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シナリオ詳細

<青海のバッカニア>船上のクール・ダンジュ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 人工の灯りが茫と静寂に影落とす。月光が混ざり合い鏡の様に反射したその景色が人の生きる場所との隔たりをくっきりと見せていた。この夜が明け、美しい陽が昇れば出航することになるとヴゼットプランドゥシャルは心に決めていた。
 シャル、と呼ぶ父の声とごつごつとした掌の感触は22年前に感じたきりだ。大号令が発されたと聞いた時はどうしてもそれを思いださずには居られなかったのだ。
 静寂を破るかのように声高らかに。大号令の喧騒は一気に街を喜色に変えて飲み込んだ。破顔した人々の喜色の
 ドックに眠った儘であった父の船、病院船『パスツール号』。長らく主の不在で眠っていた事や陸で心のケアを行う事が多かったヴゼットプランドゥシャルにとっては此度の大号令で船を走らせることに不安がない訳ではなかった。
(――また、傷付く人が増えるのかしら)
 医師として。航海に出る準備を整えている彼女の耳に入ったのは、美しき蒼海の恵みを狙う悪しき存在の噂であった。


「海洋王国は、ローレットのある幻想と比べれば国力――軍事力が低くて、鉄帝はじめとした諸国の外圧には悩まされているんだ」
『サブカルチャー』山田・雪風(p3n000024)はそんな長閑で美しい海洋の海が好ましいのだけれどと付け加えた。しかし、大いなる海に面する海の民たる彼らの望みは前人未到の大海原『絶望』とまで称された絶望の青――その向こうに存在する遥かの地である。到るが為に発された王国大号令に各国での活躍目覚ましいローレットも参戦して欲しいと声かけられたのは当然であろうか。
「近海の警備に、軍事演習に、それから……号令の合間でも襲い来る海賊への対処。
 うん、大海原に出る前の下準備って感じ。俺達もそれに参戦して国家事業のお手伝いを、って感じ……なんだけどさ」
 雪風は明日未明に出航する船のひとつからイレギュラーズへの救援要請が出ていると告げた。
 その船の名は病院船『パスツール号』。その名の通り船医が乗り込み、大いなる海での救助活動を中心としている。長らく活動はのんびりとして居たそうだが、船長の娘が代理として此度の大号令を受け、近海警備に当たる船の救護を行うのだそうだ。
 そんな船より救援が出てるというのだから、当然気になるのは確かな事だ。
「ええと、救援の要請の詳細は、『姫珠』って呼ばれる綺麗な真珠があるんだって。
 海洋近海の小島が名産地で、貴族御用達らしい――けど、小島だから貿易は本島リッツパークでやるんだって」
 パスツール号の船長代理であるヴゼットプランドゥシャル、通称シャル船長は精神科医として悩める貴族たちの話を聞く。その中でも貴族令嬢が好む姫珠の事はよく知っていたらしい。
「小島から、姫珠をリッツパークに運んでくるらしいんだ。
 普段はさ、護衛としてリッツパークの商船が出るけど今回の大号令でそれも叶わないっぽくて、姫珠の里の運搬船だけで向かってくることになってるっぽい」
 それを無法者は――密漁船を名乗る私掠許可を得ない海賊は情報としてキャッチした。
 姫珠は高値で取引されるため、その機を逃さぬわけには以下という訳だろう。
「その姫珠と乗組員の職人を守って欲しいんだって。
 幸いさ、パスツール号は病院船で『カモフラージュ』には丁度いいからイレギュラーズの皆も同乗して欲しいって。シャル船長もある程度の回復は手伝ってくれるだろうし……」
 雪風は狙われると知っていて見てみぬ振りはできないし、と小さく呟いた。
 美しい至宝。陽の光透ければきらりと蕩ける様に輝く姫珠。その美しさを求める事は悪くはない。只、無理くりと云うのは見過せないのだ。
「明日の朝、出航するパスツール号で先ずは姫珠の運搬船を護衛して。
 積み荷をパスツール号に移したりする暇もないだろうし、相手は船ごと奪うつもりだろうから……。
 それから、密漁船が現れたら撃退して欲しいんだ。どうか、宜しくね」

