シナリオ詳細
ゴールドラッシュ☆ムーンレクイエム
オープニング
●ふゆはさむい!
カラスの飛ぶ古城めいた廃墟の、奥の奥。
背筋をなめるような怖気を振り払い進んだなら、その部屋へたどり着くことができるだろう。
部屋に待つ、かの魔女に出会うことが……。
「フフ……よく来たなァ。ここが『化物の巣窟』と呼ばれてるのを知ってなお一人で来たのか?
だったらたいした度胸だ。その度胸に免じて……と言いたいところだが、早速動いてもらうぞ。
この状況を見れば、やるべきことは一目瞭然だろうがなァ?」
不敵に笑うレイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン (p3p000394)。
彼女はスッと手をかざすと、立てた人差し指を……自分の足下っていうか下半身がずっぽりはまったコタツに向けた。いやもうコタツっていうか八人くらいはみ出してる巣って感じで、長年使ったであろうお布団部分はつぎはぎだらけだし天板はなんかひび割れてるし立て付け悪くなってるのか微妙にかたかた斜めに揺れてるそれはやっぱりみんな大好きコタツであった。
「新しいコタツがないと冬が越せねえ!!」
ギルド『月夜二吼エル』の拠点はおなじみの廃古城である。
この冬はほんと冷えそうな建物で暮らすには暖房器具は必須であり、前からずっと使ってるコタツ(魔力を充填して使うタイプ。ラサの商人から買った)に至ってはみんなここに足をつっこんで一日中過ごすもんだからだいぶガタがきていた。
もっと言えばギルド団員が増えたおかげでコタツ利用者も必然的に増え、今では13人くらいが足の先だけ布団の端っこに突っ込んでかろうじてコタツ気分を味わうのが限度。
より巨大な新KOTATUの導入が必至!
このままではコタツ不足により団員もろとも凍え死ぬこともありえるのだ!(誇張表現)
「そんな訳でクロジンデ、例のものは持ってきたんだろうな」
「はいはいもってきたよー」
クロジンデ・エーベルヴァイン (p3p001736)がポケット(?)からすっと取り出してきたのはローレットあての依頼書であった。
いつもの八人セットのヤツじゃなく、一風変わった四人セットの依頼である。
「受け手が見つからなかっためんどい依頼があったからねー、もらってきたよー」
「ほう、でかした」
「これでお金が稼げるわけだね?」
ルナール・グルナディエ (p3p002562)とルーキス・グリムゲルデ (p3p002535)が肩を寄せ合って身を乗り出す。
「まー、多少はねー……」
依頼書にさらさらとルーキス、ルナール、そしてちゃっかり自分の名前を書き付けるクロジンデ。
「あと一人は誰がいい?」
「そういうことなら、私がいこう」
シリアスな顔でみかんの皮をむいていたシグ・ローデッド (p3p000483)がキリッと振り返った。なんでこのひとみかんむいてるだけなのにこんなハンサム顔できるの才能なの。
「シグ追加ー。これで四人だねー」
「おっと、そういえば依頼内容を聞いていなかったな。四人程度で済む依頼だ、モンスター退治かなにかだろうが……」
依頼書をかざしてみせるクロジンデ。
顔を寄せるシグ。そしてルーナルとルーキス。
依頼書には『デスマングース100匹確保』と書いてあった。
ぽろり、と手からミカンが落ちた。
「ふう、これでなんとか新KOTATUの導入は可能か」
「足りないわよぉ?」
「そうね~。倍ほどかかるわね~」
寒いときにはお酒でしょといって熱燗をちびちびやっていたアーリア・スピリッツ (p3p004400)と、そのご相伴にあづかっていたレスト・リゾート (p3p003959)が、それぞれ商品カタログを見ながらつぶやいた。
二度見するレイチェル。顔のいい女がいい顔のまま二度見するとなにかのバグみたいに見える。
「たとえば、一番安いので、これ……ですね」
おそるおそるカタログの一部を指さしてみせるアイラ (p3p006523)。
古城(?)の雰囲気によくあうアンティークっぽい巨大コタツの絵……の下につつーっと指を移動させるとアイラの青いつけ爪がとんでもねー額をさし示した。
「…………」
額に指を当てたまま固まるレイチェル。
アーリアはフッと笑うと、クロジンデのポケット(?)に手を伸ばした。
「大丈夫よぉ。クロジンデちゃんは、ちゃーんとほかの仕事も斡旋してくれるものねぇ」
「そうね~。たよりになるわ~」
レストが、クロジンデのポケット(?)から引き抜いてきた依頼書のひとつを手に取った。
「見てみて~アイラちゃん~。『もちもちうさぎを50匹捕まえるだけの簡単なお仕事』ですって~」
「わあ……それなら、ボクたちにもできそう、ですね」
きゃっきゃしながら自分たちの名前を書き込むレストとアイラ。
よーく見ると、その下にもう一枚依頼書があった。
トン、と指でおさえゆっくりと引き抜いてみる。
必然的に自分たちがやることになるであろう仕事を、レイチェルとアーリアはのぞき込んだ。
『新薬実験』とあった。
「おお……」
「知ってるわぁ、これぇ」
