイエナは群れを成し、前線に立ったゴリョウ達を一斉に取り囲む。ゴリョウはその眼をぎらつかせ、その鍋を高らかに打ち鳴らした。
「さぁ来なハイエナども! この豚は簡単には倒れんぜ!」
 腰を落としてどっしり構えたゴリョウは、ハイエナの群れの突撃を正面から受け止めた。セララ(p3p000273)はその背後から素早く展開、軽やかに跳びあがって敵に狙いを定める。その眼に流し込んだ魔力で、松明の明かりだけが頼りの薄暗い空間でも、物陰に隠れて機を窺うハイエナの姿を確かに捉えていた。
「物陰に隠れようったって無駄だよ! セララスペシャル!」
 ハイエナの目の前まで飛び込んだセララは、ハイエナの横っ面を素早く十字に斬りつけた。顔面を守る兜が火花を散らし、狗は鳴いて飛び退いた。そのまま口に炎を纏わせ、セララを睨みつける。
「人に襲い掛かっちゃダメだよ! 伏せ!」
 セララは勇ましく言い放つと、狗の頭を殴りつけ、鉄の床へ押し付けた。彼女は狗の目の前に降り立つと、素早く剣を構える。
「皆の平和はボクが守る! 魔法騎士セララ、突撃!」
 ハイエナは武器庫の中を駆け抜けながら、次々に火球を放った。ヒィロ=エヒト(p3p002503)は鎧に光を纏わせ、その身を以て火を受け止める。その身に満たした魔力は火が燃え移るのを防ぐが、それでも彼女の身を熱で苛む。ヒィロは歯を食いしばると、身を翻して炎を払い除けた。
「子供達を、スラム街を吹き飛ばすなんてさせない! ボクはあの時誓ったんだ、必ず守るって……!」
 そのまま彼女は目の前のハイエナに飛びつき、その頭を正面から抑え込む。
「鉄帝が守ってくれないなら、ボクが、ボク達イレギュラーズが守ってみせる! かかってこい!」
 彼女の放つ気迫。背中の毛を逆立てたハイエナは、咄嗟に距離を取って回り込もうとする。シュラ・シルバー(p3p007302)はそんなハイエナの脇腹へと素早く飛び込んだ。
「ハイエナは所詮ハイエナ! まとめて叩き斬ってやります!」
 紅蓮の大剣を腰だめに構え、一直線に突き出す。迷いを知らない一撃は、ハイエナの鎧に亀裂を入れ、その肋骨の隙間に食い込む。シュラはそのまま刃を振り回し、目の前の二体へ次々に斬撃を浴びせていく。彼女の猛攻に二体は怯み、思わずその身を縮ませた。しかし、別の個体は次々に巨大なベルトコンベアを跳び越え、武器庫の奥へと踏み込んでいく。シュラは飛び込んで頭を抑えようとしたが、その刃はすんでのところで届かない。
「抜かれました! すみませんがそちらは任せます!」
「よし、俺が相手になってやる!」
 奥州 一悟(p3p000194)は懐から幾つもの爆弾をさっと取り出す。小さなラジコン兎だ。床へ放り投げると、モーターが唸りをあげてハイエナへと突っ込んでいく。ハイエナは咄嗟に払い除けようとしたが、途端にウサギは弾け飛び、内側にたっぷり詰められたベアリングがハイエナの身体に突き刺さる。一瞬足を止めたハイエナへ、一悟は軽やかに砲弾の残骸を跳び越え飛びついた。
「ドンだけ図体デカくたって、ただのイヌに後れを取ったりなんかしねえよ!」
 掌に生み出した気の塊を、ハイエナの首筋に叩き付ける。圧縮されたエネルギーが一気に拡散し、彼の腕をも巻き込みハイエナの肉を抉った。ハイエナは慌てて飛び退き、背後にいた仲間に激突する。二体が倒れ込んだ刹那、フィーゼ・クロイツ(p3p004320)が素早く飛び出す。
「相手の動き、仲間の動き、自身の持てる手札、そこから自身が打てる最良の手を打つ」
 漆黒の大弓の弦を引くと、霜付く黒い矢が闇の中から生み出される。ハイエナは咄嗟に火を放とうとしたが、放たれた矢はハイエナが動くよりも早く、三体のハイエナを纏めて射貫く。矢から解き放たれた氷の魔力が、ハイエナ達の身体を縛り付けていく。放たれた火の玉は明後日の方角へ飛び、錆だらけの壁を焦がす。
「仲間を信じて、私は私の役割をこなすだけよ」
 半身になって躱したフィーゼは、赤紫の大槍を弓へ番えて放つ。黒い雷が弾け、ハイエナの脇腹を貫いた。彼女のさらに後方から戦況を窺っていた美咲・マクスウェル(p3p005192)は、天井近くまで浮かび上がって中衛まで踏み込んできたハイエナの群れに狙いを定める。
「鎧や毛皮で呪いは防げない……なんて、獣にはわかんないか」
 その瞳を青く輝かせ、掌から放った衝撃波でハイエナを最前線まで弾き返す。
「どうせ飼い主たちが後ろでせこせこ様子を窺ってるんでしょ。さっさと助けを呼んだらどうよ?」
 美咲は目の前に両手を翳し、小さな闇の塊を引き延ばして茨の束を作り出す。その一端を取って彼女が振るった瞬間、ヒィロと取っ組み合っていたハイエナの身体に素早く巻き付いた。茨はじりじりとハイエナの身体を縛り上げ、その身に刻まれた傷を抉ってその身を引き裂く。断末魔の叫びさえも無かった。
「中々しぶといわね……長期戦の覚悟がいるわ。気を付けて」
「承知しましたー。ここはわたくしの出番ですわねー」
 ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)は旗付きの槍を手に取ると、ベルトコンベアの影からその身を乗り出す。霧氷のように輝く魔力を放って、ヒィロの身体を包み込む。その身に刻まれた引っかき傷が、徐々に癒えていく。
「弾薬庫の中で、爆発物を守って戦う……爆発しないと言われているとはいえ、あまりいい気持ちはしないですわねー」
 湿気っているとはいえ、火薬はまだまだ残っている。ハイエナが撒き散らす炎に万一引火でもしたら、どうなるか分からない。彼方此方跳ね回る音を聞き分け、彼女はハイエナの影を素早く捉える。
「まだまだハイエナは残っていますわー。兵士達が様子を窺っているうちに、出来るだけ片付けたいところですー。万全を期しましょうねー」
 ハイエナは牙を剥く。その咆哮が甲高く部屋に響き渡った。

