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シナリオ詳細

<青海のバッカニア>海を渡る神の守り火

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ある小さな島の守り火
『絶望の青に挑み、捻じ伏せよ――』
 前代未聞の大号令は、海洋に無数浮かぶ小さな島のひとつひとつにまで及び、近ごろの話題はこの件で持ち切りだ。特にのんびりと暮らしていた島の民たちも、やはり海洋の人間。未知の海域への冒険とくれば、心沸き立たずにはいられない。

 ところでこの島、正確にはそこから少し離れた小島には、頂に不思議な火を擁する神殿がある。
 その火はとても明るく、昼夜問わず周囲を照らし、海を往く者の道標として在り続け。
 いつからか、その火は海の守り神として、付近の島民や海を往く者の信仰を集めるようになっていた。

「ほうほう、なるほど。この辺りが航路のひとつになるんですね……」
 この小島にあるのは、古びた神殿ひとつのみ。神殿に勤める者以外に住民は居ない、いわば神の領域だ。外界から隔絶された神域を守る巫女にも、近くの島民づてにその報せが届いた。
 この神殿とその頂で燃えるあの火はいつから在って、誰がもたらしたのかは分からない。しかし確かに在るモノは在るし、不思議なモノは実際不思議……と、その在り方を深く考えた者は巫女含め――海洋の民らしく――誰も居なかったが、それよりも直近に気がかりな事がある。
 ぱらり、と、上から石の欠片のようなものが落ちてくる。見上げれば、天井には皹。
 火の方はおそらく永遠。しかし、それを守る建物の老朽化は、どうやら避けられないらしい。しょっちゅう何処かが軋む音がしたり、昨日はとうとう、外の柱の一本が崩れたところで。
 巫女を含め巻き込まれた者は無かったが、呑気な彼女や神殿に勤める者たちも、これには流石に肝を冷やした。
「となると……」
 周辺の海に凶悪な魔物があまり居らず、出ても狂暴な小魚程度なのは、他ならぬこの守り火の加護あってこそ。もしこの火を祀れなくなれば、外洋への旅路が危険なものになるかも知れない。
 本格的な征伐開始までに修理したいところだが、倒壊する速度に修理が追い付きそうにない。そして何より、この火を拠り所としている民や船乗りたちにとっての気持ちの問題が大きい。
 もし、海に出る前に、あの灯りが見えなくなったら――

「……お引っ越し、しましょうか」
 前代未聞の海域に挑む前でも『希望の灯り』が見えたなら、先に在る絶望を恐れることなく漕ぎ出していけるだろうから。

・・・・・

●備えあれば憂いなし
「神様を運んでください、とのことです」
 主語を挟まずにスケールの大きい話が飛んできたが、「神様」というのはいわゆる混沌の神ではなく、その地で信じられているモノ――海洋の島に存在する消えない不思議な火、との事だった。
「本格的に『漕ぎだす』前に、灯台になってる神殿のお引っ越しをするんだそうです。消えない火と言っても、普通に消える事もあるみたいなのですが……」
 消えない火が消えたら、それは消える火なのでは? という問いに対しては、依頼状に「すぐ付け直せばノーカン」という答えが書かれていた。火を出来るだけ絶やさないようにする守り人としての巫女が居り、今回の依頼人は巫女その人だ。
「お引越し先の仮殿はもう建ってて、移動のお船も準備してくれてます。魔力で自動運転もできるお船ですから、皆さんはとにかく火と器を守ってくれれば大丈夫! だそうです」
 依頼人の巫女曰く、器の方も特別製でそうそう壊れないとの事だったが、持ち出しの前例がない為万が一……という事は、あり得るそうだ。そして航路には狂暴な小魚が居り、器の方が壊れたら恐らく火は元に戻らない、とも。