- ゴールドラッシュ☆ムーンレクイエム完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2019年12月20日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費---RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●さあみんなで歌おう、アニメ『月夜二吼エル』オープニングテーマ『KOTATUの危機!』
「つきーにほーえるぎるどはー、ぎるどはー」
おこたからにゅっと顔だけ飛び出す『受付嬢』クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)。
「KOTATUの危機!」
「占領してる」
「占領してるね」
「余り物には福があるっていうけどねー。余るものには、それなりの理由があるんだよねー」
冷静に考えたら余り物に福なんてねえ。
みんながやりたくないなーって思った気持ちの残骸だけがずっと掃除してなかったタンスの裏のホコリのごとく積もっているのだ。
「ククク……だが仕事は仕事。でかしたぞクロ!」
椅子の手すりに顎肘をつき、足を組んで身体を傾ける『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)。
キュパッて音をたてて白手袋ごしの指を鳴らした、
「これで皆のKOTATUが買える!」
「今更ヨーロッパ伝記物のシリアス怪物ぽく振る舞ってもいみないと思うなー」
「おこたって高いンだな」
「もっと庶民的にー」
「快適な冬を過ごしたい!」
「いいぞー」
「夜通し飲むには、この古城は隙間風が厳しいものねぇ」
炭みたいに黒いアンティークチェアに腰掛け、前屈みになって揺らすワイングラスの水面を見つめる『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)。
「今更フランス映画に出てくる魅力的な美女っぽく振る舞っても意味ないとおもうぜ」
「ってことでコタツよぉ!」
「発音を初めて京都を見た外国人っぽく!」
「KOTATUよぉー!」
「いいぞ」
いろいろ開き直って遊ぶアーリアたちを余所に、『蒼き深淵』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)はトラウー・マウンテンのデス峠地図を開いていた。
「KOTATUがないと皆死んじゃーう。いえーい全ては新品のKOTATUの為にー!
仕方ないから手伝ってあげる優しい私なのであった……て」
デスマングースの発生地帯に印をつけようとペンをとるも、地図がもう小学生かなってくらい雑で、『ここデス峠!』ていい加減にマル印がついていた。
ほとんど人が立ち入っていない、ないしは放っておかれている証拠である。
「マングース100匹とか馬鹿じゃないの!?」
「おーおー、これは見事に真っ黒な仕事だなぁ」
移動コストが高い場所ほど価値が増す。それを一度に沢山運搬することで利益が増す。簡単な理屈だが、だいぶえげつない数字が『誰も受けてくれなかったんだろうなあ』感を出していた。
「真っ黒な仕事とはいえ、皆で入れる炬燵は魅力的だし……何より寒いの嫌だしなー。新しい炬燵はぜひ欲しい。
っていうか広々炬燵でお茶飲んでミカンとアイス食べたい」
さらっと本音をいう『紅獣』ルナール・グルナディエ(p3p002562)。
「やれやれ……金銭難というのは、いつの時代も面倒な物だ」
月夜の窓辺に腰掛け足を組み、本を開いていた『『知識』の魔剣』シグ・ローデッド(p3p000483)が眉間を軽くもんでハンサムに微笑した。
ここまで描写するとすげーハンサムっぽいが、読んでる本は『かわいいマングースちゃんまるわかりハンドブック』であった。こんな本読みながらハンサムできるのなんなの才能なの。
「まあ、貧窮も経験した身だ。こういう仕事もあるだろう。
そしてどうせやるなら、楽しむべきと思うがな?」
一方。さらっとやさしい仕事を引き当てた『遠足ガイドさん』レスト・リゾート(p3p003959)と『瑞花』アイラ(p3p006523)。
「KOTATUさん、やっぱり、ぎゅうぎゅうでしたもんね……」
割と日頃から寒そうな格好をするアイラだから、だろうか。コタツに膝を入れつつほうっとため息をついた。
「それに一番お安いのが、あんなお値段だなんて……」
「大丈夫よ~。このお仕事をこなせば、おっきいおこたが待ってるわ~」
「そ、そうですよね」
あんパンもぐもぐしてるレストがなんだかやわらか調子で頷いた。
「アイラちゃん一緒にがんばりましょうね、明るい未来とコタツが待ってるわ~」
「クも、精一杯頑張ります……! えい、えい、おー!」
「お~!」
と、こんな具合で。
『月夜二吼エル』の面々はそれぞれの持ち場へと繰り出した。
全ては新しいコタツのために。
これからぐっと寒くなる冬のために。
危ないバイトに手を出すのだ!!