●兵士の銃声
 一悟の放った爆弾が、ハイエナの身体を捉える。シュラは大剣からその身にまで強烈な闘気を纏わせ、頭上高くに刃を掲げた。
「デストロイブレード!」
 刃どころか全身を叩きつける勢いで、シュラは刃を振り下ろす。爆発で傷ついていた鎧が真っ二つに割れ、ハイエナの脇腹を叩き斬った。臓腑と異臭を撒き散らし、ハイエナはその場に倒れ込む。死骸に突進を喰らい、シュラは咄嗟に飛び退いた。身に余る闘気が、彼女の戦装束の袖を焦がしていた。
「いたた……状況はどうなっていますか?」
「よろしくないですわねー。もう既に廊下の奥から兵士が近づいていますわ……」
 ユゥリアリアはシュラに回復の光を当てながら応える。彼女の鋭敏な聴覚が、廊下の奥の微妙な反響音の変化を捉えていた。間もなく、全身に無骨な鎧を纏った兵士の群れが突っ込んできた。
「敵勢力を発見、突破する!」
 兵士達は叫び、槍を構えて一斉に駆け出す。ゴリョウは纏わりつくハイエナを押し退け、咄嗟に兵士達の前へ回り込んだ。盾を振り抜いた瞬間、甲高い音と共に槍が宙へと弾ける。
「ぶはははっ、悪いがここは通行止めだ! お帰りはあちらだぜ!」
 胸一杯腹一杯に息を吸い込み、ゴリョウはその身を大きく膨らませる。兵士二体は槍を構え直し、一斉に切りかかってきた。オークは身を以て受け止め、溜め込んだ脂肪をエネルギーへ変えて受けた傷を癒していく。
「俺達も修羅場潜ってんだ、その程度で突破できると思ったら大間違いだな!」
 まさに巨大な壁。兵士は素早く目配せすると、二人を残して更に兵士は部屋の奥へと走り出した。ハイエナ二体がさらに先行し、イレギュラーズを突き飛ばして強引に突破しようとする。セララはベルトコンベアを乗り越え、後退りしながら体勢を整えた。
「残ったハイエナは四体……ちょっとハイエナのしぶとさを舐めてたかも?」
 ゴリョウとヒィロの鉄壁を中心にして終始戦いを優位に進めていたイレギュラーズだったが、ハイエナ殲滅にはやや火力が足りなかった。セララは大剣を脇に構えると、刃に光を纏わせ一気に振り抜く。
「セララストラッシュ! この先は通さないよ!」
「押し通る!」
 両腕の排気口から白煙を吹かしながら、次々セララへと殴りかかってくる。剣を振るって何とかその一撃を往なしながら、セララは叫んだ。
「もう! スラムの人々を犠牲にするような事をして、君達は何とも思わないの!」
「思わん! 鉄帝に生まれる限り、弱肉強食は世の倣いだ!」
「ふーん、そんなこと言うんだ! なら……魔法騎士セララがお仕置きだよ!」
 刃に風を纏わせると、彼女は鋭い回転切りを放つ。兵士は槍を構えて受け止めた。入れ替わるようにハイエナがセララへ襲い掛かり、彼女を押さえ込んだ隙に兵士はこっそりその脇を抜けようとする。
「がっちゃがっちゃ足音鳴らしやがって。幾ら隠れて動こうったって無駄だぜ」
 一悟は懐から取り出した爆弾を投げつける。鼠を象ったそれは、兵士の足下へと真っ直ぐに滑り込み、眩い光と共に弾ける。爆風を受けて兵士が一瞬足を止めた隙に、一悟は兵士の正面へと回り込んだ。
「オレたちよりも後ろへは行かせねぇ!」
「いくらローレットのイレギュラーズでも、我らの事を止めることは出来ん!」
 ハイエナが吼えて一悟へと襲い掛かる。一悟は咄嗟に身を翻し、その手に溜め込んだ気の爆弾でハイエナの顎を吹き飛ばした。その隙に、兵士は彼の脇を抜けようとする。
 しかし、床を這うように伸びた氷の鎖が、兵士の手足を捉えて縛り付けた。槍を構えたユゥリアリアが、したり顔で兵士の横顔を見据えていた。
「そうは問屋が卸しませんわー」
「逃げられると思うなよ!」
 今度こそ一悟は兵士の脇腹へと踏み込み、強烈な爆風を叩き込んだ。

