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シナリオ詳細

Renchin of the Dead
Renchin of the Dead

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ほんとうにあたためますか?
「……えっ?」
 都内某所、オフィス街の一角にある24時間営業のコンビニ『ポーソン』
 時計の針が午後11時を指すこの時間は、残業を終えた会社員も飲みに繰り出した後のようで、人の気配がまるでしない。
 私の勤め先だって、残っていたのは私だけだ。先月も残業時間の超過で、上司に「もっと無駄を省いて効率化しろ」と怒られた。

――じゃあ真っ先にお前を消せば、効率化できると思うよ?

 と喉元まで出かかったブラックジョークを飲み込むしかなく。
 今日もこうして淡々と、締め切り間近の稟議書の整理に追われてクタクタになりながら帰宅前の買い物をしているのだった。
 この時間じゃ家に帰ったって、まともな料理は出来やしない。
 そんな私の唯一の味方は『ポーソン』の《お手軽幕の内弁当》だ。498円と他のコンビニの幕ノ内弁当より少し割高だけど、おかずの種類が多い分、リピートしやすい利点がある。

「お箸は1膳でよろしいでしょうか?」
「はい」
「あたためますか?」
「はい」

 ありきたりな日常。くりかえされる光景。
 この店員のおじさんも、来るたびお世話になってるよなぁ。
 小銭をぐちゃぐちゃに入れた財布のせいで、会計の時は下を向いているからマトモに顔なんて見ないけど。

「……」

「……?」

 ディスプレイに表示された金額を置いて、そこで私はようやく違和感を覚えた。
 店員のおじさんは、幕ノ内弁当を片手に持ったままレジの前から離れようとしない。

「ほんとうに」
「……えっ?」

「ほんとうにあたためますか?」

 何故だろう。今まで感じた事のない違和感が汗と共に頬を伝う。
 「本当に温めますか」だって? そんな事、今まで聞かれた事もない。いつも買ってる幕ノ内弁当とペットボトルのあったか~いほうじ茶が一本。まとめたらマズそうな類の物は買っていないはずだ。
 人の意見に流されやすい私は、謎の再確認に思わず「あ、やっぱりいいです」と断って会計を済ませてしまった。いったい何なのだろう。疲れた顔をした私に冗談でも言って笑わせるつもりだったとか? だとしたら多分、逆効果だ。気分はあまり良くない。早く家に帰って、お風呂に入って忘れよう。
 ビニール袋を手にぶら下げて、逃げるように『ポーソン』を出る。

――そうして、日常の歯車は狂いはじめた。

 普段は車が行き交う大通りも、白線が複雑に絡む交差点も、何故か人の気配がない。
……いや、正確には違う。「人」の気配はある。あるのだが、なんで。どうして。
「お客様……」
「ァ……温めますかァ……?」
「えっ。な、何ですか貴方たち。ちょっと……」
「今ならスナックも……20円引き、ですよ……ねぇ……」

「「「あたためますか?」」」

 「きゃああああーーーー!?」


「あーぁ、ヤダヤダ。また残業かぁ」
 太陽の下で伸びきった猫のように、『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)は気だるげにつっ伏した。テーブルに頬をつけてぐったりしているこの男の怠惰な姿は今にはじまった事じゃない。
「まぁオジサンは業績悪い方だからね。万年平シーカーは今日もキリキリ働きますよっと。……って訳で、ちょっと頼まれてくれない?」
 嫌だと特異運命座標が声に出す前に、ずいっとその手へ事務室にありそうな青いファイルが押し付けられる。
「これも一応本なんだって。中身はいわゆる『ゾンビパニック』モノなんだけど、どういう訳か感染・拡大してるのはゾンビじゃなくて、アレ。アレだよ。えーっと……コンビニ店員」

 コンビニ店員。

 噛まれたらコンビニ店員になる異世界で、OLさんを救出せよ!

