PandoraPartyProject

シナリオ詳細

見習い騎士と大切なメモリア

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「やあ、特異運命座標(せんぱい)。最近は海洋王国で忙しいと聞いて居るが……体の調子は大丈夫だろうか」
 金の巻き毛を揺らして朱の瞳をぱちりと瞬かせた少女、イル・フロッタは普段の騎士服とは違い、私服とコートを羽織り特異運命座標を出迎えた。復興の途中である天義の国で粉骨砕身、全力で取り組んでいるイルは特異運命座標達と共にのんびりと仕事ができればと考えたのだ。
 イル曰く、天義国内は火事場泥棒の存在や未だに復興が果たされぬ地域の対応が求められている。復興を担い、貴族として日々を忙しそうに過ごす彼女の先輩――憧れの的、と言えばイルは首をぶんぶんと振っていた――リンツァトルテ・コンフィズリーの助けになりたいというのが彼女の本音なのかもしれない。
「ご覧の通り、天義は焼け野原になった部分もあれば魔種たちの暴走で瓦礫だらけの所もある。
 ……焼け出された民たちは聖堂に身を寄せたりしてるが、大切な思い出が瓦礫に埋まってる民も多くいるらしい」
 地道に民への支援を行う騎士団と同様に、上層部――騎士団の幹部や貴族達、そして司教以上――は様々な政策などで天義の復興に力を入れているらしい。イルもそうした場所にコンフィズリー家の当主として参加するリンツァトルテに手伝えることはないかと問うたのだが……

『大丈夫だ。これもコンフィズリーとしての務め。お前も騎士団として励む様に』
 ぽん、と掌が頭に乗せられる。随分と物腰も柔らかになったリンツァトルテが良くするようになった仕草だが、イルは子供扱いされている気がして不服であった。
『はい! じゃあ、見回りなどをしてきます。先輩、あまり根を詰め過ぎないでください。
 お土産、買ってきます。最近民達が私によくしてくれるので……クッキーとか、食材だとか』
 瞳を輝かせて、そう言ったイルにリンツァトルテは愛らしい笑みで人に好かれやすいイルらしいと感じたのだろう。くすりと笑みを漏らしてから彼は頷く。
『お前も、やる気は十分だが空回りしたり根を詰めない様に』
『はい!』

 ――というイルにとっては(先輩が頭を撫でてくれた嬉しさと子供扱いされた切なさも含んだ)回想を感情たっぷりに伝えてくる。
「先輩も忙しそうだし、私は私が出来る事からしっかりと、って思うんだ!
 ……で、特異運命座標(せんぱい)には一つ手伝って欲しくて。私と街をぐるりと回って見回りを一緒にどうかな。疲れたら休憩とかしてもいいと思う」
 見回りでいろいろ詳しいのだとイルは胸を張る。復興の為にカフェなどを営む者や他の国家での流行を取り入れた者もいるらしい。そうした場所に行ってみるのだって楽しいと思うと嬉しそうに桃色の瞳を輝かせたイルはごにょごにょと「それから」と秘密の様に言う。
「……先輩に、子供扱いされない方法って、いい案あるかな」
 所謂、恋バナだったのだろう。そうして恥ずかしそうにしている彼女は騎士というよりも一人の乙女だ。
 頬を赤らめたイルが顔を上げたところで、何処からともなく叫び声が聞こえる。
 それが聖堂の方面だと気づき、彼女は走り出す。どうやら、聖堂に盗みに入る不届き者が居るのだとシスターが涙を溢しイルへと駆け寄る。
「休息を兼ねて、と思って声をかけたかったんだが……ちょっとそういう訳にもいかないみたいだ」
 火事場泥棒を見逃がしては『天義の騎士』の名が廃る。
 イルはどうか手伝って欲しいと特異運命座標を、見てからこっそりと言った。
「――あ、さっきの話も……良ければ聞かせて欲しい……な、と」

GMコメント

 夏あかねです。
 ほのぼのとした天義もいいもんだ。

●成功条件
 火事場泥棒を確保する

●天義の聖堂
 ある復興エリアで、人々の保護を行っている聖堂で盗みを働いた者が居ます。
 盗まれたのは嘗ての戦いで命を失った母の形見であるイヤリングだそうです。
 火事場泥棒の捜索~そして確保して騎士団に引き渡してください。
 火事場泥棒を確保した後は聖堂の中でシスターたちが復興支援で営むカフェに行きたいとイルは考えています。カフェでは紅茶やパンケーキを楽しめます。(どうやらイルはよく訪れるそうです。イルとの恋バナやフリートークもできます)

