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シナリオ詳細

ラド・バウの幽霊

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 鉄帝は大闘技場、その場所には一つの噂があった――C級戦には『幽霊が出る』

 名だたる戦士たちがそう口々にいうものだから、ラド・バウの七不思議として数えられる事も多い。その幽霊は在る時ふらりとラド・バウにやってきては勝利をもぎ取り、また消えるのだという。
 そして、幽霊が現れた後、必ず闘技場に残るものがある。
 そう、ウォンバットだ。

 でっぷりとしたまん丸フォルムに円らな瞳。
 短い手足でてこてこと幽霊が消え去った方向へと一生懸命走っていく。
 一度、闘技場の係員がウォンバットを捕まえようとしたことがあるのだが……どうにもそのウォンバットも『強い』のだそうだ。
 何処までが真実であるかは分からないが、兎にも角にも捕まらない。
 後に係員は云う。
「ああ、『マイケル』さんか。うん、強いよ。そりゃあね、皆も戦ってみればいいさ」


「………生きてるよ?」
 そんな噂話を聞いた特異運命座標達はラド・バウC級のカード観戦へと招かれたのだった。そして、姿を割らしたのがラド・バウの幽霊――こと、ウォロクという戦士である。
 中性的な外見は性別がどちらであるかも感じさせない、覇気のない表情は能面の様に無を張り付けており、パルス達を言ったラド・バウの戦士とは対照的な程に違いが存在していた。
「……マイケルがみんなと会いたいって……」
 ウォロクのその言葉に特異運命座標は首を傾げる。
 マイケル。確かに噂話でもその名は出ていたが――ウォロクが足元を見下ろし、その視線を追い掛ければでっぷりと太ったウォンバットが其処には存在した。
「……わたしの親友」
 ――親友のウォンバット、マイケルというらしい。
「……マイケルが皆の実力、近くで見たいって……」
 ウォロクは動物会話を有しているのだろうか、マイケルと会話を交え――と言っても、ウォロク自体は「うん」と「そう」ばかりなのだが――顔を上げる。
「……マイケルと、戦ってみる?」
 ウォンバットと?
「……それか、わたし……?」
 流石に未だC級は時期尚早であろうか。ウォロクはこてりと首を傾げた後、「うん」と頷いた。
「……ラド・バウの外。案内して欲しい……。
 ……わたしとマイケル、クレープって言うの食べてみたい」
 案内をしてほしいから、一先ず手合わせだけしてほしいという事だ。
 ラド・バウの幽霊が『レクリエーションマッチをする』という触れ込みでラド・バウを目指す子供達の前で簡単な戦闘訓練を行いたいのだそうだ。
 そうしたレクリエーションマッチはパルスなどの広告塔が遣る筈なのだが、今回はライブで欠席。例えばA級のコンバルクなどはという声もあったが、折角ならばマイケル(とウォロク)で行こうという話だ。
「……マイケルも楽しみにしてるって」
 クレープとレクリエーションマッチ。と言葉少なにウォロクは言ってから、はたと気付いた様に特異運命座標を見遣った。
「……わたし、手加減下手だから、相手はマイケルでも……いいと思う……」
 ウォンバットと?

 後程、ラド・バウ係員に聞けば、ウォンバットのマイケルもラド・バウの戦士なのだそうだ。
 ウォンバットなのに?

GMコメント

 ウォンバットは最高だぜ! 夏です。

●成功条件
 1.レクリエーションマッチを成功させる!
 2.ウォロク(とマイケル)にクレープを案内する

●レクリエーションマッチ
 ラド・バウを目指す子供達や近所の子供達を招いてのイベントです。時折、パルスがライブをしているのと同じような明るく楽しく元気なイベントです。
 パルスがライブで留守にして居る為、動物枠としてマイケルが招集されました。ついでにウォロク付きです。(マイケルが優先されても「……そう」としかウォロクは云わなかったようです)

 ウォロクorマイケル、またはウォロク&マイケルを相手にチームマッチを行ってください。
 尚、チームの編成はおまかせします。皆さんが楽しいように組んでいただければと思います。
 ある程度善戦し、子供達に夢と希望を与えられれば成功です。

●クレープ屋
 レクリエーションマッチが成功した際にはウォロクと共にラド・バウ外のクレープ屋に向かいます。
 そう言った経験がないため、ウォロクは首を傾げるでしょうが、良ければ案内してあげてください。

●ウォロク(ウォロク・ウォンバット)
 ラド・バウC級の幽霊。そう呼ばれるほどに希薄な存在感と中性的な外見をしています。
 ローブを身に纏い男女どちらであるかは不明です。美しく、そしてはかなげな外見をしています。
 戦闘スタイルは所謂魔術師タイプ。但しウォロクは手加減があまり得意ではありません。
 ウォンバットのマイケルが親友です。

●マイケル(ウォンバット)
 ウォロクの親友。オスのウォンバットです。非常に可愛らしい外見をしています。
 マイケル自体も非常に強いファイターだそうです。しかも成長株。
 ヒーラーかつタンクタイプ。非常に耐久に優れているそうです。
 手加減や気遣いは得意です。オスなので。

 どうぞ、よろしくお願いいたします。ウォンバット!