GMコメント

 日下部と申します。

●成功条件
 ・積み荷と救出対象の保護
 ・密漁船の撃退

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●姫珠の里より
 海洋近海の小さな小島に存在する里です。『姫珠』と名付けられた美しい真珠が特産品であり、各国の貴族達御用達の品だそうです。
 姫珠の里より海洋へと運ぶ小さな運搬船が狙われます。乗組員は皆職人であり、一見すればこじんまりとした小さな船ですが、姫珠の里の船であると調べを付けた密漁船は船ごと奪うつもりでしょう。

●姫珠の職人*5
 姫珠の職人、そして運搬船の航海士として里と海洋を行き来しています。
 戦闘能力は低く、大した抵抗も出来ません。

●密漁船
 私掠許可を持たぬ海賊一味のその一派です。『タンペット』と名乗っています。
 密漁船の乗組員である海賊は10名。戦闘スタイルは様々です。

●病院船『パスツール号』
 長らくの間は活動を休止していた船医が乗る船です。元船長は以前の大号令で行方知らずになって活動を休止していたそうです。
 特異運命座標はパスツール号で移動を行います。

●ヴゼットプランドゥシャル
 通称をシャル。人間種。病院戦パスツール号の船長の娘にして船長代理の医師。
 医学と錬金術を合わせた得意の自作ポーションを注射して患者を癒す。本業はメンタルのお医者さま。精神科医です。
 保護した救出対象の回復などを担当します。

●重要な備考
<青海のバッカニア>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』をカウントします。
 この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。

 どうぞ、よろしくお願いいたします。

  • <青海のバッカニア>船上のクール・ダンジュ完了
  • GM名日下部あやめ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年12月15日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
華蓮の大好きな人
シグ・ローデッド(p3p000483)
艦斬り
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女
ステラ・グランディネ(p3p007220)
小夜啼鴴
桐神 きり(p3p007718)

リプレイ


 広がるコバルトブルーの美しさは冬の入口を拓いたかの様に肺の奥深くの空気までもを穏やかに変貌させた。肌撫でる冷たい風を厭う事無く『パスツール号』へ向けて歩を進める『ロリ宇宙警察忍者巡査下忍』夢見 ルル家(p3p000016)はふるりと小さく肩を震わせ、大いなる青をその双眸に映し込む。
「海は広いな大きいな~っと……少々肌寒いですがいい気持ちですね」
「ええ。けれど、こんなにも広大な海が『覆い隠そうとする』いのちもあるわ」
 白い息を吐き、パスツール号より顔を覗かせた甘いアメジストの瞳は共に海へ行く特異運命座標を値踏みする様に一瞥した。父を『大号令』で喪った――正確に言えば『戻って来なかった』――おんなにとって期待の星たちが劣る存在だとは思ってはいないが医療に携わる者として心配が勝ったのも確かなのだろう。
「冬風の厳しさで一層隠されてしまうかもしれない――だが、それを防ぐのも我々の責務だ。本日はよろしく頼もうか? ヴゼットプランドゥシャル船長」
 理知的な瞳を向けた『『知識』の魔剣』シグ・ローデッド(p3p000483)にヴゼットプランドゥシャルは「シャルと呼んで頂戴」と返す。シグの目から見てシャルは航海士と呼ぶよりは正しく医療従事者という恰好をしていた。薄桃色の看護服を身に纏う甘いかんばせの乙女。それが、海洋王国でも数えるしかない病院船の船長(代理)と言うのだから実に面白い。
(病院船か――海上での治療となれば設備を整えるのも難しいだろう。彼女の技術が補っているという事だろうか)
 海の上での看護を行う病院船。大いなる青では満足に傷の手当ても出来ないだろうからこそその存在をより際立たせるのだ。「お手伝いあれば言ってくださいね」と柔らかに微笑んだ桐神 きり(p3p007718)は以前見たMMOにも港のステージはあったと波止場の様子をぐるりと見回した。
 医者である『小夜啼鴴』ステラ・グランディネ(p3p007220)は自身の小型船を救命用に使用して欲しいとパスツール号へと運び込んだ。その様子を眺めるシャルは出航の準備が整ってきたのだと、冬の空気で肺を満たし静かに目を伏せる。
「シャルせんちょーー!」
 顔を上げたシャルの前には小型船よりその小さな背丈をぐんと伸ばして手を振る『蒼海守護』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)の姿がある。海風に髪を揺らした天真爛漫な彼女を見てシャルはくすりと笑った。
「わたし、師匠様に教えてもらって回復が得意になりました! 傷つく人を減らしたいから、助けたいから!」
「それは頼もしいわ」
 傷付く人を減らして、全てを助けたい。それを詭弁であると謗る者がいる事を『この海に希望の花を』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は知っていた。知りながら――それでもと手を伸ばす事は間違えではないのだとくん、と背を伸ばし海風を受け止める。
「けれど、相手は海賊。『いのちを救う』事が回復だけとは限らないの」
「ええ――けれど、我(わたし)達はソレに対してはプロフェッショナルだもの。
 久々の海賊退治。折角の大号令に合わせて来てみたけれども……やっぱり潮風が体に少し辛いわね?」
 ジョークを交らせて『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)がスカートを持ち上げ淑女の礼を一つ。艶やかな髪先を擽る海風に目を細めてレジーナは言った。
「錆び付いてしまう前に仕事を終わらせなければならないわ」