●火事場泥棒
 どこかに逃げた軽装の男です。イヤリングの他、様々な金品を盗み出しました。
 彼らの捜索には非戦スキルや地道な聞き込みを行ってください。
 (また、天義のNPC/探偵サントノーレやその他関係者などに頼ることもOKです。多忙な場合や状況にそぐわぬ場合は出会わなかったという判定となります)
 男たちはアジトを復興エリアのどこかに構え、8人(盗む際は4:4にわかれています)で行動するようです。足取りを掴んだとしても4名しか確保できませんので、アジトを突き止めて、8名全員を確保してください。

●イル・フロッタ
 天義貴族の母と旅人の父を持つ騎士見習い。母の名誉が為に騎士を目指していましたが、最近は憧れの先輩(コンフィズリー家のリンツァトルテ)の為にとも考えています。
 特異運命座標の皆さんは英雄であり、大切な友人。信頼しています。
 指示があれば従います。基本的には軽やかに動くアタッカーと考えてください。リンツァトルテは曰く手がかかります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 よろしくお願いいたします。

  • 見習い騎士と大切なメモリア完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年01月08日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
蒼銀一閃
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
コロナ(p3p006487)
ホワイトウィドウ
シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵
ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)
雷神

リプレイ


 弱り目に祟り目、とはよく言ったもので。ベアトリーチェ・ラ・レーテが撒き散らした戦禍からの復興は人々の命の輝きと同時に悪しき部分も見せるものだ。そうして立ち上がる人々も心のどこかではまだ辛い思いを抱えている――のだが、そうしたときに火事場泥棒というものは存在している。
「復興の隙に盗み、ですか。忙しいこともあって、人目がない時間に魔が差すのですね。
 いいでしょう、悪さには報いがあるということを教えて差し上げます」
 魔が差すというのはこの国では的を得ている気さえするのだ。『ホワイトウィドウ』コロナ(p3p006487)は復興に向かう国の様子を眺め、『魔が降り注いだ』後に傷ましいと眉根を寄せる。
「そうだな。悪さには報いがあるし、それに……復興のために頑張っている人から物を、それも大切な物を奪うなんて見過せない。
 盗まれた人のためにも、これからの天義の為にも必ず火事場泥棒たちを捕まえよう」
 これからの天義――そう告げるは『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)。アークライト家に嫁いできたばかりの彼女にとっても祖国となったこの場所は大切な地だ。そこに住まう国民たちの心が脅かされるのを見過ごせないとポテトは強く決意する。同様に、『困難の中にいる人々』に対しての行いを赦せるものかと『疾風蒼嵐』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)は唇を尖らせる。
「……盗んだ方も色々苦しいのかもしれないけど、でもこんなの絶対駄目だよ!
 お母さんの形見、なんてきっと色々な想い出や想いが詰まってる。絶対取り返さなくっちゃ……!」
「うん。休暇中に皆には悪いと思ってる、けど、どうかよろしくお願いしたいんだ」
 視野狭窄。正義にまっしぐら。そう称されたイル・フロッタも多少は落ち着いたのだろか。コロナ、ポテト、シャルレィスを見回してからイルは「よろしく」と頭を下げた。
「頭を下げる必要ないよ。私達だって怒ってるんだもん! それこそ鮫の餌食にしたい位に!
 大切にしているものを盗むなんて許せない。あんな大きな戦いの後にそれすらなくなったらって思うと……捕まえてお仕置きしてあげないと!」
『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)にイルは「鮫で?」と問い掛けた。曰く、ファントムナイトの際はサメでがおがおされたそうなのだ。
 ぱちりと瞬くスティアとイルの様子にくすりと笑った『お道化て咲いた薔薇人形』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)は「泥棒がいるのよね? 捕まえるわ!」とやる気十分である。
「頑張って探して、まとめて捕まえられるようにしないといけないわね。
 ……この苦境は、誰にとっても同じ。皆で頑張れたらいいのにと思うの!」
「ええ。頑張りましょう。復興の大部分は天義の――イルさん達に任せっきりだったものね。
 この機会に少しでも手伝えるのであれば嬉しいわ。それが泥棒退治でも、ね?」
 穏やかに笑った『舞蝶刃』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)とて天義の貴族ミルフィーユ家の出身である。この国特有の『正義』において断罪された過去を持つが――それでも祖国を思う気持ちは変わらない。
 眩いばかりの金の髪を揺らしてベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)は「任務に関しては承知した」と頷く。ローゼンイスタフ家の乙女は誇りにかけて民たちを守らねばならないのだ。
「盗人を捕らえる、か……ふふふ、『探偵』らしい事件が回ってきたじゃないか。
 この手合いの依頼が多くなれば楽しいのだがね」
 秘密を暴く事が楽しくて楽しくて仕方がない。『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)の在り方そのものは盗人たちの『秘密の隠れ家』を暴くことに歓喜を覚えているのだろう。さて、謎を解くべく『探偵』を始めようではないか――


