PandoraPartyProject

シナリオ詳細

コングと消えた子供たち

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●モリブデンの子供たち
「ご覧ください。こちらが鉄帝首都スチールグラードに建設されるという新闘技場予定地となっております」
 女性キャスターがテレビカメラの前に立ち、マイクを握って語っている。
 カメラやマイク、スタッフの腕章には練達TVのロゴが入っていた。
「開発計画の責任者はこの廃棄区画を清浄化し、街を綺麗に、そして雇用を充実させることを掲げています。国の期待を背負った新事業というわけですね。
 ではそんな記念すべき土地のレポートに、特別な飛び入りゲストをお呼びしました。
 ラド・バウA級闘士、コンバルグ・コングさ――」
「ウホッホウッホ!!!!」
 画面斜め上から現れるコンバルグ・コング(p3n000122)。
 巨大なゴリラそのものである彼は咆哮とともにダブルハンドハンマーで大地を粉砕し、クレーターを作りながら土砂を吹き上げた。
 吹っ飛んでいくキャスターとカメラマン及びスタッフ。
「ちょちょちょーっ、カットカットー! なんで飛び込んだの!?」
 首にセーターの襟まいたいかにもなディレクターがメガホン片手に飛び出してくる。
 ハンマー姿勢のままナックルウォークで振り返るコング。
「……飛び入り、しろって言われた」
「そんな軍隊の奇襲攻撃みたいな飛び入りしなくていいから。っていうか物理的に飛び入ったらだめだから」
「うほ……?」
 コングは首をかしげ、なにがおかしかったのかわからないという顔で顎をかいた。
「だめだー。ちょっと休憩しよ。助っ人の到着まだなの? なんていったっけあの」
「あっイレギュラーズさんっすね」
 頭に絆創膏つけて戻ってきたカメラマンが、時計を見つつこたえた。
「さっき到着したみたいっすよ。ほら」

 到着した馬車。
 イレギュラーズ……つまりあなたが馬車から降りると、困り果てた様子のコングがマネージャーのテディにめっちゃ怒られていた。
「こまるぜコングぅ。仕事受けるって言ったのコングじゃあねえかよ」
「ウホッホ……悪かった。今度は、全部吹き飛ばす!」
「吹き飛ばしたらダメなんだって」
 もー、といいながら頭をかくテディ。すぐにあなたに気づいて振り返ると、コングもまたこちらへと振り返った。
 ドラミングをはじめるコング。
「オマエ、来たか! 待ってた!」
「いやあ俺も待ってたよ。制御するにもパワーがないと一瞬でミンチだからよ。とりあえず今日は……」
 テディが手帳をぺらぺらめくって仕事の説明をしようとした、そのとき。
「はぁ!? 子供が来ない!?」
 ディレクターが大声をあげた。何事かと振り返るテディたち。
 カメラマンが顔をしかめてディレクターと話していた。
「そうなんすよ。昨日ロケハンついでに子供の集団みつけて、前金払ってエキストラになるように依頼したんすけど、すっぽかしやがって。やっぱスラムの子供とか信じちゃだめっすね」
「おめーぬけてんなあ……親とか捕まえればいいだろ」
「それなんすけど、子供は浚われたの一点張りで会わせてくれないんすよ。そんならケーサツいけって話でしょ? 持ち逃げされたんすよきっと」
「…………」
 話を途中まで聞いていたテディが、手帳をパタンと閉じて厳しい顔をした。
「こりゃあ、マジで拉致られたパターンだな」
「ウホ?」
「ここらスラムじゃ軍隊や警察はまともに機能しねえんだよ。だからふらっと出歩いてるガキがたまに拉致られるんだよな。使い道なんでいくらでもあるっつーか……まあ面白くねえ話だ」
「うほ?」
 コングは全然わからないという顔をして顎をかいていたが。
「取り返せばいいか?」
「は?」
「子供、取り返す! オレ、しごと、引き受けた! 今行く!」
「コング!?」
 コングはカメラマンにナックルウォークで迫ると、襟首を掴み上げて子供たちの特徴や出会った場所、様子などを詳しく聞き出した。
 そして。
「オマエ!」
 あなたに、振り返った。
「子供探すの、手伝え! オレ、闘技じゃないこと、ワカラナイ! オマエ、オレよりできる! だから、探せ!」
 カメラマンを保ったまま、コングは激しくドラミングをした。