  • ラド・バウの幽霊完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年12月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
陰陽丸(p3p007356)
じゃいあんとねこ

リプレイ


 わいわいがやがや。楽し気に。さあ、待ちに待ったレクリエーションマッチだと子供達が心躍らす。
 ラド・バウに憧れ抱いた子供達の前に現れる――は、のたのた歩いたウォンバット。動物(かわいい)枠として数えられた愛らしいその姿に子供達がきゃあと声を上げる。
「にゃーぅ!」
 ※以下、『じゃいあんとねこ』陰陽丸(p3p007356)の言葉はバベルによって伝わっている解釈されます。
「戦いのお勉強ですか? 人の子供達は大変ですね!
 ボクは猫ですのであまり参考にならないと思いますが、楽しんでもらえるよう頑張ります!」
 のたのたと歩くウォンバット、マイケルの隣で巨大な猫がくるりと丸まっている。陰陽丸の姿を見て子供達が大きな猫だと楽し気に手を振る様子にウォロクは首を傾いだ。
「マイケルくん可愛い、もふもふしたい」
 ふかふか毛並みには目がないのだという様な『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)の言葉にウォロクは「……みんなそういうもの?」と首を傾ぐ。物静かなラド・バウの幽霊はささっと闘技場を後にすることが多いからか一定層存在する『もふもふ好き』を認知してなかったのだろう。
「そういうものです。所でマイケルさん、ちょっともふっていいですか?」
 緊張した様にわきわきと手を動かした『白き歌』ラクリマ・イース(p3p004247)。ウォロクは首を傾いだ儘、良いと思うと頷いた。何もマイケルをモフモフしたところで減る者でもないし、焔やラクリマがこれだけ嬉しそうなのだ。子供達に大人気の陰陽丸とマイケルの様子にウォロクは不思議そうにぱちぱち瞬き続けるだけだ。


「C級のユウレイと戦える機会がもらえるなんてラッキーだよね!
 ……ところで前から気になってたんだけれどマイケルって一体何者なの? 本当にウォンバットなの?」
 ラド・バウはランクマッチだ。C級でも『幽霊』と呼ばれるウォロクと手合わせできるとなれば闘士たる『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)の心も踊る――だが、彼の疑問にウォロクは些か不安そうな視線を投げかける。
「……違う?」
「タブン、ウォンバットってこんな強い生物じゃないと思うんだけれど……
 ゴリラの闘士も居るし、我が鉄帝ながらイロイロとオカシイよね?」
「……ゴリラは……うん、あれは……ああいうものだから……」
 時分も耳が長いと青白い指先で自身の耳をちょいと抓んだウォロクにイグナートは「ソッカ」とだけ小さく返した。
 さあ、司会進行役のラド・バウ係員から「子供達の準備ができましたよー」というアナウンスが入る。事前に説明されるのはラド・バウよりウォンバットのマイケルとC級闘士ウォロクのタッグがやってきたことだ。そして、対戦相手は正義の勇者ローレットであると伝えられる。
「むず痒い説明だが、何としてもこのレクリエーションマッチを成功させなくちゃな」
「む? やる気十分であるな!」
『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)の言葉に『付与の魔術師』回言 世界(p3p007315) はクレープが食べたいのだと頷いた。何でも、レクリエーションマッチの後はウォロクの奢りでクレープを食べれるという事だ。あのアイドル闘士パルスも御用達であるクレープ店があるとなれば世界も気にならないわけではない。
「うむうむ。しかし、鉄帝はこうやって子供を教育するのであるなぁ。
 鉄帝の未来のためにマイケル殿もウォロク殿も頑張ってこー! なのである!」
 やる気十分な美少女(種族)にウォロクはマネする様に「おー」と小さく返した。
「さて、ウォロク。カタギの皆さんを招いての勝負だしよ、正々堂々は勿論だが、ちいとばかり派手にやる方が盛り上がるのかと思うんだが?」
『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)はレクリエーションマッチでの行動をある程度説明した。ウォロクとマイケルはペアで、手加減が苦手だというウォロクにも『子供達の前で仕事で戦う』という事を言い含めれば――何となく、多分、そんな雰囲気で――理解はしてくれている。
「ふふー、子供達が見ているとあっては無様な負け方はできませんわね!
 おーいおーい! 精一杯頑張るので、いっぱい応援して頂戴ね!」
 ぶんぶんと手を振ってにこやかな笑顔を見せた『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)に「ろーれっとがんばえー!」と幼い子供の声が聞こえる。
「さて、参りましょう! レクリエーションマッチの開始ですわ!」


