PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<黒殺世界>『黒キ夜ノ逆月』

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 ――この世界には、『魔術』と言う物は存在しない。
 代わりに、個人ごとに異能力――鍛えて得た物にしろ、生まれつきの物にしろ――を持っている物も多い。魔術の類に見える凡ての物も、異能力に分類されているのである。

「今日も暇だな……」
「ま、明日になりゃ、俺たちもお役御免だ。報酬でぱーっとやろうぜ、ぱーっと」
「ああ、そうだな。このカビ臭い建物の警備を一か月もやったんだからよ、少しは――」
 そこまで言った所で、自動小銃を持った男は、『異変』に気づいた。
 急に、辺りが暗くなったのだ。
「…なんだ?」
 月が雲に隠れたのかと見上げてみる。
 然しそこにあったのは、彼が見た事のない光景。
「黒い月……?」

「戦闘態勢だ、警戒しろ!」
 リーダーらしき男の声が彼らを現実に引き戻す。
「『逆月』だ!!」

「……私の出現を見た者は、全て最早生きていない筈なのですがね」
 月光により映し出された影が、立ち上がる。
 手を一閃させれば、影で出来た刃が、附近の男の首を跳ね飛ばす。

「撃ちまくれ!」
 周囲の男たちが、一斉に照準を影に合わせる。
 雨霰の如く降り注ぐ弾丸。
 だが、その全ては…影の前に出現した黒い穴に吸い込まれ、そして――
「お返ししますよ」
 彼の後ろに出現した黒い穴から、吐き出され、背後から襲い掛かろうとした男たちを打ち据える。
「ちぃっ…!」
 男たちも素人ではない。銃弾が効かないとみれば、即座にナイフを抜き、飛び掛かる。
「やれやれ。接近戦は得意ではないのですがねぇ」
 影自身が、今度は穴の中へと消えた。
 そして、その姿は男たちの頭上へと出現し――
「まとめて、お相手させていただきましょう」
 空中から、『死』が降り注いだ。

 ――男たちが、地を覆う黒い影に飲み込まれていく。
「おやまぁ、新しい来客…でしょうか」
 月が僅かに顔を出す。その光に照らされ、「影」の顔が露わとなる。
 整った顔立ちの女性。それが――『逆月』の正体であった。


●黒殺世界へのご案内

「…と言うわけです。今回も、強者の一人との戦い――となりますね」
 のっぺらぼうの面から、その表情を窺い知る事はできない。
 案内人『アッシュフェイス』は、優雅に一礼した。
「『逆月』と呼ばれるこの魔術師。黒き月をその象徴とし、奇襲によって数々の強者を葬ってきました。彼女を撃退するのが今回の目的です」
 なぜ撃退?とでも言いたげな表情を読み取るかのように、アッシュフェイスはさらに続ける。
「彼女はその術式の特性上、神出鬼没と言えます。それを確実に捉え、息の根を止めるのは、皆様と言えども簡単ではありません。…無論、それが出来るとお考えになるのであれば、そうしていただいても大いに結構です」
 ある程度の挑発ともとれるその言葉。しかし如何なる意味でそれが発されたのかは、のっぺらぼうの表情から窺い知れず。

