PandoraPartyProject

シナリオ詳細

愛しい人を願い待つ

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●別れと始まり
「暫く、会えないのね……」
「一年だ。あっという間だよ」
「あっという間じゃないわ。一年間、貴方を待つしか出来ないのよ……!」
 フィーネの目からポロポロと涙が零れる。
「なら手紙を書くよ。フィーネからの手紙も楽しみに待ってる」
 泣き始めたフィーネを抱きしめ、そっと柔らかな髪を撫でる。
「無事に帰ってきてね……」
「あぁ、ちゃんとフィーネの所に帰って来るよ」

 そう言って彼が旅立ってもう一年以上経った。
 始めは毎月のように届いていた手紙も、一年経つ前に届かなくなった。
「エディ、まだかしら……」
 毎日、エディが無事に帰ってくるように祈っている。だけどエディが帰って来ることはない。
「フィーネ……」
 すこしずつやつれて行く娘を見て、両親は気分転換を進める。
「エディ君の事は少し忘れて、少し出掛けましょう? 美味しいケーキ屋さんを見つけたの」
「そうだな。毎日家に籠っていては体にも良くない」
 二人はフィーネのために良かれと思って言った言葉だが、届かない手紙に、帰ってこないエディに、フィーネは不安と心配で追い詰められていた。
「エディのことを……忘れろと言うの……? 嫌よ。そんなの嫌。私は、エディの帰りを待つって約束したんだから!」
 不安は、聞きたくない言葉ばかり拾い上げてしまう。
 心配は、理解してくれない人への心を閉ざしてしまう。
「フィーネ!」
 自分の部屋へ走るフィーネ。
 エディのことを思って、帰ってこないことに、何の便りもないことに不安と怒りを吐き出して、泣き疲れて眠ってしまう。
 そんなフィーネを、夢の中に現れて人を苦しませる悪魔、夢魔が見守っているとは知らずに。

 その後フィーネは夢魔に囚われ、永遠に届かないエディの姿を探し求めることになる。
 待ち望んだエディが帰って来たのは、その二日後の事だった。

●涙に溺れた眠り姫
 むぅ。と頬を膨らませてフェリーチェが本を閉じる。そして勢い良くその本を差し出した。
「夢魔に囚われたお嬢さんを助けてあげて欲しいの」
 このままでは遠からずフィーネは衰弱死してしまう。そうなればフィーネの家族はもちろん。やっと再会して幸せになれる筈のエディも不幸になってしまう。
「夢魔は夜、お嬢さんの枕元に現れる。それを倒して欲しいの」
 夢魔自体に戦闘能力は殆どない。悪夢を見せて、人を苦しませるしか術がないのだから当然だろう。
 だけど問題は、今その夢魔とフィーネの夢――如いては心は繋がっている。下手に夢魔を倒せばフィーネの心も砕けてしまう。
「お嬢さんに、これ以上悪夢を見ないように呼び掛けてあげて。絶望の淵にいるお嬢さんに、これからお嬢さんを待っている楽しいことや嬉しいこと、お嬢さんが希望を持つようなことを沢山」
 今のフィーネには助けになる物が何もない。
 帰ってこないエディに、届かない手紙に、不安を分かってくれない家族に、不安と心配と、不満が重なっている。
 悲しくて、辛くて、自分で流した涙に溺れた眠り姫。
 どうか、その涙を止めて、幸せな未来に気付かせてあげて?

NMコメント

 待ち続けた不安が、優しさと想いを歪めてしまった悲しいお話。
 どうか、悲しい終わりではなく、幸せな続きにしてあげてください。

●成功条件
・フィーネの心を守ったまま夢魔を倒す。
 守り方はフィーネに助けを、希望を与えること。
 エディが帰って来たこと。
 フィーネの目覚めを待っていること。
 フィーネが目覚めたら、こんなことをしたらきっと楽しいと思うようなことを沢山話してあげてください。