 正々堂々。それでいて、派手に戦おうではないかと義弘は拳を打ち合わせる。自慢の腕力(かいなぢから)を活かし、レクリエーションを盛り上げんとウォロクへと向き合った。
「ウォロクとマイケル……俺達は全員で八人、そしてお前たちは一人に一匹か。
 それで勝負になるって相手がC級ってんだからラド・バウってのは恐ろしい所だぜ、全く」
「全くであるな! しかし、だからこそ楽しいというものよ。
 ちびっこたちよ! 我らはどういう行動をしているか逐一説明するのである!」
 義弘の言葉に豪快に笑った美少女にヴァレーリヤは「そうですわ! 子供達、聞いてねー!」と柔らかに笑って見せる。
 巨大な猫枠こと陰陽丸の役割はタンカータイプのマイケルをちょこちょこと『崩す』事だ。勿論、派手な技が必要ならその肉球でぽこちゃかもしようもの。
 陰陽丸が「にゃあん」と鳴いて見せれば『猫ちゃん頑張れ』だとか『マイケル負けないで』だとかの声が聞こえてくる。
 支援を中心とする世界はウォロクの実力や如何に、と性別さえ曖昧ならラド・バウの幽霊をじっと見つめた。
「さあ、始めようか、二人とも!」
  カグツチ天火。それは焔が父から送られた神々の炎だにより創造された槍がぐるりと回る。烈火の如き髪を揺らして身体を捻りながら飛び跳ねて入場した焔。武器をぐるりと回して見せれば子供達のわあという声が響く。
「それじゃ

