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シナリオ詳細

<第三次グレイス・ヌレ海戦>ラクダデストロイヤー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●恐怖! ラクダ駆逐艦!
 海洋王国大号令――その発令により、ネオフロンティア海洋王国の活動は活発化していた。遥かなる外海、『絶望の青』。ひいてはその先に広がるであろう新天地へと向けて、ネオフロンティアは海を行く。
 その過程において、海の平定は重要課題であった。国家の管理下にない海賊たちによる略奪は悩みの種であったから、それを除かねばならなかったし、それに、未だ海上戦闘と縁なきイレギュラーズ達の戦闘訓練も兼ねた、一石二鳥の事業であった。
 そんな背景があることはさておき。
「ブブンブブブン! ヒャッハー! 海だ!」
 小型艇を借り海を行くのは、ラクダの獣種たちである。
 彼らはキャメル海賊団。ラクダの獣種で構成された海賊たちであり、特筆すべきは、彼らの駆る一隻の船である。
 それは小型艇であったが、それ故に小回りが利く。加えて、ゼシュテル鉄帝国より出土したオーパーツ、『魚雷発射管』を装着し、一般的な小型船には不釣り合いな火力を持っていた。
 それは、そう、現代でいう所の駆逐艦に匹敵するものである!
「そう! 名付けてラクダデストロイヤー!!」
「ヒャッハー!」
「ヒャッハー!」
 ラクダ船長のご機嫌の名乗りに、部下ラクダたちもヒャッハーした。乗員たちのヒャッハーに応じるように、ラクダ駆逐艦(デストロイヤー)はぶおんぶおんと唸りをあげ、海原を行く。
 目指すは海域、グレイス・ヌレ。ヒャッハーラクダたちはヒャッハーしながら、駆逐艦を走らせた。

●迎撃! ラクダデストロイヤー!
「ふざけた連中ですが、その船の性能は確かですし、海賊としての腕も確かです」
 海洋の軍人は、集まったイレギュラーズ達に向けて、そう告げた。
 イレギュラーズ達に依頼したいのは、このラクダたちの無力化である。
 作戦としては、海洋船団がラクダデストロイヤーの足を止めるので、その隙をつき小型艇でラクダデストロイヤーに接舷。
 そのまま乗り込み、ラクダを無力化――特に魚雷発射管を完全破壊してほしいらしい。
「魚雷発射管は、ラクダデストロイヤーの二つのこぶみたいな装飾をしたところに存在します。敵を蹴散らしつつそこに向って、魚雷発射管を破壊。その後離脱してください」
 魚雷発射管は、ゼシュテルより出土したオーパーツだ。ラクダたちがどのようなルートでその弾――魚雷を入手しているのかは不明だが、なんにしても、放っておいては、木造船の多い海洋海軍にとっては致命打になりかねないし、奪取したところでそれを乗せることのできる船は存在しない。ここで完全破壊しておくにこしたことは無いのだ。
「小船に関しては、此方でも用意できますし、自前の船を使っていただいても構いません。それでは、作戦の遂行を、よろしくお願いいたします」
 そう言って、海洋軍人はイレギュラーズ達へと頭を下げたのである。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 一度やってみたかったんです。

●成功条件
 魚雷発射管の完全破壊

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 ラクダ駆逐艦(デストロイヤー)を駆り、海洋を荒らすキャメル海賊団――。
 彼らの討伐作戦が開始されます。
 イレギュラーズの皆さんは、海洋海軍がラクダデストロイヤーを足止めしている隙に、小型艇を利用して接舷。
 ラクダデストロイヤーへと乗り込み、敵を蹴散らしつつ魚雷発射管のある場所へと向かい、二つの魚雷発射管を破壊してください。
 魚雷発射管は、皆さんのスキルで充分に破壊できるものとします。
 なお、魚雷発射管は甲板上、外観からはラクダのこぶみたいな装飾のある場所に存在します。乗り込んで、迷うことは無いでしょう。

