PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<黒鉄のエクスギア>オールハンデッド、ブラックハンズ!

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ショッケンと黒金機甲師団
 重機関銃の回転するガトリングタイプの銃口が業炎のごときマズルフラッシュを放ち、一瞬を追ってゴオウという人つなぎの轟音が鳴り響く。まさに鉛の雨そのもので、悪意のごとき豪雨がトタンのあばら屋を数秒で廃材の山に変えていく。
 そうした地獄めいた嵐のひとつあとになってやっと、火薬と炎と土のにおいがやってくるのだ。
「やはり、素晴らしいな。圧倒的な戦力差というやつは」
 キャタピラ移動する戦車から頭を出して、鉄帝将校ショッケン・ハイドリヒは高級そうな葉巻を咥えた。
 取り出した黒いジッポライターを、黒金の手で開いてこする。
 燃え上がる炎をしばらく眺め、皺の多い顔を歪ませた。
「『赤き嵐』よ、俺は……いや私はついにやるぞ。あれを手に入れて、軍の立場を確固たるものとするのだ。いずれはザーバをも超えるやもしれんな。ククク……」
 炎をはまきに近づける。
 ガトリングガンの轟音が大地と家屋と抵抗ともいえぬ抵抗をなぎ払っていく光と音とけむる匂いに、葉巻の香りが重なっていく。愉悦がたまらぬという顔で深く深く呼吸をすると、ショッケンは高く手を上げて見せた。
「進撃せよ。蹂躙せよ。ブラックハンズ、そして我が親衛隊たちよ。
 この作戦を収めた暁には立身出世も思いのまま。富と名誉が手に入ると思え。
 全軍銃帯(オールハンデッド)! 全軍銃帯(オールハンデッド)!
 邪魔する全てをなぎ払え!」

 時は現代。後にモリブデン事変と呼ばれうるこの戦いのさなかに、あなたはいた。
 第三次グレイス・ヌレ海戦直後、皇帝が交渉に力をさいているそのさなか、根回しを完璧に済ませた鉄帝将校ショッケン・ハイドリヒはもてる全ての兵力を投入してモリブデン及びその地下に広がる古代遺跡の軍事制圧を開始した。
 動員されたのはショッケン派閥といわれる軍人たちと、その息がかかったマフィアやギャング。そして相当な金額で雇われた傭兵たちである。
 彼らは元々さしたる抵抗力をもたぬモリブデンを圧倒的兵力でなぎ払い、破壊していくつもりのようだ。
「彼は手際がよすぎたし、こっちも優秀すぎた……の、かもね」
 あなたを送り出す『黒猫の』ショウ(p3n000005)がそんな風に語った。
「モリブデン最大の抵抗勢力であるクラースナヤ・ズヴェズダーは、その大多数を土地開発による生活向上を名目に黙らせた。ショッケン一派のもくろみに彼らは気づいただろうけど、気づいた頃にはもう遅い。チェスでいうチェックメイトだね。
 黙らせられなかった同教派革命派も、どうやら彼と仲間の仕掛けでバラバラになっているらしい。
 彼がどうにかできなかったのは……今や、僕らローレットだけって所かな」
 スラム街モリブデンが最後に頼ったのは、世界の何でも屋ことローレットであり、あなたであった。
 破壊されるスラム街。人々は取るものも取りあえず逃げ出し、残ったのは粗末な家屋と荒れ地のみ。
 それをショッケンの『黒鉄機甲師団』がもてあそぶかのように蹂躙していく。
 頼れる味方は、あなたを含めた数人のローレットイレギュラーズのみ。
 課せられた依頼内容は、ショッケン及び黒鉄機甲師団の足止めである。

●任務
 ショッケンの狙いはモリブデン地下に眠る巨大古代兵器の獲得と起動である。
 そのために機甲師団を投入して古代遺跡コアルームを確保し、別部隊が移送中の子供たちを虐殺する『血潮の儀』を実行するというのだ。
 浚われた子供たちの命が、そしてスラムで暮らす全ての人々が脅かされている。
 
 黒金機甲師団の兵力はこちらに比べて圧倒的である。
 先頭をゆく歩兵部隊は装備した小銃やミサイルランチャー、そしてコンバットナイフによる規格化された兵力によって、エリアに存在する全ての人間を戦闘意思の有無に関わらず抹殺し焼却する任を帯びている。
 彼らをしのいだとて、後に続くパワーアーマー部隊が重機関銃やミサイルポットによる大火力によって建造物や足場ごと破壊。蹂躙していく。
 もしそれでも残るような抵抗力があった場合に限り、ショッケンと直属の精鋭部隊である『ブラックハンズ』が小隊規模での殲滅にかかるという念の入れようであった。
 これだけの兵力を、仲間たちと自分の力で乗り越えなければならない。
 困難な役目だが……。
 ここで退けば、多くの命が失われるのだ。

GMコメント

■■■オーダー■■■
 スラム民からの依頼により、ショッケン率いる黒鉄機甲師団の足止めを任されました。
 第一ウェーブ『歩兵部隊』、第二ウェーブ『アーマー部隊』、第三ウェーブ『ブラックハンズ』をすべて戦いきれば依頼成功。途中のどこかでこちらが撤退すれば依頼失敗扱いとなります。
 規定の撤退ラインは『PCチームの総合戦力が50%を下回った時点』とし、最低撤退ラインは『PCチームの総合戦力が20%を下回った時点』とします。
 皆さんの間で相談して、撤退ラインを定めてください。
 定めた撤退条件をプレイングに全員統一して記載しましょう。(齟齬があった場合多数決となります)