「可愛い動物と儚げな女性? 男性? を大人数で相手も……中々絵面が酷い気がしないでもないですが。
 相手はラド・バウの戦士。戦闘が始まってしまえば状況は変わってくるでしょう」
「そうは言ってられねぇだろな……聞いた話じゃラド・バウの幽霊は『のんびりしているから鍛錬してない』って噂だ」
 義弘の言葉にラクリマはひえと小さく声を漏らした。ウォロクは興味が極端に薄いからか、鍛錬にそれ程力を入れないと噂されている。このレクリエーションマッチで特異運命座標に興味を持てば実力も向上するのではないかというラドバウ係員の思惑があるだとかないだとか……。
「それじゃ、ヨロシクね?」
「……うん」
 ウォロクと対面したイグナート。そのぼんやりとした雰囲気からは想像もつかぬ攻防があるとは彼もここでは想像しなかった。
 そう、『手加減が苦手』なのではなく『不器用』なのだ。イグナート自身はオーダーであるハデに魅せて子供達を喜ばせる戦いを心がける。
 ぐ、とその脚に力を込めて空を縫う様に駆ける。ウォロクの眼前に飛び込んだイグナートは僅かに揺らぐウォロクの闘気を感じてにいと笑った。
「気乗りしない?」
「……ううん。マイケルも楽しそう」
「ソッカ――じゃあ、コレは!?」
 一気にウォロクより離れる様にして移動を行う。分かりやすい蹴り技を受け止めるウォロクより跳ねる魔的な光にイグナートは頬を掠めたちりりとした痛みにぺろりと舌を覗かせる。
「――――どおおりゃああああ!!!」
 先程迄どう考えても『優しいお姉さん』枠であったヴァレーリヤの声が響き渡る。天使の翼を象った魔術戦闘用メイス。ルーティンの様に彼女は過ぎた理想を胸に抱き炎を纏い飛び込んでいく。
 マイケルがその炎にびくりと肩を揺らし、ヴァレーリヤを見詰める。ふんす、といつもよりやる気を見せたそれにヴァレーリヤは「まだまだ、目にもの見せて差し上げるつもりでございますわー! さあ、私の取っておき、喰らいなさい!!」
 メイスを構えて聖句をちょっぴり早口で唱える。司祭たる者何時だって宣教の心得は胸に抱くが、それはさておき今日は子供達に応援してもらうために分かりやすさ重視だ。
 かっかっかと笑った百合子。焔より沸き立つ炎にヴァレーリヤが纏う炎。寒々しい鉄帝国でも灼熱が周囲を包み込むではないか。
 マイケルの許へと飛び込み、その身体へと貯め込んだ美少女ぢからを解放して見せる。美しい花がブワァと咲き誇り、それこそ効果音がつくならば『フラワァッ』という感じである。
「ウォンバットだてらに見事な防御である……しかしながら、吾の本領は連撃!」
 百合子の連撃にマイケルがふんすと鼻を鳴らす。巻き込まぬようにとその暴風を生み出すように力を振るった義弘。
 その暴風で舞い上がる美少女ぢからにマイケルが顔を上げる。
「余所見してるばあいじゃないよ!」
 百合子と義弘に夢中になったマイケルに向けて焔が飛び込んだ。炎を放てばそれも暴風の上に飾られる。
(こんなので攻撃して大丈夫なのかな? マイケル君爆散しない?)
 ちょっぴり心配ではあるがマイケルの強さは伊達ではない。横目でちら、とみやったイグナートはウォンバットって強いんだなあと何となく不思議に感じられた。
「ただ殴るだけの消耗的戦いではなく、スキル戦闘でのAPの管理というのも重要です。
 スキルはただ打てばいい物ではない。使いどころも重要ですからね」
 そう説明するラクリマは白薔薇の鞭で吸い上げながらも、世界と協力して戦線を支え続ける。
 流石は『手加減が苦手』なだけはあるのだろう。魔的な光を帯びさせた一撃がヴァレーリヤを襲うが、心配無用。
 根性込めて義弘が一撃放てばそれに合わせて百合子が攻めを続けていく。
「まあ、ヤクザがこんな事考えてやり合うのも妙な話だが、祭りなら仕方ねぇのさ。
 野暮な事は言いっこなしだ。祭りってのは、皆が楽しむのが粋ってもんよ」
「うむ! だからこそ、子供達と我らも今の時を楽しもうぞ!」
 世界のサポートを受けて前線戦うイグナートの横顔見遣り百合子はにやりと頷いた。ウォロクとやり合いながら推されつつもイグナートはヒットアンドウェイを心がけ続ける。
 飽きっぽいのだろうか視線がうろつきだしたウォロクにイグナートはそろそろ頃合いかと仲間達を振り返った。
「にゃあん!」
 たしりと陰陽丸がねこぱんちを続けていく。そのぱちぱちとした一撃を受け止めるマイケルがふんすふんすと言っている刹那、レクリエーションマッチも長ければ子供の飽きが来るのだと陰陽丸は巨体を揺らしてラクリマへと合図した。
「百合子さん!」
 ラクリマが叫んだその声にウォロクは何かに気付いた様に顔を上げ頷いた――と、言うのも話は少し遡って……

『……手加減は苦手』
『なら、我らが必殺技を放ったら受け止めて深手を負ったフリをしてドッカンドッカンするのである』

 ――ということだ。
「迸れ! 吾がパンドラよ! イレギュラーズの意地、見せてやるのである!」
 そう、それこそが必殺技。幼児番組宜しく、「みんなー! 力を貸してー!」とヴァレーリヤが声をかける。
 ウォロクは何となく察知した。こういう時強敵っぽい悪役は一度は倒れてみるべきなのだ。後、やはり応酬の中で特異運命座標に興味と、その実力に確かな感覚を憶えていたこともあるのだろう。
「……マイケル」
 ウォロクの声にマイケルがふんすと鼻を鳴らした。
「驚天動地の力とくとご覧あれー!!」
 叫ぶ――陰陽丸のその声。それに合わせる様に世界は『なけなしの勇気』を振り絞った。そう、全てはクレープの為だ!
「ボクたちの力を合わせればきっと勝てるよっ! さぁ、ボクの炎の力も使ってっ! いっけええぇぇぇぇ!!!!」
「ショウブを決めるのはいつだって勝利への執念だッ!」
 焔の――そして、イグナートの叫びに応える様にして百合子の拳に力が籠められる。
 全てを『いい感じ』に放った必殺技。最高潮のその一撃にウォロクは「わあ」と声を上げてギブアップとひらりと手を振った。