 こうして、テレビ取材の面倒をみるというへんてこな依頼が一転、『浚われた子供を探し出して取り返す』というややハードな依頼へと変更されたのだった。
 取材の。
 いや、子供たちの運命や、いかに。

GMコメント

同行NPC:『野生開放』コンバルグ・コング
https://rev1.reversion.jp/character/detail/p3n000122

■■■依頼内容■■■
旧成功条件:取材中コングが全部壊さないようにフォローする(破棄されました)
新成功条件1:コングと一緒に行方不明の子供を見つけ出す
新成功条件2:コングと一緒に行方不明の子供を取り返す

ラド・バウA級闘士コンバルグ・コングからの依頼でやってきた皆さんは、急遽変更された行方不明児童の捜索と奪還を開始しました。
タイムリミットは撮影が始まるまでの5時間。スキルとアイテムとプレイングを駆使して子供たちを見つけ出しましょう。(といっても素のプレイングだと字数的無理があるので、特殊ルールを設けています)

コングは闘技以外のことはまったくワカラナイし二百文字以上の文章を見ると混乱してウホウホ暴れ出すくらい要領が悪いゴリラファイターです。
ですが一度受けた依頼は諦めない気持ちや、子供が浚われたらかわいそうという純粋な気持ちから即決したようです。

■■■探索プレイング■■■
 皆さんは『1PCにつき1つまで』以下探索行動A~Cのうちから選択してください。
 またオプションとして、PC自身が希望した場合のみコングが調査に同行してくれます。
 コングはウホウホすることとドラミングすることとなんでもかんでも粉砕することなら得意ですが、それ以外はまったくなにもできません。二桁の足し算すらよくわかりません。大きなメリットは特にないですが、単純に『楽しい』というメリットがあります。楽しいよ。

 全員の行動結果によって得た探索ポイントの合計が高ければ高いほど、子供たちを発見するのが早くなります。
 逆に言うとすごく低かった場合時間内に見つからず、依頼が失敗扱いになることがあります。(この場合コング抜きで現場に突入し、それなりの怪我をおうといった事態もありえます)

※事前情報
 現場周辺は霊魂や精霊が弱く、それらを情報源にするのは厳しそうです。
 動物はネズミやカラスがわりと沢山いるので動物疎通は普通の聞き込みと同程度に効果があります。

・探索行動A:聞き込みをしまくる:1~2ポイント
 その辺の人たちにとにかく聞き込みをします。必要スキルはありません。
 彼らは持っている情報がそもそも少ないので、色仕掛けや賄賂その他のスキルを用いてもこれ以上ポイントが増えません

・探索行動B:情報通を見つけ出し、情報を得る:2~5ポイント
 町のおまわりさんや権力者にワタリをつけ、情報を獲得します。
 普通の人よりずっと大きな情報を持っていますが、ふつうは教えてくれません。
 どうしても教えたくなるような手段を行使しましょう。
 偉い人にコネ等を使って話し合いの席を設けさせ、更に適切なスキルを用いて情報を引き出すともっと効果的です。

・探索行動C:物理的情報収集:2~5ポイント
 現場から痕跡をたどるなどして探索を行います。
 専門知識があれば効率が上がり、捜索、医療、動物、科学、ケミストリー、ファーマシーの知識などにボーナス効果があります。
 他にも役に立つスキルやギフトがあるかもしれません。

・探索行動X:推理する:-5~+5ポイント
 そのものズバリ推理します。モロにプレイヤーパワーを使う上、専念した上にあまりに的外れすぎる場合探索ポイントが大幅に減るのであまりお勧めしません。
 ただしこの行動だけ特別に、他の行動をとっている『ついで』に使うことができます。
 情報収集の途中でちょこっとだけ推理をする、みたいな使い方が一番リスクが少ないでしょう。

※もしポイントをそこまで獲得できなかった場合、発見が遅れおおごとになった段階で発見することになるでしょう。
 対象は大幅に強化され、戦闘難易度が大幅にアップします。