●もちもちうさぎちゃんをつかまえよう
危ないバイトと言っておいてなんだが、もちもち丘でもちもちする人気ペット『もちもちうさぎ』を捕まえていくるのが、今日のアイラとレストのお仕事である。
「愛情~こめて~、そだてれば~」
レストが取り出したおしゃれなじょうろを丘の一部へ蒔いていく。ハート型に蒔かれたエリアがもこもこと揺れ、まだ新芽の出ていないはずのオツキミ草がにょきにょきと新芽をはやし始めた。
「愛情たっぷりの新芽スポットよ~。アイラちゃん、あれは用意できたかしら~?」
「ぁ、えと……ねむくなるお薬でしたね」
バスケットをもって立つアイラが、サンドイッチでも入れそうなバスケットから粉末状の睡眠導入剤を取り出してきた。睡眠薬とはちょっと違う、落ち着いてまったりしてると眠りやすくなる、ないしはぼーっとしてくるお薬である。これを新芽スポットにぱらぱらと振りかけていく。あまり過剰にふりかけるとにおいでもちもちうさぎが食べないかもしれないので、あくまで控えめに。
「これで、もちもちうさぎさんがぼーっとしてくれれば、怪我をさせなくて済みますよね?」
「そうよ~」
二人は生え具合とかかり具合を一度ちゃんと確かめると、ここから離れた場所へと移動していった。
テントの中で本を読んだりサンドイッチを食べたりお昼寝したりしてからの、夜。
「アイラちゃん?」
「はい。いっぱい見えます……」
暗視をきかせたアイラが高い視力で新芽スポットを確認すると、沢山のもちもちうさぎがスポットに集まって早い新芽をもぐもぐ食べているのが見えた。
草をむしっと食いちぎってから小刻みにもももももって口を動かすさまに、ちょっと和むアイラ。
「ここからはボクの出番、ですよね……!」
アイラは立ち上がり、ゆっくりと歩きながらもちもちうさぎたちに優しい気持ちを放ち始めた。
こう、なんというか、ふわふわしたかんじのキモチを伝えるために、口でもちょっと『ふわふわ~』って言いながら近づいていく。
ただ近づくだけと違うのは、アイラは想いや言葉を煌めく蝶に変えて伝えることができるという所だ。
言葉にならない言葉を伝えるという性質と、そして動物たちと言葉を疎通させるスキルが相まって、もちもちうさぎたちはアイラが大して害のない相手だと判断してくれたようだ。ぴょんこぴょんこもっちもっちしながらアイラのもとにあつまり、足首にもちもちと体当たりっぽく身体をこすりつけてくる。
「わ。わぁ……」
そんなもちもち兎にそっと近づき、用意しておいたゲージにひょいひょい入れていくレスト。目的の数がそろうには、そう時間はかからなかった。
最後にオツキミ草の新芽をパックして、新しいオーナーへ一緒に渡せるようにつけておいた。
「うさちゃんが素敵な飼い主さんに巡り合える様に……」
「……ぁ、あと、ボクもお持ち帰りしても、良いでしょうか?
