シナリオ詳細
<Abschied Radio>機械の骨
オープニング
●機械の骨
研究所の外壁を、何かが突き破った。
瓦礫を粉砕して転がり出てきたそれは、人間の男である。
だが、その男は生身ではなかった。鉄と、機械でできた骨のようなものを身に纏っていた。
「ふざけやがって」
男が吐き捨てた。立ち上がる。動作音を立てて、機械の骨が動き、男の身体をサポートした。わずかな力を入れただけで、その巨大な機械の骨が浮かび上がる。高く、高く跳躍。次の瞬間、男が消えた場所へ、カミナリみたいな電撃が放たれて、地を嘗め尽くした。
「殺してやる!」
現れたのは、もう一体の機械の骨だった。中心には当然のように、男が鎮座していて、上空へと逃れた男を睨みつける。
そこへ、べつの機械の骨が突撃してきた。二つの機械の骨が、もんどりうって倒れる。三体目の機械の骨の中にいたのは、女である。
「死ね、死ねぇっ!」
口から泡を噴出して、女が叫ぶ。女が腕を振りかぶると、機械の骨も、その腕を振るいあげ、振り下ろす動作と共に、機械の骨も、その腕を振り下ろした。ガン、という音とともに、二つの機械の骨がぶつかり合う。
さらに、研究所の外壁を突き破って、二体の機械の骨が飛び出してきた。中に鎮座する男女。正気を失った眼を周囲に巡らし、目についた機械の骨に殴り掛かる。
「ふざけやがって! 死ね! 殺してやる!」
悪罵を吐きながらの機械の骨同士の殺し合いは、ひたすらに続いた。それは徐々に場所を変え、研究所の目の前の路上へ。そして少しずつ、繁華街の方へと向かって行くのであった。
●アーマーボーンを止めろ
「それで、この『あーまーぼーん』って何なんです?」
『小さな守銭奴』ファーリナ(p3n000013)は小首をかしげた。
研究所へと向かう、途上である。
あたりには警備員たちによる封鎖が行われて、何事が起きたのかというやじ馬たちが、ちらほらと規制線の外から此方を覗き見る。
イレギュラーズ達は、事態の鎮圧を依頼され、この規制線の中へと足を踏み入れていた。
ファーリナの質問に答えたのは、依頼主である、アーマーボーン研究所の管理者である。
「人体補助用の機械ですよ。いわゆるアシストスーツとか、そう言った系列になります。これを装着すれば、より小さな力で大きな仕事を発揮できる……例えば、子供でも大人を持ち上げたりすることができる。半人前の兵士を、一人前以上の兵士にすることも……」
ファーリナがさらに首をかしげるのへ、管理者は苦笑しつつ、
「そうですね、身体強化スキルを、機械で再現したものと思っていただければ」
「あー、なるほどなるほど」
ファーリナは合点が言ったようである。
「で、その機械の骨を使って殺し合いをしている研究者を、止めればいいわけですね?」
ファーリナはそう言った。
管理者の男曰く、研究員たちが、突如アーマーボーンを起動し、殺し合いを始めたのだという。
命からがら逃げだしてきた他の研究員によれば、いつもの口論――話し合いは、技術の向上に必須である。ヒートアップして過激な言葉を口走る者もいたが、それはそれ、今まで遺恨になるようなことは無かったのだが――の果て、突如殴り合いが発生。
それどころか、各々がアーマーボーンを持ち出し、事態は殺し合いへと発展したのだという。
「なるほど。状況的に、例の『道化師姿の鉄騎種』の仕業っぽいですねぇ」
『道化師姿の鉄騎種』とは、先日の『多世界評議会』に前後して、練達北西部で目撃されているという、謎の魔種の事だ。
この道化師は、何らかの手段で、周囲に原罪の呼び声をまき散らしていると目されている。事実、北西部ではこの呼び声に当てられたもの達による事件が発生しており、今回の件も、この道化師の仕業である可能性は高い。
