PandoraPartyProject

シナリオ詳細

危険なアノマリー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●逃走、脱走
 イレギュラーズに連れられて、少年少女達が暗い空間の中を必死に走り続ける。血潮の儀を行うために拉致されたところを、すんでのところで救出されたのだ。
「待ちやがれ!」
 鉄帝の地下遺跡に、荒くれ者達の声が響く。銃声も轟いた。イレギュラーズはその身を挺して銃弾を受け止め、目の前を走る子供達を守った。巨大なドームに抜けたイレギュラーズは、咄嗟に煙幕や爆竹を背後に放り投げた。彼らを追ってドームに飛び込んだ荒くれ者達を、文字通り煙に巻く。彼らが足を止めた隙に、イレギュラーズは廊下を抜けていった。
「くそっ! こうなったらアレを起動しろ!」
 一際傷だらけで偉そうな男がやせぎすの青年に向かって叫ぶ。青年はそれを聞いて思わず震え上がった。
「し、しかし! アレはまだ機能の解析すら済んでないのですが……」
「うるせえ! このまま取り逃がしたらどうせ俺達は終わるんだぞ! 四の五の言ってる場合か!」
「うー……どうなっても知りませんよ!」
 青年は顔を顰め、鉄の鞄から取り出した操作盤のスイッチを押す。その瞬間、ドームの床が光りだし、電気が四方八方へと流れていく。あちらこちらから蒸気が噴き出し、二足歩行のロボットが12体、次々にドームの壁から飛び出してきた。
「よ、よし、古代の機甲戦士! 敵をぶっ潰してやれ!」
 男はロボットに向かって叫ぶ。一つ目を紅玉のように輝かせ、ロボットの群れは男達をじっと見つめる。

 彼らの答えは――

●深紅の眼光
 子供達と逃げる君達の背後で、突然男達の悲鳴が響き渡った。咄嗟に振り返ってみれば、血塗れになった誘拐犯達が慌てて廊下へ飛び込んでくる。
「た、たすけ……」
 男の声は銃声に遮られる。蜂の巣にされた男達は、背後から振り下ろされた肉厚のブレードでバラバラに引き千切られた。黒い装甲を血に染めて、胴体の真ん中に埋め込まれた深紅の眼を爛々と光らせながら、銃口を君達へと向けてくる。
「敵発見、敵発見。排除」
 甲高い声で言い放ったロボットは、次々に銃弾を撃ち込んでくる。再び背後の子ども達を庇った君達は、咄嗟に武器を取って向かい合う。
「敵勢力の戦闘準備を確認。フォーメーションαを採用します」
 ロボットが言うなり、三列縦隊を組んで銃を向ける。

 子供達を守れるかどうかは、君達の腕に託されている。

GMコメント

●目標
 古代の防衛ドローンの破壊

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 地下通路で戦闘を行います。ドローンとイレギュラーズが睨み合うように配置されています。
 初期配置された通路の幅は3メートル、長物を振り回すには向きません。
 ドローンの背後にはドローンが保管されていた巨大な地下ドームが存在します。
 地下ドームは広く、立ち回りに困難は存在しないでしょう。
 通路にもドームにも誘拐犯の死体が転がっています。

●敵
☆古代の防衛ドローン×12
 誘拐犯が調整抜きで強引に起動した結果暴走を始めた古代のロボット。現在の技術では再現できない非常に靭性の高い合金が装甲や装備に使われており、正面からの撃破は困難。

・行動方針
→砲撃
 遠距離攻撃を重視するため、接近された場合は距離を取ろうとする。
→戦列
 背後に仲間がいる場合、防御姿勢を取って敵の攻撃を受け止める。

・攻撃方法
→高速弾
 右腕に備え付けられた小銃で攻撃します。弾速が早く銃弾も硬いため、貫通しやすい傾向にあります。
→スタンブレード
 電気を纏った金属棒で攻撃します。喰らうと痺れて少し動きにくくなります。