■■■奪還プレイング■■■
 子供たちの居場所を見つけ出し、浚った連中を蹴散らして取り返します。
 戦闘によって取り返しますが、コングが大体壁ごと相手を吹き飛ばすので戦闘難易度自体はめっちゃ低減できるでしょう。
 ただコングは『てかげん』ができないので、子供たちがまとめてミンチにならないように立ち回るようにしてください。
 敵グループ(情報不明)をいくらか引き受けて、戦ってるうちに壁だけ壊してもらうなんて手もあります。そして割とお勧めです。

■■■おまけ■■■
 無事に依頼を完遂できたらあらためて撮影が始まりますが、ここのプレイングはチョットだけでも、ないしはなくてもOKです。

  • コングと消えた子供たち完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年12月31日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
日車・迅(p3p007500)
疾風迅狼
ンクルス・クー(p3p007660)
山吹の孫娘

サポートNPC一覧(1人)

コンバルグ・コング(p3n000122)
野生解放

リプレイ

●聞き込みは印象が大事
「ウホホ、ウホホ! ウホホ!」
 普段は炊き出しや配給などが行われる荒れた広場で、巨大なゴリラがドラミングしていた。
 否、身長3メートル近いコンバグル・コングが鋼の鎧をこぶしで叩きまくっていた。
 ゴリラのドラミングはグーじゃなくてパーだとか、そういう細かいことが吹っ飛ぶくらいインパクトのある光景である。
「「ウホホ! ウッホホ!」」
 横で一緒になってドラミングする『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)と『無敵鉄砲暴象』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)。
 どう見てもなんかのイベントか、頭がどうかしちゃったひとの会合だが……。
「コングだー!」
「うわーマジだコングじゃん」
「左右にいるのよく見たらイレギュラーズじゃね」
「ていうかリュカシスじゃね」
 そこはラド・バウA級闘士。ぱっと見のインパクトも相まって、だいぶ人だかりができていた。
「この中からウッホホ! 子供たちのことをッホホ! 知ってる人を見つけ出すウホホ!」
「口調、口調が引っ張られてるよ」
 『敬虔なる徒』ンクルス・クー(p3p007660)はよいしょといってコングの肩によじのぼると、大きく書いた紙を広げて見せた。

 テレビ撮影が始まるまで、コングと一緒に画面にうつるはずだった子供たちが何者かに浚われた。
 子供たちを取り戻し撮影を成功させるため、コングとイレギュラーズたちは急いで子供たちを探しに出たのであった。
「いま広げてるのが、子供たちの特徴だよ。情報をくれたらコングのサインをあげるよ。こんなサインだよ」
 ンクルスがぴらりとシャツをかざしてみせる。墨汁で何かをすごい勢いで書き付けられたシャツだが、どうやらこれがコングのサインであるらしい。
「ほしかろー」
 ぺかーって謎の光(?)を発してみせるンクルス。
 通販番組を頭から信じちゃうひとみたく、周りの人たちが『そりゃあオトクだー』って言い始めた。
「早速聞き込みウッホ!」
「子供たちは、必ず無事に返しますウッホ!」
 求められるまま乱暴なサインをしまくるコングをよそに、リュカシスとイグナートはそれぞれ聞き込みを開始した。
 し、つつ……。
 イグナートは人混みの向こうからちらちらとこちらを見るフードの男に気づいていた。
(食いついたね……)
 いくら軍や警察がまともに動かないとはいえ子供の誘拐。地元の人間が嗅ぎづければ命に関わる弱みである。
 コングたちが目立って動き回ったことで、どうやら犯人グループもこちらに探りをいれてきたようだ。動向が筒抜け……であると見せかけて、最もクリティカルな行動は感づかれない。彼らの動きは一種の陽動になっていた。
 集めた情報をまとめ、ウーンとうなるリュカシス。
「沢山の子供を連れて行ったはずなのに、クリティカルな目撃証言がなさ過ぎるデス。
 この辺の人たちはあんまり家に引きこもらないから、もし長距離を移動したならこの証言は不自然になるから……」
「連れて行った場所はスラムの中。それも現場からさほど動いていない、ってワケだね」
「ほう」
「うほ?」
 ンクルスがコングの上から見下ろし、コングはよくわからないという顔であごをかいた。