「研究員たちが持ち出したアーマーボーンは戦闘用です。何とか研究員ごと無傷で取り返して……と言いたい所ですが、それが難しい事は理解しています。原罪の呼び声……でしたか? これにより狂った相手を鎮圧するのは、難しいでしょうし、このまま時間をかけて居ては、彼らが繁華街の方へと移動し、さらなる被害が発生する恐れがある。安全を最優先し、最悪の場合は、人員もろとも完全破壊による無力化を行ってください」
管理者が深く頭を下げる。ファーリナは頷いて、イレギュラーズ達へと視線を移した。
「出来れば助けたい所ですが……くれぐれも、皆さんと、周囲の安全を最優先に行動してください。それでは、どうかお気を付けて! 吉報をお待ちしておりますよ!」
そう言って、ファーリナはイレギュラーズ達を送り出したのである。
- <Abschied Radio>機械の骨完了
- GM名洗井落雲
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年11月25日 22時20分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●機械の骨たち
鉄のきしむ音が、辺りに響いた。
殴り合う、鉄と鉄。機械の骨同士の殺し合いは、今、研究所を離れて、路上へと場所を移していた。
機械の骨同士の戦いは奇妙な均衡を保っていた。お互い決め手に欠けたまま、しかし全力の攻撃の応酬が続く――このまま放置していては、やがて一般人の多く存在する繁華街の方へと、移動してしまうだろう。そうなっては、被害が増大することは想像するに難くはない。
機械の骨による殺し合い。それを止める方法は二つある。
一つは、装着者が自らの意志で戦闘を放棄することだが、異常な狂気に犯されている彼らに、それを選択する意思が残っているとは思えない。
では、取るべき手段は、もう一つ――。
「着るだけで強くなれる……素晴らしい技術ですわね! できれば、ドリルもつけて欲しかった所ですけれど、そこはそれ。ええ、実に頼もしいですわ!」
『ドリルブレイク・ドリル』リアナ・シンクライ(p3p006831)は、現場へと駆けながら、そう告げる。
機械の骨、アーマーボーンは、装着者の仕事を助けるアシストスーツだ。わずかな力で倍以上の仕事をこなすことができるため、様々な分野での活躍が見込まれていたのだ。
「元の世界で、大国の軍事分野でそういう研究がされているという話は、聞いた覚えもありましたが」
『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)が言った。やはり技術の発展は、ある程度は軍事との関係性を否定することは出来ないだろう。
「此方の世界でも、実用可能段階まで研究されていたのですね……練達らしいと申しますか」
そこは練達の混沌とした技術体系のなせる業と言えただろう。
「正しく使えれば、大きな岩を壊したり、瓦礫の下の人を助ける事が出来て……人命救助に役立ちそうっすね!」
『他造宝石』ジル・チタニイット(p3p000943)はそう言った。口調に滲む些かの腹立たしさ。正しく使えれば――それは多くの人を救うテクノロジーとなるだろう。だが今は、暴走する狂気に飲まれ、人を害するだけのものへと変わり果ててしまっている。
研究員たちに、その意図はなかっただろう。ならば、憎むべきは、彼らを狂気へと落とした黒幕である。
「道化師姿の鉄騎種……ですわね」
『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の言葉に、仲間達は頷く。
「ふーむ、あちらこちらで大騒ぎをおこしているみたいですねー」
桐神 きり(p3p007718)が続けた。
練達で発生した一連の事件の裏に潜む黒幕。それが道化師姿の鉄騎種だ。今回の件にも、おそらく深くかかわっているのであろう。であるならば、今暴れている研究者たちも、被害者であると言えただろう。
「研究所の人に、聞いたけど。緊急停止ボタンは、やっぱり内側にあるみたい」