 夢魔はすばしっこいだけで、攻撃力も防御力もほとんどありません。
 だけど全員がフィーネにかかりっきりだとその間に逃げてしまいます。

●フィーネ
 エディの婚約者で、勉強の為に隣国に行っていたエディの帰りをずっと待ち続けていた。
 真っ直ぐでずっとエディの帰りを待ち続けていた反面、夢魔に囚われた今はもうエディは帰ってこないと諦めかけている。

●エディ
 フィーネの婚約者。稼業を継ぐために、隣国に勉強に行っていた。
 手紙は小まめに出し続けていたが、卒業試験近くになって「勉強に専念するから暫く手紙は出せない。次は手紙じゃなくて自分で言いたいことを伝えるよ」という手紙は出していた。だが、その手紙がフィーネの元に届くことなく、配達途中で紛失したことは帰ってきてから知った。
 帰りが遅れた原因は隣国で起きた大規模災害。馬車が使えるようになるのに時間がかかった。
 その上やっと帰ってきたら婚約者が目覚めないという事態に。
 今はフィーネに付き添い、ずっと声をかけ続けている。

●その他
 フィーネの部屋には夢魔が現れる前から入れます。
 エディの声はフィーネにも聞こえている筈ですが、フィーネは悪夢の一環だと思って耳を塞いでいます。
 すれ違いと不運な出来事から起きた悲劇。皆様の手で解決に導いてください。

  • 愛しい人を願い待つ完了
  • NM名ゆーき
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年12月19日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
背負う者
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
水瀬 冬佳(p3p006383)
水天の巫女
アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊

リプレイ

●眠り姫の見る夢
 ずっと前をエディが歩いて行く。
 名前を呼んでも止まらない。全力で走っても追いつけない。それなのに、心折れかけて足を止めてもエディとの距離は変わらない。
「ずっと、待っていたのよ……!」
 約束と手紙だけを心の支えに待ち続行けていた。
 だけどエディは約束の期間が過ぎても帰ってこなくて、それどころかいつの間にかフィーネを置いて前を歩いている。いつまで経ってもエディに追いつけなくて、フィーネの心はいつの間にか擦り切れて限界を迎えようとしていた。
『フィーネ』
 そんな時にエディの声が聞こえて、その声に支えられて頑張って追いかけた。だけど結局追いつけなくて、フィーネはエディを信じられなくなっていた。
 ずっと不安だった。
 隣国でエディに好きな人が出来たらどうしよう。隣国からエディが帰ってこなかったら。
 必死になって不安を押さえ込んでエディを信じて待ち続けていたのに、エディはフィーネから離れて行く。
「エディ……」
 ならもう良い。このまま深い闇に飲まれて眠ってしまおう。
『起きなあかんで』
 諦めて目を閉じそうになったフィーネの耳に、落ち着いた声が聞こえた。
「誰……?」
 ふらりと立ち上がる。フィーネの心に、一欠けらの希望が落ちてきた瞬間だった。


 青白い顔で眠るフィーネに優しく声をかける『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)。
「今まで一人でよお頑張ったね。寂しい時、心が折れそうな時もあったやろうて」
 フィーネの髪をそっと撫で、蜻蛉は言葉を紡ぎ続ける。
「でももう一人やない。フィーネちゃんを支えて、抱きしめてくれる人はここにおる」
「そうそう! フィーネの大切な人は、エディは、もう帰って来ていてフィーネが起きてくれる事を願ってるよ?」
 蜻蛉に続き、『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)もフィーネに声をかける。
 二人の言葉を聞きながら、エディはしっかりとフィーネの手を握り締める。
 やっとの思いで帰って来たら、待っていたのは再開の喜びではなく嘆きと悲しみ。
 何も出来ない自分に対する苛立ちと失望に飲み込まれそうになっていた時、やって来たのが『水天』水瀬 冬佳(p3p006383)達だった。
「そちらの方、フィーネさんは夢に潜む魔性のもの……夢魔に囚われ悪夢を見続けています。私達は、その夢魔を祓いフィーネさんを救う為に参りました」
 始めはその言葉を信じられなかったが、フィーネにもエディにも害を加えないこと。必ずフィーネを目覚めさせると言われて彼らを信じた。