責任をもってお世話する、ので……!」
「あらあら~」
目的の数もそろったしそれもいいかな、と思ったレストは、ゲージに入りきらないもちもちうさぎの一匹をアイラへと手渡した。
使役関係を結んだもちもちうさぎが、アイラの肩にぴょんと飛び乗っていく。
「わ、わあ……えへへ、もふもふだぁ……!」
一緒にこたつに帰りましょう! といって、アイラはもちもち兎を抱きしめた。
●ですまんぐーすをつかまえよう
やあみんな。ここは動物ふれあいコーナーだよ。
具体的には。
「「キシャアアアアアアアガアアアアア! グガッギャアアア!」」
野生100%の威嚇ボイスでかみついたり逃げ出したりするデスマングースの群れだよ。
「なんだろー。唐突に比較対象にされたきがするー」
足や腕にひっかき傷を作りながらも、飛びかかってくるデスマングースに渾身のクロジンデクロー(顔面を掴んで闇の力でキュッ☆てする必殺技である)を炸裂させていくクロジンデ。
あとで心臓部分を抜き出せるように首から下を残して『デスマングースを積んどく山』にぽいって投げると、今度は逃げ出すデスマングースめがけて闇のボールを思い切り遠投。爆発させていく。
シグもそれに習ってか『幻想理論「過冷却集電弾」』を射出。
強烈な電撃をおこしデスマングースたちをしびれさせるとすぐさま剣に変身。『異想狂論「偽・烈陽剣」』を発動させて破壊エネルギーを放出した。
次々に吹き飛んでいくデスマングース。
さあデスマ山(マングースを積んどく山)に集めようと手を伸ばした、そのとき。
「ギャラガアア!!」
野獣でももうちょっとまともな声あげるぞっていう凶暴さでマザーマングースが地面を割って登場。
手を伸ばそうとするクロジンデめがけて飛びかかる。
「おっと、受け取れ」
剣化していたシグは魔力噴射によって加速。回転して飛んできた剣を、クロジンデはぱしりとキャッチした。
「おー、剣装備とか新鮮ー」
剣に動かされるままに防御姿勢をとると、繰り出すマザーマングースの爪を魔力障壁でガード。
それでも防ぎきれない衝撃を飛び退くことによって緩和し、クロジンデは剣を水平に構えたまま両足のかかとで地面にブレーキをかけた。
「いつもより動けるー」
「お前さんには此方の方がよいとはな?」
シグは障壁をガラス窓のごとく粉々に分解するとそれらを弾にして乱射。
顔面めがけて飛んでくる魔力破片に目をつぶったその隙に、クロジンデは魔力ブーストによる高機動で接近し、マザーマングースの片目を切りつけていった。
が、ただでやられるマザーマングースではない。すぐさま身を転じてクロジンデを殴りつける。
再度吹き飛ばされるも、クロジンデはカウンターヒールをかけてダメージを排気した。
「やれるねー。今のうちだよー」
「おお、悲しみのブラック仕事。
ふふふ頑張ろうねルナール、外は寒いなあ」
クロジンデにマザーマングースを任せ、ルーキスとルナールはそれぞれ逃げだそうとするデスマングースの獲得につとめた。
「頑張ろうな、ルーキス……というか! 真冬に岬とか心底生息地改めろってこのマングースって言いたい!!!」
『幻刃・蒼碧』を抜刀。逃げるデスマングースへ素早く追いつくと、次々にデスマングースの首や胴体をはねていく。
必要な獲得部位は心臓なので、そこさえ傷つけなければどう倒してもOKというわけだ。
ルーキスは反撃しようと威嚇するデスマングースたちの中を駆け抜けながらチェインライトニングを連発。
「それにしてもやっぱり数が多いな!?」
「あっはっはー、獣がゴミのようだ!!」
「嫁さんが 今日も元気だ おそと寒い」
「こんなブラックテンション上げなきゃやってられるかちくしょうめ!」
一部をいわばに追い込んで、二人は大量のデスマングースを文字通りの血祭りに上げていった。祭りっぽさを担当しているのはさっきからうずたかく積まれるデスマ山である。
「100匹ノルマの為ならえーんやこーら!」
「お怒りはごもっともだがもう少し生息地をだな……!」
「ルナー! まだ我慢できる? よし継続だ削るぞー!」
「もうちょい行ける…と思う!……というかノルマ達成できんと終わらんしなこれ!」
と、そこで。
「そろそろ交替ー」
シグの剣でマザーマングースのかみつきをはじいたクロジンデが、大きく飛び退いてルナールたちの所へとやってきた。
「たっち」
「きゃー! おかーさーん!