『跳兎』コゼット(p3p002755)は少し残念そうに言った。もし外部から止めることができれば、状況は楽になっただろう。だが、研究途中のものという事もあってか、外部からの緊急停止手段はまだ実装されていないようであった。
「となると、外から強制的に止めるしかないわけだねぇ……めんどー……」
『壺焼きにすると美味そう』矢都花 リリー(p3p006541)が、うえぇぇ、等と気だるげにうめきながら、言った。
「骨スーツのパリピが大暴れかぁ……もうファントムナイトは終わったんだけど……?」
「パリピかどうかはわからないけれど」
『雷精』ソア(p3p007025)が苦笑しつつ、
「好きで暴れてるわけじゃないから、助けてあげないとね」
そう言った。イレギュラーズ達は、暴れる研究員、その全てを助け出すつもりでいた。
危険な状況から、研究員の生死は問われていない。だがそれでも、研究員たちもまた被害者だ。ならば、可能な限り救いだしたい。
イレギュラーズが、道を急ぐ。果たして、鉄のぶつかり合う音は、徐々に大きく聞こえるようになってきて、やがて一行の前に、5体の機械の骨たちがその姿を現した。
「殺して、やる!!」
狂気をはらんだ、絶叫に近い殺害予告。同時に振るわれた機械の拳が、舗装された道を砕く。
「なるほど、確かに、すごい機械みたい」
コゼットは、振るわれたその威力に一瞬、身震いをした。コゼットは、これから敵の攻撃を一身に引き受けるのだ。
「援護はするっす。でも、無理はなしっすよ?」
ジルがそう告げるのへ、コゼットは頷いて見せた。
「殴り合って自滅してくれれば楽だったけど、そうはいかないみたいですし」
きりが言って、武器を構える。合わせるように、イレギュラーズ達も各々武器を構えた。
「私のドリルで、まとめて止めて差し上げますわよ!」
リアナが言うのへ、
「ギルティなパリピは、バールでおしおきだよぉ……」
リリーが頷く。
「さぁ、始めましょうか、皆様」
アリシスが言った。イレギュラーズ達は一斉に、四肢に力をみなぎらせ、
「絶対に、助け出しますわよ!」
ヴァレーリヤの言葉を合図に、一斉に戦場へと躍り出たのであった。
●衝突
「やーい、いい年した大人が、ケンカして暴れてみっともないぞー」
研究者たちの視線を奪うように、コゼットはぴょんぴょんと飛び跳ねる。突如現れた乱入者に、研究員たちの意識はあっという間に奪われた。
「なんだお前は!」
「鬱陶しい! 飛び回らないで!」
狂気の意識が、自らに向けられたのを、コゼットは肌で感じる……突き刺すような視線が、ピリピリと身体を駆け巡る。
「ねぇ、どうしてそんなに、怒ってるの?」
油断なく、相手の出方を窺いながら、コゼットは尋ねる。い竦むような怒気を体中で感じながら、コゼットは言葉を待った。
返されたのは、暴力的な返答だった。機械の拳が、コゼットへと襲い掛かる。コゼットはひらり、と身体を翻し跳躍→回避。寸前に交差した研究員の眼。コゼットを睨むその目に、正気の色は確認できない。
「うるさい! うるさい五月蠅い!」
「分からないわ! でも、それが腹立たしい――!」
次々と襲い掛かる機械の暴力の洗礼が、コゼットに降り注ぐ。ぴょんぴょんと飛び跳ねながら回避して回るコゼット。
「分からない位に怒ってる……もう、滅茶苦茶……っ!」
「やはり、一度無力化するしかないようですね」
アリシスがその手をかざすと、その手に闇の月が生まれた。放たれた昏い、闇の光が研究員たちを圧す。ギリギリと鉄が軋み、しかし機械の骨にはいまだ甚大な被害は見て取れない。
「なるほど――確かに、大した装甲のようです」
感心半分、アリシスが、ふむ、唸った。
「めんどくさい奴らだねぇ……」
リリーはぼやきつつ、地面にバールを突き立てた。派手に振動する地面――『床ドン』の名のままに、ドン、という音があたりに鳴り響く。それは、大地を駆ける衝撃となって、研究員たちを足元から襲う!