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯!ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 ハロウィンが近づいてきましたね。という訳でB級ホラーなLNです。

●目的
 コンビニチェーン『ポーソン』の《幕ノ内弁当》を持ったOLさんを、
 あたためようと迫るコンビニ店員の魔の手から一定期間、守りきる。

●異世界『Renchin of the Dead(レンチン・オブ・ザ・デッド)』
 現代日本とほぼ変わらない世界です。場所は都内のオフィス街。
 《C-ウィルス》の感染拡大が起こり、感染者に噛まれた人が次々とコンビニ店員になっている終末世界でもあります。

●登場人物
OLさん
 20代半ばくらいの黒いレディーススーツを着たOLさん。某ブラック企業の平社員で、普段は事務職をしています。戦闘力のない典型的な一般人です。食い意地がはっているので、手元の《幕ノ内弁当》は気絶しても手放しません。

《ポーソン》のおじさん
 OLさんに幕ノ内弁当を売った人です。

『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)
 今回皆さんを異世界に送る案内人です。怠け者ですが、お人よしなので頼まれれば出発前の備品調達くらいはしてくれます。異世界では役に立ちません。

●エネミーデータ
 全種共通して、噛んだ対象をコンビニ店員にしていきます。

《ポーソン》のコンビニ店員
 マチの“ぽっ”とステーションがキャッチコピーの大手コンビニチェーン
 ピンクの縦縞の制服で、主力商品のスイーツで誘惑しながら迫ってきます。

《パリピーマート》のコンビニ店員
 ウェーイ系の店員が多い大手コンビニチェーン。流行に敏感な性質を持ちます。
 グリーンの制服が目印。最近、人気アイドルとタイアップキャンペーンを始めたようです。

《ブルストップ》のコンビニ店員
 紺と黄色の制服が目印。これに感染するとなぜか犬耳が生え、嗅覚が鋭くなります。
 個体数は少ないですが、他チェーンのコンビニ店員に紛れての遊撃を得意としているそうです。

《ゴブン・イレブン》のコンビニ店員
 都内で圧倒的な数を誇る大手コンビニチェーン。身体のパーツが分離すると、増殖する能力を持ちます。刃物で立ち向かうのは危険かもしれません。

●その他
 感染しないように対策を用意しておきましょう。無策なまま噛まれるとイレギュラーズもコンビニ店員になってしまいます。
 相談でどのコンビニ店員にどんな対策をするか考えておくといいかもしれません。

 プレイングの最後に「店員可」と書いた人は、対策をしていても感染する可能性があります。

 それでは、よろしくお願いします。

  • Renchin of the Dead完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年10月31日 22時40分
  • 参加人数 4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

キドー(p3p000244)
緑色の隙間風
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈る暴走特急
シラス(p3p004421)
ラド・バウD級闘士
回言 世界(p3p007315)
付与の魔術師

リプレイ

●コンビニで傾く世界
 オフィス街。交差点の中心は阿鼻叫喚の地獄も過ぎ、生存者は一人のみになっていた。無尽蔵に増えた《ゴブン・イレブン》のコンビニ店員。その魔の手がOLに迫る。
「誰か……助けてーーっ!」
――刹那。パァン! と軽快な音を立て、店員の手が弾かれた。『付与の魔術師』回言 世界(p3p007315)の魔弾による牽制だ。
「こっちだ!」
 OLが驚嘆の声を上げる前に『パッション・ビート』シラス(p3p004421)が手を引き走り出す。脇を固めるべく並走する世界。そして、今しがた三人の後ろに滑り込んだのは『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837) だ。
 店員達の虚ろな視線を受けようと、しんがりの彼女は恐れず――むしろ楽しげに口元を緩ませる。
「ふっふっふー、エクソシスト! ちょっぴり怖いけれど、一度やってみたかったのですわよねー」
 危険な香り漂う発言に、世界は渋い顔をした。
「うーむ、終末世界と聞いたんだが何というか……コンビニ店員ってのがどうも調子狂うな。
 アレ、外見がなんか変な店員になってるだけで……遠慮なくぶっ倒しても問題無いんだよな?」
「さぁな。ただ、倒す事よりOLに寄せ付けないことを優先だ」
 偵察から舞い戻った『緑色の隙間風』キドー(p3p000244) も会話に加わるが、2人のやり取りにヴァレーリヤが待ったをかける。
「店員……? 相手はゾンビではなくて雑貨屋さんの店員?
 ……わ……私、聞いてませんわよそんなことーーー!!!」
 叫びと共に振られるメイス。紙吹雪のように景気よく吹っ飛ぶ店員達。
 彼女はエクソシストの自分を妄想するのに夢中なあまり、依頼の詳細を聞き流していたようだ。
 話のまとまらなさに危機感を覚え、先頭からシラスが声をかける。
「とっ、とにかく!
 この世界は実在していて、俺らがシクると誰か死んだりするんだろう?
 あまり笑ってもいられない」
「確かにな。それでキドー、状況は?」
「逃げ込めそうな場所は一か所だけ見つかった。この先にある……コンビニだ」
「コンビニ店員に追われてコンビニに逃げ込みますの!?」
 5人が籠るにほどよい広さで、制圧しやすい平屋の建物。
「さらに言やぁ、駐車場が無駄に広い。もう一軒店舗が立てられそうなぐらいな。見晴らしが良いのも好都合だ」
「決まりだな」
 世界がまきびしを撒き散らし、追っ手との距離を稼いでいく。これなら行けると誰もが思った。
――その咆哮を聞くまでは。
 頭の上に揺れる犬耳、獰猛な目。《ブルストップ》の店員がシラスとOLの前へ躍り出る。
「ソノ弁当……温メ……ワオォーン!」
「くっ!」
 彼女か自分か。2人同時には避けられない。
 噛まれれば感染――奴らと同じ、コンビニ店員と化してしまう。
(それでも……自分のダサい失敗が本になって図書館に残り続けるなんて、絶対に嫌だ!!)
 シラスは目に覚悟を帯びて、OLを抱き寄せた。ざっくりと右腕に切り傷が走り、鮮血がアスファルトの床を叩く。仲間に感染者が出た事はパーティに衝撃を与えたが、追撃を受ける訳にはいかない。真っ先に反撃に転じたのはヴァレーリヤだった。
「皆さん、鼻をつまんで下さいまし!」
 ゼシュテル名産、激臭のするやべぇ缶。中身は魚の発酵食品だが、嗅覚の鋭い《ブルストップ》の店員にとっては殺戮兵器と同等だ。開封された瞬間、もんどりうって混乱し、一同はその隙にコンビニへと逃げ込んだ。