すんごい怒ってますね、ということでチェンジ!!」
ぱちんとクロジンデの手をたたくと、ルーキスは『暴虐の紅玉』を連射。
牽制射撃を防御するマザーマングースに、ルナールは刀を突き立てた。
悲鳴をあげ、地面にもぐって逃げていくマザーマングース。
「あーー、流石にしんどい……!」
ルナールは煙管をくわえ、火をつけた。
「いやはやカバーお疲れ様ルナール。暫くマングースは見たくないなぁ」
「よっと、逃がさないよー」
マザーマングースと一緒に逃げようとしたデスマングースたちめがけ、クロジンデはシグを投擲。
爆発する破壊エネルギーによって、デスマングースたちがまとめてはじけ飛んでいく。
くるくる回転しながら飛んできた心臓(まだちょっと動いてる)をキャッチして、クロジンデはデスマ山へとスローした。
「はい、百個ー」
●酒は静かに飲むものか
美女、という単語からいかなるものをひとは想像するだろうか。
清らかな肌。
淑やかな表情。
ひかえめな佇まいやせせらぐ川のように艶めいた髪を想像するだろうか。
裏酒場チェッカーフラッグに入ってきた女は、そのことごとくを裏切りながら、誰もが納得するほどの美女であった。
右腕一帯から首までを浸食するかのようなタトゥー。
左右異なる瞳の色は、清らかさとは反対の凶暴さや鋭さを光にたたえ、あれた髪はまるで言うことを聞かない子供のように複雑に散っていく。
しかしその全てが超然とした美観にパッケージされ、見る者の目を釘付けにする魅力であふれていた。
『魅力は隙から生まれる』という言葉にそうならば明らかに矛盾した、『隙の無い魅力』が、この美女にはあった。
美女は風に散るたばこの煙めいた銀髪をふって、集まる視線のどれにも応えることなく酒場のカウンターまで歩いて行く。
「ブラッディーマリーを」
店主が注文を受けた、と同時に。
ガタンと酒場のドアが再び開く。
現れたのはもう一人の、そして銀髪の美女とは対照的なまた別の美女であった。
酒気に高揚させる頬。
ふっくらとしたパンのような、健康的な脚。
髪はテーブルにこぼしたワインのように赤く、そして毛先にかけてパープルのグラデーションを作っていた。
過剰に思えるほど扇情的なドレスで胸元や脚を見せつけ、どこかふらふらと歩くそのさまから、男たちは目を離せない。
『魅力は隙から生まれる』という言葉を最大限に発揮させた、それはそれは魅力的な美女であった。
彼女は銀髪の女と並ぶようにカウンター前に座ると。
「楊貴妃を」
そう言って、店主の出してくるグラスをつまむ美女。
銀髪の――レイチェルはグラスの水面だけをみてため息をついた。
「最高のシチュだな、ヤバい薬の実験じゃなけれ」
「ほーんと」
同じく水面を見つめるアーリアの肩に、見知らぬ男が手をかけた。
顔に十字傷のついた男がニヤニヤしながら問いかける。
「おいねえちゃんいくらだ?」
最悪だなあ。
リアクションすらしたくない。アーリアとレイチェルは同時にパチンと指を鳴らした。
空間に開く二つの魔方陣。
一瞬で吹き飛ばされる男。
おそらくその子分だったのだろう。周囲の男たちが立ち上がり、腰の銃を抜いて突きつけてくる……が。
「後で呑み直そうぜ、おごるから」
「私は遠慮しないわよぉ?」
二人は立ち上がると、振り向きざまにレイチェルが手袋を外し指先をかみちぎった。壁に吹きかかる血。描かれる魔方陣。と同時にアーリアはカクテルグラスを放り投げ、地面で割れたガラスとカクテルが魔方陣を描き出す。
「てめぇ何す――」
ごう。
と、酒場の入り口と窓から赤と紫の炎が吹き出た。
両手をあげて固まる店主にチップを払い、二人はまるこげになった店を出て行く。
「やりすぎたかしらぁ?」
「まあいい。続きはKOTATUに入ってからだ」
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お帰りなさいませ
ギルドには無事おニューのビッグKOTATUが導入される――のでしょうか?
