シナリオ詳細
因縁の果て
オープニング
●それぞれの正義
勇者と魔王の因縁。それはどの世界であっても共通に存在し、犬猿の仲であることは言うまでもない。彼らには別々の正義が存在し、そのために戦っているからだ。
この世界の勇者と魔王もそれぞれがそれぞれの為に戦っていた。
人間の為、魔族の為、自分たちの暮らしやすい世界を目指して……。
――魔王の場合
「はぁ……」
真っ赤な絨毯が敷かれ、広すぎると言っても良い程の空間。中央に置かれた玉座に座った魔王は、憂鬱気にため息を吐く。
場内が少し騒がしいのは、勇者襲撃の知らせが入ったからだ。情報が間違っていなければあと数十分も経てばここまで到達するだろう。
「魔王様、あとは私たちに任せてお逃げください!」
慌てた様子の側近が魔王にそう言うが、魔王は玉座からピクリとも動かない。
「我が逃げたら、ここを誰が守る?」
勇者は強い。この地まで到達している時点で相当の手練れであり、側近や場内の魔族ではたちまちのうちに倒されてしまうだろう。下手すれば魔王でさえ……。
「我一人で良い。お前達は全員、地下に避難しておれ」
「!!……いけません、まさか」
「按ずるな、死ぬつもりはない。さっさとするのだ」
「……」
すべては同胞の犠牲者を一人でも増やさぬため。
魔王は唯一にして、孤高の存在なのだから。
――勇者の場合
「ここまで、本当に長かったな。けど、僕たちの旅はここで終わるんだ」
漆黒に包まれた空。決して朝が来ることのない大陸の上で、武装をした男が呟いた。
見据える先には大きな城がそびえ立ち、異常な程の気配と向き合っている。
「本当、色々あったね……。今思えば、少し懐かしいかも……」
「おいおい、これからが本番だろ。思い出に浸ってる暇なんかねぇぞ」
男に続く一行も、それぞれの想いを口にする。
だが、その想いの裏腹に思うことも沢山あった。
「ねぇ……本当に、終わるんだよね。魔王を、倒せば……」
長年終わることのなかった戦いに終止符を打つべく魔王を倒すということに異存はない。だが、長い旅の果て、一行の心は揺れ動いていたのだ。
「……終わるさ、必ず……」
男は言い聞かせるように答えた。
だが……彼はその言葉に、心から自信を持つことができなかった。
●想いのすれ違いは
「君たちは、勇者伝に出てくる物語は好きかな?」
手に持っていた本を閉じてイレギュラーに問いかけるのは、境界案内人のカストルである。
「僕は……どうだろう。物によって物語は変わるから、何とも言えないかな」
目を閉じながら彼はそう言うと、本題に入った。
「今、そんな世界で勇者と魔王がぶつかろうとしている。でもね……その世界の勇者も魔王も、それぞれの種族が生きるために戦っているんだ。……君たちなら、どっちの味方をする?」
カストルは少し笑うと、話を続ける。
「ふふ、ごめんよ? 意地悪な質問だったね。それでね、その世界の勇者と魔王は、戦うことに迷いを感じているらしい。でも、放っておけばきっと、彼らの最期の戦いが始まってしまう。だから……君たちの手ですれ違いを正してきてほしいんだ」
勇者と魔王の因縁。きっとそれは、新たな歴史を刻むことも可能であろう。
「きっと、勇者が勝つだけがハッピーエンドじゃないよね?」
- 因縁の果て完了
- NM名牡丹雪
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2019年10月23日 22時20分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●玉座への通路~勇者到達十分前
「急げ急げ、早くしないと勇者らくるぞ」
「急かさないでアト先輩! 今急いで用意してますから~!」
玉座の間へと続く広い一本道にて、勇者……ではなく、イレギュラーズである『観光客』アト・サイン(p3p001394)と『青き流星』シエラ・バレスティ(p3p000604)が、慌てた様に騒ぎ立てていた。
手に持っているのは白いペンキが入ったバケツと、それを塗る為の大きなローラー。
既に壁や床はほとんど白く塗られており、『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)が乾かすべく扇風機で風を送っている。
「皆様が一体何をするつもりなのか、わたしには全く理解できませんの。嫌な予感しかしませんの……」
訳がわからないまま手伝わされているノリアは、急かされてあたふたしながらも二人が塗った後を乾かしている。どうやら何をするのか伝わっていないらしい。
そうこうしているうちに、暗くて不気味だった通路は真っ白に塗り替えられてしまった。
白さを引き立たせる明るすぎる照明と、何故か持参されたちゃぶ台も設置され、イレギュラーズたちは配備につく。
「じゃ、打ち合わせ通りに頼むよ」
●破天荒な創造神たち
