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シナリオ詳細

ブレンダンソマー墓所への探求

完了

参加者 : 8 人

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オープニング

●遺跡探索のご依頼
 黒檀のテーブルに並ぶろうそく。
 炎に照らされた四十台ほどの美女が、テーブルに身を乗り出すようにして一本のスクロールを広げた。
「この絵画を見て。ブレンダンソマー墓所の歴史を示すごくわずかな資料よ」
 彼女の名はハンナ。学者であり、今回ローレットにおける依頼主である。
「ブレンダンソマー墓所は元々舞台だとされていたわ。名前も『ブレンダンソマー・ステージ』。古代の儀式場だと思われていたのよ」
 スクロールに描かれたのは巨大な円形石版の上で踊る人間の絵だ。
 石版には不思議な形象文字や文様が円を描くように描かれていて、その中央で儀式を行なうさまだ。
 歴史は流れ、周辺部族が舞台の上で決闘を行なうようになり、それが祭りとなり、競技化し、何年も繰り返され――つい今年、パワフルな闘士が舞台を破壊したことで『これが舞台などではない』と誰もが気づくに至ったのだ。
 なぜならば――。
「見えている通りよ」
 テーブルの先。
 砕けた大石版が撤去されたその下。
 石造りの螺旋階段と、大きな鉄扉があったのだ。
 扉には古代の文字でこうあるという。
「『偉大なるもの、この墓所に眠る』。前に雇った探索隊は内部を守るアンデッド相手に全滅して逃げてきたわ。ただ探るだけじゃない。戦える人が必要よ」
 おっと、依頼内容をまだ述べていなかった。
「だから依頼内容は、私の護衛」

●お話し合いはカフェのなかで
 依頼人から受け取ったコインを手にやってきたのは近隣の酒場『フレイズ』。
 伝統織物やラクダの画が壁にかかったどこかエキゾチックな酒場だ。
 資料の整理にもどったハンナに代わって説明を任された『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)がチャイの注がれたコップを前に息をついた。
「先行した探索隊の話だと、内部は石造りの迷宮構造になっているそうよ。
 古い安置所……そうね、石で出来た二段ベッドのようなものに包帯で覆ったアンデッドが沢山安置されているんだけれど、そこから起き上がっては侵入者を排除しようとするそうよ。
 剣や弓で武装しているみたい」
 他にも侵入者に反応してダメージを与える物理的な罠があちこちに仕掛けてあり、探索隊は命からがら逃げ出してきたという。
「分かっているのは探索隊の到達したチョットのところまで。なんだかダークカーキな話よね」
 欲しいのはこのミイラ式アンデッドと戦う戦力と、罠の探索能力や対処能力、その奥にある未知の脅威への対応……といったところだろうか。
「といっても、私たちへの依頼内容はハンナ氏の護衛よ。危なくなったら引き返してもいいわ。皆が『これ以上は行けない』って言えば、彼女も諦めるはずだから。
 けど、なぜかしらね、なんとなく……」
 ついっと指をあげ、プルーは片眉を上げる。
「未開の古代墓所の探索なんて、ロマンがある気がしないかしら」

GMコメント

 いらっしゃいませ、イレギュラーズの皆様。
 こちらはエスニック酒場『フレイズ』。
 各種お酒に加えてカレーやチャイといった料理がお楽しみ頂けます。
 では会議をしつつ、ご注文をどうぞ。

【依頼内容】
 『ハンナの護衛』が依頼内容です。
 よって、『帰還時におけるハンナの生存』が最低成功条件となります。

【ブレンダンソマー墓所】
 明かりの無い石造りの迷宮。
 照明があるとグッド。ハンナがカンテラを一個所持しているので最低限は動けます。
 他はアイテム等で持参する必要があります。