 聖堂付近を担当するポテト、シャルレィス、ベルフラウの三人は先ずは被害者女性へと聞き込みを行った。
 どのような形であるかと問い掛ければ、決して高価なものではないらしいが細工が丁寧に施されているものなのだそうだ。特徴があればあるほど良いとポテトはくるりと宙へと振り返る。
「済まないが、こんなイヤリングを持った人を知らないか?
 そこに保管されていたんだが、持って行った人を探しているんだ」
 きょとりとした女性にベルフラウは精霊たちと話しているんだ、と注釈した。優れた感覚を研ぎ澄ませてシャルレィスは侵入経路の捜索を行う。
 足跡、遺留品、目撃者、どうやて侵入したか――探偵らしい調べ方を後押ししたのは精霊たちだ。
『なんか男の人だった!』
「うん。それで……此処に何か引っ掛けた後があるね」
 ロープを使用した痕跡が存在しているとシャルレィスが指さした。きっと取り返すと依頼人を力強く鼓舞してからシャルレィスとポテト、ベルフラウはアジトの捜索に向けて歩き出した。

「御機嫌よう、サントノーレ氏。最近は如何ですか?」
「珍しいじゃねぇか。あの質屋に最近いろんなものがあるってんで俺も仕事で」
 へらりと笑った探偵サントノーレにコロナはこれは良い情報だとアンナとイルを振り返った。
「詳しく聞かせてほしい」
「相変わらずだな……そっちのお嬢さんも何か訳知り顔じゃねぇの」
 ずいずいと攻めるイルにサントノーレが焦るなと子犬でもじゃれさせるように手でぺしりと追いやった。
 視線を受けたアンナは「ええ。情報屋達にも手土産を渡しながら此処に辿り着いたの」とサントノーレに笑う。
「それで? どういう相手か……イルさんもだけれど、何か情報があれば共有しましょう」
「サントノーレ氏は最近急に羽振りがよくなった数人組について……。いい情報があるといいのですが」
 聖女と貴族。二人の視線を受けてからサントノーレは「あーあ」と小さく声を漏らす。
「まあ、よく聞くよ。換金したいってンで適当に盗んでは価値のない物を持ってくる坊主とか」
「価値がない? 盗み慣れてないのね」
 アンナがさらりと言って見せればイルは「盗み慣れてない盗人なんて騎士見習いよりしたじゃないか」と呆れて見せた。
「……ええ。今日は勉強のつもりでイルさんもサントノーレさんの話を聞いて?」
「まあ、詳しく話すよりは実地で。ほら、きょろきょろ周りを見回してあからさまに怪しいだろ?」
 サントノーレが指さす方へとコロナは視線を送った。コネクションを活かしたアンナと情報集約したコロナはおや、とそれを見る。今までならばとっ捕まえようと飛び出すイルもアンナに「静かに」と言われ静かにその動向を見守っている。
「怪しいわね。クロかしら」
「明らかに」
 コロナとアンナの視線を受けてサントノーレがひらりと手を振った。走り出した青年について行けというハンドサインらしい。
「探偵から情報を得たんだから、もうちょっと手土産以上にくれよな」
「あら。後でパンケーキでも奢ってあげるわ。女子会に貴方が来たいのであれば、だけど」