 味方戦力はナシ。
 厳密にはクラースナヤ・ズヴェズダー革命派の一部が住民避難に携わっていたり地元ギャングが近くのエリアで歩兵部隊と戦っていたりとかなり派手に動いていますが、このエリアは皆さんだけが頼りです。
 個人の能力を最大限に発揮するのはもちろんのこと、お互いの能力を上手に連携させてチームとして最大の能力を発揮させましょう。逆にいうとそれだけの高い連携がとれなければ敗北リスクが非常に高くなります。

■■■エネミーデータ■■■
 各ウェーブ間には5ターンの猶予があり、その間全てに『待機』を選択したPCはHPAPが60%まで自動回復します。

●第一ウェーブ『歩兵部隊』
 小銃等で武装した部隊による侵攻です。
 彼らは主に一般市民を効率的に抹殺するための部隊なので、ある程度の戦力があれば退けることができるでしょう。
 数が沢山おり、訓練されているとはいえやや密集して動く癖が抜けていないので範囲攻撃が割とオトクです。
 この時点で倒されることはそうそうないとは思いますが、APやHPの消耗には気をつけてください。

 また、この時点ではトタンでできた簡単な家や廃材などを利用して奇襲をかけたり壁を盾にしたりしやすいので、うまいこと消耗を抑えることが可能です。いっそこれらを無視してどかどかいってもかまいません。相談して決めましょう。

●第二ウェーブ『アーマー部隊』
 パワーアーマーを装備した強力な部隊です。彼らは邪魔な建物の破壊とそれなりに戦闘力のある対象を殲滅する役割を持っています。
 この時点で建物やら廃材やらトラップやらは意味をなさなくなります。
 高い攻撃力、主に使う【乱れ】系BS攻撃。たまに使う【必殺】武器。高い防御能力とHP。……といった強みがあります。
 逆に、特殊抵抗、機動力、APといった値が低めです。
 彼らは密集して移動する必然性がないので、PC的には範囲攻撃で損しがちです。

●第三ウェーブ『ブラックハンズ』
・ショッケン:アルキメデスレーザー(遠貫【万能】、高威力)を備えた鉄帝の将校。なかなかの強敵。
・ナイフ使い:大量のナイフを用いて戦うアサシン。防御が強く【反】能力をもつ。
・ボウガン使い:迷彩服の飛行種。神秘のボウガンによる遠距離範囲爆撃が得意。
・拳銃使い:金髪二丁拳銃の女。高い命中力によるスナイプが基本スタイル。
・鋼の巨漢:サングラスをかけた黒人の巨漢。両腕が鋼でできている近距離パワー系。高い破壊力と【防無】攻撃が基本。
・機械騎士:機械鎧とレーザーブレードの騎士。高めの防御力をもつトータルファイター。
・鉄仮面の副官:拳銃を武器とする副官。味方の強化や治癒などを担当する。
・カブトガニ鎧兵:高い防御とハイウォール能力。水中行動持ちだがその強みはここで活きない。
・部下の兵隊×複数:小銃や軍刀で武装した兵隊。強さはそこそこだが数がいる。基本的な立ち回りはピンチの上官をかばうことやブロックの突破要員。直接的な脅威にはならないが、ちゃんと対処しておかないとこちらの陣形が壊される。

 ショッケンと副官を中心とする精鋭部隊。
 戦術レベルは『とても高い』に設定されており、ちゃんとした作戦と連携を組んでいかないと敗北するリスクが高まります。
 連携と一口に言うとちょっと投げすぎなので細かく解説しますと……PCおのおのがチーム内でちゃんとした役割をもち、その役割を全うできるだけの説得力を数字とプレイングで補うことができ、なおかつプレイング自体が大体有効である必要があります。
 要するに、ガチで組んでガチで戦ってください。ショッケン側もガチです。

 以上です。この戦場を、あなたに託します。

  • <黒鉄のエクスギア>オールハンデッド、ブラックハンズ!Lv:20以上完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年01月30日 23時00分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

郷田 貴道(p3p000401)
喰鋭の拳
銀城 黒羽(p3p000505)
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
山賊
七鳥・天十里(p3p001668)
メルナ(p3p002292)
太陽は墜ちた
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の巫女見習い
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイスドラッヘ

リプレイ

●戦列は黒き波となりて
 ひとつなぎの銃声と焦げた灰の香りがした。
 崩れた砂利の上を、子供を抱えた女や怪我をした老人たちが走って逃げていく。
 そんな様子が、トタンとベニヤ板でできた粗末な家の内側からみえていた。
 飛び出したい気持ちをぐっとこらえ、自分の顎をがつんと殴る『人類最古の兵器』郷田 貴道(p3p000401)。
 そしてあえて、『HAHA』と歯を見せて笑って見せた。
「派手なステージじゃないか、気合い入れて行く――ぜ!」
「ぐお――っしゃあ!」
 背中をばちんと叩かれ、目を剥く『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)。
 すっかり手形が残ったであろう背中を軽くさすると、グドルフはグヘヘといって歪むように笑った。
「連中の鼻ッ柱、へし折ってやろうぜえ!」
 人間は基本、優位に立つと油断する。
 スラム民の掃討を始めた兵士たちがまさにその状態にあるように見えた。
 彼らの目的は武力と威嚇によって住民たちを追い払い、この先にあるという
 古代兵器を確保するつもりなのだ。
 もちろん投入している軍隊はここに見える分だけではない。しばらくすれば本体が投入されてグドルフたちもまとめて洗い流されてしまうだろう。
 だが住民たちが逃げ切るまでの時間を、仲間たちが『重要な仕事』をこなすまでの時間を稼ぐことはできる。
 そしてそれができるのは、今や彼らしかいなかった。
「ヘッ、ろくな奴にお鉢が回ってきちまったもんだなァ?」
「スラムを守れるのがボクサーと三賊か。HAHA、ナイスジョークだ」
「モチロン、それだけじゃあないよ」
 ぐいぐいと柔軟運動をしていた『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)がこきりこきりと拳をならす。
「駆けつけられたのは10人きりだけど、あの軍勢を三層くらいははねのけられるんじゃないかな」
 事前に行われたファミリアー偵察によると、威嚇と簡単な掃討として配備された歩兵部隊を追い払うのはそう難しいことではなさそうだが、問題はその後のパワーアーマー部隊とショッケン率いる精鋭部隊ブラックハンズである。
「『勝ち越す』ことはできないと思うよ?」
「馬鹿いえ、そこまで楽観しちゃーいねえよ。命あってのモノダネだ。いいとこでさっさと逃げさせてもらうぜ」
「重要なのは、いつ逃げるか……いや、どこまでねばるか、か」
 首をならして呼吸を整える『死を許さぬ』銀城 黒羽(p3p000505)。
「そう……まだねばれる。まだ俺たちがいるんだ。奴の思う通りにさせてたまるかってんだ」
 トタンとベニヤ板でできたあばら屋の中で、正義最後の砦がいま動き出そうとしている。