【探索判定】
 探索パートでは、当シナリオ限定で以下の判定方法をとります。
・新しい場所(主に部屋)に訪れたところでロール
・ロール値に応じて1~2種の状況が発生
 A:悪霊やミイラアンデッド3~6体が襲ってくる
  →戦闘状態に突入。詳細はエネミーデータを参照。
 B:ダメージトラップが発動
  →メンバー全員に回避ロールを行ない、失敗したらダメージ(かばうのも可能)。罠解除や探索関係の技術を上手に行使すると全員の回避にボーナスがつく。
 C:無害な祖霊に出会う
  →レア。霊魂との疎通能力があると話を聞ける。言い方や接し方を工夫すれば罠解除か安全通路のどちらかを頼めるかもしれない
 D:資料になりそうなものを発見
  →レア。探索系の技能その他を持っていると確率上昇

【エネミーデータ】
●ミイラアンデッド(剣タイプ)
 全身を包帯で覆ったアンデッド。死霊術らしきもので動いている。
 『格闘(物至単)』で攻撃

●ミイラアンデッド(弓タイプ)
 上記の弓装備タイプ。
 『古代の矢(物遠単)』で攻撃。

●荒ぶる悪霊
 迷宮の中をさまよっている悪霊。言葉が通じずとり殺そうとしてくる。
 『怨念(神中単【毒】)』で攻撃。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • ブレンダンソマー墓所への探求完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年03月12日 21時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
グレイ=アッシュ(p3p000901)
灰燼
幽邏(p3p001188)
揺蕩う魂
パティ・ポップ(p3p001367)
ドブネズミ行進曲
アト・サイン(p3p001394)
観光客
原田・戟(p3p001994)
祈りの拳
エイヴ・ベル・エレミア(p3p003451)
ShadowRecon
ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者

リプレイ

●チャプター0:現ひらかば夢だらけ
 鳥の声遠く。雑草と遠い岩山の景色。
 石の螺旋階段を下れば苔すらなく、いつまでも放置された倉を開けた日のような、忘れられたものどもの臭いがした。
 両開きの扉を前に、太陽の意匠がこらされた剣を肩にかつぐ『太陽の勇者様』アラン・アークライト(p3p000365)。
「確かにまあ、ロマンはあるよな」
「あるよね! ダン! ジョン! ダン! ジョン!」
 グーにした両手を上下に振る『観光客』アト・サイン(p3p001394)。
 膝を突いて拳を天に突き上げる。
「ダンジョン探索ダンジョン探索、だ、だ、ダンジョンだああああああああああああうああああああああ!」
「うるせえっ」
 後頭部をぺしんと叩くと、アトはスイッチされた目覚まし時計のように静かになった。
「随分と元気がいいな」
 腕組みをして横に並ぶ『聖剣使い』ハロルド(p3p004465)。
「だろう? うるさくってかなわねぇ」
「いや、アンタの方だ『太陽の聖剣使い』」
「そういう呼び方をされんのは珍しいな」
「そうか? 俺はいいと思う」
 ハロルドは相手と対称になるように赤い宝石のはまった聖剣を肩にかついで見せた。
「俺もその要領で呼んでくれ」

 ハロルドたちに先行させ、学者のハンナがゆっくりと階段を下りてくる。
 横に並ぶように『灰燼』グレイ=アッシュ(p3p000901)が杖をついて歩いていた。
 いつのまにか肩にのっていたネコが、彼の頬に頭をすりつけている。
「ふふん、わかるよ。秘密は甘い蜜の味だ。暴きたくなるのは人の性。だよね?」
 話を振られた『ドブネズミ行進曲』パティ・ポップ(p3p001367)がこくこくと頷いて、まずは扉を確かめ始めた。
「まじゅは、ここから入るでちね? よく遺跡にもぐってたでちから、今回も、何とかなると思うでち」
「…………」
 その様子を腕組みをして観察する『祈りの拳』原田・戟(p3p001994)。
 何を思っているのかわからないが、ひどく残念そうな顔でゆっくりと首を横に振った。
 あとを追ってゆっくりと飛行降下してくる『揺蕩う魂』幽邏(p3p001188)。
「…………」
 彼女も彼女で無口なようだ。
 高位の魔術を放ちそうな外見をしているが、装備しているのは無骨なライフルである。立派なスコープまでついていた。
 軽い親近感を持ったのか、それとも単純に武器に注意が向いたのか、『ShadowRecon』エイヴ・ベル・エレミア(p3p003451)が彼女をまじまじと観察している。
 ごとんと音がなり、石の扉がゆっくりと開いていく。
 向こう側からなんともいえない空気が漏れ出し、一同の気持ちを否が応でも切り替えさせた。
 帽子のつばとつまみ、目を細めるエイヴ。
「手荒い歓迎は、できればご遠慮願いたいけど」
 依頼は受けた。受けたからにはやらねばならない。
 やらねばならないなら、成功させねばなるまい。
 その一点において、八人と一人の目的意識はひとつになった。
 『行こう』と、誰からとも無く言った。