●エネミーデータ
 ラクダ海賊の皆さん ×たくさん
 特徴
  たくさんいることが特徴のラクダ海賊の皆さんです。
  皆さんよりははるかに格下の相手ですが、数の多さがネックになるでしょう。
  全滅は狙う必要はありません。

 ラクダ船長 ×1
 特徴
  一般的なラクダ海賊よりはやや強い程度の能力を持ちます。
  二つ目の魚雷発射管に到達した際にエンカウントすることになります。

 魚雷発射管 ×2
 特徴
  高いHPを誇る設備。BSも普通に効きます。
  何も行動はしませんが、破壊目標ユニットとして存在します。

●重要な備考
<第三次グレイス・ヌレ海戦>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』を追加カウントします。
 この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。
 尚、『海洋王国事業貢献値』のシナリオ追加は今回が最後となります。(別途クエスト・海洋名声ボーナスの最終加算があります)

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • <第三次グレイス・ヌレ海戦>ラクダデストロイヤー完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年01月03日 22時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ルアナ・テルフォード(p3p000291)
魔王と生きる勇者
鶫 四音(p3p000375)
カーマインの抱擁
ジル・チタニイット(p3p000943)
薬の魔女の後継者
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
シラス(p3p004421)
超える者
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
大樹の精霊
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
遠野・マヤ(p3p007463)
ヲタ活