 カラララララ――とリボルバー弾倉が回る。
 親指で回転を止め、スピードローダーで弾を込めると手首をひねるアクションによって弾倉を収めた。
「僕はね、知ってるんだ。絶望的な時だから、泣くべきじゃないって」
 『ガンスリンガー』七鳥・天十里(p3p001668)はあえて銃をホルスターに収めると、頬をついっと指であげて笑って見せた。
 泣いていた子供がそれを見て、はたと涙をとめる。
「笑って。そして走るの。そうすればきっと、未来はひらけるよ」
 さあ行って。
 天十里が背中を押すと、子供は安全なほうへと走って行った。
 小銃をかついだ兵隊たちが迫るのを、天十里は肌で感じていた。
 とめておいたバイクにまたがり、アクセルリングをひねる。
「数は多いみたいだけど、だからって好き勝手させてあげるわけないよね?」
「無論」
 『展開式増加装甲』レイリ―=シュタイン(p3p007270)は両手の拳をがちんと打ち合わせ、大きく深く呼吸をした。
 二人とも、かつての戦いを思い出していた。
 ショッケンという男との戦いも、もう初めてのことではない。
 彼の汚いやり口を、であるがゆえに油断できない狡猾さを、放置すればきっと多くを泣かせるであろう計画を、脳裏に描く。
「奴はこの戦いに賭けている。狡猾な奴がそれだけ大胆な行動に出られるだけのリターンが、この戦いにはあるということだ。それを奴が手に入れれば、第二第三の甲羅戯艦隊事件が起こされるのは想像にかたくない」
「わかってる……だから、『思い通りにはさせない』」
 不適に笑ってみせる天十里に、レイリーは頷きと笑顔で答えた。
「さあ、行くぞ」

 笹の葉にくるまったお弁当を、『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)はうまうまと食べていた。
 具だくさんの釜飯をおなかに収め、手を合わせる。
「ごちそうさま! それにしてもなんだかこの感じ、古い記憶がよみがえるわねえ」
 灰。黒煙。血と死と瓦礫。かつて投入され、かつて目覚め、かつて失い、かつて焦がれ、そして世界を変えて帰ってきた、この……。
「そしていただきます。私の戦争」
 量産型ストライカーの改良機PH-D502-IKUSAGAMI(R)の操作盤を叩き、精神接続を開始。
 腰の第三地球製高機能鞘を叩き、赤い刀を露出させる。
 星や時空とまではいかないが、この世界に来たときよりずっとよく『斬れる』。
「そういえば、あの偽神ちゃんたちはどうしてるのかしらね」
「……ごめん。何か言った?」
 剣を握って精神統一をしていた『青の十六夜』メルナ(p3p002292)が、青い目を開いて秋奈を見た。
 年相応の少女の目はそこにはなく、恐怖や絶望に立ち向かう強き月影の戦士がそこにはった。
 首を振る秋奈。
「ううん。ショッケンとかいうハゲ殴ろうね」
「もちろんそのつもりだよ。これ以上、みんなの日常を壊させたりなんてしない。お兄ちゃんだってきっと……」
 そう語ると、メルナは外へと出て行った。
 迎え撃つ準備は、もうできている。

 バネのとびでたソファにすわり、ウォッカボトルをぐるぐると回しながら逆さに傾ける。
 素早く落ちる酒を飲み下すと、口元を手首で拭って――『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は脚を組み替えた。
 澄んだ銀色にかわった髪を振り、瓶に優しく口づけをする。
「鉄帝の軍部事情なんて知らないけど……罪のない人達を犠牲にするヘンテコ装置なんて、絶対に起動させないわぁ」
「駆けつけることのできたヒーラーは……わたくしとアーリアさんの二人だけ、ですわねー」
 『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)はアーリアから『呑む?』と突き出されたスペアウォッカを片手をかざして遠慮すると、治癒の力を手にためて、癒やしの歌を口ずさむ。
 ほわほわとわきわがる暖かな燐光に包まれながら、ユゥリアリアは外へと出た。
「あなた方には塵芥にしかみえなくとも、残念ながら、引けない理由でございましてー」