『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)――ココロの師匠である彼女は、弟子が嬉しそうにその名を呼んだヴゼットプランドゥシャルを実と見つめていた。
 先の大号令は20数年前か。幾年も遠く離れたその地に忘れ去られた父の面影を追う様に病院船へ乗り込んだ彼女に対してココロは「家族かあ」と茫と呟いていたのだ。
(ええ、寂しいという感情を抱くのは間違いではないけれど、彼女は『知らない』のでしょうね)
 その気持ちすら感じることのなきココロを見遣ってイーリンは目を伏せる。弟子の故郷、そして晴れ舞台たるその場所で師として、そして彼女の紛う事なき戦友として無様な姿を晒しては為らぬとゆっくりとルーティンを口にする。
「神がそれを望まれる」
 囂々と音立て青を進む船の上、病院船に乗り込んだイーリンは其れを追い掛けるように進む弟子の船を茫と眺める。見張り役を務める様に帆の上にまでするりと昇ったルル家のくちゅんという小さなくしゃみを聞きながらシャルはくすりと笑った。
「戦いの前だというのに凪いでるだけの海は何処までも平和に見えるわね」
「ええ。嵐が起こる前は温かな風が頬を撫でるとでもいうのかしら……? ココロが世話になってるわね。あの子とは長いの?」
 師であるとイーリンが名乗り出る事無くシャルは彼女こそがココロの師匠であると認識したのだろうか。「まあ、ね」と肩を竦める彼女にイーリンはふと、顔を上げる。
「どうやらフリートークの時間も終わりの様です! 南方より『音』が聞こえます」
 きりの声にルル家が「敵襲-!」と快活なる声を響かせる。「どちらかと言えば我(こちら)が『敵襲』を仕掛ける方だけれど」と小さく笑ったレジーナとタイミングを合わせる様にイーリンが前線へと飛び出した。
 運搬船へと乗り込んでいたアレクシアは職人たちと挨拶を交わし私掠許可を得た特異運命座標であり、海洋までの航海を手伝うと事前説明を行っていた。
「大丈夫、みんな無事に、きっちり守ってみせるから!」
 凛とした声音を響かせたアレクシアの叡智の双眸が煌めく。海の精霊たちに手を伸ばし、指先擽る飛沫が好意的な了承と受け止めてアレクシアは不審船の姿を確認したと職人たちにすぐ様にパスツール号へ向かう様に指示をした。
「さあ、此方です」
 ステラが声を上げ、船の構造把握を務めるアレクシアとの情報共有を行いながら最短ルートを奔る。動乱の中、脚をもつれさせた職人の許へと走り寄りステラが宥める様に背を撫でる。
「貴方がたの救助を依頼された者で、私は医者です。もう大丈夫。まずは我々の船へ来て頂けますか?」
 医師としての矜持を胸に安心という絶対的なステータスを与えんとしたステラに職人は大きく頷き、走り出す。ぐらり、ぐらりと揺れ動く足場の中で潮の香りと満ちる花の香りにアレクシアが顔を上げれば箱に詰められた積み荷が動乱の船の中で揺れていた。

