シナリオ詳細
とつげき☆ステーキと故郷の味
オープニング
●注釈
屋号「とつげき☆ステーキ」の☆は読みません。
音読すると「とつげきステーキ」になります。
☆の記号は飽くまで透明な個性。流れ星。一番星。
●鉄平おじさん
先日、『練達』の方で新しいウォーカーがまた1人保護された。
名前は火山鉄平(かやま・てっぺい)という中年男性だ。
元いた世界の「ニホン」ではステーキ屋を営んでいたらしい。
店の名前は「とつげき☆ステーキ」といい、彼自身は「鉄平おじさん」の愛称で親しまれていたそうだ。
鉄平おじさんが元いた世界の「ニホン」は、時代的にもバブルが弾けたとかで世の中が騒がれていた頃だった。
そんな時代も物ともせず「美味しいステーキをモリモリ食べて突撃すれば、世の中に怖い物なんてそうはない」というのが鉄平おじさんの主張だった。
鉄平おじさんは熱いステーキを焼く熱いステーキ職人なのである。
世間が傾いていようが、鉄平おじさんのお店は順調だった。
このまま上手くいけば、もしかしたら、フランチャイズ化もできるかもしれない。
そんな明るい希望を抱いていたある日、鉄平おじさんは異世界転生してしまった。
何気ない日常の一コマを過ごしていたら、何気ある異世界の非日常へ飛んでいた。
人生、何があるかわからない。
鉄平おじさんは、最初は早く元の世界へ帰りたかった。
だが、同じく保護されたウォーカーの人達と話をしていたある時……。
『故郷に帰れないなら、せめて故郷の味が食べたいです。ステーキが好物なんですよね……』
『俺の故郷は『アメリカランド』って言うんだ。分厚いステーキが名物だったなあ……』
『わたしはぱぱのすてーきすきだった。またおいしいすてーきたべたい』
と、まあ、こんな感じで保護された人達は意外にもステーキが好きな人が多かった。
で、腹をくくった鉄平おじさんは……。
「よっしゃあ! んだったら、俺がうめえステーキ作ってやるぜ! ステーキ屋でもまたおっぱじめるか!!」
●ステーキ屋のヒアリング
鉄平おじさんはやる事が決まったらロケットみたいに突撃する男だ。
早速ローレットに問い合わせて情報屋を一人送って貰った。
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が開店前の店にやって来た。
店を見て貰いたいという事もあり、あえて情報屋をここへ呼んだのである。
「はじめまして、ボクはローレットの情報屋ユリーカなのです。ここのお店が火山鉄平さんの開店前のステーキ屋さんで間違いないのですね?」
「おう! お嬢ちゃん、お初! そうだ、ここが俺の店だ。あ、でも、俺の事は『鉄平おじさん』でいいぜ?」
鉄平おじさんは気さくな男のようだ。
ユリーカをカウンター席へ座らせると麦茶を持って来てくれた。
「で、だ。開店前の店を見ての通り、俺はこの世界でもまたステーキ屋をやりてえんだ。ステーキ職人としての腕はなまっちゃいねえが、知名度は初期状態からの再スタートだ。しかも、開店するにも手伝ってくれる奴らすらいやしねえ。なんとかならんかね?」
鉄平おじさんの真摯な疑問にユリーカが元気に答える。
「ふうむ、またステーキ屋さんをやりたいものの、スタート地点でまごついているという感じなのでしょうか? では、開店日当日まで人材をお貸しする事もできると思うのですが?」
鉄平おじさんはきらりと笑う。
「おう? 開店日当日までスタッフを貸してくれるのか!? ロケットスタートが切れて助かるぜ! 上手く開店さえしちまえば、後はこっちで何とかできるさ!」
ユリーカはその後、ローレットであなた達を集めて依頼する。
「ステーキ屋さんだから美味しいまかない飯があるかもですね? じゅるるる……」
と、羨ましそうにしていた。
- とつげき☆ステーキと故郷の味完了
- GM名ヤガ・ガラス
- 種別通常
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2019年10月19日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●準備
程良く焼かれた肉厚なステーキに濃厚な甘辛ソースが口中で蕩けるハーモニー。
市場調査で来た『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は絶品のステーキランチを頬張り嬉しそうだ。
「実に美味しい。元の世界にいた頃は体が弱くてステーキなんて食べられなかったからね。鉄平おじさんの故郷は『ニホン』と言っていたけれど、今、食べているこの味がゴールか……」
ゼフィラの向かいの席には『虚言の境界』リュグナー(p3p000614)も楽しそうに贅沢な肉厚を噛み切っている。
「ほう、これがかの『ニホン』風のステーキか……美味だ、覚えた。ローレットの仕事をする上では、スタミナをつけることもまた重要であろう故、今回の市場調査には大変な意味がある」
