PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Destruction or Plunder?

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●Trick or Treat? と言うレベルではない
「Trick or Treat?」
 無辜なる混沌のハロウィンにあたるファントムナイト。本来は仮装した子供達が近所にお菓子をもらいに行く時の決まり文句であるが、ここでこの言葉を放った者はそんな可愛らしい者達ではなかった。
 幻想南部、ルアト領アルの街。この夜の収穫祭のために集められた食糧を狙い、傭兵くずれの山賊二十名ほどが街を襲撃した。山賊達は抵抗する者を火炎放射器で焼き払い、見せしめにいくつかの建物をレールガンで破壊した。そうして街の住人達に突きつけたのが、この言葉というわけである。
 山賊達の武器に怯えきった街の代表は、集まった食糧の供出――それは略奪と変わらないレベルであったが――を約束。アルの街を掌握した山賊達は、住民達の恐怖を余所に宴会を始め、好き放題に暴れているのだった。
「おう、領主や他の街に助けを求めようなんて、妙なことを考えるんじゃねえぞ?」
「まぁ、そんな奴がいたら、こいつで丸焼きにするだけだがな、がははは!」
 助けを求めることも不可能となり、アルの街の住人達は絶望に沈んだ。

 その様子を、街の外から眺める小柄な影が二十ほど。大きなカボチャの頭に魔法使いのようなとんがり帽子とローブを纏っている。彼らはジャック・O・ランタンと言う妖精で、毎年ファントムナイトにはアルの街にお菓子をもらいに来ていたのだ。
「アルの街があんなことになっちゃったよ、どうしよう?」
「……これじゃ、今年はお菓子がもらえないね」
「来年も、もらえなくなるかもしれないよ」
「アルの人達、可哀想だよね。何とかしたいね」
「でも、火はまだいいけど、建物を壊した大砲は怖いよね」
「どうしよう? どうしよう?」
「……そうだ! ローレットにお願いしに行かない? 強い人達がいるって言うよ!」
「いいね! きっと何とかしてくれるよね!」
 ジャック・O・ランタン達は口々にざわめき合うが、やがてローレットに解決を依頼すると言うことで一致した。

●ジャック・O・ランタン達の懇願
「……と。言うわけなのです」
 ジャック・O・ランタン達と共に現われた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が、依頼に至った状況をイレギュラーズ達に伝えた。
「依頼の内容なのですが、この山賊達の全員を倒して、彼らが持っている武器を残らず破壊して欲しいのです」
 ただし、山賊達の周囲にはお酌をさせられたり、食事を運ばされたりしている街の住民が二十人ほどいる。ジャック・O・ランタン達は、彼らが戦闘の巻き添えになって命を落とすことのないようにして欲しいと言う。
「難しいかもしれないけど……何とかならない?」
「お願いだよ。あの街の人達、みんないい人達なんだ」
「上手く、助けてあげてよ……」
 カボチャをくりぬいたような目と口で器用にも縋り付くような表情を見せ、次々とイレギュラーズ達に訴えかけるジャック・O・ランタン達。イレギュラーズ達はその懇願を快諾すると、早速作戦についての打ち合わせを始めるのだった。

GMコメント

 こんにちは。緑城雄山です。
 今回は、こんな形になりましたがハロウィンネタのシナリオをお送りします。

●成功条件
・山賊20名の退治(生死不問)

※山賊達の武器については、山賊達が全員戦闘不能になれば、特にプレイングに明記しなくても自動的に破壊したものとして扱います。

●失敗条件
 以下のいずれかの状況が発生する。
・アルの街の住人3人以上の死亡
・ジャック・O・ランタン1人以上の死亡

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●アルの街、中央広場付近
 今回の戦場です。中央広場は直径50mの円形の広場で、下は石畳です。
 時間は夜ですが、月明かりに加えて広場の真ん中で焚き火が焚かれているので、戦闘は問題なく行えます。
 山賊達は焚き火の周囲で、それぞれ好き勝手に飲んだり食べたりしています。