●チャプター1:死が終わりでないならば
 壁から飛び出す無数の槍。
 振り子のように壁を横切る斧。
 『いかにも』を通り越した罠の数々に雰囲気を感じる一行のなかで、一番テンションをあげていそうなアトはしかし。
「ふむ……ふむ……うん、うん」
 ぶつぶつと何かを呟きながら地面を這っていた。
 その横ではパティが似たようなことをしている。
「んー、なんか、あるでちね? どうにも、嫌な予感がちゅるでち」
「具体的には?」
「重力関知式が三つ、呼吸感応式が一つ、生体感知が一つ」
 アトがザックから出したカンテラで地面を凝視し、くぼみやタイルの隙間を他人が引くほどの執念で観察していた。
「間違えないでね。そこと、そこと、そこは踏んでいい。20メートル進んだら敵が目覚めるから、近づいて殴りたいなら先にいくこと。質問は?」
 小さく手を上げるアラン。
 壁際の明かりを確保すべく人差し指に炎が灯っている。
「ひとつだけ。最初のテンションはどこに行った」
「健在だよ。このダンジョンに住みたい」
「わかったもういい」
 アランは言われたとおりにタイルを踏み、先頭へと飛び出した。
 すると奥の安置所から複数のアンデッドが起き上がる。剣を装備したアンデッドだ。
 その奥からは人の上半身だけを残したような悪霊たちが叫び声をあげながら飛び出してくる。
 なるほど。罠にかかった所を襲うか、もし飛び越えても押し込むように配置しているわけだ。
 アランは剣を構え、ぎらりと目を光らせた。
「よォし、来い」
 飛びかかるアンデッドの剣を打ち払い、隙を突くように腹を蹴りつける。
 アトやパティが戦闘に加わろうとする中。
 幽邏が飛行して射撃ラインを確保。
 ライフルを構えると、アランに襲いかかろうとしている悪霊めがけて狙撃を仕掛けた。
 大きくのけぞり、仲間たちの追撃によって消し飛んでいく悪霊。
 攻撃可能な道筋を確保したアランは倒れたアンデッドを踏みつけて走ると、剣から太陽のような輝きを起こした。真っ赤に燃える刀身で悪霊を袈裟斬りにする。
 燃え上がった悪霊は悲鳴をあげ、しかしそれ以上はなにもできぬまま消えていった。
 お疲れ様といってアトから渡されたポーション瓶。蓋を親指で開けると、アランは中身を飲み干した。