「…まぁ、腕試しであると考えて挑むのもよろしいでしょう。彼女は面倒くさがり。最悪でもしばらく戦闘を継続すれば、撤退するでしょう」

 そう言って、アッシュフェイスは来客たちを、再度『黒殺世界』へと送り込んだのであった。

NMコメント

剣崎と申します。
初めての方は、初めまして。
そうでない方は、またご縁があって嬉しいです。

今回の相手は女魔術師の一人。
やや特殊な能力を持ち、独特の能力配分になっておりますため、注意してください。

『逆月』の能力配分は:
高:命中、回避、EXA、抵抗
低:物攻、防技、EXF、CR、反応
他は中程度です。

スキルは以下。
[アクティブ]:
【月影手】神遠単:影の手を伸ばして一閃する。【防無】【万能】
【黒月ノ涙】 神中範:空中より黒い魔弾を打ち下ろす。【呪い】【混乱】【不運】 
【喪心月鏡】神特レ:月を模した鏡を作り出し、心に影響を及ぼす。彼女を視界に収めている者を目標とする。【災厄】【魅了】【恍惚】【反動】
【黒月ノ穴】特殊。ダメージ技ではなく、1ターンに1度、副行動を消費し任意のタイミングで20m以内の任意の場所へと瞬間移動する。また、自らを視界に入れていない者がいる場合、1ターンに追加で1度、その者の背後へと瞬間移動する事を選択可能(こちらは副行動を消費しない)。

[パッシブ]:
【歪曲ノ黒キ月】攻撃を受けて命中が確定した際、自分の命中と相手の命中の差に応じた一定確率で、その攻撃を「自分から見たその攻撃の射程内にいる」他の敵に向ける。(近距離技を受けたならば、それを自分からの近距離にいる別の敵に向ける)
但し、攻撃の使用者に跳ね返すことは出来ず、またペナルティとしてこのスキルを所持する者は至近距離にいる相手に対して攻撃する際、命中と攻撃力がそれぞれ半分になる。


極めて特殊なバトルですが、よろしければ。

  • <黒殺世界>『黒キ夜ノ逆月』完了
  • NM名剣崎宗二
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年11月22日 22時30分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
水瀬 冬佳(p3p006383)
水天の巫女

リプレイ

●影の出現

「…成程。今回の目的は、その魔術師か」
 空を飛ぶコウモリの目を通して、レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)が、『逆月』の姿を捉える。
「…っ」
 一瞬、魔術師が、自分の方を見た気がして。その眼差しの「冷たさ」に、僅かながら不快感が駆け抜ける。

「…なんでこいつは、強者を殺して回っているんだろう」
 不思議そうに首を傾げたのは、新道 風牙(p3p005012)。
「そう言った世界、なのでしょう。まるで六界は修羅道のよう」
「全くだ。しかしこういった世界に案内して回って……境界深度が高まった時、一体何が起こるのだろうな?」
 水瀬 冬佳(p3p006383)にゲオルグ=レオンハート(p3p001983)が同意を示した、その瞬間。

「――あらあら。本日も『お客様』が多い日で」
 その声は、即座に四人の間に警戒を呼んだ。
「――そこか!」
 蝙蝠の目を通して監視を行っていたレイチェルの手の周りに、鮮血の魔法陣が現れ、放たれた炎が影を打ち据える。
「…なるほど、問答無用と言う事ですわね」
 燃え上がる影から現れたフードの女に、しかし火傷の跡は見当たらず。
 炎は出現元であった影を燃やしただけで、彼女の本体に直撃はしなかった――と言う事なのだろう。
「ならば――私もまた、遠慮は致しませんわ」
 放たれる魔弾の雨。
 四人がそれぞれ散開し、『逆月』を視界から外さないようにしながらも各自回避行動を取った事で――戦いの火蓋は、ここに切って落とされた。


●影への猛攻

 先手を取ったのは、四人の中でも最速を誇る風牙。
「アンタが世界に仇成す存在なら……オレがここで斬る!」
 反応、迎撃を許さぬ神速を以て接近し、大剣は疾風を纏って『逆月』の首元へと迫る。
 パンッ。派手な破裂音を上げながらも、斬れたのはフードの端のみ。
 直撃していたのならば首が落ちていた可能性もあろうが、『逆月』は魔術師でありながらも、その身のこなしは戦士なみであるのだ。
 回避に成功した『逆月』だが、チリッとした寒気を感じ、黒い穴に消える。
「…外しましたか」
 直後、彼女が元居た場所を、冬佳の氷剣が通り過ぎる。