●山賊達 ✕20
 アルの街を襲った山賊達です。傭兵崩れであり、実力はそれなりにあります。
 入手経路は不明ですが傭兵時代に雇い主から支給された練達製の火炎放射器やレールガンで武装しており、火力が非常に高くなっています。
 宴会中であるため、戦闘の最初のターンは武器を装備し戦闘態勢を整えることに費やされます。また、焚き火の近くにこそ集まっていますが、初期位置はバラバラとなります。

・試作型火炎放射器装備 ✕16
 至近~近距離から火炎放射を浴びせてきます。
  火炎放射(通常攻撃) 物近単 【火炎】【業炎】【炎獄】

・試作型レールガン装備 ✕4
 距離を取ってレールガンを撃ってきます。
 砲身が大きく取り回しにくいため、命中、回避、反応は火炎放射器装備の山賊達より一段劣ります。その分、一撃の威力は大きくなっています。
  レールガン(通常攻撃) 物超単 【弱点】

●試作型火炎放射器、試作型レールガン
 山賊達が傭兵だった時に支給された装備です。彼らはこれを持ち逃げし、山賊となりました。
 この武器については戦闘後に調査を行ってもこれと言った情報が出てくることはありません。

●街の住人 ✕20
 山賊達に酌をするのに若い女性が10名、山賊達に料理を作り運ぶのに若い男性が10名、使われています。
 中央広場からの避難を促した場合、避難が完了するのは次ターンの最後となります。
 山賊達に攻撃された場合、イレギュラーズ達の範囲攻撃に巻き込まれた場合、いずれにせよその攻撃が【無】か【不殺】でない限り、高い確率で死亡します。

●ジャック・O・ランタン ✕20
 今回の依頼人達です。毎年アルの街にお菓子をもらいに来ていました。
 出来る限りのことはしたいと考えているため、イレギュラーズ達から要請があれば従ってくれます。しかし、何らかの理由で戦場で活動させる場合は戦闘に巻き込まれる危険を覚悟しなければなりません。
 特にイレギュラーズ達からの要請が無ければ、戦場に近い家の住人を遠くへと避難させて回ります。この場合、ジャック・O・ランタン達から死者が出ることはありません。
 一応、火炎での攻撃が出来ます。しかしあくまで悪戯レベルであり、傭兵達に効果的にダメージを与えるのは困難でしょう。
 一方、火に対しては極めて高い耐性があり、火炎放射器による攻撃は攻撃そのものもBSも無効化します。しかし物理面での防御力は低く、レールガンが命中しようものならほぼ確実に即死します。

●その他の街の住人
 屋内に閉じこもっており、基本的に戦闘に巻き込まれることはありません。
 戦場に近い家の住人は(イレギュラーズ達の要請が無ければ)ジャック・O・ランタン達が退避させて回るため、流れ弾などで巻き添えになることは基本的にはありません。
 なお、火炎放射器で焼き払われた住人達は、全身火傷の重傷ではありますが生きており、医者の診療所に収容されています。

●戦闘後について
 山賊達が退治されれば、アルの街では改めて収穫祭が行われます。
 依頼に成功していれば、街の住民に歓迎されつつ収穫祭を楽しむことが出来るでしょう。料理を楽しむ、酒を飲む、街の住人とコミュニケーションを取ったりジャック・O・ランタン達と戯れたり、その他思いつく限り好きに楽しんで頂ければと思います。なお、未成年の飲酒はNGです。
 成否問わず街の住人やジャック・O・ランタン達に死者が出た場合は、その人数に応じて雰囲気が暗くなることでしょう。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • Destruction or Plunder?完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年11月10日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
六車・焔珠(p3p002320)
祈祷鬼姫
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)
わるいおおかみさん
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女
ゼファー(p3p007625)
祝福の風