●スラムにはスラムのルール
「おいゴブリンよぉ、顔つなぎ料くらいはくれるんだろうな?」
「あ? ほれ」
 『緑色の隙間風』キドー(p3p000244)は半分まで食べたバナナをスッと差し出した。
 げっそりした顔でそれを突き返す鬼風の男。
「コングを落ち着かせるのに必要だろうからって大量に買ったんだぞ! テメー弁償できんのか!? アーン!?」
「知らねえよ!?」
 バナナ食えよ! バナナ食えよー! て言いながら連続でバナナを突き出すキドー。
「もう、キドーさん。おやめなさいな」
 『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は『うぉっか』て書いてある瓶でキドーの後頭部をガッてやった。
「ゲェ!? 暴力シスター!」
「人聞きの悪い」
 ヴァレーリヤはコホンと咳払いをすると、案内人についていく形で地下のダンスホールへと入っていった。
 その奥で待ち構えていた者とは。
「おう、アンタか。『赤き嵐』のヴァレーリヤ」
「……なんですって?」

 ギャングチーム『クアッドコア』。
 鉄帝スラムの中に隠れた形で運営される風俗店の経営主導とトラブル対策。いわゆる『ケツ持ち』を行っているギャングチームである。
 彼らのポリシーは一貫して『女を守る』であり、スラム街という無法の街中にあってきわめていびつながら善政を保つ人物である。
「そいつから話は聞いた。ガキの行方が知りたいって?」
「そういうこった。情報をくれればあんたらの手間を減らしてやる」
「……」
 白い服にサングラスをかけた男は、黙って三秒。
 沈黙が重く空気を満たしたところで、首をかしげて見せた。
「俺たちがオマエに頼る理由がねえ。オマエが俺たちの利益になるって保証も、ねえな」
 一見交渉が決裂したかに見えるが、キドーは内心で『しめた』と思っていた。
 狙った方向へ話が進んだ。敵味方の話から、利益と価値の話に移ったのだ。
「もちろんタダとは言いませんわ」
 キドーがこっそり出したサインに応じて、ヴァレーリヤが数歩前へ出る。
「クラースナヤ・ズヴェズダー司祭、ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤが髪に誓って……『ひとつ貸し』にいたします」
 ぴくり、と男たちがごくわずかな反応を示したのをキドーたちは見逃さなかった。
「子供達を助けたいのです」
 真剣な面持ちで語るヴァレーリヤに、クアッドコアのリーダーはサングラスを外して立ち上がった。
「……分かった。俺たちも行方を調べてる最中だ。だから確かなことは教えねえし、今以上の情報は教えてやらねえ。協力もしない。それでいいな」
「上等」
 キドーはニッと笑うと、封筒を手渡してきた男にバナナを手渡した。

●やりかた
 どんなものにもやり方がある。
 効果を上げる方法が、ある。
 例えば聞き込みでいえば、得られる情報に限度があり嘘が混じる以上、短時間で大量にかつ好意的な(そしてできれば第三者的な)情報を収集できたほうがよい。
 例えば交渉であれば、価値が釣り合うカードを提示するのはもちろんとして交渉する相手が目的の情報に近く自分たちと利害が一致したほうがよい。
 そういった側面で述べるなら、仲間たちはたいへんうまくやったと言えるだろう。
 その一方で、彼らは……。
「ここが事件の現場、ですか」
 『クラッシャーハンド』日車・迅(p3p007500)は地面に両手を突き、すんすんと匂いを確かめた。
 常人とは比べものにならない鋭い嗅覚を発揮し、地面に残ったわずかな匂いを確かめる。
 普段からこのあたりを行き来していたのだろう。子供たちのものと思われる匂いはこのあたりに強く残り、ゆくえを探るのはそう簡単ではないかに思われたが……。
「肝心なのは、これがただの移動じゃなくて『誘拐』だってところだ」
 『分の悪い賭けは嫌いじゃない』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)も一緒になって匂いを嗅ぎ分け、そして『子供たちとは違いすぎる匂い』を感知した。
「不思議な匂いだ。つんとするな」
「ほう、詳しく話せ」
 得られた情報をメモにとっていた『背を護りたい者』レイリ―=シュタイン(p3p007270)が、リアナルの話に興味を示した。
 リアナルが感知したのは整髪料の匂い。それもスラム街では出回らないような高級品である。
「それともう一つ」
 地面をさっとなでて、迅は目を細めた。
「何人もの子供を一度に、それも大きく騒がれない形で移動させるには二つのものが必要です。
 おとなしくさせるための手段。そして運搬手段。レイリー殿、この車輪の跡がわかりますか」
「みせてみろ」
 レイリーは迅が見つけたわずかな砂の乱れに触れ、ちいさなハケや虫眼鏡で慎重に『乱れの法則性』を探し出した。
 スラム街。首都のそれと違って道が石やコンクリートで舗装されるなんていうことはそうそうない。ややぬかるんだ土の道に、とほうもないほど大量の足跡がついて堅い土の地面となっていた。そんな中を、ごく新しい車輪跡が、ごくわずかにではあるが残っている。大量にあるそれのなかで、遠くから結構なスピードでやってきて停まり、すぐに走り去っていった跡がある。
「でかした。匂いを追い続けてくれ。それとリアナル殿。睡眠薬の匂いや例の整髪料の匂いをたどれるか。そしてできれば、幌馬車がひとつ納められる建物が近くにないか探してくれ」