「絶望の青に行く前に、まずは準備と露払い、ですね!」
 頑張ってきてくださいっ! と、ユリーカはいつも通りにあなた達を送り出すのであった。

GMコメント

海だー! しらす丼ってある日突然食べたくなりますよね。
今回は海洋にて大事業の下準備、コワレモノ注意の輸送依頼になります。

●目標
聖火と器を守って目的の島まで運び、待っている巫女に渡すこと。
器は絶対壊れないように、火は4ターン以上途切れないようにしてください。
※ダガーフィッシュは倒さなくても構いませんが、
 6体以上倒せば、討伐数に応じて貢献度にボーナスが発生します。

●ロケーションなど
場所は風光明媚な海洋の一部、神殿を擁する小島と仮殿のある小島の間。
移動と運搬は貸し出しの船、または自前の乗り物で行います。
時間は日中で風も無く、戦闘以外で航行の障害になるものはありません。
目的の島は、何もなければ自動運転で30ターンかかる程度の距離にあります。

●貸し出しの船について
そこそこ大きく、甲板部分にまるまる8人が居ても割と大丈夫ですが、
8人が自由に動き回るにはやや狭いかも知れません。
この船は状況を読みながらの自動運転をしていますが、
精度や速度はそうでもないので、腕のある方が手動で動かすか、
自前の乗り物をお使いの方は、更に良い動きが出来るでしょう。

●船上・海中での戦闘について
いずれも足場などがやや不安定ですが、ある程度聖火が守ってくれます。
それぞれ適したスキルやアイテム、プレイングがあれば、
更にプラスの補正がかかります。聖火の扱いについては後述します。

足場足らずや【飛】攻撃で海に落ちてしまった場合、復帰に2ターン分の
主/副行動消費が必要になりますが、スキルや装備、プレイングで短縮可能です。

●敵
『ダガーフィッシュ』×12
 鋭い頭部を持った魚のモンスターです。身体は小さいですが非常に狂暴で、
 生き物とあらば襲い掛かって血を啜ります。
 耐久や連携などはあまりありませんが、血の匂いにはとても敏感です。
 海中補正がなければ攻撃はそこまで痛くありませんが、
 基本的な機動力と回避がやや高めです。

・頭突き:物中貫/ダメージ小【飛】※
・噛みつき:物至単/ダメージ中【出血】【HP吸収小】
・海中補正(P):攻撃対象が海の中に居る場合、命中・攻撃、
 反応・機動力が大幅上昇(※水中向きのスキル・装備で軽減可能です)

★味方NPC(?):聖火の守護
聖火が燃えている限り、聖火を中心とした50m範囲内の味方にのみ
海上/海中戦闘のペナルティを軽減し、有利なスキルやギフト、
アイテムをお持ちの方、海種の方はさらにプラス補正がかかります。
聖火は特別な石の器に入っており、器はかなり丈夫ですがやや重いです。
聖火といえど、ある程度の衝撃や水を被れば普通に消えてしまうので、
常に誰かが気にかけておくか、ひと工夫しておく事が推奨されます。

火が消えた場合は直ち(3ターン以内)に道具やスキル、ギフトなどを使って
火を点し直せば大丈夫です。火種の種類は問いません。
万一、器が壊れてしまった場合は元に戻せず失敗となりますのでご注意ください。

★巫女
先行して、引っ越し先の島で待っています。道中の心配はありません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●重要な備考
<青海のバッカニア>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』をカウントします。
 この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。

・・・・・・

それでは、今回もよろしくお願いいたします!