リプレイ

●ファミリアーの偵察
 山賊達が我が物顔で振る舞う、アルの街の中央広場。その周囲、建物の影に隠れつつ二手に分かれて山賊達を観察する犬とネズミがいた。『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101) と『祈祷鬼姫』六車・焔珠(p3p002320)が召喚したファミリアーである。宴に盛り上がる山賊達は、その姿には全く気付かない。
「ふむ……あまり人のことをとやかく言えるほどの者ではないが、無粋だね」
「そうね。随分と無粋な輩が出てきたものね。楽しいお祭りに血と恐怖は要らないわ。さっくり片付けて、笑顔の花を咲かせましょう!」
 ゼフィラのつぶやきに、焔珠が応じる。
「そうだね。しかし、どうしたものかな……」
 ゼフィラとしても、焔珠の言葉には異はない。だが、中央広場には二十人ばかりの村人がいる。彼らへの対処は、考えなくてはならなかった。
 ともあれ、二人はファミリアーの視覚を通じて得た偵察の結果を、他のメンバー達と共有していく。
「……バレずに踏み込むのは、無理か」
「そうね。焚き火と月明かりで、けっこう明るいわ。広場に入ったら、すぐに見つかってしまうわね」
「……そうなると、一気に攻めるしかないかしらね」
「だが、出来れば男衆が調理場に戻ってきている時を選びたいね」
 『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)の問いに、焔珠が答える。それを受けて、ゼファー(p3p007625)と『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)が口を開いた。
 ――結局イレギュラーズ達は、男達が山賊の側を離れているタイミングを狙い、一斉に中央広場に突入することにした。

●宴会への急襲!
 口火を切ったのは、ゼフィラだった。女性に酌をさせている最中の山賊に猛ダッシュで接近すると、ショウ・ザ・インパクトで吹き飛ばす。
「ぐえええっ!?」
「……何だ!? くそっ、どんちゃん騒ぎは中断だ! お前ら、とっとと自分の武器を装備しろ!」
 突然仲間が吹き飛ばされた事に、山賊達は困惑する。それでも、傭兵崩れ故か宴会を中止して戦闘に移行しようという判断は速かった。
「私達はローレットよ! 貴女達を助けに来たわ! 広場の外に避難して!」
 『木漏れ日妖精』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)が、酌をさせられている女性達に呼びかけ、広場から退避するよう促す。その声を聞いた女性達の表情に、ぱあっと希望が拡がっていった。
「トリックオアトリート。いや、貴様らには死か罰か選んでもらわなければな?」
 ゼフィラのショウ・ザ・インパクトで吹き飛ばされた山賊を、リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)が広場近くの建物の上から魔砲で狙い撃ち、満身創痍にまで追い込んだ。
「折角のお祭りシーズンなのにねぇ……無粋な輩がいたもんだわ? ええ、ええ。お仕置きはちょっとキツ目にしときましょうねぇ」
 ゼファーが、別の女性に酌をさせていた山賊を狙い、長槍『Remembrance』で貫く。その山賊に、焔珠が魔力撃を叩き込んでダメージを重ねる。
「なにがトリックオアトリートだコラァ! 最悪なゲス野郎共、叩きのめしてやる!」
 さらにアランが、大剣『Code:Demon』によるヘイトレッド・トランプルの一撃で叩き斬る。三人の攻撃を集中して受けた山賊は、戦闘不能に陥った。
「……誰かを傷つけておきながら、何事もなく笑ってられるなんて思ってないよね! きっちり懲らしめてあげる!」
 山賊達が各々の武器を装備したタイミングで、焚き火のすぐ側まで駆け寄った『さいわいの魔法』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)が、誘争の赤花を発動する。赤い花を模した魔力塊が破裂すると、拡散した魔力に晒された山賊達の半数が、アレクシアに対して敵意を向けた。
「さあ、『良くないもの』がやってきたぞ。表紙を開けば、最期までだ」
「ぐうっ!?」
 ダカタールはアレクシアの誘争の赤花に耐えた者を狙い、蛙の強迫で胸に鋭い痛みを与えて敵意を引き付ける。
 イレギュラーズ達の初撃の間に、街の女性達は立ち上がって、避難を始めようとしていた。