●世界が力できまるなら
 瓦礫の間から、ゆっくりと歩み出る。
 たとえば闇が深い夜。小さな明かりが太陽のようにまぶしいように。
 絶望と破壊が景色を覆った時。燦然とした希望がまぶしく見える。
 ただレイリーが立っただけで、市民を威嚇掃討する任をおびていた歩兵部隊たちはびくりと身体を震わせた。
「……知ってるぞ、レイリー・シュタインだ。奴には手を焼いたんだ、間違いない!」
 かつて甲羅戯事件の際に民間人のふりをして混じっていた兵士の一人が、反射的にレイリーへ銃を向けた。
 対して。
 レイリーはただただ両腕を広げ、一歩二歩、背筋を伸ばして歩み寄る。
「そうだ。私はレイリー。レイリー=シュタイン! お前らの野望ここでこそ止めて見せる!」
「で――できるものか、たとえ貴様ほどの兵士でも、たったひとりで! やれ、かかれ!」
 兵士の号令に応じて、周囲の歩兵たちが小銃を撃ちながら突進し、一部は高硬度カトラスを抜いて斬りかかる。
 一方のレイリーは両腕と両足を『展開』。増加装甲をガチャガチャと広げると自らをいかつい全身鎧姿へと変貌させた。
 弾をはじいて歩き、繰り出された剣を握ってへし折る。
「そんなものか」
 ヒュル――と空が鳴った。
 否。
 空っぽのウォッカボトルが回転しながら飛来する際に発したわずかな風切り音だ。
 瓶はレイリーを取り囲む兵士たち――の上空でヒビ入り、赤くついたキスマークによって爆発四散した。
 降り注ぐガラス片。
 咄嗟に防御する兵士たちに、ベニヤ板の裏に隠れていたアーリアが小さく笑った。
「さぁ、この調子よぉ」
 被弾を確認したアーリアは、次なる空瓶をビールケースから引っこ抜き、壁越しに透視しながら振りかぶる。
 まき散らかされたガラス片は兵士立ちがレイリーに執着するほど踏みやすく、体勢の乱れや狂いがあるほど浴びやすい。
「あんな所から……取り押さえろ! いや殺せ!」
 他の兵士立ちがアーリアに気づいてベニヤを蹴り倒し、小銃を構える。
 が、そこで待ち構えていたのは黒羽だった。
 全力射撃。集中砲火。
「俺には効かねぇ」
 しかし黒羽は吹き上がるオーラで肉体を強化し、弾丸を次々に打ち払っていく。
 防御を突破して打ち込まれる銃弾も少なくなかったが、黒羽はそれを気合いではねのけた。
「スピリッツ、メリルナート。俺から離れるんじゃねぇぞ」
 黒羽が翼のように広げたオーラがアーリアたちを包み込んでいく。
 その内側から、ユゥリアリアはミリアドハーモニクスの歌を口ずさんだ。
 黒羽の傷が塞がり、出血が止まり、足りなかったはずの血も少しずつだが補充されていく。
 歩兵たちが多少集まって集中砲火を浴びせたところで、黒羽とユゥリアリアの防御フィールドを突破することは不可能に近い。
 さらには。
「おかえしよぉ」
 ビール瓶に回転をかけて投げつけるアーリア。
 顔面にくらった兵士がもんどりうって転倒し、流れた血にうめいた。

 住民が逃げ去り静かになったバラック街を、小銃を構えた兵士が進んでいく。
「もう全員逃げたんじゃないのか?」
「さあな。とにかく残ったやつは全員殺せって命令だ。家の中も見るか?」
「こんなボロ家、覗くまでもないだろ。みろよこの壁」
 ノックしたトタン製の壁が、たよりなくぼこぼこと鳴る。
「みてろ、こうやってな……」
 兵士は笑って銃を向けると、右から左へと空をなぎ払うように銃を連射した。
 トタンの壁に歪んだ点線波模様が描かれる。
「こうすりゃ雑魚は死ぬだろ」
「違いねえ」
 けらけらと笑う兵士――の頭が。
 壁から飛び出た拳によって打ち抜かれた。
 目の前でスイカ割りでもするように砕けた戦友の頭を見て、もう一人の兵士が悲鳴をあげる。
「なんだァ、今のは……ミーにかすり傷も負わせちゃいねえぞ」
 壁をべきべきと割って身を乗り出す貴道。
 HAHAHAと白いもやが出るほどに笑いながら、もう一人の兵士に指をさした。
「どうしたボーイ。撃てよ」
「ヒ、ヒィ……!」
 化物! と叫びながら引き金をひこうとする兵士――の脳天に突き刺さるボウガンの毒矢。
 衝撃で倒れ、泡をふいてけいれんする兵士に、貴道はため息をついた。
「今良いところだった」
「知ってる。だから貰った」
 ベニヤ板を立てかけた簡易的な目隠しの裏からぬっと頭を出すグドルフ。
「しっかしこの辺はボロい家ばっかりだな。つーか家なのかこりゃあ? 雨と風しかしのげねえぞ。突風だったら吹っ飛んでいくぜ」
 グドルフはベニヤ板を蹴倒しながら、ボウガンにさらなる矢をつがえていく。
「この戦法が通じるのは雑魚どもまでだ。パワーアーマーの連中がきたら使えねえぞ。どうする」
「なぁに……」
 分かってるだろ、と片眉をあげてみせるボクサー。
 骨身にしみて、と片眉をあげて返す三賊。
「まったくスラムも、えらい連中に頼ったもんだぜ」
 二人は化物じみた笑顔のまま、ぬらりと新たな兵士たちが来る方向へと振り向いた。