 『死神二振』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)はフィーネたちの置かれている状況と、自分の置かれている状況がよく似ていることに小さく苦笑した。
(心の弱さに付けこまれた悲しき女(ヒト)。意図せぬすれ違いが悲劇を産もうとしている、か……。大分耳が痛い話だな)
 心に思い浮かぶのは、鮮やかな青い瞳を潤ませた、寂しそうな笑顔。
 あんな顔をさせたかったわけじゃない。笑っていて欲しかったし、今も隣で笑っていて欲しいと望んでいる。
(だからこそ助ける。見る必要のない悪夢は俺たちの手でゼロにしてみせる)
 強く心を決めると、クロバはエディの所へ行く。
「エディ、好きな人は君の手で救い出せ。その為なら俺たちは君の背中を全力で押そう。悲しい涙で終わる物語なんて、今の俺には必要ない――!!」
 代わりに、嬉しさと幸せで溢れた物語を紡ごう。
「……有難う。僕もフィーネのことを諦めたくない。僕に出来ることを教えてくれ」
 迷いなく真っ直ぐな目をしたエディにクロバが笑う。
「なら大切な人の手をしっかり掴んで離すな!」
「そうそう。大切な人がおるのは幸せなことやさかい、しっかり掴んで守ってあげてな」
 滅多に触れてくれない、大きくて暖かい手を思うと蜻蛉の心に優しく火が灯る。
 温かくて優しい気持ち。それはエディがフィーネを、そしてフィーネがエディを思う気持ちとよく似ている。
「はい!」
 しっかりとエディがフィーネの手を握り締めるのを見て、アウローラがもう片方の手を握る。
「エディだけじゃないよ。フィーネのお父さんとお母さんも、フィーネのこと心配して起きるの待ってるよ」
 だから起きよう? と明るく声をかける。
 まだフィーネに変化はないが、その間に冬佳はフィーネの状態をしっかり確認する。ここ数日眠り続けているせいで衰弱しているが、それ以外の気になる点はない。衰弱も、目覚めてからしっかり食事をとってゆっくり体調を整えていけばすぐに回復するだろう。
 状態を見てほっとしたのも束の間。微かな違和感に部屋の片隅を見れば、そこには影に紛れて夢魔の姿が。
「来たか」
 クロバが十字を刻んだ白銀の剣と、刹那に輝く雷を閉じ込めたような剣を抜く。両の手に二振りの剣。故に『死神二振』。
 不敵に笑うクロバの後ろから、甘く深みを帯びた声が響く。
 それは大切な人を守るために戦う、少女にとっての英雄の詩。その詩にクロバの、冬佳の、アウローラの心の奥から強くあたたかな勇気が湧いてくる。そしてそれに続く力強い波動を受け、いつもより体が軽く、しっかりと敵の姿が見える。
「ハッピーエンドを邪魔する夢魔は、アウローラちゃんが成敗してやるー!」
 可愛く勇ましいアウローラの声と鋭い一撃。それに続くはクロバの一撃。
 だけど二人共全力は出さない。今夢魔を倒せばフィーネは二度と目覚めなくなってしまうから。
 逃がさず生かさず、絶妙な加減は流石と言うべきか。
「フィーネさん。いくつもの不幸が重なったけれど、それでもエディさんは貴女の元に帰ってきました。そして今も貴女の傍に付き添っています」
 フィーネの傍に残った冬佳が声をかけ続ける。
 どうか、このまま全てを諦めて眠りにつかないでと祈りを込めて。