「……異界の海戦に於いては、『魚雷』なる兵器が有効打となったと聞く。
なれば我が身を以てして、それを体現してみるのも一興かとな?」
 一方で水中に適する身体で船底に沿う様に動くシグはその姿を常の人間形態ではなく剣(ほんらいのすがた)を模していた。潮を掻き分ける様にぐんぐんと進む彼は昏い海の中、海賊船の船底に向けて一撃放った。それこそ、異界の書に刻まれた魚雷を体現するように何度も船底を傷つける。
 海上での動乱に紛れる様に船を傷つけ、そして中腹に一気に攻め込む様にシグが飛び込むと同時、豪と揺れ動く音がする。モルティエ号がその船体を海賊船、パスツール号、運搬船の間に滑り込ませた音だ。
「ナイスであります!」
 そう笑みを溢し一気呵成飛び込んだルル家は金具付きロープを器用に引っ掛けするりと『忍者』の如く飛び降りてゆく。それが宇宙警察忍者の為す事だと胸張った彼女の前に全力で飛び込む魔砲はイーリン、きり、レジーナ三者三葉の攻撃だ。
「宇宙警察忍者、夢見ルル家推参です!」
 堂々たるその名乗りと共にルル家は濡れる甲板を一気に蹴り上げる。転ぶ事ないようにと船上戦闘にも気を配るきりはその両脚に力を込める。
「我が攻撃は敵のみに食らいつく! 腐食結界の中でもがき苦しみなさいな」
 鮮やかなる天鍵の女王。形作る茨の悦楽の中、蝕むそれの影響を受けぬルル家がひらりひらりと海賊の間を進む。
 いのちを奪う事に対しては良心の呵責がある訳ではない。しかし、自国の事を思えば海賊はなるべく殺さず私掠許可が得られる様にと協力体制に持っていけないかとココロは考えた。
「――それに、大怪我までならすぐそこに入院させればいいですしね!」
「あら、それじゃ『半殺し』と云う表現迄は許可されるのね」
 弟子の言葉に戯言乗せて、司書の髪先にぞろりと色彩が這い踊る。美しき赤紫を染め上げるは絶望のアメジスト。淡い燐光を漏らしたその髪先に青白い陶器の如き指先這わせて一気呵成に獲物を振り抜いた。
「船より沈没の心配をすべきじゃない?」
 どん、と鈍い音がする。海賊たちが姫珠の運搬船へと視線を向ければ職人たちは皆パスツール号に移動した後だろうか。甲板より積み荷を護るべくアレクシアとステラが顔を出した。
 前線突入するルル家と中腹より攻め続けるシグへと癒しを送り出来うる限りの支援をといのりささげたステラの傍らで、船の安全確保の為に海を伝い乗り込んでくる海賊を受け止めたアレクシアは凛とその声音を張り上げる。
「みんなには手出しをさせない! 私が相手だよ!」
 職人と――そして彼らの大切な姫珠が為にアレクシアは攻撃を重ね続ける。海より訪れる敵襲に留意するように動いたアレクシアの前に飛び込むは紅の衝撃波。
「生け捕りの方がポイント高そうですしー……けど『そうしないといけない』わけじゃないですからね?」
 に、と笑ったきりの言葉は死刑宣告にも近しい響きを帯びていた。美しき海の上、病院船パスツール号より状況を見守る職人たちは特異運命座標による自身らを護るための戦いであるとその双眸に映し込む。
「不思議でしょ。縁もゆかりもない貴方達の為にここまでして戦ってくれるの。
 ……けれど、思うの。病院船ってそういう在り方なのかしら? 船長として勉強になっちゃう」
 くすりと笑うシャルの声に職人は「そうですねえ」と小さく呟いた。彼らは海洋王国に協力する特異運命座標(きぼうのほし)であって、決して、海洋王国の正規軍人ではない。海上ならば海賊などの地の利がある相手と戦う事も多いだろう。姫珠という知りもしないだろう存在をこうして護ってくれることが彼らにとっては何よりもうれしくて堪らない。
 海賊のリーダーをさっさと倒してしまおうと作戦段階で決定していたこともあったのだろう。イーリンとココロの追撃を受けて、回復手の支援を受けれなくなったリーダーは呻く様に「畜生」と呟いた。
 吹いた風を受け止めてシグは「どうやら船も調子が悪いようだが?」と皮肉のように笑って見せる。
「なッ――」
 豪と音を立てた船の上から撤退するようにルル家が走る様にパスツール号へと飛び乗った。ロープを使用して捕縛した海賊たちの輸送を完了したとき、船が濁流に食われるように傾いだ姿を見てきりは小さく笑った。
「これでは商売あがったりですね?」と笑ったその言葉に姫珠と商人の無事に安堵したアレクシアとステラが釣られて笑みを浮かべたのは任務の終わりを感じたからだろう。