「容赦のない事……まぁ、私も期待していた訳ではありませんが」
 空中に出現した『逆月』。虚空から、その手に黒い光が集う。
 次の瞬間、光は小さな粒子に分裂し、雨あられが如く、風牙の頭上に降り注ぐ。
「ちぃ……っ!」
 大剣で何発かはガードした。しかしそれでも、精密な狙いを以て残りの黒き魔弾は彼を射貫き、その身を呪っていく。
「大丈夫か?」
 ゲオルグの放つ治癒の光が、即座に呪いを解除。ダメージは回復できなかったものの、『逆月』の火力はそこまで高い訳ではなく、風牙の傷は浅い。そして――
「その体勢なら、もう避けられねぇぜ」
 空中にいる『逆月』に向かって、レイチェルが跳び上がる。
 空を舞うその姿は、夜の月に照らされ、彼女が『吸血鬼』である事を嫌でも思い起こさせる。
 炎を纏ったその右腕が至近距離から突きつけられ、迸る火柱。
 メンバーの中でもひと際命中に優れたレイチェルの一撃はついに『逆月』に命中し、炎を上げながら、彼女は落下して行く。

「よっしゃ、これなら!」
 その俊足を以て、風牙が落下地点へと駆け抜ける。
 その身に一滴の水が落ちると、花が咲き、その傷を癒す。冬佳による治癒魔法か。
 万全のコンディションで、足を止めず放たれた一閃が、『逆月』に傷を刻み、更にもう一撃加えるべく、ターンして目標に再接近する!
 だが。フードの下の『逆月』の口角は、僅かに吊り上がっていた。
(「なるほど――敵のそれぞれの役割は分かりました。では――」)


●影潜む悪意

 成程一般的な目で見れば、『逆月』の能力は強力だ。
 だが、その能力の内訳を見てみれば――対多数にのみ有効な能力は多い。
 「個」の戦闘力が圧倒的な者も多いこの世界の者にとっては、彼女の能力は不利である事も多い。例えば、一度「捕縛」されてしまったのならば、能力のペナルティから近接戦に弱い彼女は圧倒的なピンチに陥り、場合によってはそのまま殺害される事になる。
 それでも彼女が今まで生きて、数々の強者を屠れたのは――一重に彼女の『頭の良さ』にある。相手を分析し、その隙を突き。不利だと見ればさっさと撤退、もっと良い状況や機会を見て、改めて仕掛ける――といった部分。

(「最も脅威なのは炎使い。ですが、彼女を沈めるためには、回復が邪魔ですね…」)
 四人の手札はある程度把握した。そう考えて、彼女は行動を開始する。
 両手を上下に並行になるように構える。その瞬間、腕の間に鏡が出現。魔性の光が四方に放たれ、『黒月の穴』の再発動を防ぐため視線を外さないようにしていた全員に直撃する。
「効かねぇな…!」
 耐性を持つレイチェルと冬佳が精神影響を受けなかった事は『逆月』の計算外だったが、彼女のプランに致命的な影響を与えることはなかった。彼女の目的は、バステ回復を担当するゲオルグを行動不能に追い込む事だったのだから。
「その炎、甘く見てると怪我するぜぇ…!」
 『逆月』の注意がその目標たるゲオルグに向いていた隙を突き、レイチェルの呪印が彼女を背後から打ち据えた。
 呪いは『逆月』の背に残った炎を介して広がり、その勢いを増して高速でその体を蝕む。
 追撃をしようとレイチェルが術式を構築した瞬間、『逆月』の姿が掻き消え、術式は空を切る。
 移動先は冬佳の頭上。魅了されて彼女に攻撃しようと移動したゲオルグと、彼女自身に向かって同時に、黒の魔弾が降り注ぐ。
 ゲオルグが魅了されて動けない以上、目標は回復役たる自分を倒す事だろうか。そう判断した冬佳が展開した癒しの術式によって、彼女自身の体力が回復していく。
 魔弾の不吉の呪いによる影響を受け、その術式の威力はやや低下している。だが『逆月』自身の魔力も高い訳ではない故、その魔弾による自身の傷を癒すには十分であった。

「ちょこまかと…!」
 レイチェルが苛立つのも無理はない。『黒月の穴』を以て彼女の攻撃を回避した『逆月』が、魅了していた風牙の後ろに移動した直後、再度『鏡』を展開したのだ。無論、レイチェルと冬佳に精神効果は効かない。しかし、冬佳は彼女の行動に違和感を覚えていた。
 何故、効かないはずの『喪心月鏡』を放ったのだろうか?