  • <青海のバッカニア>海を渡る神の守り火完了
  • GM名白夜ゆう
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年12月03日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
二代野心
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
秋宮・史之(p3p002233)
大号令の体現者
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
希望の蒼穹
矢都花 リリー(p3p006541)
帰って寝たい
閠(p3p006838)
真白き咎鴉
レイリ―=シュタイン(p3p007270)
展開式増加装甲
恋屍・愛無(p3p007296)
らぶあんどぴーす

リプレイ

●あの水平線に希望を灯せ
「まじ……? 引っ越しすんの……?」
 出航前。聖火の器を前に『壺焼きにすると美味そう』矢都花 リリー(p3p006541)と、それを守る巫女が言葉を交わす。
「へー、これが希望の灯りかあ。消えてもノーカンとか心が広いなあ」
 この火といいこの巫女といい、このアバウトさはさすが海洋と『女王忠節』秋宮・史之(p3p002233)は心の中呟くも、印象は悪いものでなく。
「引っ越しとかさぁ……」
「面倒ですよねぇ」
 巫女もリリーと同じく引き籠り気質なのか、妙に話が弾んでいる。
「神様を運ぶ! うーん、素敵な響きだね!」
 聖火の器は史之が用意した風避けのゴムで覆われ、直接その火は見られなくとも『さいわいの魔法』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は、確かにその温かさをを感じ取った。
「……神様の……それいいじゃん……」
「いいのか?」
 突然乗り気になったリリーの「壷」が分からないと、『海抜ゼロメートル地帯』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)が戸惑う。さりとて彼も海洋の軍人、しっかりと務めを果たすべく参上した、と表向きは語る。
「ありよりのあり……やどかり的にアリ……」
「ああ、そうか。ヤドカリは引っ越すもんな」
 理不尽な同意からの納得。
「古い家とか直すよりか、ぱーっと断捨離すればいいんだよねぇ……リフレッシュもできるし……」
「そうそう、そういう事です」
 盛り上がっている巫女たちの傍ら、『ラブ&ピース』恋屍・愛無(p3p007296)は、これから向かう海を眺めていた。
「砂の海ならば知っているが。この世界の海は初めてではある」
 少し前に彷徨っていた『海』と違い、今度の海は水から成る正真正銘の海だ。
『真白き咎鴉』閠(p3p006838)も、布越しに海を見据える。表から伺えない表情は、常よりも硬い。

 用意した船は全部で三隻。
 ひとつは巫女が用意した船で、アレクシアと閏が聖火の器と共に乗り込む。
「航海における灯は、とても心強いものだな」
「そうだな。何というか、其処に灯がある事に意味があるとか、そんな感じだ」
 海の男たるエイヴァンの船には『背を護りたい者』レイリ―=シュタイン(p3p007270)が同乗し、彼と共にロープや浮き輪などの救命用具や、囮に使う動物の死体などを注意深く積み込んでいく。
「これで足りるだろうか」
「ああ。バッチリだ」
 船の後ろには、リリーがロープで編んだ網を取り付けて。
「所詮魚だし、漁業もかなりいけんじゃない……?」
「そうだな。網があれば、何かと役に立つだろう。魚の動きを止めたりとかもな」
 そして最後の一隻は、青と白から成る優美な小型船。船首にイザベラ女王をの像を飾った、史之の『グレイスフルイザベラ号』だ。
 加えて、彼の胸には専用のイザベラ派バッジ、ロケットの中には女王の写真。纏う執事服には女王への忠心と、逆境に負けない心を織り込んで。
「女王一色といった所か。愛が溢れているな」
「それはもう!」
 共に乗り込んだ愛無き怪物も、史之の徹底ぶりには関心を示した。
「私も海洋の民だし、島も近い事だし。今回の護衛は張り切ってるよ」
「光鱗のアトラクトス」の一員たる『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)も史之と愛無に同乗し、出航前に命綱の準備を行う。それ以外にも、船員が用意した多方面への備えが次々と積まれていった。

 すべての船の準備が整い、エイヴァンが自前の船の操縦席に立ち。
「海を征く者にとって大切な聖火だ。何としても護り切ろう」
 守ることに特別の情熱を燃やすレイリーが、対岸に見える目的の島を見つめて決意を固くし。
「てことで出港…」
 リリーが血のついたバールを掲げ、エイヴァンが大きく舵を切った。

「みんなの道行きを安全に照らすためにも、お引越し頑張っちゃうよ!」
 聖火が鎮座するこの本船も、自動運転でエイヴァンに続く。アレクシアなら、この海にも希望の花を咲かせられるだろう。

