PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Abschied Radio>スナッフメーカー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ノイジィ・ノイジィ
 ――北西部下階層にて頻発する殺人事件についてコメンテイターのリリモト氏の意見を伺ってみましょう。
 ――これらの犯罪には共通点がありました。当人同士に以前からトラブルがあったということです。これだけを見れば、諍いの上でおきた過失とも言えますねえ。
 ――しかし『多世界評議会』以降、社会に不満を持つ者の無差別殺人が危惧されていますよね。
 ――その通り。これらの事件には『道化師姿の鉄騎種』の目撃情報が寄せられていますし、あれは魔種ではないかとも言われています。ですので注目すべきは殺人事件そのものではなく、その裏に潜む大いなる悪意なのです。
 ――その魔種について特徴は分かっているのでしょうか。
 ――そうですねえ。一説に寄れば声によって狂気をばらまいているとも言われておりますが詳しいことは……。

 プツン、とブラウン管テレビの映像が消えた。
 コーヒーカップとリモコンを手にしたカルネ(p3n000010)があなたへと振り返った。
「ここまでが、一部に伝わってる情報だよ。アングラサイトではもっと情報が転がってるけど、デマも多いからね……正しい情報を掘り出すのは難しかったけど……」
 カルネはそこまで言って、A4用紙に印刷した資料をテーブルに滑らせてみせた。
 そこには『声』の影響をうけているであろう人物が相当数いることと、その割に活動を起こしていないことが数字や写真によって記録されていた。
「既に一部では暴徒が発生したり、無差別殺人が起こったりしてる。そっちはそっちで別のチームが対応してるから……僕らの担当は、こっちかな」
 ページをめくって、コーヒーカップを押しつけて固定するカルネ。
 そこには大きく『スナッフメーカー』という文字と、四角いブロック状の物体……強いて言うならブラウン管テレビにノズル状の腕がはえたモンスターの写真が写っていた。

●スナッフメーカー
 それは宙に浮かぶブラウン管テレビに見えた。
 金属製のフレキシブルノズルにも似た腕が左右に一本ずつ伸び、先端には白手袋をかぶせた手が付いている。
「まあ、ここまでなら……ちょっと愉快なモンスターってだけで済んだんだけどね。
 次の写真は少しショッキングだから、苦手だったら目をそらしていてね」
 カルネがめくったページには、カラーの大きな写真が添付されていた。
 魔物『スナッフメーカー』が人体を切り刻み、まるで花でも活けるかのように手の棒にさして地面に並べていく光景であった。
 テレビ画面にあたる透明な板には、いわゆる『砂嵐ノイズ』が表示されている。
「この魔物からは、当人を殺害している間の悲鳴がひどい砂嵐ノイズに混じって出力され続けていたらしいんだ。こうした音声や風景を見せつけることで住民不安を過剰に煽るのが目的だと思うんだけど……仮にそうでないとしても、タチの悪いモンスターだ。そう、思わない?」
 カルネの目はいつものように澄んでいたが、しかし目の奥にはハッキリと怒りの感情が渦巻いているように思えた。
「都市部の代表者から僕たちに依頼されたのは、このモンスターの破壊だよ。
 ムキになってる? そうかもね。君と一緒に仕事ができるのは嬉しいんだ。けれどそれ以前に……許せないんだ、こういう事件は」

GMコメント

■スナッフメーカーの破壊
 町で人間を狙って惨殺を行ない、その悲鳴を聞かせながら死体を飾り付けるという凶悪な性質をもつモンスター。それが『スナッフメーカー』です。
 この存在によって近隣住民の潜在的不安は高まり、治安の悪化も見られています。
 現地に向かい、このスナッフメーカーを破壊しましょう。

 移動に規則性が発見され、次の発生ポイントは割り出してあります。
 この情報を元に、『飾り付け中』のスナッフメーカーへ襲撃を行なう手はずになっています。
 場所は都市の住宅街。その空き地です。
 人工的に敷き詰めた土に雑草がぼさぼさとはえている場所で、3方向をコンクリートブロックの塀に覆われています。

■スナッフメーカー
 基本的には6体前後で活動しています。
 しかし戦闘状態にはいると仲間に電波か何かを送るらしく、『戦闘開始から10ターンほど』してから仲間のスナッフメーカーが次々と戦場に現われるようになります。
 ですのでプレイングや作戦相談は【短期決戦(ショート)の前半戦】【継続集団戦闘(ラッシュ)の後半戦】といった具合に分かれることになるでしょう。