 伝令役であるベルフラウから情報を共有できたことによりヴァイスは『薔薇道化の存在証明』を使用して街並みや、動物、精霊、霊魂などと会話を交える。応えてくれるかどうか――は状況次第ではあるがやけに好意的な鼠が尾をゆらりと揺らして『探偵たち』へと返事を返した。
「ふむ……」
 ヴァイスはくるりと振り返り「人以外にも他人に心を掴みやすいって効果は発揮されるのかしら?」と小さく笑う。それも会話次第――なのだ。
「あなた、少し教えて下さらないかしら?」
 穏やかに心を落ち着かせる世界からの贈り物で穏やかな空気を作り出しながらスティアは徐々にアジトを突き止めるように進んだ。強欲を探した感情探知。
 そのすべての情報を集める様にシャルロッテは電動アシスト車椅子でのんびりと進みながら「ふむ」と小さく呟いた。
「ボクはこれでも『探偵』でね。調査は得意なんだ。
 探偵の下には事件を解決するピースが必ず揃わなくてはならない、第八の戒でそう決まっているのだよ」
 さて、揃ったピースは様々だ。
 現場に残された手掛かりより何かを引き摺った後があるそうだ。そして走る男たちを精霊たちは鬼ごっこと称して追い掛けた。
「成程……? 随分と迂闊ものだな。犯人は凡そ盗みには慣れていないだろう。
 そして――盗み出した品にも程近い所に居た悪戯気分の若者であるとも想定される」
 そうした若者たちの存在を看破したならば話は早い。狙われやすいのは聖堂や彼らの付近であり、こうした生活に飽きが来て盗みをスリルで働いてるとも思える。
 ならば、しっかりしたアジトではなく秘密基地か――そこまで口にしてからシャルロッテはゆっくりと顔を上げた。
 全員が集合し、堂々と現場へと踏み込んだはベルフラウ。
「貴様らは犯してはならぬ罪を二つ重ねた」
 戦乙女は『犯人』を見下ろした。堂々たるその言葉に合わせる様にシャルレィスが敵を惹きつける。
「一つ、シスターを泣かせた事。民衆の心を癒す者の心を傷付ける許し難き行為である」
 ヴァイスの身体より茨が顕現する。毒を持つそれは不吉を感じさせながら痛みを刻み付けていく。
「二つ、イルの相談を妨げた事。自身の胸の内を晒す気概を見せた乙女を邪魔立てする許し難き行為である」
「えっ」
 何処か嬉しそうになったイルにポテトはくすりと笑った。こんな場所でも、自身の相談を真正面から受けてくれたベルフラウにイルは嬉しくて堪らなくなったのだろう。
「今回はイルちゃんと肩を並べて戦えるのは嬉しいな。守られてるだけの私じゃないよ!」
「うん、スティアの実力を見せてくれ!」
 そう言われればスティアだって黙ってはいられない。宙に描いた魔法陣。遊び心が全開のそこより顕現した鮫にアンナが「鮫」と小さく呟く。
「鮫ッ!?」
 怯えた青年たちにシャルロッテはやれやれと焔の気配を放つ。
「我が旗を見よ! そしてその罪、死すら生温いと覚悟せよ!」
 鋭い剣幕のベルフラウにナイフを振るった男へとヴァイスが首を傾げて嗤う。
「駄目よ、オイタは。お仕置きが必要ね?」
「全く……この忙しい時期に、小さな悪事に落ちないでくださいな?」
 コロナが剣を一振りすれば光が放たれる。それに合わせる様にして細剣を振るったイルがスティアを振り返った。コロナはイルの成長も見たかったとその様子にうんうんと頷く。
「大人しくお縄につくならよし、抵抗するなら、痛い目は見てもらいます」
「そ、そんな素直に分ったってなるかよ!」
 吼えた青年たちに向けて、アンナは笑った。美しい笑みを浮かべて気品あふれる黒いマントを揺らす。
「天義の騎士、イル様の名においてあなた達を粛清するわ」
 え、と声を漏らしたイルの口をコロナがそっと塞ぐ。手柄を擦りつけ――否、手柄を上げた方がリンツァトルテにとってもいいだろうとアンナが目配せすれば意図が分かったのかヴァイスがそっと囁いた。
「そ、そうだぞ! 騎士の務め!」
 胸を張ったイルにコロナは心の中でちょっぴり笑って減点した。堂々となさい。マイナス10点。
 青年たちを惹きつけるベルフラウとシャルレィス。癒し手のポテトに支援されながら前線走るスティア(+鮫)とイルに合わせてアンナがその小さな体で跳躍する。
 背後より毒を以て制するシャルロッテにヴァイスがくすくすと笑った。彼らはイレギュラーズに捕縛されたのではなく騎士団によって捕まえられたと思っている事だろう。
「あとで、騎士団に報告しなくては、ね?」
 無事に確保した犯人たちを見下ろして、冷めきった瞳でベルフラウは言う。
「貴様ら、聖堂で雑務を手伝え。
 貴様らは今一度死した。故に、今後は彼女らと復興を成し遂げよ。それが盗賊へと身を窶し罪を犯した貴様らへの罰である」
 無事に取り返すことができたイヤリング。大切な思い出が詰まったそれは、被害者の心の支えになるだろうとそう感じられた。