玉座の間、迫る勇者を待っていた魔王は、先程から通路の方が騒がしいことを感じ取っていた。十中八九勇者が騒いでいるのだろうと思うが、ここに入る前のチェックをしているのだろうか。
だが、例えそうだとしてもうるさすぎる。緊張感の無さすぎる声が扉の向こうから聞こえており、戦うことについて真剣に考えていた魔王のイライラは上昇し続けていた。
騒がしくなってから既に十分経とうとしているが、一向にここまで来ないことに痺れを切らした魔王は、遂にその扉を開く。
「貴様ら、そこで何……を……?!」
だが、扉の先に広がっていた光景は、魔王の想像を絶するものであった。
「このお菓子美味しいね。どこで買ったんだい?」
ちゃぶ台の真ん中に置かれたお菓子をつまんだアトは、妙ちくりんな機械を弄っているシエラに問いかける。
「あ、それ。美味しいですよね! この前ギルドショップで販売してたんですよ。ノリアさんも一ついかがです?」
シエラがそう言うと、ノリアはコクコクと頷きつつ置いてあるお菓子を一つつまむ。
状況を全く飲み込むことができなかった魔王は、扉を一度閉めると再び開き、その状況を再確認する。何度見ても光景は何も変わらない。
「あれ? なんで魔王がこっち来てんの?」
ほどなくして、魔王がこちらを見ていることに気が付いたアトは、魔王に聞こえる声でシエラに問いかける。
すると、機械を弄っていたシエラは慌てたような様子を見せた。
「え!? もしかして相違異空間システムがエラー吐いてたんですか! ぬるぽ!」
「(ガッ)」
「痛い! ただでさえ安月給なのに、叩くことないじゃないですか!」
魔王がイレギュラーズのやり取りをぽかんと眺めていると、今度は反対側の扉が開いて数名の人間が入ってくる。
「この先が魔お……うん?!」
剣や杖を持ち、鎧やローブを身に纏った武装集団。と言っても三人しかいないのだが、恐らく長い旅の末に魔王の手前まで辿り着いた勇者たちなのだろう。
魔王と同じく、予想外の光景に表情を固めてしまっていた。
そんな勇者一行の後ろから、まるでタイミングを見計らったかのように一人のイレギュラーズが姿を見せる。
「ん……みんな揃ってる、おはよ」
呑気に欠伸をしながら、勇者一行を掻き分けて入ってきた『妖精騎士』セティア・レイス(p3p002263)は、周りを見渡すなりようやく状況に気が付きシエラの方を向いた。
「あれ、私達のこと見えてる? 設定大丈夫?」
状況がいまいち理解していない勇者一行と魔王を置き去りにした、イレギュラーズの創造神漫才は続く。
「すみませーんセティア社長、なんかエラーを起こしてたみたいで」
「ん、そういうこと言ったらダメ。ここのことはバレちゃ……あれ、もうバレてる?」
勇者の後ろから入ってきたにもかかわらず、ようやく勇者と魔王の存在に気付いた仕草を見せるセティアはわざとらしくシエラに確認をした。
「あ~……さっきのエラーのおかげでちょっと洗脳が解けちゃってたみたいですね。すみませーん、てへっ♪」
勇者と魔王に聞こえる声でされたシエラの説明に、双陣営が不信感を募らせたことは言うまでもない。彼らがイレギュラーズに向ける視線は、間違いなく鋭いものになっている。
「ここまで見られたら隠しようが無いな。仕方がない、説明しよう。僕は上位存在の部長、君達流の言葉で言うなら神でいいのかな? 社長的にはどう思います?」
「シエラさん今年の忘年会、わたしイタリアンが……」
アトが仕方なさそうに説明を始めセティアにそう問いかけたのだが、セティアはアトの話を全く聞いていない。
しょうがないので、彼はシエラの方に視線を向けなおした。
「分かるように説明をするなら、子供が二匹の虫を同じ籠に入れて戦わせる様なものさ」
「了解! イタリアンっと……。え、アトさん子供のころそんな事してたんですか~? ひどーい!」
話にならない二人の返答にやれやれと言いたそうなアトは、勇者の方に再び顔を向ける。
「ふざけるな……。この世界で起きていた今までのことが全てお前たちの仕業だと……?」
アトの説明を理解した勇者と魔王は既に武器を構え、強い殺気をイレギュラーズたちに向けていた。
だが、堪忍袋が切れる寸前の双方に、アトは冷静なまま話を続ける。
「さあ、僕達の愛しい二匹の怪物たちよ、存分に殺し合うがいい!」
一瞬、音の無い静寂が辺りを包み込む。
目の前の創造神が全てを仕込んだ黒幕である。そんなことを言う人物を、双方は許せるはずがない。
「魔王、ひとまず休戦だ。まずはこいつらを片付けないと、僕の気が収まらない」
勇者とその一行はアトに向けて武器を構えつつ、反対側にいる魔王に呼びかける。
「同意だ、勇者よ。こやつらに一発キツイの喰らわしてくれよう!!」
●神の肉と世界平和
魔王と勇者が結託した全力攻撃。それらは創造神に敵う筈もなく、十秒も要さずに制圧されてしまった。
力を使い果たした勇者一行と魔王は、創造神の前にひれ伏しつつも地面を叩く。
「なんて強さだ……。僕たちの力で、全く歯が立たないなんて……」