●NPC
☆子ども達
 防衛対象です。平時には言う事を聞いてくれますが、身に危険が迫った場合はパニックを起こして動けなくなってしまいます。

  • 危険なアノマリー完了
  • GM名影絵 企鵝
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年01月11日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

刀根・白盾・灰(p3p001260)
煙草二十本男
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女
風巻・威降(p3p004719)
気は心、優しさは風
アリーシャ=エルミナール(p3p006281)
雷霆騎士・砂牙
橘花 芽衣(p3p007119)
鈍き鋼拳

リプレイ

●子供を守れ
 最前線のロボットは腰を落として身構え、二列目のロボットが銃を構えて狙いを定める。藤野 蛍(p3p003861)は咄嗟に盾を構えて飛び出した。
「させない!」
 甲高い銃声が響き渡り、閃光が暗がりの中を走る。風巻・威降(p3p004719)は手甲の背で銃弾を壁際へ逸らし、彼もまたロボットへと一気に間合いを詰めていく。掌に練った気を刃へ変えて、正面のロボットへと叩きつけた。装甲の表面が僅かに凹んだが、ロボットはびくともしない。
「うーん……道連れにしては随分やばいのを起こしてくれたものですね」
 しかし折角子供を無事に助け出したのだ。ここで彼らを失うわけには行かない。威降はさらに腰を落として身構える。
「邪魔するなら廃棄処分だ。燃えないゴミに出してやる!」
「排除します」
 ロボットはまともに取り合わないどころか、三列目のロボットがさらに高速弾を撃ちかけてきた。絢爛な鎧に身を包んだアリーシャ=エルミナール(p3p006281)が銃弾を受け止めながらロボットへと踏み込んでいく。
「一難去ってまた一難とは此の事ですか」
「次から次に……! 子供達を連れて戻らないといけないのに……!」
 両腕に強靭な鎧を纏った橘花 芽衣(p3p007119)は、先頭で身構えるロボットに巨大な拳を叩き込む。ロボットは全身から蒸気を吐きながら耐え、そのまま僚機に従って後退りしていく。二人は武器を構え、その後を追って間合いを詰める。
「このまま逃げても後ろから撃たれるだけですし、やるしかありません」
「うん。絶対に無事に帰してあげなきゃ!」
 間合いを取って再び銃を構えるロボット。盾を掲げて果敢に突進、蛍は顔を顰めて叫んだ。
「儀式に惨劇に殲滅戦! まったく、この子達のトラウマになったらどうすんのよ!」
 彼女は剣を天井へ突き上げ、舞い散る桜で機兵の群れを包み込む。後退する敵を追いこみながら、彼女はちらりと背後を、刀根・白盾・灰(p3p001260)をちらりと見遣る。
「とりあえず刀根さん! 子供達の視界と射線を遮って! 絶対守り切って、皆無事に帰してあげるんだから!」
 最前線のロボットは閃光を放つ刃を振り回す。半身になって躱し、彼女は盾をロボットの正面へ突き出した。
「だから……少しの間、大人しく待っててね」
 震える子供達に言い残し、蛍は再びロボットに対峙する。灰はそんな彼女の背中に素早く敬礼する。
「ええ! 落ちぶれた三流騎士と言えど意地は見せますとも!」
 とはいえ素性も知れぬ強大な兵器を前にしては手が震える。彼は酒を呷って自らを奮い立てると、流れ弾を身を挺して受け止める。鎧から火花を散らせつつ、彼は子供達へと振り返る。
「かの機械は強敵! 私は卑しくも壁にしかなれませぬが、他の方は英傑! 必ず家に帰れますよ!」
 彼なりに励ましながら、ロボットから離れるように子供達を促す。大半は暗闇の向こうへパタパタと駆けていくが、数人はそれでも縮こまったまま動かない。灰は力任せに子供を抱え上げると、子供達と一緒に出口を目指して走る。その後に続いた二体のロボット、すずきさんにこじまさんがそれぞれ一人ずつ子供を抱え上げる。そんな彼らの姿をちらりと見送り、アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は花の模様が刻まれたブレスレットを指で撫でる。
「みんな、私達を信じてね! こんな相手なんてすぐに倒しちゃうから! 絶対に護って見せるからね!」
 背後の子供達を勇気づけるように叫ぶと、アレクシアはアリーシャの背後で魔力の塊を作り出す。小さな花びらと化したそれは、彼女が手を振るった瞬間に鋭く飛び抜け、ロボットの胴体に直撃した。火花の雨が散り、分厚い板金に深い傷が刻まれる。その背後に構えた別の一個体が反撃の一射を放った。アレクシアは素早く身を翻し、展開した障壁で銃弾の勢いを軽減させる。
「子供たちは絶対に護ってみせる! 大事な命を奪わせるもんか!」
「そうですね。常日頃戦っているように戦い、“我ら盤石なり”と示せば、見ている子らも安心でしょうか」
 アレクシアの言葉に頷くと、タクトを片手に桜咲 珠緒(p3p004426)はロボットの陣容を見据えた。その足元には、銃撃に斬撃でバラバラに引き裂かれたギャングの亡骸が転がっている。血とオイルが床を黒く染めていた。
「正規ルートであれば、血を提供する依頼くらいは受けられたものを……」
 勿論目的がいかがわしい以上、受けるつもりも無いが。珠緒はタクトを振るい、血の色の幻影で敵の被弾箇所や銃の射線を映し出していく。
「敵の装甲の弱点についてはまだ分析中です。今しばらくは、ドームまで敵を押し込むのを優先しましょう」
「あいわかった」
 仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は霊剣を抜き放つと、ロボットの眼前で身を躍らせて幾つも残像を残す。彼女は拳を固めると、目の前で身を縮めるロボットに掌打を打ち込んだ。その瞬間に激しい衝撃波がロボットへと襲い掛かり、よろめいたロボットは咄嗟に背後へ飛び退いた。
「悪行の報いを受けて自滅するのは勝手だが……まあいい。ついでに、全て解体して回収するぞ」
 その身に妖力を満たし、立て続けに汰磨羈はロボットへと踏み込む。
「……非戦闘員を狙う防衛ドローンとは笑わせる。退くがいい!」
 腰を据えた鋭い掌底。再びロボットの目の前で爆発が巻き起こり、ロボットは刃を構えたままさらに一歩後退りした。胴体に埋め込まれた一つ眼を爛々と輝かせ、イレギュラーズを睨みつける。
「侵入者の脅威レベルを変更。戦力の再分析を開始します」
「今更我らの強さに気付いたとて遅い! 貴重な遺物だろうと容赦はせん。バラバラに分解してやろう!」
 汰磨羈は鋭く切りかかる。刃と刃がぶつかり合い、激しい火花が暗闇の中を照らした。