リプレイ

●向え! ラクダデストロイヤー!
 海洋、グレイス・ヌレ。
 その海の上に、今まさに奇妙な物体が浮かんでいた!
 あれはなんだ!
 クジラか!? 恐竜か!?
 いや、ラクダだ! ラクダデストロイヤーだ!
「いや、完全に出オチじゃないですか!」
 ラクダデストロイヤーへと向かう小型船の上で、『孤高装兵』ヨハン=レーム(p3p001117)は思わずつっこんだ。
 海に浮かぶラクダのような形状をした小型船、ラクダ駆逐艦(デストロイヤー)へ、である。外見はかなりファンシーかつ愉快な形状をしているのだが、しかしその戦闘能力は決して侮れないという!
「本当ですかね……いや、でも、鉄帝国から出土したという兵器を積んでいるとの事です、それは事実なのか……」
 むむむ、と唸るヨハンである。確かに外見からは、とてもではないが恐るべき兵器には思えない。だが、実際に恐ろしい兵器なのだ! それがラクダデストロイヤー!
「えーっと……今回のお相手は……ラクダ、さん……????」
 困惑した表情を隠そうともせず、『守護の勇者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)は首をかしげた。何で海にラクダが。なぜラクダが海賊をやっているのか。それはイレギュラーズの誰にもわからなかった。きっと、こんなことを考えた神様だって、ロクに考えていないに違いない――そんなことを考えながら、携帯用のポットに口をつける。
「あちちっ」
 中身はアイスコーヒーだと思って勢いよく飲み込んでしまったが、どうやらホットコーヒーだったようだ。べぇ、と舌を出して、外気で冷やすルアナ。
「……この世界は神秘に満ちていますね」
 何か達観したような様子で、『カーマインの抱擁』鶫 四音(p3p000375)が言う。世界には不思議が満ちている――それは喜ばしい事だ。世界に、未知の事が溢れているという事は恐怖などでは決してない。それはこれから、新たな事を知ることができるという喜びに他ならないからだ。
 喜ばしい事である。喜ばしい事であるのだが。
「何故ラクダなのでしょうね」
 そのことだけはどうしても、理解ができなかった。しょうがないことである。
「なんかほんとに……ラクダだな……」
 どこか呆然とした様子で、『ラド・バウD級闘士』シラス(p3p004421)が言う。シラスの知識によれば、ラクダは長期間水分を取らずに生きて行けたりするという。だから、割と長期間の航海には向いているのかもしれず、つまりラクダが海賊をやっていることに関しては意外と適材適所なのかもしれないという気持ちがそこはかとなくあったが納得はしていない。
 と――突然、ラクダデストロイヤーのこぶのような部分から、何かが発射された。それはぼちゃん、と海に落ちると、途端、すさまじい勢いで海を泳ぐように突き進んでいく。
 それは、近くにあった海洋の船、その付近で爆発した。爆発は派手であったが、直撃は免れたようで、海洋の船は何とか健在であった。
「なるほど、あれが魚雷か……確かに厄介だな」
 シラスは、その威力に舌を巻く。直撃こそしなかったものの、船に与えたダメージは無視できるものではなく、なるほど、木造船が主力の海洋にとって、あの魚雷という爆発物は無視できないものだろう。
「う、うん。おかしな外見だけど、やっぱり侮れないね」
 『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は頷いた。アレクシアを含め、イレギュラーズ達は意識を切り替えた。敵はやはり、強敵なのだ――どれだけ愉快な外見をしていても。もちろん、決して油断をしていたわけではないのだがそれはそれとして、意識を切り替える。
「皆、もうすぐ接舷するよ!」
 『繋ぐ命』フラン・ヴィラネル(p3p006816)の言葉通りに、ラクダデストロイヤーの外壁は目の前にあった。
「近づくと……鉄甲船って感じだね。ラクダカラーはしてるけど……」
 フランの言葉通り、ラクダデストロイヤーは、木造船にラクダカラーの鉄の装甲を張り付けた形状をしていた。イレギュラーズ達は、ラクダデストロイヤーの船首側に接舷すると、一気に船へと乗り込んだ。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか……いや、出てくるのはラクダっすけど!」
 『ラド・バウD級闘士』ジル・チタニイット(p3p000943)がやけくそ気味に声をあげる。混沌世界はまこと混沌としているのである。ジルの常識がゴリゴリと音を立てて粉砕されていくのを感じていた。
「ヒャッハー! 敵だ!」
 と、イレギュラーズ達の襲撃に気づいたのだろう。ヒャッハーとヒャハりながら現れたのは、複数のラクダ海賊……キャメル海賊団の戦闘員たちだ!
「ヒャッハー! ヒャッハー!」
「それ鳴き声なんっすか!? ラクダはヒャッハーって鳴き声じゃないっすよ!?」
 たまらずツッコむジルであったが、ご機嫌な海賊たちはヒャッハー! と叫んで無視する!
「ああもう、せっかく引き締めた気分が台無しだわ……!」
 『特異運命座標』遠野・マヤ(p3p007463)はたまらず頭を抱えた。ラクダたちのご機嫌なヒャハり具合に合わせたのか、マヤのギフトで鳴り響くBGMは、なんとも喜劇じみている! これから戦闘が始まるとはとても思えぬ空気だ!
「って、でもやるしかないのよね……!」
 マヤが複雑な表情をしつつも、『風鷹剣『刹那』』を抜き放った。合わせるように、仲間達も一斉に武器を構える。
「行くわよ、皆! このふざけた船、落として見せるんだから!」
 かくしてラクダの背の上で、ラクダとの闘いが始まったのである!