 兵士の侵攻は中盤で何とか食い止めたが、その間にヒィロが窮地へ陥っていた。兵士二人にハイエナの波状攻撃を受け、ひたすら一身に攻撃を受け続けていたのである。
「ここは通さない、絶対に……!」
 ユゥリアリアの回復支援も途切れ、それでも果敢に兵士の攻撃を受け止め続けた彼女はボロボロだ。ブースターの加速も乗せた蹴りを脇腹に叩き込まれ、ヒィロは思わずその場に崩れる。兵士はそのまま床に蹴倒そうとしたが、ヒィロはパンドラの光をその身に纏わせ、両手で兵士の蹴りを受け止めた。
「子供達の、スラムの皆の命を背負ってるんだから……こんなところで倒れてられないんだ!」
 ヒィロは勢い良く立ち上がると、兵士の鳩尾に拳を叩き込んだ。緑色の眼を爛々と輝かせ、彼女は吼える。
「自分達の行いの行く末を知ってて、それでも出世をしたいの!?」
「くっ……」
 彼女の気迫に気圧され、兵士は咄嗟にヒィロから距離を取ろうとする。シュラはそんな彼らの頭を押さえつけ、力任せに床へと叩きつけた。
「ほんっと、生贄だとか訳わかんないんですよね」
 シュラは大剣を掲げる。兵士の繰り出した拳が彼女の額を打ち据えるが、彼女は魔力を額に集めて傷を癒し、その一撃を耐え忍ぶ。
「それで人心掌握して宗教だとかいうのが……私には理解できないんです!」
 怪力無双の一撃が、鉄の腕を真っ二つに叩き斬った。