 がれきを踏みつけ走り抜ける黒塗りのバイク。
 またがるは美少女――否、七鳥天十里!
 丁度良くできた斜面を見つけて加速すると、バイクごと天十里は派手にジャンプした。
「「――!?」」
 近づくエンジン音と派手な登場に驚き咄嗟に銃を向ける兵士立ちだが、彼らの弾が天十里に当たることはない。
 バイクの車体で銃弾をいくらかはじくと、残りを大胆にかわしつつホルスターから銃を抜く。
 腕を左から右へ振るような動作だけで、狙い澄ましたよに兵士たちの脳天だけを打ち抜いていった。
 車体が着地。ターンしてブレーキ。
 さらなる射撃を予期して、天十里は車体の裏へと転がるように下りた。
 そして、くいっとハンドサイン。
 民家の屋根の上を駆け抜けたイグナートが足首に装着したマルチジェット噴射機で跳躍。
 空中でくるりと宙返りをかけると、天十里に集中していた兵士たちめがけてミサイルのごとき跳び蹴りを打ち込んだ。
 ミサイルと述べたのは、着弾と同時にオーラによる爆発を起こしたが故である。
 まとめて吹き飛んでいく兵士たち。
 射撃武器がありながらわざわざ10m範囲内に密集していたのは、彼らが油断していたから、ないしは強敵相手にひるんだからだろう。
 それだけ、イグナートたちとの戦力差は圧倒的であった。

 所詮は逃げ遅れた市民を威嚇ないしは抹殺するための歩兵部隊。
 ガチガチに装備を固めたいまのローレット・イレギュラーズの戦力とは比べるべくもない。かえって彼らが哀れになるほどの差である。
 そんな歩兵部隊の中へ。
「死にたい奴からかかってきな! ここには魔王を討ち取る勇者はいるのかしら?」
 両目を大きく見開き、楽しく歌いながら突っ込んでいく秋奈。
「こいつ……!」
 カトラスで斬り付ける兵士たち――の上をぴょんと跳躍して超え、空中で宙返り半ひねり。彼らの背後をとると、両手に握った刀で流れるように斬り殺した。
「軍隊との戦いとか良いじゃない! 懐かしいわ!
 それと、他人の野望をぐしゃぐしゃにするの大好き!」
 集中砲火を浴びせる兵士。
 秋奈は踊るように刀を操ると飛来する銃弾を次々に切断。跳ね上がった弾のひとつひとつを刀身の腹をつかいベースボール感覚で打ち返していく。
「か弱いJKを撃ち殺せる兵士はいないのかしら? まだ私、名乗ってすらいないのよ!」
 そんな彼女の……いや、兵士たちの間を、メルナが青い閃光となって駆け抜けていく。
 次々と切り裂いた兵士が血を吹き上げ、崩れて落ちる。
「こんなところで手子摺ってる場合じゃない。これで、終わり!」
 地面に叩きつけた剣が爆発的な衝撃を産み、走った光の刃が兵士たちを切り裂いた。
 全ての兵士を切り捨て、荒く肩で息をするメルナ。
「次は、誰」
「もういないわよ。て、いうか……」
 秋奈は刀を収めて血と灰の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
「ここからが本番、かもね」

●怒りでいっぱいの空はいつも黒い
 ショッケンの放った部隊は弱い民衆を追い払う歩兵部隊だけでは、もちろん無い。
 海洋へちょっかいを出し弱小艦隊を沈めるためだけに倍以上の兵力を投入するような、準備を『しすぎる』男である。
 そんな彼が歩兵部隊のあとに続くようにして投入したのが重火器と強化外骨格鎧で武装したアーマー部隊である。
 彼らのガトリングガンによる射撃はブロック塀程度なら簡単に破壊してしまうため、このバラック街をまっさらにするには丁度良い兵士なのだ。
 さらには彼らの高い火力を集中させることで多少抵抗力のある人間が残っていても、それを排除可能というわけだ。
 この概要から分かるように、アーマー部隊の『必殺技』は集中砲火。
 正面から突っ込めば最初の一機は倒せるだろうが、集まってきた集団からの集中砲火でたちまちこちらのメンバーが減らされる危険があるのだ。
 これに対してローレット・イレギュラーズは……。