「さて――」
 静かに、目を伏せっていたステラは捕縛した海賊たちをゆっくりと順に見つめた。美しきその微笑は凍えるように冷たく、海賊たちは眺めることしかできない。
「誰からこの情報を得たのでしょう」
 海賊にも様々なパイプがあるという事だ。一筋縄ではいかぬのがこの海の国――飛行種と海種が『温厚に』牽制し合っている事や私掠許可と言って大々的に海賊となることを許可しているが実際的には犯罪行為であることに代わりがない事自体が理由であろうか。
「強くなったわね、ココロ」
 にんまりと笑った師にココロはその笑みに返すように愛らしいかんばせに天真爛漫な笑顔を浮かべて見せる。
「さ、こいつら纏めて突き出して点数稼ぎよ。情報の入手先を調べないとね」
 そう、仕事は此処でおわりではない。海賊が一筋縄ではない以上、しっかりと『事後対応』もこなさねばならぬと言うのが特異運命座標なのだ。
「あゝ……食うに困って海賊に身を堕としたのでしょう。
 悪いことは言わないから悔い改めて真っ当に働いた方がいいわ」
 さらり、と。レジーナはそう言った。その淡々とした言葉の響きにイーリンは小さく笑った。あゝ、そうして『言葉を伝える』事が出来るのがレジーナの愛らしいところだ。シャルは「ええ、そうね。負けたのだもの、真っ当に働いた方がいいわ!」と茶化す様に告げている。
「知り合いに雇ってくれそうな所あるけれど……ゲームはお好き? クィーンズグループのアルカナム家と言うのだけれどね?」
 リクルート迄しっかり行ってくれる医療船があるだろうか。手厚いケアを与えてくれる特異運命座標達に海賊たちは茫と「凄い」とだけ呟いた。その声を聴きながらアレクシアはへたり込んでいた職人たちが擦り傷を作った部分の手当てに当たる。
 デキる所を見せないとと胸張ったきりはシャルの指示に従って、職人たちの手当てを担当した。
「姫珠、か。私は科学者でね。重視するのはどちらかと言えば、実用性なのさ」
 珍しい特性などを持っているのだろうかと問い掛けるシグに職人たちは姫珠の作成方法から秘匿すべき部分を覗いてシグへと説明を重ねる。海の美しい宝玉は麗しいレディに似合うものだとうっとりと語った職人に加工しやすいのかとシグは悩まし気に呟く。
「ところで助けたお礼に姫珠を貰えたりしませんかね!?」
 ジョークの様にそう言って笑ったルル家にシャルは大袈裟に悩んでみるふりをして「貴女には少し早いかもしれないわ?」と冗談を重ね返すようにカラリと笑って見せた。
 その笑みの如く乾いた風がゆっくりと周囲には吹く。顔を上げたココロは一仕事終えたと大きく伸びをした。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 この度はご参加ありがとうございました。
 素敵な船旅のお手伝いをできましたら幸いです。

 また、ご縁がございましたらよろしくお願いいたします。

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