「うおっ……!?」
悲鳴を上げながら、姿勢を崩す研究員。
「主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え――」
唱えられた聖句。それを合図に燃え盛る焔が、ヴァレーリヤの持つメイス、『天の王に捧ぐ凱歌』より放たれた。一直線に、まるで空間を斬るように放たれた焔は、研究員たちを一列に飲み込む。
「くそがっ、この程度でアーマーボーンが止まるか!」
炎に巻かれながらも、研究員たちが飛び出す――だがそれは統制された行動ではなく、互いに足を引っ張り合いながらのモノであった。
結論、イレギュラーズ達は研究員を一つの群れとして認識しているが、研究員たちにとっては、1対1×5と1チーム、というような構図である。つまり、目につくものすべてが敵なのだ。
だから、炎から離脱する際にも、我が有利を得ようという足の引っ張り合いが行われたのである。
「まったく……!」
ヴァレーリヤはたまらず叫んだ。
「ええい、目を覚ましなさい! 大切な仲間なのでしょう!? 殺してしまったりなんかしたら、きっとすごく後悔しますわよ!!」
未だ狂気の中にいる彼らに、その言葉は届いたのだろうか――研究員たちがみせた僅かなたじろぎは、戦闘のダメージのみによるものではないと信じたい。
「高い防御力? そんなもの私のドリルの前では無駄無駄! ですわ!」
一方、イレギュラーズ達の攻撃により足を止めた研究員の一人へ、突撃したのはリアナである。
右手のドリルをフル回転。すべてを貫く必殺の一撃が、機械の骨へと繰り出される!
「オーホッホッホ! 喰らいなさい! ドォォォリル……クラッッッシュュュュュュッ!」
リアナのドリルと、機械の骨が接触する。甲高い音を立てて、装甲が火花を散らした! やがてドリルは、機械の骨の腕部を貫通。貫き落すことに成功する!
「馬鹿な! 生半可な攻撃じゃ傷一つつかないはずだぞ!?」
たまらず叫ぶ研究員。だが、イレギュラーズ達による、『生半可ではない』攻撃を受け続けた結果、ダメージは蓄積し、結果となって表れたのだ。
「さぁ、力比べだよ!」
ソアは追撃をお見舞いすべく駆けだした。迎撃に振り下ろされた機械の骨の腕を、ソアは身を翻して回避。そのまま敵の懐深くへと潜りこむ。
「ちょっと痛いけど……我慢してね!」
眼前にむき出しとなった生身の肉体へ、ソアは拳を繰り出す――腹部を叩きつけられた研究員は、たまらず息を吐く。動きが止まった。
「トドメと行きましょうかー!」
動きを止めた機械の骨へ、きりの魔術衝撃波が放たれる。真正面から二度目の追撃を受けた研究員は、もんどりうって倒れ込み、そのまま意識を手放した。すぐさまきりは研究員の生死を確認する。どうやら、命に別状はなさそうだ。
「いい感じっすね、このままいくっすよ! コゼットさん、痛いの飛んでけーっす!」
ジルが治療術式を飛ばすのを、コゼットは受け止めた。蓄積された疲労と傷が、たちまち癒えていく。
「よーし、今のうちに収奪と構造確認だよぉ……」
倒れた研究員の機械の骨を引っぺがし、リリーが声をあげた。
●撃破
イレギュラーズ達の戦いは続いていく。不殺を誓ったイレギュラーズ達は、その代償として敵からの苛烈な攻撃を受けていく。それは、イレギュラーズ達にも決して浅くない傷を残した。
だが、すべての命を救いたいというイレギュラーズの決意は、イレギュラーズ達を戦場へと立たせ続けていたのである。
「構造上の弱点は、やっぱり関節だねぇ……」
リリーが声をあげる。
「関節、機械同士のつなぎ目、だね?」