「背中に乗りますか?」
 マイケルがてこてことゆっくり歩いている事もあって陰陽丸は優しく提案した。喜ぶように頷いたマイケルを背に乗せて、大きな猫はゆっくりと歩き出す。
「ここのクレープ屋さん、とっても美味しいんですのよ!
 ウォロクはどれにしますの? 私のオススメは、タバスコたっぷりの……」
 ヴァレーリヤはほらほらとウォロクの手を引いた。あのパルスもお勧めと店先に書いてあるが、凡そ彼女が情報誌で宣伝したというアレあのだろう。ヴァレーリヤの言葉にウォロクはきょとんとし店員の許へと進もうと死、慌て手を引く。
「ウソウソ、本気にしないで下さいまし! 苺と生クリーム辺りにしておきましょう!?」
「……タバスコは」
「駄目ですわ! 美味しいか保証がありませんもの」
 ラクリマは慌てるヴァレーリヤの背後からひょこりと顔を出し「チリソースとは違いますけど」と食事系のクレープを提案した。
「ミートソースとチーズたっぷり入ったクレープとかグラタンの入ったクレープとか、この寒い時期にはお勧めの熱々クレープなのです!」
 ウォロクの中ではクレープというのは甘くて女子が大好きというイメージだったのだろう。そう言った温かな食事タイプがあるのだと感心した様に眉を動かした。
「クレープ屋さんにはどんな味があるのでしょう。ボクも食べられるクレープはあるでしょうか~」
 そう尾を揺らした陰陽丸にマイケルは大丈夫だと言う様にメニューを指す。
 店先できょろきょろと周囲を見ていた焔は「やっぱり!」と声を上げる。以前、ラド・バウの闘士であるパルスと出会ったクレープの二号店だという事に気付きメニューを見下ろしてパァと笑みを浮かべた。
 ストロベリーチーズケーキも美味しかったが、パルスが食べていたプリン・ア・ラ・モードかキャラメルバナナクレープかどちらかにするのだと迷う様に指先を動かした。
 ちょい、とマイケルが焔の服の袖を引く。
「マイケルくん? ……?」
 たし、たし、とマイケルがプリン・ア・ラ・モードをセレクトして欲しいという動きをする。焔が首を傾げれば、次はキャラメルバナナクレープへ。
「……マイケル、焔とはんぶんこがしたいって」
「えっ、わ、ほんと? あ、ありがとう!」
 もふ、とマイケルを撫でる焔に良いってことよと言う様にマイケルは身体を揺らした。
「おすすめってのはあんのか?」
 覗き込んだ義弘にウォロクは首を傾げる。ウォロクも詳しくないのだろう。ヴァレーリヤがこう言っていたと言えばそれを含んで義弘がおすすめのオーダーを二人分と請け負ってくれる。
「吾は、チョコバナナが好き! 甘いの以外ならからあげとレタスをくるくる巻いたやつとかもおいしいのであるよ。
 チリソースとマヨがうまうまである、うまうま。マイケル殿もいかがであるかな? 戦いの後の飯は旨かろう!」
 チョコバナナクレープを手にした百合子の足元で焔と共に甘いクレープを食べていたマイケルがくれと言う様に擦り寄っていく。
 陰陽丸にも食べれるものをと進める百合子に「にゃーん」という返事がひとつ。
「……似合わねぇと笑われるかもしれねぇがよ、俺は甘辛両刀でな。こういうのも嫌いじゃねえし、よ」
「……私は、いいとおもう。美味しいものは、美味しい」
 義弘に頷くウォロクは手元のクレープ生地をちょいと抓んでマイケルに分け与える。
 わくわくとした調子の世界はチョコバナナ、いちご、ブルーベリーにキャラメルと悩まし気にしていたが「全てくれ」と店員にさらりと天安して見せる。
「ああ、そういえばここに来る途中でパフェの美味そうな喫茶店も見つけたんだけど後で寄ってもいいかな?」
「……食べれる?」
「ああ、もちろんさ。甘い物は全部別腹ってとこに入るらしいからな」
 別腹という言葉に首を傾げたウォロク。カフェのパフェにも興味はあるのだろう。ウォロクもどうやら世界と同じ『別腹』らしい。
「ウォロクがお酒イケル口?」
「……うん。私は、何でも好き」
 こくりと頷いたウォロクにイグナートはやったと笑みを浮かべる。
「オススメの酒もアルから。次は美味しいヤタイの探し方もレクチャーするよ!
 肉の品質をコウリョすると鳥系かスパイスが効いてるヤツがオススメだよ!」
 その言葉に、ウォロクは僅かに表情を動かした。それが喜んでいるのだろうと感じ取り、ラクリマはくすりと笑った。
 喧騒の鉄帝国。今はのんびりとした時間を過ごして居ようではないか。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまです!
無事にレクリエーションマッチも成功。楽しくクレープを食べて頂けたならうれしいですっ。

この度はご参加ありがとうございました!

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