PandoraPartyProject

シナリオ詳細

明日の雨が降ったら、いっしょに死んであげる
明日の雨が降ったら、いっしょに死んであげる

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●新しい友達
 聖教国ネメシス。通称『天義』。
 信仰に守られた地に灯った、これは小さな死の物語。
 妖精と、それに誘われた少女の、恋とも友情ともとれない、見えない糸のお話。

 天義を訪れたあなたは、ある依頼を引き受けることになった。
 ローデットから仲介されプルー・ビビットカラー(p3n000004)の手より渡された依頼書には、事件調査とある。
 あなたは手近なカフェに入り、早速依頼書を開いてみることにした。

 依頼人はメーフェル・アイベル。農家を営む女性で一人の娘をもつ。
 娘の名はチペル。
 チペルはある日母に、新しい友達ができたと話した。
 母はそれがよくある子供の世間話だと考えて深く気にとめはしなかったが、その翌日から娘の帰りが遅くなることが続いたという。
 その新しい友達の影響だと考えて帰宅時間を注意したり、門限を設けたりしたが、娘の帰りが早くなることはなかった。
 ついに放置できなくなった母は娘にその友達と遊ばないように言いつけ、その翌日からは娘が遅く帰ることはなくなった。
 しかしそれから数日たった、ある雨の日のこと。
 その日娘は、家に帰ってこなかった。
 村の青年団がそうでで捜索にでたが一向に見つかることはなく、娘チペルと同年代の友達に尋ねても最近チペルと遊んだことがなく、どころかずっと会っていないと述べた。
 ことは本格的な行方不明事件へと発展し、チペルにできたとされた『新しい友達』が何者であるかも不明なまま……一週間ほどが経過しようとしていた。

●調査進展
 この事件調査にあたった八人のイレギュラーズたちはそれぞれ聞き込みや検証を行ない、追加情報を求めた。
 人間のみならず、周辺の草木やただよう下位精霊、動物たちにも例外なく情報収集を行なったが、しかしクリティカルな情報を得ることはできなかった。
 だが進展が無かったわけではない。
 いくつもの情報を継ぎ合わせた結果、チペルは森のある場所へ定期的に足を運んでいたことがわかった。
 そこは教会から穢れた場所だとされ立ち入りが禁止されていたエリアで、その昔恐ろしい妖精が住んでいたと言われていた。
 ずっと前に妖精は退治され安全は確保されたが、穢れた存在の暮らした場所は同じく穢れているものとして、皆距離をとっていたのだ。
 イレギュラーズたちは立ち入り禁止エリア……通称『わるい妖精の湖』へと踏み込んだ。

●明日の雨が降ったら、いっしょに死んであげる
 枯れた湖には浅い泥が広がり、動物や虫すらよりついていない。
 そんな場所に、ひとりの少女が立っていた。
 泥に膝までつかり、虚空を見上げて笑っている。
 あなたが声をかけると、少女は意味不明な言葉を発し、頭からべりべりと裂けていった。
 まるで人型のお菓子袋を開いたかのように、中から沢山の粒状のなにかが吹き上がる。
 それはよく見れば粒などではなく、大きさにして30センチほどの少女チペルにハチの羽根が生えたような姿をした妖精が、大量にわきあがったさまであった。
 妖精たちは、あなためがけて襲いかかる。
 いまは、戦うしか無いようだ。

GMコメント

■これまでのあらすじ
 依頼を受けて調査を進めたあなたが遭遇したのは、行方不明になった少女とそっくりの妖精の群れでした。
 妖精たちは無邪気に笑いながらあなたへ襲いかかり、今にもあなたの命を奪わんと狙っています。
 妖精たちを倒すことでこの場を切り抜けなければなりません。

※状況的に相談がメタ視点になりプレイングもまたメタになりますが、『悪い予感がして戦闘の準備をしていた』『妖精と聞いて丁度いいスキルを準備していた』といった具合に皆さんの用意が良かったものとして扱います。
 いずれにせよ、入念に調査を進め警戒もしていた皆さんに隙らしい隙はありません。

■妖精『たくさんのチペル』
 行方不明になった少女そっくりの妖精たちです。
 無邪気に笑いながらあなたへ凶悪な攻撃を仕掛けてきます。
 数は沢山おり、以下のスキルを使用します。
 今回集まったメンバーの特性を活かし、対処法を策定してください。