 前半戦では初期段階である程度バラけた敵をどれだけ早く倒せるかが勝負です。
 倒しきるのが早ければ早いほど回復にさける時間が増えます。
 また、敵を一箇所に引きつける仲間と強力な範囲攻撃ができる仲間で協力すると効率を上げられるはずです。

 後半戦はあちこちからばらばらに、そして大量にやってくる敵を継続して倒し続ける必要が出ます。
 強力な範囲攻撃よりも低コストな単体攻撃のほうが、ここでは役にたつでしょう。
 スタミナ(AP)に自信が無い場合は通常攻撃手段にも拘ってみてください。
 また、敵はあらゆる方向から(ブロック兵を超えて)やってきます。陣形をまあるくとるのもお勧めです。

■役に立つカルネ
 依頼にはカルネ(p3n000010)が仲間として同行しています。
 今回は『AP回復スキル(中単70回復)』を保有し、近~超距離までの単体攻撃に対応しています。
 また反応をやや高めにし、『連鎖行動(シナリオ時、相互感情を結んでいる相手と同時に行動する事を選べます)』を活性。感情は抱き返しを行なっていますので、気軽にカルネに感情を抱いてみてください。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • <Abschied Radio>スナッフメーカー完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年11月20日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
暴風
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
無限乃 愛(p3p004443)
魔法少女インフィニティハートC
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
ロク(p3p005176)
クソ犬
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年

サポートNPC一覧(1人)

カルネ(p3n000010)
自由な冒険

リプレイ

●醜悪の伝播
 『暴力』は世界にずっとあり続ける概念である。
 だがその使い方を選べるからこそ、ヒトは知性を認められたと言っていいだろう。
「これまた悪趣味な怪物だなぁ。いたずらに恐怖を煽る……魔種が絡んでるんだろうか?」
「わからない。けど、間違いなく『悪意』はあるだろうね」
 『帰ってきた牙』新道 風牙(p3p005012)とカルネ(p3n000010)は同じ資料をめくりながら練達タクシーの後部座席に座っていた。
 アスファルト道路を走る魔動車の炎がもえるようなエンジン音と振動が、革のシート越しに伝わってくる。
 スナッフメーカーというモンスターの性質は、『暴力を見せつける』というものだ。
 そしてそれを人口の多い地域に解き放つという行為は、暴力拡散の助長にほかならない。
 多くの者は見せられた暴力を忌避し、嫌悪し、時には困惑すらするが、中でも無視できないのが暴力の一般化という悪しき効果である。
「ほんと、悪趣味だよね! 食べるために手をかけるのとただ殺すのって違うんだよ、カルネさんがシリアスになっちゃう気持ちわかるよ!」
 『クソ犬』ロク(p3p005176)は腕組みをして、流れる車窓に映る街の風景をみやった。
 安全に暮らしていると、人間というものが簡単に死んでしまうことを忘れがちだ。
 病気や事故による怪我といった偶発的なものじゃあなく、タンパク質その他で構成された物体をある程度切断したり変形させたりすればたちまち死んでしまうという、圧倒的な事実をだ。
 それを見せつけることは暴力への恐怖を煽り、そしてときには狂気を引きずり出す。
「まあ、別に……」
 『付与の魔術師』回言 世界(p3p007315)は眼鏡のブリッジを中指で押し、小さく鼻から息をついた。
「人体を切り刻もうが悲鳴を垂れ流そうが勝手にしてくれていいんだが……目に見える場所でやられると気分が悪くなる。受けた依頼の努力義務もさることながら、な」
 ロクのいうような食肉加工の現場を例に取るまでもなく、グロテスクなものは世界に依然として存在し、それはえてして必要なものだ。
 しかしそれを食卓にドンと置いて良いかといえば、当然NOだ。
「望まぬものに見せつけつるための、歩くスナッフフィルムというわけか。ふむ……」
 『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が後続車両の助手席でこつんと窓ガラスに頭をつけた。
 どこかの世界には、ヤギを一度も捌かずに生きて死ぬ土地があるという。食肉文化にありながら一度もその作業を行ったことが、どころか見たことすらない者も。だが分業文化が成り立つならばそれが適切であり、自然なことなのだ。誰もが望んで牛を開いた場面を見たいわけじゃない。
 車がブレーキをかけ、ギアがパーキングモードにはいった。
 愛は後部座席から指定のコインを運転手に投げると、素早く扉を開けて野外へと出た。
 ブレスレット型変身アイテムに指輪をかざし、ハートのきらめきに包まれていく。
「『人心無き魔を撃ち砕く愛と正義の閃光!魔法少女インフィニティハート、ここに見参!』――さて」
 変身をおえた『魔法少女インフィニティハートD』無限乃 愛(p3p004443)。
 彼女に並んで、『暴猛たる巨牛』ルウ・ジャガーノート(p3p000937)が剣を担いだ。
「よおイカレモンスター共、お楽しみ中の所邪魔するぜ?」