「よーし、女王陛下の御為に、今こそ力を見せる時!」
 最後に、いざ! と、史之が大きく号令を飛ばし、女王の名を冠した船がエメラルドの海へと漕ぎ出した。
 海洋の主を船首に抱くこの船は、今回の大事業の『船出』に相応しく。希望で満ちた船出となった。

●空と海の境界を揺蕩う
「史之の船が本船の護衛につくのなら、俺たちの船は少し距離を取るか」
 冷静に状況を見ながら舵を取るエイヴァンだが、海の上で逸る気持ちはやはり大きく。その運転は冷静かつ豪胆に、本船からどんどん距離を取っていく。彼の持つ海神の軍規が戦意と集中力とを両立させ、その高揚がレイリーと、怠惰なリリーにも確かに伝わった。
「楽しそうだな」
「ああ。やっぱり、事務より現場だ!」
「うむ。では、索敵は私に任せて貰おう」
 操船に専心するエイヴァンの傍ら、レイリーが水中の索敵を行いつつ、用意した動物の血を流して魚を誘き寄せを試みる。
「何ならこのバールも血ついてるし、ロープ結んで浮かべたらイミテーションっぽくなるかも……? 投げてもロープで戻って来るし」
「それならバールも一本で済む。明案だな」
「単にものぐさなだけでは……」
 エイヴァン達の駆け出しは、何だかんだと和やかだ。

「精霊さん精霊さん! 何か危ないの居ない?」
「囲まれて、飛びかかられたら厄介ですし、奇襲だけは避けたい、ですね」
 本船ではアレクシアが周囲の精霊との会話で、閏が髪に結わえた鈴の反響で危険な魚影を探るが、まだその姿は確認できず。火を囲んでのんびりと話していた。
「閏さんは、どうしてこの依頼に?」
「本当は、この国に関わらず、避けようと思っていました、けれど……」
 閏の一族は海洋貴族だったが、内部抗争の末彼を残して全滅。その際の記憶から、国自体への苦手意識があったのだが。
「内へ内へと、煮詰まっていくのは、あの家と同じようで……嫌、ですから」
「うーん、閏さんの家では、大変なことがあったんだね」
「だから、ボク、前に進みたいん、です」
 そんな折の大号令は、まさに渡りに船で。閏の背中を大きく押した。
「必ず。守ってみせます、よ」
「うん! 頑張ろうねっ!」

 史之が舵を切る女王の船では、愛無が空をじっと眺めている。
「空に何かあるの?」
「海鳥を。これだけ凶暴な魚ならば鳥も警戒しそうゆえに」
 イリスも空を舞う海鳥を見上げるが、特別張り詰めた様子は無く、陽気も相まって緩やかな空気だ。
「随分とのんびりだなあ。さすが海洋、でもそれがいい……」
 あらゆる備えをした上で、海洋の景色を楽しみつつの操船。そんな航海を楽しんでいた史之の所に――

●海洋の守護者たち
「エイヴァンさん達の、右の方、に」
「――魚影、3体ほどですね」
 エイヴァンの船付近で不自然に水が跳ね、閏とレイリーが同時に海中の敵を捉えた。
「よし、ちょっと引き離しておくか」
 エイヴァンが豪快に舵を切り、縦横無尽に海上を走る。魚たちがそれを追う。
「引っ越し邪魔する魚、ギルティ……」
 間もなく戦闘だ。リリーが必要以上の、理不尽な域の怒りをもってバールを構え、邪魔者を待ち受けた。

「史之さん! そっちに4匹!」
 アレクシアによる海の精霊からの情報は精度が高く、本船近くに控えた史之は船を直ちに自動操縦に切り替え、イリスと愛無も戦闘態勢をとる。
「――見えた!」
 史之の眼鏡がキラリと光り、敵を射抜くように捉える。小魚とはいえ、海で有位なのは圧倒的に向こう側だろう。気合を入れて名乗りを上げる。
「俺は秋宮史之! 女王陛下の大号令を体現する者! 来るがいい、ダガーフィッシュども!」
 頭部が尖った魚たちが、海面から一斉に跳ね上がった。