GMコメント
これまでのあらすじ!
ギルド『月夜二吼エル』の面々は新コタツ導入のため即金仕事を探していた。
クロジンデ(有能)が数々の依頼の中からそっと引き抜いてきた三つの依頼に、彼らはいますぐ身を投じることになる。
いざゆけ月吠メンバーズ! でかいおこたを手に入れるために!
■メンバー分け
このシナリオでは適正(?)にあわせてメンバーが固定されています。
各お仕事をメンバーごとに解説していきましょう。
●もちもちうさぎを捕まえよう:アイラ、レスト
オツキミ高原にくらす混沌生物『もちもちうさぎ』は貴族に大人気のペットである。
そのブームに目をつけた商人たちが大量に売り出すべく捕獲依頼を出してきた。
もちもちうさぎは夜行性のため、夜の高原に出てうさぎを引き寄せ、油断したところを網でバッといかねばならない。
フツーにやろうとすると面倒極まりないが、もちもちうさぎの特性を利用すれば成功の目があるぞ。
もちもちうさぎは『やさしくてキラキラしたもの』と『オツキミ草の新芽』を好む習性がある。
もちろん普通のひとはそう簡単にキラキラできないし、オツキミ草の芽は来月くらいにやっと生えるものだが、今回のメンバーならイケそうなきがする!
●デスマングース100匹確保、ルナール、ルーキス、シグ、クロジンデ
混沌生物デスマングースはトラウー・マウンテンのデス峠に生息する恐ろしく凶暴なモンスターだが、こいつの心臓からは高濃度な魔力が抽出できるとして商人にいい値段で取引される。けど仕入れるのがくっそ大変なので依頼が浮きやすいのだ。
手順としては、あっちこっちに逃げて散っていくデスマングースを追いかけ、時に抵抗するデスマングースをめりめり殺していくというものなのだが……。
デスマングースを殺そうとすると全長5mの巨大モンスターマザーマングースがこちらを排除しようと襲いかかってくる。
こいつに挑みかかり、しばらく時間を稼ぐ係が必要なのだ。
妥当なやり方としては、2人・2人でコンビを組み、片方がデスマングースを狩っている間もう片方がマザーマングースを押さえておく。
しかしマザーマングースはけっこうヤバい戦闘力を有するので、途中でお互いの役割を交代するのがベストだ。
おすすめはルナール・ルーキスコンビを前半のマングース狩りに回して後半交代したところで防御しまくって時間を稼ぐ戦法である。
あとせっかくなので今回限りのルールを追加しよう。
対マザーマングース戦においてのみ、クロジンデがシグを『装備』することで固体戦力ばなんか倍近くなって合体技が放てるものとする。
細かいルールやレギュレーションになんか矛盾が出そうだが、その辺は二人が上手に連携しているものとしてうまいこと判定処理するのでへんに細かいこと考えず今回は楽しんでいってね。
●新薬実験:レイチェル、アーリア
お二人にはおなじみ、呪術薬の実験を依頼してきたマッドな錬金術師が再び登場。
今回は『悪い男にひたすらひっかかりやすくなりすぎる呪い』薬である。
二人はこれを飲んで治安のくっそ悪い酒場にいき、カウンターでしみじみ飲んでいてほしい。
そこへ「よう姉ちゃん遊ぼうぜ」みたいなことを言ってからんでくる男がくるので、これを自力で撃退しよう。
より具体的なことをいうと、この呪いの効果範囲にいる男性は凶暴性や攻撃性が増しひたすら乱暴なからみかたをしてくるので、酒場で男たちを相手取った大立ち回りをすることになるだろう。かまわん、全員ころせ。マスターは生かしておけ。だって最後に飲み直せないだろう?
といった具合でございます。
今回はスペシャル版のつもりで判定も若干サービスするので、目一杯遊んでいってくださいね。
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