●女性達を逃がせ
 女性達が広場の外に退避し終えるには、もう少し時間が必要だった。イレギュラーズ達にとって、それまでの時間が最初の正念場と言えた。
「……キミ達の運命を、闇の月で照らそう」
 ゼフィラは広場の中央に駆け寄って、山賊達のほとんどをダークムーンの射程に収める。そして、彼らの運命を暗く染め上げた。
「小賢しいガキが! 焼き殺してやる!」
「きゃあっ!」
 アレクシアの誘争の赤花に耐えた山賊の一人が、オデットを耐久力が低いと判断して狙い、炎で包む。さらに別の山賊がトドメとばかりにレールガンでオデットを撃ったが、これは近すぎる故に外れた。
「……もっと、もっと引き付けないと」
 引き付けるのが半数では足りないとばかりに、アレクシアは再度、誘争の赤花を使用する。赤い花から拡がった魔力は山賊達を包み込み、ほぼ全ての山賊に自身への敵意を抱かせた。
 二度の誘争の赤花に耐えた山賊達のうち、一人にはメーヴィンが緋矢で、もう一人にはダカタールが蛙の強迫でそれぞれ自身への敵意を抱かせる。残る一人は先のメーヴィンの魔砲を受けており、焔珠の魔力撃を受けて倒れた。
 これで、女性達が人質に取られたり、山賊に攻撃されたりするリスクは消失した。あとは女性達が上手く逃げるだけである。

 山賊達の大半に敵意を抱かせたアレクシアだったが、それは同時に山賊達に集中攻撃されると言うことを意味していた。闇の月の影響で何人かの攻撃が外れたとは言え、ある程度の被弾は不可避である。二種の結界を駆使して守りを固めて直撃こそ避けているものの、アレクシアの耐久力はじわりじわりと削り取られていた。
 メーヴィンに敵意を抱いた山賊は、建物をよじ登りメーヴィンに迫ろうとする。ダカタールに敵意を抱いた山賊はレールガンの砲身で殴りかかる。だが、ダカタールはこれを難なく回避した。
「……バカに塗る薬は無し。ええ、ええ! 容赦はしないわ!」
 メーヴィンに迫ろうとする山賊の背中を、ゼファーが槍で貫く。隙だらけの背中を突かれた山賊は口から血を吐くと、血に伏して動かなくなった。
「ファントムナイトってのは人が楽しむ祭りだ。人を焼いたり建物をぶっ壊す祭りじゃねェ!!!」
 咆哮をあげつつ、アランは偽製・ヘリアンサスの奇蹟を発動。浄化の炎を纏った大剣でダカタールに迫ったレールガンの山賊を連続攻撃し、気絶させる。その勢いのままにアレクシアに迫るレールガンの山賊に迫り、再度偽製・ヘリアンサスの奇蹟で浄化の炎を纏った大剣を直撃させて昏倒に追い込んだ。
「今なら、安全に逃げられるわ。だから、急いで逃げて!」
 オデットが、自身へのダメージはお構いなしに、女性達に安全なうちに逃げるように促す。その声に突き動かされるように、女性達は散り散りになって広場の外へと逃れていった。

●倒れゆく山賊達
 女性達を逃がしたとは言え、イレギュラーズ達はまだ気を抜くわけには行かなかった。山賊達は未だに数でイレギュラーズ達を圧倒している上にその火力は高い。戦いの行方は、アレクシアが敵を引き付けて攻撃に耐えきれるうちに、山賊達を全滅出来るかにかかっていた。
「これで、まとめて殲滅じゃ!」
 それを大きく左右したのは、メーヴィンの渾身のプラチナムインベルタ。鋼の驟雨の直撃によって、アレクシアの周囲に集った山賊達は八人が一気に戦闘不能に追い込まれた。
 アレクシアとオデットは、それぞれ自身のダメージを癒やす。オデットはハイ・ヒールを連続使用してほぼ全快に至ったが、アレクシアにはまだダメージが根深く残った。
 プラチナムインベルタに重ねるように、ゼフィラがダークムーンで追い打ちをかける。さらに山賊達の二人が、地に伏した。
「冷静に戻る前に、倒れてもらうわよ」
 焔珠は魔砲で、残るレールガンの山賊を仕留める。レールガンの山賊が我に返れば砲身による殴打ではなく高威力の音速の弾丸が攻撃が飛んでくるため、そうなる前に潰しておかねばならなかった。
「そんな機械の炎なんかより、"本物"の炎を見せてやるよ!!」
 誘争の赤花の影響から脱してオデットに攻撃を仕掛けた山賊を、アランが偽製・ヘリアンサスの奇蹟で倒す。
 さらにまた一人が、ゼファーのディストラクションとダカタールの魔哭剣の同時攻撃を受けて、そしてまた別の一人が、メーヴィンのプラチナムインベルタ受けて戦闘不能となる。