「――クリア。もう猫一匹いない」
 見える範囲のものを一通り破壊し尽くし、ガトリングガンの回転を止めるアーマー兵士。
「本当にこんなところまで見回る必要があるのか? 端も端だぞ。さっきから建物どころか犬小屋しか撃ってない」
「犬小屋じゃない。民家だ。あまりに粗末だがな」
 数十メートルの距離をあけつつ、テレパス通信をはかる兵士たち。
 もうここはいいから先へ進もう……と前を向いたそのとき。
「おい、人がいたぞ」
 距離にして軽く80メートル。
 機関銃射程外。
 走っていけばまあまあ届く距離か、と目測していた兵士に彼は――イグナートはまっすぐ突っ込んできた。
「自ら射程圏内に入るか。ばかめ」
 機関銃を連射。
 が、イグナートはジグザグに走って弾を回避すると更に加速。たがいの距離を数秒でゼロにすると、アーマー兵士の顔面もといヘルメットシールドに膝蹴りをたたき込んだ。
 砕けるシールド。
 と同時に相手を蹴って再び飛ぶと、30mほど離れた別の兵士に飛んでいって回し蹴りと肘打ちをそれぞれたたき込んでいった。
「な――!?」
「思ったよりカタイね。けど」
「鍛えて殴れば大抵のものは壊せる。物理学ってやつだなあ!」
 イグナートに翻弄された兵士たちへ、陸上短距離走選手のような猛烈な走りで距離をつめにかかる貴道。
 咄嗟に装甲で覆われた拳を叩きつけようとするが、貴道は一メートル距離に入った瞬間にボクシングの姿勢へシフト。
 パンチの軌道を先読みして回避すると、穴の開いたヘルメットへすぽんと入るよに拳を打ち込んだ。
 ボッと内側で爆発がおき、兵士が仰向けに倒れる。
「ひ、人をあつめろ! シグナルだ!」
 アーマー兵士は後退し距離をとりながら空に向かってシグナルを発射。
 平たく前進しながら地形破壊ばかりをしていたアーマー部隊がシグナルを見て集まってくる……かに思われたが。
「シグナルが……二つ?」
 作戦区域の端と端の二カ所で、全く同時にシグナルが上がった。
「こいつら、俺たちを分断させるつもりか!」
「気づくの遅っ」
 ストライカーを噴射して猛烈な速度で走った秋奈が、駆けつけてきたアーマー兵士に向けて『桔梗の刀』を行使した。
 両脇下部のサブウェポンを抜き、逆手のままスイング。ごくわずかにだけ時空を切り裂き、時空を通り抜けて相手の精神を切断。選択の優先順位を強制的に『斬り』かえた。
「さぁさぁ、遊びましょーか」
「!!」
 少ない機動力でがしがしとかけよりながらも機関銃を乱射するアーマー兵士。
 が、オーラをふくらませた黒羽が間に割り込み防御姿勢。
 突っ込んできた兵士が強烈なパンチをたたき込むが、黒羽はそれを片手で受け止めた。
「そんなモンじゃ俺を倒せねぇぞ」
「こいつ……『アナタトイ』か!」
 アナタトイ。不死の兵団をさす言葉。本来は大量の兵士が屍を乗り越えて突き進み続けるさまをさすが、転じていくら倒しても立ち上がる戦士をさすようにもなった。
 つまりは、黒羽のことである。
 ごう、と激しい音とともに突っ込んでくるもう一人のアーマー兵士。
 黒羽は集中的に殴りつけられ吹き飛んだが、ベニヤの壁を突き破って転がるだけですぐに立ち上がって見せた。
 更に突っ込んでくる兵士――たちの足下が突如としてカラフルな炎で燃え上がる。
 見れば、黒羽の後ろでソファに腰掛けていたアーリアがウィンクと同時に投げキスをしていた。
「黒羽くん、そろそろ危ないんじゃない? 敵も対応してくる頃よ」
「かもな。けど俺は恐れねぇ。スピリッツは俺が守ってやる」
 ついてこい、と指で招く黒羽。そこへ、次々にマイクロミサイルが打ち込まれ爆発をおこした。

 イレギュラーズたちの作戦は敵の分断。つまりは集中砲火リスクの軽減である。
 作戦区域のできるだけ端から攻めることで集合する速度を半減させたのも大きかった。
 そもアーマー兵士たちは作戦の都合上ひらたく広く分散しており機動力の低さから合流が遅い。そこに着目し、端から食い潰していく作戦に出たのだった。今回のメンバー構成にとってはおよそ最適解に近い作戦である。
 一応この作戦の障害があるとすれば、HPや防御力の高いアーマー兵士たちを、合流するよりも早く殲滅する必要があるということくらいだろうか。集中する火力を下げたり守りに転じたりすると、敵の合流が間に合ってしまいダメージをおうリスクが高まるのだ。

 黒羽たちの担当した右翼側とは別に、左翼側にはグドルフやメルナたちが配置されていた。
「オラオラどうした軍人共。税金の無駄遣いが趣味かぁ!?」
 大声で煽りながら、グドルフがショルダータックルの姿勢でアーマー兵士へと突っ込んでいく。
 鍛えた筋肉と核兵器が同等の強さになりうるのが混沌の世界ルールというやつである。『そのへんの山賊(自称)』が重装備の兵隊をショルダータックルで吹き飛ばすのもまた道理なのだ。
「どうしたぁ? ほら、にげるな雑魚ォ」
 両目を見開き、むき出しの胸にターゲットマークを書いて舌をだす山賊。
 怒り狂った兵士は拳にパイクを展開して殴りかかった。
 ――が、その横から割り込むように剣を繰り出すメルナ。
 青き炎が燃え上がり、兵士の強固なアーマーを熱切断していく。
 そのまま強引に切断しきると、兵士は青い炎に包まれて転がった。
 彼らのような強固な装甲と高いHPをもつ連中にとって、メルナの『蒼炎ノ剣・破焼』はかなりのメタであった。
「こんなところで退いてなんていられない」
「その通り!」
 天十里は駆けつけたアーマー兵士の機関銃射撃を周回軌道を走ることで回避すると腰から抜いた拳銃をヒートさせ、真っ赤に燃える弾丸を発射。
 装甲をねじるように穿った弾が兵士に打ち込まれるが、兵士はかまわずマイクロミサイルを発射。
 追尾したミサイルが天十里へ集中。爆発――するが、そこに現れたのは装甲を展開しきって軽く壁のごとく立ちはだかったレイリーであった。
「そこの鈍足達よ。この私、シュタインに一撃を入れられるならやってみよ!」
 グドルフや天十里たちに比べてレイリーのBS確実性が低いことはもう学習済である。一人か二人引きつければ十分だ。
 引きつけ行動もそこそこに、レイリーは味方の防御代行に集中する。
 連携の基本は『技能のパズル』である。複数の個性をもった人間が組み合わさることで、やりようによっては無敵の連係プレイが可能になるというものだ。
「こいつ……要注意人物のレイリーか! 敵の要に立ち塞がりやがる。無視できねえ……!」
「かまわん。火力を集中してゴリ押ししてやれ!」
 無数のミサイルを集中させるアーマー兵士たち――に、魔術ミサイルが帰ってきた。
 レイリーという壁の裏から一方的に魔術砲撃を放ったユゥリアリアの『ディスペアー・ブルー』である。
 二人同時にかばえるレイリー。攻撃力もそれなりにありBS回復手段ももっている。もはやちょっとした塹壕である。
「しばらく互いに撃ち合っていていただきますわー」
 一方でユゥリアリアのディスペアー・ブルーが直撃したアーマー兵士は魅了効果をうけて味方の兵士へ機関銃を乱射し始める。
 火力の逆利用もまた、こうした敵への友好な対策である。
 そうこうしているうちにメルナたちの連携攻撃で破壊されたアーマー兵士が小爆発を起こして倒れ、燃え上がる。
 乱れた髪をととのえて空を見上げた。
 空を飛ぶ燕がくるくると周り、ブラックハンズの到来を知らせている。