 一方のエイヴァンは、船を自動操縦へ切り替える際に一瞬の隙を突かれてしまう。落水しかけた所、レイリーが直ちに命綱を引っ張り事なきを得る。
「……すまん、危なかったぜ」
「気にするな。私は、守る為にここに来たのだから」
 レイリーが堅牢な城塞となって魚の前に立つ。船上はだいぶ揺れるが、騎乗での戦闘経験を応用し揺れを相殺、かかって来いと魚群を挑発。「釣られた」魚たちが一気に噛みついてきたが、多少の出血があっただけで大きなダメージもなく、その全てを受け止めきった。
「釣れた……それじゃあ、覚悟……」
 レイリーが船に上げた一匹に、エイヴァンのナイフと、リリーの投げやり気味なバールが立て続けに襲い掛かる。特にバールは彼女の地雷ポイントと同様、理不尽な威力で魚を粉砕し、その衝撃は周囲の海面にまで及んだ。

 がつん、と、本船に軽い衝撃が走る。こちら側にも魚が来たようだ。
 閏が聖火の無事を確かめるが、火は健在。
「良かった……無事に、送り届けますから、ね?」
「よし、頑張らないと!」
 アレクシアが海と風の精霊の力、青色を纏いふわりと浮かび上がる。空と海、地と空。彼女は今日も境界を揺蕩う。
 本船側の魚は二体。離れた所から撒き餌を用いて囮を行うエイヴァンと、少し近くで同様に魚を引き付けている史之の働きが功を奏し、二人で対処できる数に留まった。
「カルミア――」
 海の青以外に、自身の咲かせる希望の黄色を纏ったアレクシアが詠唱を開始。
 閏は聖火の近くから離れないよう注意深く立ち回り、上がってきた魚に対し魔力の縄でその自由を奪ったところに、
「ラティフォリア!」
 魔力の矢が炸裂し、矢傷から薄紅の花が咲く。綺麗な花にも毒はある。それは容赦なく血を奪い、毒を流し込み、内側から対象を焼き尽くす。身を焼く苦痛に耐え切れなくなった魚が海に飛び込むも、海の中でも花は燃え上がる。後はただ、逃れられぬ死を待つばかりか。
「まず一匹、です、ね……あっ」
 アレクシアの横側、死角となっていた方向からいつの間にか魚が迫り、鋭い体当たりを見舞う。
「しまっ……!」
 精霊の加護も空しく、アレクシアは大きくき飛ばされて海へと落ちた。
「アレクシアさん!……よし、私の出番か」
 史之の船からイリスが海へ飛び込み、本船近く、アレクシアの落ちた場所へ泳いで向かう。
 船上にひとり残された閏の近く、いつの間にか迫る新手を鈴の反響が捉える。このままでは、器か自分に攻撃を受けてしまう。自分はともかく、器の方はほぼ確実に海へと落とされてしまうだろう。それだけは避けなければ。
「よい、しょ……」
 閏は器を持ち、背中の翼で飛び上がる。向かってきた魚の頭突きは、飛んだ事によってギリギリで逃れる事が出来た。
「あぶな、かった……」
 アレクシアは大丈夫だろうか。彼女の事も心配だが、何とかこの火を守らなければと空中より状況を伺う。
 水中では、一匹の魚がイリスに気づき高速で迫る。イリスは水の祝福を受けた三叉の鉾より光柱を放って牽制、魚が怯んだ隙にアレクシアの元に辿り着き、素早く本船へと引き上げた。
「た、助かったよ……ありがとう」
「どういたしまして。海ならお手の物だから」