・心を食べる:物至単【Mアタック30】
・心の隙間へ入る:物至単【喪失】
・誘惑のトゲ:物至単【足止】

■戦いのあとは
 あなたは戦いの後に調査を進めてもいいですし、なにもしなくてもいいでしょう。
 いずれにせよ(依頼を受けた以上)依頼主には今回の出来事を正直に報告する義務があります。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • 明日の雨が降ったら、いっしょに死んであげる完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年11月12日 22時30分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サイズ(p3p000319)
カースド妖精鎌
銀城 黒羽(p3p000505)
ド根性ヒューマン
メリンダ・ビーチャム(p3p001496)
瞑目する修道女
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
村昌 美弥妃(p3p005148)
不運な幸運
藤堂 夕(p3p006645)
小さな太陽
ゼファー(p3p007625)

リプレイ

●最後で最高のともだち
 蜂の羽音が、ちいさなちいさな少女たちの笑い声が、耳についてとりまいていく。
 本能を逆撫でするような、背筋から手を入れて背骨を直接撫でられたような……そんなおぞましい寒気に、『幻灯グレイ』クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)は目を細める。
「……私の予感って当たるんですよね。……嫌な方は……。
 ……今回もそんな感じはしていましたが……」
 法儀加工された黒手袋に指を通し、すうっと視線を横に動かした。
 腰にさがった鎖を鳴らし、トゲ突き鉄球をぶら下げた固定金具をパチンと解放する『瞑目する修道女』メリンダ・ビーチャム(p3p001496)。
 微笑むように閉じていた目を僅かに開き、血のような目を光らせる。
「私も何となく予想はしていたけれど、やっぱりこうなるのね。
 私のお仕事が”死”に彩られているのは、私だけのせいではないような気がしてくるわ」
「……今日は、私も他人事じゃあなさそう、ッス……」
 手袋から燃え上がる呪いの影を、ぼうぼうと吠えるようにならすクローネ。
 鎖を両手の間に張らせ、豪快にハンマーを回転させはじめるメリンダ。
 二人を、大量のチペルによくにたものが取り囲んだ。
 『たくさんのチペル』。
 ああ、見よ、無邪気に笑いながらあなたの心を食べようと口を開く、『たくさんのチペル』。
「兎にも角にも静かにしてもらわないと笑い声が耳につきマスぅ」
 淡い色をした杖をくるくると回し、靴が埋まりそうな泥地へ突き立てる『不運な幸運』村昌 美弥妃(p3p005148)。
「これを見て、チペルが生きてるって考えるのは……甘すぎるよな」
 『ド根性ヒューマン』銀城 黒羽(p3p000505)は格闘の構えをとり、不倒の闘気を燃え上がらせた。
 カルマブラッドを構える『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)。
(悪い妖精か…それが本当なら絶好の妖精の血を吸うチャンスだが…本当に妖精なのか?
 顔とかは行方不明の人間なんだろ? まあ、斬って、妖精の血の味がすれば妖精、それ以外の味がすれば人間なのかな?
 うーん、妖精の血の味がしても顔は人間。人工妖精の可能性がある? そうだとしたら別に人工妖精の血はいらないかな。俺は純粋な妖精の血が欲しい)
 敵の数はかぞえきれない。
 少女チペルのゆくえを探るにしても、この妖精たちを無視することはできない。
 戦い、勝利し、そのあとでこそ先へ進むことが許される。
 もし敗北したのなら、どんな末路が待つのやら……だ。
「仮に生きて戻るとして、この状況……少なくとも、メーフェルさんに見せるべきではない気はします……!」
 『小さな太陽』藤堂 夕(p3p006645)はいつでも迎撃ができるように精霊を呼び出し、身の回りをかため始める。
「そう、ねぇ……」
 歯で指先を噛むようにして手袋を脱ぎ、代わりに腐食結界を周囲に展開させ始める『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)。
「それにしても……これがチペルちゃんの『友達』なのねぇ」
 もはや逃げ道はない。
 そして恐らくは、この『たくさんのチペル』こそが最大の手がかりなのだ。
 なので厳密には逃げられないのではない。逃げる時ではない、のだ。
 ゼファー(p3p007625)は泥と草のにおいがする空気を大きく吸って、肩をおろしながらはき出した。
 肩から腰へ斜めにわたした革ベルトを外し、背負っていた槍を腰を軸に回すようにして構えるゼファー。
「妖精の悪戯……なんて可愛いモンとは思えないかしら。
 こんな胸が苦しくなるような夢……さっさと終わらせちゃいましょう?」
 『たくさんのチペル』がいっそう大きく笑い、一斉に襲いかかる。