●ブラックハンズ
 戦車が動きを止め、車体の上へとショッケン・ハイドリヒが立ち上がった。
「はやり……私を阻むのはお前たちになったか、ローレット」
 ずらりと横並びに展開するブラックハンズ。副官が前進の号令を出すと同時に、彼らはゆっくりと歩き出した。
「貴様らさえいなければ、こんなリスキーな作戦を立てるまでもなかったのだ。
 今頃秘密裏に例の古代兵器を手に入れ、私はさらなる地位に登っていた」
 対して。
 イグナートたちもまた横並びに整列し、ゆっくりと歩き出す。
 レイリーは手足から装甲を展開し、秋奈は左右の鞘から刀を抜く。
 鋼の巨漢は両腕の衝撃発動装置を起動し、機械鎧の騎士はビームサーベルを抜いた。
 両者の歩く速度がわずかに上がる。
 ユゥリアリアは魔法のかかった歌を口ずさみ、周囲に無数のイルカ型のオーラを踊らせ始め、アーリアはスキットルに残った酒を飲み干して唇を親指で拭った。
 鉄仮面の副官が目を光らせ、5~6人はいるであろう兵隊たちが軍刀を一斉に抜いた。
 それぞれが早歩きから少しずつ走る姿勢へとシフトする。
 メルナが両手剣に青い炎を燃え上がらせ、拳を手のひらに打ち付けた黒羽がオーラを炎のように燃えがらせる。
 カブトガニ鎧の兵士が肩から魚雷発射装置を、腕にショットガンをそれぞれ展開する。
 それぞれが走り出し、加速をかけ始める。
 グドルフがボウガンの狙いをつけ、天十里は抜いた二丁拳銃のセーフティーを解除。
 大鷲飛行種が低空飛行状態からボウガンの狙いをつけ、金髪二丁拳銃の女がウェスタンハットの下からにらみをきかせ水平に拳銃を構える。
 ガード姿勢のまま一気にトップスピードにのる貴道。
 広げたコートの内側から無数のナイフを見せつけ走り出すナイフ使い。
 アルキメデスレーザーを浮遊させ発射するショッケンと。
 前傾姿勢で疾駆するイグナート。
 両者は全速力のまま、猛烈に激突した。
「オレの大切なトモダチはあんたみたいな考えのヤツに殺されたよ。
 その時に二度とさせないって誓ったんだ! 力による蹂躙なんて!」
 オーラを噴射して高速移動をかけたイグナートの跳び蹴りが、ガード姿勢のカブトガニ鎧兵に激突。
「ぬん……! こやつは拙者に任されよ!」
 至近距離からショットガンを発射するカブトガニ鎧兵。イグナートはそれを間近にうけながらも宙返りをかけて着地、さらなる突きを放ってカブトガニ兵をマークした。
「ヘイ、カンフーボーイ。堂々とタイマン張れるなんて思ってねえよな」
 横顔を殴りつけようとイグナートの襟首をつかみ拳を振り上げた鋼の巨漢――の横っつらに、猛スピードで突っ込んだ貴道のパンチが命中した。
 首からでてはいけない音がしてサングラスが砕け散ったが、巨漢はギラリと笑って反転。貴道の顔面を殴りつける。
 あまりの衝撃に貴道は吹き飛んだ……かに見えたが、衝撃を腰を中心とした動きで逃がし、その場に立ちとどまって見せた。
「ヒュー、ボクサーだぜ! うれしいねえハニー、最近は骨のねえ雑魚ばっかりで飽きてた所だ」
「そういう鉄帝の気質は好きなんだ。馬鹿共は居た方が面白い。
 だからよ……ショッケンみてえな勘違い野郎に居座られちゃ迷惑なんだよ!」
「そういうこったクソ軍人野郎がッ! 二度とそんなニヤケ面出来ねえようにしてやるぜ!」
 ボウガンをショッケンに向けて走るグドルフ。
「奴らは将軍狙いです。防御を」
 副官が目をギラリと光らせて防衛指示を出した。
 ショッケンや副官といった重要なメンバーをかばうように展開させる指示である。
 が、グドルフはべろりと舌を出してボウガンを手放した。腰にぶらさげていた手斧を握り直し防御姿勢にあった兵士立ちへと思い切り投げつけた。
「戦術フェイント……こしゃくなマネを!」
「まんまと引っ掛かってくれたねえ。遊んでくれてありがとよ、クソカスども。くたばる前にずらかるぜ!」
 誘い出された形になった兵士たちがグドルフに襲いかかる。
 副官はまだ防御についていない兵士に指示の変更を通達。
 残る兵士がグドルフを一とするノーマークの前衛チームへ張り付くように動き始めた。
 軍刀で斬りかかるようにぶつかっていく兵士。
 メルナはそれを剣で受けると、瞳を青く輝かせた。
(ここが正念場。苦しくても絶対耐えきって見せる……!)
 副官による強化がなされた兵士を、蹴りつけからの斬撃によって体勢を崩すことで弱体化させていく。
 はねのけたところで、剣に宿らせた青い炎を巨漢めがけて解き放った。
「俺狙いかよ! ……ってことは?」
「戦神第17強襲部隊隊長、茶屋ヶ坂アキナ! さぁ、戦争の仕方を教えてやるわ!」
 真っ赤に輝く刀を握り、秋奈が突撃を仕掛けてくる。
「奴らの狙いはビッグだ。奴を止めろ!」
「御意!」
 軍刀で斬りかかる兵士……だが、秋奈は相手の軍刀を破壊。その場で高速スピンをかけると腕と首をそれぞれはねた。
「甘いのよ。止められる駒じゃあないわ」
 一方で、装甲を展開したレイリーがナイフ使いへと体当たりを仕掛けていく。
「お前の攻撃は厄介だ、付き合ってもらう」
「それはこっちの台詞だ。アンタに付き合ったら負けなんでな」
 ナイフ使いはレイリーから大きく飛び退くと、別の兵士によるタックルをぶつけてきた。
 その上で、ナイフを後衛メンバーであるところのユゥリアリアめがけて発射する。
「させねぇ。俺がいる限りな」
 そこへ立ち塞がる黒羽。
 飛んできたナイフを素手で掴んだ。
 血は出るが、痛みはすでに吹き飛ばしている。
「スピリッツ、兵士たちを追い払えるか」
「少し難しいわねぇ。魅了攻撃で爆撃したいけど、味方に密着しちゃってるから……」
 グドルフの周りにいる兵士が狙い目だが、そのグドルフに魅了なんかかかったら地獄である。
「そんなときのためのコレ、よね」
 アーリアはとろみの強い酒を手のひらにだぱだぱとかけ流すと強く残った香りをフッと息でとばした。
 魅惑の魔法が距離を飛び越して発動し、グドルフの周囲に集まっていた兵士たちが突如として燃え上がる。
「山賊ちゃん、走って敵を引き離してねぇ。その間に魅了しちゃうから」
「おう任せ――山賊チャン!?」
 そうこうしている間に、黒羽めがけて集中砲火が浴びせられていた。
 銃撃やボウガン、ショッケンによるアルキメデスレーザーが浴びせられる。
 黒羽はそれをクロスアームで吹き払うと、不適に笑って見せた。
「貴様、情報にあった『アナタトイ』か……はやり残しておくには危険すぎる!」
 突撃をかける機械鎧の騎士。
 ビームサーベルが黒羽の身体を貫くが、即座にユゥリアリアがミリアドハーモニクスの歌をうたった。
 人間の耳では聞き取れないような高音域で放たれた歌が周囲のイルカ型オーラを操り、黒羽へと次々に飛び込んでは生命力へと変換させていく。
「船のときの仕返しをしてやらなきゃね。時間を掛けて攻めてきたことを後悔しなよ、僕はもうトップギアだ!」
 巨漢めがけて銃撃を浴びせにかかる天十里。
「オイオイそういつまでも保たねえぞ。奴をなんとかしろよな」
「仕事してから言いな」
 マガジンを落として素早くリロード。金髪カウガールはさらなる射撃を浴びせにかかった。
 軽く巻き込まれる位置にあった天十里は飛来する弾丸へむけて射撃。
 連続でカウンターバレットを仕掛けると空中に火花を散らした。