 イリス不在の史之の船は、いまだ複数の魚に囲まれている。
「これは……俺たちだけだと寧ろ、水中の方が思い切り戦えるかな」
「それもそうか。水中の方が、周りを気にせずいける」
 史之も愛無も強力な範囲攻撃を得意としているが、狭い船上では味方を巻き込み易く、聊か使いづらい。
「僕等にも水中行動の心得はあるが。それでも、水中では連中に利がある。なかなか大胆な提案だが。これも愛、か」
「ですね。……女王陛下に傷が付いたら嫌ですし」
 命綱をしっかりと結び、二人は敢えての海へ飛び込む。愛無が用意した動物の血を撒いて魚を水中に留め、本船やイリスの安全確保を試みる。愛無に寄ってきた魚は、水中で縦横無尽に蠢く触腕に絡め取られた。
 閏が空中から視たところ、魚は主にエイヴァンの元に向かい、それ以外は史之と愛無があろうことか水中で引き受けている。光鱗を持つ海の姫はそれを聞き、近くの史之たちを援護すべく再び海を泳いで戻り、水中で合流を果たす。
「無茶し過ぎだよ!」
 海は彼女の領域。愛無が捉えた魚に鉾を突き立て、一匹を確実に仕留めた。
「よし、今なら……!」
 史之が腕時計を敵側に向け、彼に向かってきた者と愛無に囚われた者を巻き込むように、自身を中心にドーム状の斥力を展開。荒れ狂う赤いプラズマが、海中にて優位に立つ魚の余裕を打ち砕く。
「見事だ。……それにしても、何処の世界も海は塩辛いな」

●一瞬咲いた悪意の花
 目的の島が近づいてくる。
 エイヴァンが己の船上で爆裂する一撃を放ち、近づいてきた魚を纏めて焼いて。
「やどかり引越し妨害罪は終身すり身の刑だよぉ……」
 リリーがバールを投げつつ言い放つ。
「……そんな法律、海洋にあったっけか」
「聞いた事ありません」
 海洋軍人たるエイヴァンにも聞き覚えが無く、レイリーが飛んできた魚にカウンターを見舞いながら真面目に考えるが、そんな法律は混沌上の何処にも無い。
「よし、あと一匹か」
 エイヴァンの漣のナイフが絶対的な冷気を帯び、残った魚にとどめを刺した。
「他の魚影はありません。史之殿の援護に向かいましょうか」
 エイヴァンが直ちに舵取りに戻る。傷はそれなりに受けたが、じっくり治す余裕は無い。その中でも出来る限り集中し、呼吸を整えて。
「飛ばすぞ、捕まってろ!」
 派手に船を飛ばし、その衝撃に船が大きく揺れる。レイリーは微動だにせず、リリーは「うわー……」とぐらついた。

 本船に向かう魚が増え、閏が弾き飛ばされ海中へ落ちてしまう。それと同時。衝撃を受け、あの温かな光が消えた。
 器の方に魚が迫る。とにかく器は守らなければと、素早くカバーに入ったアレクシアが器を持って力いっぱいに飛んだ。
 かなりの傷を受けた愛無が状況を見て水上復帰を試みるも、加護消失の影響で一歩遅れてしまう。粘液を甲虫と変え群がる魚を捕食し、どうにか堪える。
「愛無さん!」
 イリスが寸での所で愛無を引き上げる。ずっと水中に居た史之と愛無の消耗は激しい。イリスは血の匂いで魚を引き付け、意を決して消耗した二人の盾となり、どんな攻撃にも怯まず立ち続ける。
「すまん、ちょっと遅れた」
 タイミング良く合流を果たしたエイヴァンが、決死の盾となっていたイリスに変わって名乗りを上げ、盾役を交代。
 本船から届くアレクシアの白黄の花――治癒魔術が愛無や史之を大きく癒し、再び体勢が整う。