●機械を引き裂け
 戦列を組んだ五人のイレギュラーズが、ブレードを構えて身を守るロボットと激突する。背後のロボットが次々に銃弾を浴びせ掛けるが、彼女達は怯まず前進を続ける。その勢いに押されるように、ロボットはドームまでぞろぞろと後退りしていった。
「戦場の変化を確認。フォーメーションを変更します」
 三列縦隊を組んでいた十二体のロボットが、慌ただしく二列横隊を組んでイレギュラーズへ対峙する。前線の五人は外側から包み込まれる格好だ。
「それで優位を取ったつもり?」
 蛍は早速敵の隊列へ突っ込んでいき、剣を振るってページの切れ端を大量にばら撒く。その切れ端は幻影と化し、機兵に凶悪な怪物の幻影を見せる。
「脅威レベル変更。迅速に排除します」
 次々に銃弾が蛍へ襲い掛かる。通路からずっと弾丸を受け止めていた蛍は、痛みで一瞬気が遠くなる。しかし、蛍はネックレスを握りしめ、必死にその場へ踏ん張った。
「ボクには仲間も珠緒さんもいる! このくらいでへこたれると思ったら大間違いなんだから!」
 珠緒とアレクシアが素早く治癒の光を蛍へ当てる。振り返った彼女は笑みを浮かべ、更に桜花びらの吹雪を巻き起こした。
「よし、まだ戦えるわ。だから今のうちに!」
「引き受けた。女子にあまり苦しい思いはさせられんからな!」
 汰磨羈は剣を担ぐと、目の前の一機へ袈裟懸けに斬りつける。その鎧は相変わらず表面にうっすらと傷がつくばかり、致命傷には至らない。
「ふむ。その合金の強度は大したものだが……」
 己の妖力を発揮し、汰磨羈は乾坤八卦陣を展開する。その中心に機体を捕らえると、剣を担いで拳を固める。
「ココを集中攻撃されればどうなる?」
 機兵の振り下ろした一撃を半身で躱すと、そのまま鋭い手刀を肩の付け根へ捻じ込む。再び身を捻って拳を叩き込み、今度は鋭い蹴り上げを叩き込む。肩の付け根一点に狙いを定め、汰磨羈は目にも止まらぬ乱打を放った。陰陽の妖気を纏った一撃は、やがてその関節を砕き、機兵の腕を床に叩き落とした。
「やはり関節部の強度には限界があるようだな。攻撃を集中させるぞ!」
「ふむ。簡単に言ってくれますが……」
 アリーシャは機兵の前腕を払い、そのまま肘の内側目掛けて切っ先を突き出す。ロボットは僅かに身動ぎし、刃を装甲で受け止める。弱点が分かったとはいえ、易々と攻撃を通してくれるわけではない。後列の機兵から銃撃を受け、アリーシャは咄嗟に跳び退る。
「やはり数が多い……! 速やかに数を減らさなければ……」
 機兵の突きを躱し、その膝の関節を力任せに切り裂く。バランスを崩した機兵はその場に崩れ落ちた。
「大丈夫です? まだ戦えますか?」
 アリーシャは背後を振り返る。膝をついて息を荒らげていた芽衣が、珠緒の回復を受けて何とか立ち上がる。手甲に光を纏わせ、再びファイティングポーズを取る。
「オーケー、オーケー。まだまだいけるよ!」
 芽衣は右の拳に炎を纏わせ、再び前線へと舞い戻る。咄嗟に身構える機兵の目の前で、素早く燃え盛る右腕を突き上げた。
「装甲が硬いなら、中の電脳を焼いちゃうだけだよ!」
 アリーシャ達が飛び退いた隙に、芽衣は機兵の顔面に炎の拳を叩き込む。豪炎が周囲に巻き起こり、機兵達を炎へ包み込んでいく。装甲が白熱し、その動きがひどく鈍る。
「よし、今だよ!」
「ええ。お任せを」