●対決! キャメル海賊団!
 かくして、イレギュラーズ達の進撃が始まる。目標は、二つの魚雷発射管――魚雷発射管さえ破壊できれば、キャメル海賊団を無力化できるのだ!
「私には、追い付けないっ!」
 真っ先に飛び出したのは、マヤだ。一気に手近にいたラクダ海賊に接敵するや、鋭い二連撃をお見舞いする。ラクダはヒャッハー! と悲鳴を上げながら甲板に倒れ伏す。
「どんどんラクダさんを引き寄せていくから、あとの事はよろしくね!」
 ルアナは最前線へと飛び出した。すぅ、と息を吸い込むと、
「ラクダさーん。お仕事お疲れさまです! 遊びに来たよ!」
「ヒャッハー! 客だ!」
「ヒャッハー! もてなせ!」
 ヒャハりながら、ラクダ海賊たちがルアナへと殺到する! ルアナは敵の攻撃をいなしつつ、しかし足は止めない。
「援護は任せて!」
 アレクシアの放つ魔法の矢が、ラクダ海賊を貫いた。
「痛いぜヒャッハー!」
 ぐるぐると回転しながらラクダが転倒する。
「もう、訳分かんない奴らっすね!」
 呆れ半分苛立ち半分、ジルがツッコミながら、援護術式を自身へと施す。ラクダたちのノリは真面目とは思い難いが、しかし戦力としては充分な能力を持っている。
「足を止めないで、一気に走り抜けますよ!」
 ヨハンは武器を光のハンマーへと変化させて、ラクダ海賊をぶん殴った。ヒャッハー、と悲鳴を上げたラクダ海賊が、甲板上を滑って海へと転落する。
「まともに相手をすれば、それだけじり貧になりますからね!」
「了解だ! 移動のついでにまとめて吹っ飛ばしてやるっ!」
 シラスがその手を掲げると、複数の魔力弾がシラスの周囲へと現れた。シラスが腕を振るうと、それらはシラスが照準した目標へと向けて、正確無比に襲い掛かる!
 次々と着弾していく魔力弾が、ラクダ海賊たちを片っ端から叩いていく。貫くのではない、激突の衝撃が、ラクダ海賊たちの内部を駆け巡り、
「ヒャッハー! 割とシャレにならない位に痛いぜ!」
 悲鳴と共に昏倒させていく! だが、ラクダ海賊たちはどこへ隠れているのか、次から次へと現れては、イレギュラーズ達の行く手を遮った。
 都度現れては、攻撃を仕掛けてくるラクダ海賊たち。一撃一撃は決して痛くはないが、何せ数は尋常ではない。
「やれやれ、忙しないね……!」
 回復術式を編みながら、四音が言う。足を止めてはならず、同時に回復に攻撃にと、やる事は多い。確かにまったく、忙しない事態だ。
「だけど、海洋の皆のため……がんばらないとね!」
 フランの歌う天使の歌が、仲間たちの傷を癒していく。足を止めてしまえば、敵に囲まれる事態となるだろう。それは避けなければならない。
 忙しなさに背を押されながら、イレギュラーズ達は戦い、先へと進んで行く。
 そしてその先に、見慣れぬ巨大な機械――魚雷発射管がその姿を現したのである。
「ヒャッハー! なんだ、なんだ!?」
 魚雷発射管を操作していたヒャッハーたちが、突如現れたイレギュラーズ達を、何事かと視線を巡らせる。
「見つけた……! 一気に破壊するわよ!」
 マヤが突撃し、魚雷発射管へと肉薄した。振るわれる刃。『そこに貫く意地は固く』。刃が魚雷発射管の外装を切り裂き、内部構造を露出させた!
「ヒャッハー!? こいつら、魚雷を……!」
「その通り! でも、ラクダさん達の相手は、わたしっ!」
 ルアナは立ちはだかるラクダ海賊たちを、くぎ付けにする。自らを囮に、その攻撃の一手を引き受けた!
「ラクダに負けないで、痛いの飛んでけーっす!」
 一方で、ジルは即座に回復術式をルアナへと飛ばす。
「ありがと! まだまだ頑張れるっ!」
 ルアナはジルへとウインク一つ。再びラクダ海賊たちへと向き直った。
「魚雷……はっしゃかん? とにかく、アレを壊せばいいんだよね!」
「そうだ、一気に行くぜ、アレクシア!」
 アレクシアとシラス、二人が魔力の矢を/魔力弾を、一気に撃ち放つ。放たれた矢は魚雷発射管に突き刺さり、魔力弾はラクダ海賊もろとも魚雷発射管に次々と痛打を与える!
「ヒャッハー! なんてことを……!」
 ラクダ海賊が顔を青ざめるのへ、
「なんてことを……はこっちのセリフです! よくも鉄帝国の遺産で大暴れしてくれましたね!?」
 ヨハンは意志抵抗力を力に変えて、魚雷発射管へと斬りつける。内部機械が激しく切り裂かれ、火花が飛び散った。
「良いですね、あと一息です」
 四音が放つ衝撃術式が、魚雷発射管へと突き刺さった。がこん、と音を立てて、最後の外装が剥がれ落ちれば、後は内部フレームを残すのみだ。
「頑張って! もうちょっとだよ!」
 後方より追いすがるラクダ海賊へ、フランは熱砂の精を召喚して、襲い掛からせた。巻き起こる砂嵐がラクダ海賊たちを打ちのめし、吹き飛ばす。
「ならば、これで!」
 マヤが飛び掛かり、魚雷発射管に、トドメの斬撃を繰り出した。一度斬り、返す刀で二度目の斬撃。斬鉄の刃が魚雷発射管を真っ二つに――内部の魚雷もろとも――切り裂く!
「ヒャッハー!?」
 巻き起こる爆風が、近くにいたラクダ海賊たちを吹き飛ばした! その爆風を背に受けながら、くるりと着地するマヤ。
「おっけー、いいね!」
 ルアナが笑いかけるのへ、マヤもにこりと笑顔で返した。
「さて、まだまだ足を止めてられないっすよ! 次の魚雷発射管へと向かうっす!」
 ジルが声をあげるのへ、仲間達は頷く。
「了解ですよ。……しかし、この身に宿ってから運動することが増えましたね。いえ、鍛えておいてよかったです」
 どこかしみじみという四音。さておき、一行は再び走り始めたのであった。