 上手く船上に復帰できなかった閏に、何かが迫る。
 泳いできたリリーの放った網だ。彼女は素早く陸上に上がると、素早く閏を引き上げた。
「これが漁業の網テクニック……」
「た、助かりまし、た……」
 たくさんの航海者を、導いてきた希望を、絶やさせはしない。閏は船上に上がるや否や器に向かい、ゴム製の覆いの中にあった火打ち石で直ちに火を点す。火打ち石は、史之が「こんな事もあろうかと!」と、事前に用意していたものだ。
 火は再び燃え上がり、あの温かさが周囲に戻る。どうやら、ギリギリで間に合ったようだ。
 聖火の加護が戻り、調子を取り戻した史之が障壁で近くの魚を打つ。逃がした魚も居たが、愛無を始めとした全員が聖火を優先し、深追いは行わなかった。

 閏は可能性を砕き消耗していたが、アレクシアの治療で持ち直し。
 両目を覆う黒布の下、金の目が光り。少しだけ。戦闘特化の人格を呼び起こす。
「ボクらの道を阻むなら、容赦はしません――」
 心の底で渦巻く悪意。あの日の記憶を殺傷の霧と変え、本船を狙う魚を包み込み。

「近づいたら、痛い思いをします、よ?
 なお向かってくる魚には、死者と自身の怨念をひとつに束ねた一矢で絶命させた。

●この海に希望の花を
「さて、神様は新しいお家に満足してくれるかな!」
 アレクシア達は無事に島へと辿り着き、巫女の待つ仮殿へ向かう。
 灯台に使えそうな高い建物――恐らく物見に使われていたであろう建物の中に仮殿はあり、仮設の祭壇では場を清める香が焚かれ、神を迎える準備が整っていた。
「よいしょ、よいしょ」
 史之が巫女の指示に従って器を運び、祭壇の上に設置した瞬間。小さかった火が天井まで届くほど燃え上がり、薄暗かった部屋全体を眩く照らした。
「今、確かに届けました。また皆の希望として照らせるようにお願いします」
 レイリーが火の眩さに目を細めながら、任務の完了を巫女に告げる。
「はい、ありがとうございますっ。頑張りますよ!」
 
 一方。リリーの地引き網には、先ほど倒した魚が数匹引っ掛かっていた。
「ダガーフィッシュって、味はどうなんだろ」
 そういえば、そろそろ夕食刻。何を食べようかと考えていたイリスが、不意に思い至る。
「壷焼きにするとおいしそう……」
「それはあなたの方……いや、何でもない……私的には、生でも食べられるけど」
 巫女に聞いたところ「どっちでもいけるが、個人的なオススメはフライにしてポリポリ!」との事で。
「ふむ……美味そうだな」
 エイヴァンも頷く。
「フライ……やどかり的にもあり……ちょっと働いて晩御飯ゲット……うん、二重においしい……」

 新たに鎮座する聖火に向かい、史之が礼をして拍手を打つ。
「あれ、こうじゃなく?」
「いえいえ。それ、あなたの世界のお祈りですよね?」
 特に作法は問わず、気持ちが大事だとか。元居た日本では色々な作法があったが、この辺りも海洋らしい。

「大号令、いい結果になりますように」
 守られた希望の灯りに、史之が願う。大事業の出だしは、まさに順風満帆といった所だった。

成否

成功

MVP

秋宮・史之(p3p002233)
大号令の体現者

状態異常

秋宮・史之(p3p002233) [重傷]
大号令の体現者
閠(p3p006838) [重傷]
真白き咎鴉

あとがき

大事業の第一歩、お疲れ様でした!
海上、海中という特別な舞台で皆さんそれぞれのキャラが立ちまくりで、どのプレイングも効果的かつ、とても面白く書かせていただきました。
どなたも連携や準備がバッチリでしたが、MVPは準備から戦闘まで獅子奮迅のご活躍をされ、
装備や事後行動に至るまで、この舞台を全力で楽しんでいただいた貴方にお贈りします。

今回もご参加、誠にありがとうございました。
またご縁がありましたら、よろしくお願いいたします。

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