 芽衣とアリーシャは後列の機兵へ飛び掛かる。アリーシャは剣を真っ直ぐに突き出し、胴体の真ん中に埋め込まれたカメラに一撃を叩き込む。レンズが砕け、機体はぐらりとよろめいた。その隙に芽衣は片腕を掴むと、渾身のショットガンブロウを肩の関節へ叩き込み、無理矢理バラバラに引き千切った。
「よし、このままいくよ!」
 芽衣とアリーシャが一気に前進すると、機兵達はぞろぞろと後退りしていく。膝の関節を砕かれた機兵はその場で虚しく藻掻いていた。そんな戦場を見渡し、珠緒はタクトを振るう。
「左翼が少し押していますね。敵の陣形が崩れ始めた今が好機です」
 袖口から覗いた手術痕が僅かに覗き、大量の血がまるで花びらのように溢れる。その血はやがて幾何学模様を描き、右翼側に立つ機械を二体強調するように取り囲む。
「進言します。印で示した敵に対して火力を集中させてください。中央を突出させ、両翼を下げることで包囲陣形を組むのです」
 さらにタクトを振ると、珠緒の足下から円状の紋様がするすると広がっていく。
「ただし、珠緒がカバーできるのはこの範囲までです。少しでも戦闘継続が危うい場合はこの範囲から離れないように気を付けてください」
 空へタクトを掲げれば、天使の歌が響いて仲間達の傷を一つ一つ癒していく。彼女の後方支援は今日も万全だ。
「強力なドローンですが、行動指針は単純です。敵の攻撃を集中させなければ十分撃破は可能でしょう。決して無茶な話ではありません」
 子供達を避難させていた灰もようやく戻ってくる。新品の剣を抜き放ち、右翼の端からロボットへ突っ込んでいく。
「さっきは散々撃ってくれましたね! ネジ釘一本も残しませんよ!」
 勇気を奮って踏み込んでいく灰。しかし、ロボットは一瞬カメラに彼の姿を捕らえた切り、一顧だにしない。
「脅威レベルを最低に設定。対象は脅威たりえません」
「失礼な! いや、見下してくれていた方が助かりますけどね!」
 灰は自嘲気味にへらりと笑うと、黒みを帯びた剣を力任せに振り抜く。ロボットの膝関節を捉え、打たれた機兵はぐらりとよろめく。
「そこっ!」
 アレクシアは気合と共に両手を交差させて突き出し、再び小さな黄色い花弁を弾丸のように放つ。灰の塗りつけた毒で腐食が始まっていた関節は、彼女の一撃で砕け、自重を支えきれなくなった機兵達はその場に傾いで倒れ込む。乾いた銃声が響き、明後日の方へ銃弾が飛んだ。そのままアレクシアは威降へと手を翳し、白黄の花の蜜で脇腹の傷を癒していく。
「さあ、少しずつ押してるよ! 子供達の為にもここで踏ん張らないと!」
「ええ、その通りですね」
 威降は振り下ろされた敵の剣を躱し、その懐へ潜りこんでその脇腹に小太刀の切っ先を突き立てる。装甲板の溶接部が断ち割れ、中に埋め込まれていた大型の電池が剥き出しになる。
「首が分かれてくれていれば、そこを外すだけでおしまいに出来るのですが……」
 敵が怯んだ隙に飛び上がり、その頭に乗り上げ再び小太刀を突き立てた。装甲板の継ぎ目に刃を突き立て、ぱっくりと砕く。装甲がごろりと剥がれ落ち、敵の電脳が剥き出しになる。威降は小太刀を逆手にもって裏拳を振るうと、遂に刃が敵の後頭部を穿った。電脳は激しく火花を散らし、よろめきその場に倒れ込む。刀の油を払い、威降は叫んだ。
「さあ、このまま追い込みましょう!」