●チャプター2:あるはずの無い通路
 執拗に罠を探すアトの一方で、エイヴはジャケットに接続したライトであちこちを照らし、通路の壁を注意深く観察していた。
 罠の警戒もあるが、隠された通路を見つけ出そうとしていたのだ。
 ぬらした指を壁際に翳し、数秒。ノックを数回。
「先に空洞がある。風も……」
「見せて」
 ハンナが壁を調べると、不思議な文字で何かが刻まれていた。
 どうにも読むことの出来ない文字だ。
「暗号みたいね。書き記して持ち帰ればそのうち……」
「必要ないよ。ここで解こう」
 グレイがネコを床に下ろし、カンテラを文字の上に翳した。
 暫くうんうんと何かをつぶやいていたが、ほどなくして壁のパネルを入れ替えるように操作していった。
「魔術扉みたいだ。さしずめ暗証番号を入力するドア、って感じかな」
 パネルを操作しきり、杖でこつんと叩く。
 すると扉がごとごとと音を立てて開き、細い通路が姿を現わした。
「……やるな。ここは先行する。下がっていてくれ」
 松明をかかげて前へ出るハロルド。
 通路は途中から階段になり、下へ下へと続いていく。
 暫くハロルドを先頭にして進んでいた彼らだが……。
「まて。『サプライズパーティー』だ」
 ハロルドの耳は通路の先で奇襲をしかけようと待ち構えるアンデッドたちの気配をとらえていた。
 小声で言って、松明を振りかぶる。通路の先へ放り投げると、コンマ五秒おいて自分も通路の先へと飛び込んでいった。
 放物線を描く松明。
 それを目で追うアンデッド。
 通路から飛び出したハロルドはアンデッドにタックルを仕掛け、そのまま押し倒した。
 頭を潰し、その勢いで転がって立ち上がる。
「ハハハッ! おら、かかってこいよ! あの世に送り返してやるぜッ!」
 慌てた様子で奥のアンデッドが弓の狙いをハロルドに移すが、戟がとんでもない速度で至近距離まで近づいていた。
 すり足移動からの気合いを入れたハラパンである。
 奇襲のつもりが逆に虚を突かれたせいだろうか。アンデッドの腹に穴が空き、戟の腕が貫いていく。
 追って飛び出し、追撃をしかけるエイヴやハロルドたち。
 待ち構えていたアンデッドたちはたちまちのうちに制圧され。あちこちに屍を転がすことになった。いや、元から屍ではあったが。
「うえ、やっぱりまずい。砂みたいな味がする」
「なぜ喰った」
 アンデッドのスネをぽいっと捨てるアト。一方でハロルドは部屋を見回していた。
 円形の部屋だ。
 広いが、それだけだ。何も無い。
「行き止まりかしら」
「たかが行き止まりをアンデッドが守っていたと? 隠し扉まで作ってか」
 ハロルドはもう一度耳をすました。
「どうやら違うらしい」
 警戒する幽邏や戟。
 パティやアトも、何かに気づいたようだ。
「奥に進めば、自ずと、危険度が増ちゅでちね」
「何かあんのか?」
 アランがその様子にきょろきょろと周囲を見ると、グレイが片眉を上げて部屋の中心に立った。
「ねえ、世の中には変な習慣ってあるよね。最初はなんでもないことだったのに、いつのまにか大事な習慣になるような、さ」
 さあお立ち会い。
 そう言って両腕を広げると、杖をくるりと回して虚空に何かの文様を描き始めた。
 ごとん。
 ごとん。
 部屋が揺れ始める。
 まるで重力がおかしくなったような感覚が走る。
「部屋を出たほうがいいんじゃない!?」
「必要ない」
 動揺するハンナ。一方で冷静そのもののエイヴが、どこか呆れたような顔をした。
「手のかかったエレベーターだ」