●Xを求めよ
 彼らは共通して、子供たちが連れて行かれた場所を『大きな地下施設』であると推理していた。
 それには主に三つの理由がある。
 労働力や身代金にするには、スラムには子供たちよりもっと有効な人間がごろごろしているということ。
 そして大人より子供の方が単純に優れているものがあるとすれば、それは生命力や若さに他ならないこと。
 そして、今回の騒動が新闘技場建設に絡んだものであると仮定するなら、極めて大きな影響をうけるのが地下闘技場であり、彼らのナワバリが主に地下にあるということ。
 彼らの推理は、おおむね正解に近いものであった。

 子供を大量に買い付けようとしていた業者や、強引な児童拉致を行おうとした事件の記録。密かに軍人が出入りしているという昨今の噂。
 イレギュラーズたちが集めたいくつもの情報にそれらを上乗せし、ついに、彼らはある地下施設への入り口を発見したのだった。
「なんだよ。地下施設っていうから下水道とか洞窟とかそういうモンかと思ったらよ……」
 キドーは配管だらけの広い通路をてくてくと進んでいた。
 足下が分かる程度のささやかな照明器具が等間隔に設置され、魔力の光を放っている。
「地下室っていうより、『地下施設』ってカンジだね?」
 イグナートはこの場所に、何らかの意図を感じているようだった。
「それにしても……まさかコングのおキャクさんをユウカイするとはね。
 日頃の行いが悪いとどういうことになるのか教えてやろうぜ!」
「ウホッホ」
 コングはできるだけ周囲のものを壊さないように(本人的には)気をつけつつ、パイプやら壁やらナチュラルに破壊しながら進んでいた。
 そのつくづく隠密行動に向いてない振る舞いに……。
「格好いいデス……」
 リュカシスはわくわくしていた。
「わかるよ。パワーは全てを解決するよね」
 ンクルスもうんうんといって頷いている。身体パーツを付け替えるリュカシスと拡張性をもつンクルスという、かわった共通点のある二人。身体機能以外にもだいぶ気が合うのかもしれない。
「私はな、コング殿。今回の事件は古代兵器がらみだと見ている」
 メーヴィンはいつ戦闘にはいってもいいように、弓を構えながら進んでいる。
「確かに、探るうえでそんな噂もあったらしいな」
 同じく腕から防護フィールド発生装置を展開したまま進むレイリー。
「これだけ大きなスラム街が首都圏内でき、国に対する危険因子になりかねないにも関わらず、未だに軍は介入しようとしない……。それには『できない理由』以上に『しないことによって得られる利益』があると、わたしは見た」
「スラムができることに利益なんてあるのでしょうか」
 怪訝な顔をして、迅はレイリーたちのほうを見た。
「経済はほんとど内側でしか回りませんし、治安は悪化するばかりです。いいところといえば、気にとめられない人間が増えるくらいで……あ、いや、そうか……」
「気づいたようじゃな?」
 それらしい口調で、メーヴィンは耳をぴこんと動かした。
「人間を燃料にするなら、消えても分からない人間を集めておくほうが効率的……だ」
「歯車城」
 ぽつりとつぶやいたヴァレーリヤ。
 以前、モリブデン地下に横たわる巨大な地下施設……もとい地下遺跡の探索が行われたことがあった。
 鉄帝首都の地下に眠る巨大な古代兵器。
 それは多くの人から知らず知らずのうちに利用され、地下闘技場や地下住居、ギャングのアジトや秘密の研究施設になっていた。
 ここは、つまりは。その一部なのではないか。
 小声で語らううちに、目的の場所へたどり着いた。
 メーヴィンと迅が音と匂いで敵と子供たちの存在を確かめ、ンクルスがコングに『待て』のサインを出す。