 機兵の関節を砕いて無力化しながら、イレギュラーズは暫くの間押し引きを繰り返した。最後には蛍の舞わせた桜吹雪が手向けとなって、遂に古代の機兵達はその役目を終えたのであった。

●血と錆
 地下のアジトを出ると、あたたかな陽光が雲の切れ目から差し込んでいた。蛍と珠緒は子供達を集め、その無事を確かめていた。跪いた珠緒は、子供達の腕や脇腹、足下に刻まれた銃創を目の前に引き寄せ、タクトを振るって傷を癒していく。
「少し流れ弾や跳弾が当たってしまいましたか。……痛みますか?」
「うん。ちょっとジンジンする……でも大丈夫!」
 子供達は目を丸くして笑みを浮かべた。先ほどまで死ぬ目に遭っていたのに、スラムに生きる子供たちは逞しいものである。蛍はほっと胸を撫で下ろした。
「良かった。皆も無事みたいね」
 多少の怪我はあったが、幸いにして死者は無し。身を挺して銃弾を受け止め続けた甲斐があるというものだ。鉄の両腕を持つ一人の少女は、蛍を見上げて笑みを浮かべる。
「大きくなったら、私お姉さんみたいになりたい! お姉さんみたいになって、家族の皆を守るの!」
「うん。その意気よ。スラム生まれだからって、生活を脅かされていいなんて理屈は無いんだから」
 意気込む彼女に、蛍も満面の笑みで励ました。無骨な鎧を外した芽衣も、大量の飴の詰まった籠をぶら下げ子供達へ歩み寄っていく。
「さ、誘拐されたり、変なロボットから逃げ回ったり……怖かったと思うし、今は疲れちゃったんじゃない? とりあえずこれでも舐めてみて。甘いものを食べたら、少しは元気になるから」
 芽衣は大粒の飴玉を差し出す。スラムの子ども達にとって、飴玉は宝石のように価値がある。競い合うように籠へ飛びつき、幾つも掴み取っていく。
「おっとっと、喧嘩しちゃだめだよ? ……まあ、その調子ならみんな大丈夫かな?」
 飴を幾つも口へ放り込み、子供達はもごもご飴玉を舐めている。その姿を見届け、芽衣は頷いた。
「よし。じゃあみんなワタシの馬車に乗って。送ってってあげるから」