 どこからか聞こえてくる声に、胸の奥に少しずつ降り積もって行くあたたかな思いに、フィーネはエディの姿ではなく、姿の見えない誰かを探し始めた。
『フィーネさん。今、貴女が何を見ているのか私たちには把握できません。ですが、貴女はそこに居て幸せですか?』
 聞き覚えのない声。だけどフィーネのことを心から思ってくれているのは分かる。
『時は必ず過ぎる、陽は必ず昇る、明日は必ず来る。だから、貴女の元に彼は必ず帰ってくるのです。『貴女も』彼の元に帰ってあげてください。そこで探しても彼は居ません――貴女の元に帰ってくる、と、エディさんは約束したのでしょう?』
 その言葉にフィーネは目を見開く。
 ここにエディはいない? ならここにいるエディは?
『フィーネちゃん、起きて……? あなたの想い人帰って来たんよ。
 今まで一人でよお頑張ったね。寂しい時、心が折れそうな時もあったやろうて。早う目ぇ覚まして、そんな時間を忘れるくらい、好きな人と一緒に過ごしたらええ。その手で抱きしめて、もう離さんかったらええの』
 始めに聞こえた優しい声。
 エディは帰って来た? 目を覚ます? ここは、何?
 ぴしりと、小さな音がする。これは何の音だろう。
『春は、暖かな日差しの中一緒に散歩。
 夏は、海に行ったらええ……。花火綺麗よ?
 秋は、たわわに実った果実を彼のために剥いてあげたらええ。
 冬は、その綺麗な手を、温めてもろたらええ。
 彼を悲しませるのは、あなたの望みやないはず……。よお寝たことやし、そろそろ起きよ? 眠り姫さん』
 あぁ、そうだ。私は彼と、そんな風に過ごしたかった。
 他愛ないことで一緒に笑い合える、手を取り合って一緒に過ごせる幸せな日々。
『絶望する必要なんてどこにもない! フィーネ、君が想い君を想う人はそこにいるぞ!!』
 強い意志を秘めた声に、思わずハッとなる。
『未来がどうなるかなんてわかりはしない。きっと苦しい事も悲しいこともあるだろうけどさ……。それでも、掴める筈の未来は必ず光り輝くものな筈だ!! 約束が果たされる時は今、この瞬間だ!!』
 待つだけの日々が不安で苦しかった。でも、本当にエディが帰って来たならそれはもう終わる。
「エディ……。私……ずっと待っていたのよ……」
 ここにいるエディは本物じゃない。
 聞こえてくる声たちを、こんなにも真剣に語り掛けくれる人達の言葉を、私は信じたい。
 ぴしぴし、ぱきん。
 何かが崩れる音が大きくなっていく。
『さぁ、もう起きる時間だよ! アウローラちゃんの唄で目を覚まして!』
 明るく誘うような歌声が響く。それに合わせて、フィーネが囚われていた悪夢が消えていく。
『フィーネ。お願いだから、帰って来てくれ……!』
 祈るような、泣きそうなエディの声。その声に泣きそうに笑うと、フィーネはそっと手を伸ばした。


 ぴくりとフィーネの手が動く。それからゆっくりと瞼が開いて行く。
「フィーネ!」
「エディ……」
 小さな掠れた声。だけどその目はしっかりとエディを見ている。
「フィーネさんはもう大丈夫です!」
「なら後は夢魔を倒すだけだね!」
「ここからは手加減無用だ!」
 冬佳の声にアウローラとクロバが笑う。その笑みを見て、蜻蛉は夢魔に合掌するのだった。

●幸せを志す
「本当に、有難うございました」
「無事にフィーネさんが目覚めて良かったです」
 頭を下げるエディとフィーネに冬佳が微笑む。
「これからは二人でハッピーエンド目指して頑張ってね!」
 アウローラの言葉にエディがフィーネの手を優しく握りしめた。
 その様子を少し離れた所で煙管をふかしながら眺めているのは蜻蛉だ。
「待ちわびた時間の分も、大事にしてもらいよ」
 幸せそうな二人が微笑ましくて、少し羨ましい。帰ったら少し甘えに行こうか。
「想う心、か」
 一足先に部屋を出たクロバが想うのは大切な人。くるくる変わる表情を思い出すとくすぐったい気持ちになる。
 眠り姫は目覚めた。この後は、きっと王子様と一緒に幸せな物語を紡いて行くだろう。

成否

成功

状態異常

なし

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