●束の間の休息
 自動ドアをくぐってから一時間。
 店に着いたパーティは、バリケードを作り籠城を始めていた。窓ガラスを叩くコンビニ店員達を眺める世界の表情は複雑そうだ。
「思った以上に《あの罠》が効いてるな……」
 あの罠――すなわちタイムカード。バリケードの手前に設置したソレに気付いた店員は、カードを切って退勤処理をすると、ふらっと姿を消していくのだ。おかげでバリケードを数で押し切られる心配はなくなったのだが。
「コン……ビニ……なんてトンチキな世界だ」
 亡者のように迫ってくるかと思えば、妙なところで人間のルールに縛られている。
「トンチキといえば、貴方もト……。個性的な恰好ですわね。腕のピラピラは何ですの?」
「雑誌を括り付けたんだ。肌を隠しときゃ感染せずに済むだろ。靴は頑丈なゴム底安全靴だし、後は――」
「要はわくわく異世界コーデですのね!」
「べっ、別にわくわくしたりなんかしてねーし! ゾンビものなんか知らねーし!ファンタジー世界の住人だし!」
 慌てて取り繕うキド―が視線を逸らせば、その先では、
「すっげー、何でもあるな!」
 無邪気に品棚を眺めるシラスの姿があった。
「チョコレートも何種類あるんだこれ」
「ああ、うちの近所にもこの店が欲しい!」
 観光気分ではしゃぐ彼を見る特異運命座標達の思いは複雑だ。ヴァレーリヤのギフトで感染症を緩和したものの、完治には至っていない。
「手遅れな場合は諦めるつもりでしたけど、あそこまで健常に見えると縛るのも気後れしますわ」
「ウィルスで理性を失う前に救えるといいんだが」
 好みのお菓子をシラスが抱えて戻ったところで、世界はそのまま話を続ける。
「とりあえず、人心地ついてる間に確かめたい事がある」
 私? と目が合ったOLが視線で問うた。それに対して彼が指で示したのは、OL――の抱えている幕ノ内弁当。
「それを持っている以上、奴らが温めに迫って来るのであれば。
 大事そうに持ってる弁当、さっさと食べてしまえばよかったんじゃないか?」
……確かに!!
 場の誰もがハッとする。OLは生き抜く事に、他3人はこの世界を楽しむ事に……あまりにも夢中になりすぎていた。シラスが彼女の肩をポンと叩く。
「アンタも腹減ってるだろ? 早速食ってみなよ」
「え、えぇ……」
 騒動の連続で食傷気味ではあるものの、試してみる価値はある。OLはコンビニ袋から弁当を出し、割り箸の袋を手にしたところで、動きを止めた。
「この割り箸の紙袋、何か――小さな文字でビッシリ書いてあるわ!」