●心を食べる妖精
 黒羽は足を止め、不倒の闘気をよりいっそう燃え上がらせた。
「いつも通りやりますか」
 激しい火柱のように燃え上がった闘気を無数の鎖に変え、『たくさんのチペル』めがけて発射していく。
 無数の妖精たちが黒羽の鎖に反応するようにして集まり、鎖をかわした妖精たちも黒羽を取り囲んで身動きを封じにかかった。
 囲まれ、移動を阻まれた黒羽が身を屈めて頭を下げる。
 そのすぐ上を、メリンダのモーニングハンマーが
 首筋を狙ってかじりつこうとする妖精たちを鎖の物量と風圧で強引に薙ぎ払うと、いっそ起き上がりかけた黒羽ごと殴り飛ばした。
「これでいいの?」
「ああ、問題ねぇ」
 黒羽のそばで足を止め、頭上高くハンマーを回転させるメリンダ。
「こんなに可愛らしい妖精さんを潰さないといけないだなんて……心が痛むわ」
 反撃しようと群がる妖精たちを、メリンダはさらなるハンマースイングで薙ぎ払っていく。ぷちぷちと顔の縫合が切れはじめた。
 一方で、サイズはカルマブラッドと『Sチェーン【ブルー】』を駆使して妖精たちに魔力撃を連射していた。
 妖精を切り払い、時に自らも攻撃を受けていく。
 きわめて大ぶりな攻撃を連発し、自らの身をさらしていくようにも見えた。
「飛び込みすぎッスよ」
 クローネは手袋越しに自らの影に手招きをすると、わき上がる疫病の呪いがクローネの周囲へと螺旋状にわき上がっていく。
 妖精たちが振り返り、洞のような目を見開いた。
 後ろ向きに走りながらクローネは『狂心象』の呪術を発動。螺旋状にわき上がっていた呪いが蛇のように妖精たちへと発射され、ある一体を中心として疫病の呪いを爆発させた。
「……悪いけどお菓子は持ち合わせておりませんし、悪戯に付き合わされるつもりもありません……。
 ファントムナイトはもう終わりの時期なんッスよ……」
 呪いの爆発に呑まれた妖精たちが、笑いながらぼろぼろと朽ちていく。

 妖精たちは喜びの感情しか持っていないかのようだった。
 怒りや恐怖や、仲間(?)を殺された憎しみや悲しみといったものをまるで感じさせず、ただただ楽しそうに笑ってこちらへと群がってくる。
「何がそんなに楽しいのかしら」
 ゼファーは『こっちへいらっしゃい』と手招きをして、妖精たちを誘因していく。
 まるでお菓子につられて集まる子供たちのように、妖精たちは楽しく笑ってゼファーへと殺到した。
 だが妖精たちが食べるのはチョコレートでもクッキーでもない。ゼファーの腕や首や足にかじりついて、彼女から心の力を吸い上げていった。
 ダメージこそ軽微なものの、まるっきり吸い上げられたらもう無防備だ。
 攻撃の性質上、APが枯渇した対象へのMアタックは防御が意味をなさない。
 だからこそ、素早く振り払わねばならないのだ。
「ゼファーちゃん、そのまま……」
 よろめきそうになるゼファーを片腕で抱くように支えると、アーリアは耳元で囁いた。
 そして紫色のカクテルボトルを肩越しに突きだして翳すと、とくとくと地面に向けてこぼし始める。
 泥沼に落ちたカクテルが淀んだ色に広がり、月の光があふれ出していく。
 集まった妖精たちは笑いながら灰となり、そうでない個体もゼファーへ噛みつく動きを失敗して泥沼へと落ちていく。
 膝までつかるほどの泥に、次々と妖精が落ちては沈んでいった。
「そういうのは得意デスぅ」
 味方から離れ、泥がはねないようにとスカートをつまみあげる美弥妃。
 黒羽たちに群がって動きを封殺しにかかる妖精を一部おびき寄せると、集まった妖精に杖を突きつけた。
 小銃でも構えるように水平にした杖の先端から魔術弾が発射され、美弥妃はそれを右へ左へ動かしながら迫る妖精たちを迎撃し始めた。
 そんな彼女の背後へと回り込む妖精たち。
 がら空きになった背中に迫り首筋に牙をたてようとした――そのとき。
「お二人とも、お願いします!」
 夕が泥を跳ね上げながらスライドイン。呼び出した精霊たちが飛び回り、妖精を次々にたたき落としていく。
「頼もしいデスぅ」
「けど、あんまり連発はできませんね。すぐに息切れしそうですから……」
 基本的に隙の無い夕のスタイルも、Mアタック系の敵には弱かった。高コストな広域破壊や回復能力を強い充填能力で支えるというスタイルだが、APを直接吸われればそのサイクルが壊れてしまうのだ。
「いくらか無傷でとらえたいですけど……厄介ですね、この子たち!」
 更に言えば、妖精たちはこちらを取り囲んでのマークや足止攻撃によって移動を阻害し、順番に群がることによってAPを吸い上げ尽くすという戦闘方法をとっていた。
 そのため『味方から離れている妖精』が殆どおらず、範囲攻撃が必然的に味方を巻き込むことになった。