●チャプターX:『本当ならたどり着けなかった場所』
 ズン、という音と共に部屋の揺れは収まった。
 先程まで閉じられていた通路が開く。
 部屋の外に出た仲間に続いて幽邏も出てみると、かつてない光景が広がっていた。
 黄金である。
 黄金の天井。
 黄金の床。
 黄金の壁。
 その全てに複雑で巧みな彫刻がなされ、彫刻が淡く発光し、まるで生きているかのように揺らめいていた。
 部屋の左右には黄金の柱が続き、透明な石がはまっていた。
 あれは本当に石なのだろうか。
 石の中には手足に黄金のかせをはめられた女が一人ずつ入り、若く美しい姿のまま固まっていた。
 とらえられているというより、組み込まれていると言った方が相応しいだろう。
 改めてみれば、彼女たちの鼓動のように壁の彫刻が脈打っていたのだから。
「…………」
 またとんでもない所に来てしまった。
 続く柱の奥。
 黄金の巨像が強く発光したかと思うと、獣のように吠えて台から飛び降りた。
 六本の腕をもつ鬼のような顔をした人型像だ。うち二本には黄金の剣を握っていた。
 ゆびをさすアト。
「あれ、生きてるの?」
「生き物に見えるのか?」
「俺には化け物に見える」
 アランとハロルドがそれぞれ剣をとり、巨像へと走り出した。
 彼らをまとめて叩きつぶそうとするかのように剣を振り下ろす。
 二人はそれを受け止め、歯を食いしばった。
「ったく、こんなモンが出るたぁ聞いてねえ!」
「黙って帰してくれそうにもねえ。おら、相手してやるぜ!」
 そこへパティと戟が飛びかかる。
 パティの格闘攻撃が炸裂。残った腕がパティを掴み、握りつぶさんばかりの力で放り投げた。
 同じように戟にも掴みかかろうとしたが、奇妙なジグザグすり足でそれを回避。
 懐に潜り込むと、がに股でどっしりと構えた。
「…………」
 不本意だが、という顔をして両腕に力を集中。
 マシンガンのような連続ハラパンを巨像へと叩き込んでいく。
「下がっててね、ハンナくん」
 さっと腕を翳して依頼人を後ろに下げると、グレイが杖で地面をこんこんと突いた。
 魔術の力が螺旋を描くように浮き上がっていく。
 グレイはそのうちのいくつかを味方につけると、指を振るようにして解き放った。
 巨像の胸や肩に次々と着弾していく魔術弾。
 対して巨像は腕の一つを開くと、手のひらに描かれた目のような紋様を激しく発光させた。
「あ、これはまずい」
 危機を察したグレイはハンナを掴んで柱の裏へと飛び込んでいく。
 一瞬遅れて巨像の両手から激しい光線が発射された。あたった柱や壁が激しい火花を上げる。
 あらかじめ柱の後ろに隠れていた幽邏はライフルを握り、エイヴにアイコンタクトをとった。
 ハンドサインで返すエイヴ。
 エイヴは柱から飛び出し、射撃を浴びせながら別の柱へと飛び込んでいく。
 それを追ってビームを乱射する巨像。
 飛び込んだ柱の裏ではアトがザックをお腹に抱えて座り込んでいた。
「……」
「あ、いる?」
 ザックからポーションを取り出して投げてくる。それをキャッチして飲み干し、瓶を放り投げる。
 戟やパティが放り投げられていく。
 踏みつけられ、拘束されたようだ。
「おい『太陽の』」
「ぶちかませってんだろ『リーゼロットの』」
 アランが剣から激しい熱を放つ。
 ハロルドもまた、突撃の構えをとっった。
 同時に巨像へぶつかる。
 軽くゆらぐ巨像。
 両手のビームが天井を焼き、エイヴとグレイが一斉射撃を浴びせる。
 そうして、柱の裏から姿を見せる幽邏。
 ライフルの狙いはぴったりと相手の額。
 深呼吸ができる程の余裕をもって、引き金を引いた。
 火薬によって打ち出される弾頭。
 銃身のなかを回転しながら飛び、黄金の部屋を穿つように飛び。巨像の額に着弾。弾が額へもぐり、ひび割れ、広がり、頭を中心に巨像が爆発四散した。