「畜生がああっ!」
「くっそおおおおっ!」
「倒れろ! 倒れろよおっ!」
 残り三人にまで頭数を減らされた山賊達は、半狂乱になってアレクシアに炎を浴びせかける。その火勢は激しいものの、所詮は「最後の足掻き」であった。累積しているダメージを合わせても、アレクシアを倒すには僅かに及ばない。
「何でだ! 何で倒れないんだああ!」
「ちょっとやそっとで倒れるつもりはないよ! 私が長く耐えた分、みんなの傷も減るんだから……」
 悲鳴を上げるように叫ぶ山賊に、意識を手放しそうになりながらアレクシアが答えた。
「あと少しだ。早く、終わらせよう」
「そうね。これ以上はアレクシアが保たないわ」
 ゼフィラが、何故倒れないのかと悲鳴交じりに問うた山賊を式符より生み出した毒蛇に襲わせる。それに気を取られた隙を衝いて、ゼファーがディストラクションで仕留めた。
「待ってて、アレクシア!」
 別の山賊に、焔珠が魔砲を浴びせる。直撃を受けた山賊は、仰向けに倒れて動かなくなった。
「練達の品を用いての狼藉も、これまでじゃ」
「君達という物語も、これで終わりだ」
 最後の一人も、メーヴィンの魔砲とダカタールの魔哭剣を立て続けに食らって、ドサリと地に伏した。
「終わったぜ。お疲れサン」
「……大丈夫、アレクシア?」
 朦朧としてその場に頽れかけたアレクシアを、アランが背中から支える。オデットは心配そうにしながらも、アレクシアをハイ・ヒールで癒やした。

●一日遅れのファントムナイト
 山賊が退治されたアルの街では、一日遅れで収穫祭が行われることになった。事件解決の立役者となったイレギュラーズ達にもぜひ収穫祭に参加して欲しいと、代表をはじめとする街の住人からの懇願があった。それを断る道理はないと言うことで、イレギュラーズ達は収穫祭までアルの街に滞在することにした。
「おい! 安静にしてろ!」
 自身が重傷を負い安静にしている必要があるにもかかわらず、山賊によって全身火傷を負った街の住人を調和の壮花で癒やそうとするアレクシアを、アランが制止する。
「怪我をさせられた人達が、少しでも笑顔で収穫祭を楽しめるようになれば、私は……」
「――それなら仕方ねェ、手伝ってやるよ」
 それに応じて返ってきたアレクシアの言葉に、アランは言葉に詰まり頭をガリガリと掻いたが、肩を貸すようにしてアレクシアの身体を支える。「勇者」として「人を救う」ことを使命としてきたアランには、「重傷の身を押しても人を救おうとする」アレクシアの心情が――止めても止まらない事も含め――理解出来たからだ。
 アレクシアの調和の壮花によって癒やされた街の住人達は、すぐに立ち上がって動くまでにこそ回復しなかったものの、火傷の跡も消えベッドの上で料理を楽しめるには至った。もう少し安静にしていれば、以前と変わらぬ生活を送れるようになるだろう。

「ねぇ。その武器、どうするの?」
「もしかして、持って帰って使うの?」
 戦闘終了後、すかさず火炎放射器やレールガンを回収したものの破壊する様子がないメーヴィンに対し、ジャック・O・ランタン達が怪訝そうにする。
「まさか。儂とて、このような物を悪用されるのは業腹じゃ。故に、ここではなく一度ローレットに回収してもらってから完全に叩き壊すつもりでな」
「そうかぁー、よかったー」
「しっかり、お願いするね?」
 メーヴィンの言葉に、ジャック・O・ランタン達はカボチャをくりぬいたような目と口で器用にも心底安堵したような表情を作った。