 前線から溢れてきたハイエナが火球を放ち、突破口を求めた一人の兵士がフィーゼへと殴りかかる。ボディスーツから展開した盾でその一撃を受け止めたが、彼女は凌ぎきれずにベルトコンベアへと叩きつけられた。兵士はさらにハイエナをけしかけ、そのまま彼女の脇を抜けようとする。
「ふん……この程度の痛みで私が貴方の前に這いつくばると思ったら大間違いよ」
 フィーゼはその身に魔力を纏わせると、噛みつきに来たハイエナの頭を殴って捻じ伏せ、そのまま兵士の背後目掛けて弓を引く。
「金にモノ言わせて、私欲の為に他者を犠牲に……なんて、典型的な下種のやりそうな事ね」
 赤紫の槍が鋭く伸び、血のようにぎらついた切っ先がピタリと狙いを定めた。兵士は咄嗟に振り向いたが、既に手遅れだ。
「そしてそれに載せられる貴方達も同類。遠慮なくやるわよ!」
 放った槍が、兵士の腰を穿った。兵士が崩れ落ちた瞬間、黒々とした魔眼が兵士を射抜き、一瞬にして絶命させる。
「戦術を考える知能があるくせに、倫理を投げ捨てるその様……苛つく」
 美咲は僅かに前線を押し上げると、ヒィロと対峙を続ける兵士へ再び狙いを定めた。ヒィロは咄嗟に彼女とアイコンタクトを交わし、その身から放った闘気をぶつけて敵の目を己へ引き寄せる。美咲はその掌に茨の球を浮かべると、兵士の足下へと放ってその身を固く縛り上げた。
「さあどうするの。惨めに逃げるか無様に潰れるか、最後の慈悲で選ばせてやる」
「くっ……」
「三、二、一」
 美咲の瞳が光を失った瞬間、兵士を縛る茨の棘が槍のように鋭さを増し、兵士の身体を貫いた。しばらくバタバタともがき苦しんでいたが、やがてぴくりとも動かなくなる。

 転がるハイエナの死体、鉄腕を破壊され、這いつくばる兵士達。怒りをたたえたイレギュラーズを前に不利を悟った彼らは、やがて彼らに下るのであった。

●悪夢の址
 激しい戦いを終えた武器庫は、元々の錆臭さ黴臭さに加えて、獣の死臭まで漂う陰惨とした空間になっていた。ヒィロはベルトコンベアに腰を下ろし、鎧の留め金を外す。色白の肌に生々しく刻まれた痣を、美咲は一つ一つ癒していった。死体の山を見つめ、ヒィロは眉根を寄せた。
「どうしてこんなことするんだろ」
「さあね。扇動に乗って暴れる軍隊の末路は破滅しかないってのに。ま、旅人がどれだけ自分の世界の歴史を語ったところで、この手合いに理解は難しいかな」
 美咲は溜め息を吐き、ゴリョウに固く縛り上げられている生き残りの兵士達をちらりと見遣った。今も怒りは冷めやらず、その瞳は刃のように輝く。
「各国のダメなところを順に並べるの、そろそろ先手で止めたいものね」