 APを吸い上げるタイプの攻撃が深刻化するまでそう時間はかからなかった。
 であると同時に、味方を囮にした爆撃を要する事態に発展していく。
「これで打ち止めデスぅ!」
 美弥妃は周囲に不運をばらまくと、集まってきた妖精を杖で思い切り殴りつけた。
 杖を覆った魔力の螺旋が妖精たちを焼き切っていく。
「下がれ!」
 彼女を庇っていた黒羽が不倒の闘気を燃え上がらせ、妖精たちの攻撃を引き受けていく。
 味方の攻撃の流れ弾で不運状態をうけてはいるものの、それでも非常に高い確率で踏ん張ることができる。
 猛攻を受けながら、黒羽は妖精たちのことを考えた。
(妖精の攻撃……これは心を直接削って来る技だよな。
 仮に、チペルの友達がコイツらだとして……心の隙を突かれて、誘惑されて、喰われて……? いや、ただ喰われてるだけじゃねぇのか?
 姿形を写し……いや、奪い取られたってことなのか?)
 群がる妖精を排除すべく、サイズが更に襲いかかる。
 厳密な話をすると、切り裂いた際の味覚からこれが妖精であるか妖精に似たものであるかを判別することはできなかった。より正確に述べるならサイズがもといた世界における妖精とこの世界の妖精が同一定義のもとに成り立っていないことを主な理由として、その他複雑な理由が絡み合って判別ができずにいた。強いていうなら、サイズの満足する味でなかったことから、サイズの定義上は妖精ではないことになる。
「ここまで数が多いと、手が足りなくなるのね」
 メリンダはハンマーを縦向きに回転させると、泥を跳ね上げながら妖精たちを次々に跳ね飛ばしていった。
「それでも、もうじき終わるわ……」
 自らの身体ごと派手に回転し、周囲の妖精を(カバーしていた黒羽ごと)吹き飛ばしていく。
「……少しキツいけど、我慢してくださいッス……」
 クローネは翳した手を開き、泥の地面めがけて思い切り叩き付けた。
 腐敗と劣化の呪いが大地に打ち込まれ、地中を通じて吹き上がる。
 敵を引きつけていた美弥妃(ないしはそれを庇っていた黒羽)を中心として、呪いの力が広がり、群がっていた妖精たちが腐ってどろどろに落ちていく。
 沼に落ちて溶けるようにくずれる妖精たち。
 呪いの力をかわし、なおも向かってくる妖精。
 笑いながら大きく口をあけたその瞬間。ゼファーの槍が妖精を貫いていった。
 数羽の妖精を一度に打ち貫き、振り回すことで払いのける。
「アーリア、夕」
「終わらせましょ」
 魔力こそつきたが、アーリアは自らに纏った腐食結界を直接使って妖精たちを攻撃した。
 わき上がるいばらの呪いが妖精たちを絡みとり、肉体を腐り落としていく。
 いばらをかわした妖精が飛びかかり、魔力のつきたアーリアから生命力を急速に吸い上げていく。
 これ以上はもつまい。アーリアは自らの状態と勝利への道筋を計算し、夕に向けて『どうぞ』と、自らの胸を指で突くジェスチャーをした。
 夕のエネルギーは枯渇寸前だが、フィーネリアからの祝福でエネルギーを急速に回復。異界から滅びの光を直接呼び出し、妖精たちを死滅させた。
 自分に勢いをつけるために拳を突き出した姿勢をとっていた夕は、笑い声が消えたことに気づいてばしゃんと泥に膝を突いた。
「だ……だいぶしんどかった、です」