●チャプターX2:『おお、メシア。我らがウルトラヴァイオレット様』
「こいつが『偉大なるもの』か? つか……いってぇ。肩やっちまったな」
 自分の肩を庇うようにおさえつつ、砕け散った黄金巨像のかけらを蹴るアラン。
 そのそばではパティが目を回して倒れていた。同じく倒れていた戟は何事もなかったかのように起き上がると、なんだかひどく残念そうな顔をして首を振った。
「偉大っていうか、巨大なものだったね。それにしてもみんなボロボロ。大丈夫?」
 アトがポーションの瓶を差し出してくる。ハロルドはそれを受け取って口をつけた。
「頑丈さは取り柄でな」
「…………」
 幽邏が柱をじっと見ている。
 柱の中の美女はまるで生きているかのように、頬に朱がさしていた。
 いや。
 こんな顔色をしていただろうか。
 ぱちり、と美女の目が開く。
 口が開く。
 部屋全体が振動したのかと思うほどの絶叫を、全ての柱の美女たちが放った。
「おっと……」
 グレイが珍しく嫌そうな顔をした。
 なぜなら柱の美女たちがたちまちしぼみ、まるで老婆のようにやせ細っていくからだ。髪からは色がぬけ、肌からは若さが抜け、生命そのものを一瞬にして吸い上げられたかのようにしぼみ、そして真っ黒な枝のようになって動かなくなった。
 ごん、という音と共に巨像の更に奥にあった壁彫刻がゆらめいた。
 否、彫刻などではない。
 黄金に埋め込まれていた少女だ。
 身の丈は低く、真っ赤なドレスを着ていた。
 赤い靴をはいていて、唇はどこか艶めいている。
 壁から抜け、すとんと地面に足を突く。
 エイヴが警戒をマックスにして銃を向けた。
「……!」
 それよりも早く戟が両目を激しく光らせた、ように見えた。
 ヴォンという風の音を残して少女に接近。
「これぞ、『ビレゾン』!」
 威嚇なのか笑顔なのか、それとも咆哮ゆえのものか。全ての歯を見せてパンプアップすると、少女の腹めがけて拳を繰り出した。
 繰り出した、だけである。
 少女の手前10センチの位置で拳が止まり、少女がくんと顎を上げた途端に戟が吹き飛んだ。
 地面と水平に飛び、柱を破壊し、壁をへこませながらバウンドし、そのままごろごろと転がって動かなくなった。
 ハンナが、古い文献に描かれていた絵を見た。
 ドレスと少女。
 その下にはこうある。
「『おお、メシア。我らがウルトラヴァイオレット様』……」
「撤退だ」
 エイヴは戟やパティを担ぎあげると、同じく戦闘不能になった仲間の運搬をハロルドに訴えた。
 頷き、アランに手を貸すようにして走り出す。
「なるほど……偉大なるもの、ね。勝てる気がしねぇな」
 けど、と振り返る。
 黄金の部屋の最奥に立ち、逃げるこちらをただただ見送る赤い少女。
「道は分かった。もう、いつでも挑めるぜ」

 こうして、ブレンダンソマー墓所の探索は終了した。
 本来なら見つけ出すことのできなかった場所と、そこに眠る恐るべきなにかの存在を露わにして。
 次この場所を訪れる時は、命を賭して戦う時だ。

成否

成功

MVP

グレイ=アッシュ(p3p000901)
灰燼

状態異常

パティ・ポップ(p3p001367)[重傷]
ドブネズミ行進曲

あとがき

 おめでとうございます、イレギュラーズの皆様!
 遺跡探索は素晴らしい成功を収めたそうですね!
 潤沢な探索技能もさることながら、それらを工夫して使おうとするプレイングやOPの背景から推察して色々試してみる精神、大変素晴らしゅうございました。
 戦闘における配置バランスも見事なもので、急に登場したボスキャラ相手に見事な戦いを見せることができました。技能やスペックに頼りすぎず、それでいて個性をよく活かしながらプレイングでパターン構築や補正値確保を狙うのもまた、お見事でございます。
 もう少しで大成功。大成功一歩手前の素晴らしきベター成功でございましたので、ここは一つMVPを決めたいのですが……どなたかお一人ということでサイコロを転がさせて頂きました。結果、グレイ様にMVPをお送りします。
 ついでに報酬のゴールドを増加させますので、ハンナ氏のボーナス報酬としてお受け取りください。

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