 ドスッ。
「ぐっ…!」
 腹部に、灼ける様な痛みを感じる。
「やっべぇやっべぇ、すっかりやられてた」
 『逆月』の腹部に突き刺さったのは、風牙の大剣。
 先ほど『喪心月鏡』を展開した際に彼の背中側に移動していた故に、魅了の効果が切れ、行動できるようになったのだ。
 剣を抜くとともに、猛然と加速。今一度全速力の一撃で彼女を断つべく、風牙が駆ける!
 剣を振りかぶったその瞬間。『逆月』は、笑みを浮かべた。

「――良いですね。それを待っておりました」

 ――次の瞬間、風牙の眼前に黒い穴が開く。
 通り抜けたその先には――レイチェル。
「がぁっ!?」
 強烈な一閃がレイチェルに直撃する。二回目の『喪心月鏡』は、レイチェルのダメージを倍増する恍惚の効果を切れさせない為だったのだ。
「ダメっ…!」
 パンドラの効果で踏みとどまった彼女に、即座に冬佳の回復術が放たれるが、先ほどは大した問題にならなかった、僅かな「不吉による回復量の低下」が勝負を分けることになる。
「これで――終わりですわ」
 ナイフの様な影の手刀が、背後からレイチェルを貫いた。


●痛み分け

「この…っ!」
 風牙の一閃が、『逆月』の太腿を掠める。
 先ほどの腹部への一撃が効いているのか、『逆月』の動きに以前ほどのスピードはない。また、至近距離から仕掛けるよう立ち回っていたレイチェルが倒れた事で、風牙の攻撃を反射する目標がなくなっていたのだ。
「やはり、解除を優先すべきでしたか…!」
 展開された白き刃の結界が、ゲオルグへの精神的な束縛を切断。
「すまん…!」
 再度の襲撃に備え、ゲオルグの術式が、今度は風牙の呪いを払う。
 彼の復帰により回復の重圧から解放された冬佳が、氷の刃を練り上げるが――
「待て――」
 隣にいたゲオルグが手を伸ばし、彼女を制止した。

 ――見れば、黒月の穴を以て『逆月』が移動したのは、丁度風牙と彼女から同じ距離の位置。
 このまま攻撃を放てば、歪曲され、風牙に向けられる可能性がある。
 負傷をも顧みずにレイチェルを倒す事に全力を傾けたのは、彼女の攻撃が唯一「能力的に反射し難い」物だったからか。
 ゲオルグの高められた五感が、その瞬間移動を読み取り――瞬時にその意図を判断したのだ。

(「潮時でしょうか…」)
 ゲオルグが鏡を警戒し、直接目を合わせないようにしている以上。バステを重視する『逆月』に情勢をひっくり返す事は困難。
 範囲攻撃で巻き込もうにも、ゲオルグと冬佳の両方が範囲回復技を所有しているが故に、火力に特段優れている訳ではない彼女にそれを上回ることは難しい。
 故に彼女が選択したのは――逃げの一手。

「待てっ!」
「ダメだ」
 追おうとした風牙を、ゲオルグが止める。
 風牙のスピードを以てすれば、確かに追いつく事は簡単だろう。
 だが、ゲオルグと冬佳はそうは行かない。
 そして、速度と破壊力に優れるが、バステへの防護がない風牙が独りで『逆月』に挑んだ場合、その不利は言うまでもない。

「――次は必ず」

 誰ともなく、その言葉を発した。

成否

成功

状態異常

なし

PAGETOPPAGEBOTTOM