●明日の雨が降ったら、いっしょに死んであげる
 妖精を倒せばこの事件はおしまい、というわけではない。
 もともとイレギュラーズたちが受けていた依頼は行方不明事件の調査である。
 ゼファーはあらためて湖まわりの痕跡調査にあたっていた。
 といっても、湖は既に涸れて、膝がつかるほどの泥しか残っていない。
 動物が水を飲みにやってくることはおろか、なぜだか虫がたかることすらもない場所である。
 歩行生物が移動した痕跡を探すことは容易であった。
「私たちの足跡以外には……子供の足跡がいくつか残ってたわ。多分、全部チペルのものでしょうね。他全員が空を飛んでいるんでもない限りは、ずっと一人でここに通っていたんだと思うわ」
「私は泥からかろうじてこれを……」
 夕のあわせた両手の上には、妖精の死体らしきものが乗っていた。
 泥にまみれてはいるが、チペルにそっくりであるように見える。
「私たちが聞き込みをしたときに知った、『わるい妖精の湖』って話があったじゃないですか」
「ただずっと前に悪い妖精がいて、それが教会に倒されたって話しか残ってなかった……っていう、あれよね。みんな話が漠然としてて、記録や証拠も残ってないって」
「その辺りちょっと気になって、精霊さんたちにも尋ねてみたんですけど、このあたりは精霊がすごく少なくて……いたとしても下位精霊程度なんです」
 下位精霊の知能は植物程度といわれ、ろくに会話が成り立たない場合もしばしばだ。
「死体といえば、これも気になりマスねぇ」
 美弥妃は同じく泥をさらって見つけ出した『チペルの抜け殻』を翳して見せた。
「人の皮っていうより、植物の葉っぱとか木の皮みたいな感じデスぅ。人体から別のものに完全に変質したか、そもそも別のものか……って所デスねぇ」
「俺もアナザーアナライズをかけてみたがよくわからねぇ。わかるのは、妖精由来のモンだってことくらいだ」
 黒羽も頬についた泥をぬぐって息をついた。
「ここまで分からないのは、逆に理由がありそうねぇ……」
 周囲で探索をしていたアーリアは、湖跡地に霊魂が『まったく無い』ことに、違和感をおぼえていた。
 もしつい最近にチペルがここで死んでしまったなら、霊魂くらいは残るはずだろうに……。

(なんかのヤバイ物や人が妖精になる呪いのアイテムがあるなら排除する必要があるな…俺なら既に妖精だから妖精になることはないしそういった物の排除なら適正があるはずだ。でも情報が無さすぎて全部妄想なんだよな……)
 森の上を飛行して探索をするサイズ。
 その一方で、クローネは湖跡地から離れた場所を動物疎通やファミリアーを駆使して探索していた。
 湖跡地には動物どころか虫すらいなかったためである。
 そんな中、クローネがこんな風に言った。
「リスさんが何か見つけたみたいッス……行ってみましょう」

「…………そう、こんな所にいたの」
 メリンダは、木々の間からまあるく光のあたる草の上にかがんだ。
 草地には沢山の花。
 花の中央には、見たことの無い妖精がひとり、死んでいた。
 妖精に羽根はなく、何者かに持ち去られたように見える。
 メリンダたちはそれ以上手をつけないようにして、その場を立ち去った。





 後日談、もとい。このお話のおわり。
 メリンダたちが村に戻りことの次第を説明すると、依頼人はもちろん村人たちはみな困惑しきっていた。
 なぜなら、妖精が住んでいたとは聞いていたが誰もその姿を見たことが無く、誰も立ち入らなかったために存在自体を疑ってすらいたためである。
 これ以降森への道は柵やロープで完全に封鎖され、立ち入りを厳密に禁止した。
 今もあの湖は空白のまま。
 名も知らぬ妖精の死体は花の上に横たわったままなのだろうか。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――おしまい

PAGETOP