●決戦! ラクダ船長!
「ヒャッハー! ははは! キャメルたちの船で好き放題やってくれたなぁ!?」
 快進撃を続けるイレギュラーズ達の前に、ついに二つ目の魚雷発射管がその姿を現した。
 そしてその前には一人のラクダ海賊――ラクダ船長がいたのである!
「部下と変わらず、ふざけたノリの奴ですね……!」
 ヨハンが少しばかりげんなりした様子で言うのを、ラクダ船長は笑ってみせた。
「海の上ではノリが物を言うのよ!」
「そんなわけがあるか! 大体テメーら、ラクダのくせに何しに海に来やがった! しかもこんな物騒な代物まで持ち出しやがって!」
 シラスがたまらず疑問をぶつける。ラクダ船長は神妙な顔をして、言った。
「人は砂漠を、砂の海というな」
「ああ」
「じゃあ、水の海にラクダがいてもよくない?」
「ああ……いいや、わけわかんねぇ!」
 シラスがツッこむ。この手合いに話しかけても、常識的な回答はかえってはこなさそうである!
「あと魚雷発射管は何となく手に入ったから積んだ! そしたらご機嫌にヒャッハーだったぜ!」
「う、うーん、本当にノリで生きてるみたいなラクダたちだね……」
 フランが思わず肩を落した。
「うん……だけど、やってることはホントに、危ないからね……!」
 アレクシアが気を取り直して武器を構える。仲間達もまた、武器を構えた。
「ヒャッハー! ご機嫌なイレギュラーズだぜ! かかってこい野郎ども! そしてご機嫌なヒャッハーを見て海に落ちなぁ!」
 ラクダ船長の号令一家、ラクダ海賊たちもまた襲い掛かってくる!
「やる事は変わらずよ……狙うは魚雷発射管!」
 流れ出るご機嫌なBGMはあえて無視して、マヤは魚雷発射管へと斬りつける! 変わらぬ鋭さの刃が鉄を切り裂き、外装が音を立てて甲板へと落下する!
「ヒャッハー! ご機嫌な攻撃じゃねぇか!」
「それはどうもありがと!」
 ヒャハる船長に、べぇ、と舌を出しつつ皮肉の礼を返すマヤ。
「ラクダさんたちの相手は、わたしだよっ!」
 ルアナが声をあげてラクダ海賊たちを引き付け、海賊たちはヒャハりながらルアナへと殺到する。
「回復は任せて!」
 アレクシアが、ルアナへと回復術式を紡ぐのへ対し、
「なら、僕は……なんか良い具合で毒で腐食しますようにっす!」
 ジルは羽にも似た毒の結晶を作り上げ、魚雷発射管へと撃ち抜いた。毒は内部を腐食させる錆へと変換され、魚雷発射管の外装が見て分かる程にぐずぐずとさび付いていく。
「ヒャッハ!? 何をしやがった!?」
 驚きを隠せないラクダ船長。そのラクダ船長に組み付いたのは、ヨハンだった。
「ヒャッハーヒャッハーするのもいいですが、少しは落ち着いて回りを見るのもいいですよ?」
 ブロック状態に持ち込まれたラクダ船長は、ヨハンに圧倒され動くことができない。
「そうすれば……やっぱり海にラクダがいるのは変だって気づくでしょう!」
 ヨハンの斬撃を、ラクダ船長がショーテルで受け止める。
「ヒャッハァ!? すべての海はキャメルの海じゃろがい!?」
 ラクダ船長がヒャッハーとすごんで見せるが、ヨハンがその程度で怯むわけがない。
「ラクダは砂漠に帰れっ!」
 続いてシラスが船長へと組みつく。魔力により、身体能力にブーストをかけたシラスの格闘術が、一撃、二撃と船長に叩き込まれた! 顔面を激しく殴りつけられた船長は、ヒャッハーと悲鳴を上げながら転倒!
「あとは魚雷発射管だけだ!」
 シラスの叫びに、仲間達が頷いた。
「なら、攻撃に切り替えましょうか」
 回復術式を編んでいた四音は、衝術へと術式を変更する。放たれた衝撃波が魚雷発射管の外装を破壊し、激しく爆発する!
「トドメ、だぁっ!」
 フランの使役する熱砂の精が、激しい砂嵐を魚雷発射管へと叩きつけた。無数の砂礫に撃たれた魚雷発射管が、ついに耐え切れずに爆散する!
 その衝撃に、ラクダデストロイヤーの船体は甚大なる被害を受けていた。徐々に船体が傾き、沈んでいく。
「作戦完了! 逃げよう!」
 フランが提案するのへ、仲間達は頷き、船首へ向けて走り出した。
「ラクダさんたちも早く逃げるんだよ! こんなところで海の底に沈んで終わったら、もったいないでしょう!」
 ヒャッハーヒャッハーと慌てるラクダたちへ、アレクシアは叫んで声をかけた。その声が届いたかはわからない。だが、今は確認する暇は、イレギュラーズ達にもなかった。
 イレギュラーズ達は一気にラクダデストロイヤーの甲板を駆け抜け、侵入してきた小船へと帰還することに成功したのである――。