 戦いは激化に激化を重ねた。
 敵を一人倒すうちにこちらもひとり倒され、二人倒すうちに二人倒され……拮抗する戦力は徐々にノーガードの撃ち合いへと発展していく。
「ソロソロ……かな」
 倒れた仲間をかばうように立ちつつ、イグナートが貴道やグドルフ、レイリーたちの顔を見た。
 ギラリと目を光らせる副官。
「退くか。それもいいでしょう。所詮あなた方は部外者。スラムの民が何人死のうと関係ないはず」
「いいや、それが関係あるよのねー。『そういうお仕事』なもんだから」
 などと言って、秋奈は刀を収めてぴょんと跳躍。
 走ってきたレイリーの愛馬へと相乗りすると、倒れた仲間を両脇に抱えた。
「ほう……」
 目を細めるショッケン。
「てっきり、この私への憎しみで動いていたかと思ったが……」
「憎くないわけじゃないけど、ね」
 天十里は倒れていたバイクを素早く起こすと、牽制射撃をしかけながら走り出した。
 一方でグドルフもまたボウガンを乱射しながら仲間を両脇に抱え、すたこらと走り出す。
「俺らの仕事は『時間稼ぎ』だ。キッチリ稼がせてもらったぜ」
「なるほど。踊らされたわけか……つくづく私の邪魔をしてくれるな」
 ショッケンは飛来した銃弾やボウガンを払い落とすと、心底不快そうに顔をしかめた。
「だが、良い。決着はいずれつけよう。貴様らとも……な」
 倒れた味方を回収し走り去っていくイレギュラーズたちを見送るようにして、ショッケンは手を高くかざした。
「このエリアの制圧は完了した。次の仕事に移る」

成否

成功

MVP

グドルフ・ボイデル(p3p000694)
山賊

状態異常

銀城 黒羽(p3p000505)[重傷]

あとがき

 ショッケン部隊の足止めに成功し、住民避難を完了しました。
 バラック街での人的被害は最小限に抑えられたようです。

PAGETOPPAGEBOTTOM