 犯人を確保。暴いた謎に満足げであったシャルロッテは『探偵』を終えた事で些か満足げだ。
 休息を、とカフェへと特異運命座標を誘ったイルにポテトは「こんなところがあったんだな」と瞬いた。
「イルはこういう所にはよく来るのか?」
「うん。好きな食べ物とかあれば案内するから声をかけてくれ」
 にんまりと笑ったイルにポテトはパンケーキと紅茶が美味しいんだな、とメニューを眺める。
 さて、本題はと言えば……イルがぼんやりと漏らしたお悩み解決である。
「それで、イル。リンツァに子供扱いされない方法、だったか……」
 むう、とポテトが唇を尖らせる。ポテトから見てもリンツァトルテはイルを放っては置けない後輩として好意的にみられているが――「うん。リンツァにとってイルは護る対象なんだと思う」
「護る対象?」
「だから、隣に立ってリンツァを支えられるように頑張らないといけないな」
「うーん。私も子供っぽく見られるからアドバイスとかできないかもなんだけど……いい?」
 応援はしたいんだよ、と微笑んだシャルレィスにイルは居住まいを正してよろしく頼む、と向き合った。
「イルちゃんはイルちゃんのありの儘で素敵だけど、もうちょっとって事だもんね?」
「うん。シャルレィスも子供っぽく見られるんだな。同じ、だな」
 にっこりと笑ったイルにシャルレィスは頷き――そして、ベルフラウがイルとその名を呼んだ。
「イル、恋とは即ち戦だ」
 ベルフラウは堂々と、そう言った。その眩い赤い瞳に見つめられてイルはごくりと息を飲む。
 ローゼンイスタフの乙女曰く、『卿の思いを知らねば、相手は戦場に立つ事すら儘ならぬ現状は一人相撲と言う事だ』そうだ。
「お、想いと言っても……こ、恋というか、憧れというか」
 しどろもどろになったイルを見てコロナはくすりと笑う。彼女は度胸があって猪突猛進だというのにこうした場面ではこうもか弱い乙女になるのか。ある意味で『印象』をがらりと変えて見せる彼女をコロナは好ましく感じている。
「想いを告げよ、イル・フロッタ」
「えっ、そ、それは……も、もしかして、告、白?」
 イルが驚いた声を発せば「『秘密』を口外しないさ」とシャルロッテが冗談めかして笑う。
 ベルフラウは子供扱いされるという事は女性として認識されていないのだと堂々と言った。
「怖れるな、戦え! でなければ此度の火事場泥棒の様な者が現れ奪われるやも知れんぞ」
「えっ」
「……どうしてこちらを見たのですか?」
 慌ててコロナを振り返ったイルにスティアは「コロナさんが美人で天義の聖女だから?」とくすりと笑う。
「臆するな、卿は身も心も美しい。それでも万一想い叶わぬ時は私の所へ来い。
 女一人の涙を受け止める程度の胸は持ち合わせておる」
 うう、と唸るイルにヴァイスがくすくすと笑う。女子会となった今日。皆の話やイルの話を聞くだけで楽しいというものだ。
「悩んだ時はお砂糖を取りましょう。きっと、心が満たされて少し落ち着くわ」
「うんうん! リンツさんに『意識させる』んでしょ? んー、じゃあ、お出かけの時に腕を組むとか。
 それでね、『早くいきましょう、リンツァトルテさん』って言ってみるとかどうかな!?」
「腕を―――!?」
 ぎょっとしたイルにスティアは「あれなら私で練習してみる?」と揶揄う様に言う。冗談だけど、という前にスティアと腕を組んでみたイルは「ドキッとする!?」とパニック状態で問い掛けた。
「スティアをドキッとさせても意味ないんじゃないか?」
 ポテトの言葉にはっとしたようにイルがシャルロッテとヴァイスを見て顔を赤くした。
 その様子にも頭を悩ますアンナ。彼女とて子供扱いは意外と他人事ではないのだ。
「リンツァトルテさんが苦手だったりできない事をイルさんができる所を見せれば、少しは見直すのではないかしら」
 彼だって完璧ではないでしょう、と。そう告げた事にイルは「私が出来る事」と小さく呟く。
「ええ、それから……あの方はなかなかの難敵、地道にコツコツ女子力を見せつけましょう。
 そうですね、小休憩中にクッキーの差し入れとか、恋は小さなことの積み重ね、ですよ?」
 何層にも積みあがったパンケーキにメープルシロップが沁み込んでいく。イルは「がんばる」と特異運命座標を見回して笑った。
「イルちゃん、何時まで腕組む?」
「あ」
 イル・フロッタ、天義騎士見習い。――これが憧れじゃないんだ。恋心を自覚しました。

成否

成功

MVP

アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでしたイレギュラーズ!
 お仕事の後は甘い物でも如何でしょうか。どうやら、イルはしっかりと自覚をしたようで。
 応援してくださるという声が多いのもとてもうれしい事ですね!
 また、のんびりとこの二人も進んでいけるのではないでしょうか。

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