コゼットはぴょん、と飛び跳ねながら、肩口関節部分へと強烈な蹴りの一撃を加えた。みしり、と音を立てて、骨がわずかにひしゃげた。
「ダメ押し、させていただきますね?」
そこへ放たれる、アリシスの聖なる術式が、ついに関節部分を破断させた。がこん、という音を立てて、外れた腕が地に落下する。
「こいつら! アーマーボーン並みの戦闘能力を……!?」
狂気の果てに、一瞬の正気が訪れたのか、あるいは自分たちよりもさらに強力な存在を前にして恐怖が打ち勝ったのか。研究員たちの間にどよめきが広がる。
「ふっふっふー、パリピのアイテムは全部解体だよぉ……!」
放たれた、リリーのバールが、もう片方の腕へと突き刺さる。激しい火花を散らし、さらに腕が脱落。
「主よ、慈悲深き天の王よ。彼の者を破滅の毒より救い給え――!」
ヴァレーリヤの唱えた聖句。それによって放たれた衝撃波が、むき出しとなった研究員の身体へと突き刺さる。アーマーボーンはその姿勢を崩さぬまま、しかし中の人間は意識を手放していた。
「いいペースですわ! このまま参りましょう!」
ヴァレーリヤの言葉に、仲間達は頷く。
「オーホッホッホ! 所詮は機械の骨にすぎませんわね! 私のドリルの敵ではなかったようですわ!」
ご機嫌でドリルをぐるんぐるんと回すリアナ。とはいえ、その言葉は正しい。勢いのままに激しさを増すドリルは、確かに機械の骨の装甲をゴリゴリと削り取っていたのだから。
「敵もアシストスーツ持ちか!?」
「あら、これは自前のドリルですわよ!?」
リアナがドリルを激しく突き出すと、機械の骨の関節部分が激しくショート。膝部分の関節を破壊された機械の骨が前のめりへと倒れるところへ、
「がおーっ!」
吠えるソアの雷撃が襲い掛かり、激しく痺れさせた。機械は完全にショートし、研究員はその衝撃に意識を手放す。
「くそ、此方も雷撃で反撃だ!」
残る研究員が、アシストスーツのスタンガンモードを撃ち放つ。稲妻のような電撃が、イレギュラーズ達へと襲い掛かる。撃ち抜かれた一撃が、麻痺という形でイレギュラーズ達の身体に傷跡を残した。
「くっ、皆、もう少し耐えてほしいっす! 動かないとヤバイっすよ!」
ジルの言葉は、仲間たちの恐怖を、麻痺を打ち払う。そう、まだまだ足を止めてなどいられない。敵の数は、残り2。もう少しで、此方の勝利は目前なのだ!
「これで正気に戻ってくださいよっ!」
きりの放つ魔術衝撃波が、研究員の顔面に突き刺さる。派手にのけぞりつつ、応戦せんばかりに腕を激しく振るうが、それがイレギュラーズ達を捉えることは無い。
「そんなポンコツからおりて、生身でかかってきなよ、もやしやろー」
最後まで、可能な限り自己に攻撃を引き付ける――挑発の言葉を止めないコゼット。その成果は、敵の反撃という形でもたらされる。振るわれた拳の上に、ジャンプして着地。そのまま、ウサギが後ろ脚で飛び跳ねるように跳躍+蹴りの一撃。
ぐらり、と倒れ込んだ機械の骨。その脚部間接に、リリーのバールが突き刺さった。
「うるさくて、昼寝もできないんだよぉ……?」
理不尽なキレ芸を見せるリリーの攻撃により、機械の骨があおむけに倒れる。がふ、と息を吐いて、研究員が意識を手放した。
「残り、一人だよぉ」
リリーの言葉。イレギュラーズ達の最後の猛攻が始まった。ヴァレーリヤは聖句を唱え、衝撃波を撃ち放つ。ガオン! ぶつかり合う衝撃波と機械の骨が、きしむような音を立てた。
「リアナさんっ!」
「私にお任せ、ですわーっ!」
突き出される、回転するドリルが、真正面から機械の骨へと叩きつけられた! ひときわ大きな火花を散らして、ドリルが、機械の骨を抉り取る!