 現場はひどい有様だった。
 地面に突き立てた鉄の棒に人体部位が掲げられ、空き地中央に組み立てられたフックにはまるでクリスマスツリーでも飾り付けるかのように同じような処理が施されていた。
 ブラウン管テレビから手が生えたようなモンスター『スナッフメーカー』が、まさにその材料を『作成中』の風景を画面に映し、大音量で垂れ流している。
 当然、近隣住民などいない。逃げたか、いま飾られているかのどちらかだ。
「こんなに散らかしやがってよぉ、もはやこの世にいていいモンじゃねえな?
 俺たちがここでキレイに解体してやんねえとなぁ!」
「ンだこりゃ……なンなんだこりゃあッ!?」
 あとから降車してきた『Punch Rapper』伊達 千尋(p3p007569)が手で口と鼻を覆った。
「クソが、猟奇殺人ってヤツかよ!
 こんなもん漫画やドラマでしか見たことねェぞ……!」
 千尋にとっての異世界。空飛ぶ寿司や変形ロボットや森イルカたちの愉快なファンタジー。だが同時に存在する『醜悪』の事実に、千尋は顔を歪めざるを得ない。
「ああ、胸糞悪ィ!ド畜生が!」
「うわほんどだクソキモイなにこれ!?」
 横に並んでいた『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)が震えながら顔を歪ませ……コホンと咳払いしてから180度反転した。
 顔をくいくいとマッサージし、髪を整え、そして体ごと(美少年のきらめきと点描をまといながら)振り返った。長いまつげで瞬きをし、かぐわしく美しい髪をかきあげる。
「なんて惨い……魂のない存在の所業とはいえ、ここまで悪辣な景色があるだろうか。
 明らかに『悪意』と呼べるものが関わっている。
 悪意の主も許してはおけないが、まずはその手先を静かにさせるべきだね」
 そうだね? と言いながら振り返ってくるセルマ。お、おうと言いながら頷く千尋。
 スナッフメーカーたちはそんなやり取りをまるで無視して、こちらへと身体ごと振り返った。
 持っていた『装飾』を投げ捨て、ふわふわと空中1m強の位置へ浮かび上がると、フレキシブルパイプのような両腕にナタや斧やペンチといった工具を握った。
 ひどく汚れた工具が何を意味するかを、あえて述べまい。
 今はすべて――。
「叩き壊してやる」
 と、誰かが言った。