「おお、この度は本当にありがとうございました」
「うわぁー、トリック・オア・トリート?」
「山賊達を退治して下さって……本当に、助かりました」
「わーい、トリック・オア・トリート?」
 ダカタールとゼファーが収穫祭に顔を出せば、街を救ったヒーロー達のお出ましとあって、大人も子供もわっと寄ってくる。口々に礼を述べる大人達と、決まり文句でお菓子を強請ろうとする子供達とで、非常にカオスな状況になった。
「肉とワインはあるかい? ああ、あんまり狼に近づくものじゃあない。だがまあ、ファントムナイトだからね。しっかりと決まり文句を言うなら、お菓子をやろう」
 そんな状況が少し落ち着いたところで大人達には肉料理と酒を頼みつつ、寄ってくる子供達に自分で食べようとする意地悪を交えながら、お菓子を渡していくダカタール。
「私は……そうね。パンとベリーのジャム、それにブドウの汁のジュースを頂こうかしら」
 ゼファーはその様子を見守りつつ、ダカタールのリクエストに合わせて注文を出した。
「トリック・オア・トリート! ……せっかくだし、お菓子を貰ってあげてもいいわよ? それもとびっきり甘いのをたーっくさんね!」
 そんな二人の前に、ジャック・O・ランタン達と一緒にお菓子を強請って回っているオデットが現われた。
「ああ、功労賞の君達にも渡さねばならんね」
「はい、ご褒美よ。たーっくさん、ね?」
 ダカタールとゼファーはジャック・O・ランタン達と一緒になっているオデットに軽く吹き出しつつ、次々とお菓子を渡していく。
「わぁい、ありがとうー」
「ありがとう。嬉しいなー」
 ジャック・O・ランタン達は嬉しそうに、二人の周りで舞い始めた。オデットもその中に混ざり、街の住人達はその舞を楽しそうに眺めた。

「ほら、こう言うのはどうかしら?」
「わー、すごーい!」
「すごいすごーい。どうやってるのー?」
 焔珠は鬼火を三つほど出して、ジャック・O・ランタン達と戯れている。焔珠の意のままに不規則に動き回る炎は、ジャック・O・ランタン達だけではなく街の子供達も魅了した。子供達の中にはわんぱくな者がいて鬼火を捕まえようとするが、焔珠はあと少しというところでひらりと鬼火を捕まえようとする手からすり抜けさせる。それを見て、子供達はまたわっと盛り上がった。
 だが、鬼火の一つが突然現われた影によってパシッと捕まってしまう。
「とりっくおあとりーと!」
 ジャック・O・ランタン……ではなく、頭に穴を空けたカボチャを被ってジャック・O・ランタンの仮装をした人物が、鬼火を返して欲しければお菓子をよこせと焔珠を強請る。だが、首から下に見える金髪と機械の両腕から、焔珠にはそれが誰なのかはっきりわかった。
「バレバレよ、ゼフィラ」
「残念だな。バレちゃったか」
「金髪で義肢なんて、そうそういないじゃない」
「確かにそうだね。ほら、この鬼火は返すからお菓子をくれないか?」
 焔珠の指摘を気にしていない風のゼフィラ。そんな二人のやりとりに、ジャック・O・ランタンや子供達の間からどっと笑いが沸き起こった。

 一日遅れで開かれた年に一度の祭りは例年以上に盛り上がり、空が白み始めるまで続いた。
「今回は、本当にありがとうございました。よければ、また遊びに来て下され。皆様ならば、いつでも歓迎しますぞ」
 その昼過ぎ、ローレットに帰るイレギュラーズ達を街の代表始め住人達が見送りに来た。彼らの感謝の声を背に受けて、イレギュラーズ達は帰途につくのだった。

成否

成功

MVP

アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女

状態異常

なし

あとがき

 シナリオへのご参加、どうもありがとうございました。
 アルの街の住民とジャック・O・ランタン達は、皆様のおかげで例年以上に楽しいファントムナイトを過ごすことが出来たようです。皆様も楽しんで頂けていましたら、幸いです。
 MVPは山賊のほぼ全てを引き付けたアレクシアさんにお送りします。その上でギリギリながらも戦闘不能に陥らずに耐えきったところまで含めて、お見事でした。

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