「くそおおおおっ!」
研究員が悲鳴を上げた! リアナがドリルを振り払うと、機械の骨が貫斬り裂かれ、瞬く間に崩壊していく。
大慌てで飛び出した研究員。その眼は血走ったままであり、未だ深い狂気に捕らわれているのは確かであった。
駆けだそうとした研究員――だが、
「はい、おやすみ」
びり、とソアの放つ雷撃が、その首筋に直撃した。そのまま、意識を失い、倒れる。
「これで、全部倒した……ですね?」
きりが声をあげた。全部で5体の機械の骨は、どれも行動可能なほどに破壊されており、研究員たちもすべてが意識を失っている。
「作戦、完了っす!」
ジルが声をあげた。一同の間に、安堵の空気が流れた。
イレギュラーズ達は見事、作戦を完遂してみせた――イレギュラーズ達の被害は小さいとは言えなかったが、その成果は、研究員たちの無事という形で、イレギュラーズ達にもたらされたのであった。
●正しい機械の使い方
「~♪」
鼻歌交じりで、コゼットは瓦礫を持ち上げる。その小さな体からは想像できぬようなパワーを発揮しているのは、研究所から貸与された、一般仕様アシストスーツの試作機の力だ。
作戦を完遂したイレギュラーズ達は、倒した研究員たちの傷を癒し、引き渡した。狂気に犯されたら彼らは、しばしの休養が必要だろう。だが、前述したとおりに、彼らは全員が、一命をとりとめている。それがイレギュラーズ達には、誇らしい事実だっただろう。
「運よく……まぁ、狂気に犯されたのは運が悪かったけど、それでも生き残れたのは運がいいですよね、うん。まぁ、皆運良く生き残れてよかったですよ」
と、きりは搬送される研究員たちを眺めながら、そう言うのである。
それから、イレギュラーズ達は破壊された研究所の片付けも買って出たのだ。其れには親切心はもちろん、アーマーボーンを正しく使ってみたい、という欲求もあったのかもしれない。
「うーん、やっぱり、技術って言うのはこうありたいものっすよねぇ」
ジルもアーマーボーンを使いつつ、がれきの撤去を進める。正しく使われれば、多くの人命を救うことができるだろう。出来れば戦闘用ではなく、こういった救助用の技術を発展させてもらいたいものである。
「確かに、楽でいいねぇ。普段の生活でもつけてようかなぁ……」
内部にすっぽり収まる様に、だらりとしながらそう言うのはリリーである。
「オーッホッホ! これでまた、私のドリルが最強であると証明されましたわね!」
得意げに高笑いするリアナ。
「しかし、今回は道化姿の鉄騎種は、現場には現れていないようですわね」
ヴァレーリヤが言う。やはり、今回の黒幕は、何らかの狂気伝達手段を用いているようだ。
「きっと、近いうちに、戦う事になるのでしょうね」
アリシスがそう言うのへ、ソアは頷いた。
「でも、どんな奴でも、やっつけてやるんだから!」
その決意は確かに。
次なる戦いの気配を感じ取る、イレギュラーズ達であった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
皆さんの活躍で、研究員たちはみな一命をとりとめ、正気に戻るための治療を受けることになりそうです。
また、研究所の片付け、ありがとうございます。依頼人の管理者も大変喜んでおりました。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
練達北西部にて、狂気に侵された人々による事件が発生しています。
アーマーボーンを装着した彼らを止めて、被害を最小限に食い止めてください。
●成功条件
研究員たちが繁華街へと向かう前に、すべて無力化する(生死を問わず)。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●状況
練達北西部、アーマーボーン研究施設付近の路上で、アーマーボーンと呼ばれるアシストスーツを着た研究員たちが、お互いを殺し合うために大暴れしています。
皆さんには現場に急行してもらい、これを速やかに鎮圧してください。
研究員たちは狂気に侵され、無差別に攻撃を行ってきます。
同士討ちからの漁夫の利を狙いたい所ですが、そうした場合、決着がつかないまま研究員たちが繁華街へと向かいさらなる被害を呼ぶ可能性があり、お勧めできません。
作戦決行時刻は昼。戦場となる道路は、今は封鎖と非難が完了しているため、一般人が迷い込むことはありません。
●エネミーデータ
研究員(アーマーボーン装備) ×5
特徴
戦闘用アシストスーツ、『アーマーボーン』を装着した研究員です。
戦闘に関してはずぶの素人ですが、アーマーボーンにより身体能力が大幅に強化されています。
高い防御技術と、物理攻撃能力を持ち、至近~近距離、遠距離を射程とした攻撃を行います。
また、BSに関しては【麻痺】の付与や【必殺】による攻撃も行います。
以上となります。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
Tweet