●暴力でしか止められない暴力
 世界のあちこちに存在する実例のひとつ。暴力をとめるための暴力。広義に述べるところの抑止力。
 練達の地域代表者がローレットに外注をした根本的な理由が、まさにソレである。
 どんな選択よりも優先して、いまはまず。
「ぶっ壊してやる! 覚悟しやがれポンコツ共ォ!」
 戦闘態勢を整えようとする仲間たちに先んじて誰よりも早くジャガーノートが敵陣へと飛び込んでいった。
 彼女を解体しようとナタや斧を振りかざすスナッフーメーカーのブラウン管ボディにダイニングテーブルにできそうなほど巨大な剣を叩き込む。そこまでされて破壊できないテレビなどない。ごばぎゃんというえもいえぬ音をたて、火花とともに画面表示を消失させた。
 それでもルウの剣がとまることなく、もう一台のスナッフメーカーに壊れたテレビの残骸を激突させ、跳ね飛ばしていく。
 回転し、バウンドし、地面に斧を打ち付けるよにしてブレーキをかけるスナッフメーカー。
 が、そこへ、ロクが吠えながらかじりついた。
 集まっていたスナッフメーカーのうちおよそ3割弱といったところだが、咆哮によるひきつけに成功したようだ。
 スナッフメーカーたちは赤黒く汚れたマイナスドライバーや先割れスプーンを振りかざし、ロクへと襲いかかっていく。
 繰り出されたドライバを一時的に硬質化した毛皮で受け流し、腕に噛み付いて振り回す。
 振り回す動きでもう一体の打撃を牽制すると、大きく飛び退いて更に吠えた。
 命中精度や工夫の面から、一度で惹きつけられる敵の数はそう多くない。しかし連続していればそれだけ保証される確率も上がるというものだ。
 視界の端に、『飾られた人たち』が見える。
 今すぐにでも解放してやりたいが……。
「待っててね。あとで必ず」
「そのまま動くな」
 汰磨羈が猛烈な速度でロクの上を飛び越え、スナッフメーカーのブラウン管ボディに靴底を叩き込む。
 凹んだボディを踏み台にしてバク転をかけると、展開した霊光器で相手のボディを横一文字に切り裂いていく。
「――!」
 その様子に驚いたロクの後ろに迫り電動ドリルを尽き出そうとするスナッフメーカー……の画面部分に、汰磨羈の投げた霊光器が突き刺さった。
「今だ。仕留めろ」
「「まかせて!」」
 風牙とカルネの剣が交差し、スナッフメーカーをX時に破壊。
 ばぼんと小爆発を起こすスナッフメーカーから飛び退くと、新たに迫る別個体へと振り返った。
「手早く終わらせよう。奴ら、仲間を呼んでる」
「わかってる……行くぜ伊達さん!」
「おう、今日はちょっとマジだぜ」
 風牙の目がギラリと光り、迫るスナッフメーカーをにらみつける。
 と同時に、千尋が間に割り込んで後ろ回し蹴りを繰り出した。
 タイミングよくハマった蹴りがスナッフメーカーを弾き、ぐるぐると回転させる。
「テメふざけんなボケカスコラァ! 全殺しだオラァ!!」
 近くに刺さっていた素の鉄棒を掴むと、スナッフメーカーめがけて投擲した。
 画面に突き刺さる寸前にがしりと止められる棒。
 が、その棒の端を人差し指でそっと押すセレマがいた。
 いつのまにかそこに現れ、いつの間にか指を添え、金色の瞳でスナッフメーカーを見る。
 強制的に定義された『美少年の魔性』によって指向性を与えられた棒が、まるでゼリーにささるスプーンのようにスナッフメーカーの画面へと突き刺さっていく。
「ボクの小鳥から近づいてくるスナッフメーカーの集団が見える。休憩する暇は、残念ながらあんまりなさそうだよ」
「構いません。そのための装備です」
 コッ、と棒を引き抜こうと暴れるスナッフメーカーの側面にマジカルサイズを押し当てる愛。
「魔砲――type.D、ファイア」
 ショッキングピンクにハート型をしたビーム砲が発射され、無数に張り巡らされた魔導反射板によって複雑に跳ね返り、周囲のスナッフメーカーたちを次々に撃ち抜いていく。
「トドメを」
 合図を受けて、世界はパチンと指を鳴らした。
 虚空に描かれた白蛇の陣が動き出し、かろうじて生き残っていたスナッフメーカーへとかじりつく。
 そして『生命力』のみを噛み砕き、相手の性質を無視して存在毒を流し込んだ。
 魂の半身をかじられたスナッフメーカーは地面に落ち、腕をぎしぎしと動かした後、錆びるように朽ちていった。
「終わりか?」
「いや……」
 メガネに手を添え、振り返る世界。
 空き地はすでに、無数のスナッフメーカーに包囲されつつあった。