●さらば! ラクダデストロイヤー!
 沈んでいく。
 ラクダが沈んでいく。
 ラクダデストロイヤーが沈んでいく様を、少し離れた海上で、イレギュラーズ達は眺めていた。
「終わった……な」
 シラスが呟くのへ、アレクシアが頷く。
「結局、あのラクダさん達、なんだったんだろう……」
 アレクシアの問いに答えるものはいない。誰もよくわからなかったからだ。まぁ、それでいいと思う。
「でも、せっかくのオーパーツ、勿体なかったかな……」
 マヤが沈みゆくラクダのこぶを眺めながら、呟く。魚雷発射管の事を指しているわけだが、とはいえ、過ぎたる力は身を滅ぼしかねない。このまま消えてゆくのがいいのかもしれない。
「しばらくは、ラクダさんは見たくないかなぁ……」
 ルアナが言った。僕もしばらくラクダって打ちたくない。
「今度はもう少し海の上でゆっくりしたいっす……当分無理っすかね?」
 ジルが言う。海洋での騒動は、まだしばらくは続きそうである。
「うーん、ラクダ海賊さんがいるなら、ペンギン山賊さんとかもいるのかなぁ?」
 フランがぼやいた。居るかもしれない。混沌世界とは、まこと混沌としているのである。
「ふふふ。ところで……今回の物語は、果たしてコメディだったのか、それともシリアスだったのか……どちらに分類されるのでしょうね?」
 四音がにこにこと笑ってそう言うのへ、
「わかんない……本当に、わかんないです……」
 ヨハンは疲れた様子で、肩をすくめるのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 覚えておくがいいイレギュラーズよ。
 我々キャメル海賊団、次はラクダクルーザーやラクダバトルシップが……え、無いの? そんなぁ。

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