勇者は自分の眼先に武器を向けるシエラとセティアを睨み、悔しそうに呟いた。
まさか、こんな形で自分たちの冒険が終わってしまうなど思いもしなかったからだ。
「我よりも……強い者がいるとは……」
それは魔王も同じく、まるで狙ったかのように湧いた創造神にこのまま思い通りにされてしまうのかと悔しそうな声を上げる。
「やれやれ、まさか神に歯向かうとはね」
勇者と魔王は先の戦闘で体力を使い果たしてしまい、ここから双方の戦いになることは無いだろう。だが、彼らの殺意や憎しみの矛先が創造神を名乗るイレギュラーズに向いたことは言うまでもない。
「戦いは決められたルートだからちゃんとやってくれないと困る、数字とれない」
そんなことをセティアが呟くと、勇者と魔王、イレギュラーズを交互に見つつ、話を続けた。
「魔王と勇者の担当誰だっけ。違う雰囲気かなって思うけど、ちゃんと設定した?」
セティアの言葉に他のイレギュラーズは顔を見合わせるような仕草をするが、すぐ後にアトがノリアの方を向いてにっこりと笑い、言いきった。
「たしか、ノリア君の担当だったよね」
「?! ……も、もちろんですの!」
話をずっと黙って眺めていたノリアは、突然の責任転嫁にギョッとした表情を浮かべながらも首を縦に振り、震える声をしながらも返事する。
咄嗟のことで首を縦に振ってしまったものの、よくよく考えてみれば何も伝えられていないノリアはハッとなる……が、少し気付くのが遅かったらしい。
ここまで来て演技がバレる訳にもいかないので、若干おどおどした様子を見せながらも彼女は前に出た。
「ええ、ええ……そうですの、わたしが全部仕込んだことですの……。責任はとりますの」
そして、泣きそうになりながら勇者たちに自身の尻尾を見せる。
「きっと、わたしのこの世界での役割は、素直に食べられることだと思いますの」
「?」
この方は一体、何を言っているのだろう。一同は理解が全く追い付かず、キョトンとした表情を浮かべている。
それもその筈、自らを食用として名乗り出る者を彼らは見たことがあるだろうか?
「ええ、ええ……悲しい事ですけれど、ここでは怪我をしたって、わたしは……」
包丁まで取り出し自身の身を切ろうとするノリアに、勇者一同や魔王は慌て始めた。
「神の肉を喰らう、さすれば君たちは自由だ。血肉を得た君達に……」
「御託は良い、この女を止めろぉ!!」
冷静だったアトは演技を続けていたが、もうそれどころではない。
彼の言葉を遮るように勇者が叫ぶと、その仲間、魔王までもがノリアを止めに掛かり、腕ずくで包丁を取り上げる。
「痛いですの……もう嫌ですの……!」
取り押さえられ暴れるノリア、その様子を遠目に見つつ他のイレギュラーズは退散していく。
「くっ……なんて力だ。ああ、もう……なんでこんなことに……」
こうなっては、もう魔王との戦いどころではない。自分たちがここに居れば、この変な創造神が自分の身をすり減らそうとするだろう。
「……逃げるぞ!」
「え? ちょっと、まってよ!」
「いや、こいつどうすれば……ええい、なるようになっちまえ!」
勇者一同は、暴れるノリアを捨て置いて魔王城から退散。暴れ疲れたノリアはすっかり動かないマグロになっている。
「…………なめんな!!」
唯一残された魔王は、訳の分からない展開に残ったちゃぶ台をひっくり返すと、この下らない戦いを終戦させるべく、部下を呼ぶのだった。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
こんにちは! 初めまして! 青銅の勇者と申します。
皆さんの良き思い出を一緒に作っていきたい所存でございます。
●目標
今回の第一目標は、『魔族と人間の戦争を終戦させる』です。
現在勇者は既に魔族の住む大陸の奥深くまで進み、魔王城まで迫っています。ですが、勇者も魔王も戦うことに疑念を感じ始めている模様です。
イレギュラーズ一行様には中立としてこの間に立ち、上手く戦争を終わらせてください。
●世界観
ゲームや物語度々に出てくる、勇者と魔王が存在する世界です。
勇者は超人的な力を持った人間で、魔王は世界で一番強いと言われている存在です。
●戦闘の可能性
場合によっては勇者一行や魔王と戦闘になる可能性があります。
戦闘になる場合、敵情報は以下の通りです。
・魔王
その世界最強の存在です。魔法も体術も最高峰と言われています。
その他、話の通じる相手です。
・勇者一行
勇者、戦士、魔法使いの3人です。どの個体も人間にしては超人的な力を持っています。
その他、話の通じる相手です。
●特殊ルール
この世界でのイレギュラーズは、ステータス数値やスキル効果を、それ以上の力で発揮することができます。その力は魔王や勇者を超越するでしょう。
詳しい説明は以上になります。
それでは異世界の冒険を、心からお楽しみください!
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