●無法者には『くれて』やれ
「破禳――」
 ブロック塀に足を付き、顔を上げる汰磨羈。
 弾丸のごとく飛び出すと、スナッフメーカーを貫くように白いラインを作り、反対側のブロック塀へと足をめり込ませていた。
 中央に大穴をあけ、くぐもったノイズをあげて腕を振り回すスナッフメーカー。
 汰磨羈はブロック塀から飛び退き、宙返りをかけてから着地すると、すでに『振り抜いていた』霊光器を収めた。
「――太極律道」
 背後のスナッフメーカーとその直線上にいた複数体のスナッフメーカーがまとめて爆発四散する。
「貴様等、厄害に在るべき道理無し。悪身一切、塵芥と化すまで撃滅あるのみ!」
 汰磨羈めがけて三体のスナッフメーカーが一斉に跳躍。血に塗れたナタやのこぎりを振り上げる。
「カルネさん、回復を!」
「まかせて」
 風牙は地面に片手をつきもう一方の手で剣を方に担ぐというスタート姿勢から猛烈な速度と反射神経でスナッフメーカーへ突撃。
 速度をそのままのせた斬撃がスナッフメーカーを左右真っ二つに切断しながらそのまま地面へと叩きつける。叩きつけた衝撃で左右に散った残骸をよけて、付近のスナッフメーカーは標的を変更。風牙にスタンロッドを突きつける。
 が、カルネの送ったエネルギーによって電流を振り払い、風牙は更に左右のスナッフメーカーを薙ぎ払っていく。
「カルネさん。少し付き合ってもらいましょうか」
 愛はマジカルサイズをくるkルウと回すと、左手からピンクのネオン光を発射。カルネと背中合わせになるように別の仲間へとエネルギー供給を開始した。
「スナッフメーカーは続々と接近しています。スタミナ切れを起こさぬように」
 愛の光を受けた千尋は軽くピンク色に光りながらも手を握ったり開いたりしてみた。
「ハートの光で身体のしびれが取れたぜ。……いやマジでどういう原理だよ」
「愛ですよ」
「愛かー」
 これ詳しく聞いても意味ねーやつだなと察した千尋は再び気合を入れ直し、自分の頬をばちんと叩いた。
 今まさに掲げられ、飾り付けられた人々の死体が見える。
「クソ、クソ、クソ! 顔も知らねえ奴らだけどよ……こんな死に方、あんまりじゃねえか……クソが……!」
 電動ドリルを唸らせながら走ってくるスナッフメーカーに突撃し、テレビ画面部分にトゥーキックを叩き込む。
 ばきんとかちわれたシールド面を革靴の先が貫いて、千尋の蹴った勢いのままスナッフメーカーが飛んでいく
 三方向から同時に飛びかかったスナッフメーカーが千尋の胴体や足に包丁やドライバーを突き刺し、錆びたのこぎりで出血を促してくる。
「数は多いけどボクたちで対処できない程じゃないさ。ティータイム前に片が付くよ。」
 が、セレマが放った美少年のきらめきが千尋の肉体を止血させた。
「美少年を見たショックで血が止まったぜ。……いやマジでどういう原理だよ!?」
「美少年力だよ?」
「美少年力かー」
 スナッフメーカーをバスケットボールみたいに片手で掴んで投げ飛ばし、血の混じった汗を拭う千尋。
 セレマのほうもだいぶ調子が出てきたようで、スナッフメーカーの猛攻のなか、涼やかな笑みを浮かべたまま軽やかにあるき抜けていく。
「他に回復や補充がいる人は?」
「俺には必要ない、他に回してくれ」
 世界は地に汚れたメガネをどこか乱暴に袖で拭いながら、ミリアドハーモニクスの術を千尋たちにまいていた。
「スキルの基本消費は激しいが、充填能力がだいぶ補ってる。それより連中の様子はどうだ。まだ行列を作ってるのか?」
「いや……次で最後かな」
 振り返る世界とセルマ。
 ブロック塀を飛び越え、1体のスナッフメーカーが空き地へ飛び込んできた。
 武器は持っていなかったが、すぐそばに刺さっていた『おまけ付き』の鉄の棒を引き抜き、やりのように構えてみせる。
「……」
 熱い息を吐き出すルウ。
「仕事を終えたら、イカレ鉄くずの残骸を片付けないとな。
 でもってこのクソッタレなパーティーグッズにされた奴らを遺族に引き渡す。
 理不尽に死んだ人たちも、少しは浮かばれてるといいが……」
 その隣に並んで、ロクが牙をむき出しにして唸った。
「わたし知ってる! こういう練達の技術力に対して古めな機械ってうまく叩くとジカイが修正されたり接触不良が直るんでしょ! 知ってるよ! この前やらせてもらったら壊れたけどね!」
 毛皮を再び硬質化させ、風をまとうように突撃していくロク。
 鉄棒による突きをあえて受け、直撃を外す。
 頬と身体を浅くえぐっていく感覚に歯を食いしばってこらえつつ、自らの全体重をのせた体当たりを仕掛けた。
 体制が崩され、ブロック塀に激突するスナッフメーカー。
 手から落ちる鉄棒。
「くたばれポンコツ!」
 ルウはあえて剣を投げ捨て、屈強な右腕だけでスナッフメーカーを殴りつけた。
 画面を破壊し、内部構造をメチャクチャに破壊し、後部パネルをも貫き、更にブロック塀を粉砕した。
 肘まで埋まったスナッフメーカーが腕をわずかに動かし鈍いノイズ音を発したが、それだけだった。
 だらんと下がった腕と重みだけが残る。
「今日の酒は、不味くなりそうだぜ……」

 この後、残骸だらけになった空き地は駆けつけた自警団によって清掃され、被害にあった人々も時間をかけて遺族のもとへ戻された。
 今回の事件によって広がった狂気や混乱は、きっと後に大きな事件を引き起こすだろう。
 そんな予感を残したまま……この事件は、一度幕を閉じた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――依頼達成。状況終了。

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