 ゴリョウは兵士の腕を後ろ手に縛り上げ、そのままベルトコンベアに押し付ける。
「こんなもんか。こんだけ固く縛りゃあ、いくらゴリゴリのオールドワンでも逃げられねえだろ」
 兵士は顔を顰めたまま俯いている。
「まあ、今のままの鉄帝で生きていくにゃあ、勝ち組にならなきゃ仕方ねえって思いに駆られるのもわからなくはねえ話だわな。けどな、闘技場で相手を打ち負かすのと、大勢の人間を有無を言わさず殺すってことの間には、とんでもねえ溝があるってもんじゃねえか?」
「そうだよ。この兵器が起動して地盤沈下が起きたら、どれだけの犠牲が出てたか、キミ達だって分からないわけじゃないだろう?」
 セララは兵士達の眼のまえに仁王立ち、ぐるりと兵士を睨み回した。
「折角鉄帝だって少しずつ変わろうとしてるのに。ボクは絶対邪魔させないんだからね」
 兵士は一言も応えなかった。

 ハイエナの亡骸を乗り越えて、一悟はベルトコンベアの上に立つ。そこに乗せられたままの巨大な砲弾は、彼の背丈ほどのサイズがあった。
「こんな砲弾をドカドカ撃つような兵器、もし本当に起動したら大変な事になってたぜ。どう思う。この兵器について、何か知ってんのか?」
「……」
 ついでに一悟は自らに憑いている声に尋ねる。しかし声は帰って来ない。
「ま、こんなおんぼろ遺跡には興味なんてねえか……」
「でも、殆ど残弾は残っていないみたいだし、残ってる弾も火薬は湿気ってついでにベルトコンベアも錆びてるんでしょ? こんなの起動して一体何になるのかしら」
 フィーゼは溜め息を吐く。彼女の身体に刻まれた幾つもの傷を癒しながら、ユゥリアリアは首を傾げた。
「この遺跡はかなりの規模のようですし、武器がこれだけという事は無いと思いますわー。起動してすぐに機能する武装が他にもあると考える方が自然ですわねー。或いは、兵器の起動に生贄を求めているのも、それが理由なのかもしれませんわー……」
「生贄……もしこの兵器がこうして封印される前からずっと、色々な人の血で動いてきたんだとしたら、どれだけ人智を越えたテクノロジーがここに含まれているのだとしても、ろくでもないとしか言えませんね」
 シュラは大剣を掲げると、鋭くベルトコンベアへ振り下ろした。脆くなった鉄板が砕け、火花を立てて拉げる。
「この兵器を用いて、この世界で昔何が行われていたのか。ショッケンがこの兵器を用いて、一体この先何をしようとしていたのか、考えただけで腹が煮えくり返るようです」
 亀裂から大剣を引き抜いた彼女は、柄を握りしめて眉を顰める。
「これで、事件が収まってくれればいいですが……」

 かくして彼らは古代兵器の弾薬庫を守り抜くことに成功した。各方面の仲間達も無事にショッケン勢を押さえ込み、古代兵器を復活させようというこの度の陰謀は頓挫する事になった。
 鉄帝の弱肉強食主義に敗れ、スラムに暮らさざるを得なくなった者達。ショッケンの野望が除かれた今、細々とだが、彼らにも救いの手が差し伸べられることになるであろう。



 おわり

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お世話になっております。影絵企鵝です。
この度はご参加ありがとうございました。満足いただけましたら幸いです。

兵器だった遺跡……というのはロマンがありますね。と同時に何かを思い出してしまうのが某ゲームのファンだったり。

ではまたよろしくお願いします。

PAGETOPPAGEBOTTOM