 ドームの中には、撃たれ、斬られ、無残に四散した誘拐犯達の亡骸が未だ残っていた。アレクシアはブレスレットのレリーフを指でなぞり、その身に魔力を満たしていく。彼女の目の前に浮かび上がった魂。手を差し伸べて、魂をその身へ取り込んだ。その瞬間に流れ込む記憶。銃で撃たれ、踏み潰された痛みが真っ先に流れ込み、その苦痛がフラッシュバックして彼女は呻く。それに耐えても、流れ込むのは正体不明の男に金を積まれて誘拐を引き受けたというお粗末な記憶ばかりであった。
「バカみたい! ちょっとお金積まれたくらいでこんなことして、こんなになるなんて!」
 浮かび上がった冷や汗を拭いながら、アレクシアは呻く。
「まあ、斯様に短慮な連中に何か情報をよこすという事は無いだろうな。何も言わずとも、金さえ積めば動くのならそれに越したことはあるまい」
 汰磨羈は適当に相槌を打ちながら、ドームの彼方此方に散らばった古代機械の残骸を一か所へと引っ張り集める。内部の基盤や関節は破壊してしまったが、結局装甲は溶接の継ぎ目が割れたくらいで原型を保っている。攻撃の痕は残っているが、遂に正面から打ち破る事は出来なかったのだ。
「この装甲一つを練達で調べるだけでも、十分な成果は得られそうなものだが、はたして……」

 手ごろなロボットの装甲に誘拐犯だったものを乗せ、アリーシャと威降はアジトの外へと運び出す。血の臭いと油の臭いが混じり合い、思わず二人は顔を顰めてしまう。
「暴走する機械に手を出さなければこうはならなかったのですから、ただの自業自得に過ぎないのですが……こうも無残に死なれては、いくらかの憐れみも湧いてきてしまいますね」
「ええ。死んでしまえばみな仏です。せめて土の下には埋めておいてあげましょう」
 アリーシャの言葉に威降は頷く。器用にバランスを取りながら階段を昇り、ようやくアジトの外へと踏み出す。刀根が必死にスコップを固い地面に突き立て、墓穴を作っていた。
「こんな感じでどうでしょうか? 中々土が硬くて……」
「大丈夫だと思います」
 アリーシャと威降は息を揃えて装甲板を傾け、亡骸を墓穴の中へと放り込んでいく。そのまま三人は土を埋め直し、手ごろな石で粗末な墓標を作る。
「その魂の安らかなるように。再びこの世に生を享ける時は、その道を違わぬように」
 三人は静かに祈りを捧げた。

 かくして、イレギュラーズは暴走した古代機械の脅威を退け、子供達を無事に救出した。しかし、新たな魔の手がもう間もなく襲い掛かろうとしていたのである。

 おわり


成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お世話になっております。
この度はご参加いただきましてありがとうございました。
手慣れた皆さんには簡単すぎた課題だったかもしれませんね。

またご参加いただけますと幸いです。

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