●救世の幕ノ内
 感染者をコンビニ店員に変えてしまう生物兵器《C-ウィルス》。治療に必要なワクチンは、ウィルスを開発した悪の組織と警察機関で奪い合いになっているのだという。
「だからって信じられるか? ワクチンの見た目を幕ノ内弁当に偽装しました、ってのは」
「その弁当は本物だよ。感染してるから分かる……温めたい」
 熱を加えられたワクチンは効力を失うらしい。シラスの中に根付いたコンビニ店員の本能が、ソレを破壊せよと疼いているのだ。
「OLさんにそれを託した警察官、街から出るための足を見つけて救援に来てくれるんだよね? やっと依頼のゴールが見えテ……キタ……、うぅっ」
「チッ。シラスの症状が悪化してやがる! ヴァレーリヤは何処行きやがった」
「そういえば姿が見えないな」
 不吉な予感を加速させるように、キドーの鼻を甘い香りが掠める。それは生クリームかカスタード……乳製品独特のものだ。誰だ、こんな時に呑気に菓子食ってんのは。甘味が苦手な彼はそう口にしかけたが、匂いの現況――もとい、窓の外の光景に言葉を失った。バリケードの方へふらふらと近づいているのは、話題にしたばかりの人物。
「えっ、なんですのこれ。食べて良いんですの?」
 生クリームたっぷりのふわふわロールケーキ。《ポーソン》店員が差し出したそれは、ギフトを使い消耗したヴァレーリヤにとって抗いがたい誘惑だ。ゆっくりと店員の群れの方に手を伸ばし――。
「あっえっ、ちょっと! 噛まないで下さいまし!私を食べても美味しくなくてよ!?
 誰か、誰かああああ!!!!」
「おいおいおい、待て待て待て待て!」
 気づいた時には後の祭りだ。恐怖に表情を凍らせた面々の前にフラリと戻ったヴァレーリヤは、虚ろな目でメイスを構える。
「イラッシャイ…マセ」
「嘘だよな、ヴァレーリヤ。まさか本当に」
「揚ゲタテ ノ チキン ……イカガデスカシラーー!!」
「うぉあっ! 危ねぇ!!」
 身に纏う司祭服は青と白のストライプに染まり、その姿はまさに《ポーソン》店員。
「俺ももウ、もたナ……ワオォーン!!」
 震えるシラスの頭に犬耳が覗く――生存者は、あと3人。
「……キド―、OLを連れて逃げろ」
「正気か?」
「あくまで今の状況から判断した結果だ。特異運命座標2人を敵にまわして、全員無傷で逃げられないだろ。キド―なら彼女を高所に逃せるし、生存率は高そうだ」
 何より、仲間をあんな姿のままで置いていくのは忍びない。
「――この異世界を、頼んだぜ」
 世界のヴェノムクラウドが室内に広がり、煙幕の役目を果たす。それを契機に、キド―はOLを抱えて勝手口から飛び出した。

 コンビニの屋根の上、1人と1匹の影が落ちる。引っ張り上げられたOLは、登りきると放心気味に座り込んだ。
「ここのゾ……コンビニ店員って、コンビニ店員の真似が通用するタイプのトンチキ具合かね」
「え……ゴブリンさん、あなた何するつもり?」
「ちょっとダメ元で制服とか剥いで仲間のフリして紛れ込めないか試してみようと思ってな」
「やれる訳ないでしょそんなの!?」
「やるんだよ! どんな手使っても生き延びねぇと、アイツら――」
 口論の最中、違和感は訪れた。夜闇の中で光っていた小さな点が、段々と大きくなって近づいて――2人が気づく頃には、それがヘリコプターと分かるほどの距離に迫っていた。
「おーい、大丈夫か!」
 搭乗口から梯子を下ろす人物の声を、OLは知っている。
「《ポーソン》のおじさん!?」

●悪夢の夜もいつかは明ける
 こうして多くの犠牲を経て特異運命座標が守り抜いた希望は、パンデミックを起こした異世界に救いをもたらしたのだった。コンビニ店員の数は全国の店舗に見合った数におさまり、人々は手軽に買い物を楽しめるようになったとか――。

成否

成功

状態異常

なし

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