 レイリーはスチールめいた扉の前に立ち、ゆっくりと拳を引き絞り――。
「我こそはレイリー=シュタイン、貴様らの悪事は見抜いている! さぁ、覚悟しろ!」
 大声で名乗りをあげながらダッシュパンチ。
 扉をぶち破って部屋の中へと突入した。
 黒い軍服を着た男たちが一斉に振り返り、目をつぶって倒れた(おそらく眠っていると思われる)子供たちから、レイリーへと剣や銃を向けた。
「物理的な排除を優先するか。わかりやすくて結構だ!」
 攻撃……とみせかけて即座に防御。両腕をガード姿勢にし防壁を展開。小銃による連射をはじいていく。
「こんな豆鉄砲がきくものか。それに、良いのか? 『こちら』を見ていて」
 瞬間。
「ウホァーーーーッ!!」
 壁がコングのショルダータックルによって粉砕された。
 『壁を蹴破る』という常識外れの突入に、軍服の男たち(おそらく軍人らしき者たち)が困惑し、その間に迅とイグナートが突入。
「イグナート殿!」
「ん、トクイな分野でいってみようか!」
 二人はぎゅっと握りしめた拳を打ち込んで軍人の顔面をへこませると、相手を背負って投げ飛ばした。
 小銃を撃っていた軍人は味方の軍人をぶつけられ、よろめく。
 その隙にスチーム噴射をかけたリュカシスが突撃。腕に接合させたキャノンハンマーを思い切り叩きつけ、ダブルラリアットで飛び込むンクルスが軍人たちを跳ね飛ばしていく。
「さあ今のうちに。私が悪い事した人に神様の裁きを届けているうちに早く!」
 とか言いながら、軍人のひとりを捕まえてリュカシスと一緒にダブルブレーンバスターをかけていた。
「コングさんは子供たちを連れて外へ!」
「ウホ?」
 こうか? という顔で軍人を掴み、めぎょって握りつぶした。
 握力だけで人が死んだのを見て、イグナートはぞっとした。
「ばっかオメェこいつに守るとか保護するとか優しくタッチするみたいなコトできるわけねーだろ!」
 キドーは剣を振りかざして襲いかかってくる軍人にスッとバナナの皮を投げると、転倒した所でナイフを突き立てた。
「オラッ、バナナ食えよ! ゴリラにバナナ食わすだけの仕事がくっそ面倒なコトに巻き込みやがってよー!」
 キドーは倒れた兵士の腹を蹴ることで場所をどかすと、ごろごろとボールのように転がってくるコングに『ひき殺されないように』してやった。
「おめぇらには聞きたいことがある。死なれると困るんだよ。わかるかァ?」
「さて、と。コング殿ひとりでは子供をおにぎりにしかねない。ヴァレーリヤ殿、頼めるか」
 メーヴィンはすでにおにぎりに『なった』軍人を横目に、マナースターの幻弦をひき魔力の矢を放ちまくった。
 軍人たちの戦力はコングが突入した瞬間からほぼ壊滅したも同然で、引っかき回すのもまた容易であった。
 ヴァレーリヤは頷いて、倒れた子供たちを抱えて運び始める。
「コングさん、先導を」
「セン、ドウ……?」
「前を走ってくださいまし」
「ウホッホ! 走る!」
 コングは身体を丸くして転がると、進行方向上のあらゆるものを粉砕しながら突き進んだ。
「重機いらずですわねー」
 ヴァレーリヤは理解をいったん放り出し、地下遺跡の外へと走った。





 後日談、というか本来の依頼。
「ウホッホウッホ!」
「「ウホッホウッホ!!」」
 ダブルバイセップスポーズのコングの両腕や肩に子供たちとイレギュラーズが乗り、新闘技場建設予定地の前でピースするというなんだかパワフルな絵面がそこにはあった。
「はいカットー。いい絵とれたわ!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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