2人は決して、今、遊びで食べに来ている訳ではない。大事なお仕事の最中なのである。
この店はリュグナーの情報屋としてのツテを駆使して探し当てた『練達』首都の名店だ。ステーキと名が付く物ならば大抵は置いてある。だが、ゼフィラは一つの疑問に突き当たる。
「ステーキは上出来だし、リュグナーの情報網も流石だね。牛肉に関しても仲間を頼れば手に入る事だろう。ただ、ここは『練達』で色々な種族がいるよ。例えば、宗教上や体質上の理由等で牛が食べられない客層向けの食材もないか考えたいね?」
それでは牛以外のお勧めステーキを、とリュグナーがコックにお願いした。
次に現れたのは海鮮味溢れる魚介類のステーキだった。
ゼフィラ達は思わず心が躍る。
「ふむ、香ばしい上にぷりっとした歯応えだね、車海老のステーキって」
「ほう、帆立貝のステーキも海の味が濃くてなかなかだ」
その後、探検家の魔物知識と情報屋のコネを合わせた結果……。
やって来たのは浪漫満天の『海洋』沖だった。
「さて、今から海鮮魔物を沢山狩るよ? 手始めは、巨大海老か」
「なに、狩ってやろう。美味い魚介ステーキの為だ」
市場調査の結果を受け、厨房で肉類等に関する会議になった。
真っ先に閃いた『クソ犬』ロク(p3p005176)が肉球を挙手する。
「そうね、それだったら……『鉄帝』の牛なんて強いし強いし強いから肉質も締まってとてもおいしそうだよね! 仕入れが可能なら鉄帝牛をおすすめするかな! 鉄平おじさんと語感も似ているし! とにかく牛、牛!」
ロクの提案に「ぶはははっ!」と笑い豪快に応答するのは『鉄の料理番長』ゴリョウ・クートン(p3p002081)だ。
「名案だ! 俺に任せろ。今までのツテとかを使って、鉄帝牛を仕入れるぜ。『練達』でのプレオープンが上手く行きゃ鉄帝牛業者の名声を上げることにもなるしな。それを交渉材料に使おう。あと、米だな! 俺ん所の米農園で作ってる混沌米の『夜さり恋』を提供だ!」
ゴリョウによれば、『夜さり恋』は雨にも風にも雪にも負けず丹精を込めて作ったお米だ。強い旨味を持つ為、例えば、ステーキと共に食べる事でその本質が引き出されるという。
「んじゃ、牛と米はそれな。肉類だがもう一品ねぇか?」
鉄平からの質問に今度はロクが鋭利に目を輝かせて回答する。
「わたしも『幻想』でちょっとした牧場をやってるよ! ロバしかいないけどね! ステーキにしたこともあるからメニューの1つにどうかな? 肉はいくらでも提供できるよ!」
それならぜひ、と鉄平も心強かった。
何を隠そう、ロクはロリババア牧場株式会社を経営しているのだ。
きっと素晴らしい肉を用意してくれる事だろう。
数日後、肉の用意が出来たので早速試食になった。
まずは鉄帝牛に『夜さり恋』のランチセットを……。
「ちょいと待ってくれ! ソースは甘口、バーベキュー、塩胡椒、大根おろし付きのポン酢を用意したぜ! 調味料ってのは演出だ、センスだ! 使い方を誤ればステーキは即座に駄作と化すからな! あと、ライスは通常版とガーリック版の両方を用意したぜ!」
ゴリョウは自身がとことん拘ったランチセットを頬張り満足な笑みを浮かべる。
「ぶはははっ! 牛肉と米はこれで完成だぜ!」
一方、ロクの方はロリババアのジューシーなステーキだ。ロバの濃厚な肉厚がたまらない。
「どうかな? 味はね、馬と牛の中間! ちょっとかたいけど、うまみがギュッとつまっていて噛めば噛むほどおいしいんだよ!」
鉄平はどちらも合格サインを出す。これなら当日も怖くない。
『ド根性ヒューマン』銀城 黒羽(p3p000505)は市場へ来ていた。
市場では主に野菜や飲料の業者が品物を出品しに来ていた。
黒羽も自店舗用の野菜と飲料を確保すべく、プロ相手に交渉に臨む。
「……という話で、この度、とつげき☆ステーキが郊外にプレオープンする訳だ。もしも、今回の事業が成功すりゃ、発注が増えるだろうから、そっちも儲かってWin-Winって事だ。今後のお付き合いも見越して、ぜひ我が社に野菜の供給をお願いできねぇか?」
この時、黒羽は自店の利益だけを主張するのではなく相手側の利益にも配慮して話を進めた。首都郊外のステーキ店は需要の拡大が予想される事も付け加えて、今から共闘すれば将来は大きな利益に繋がるだろう事も強調する。
「乗った。野菜を2割引で提供しよう」
「まいどあり。今後ともよろしく頼むな」
その後、黒羽は飲料業者も同じ方法で説得し仲間に引き入れた。
混沌商学の知識も日々勉強していた黒羽の勤勉さが功を奏したのだ。
用意周到な黒羽は業者達に店のビラを配る事も忘れなかった。
沢山の新鮮な野菜を厨房に並べて『イカダ漂流チート第二の刺客』エル・ウッドランド(p3p006713)は張り切っていた。料理スキルに長けている彼女は調理補助を引き受けている。包丁を手にして、野菜をざく切りにしていくその心境は……?
(まかない目当てですが、頑張ろうと思います……オニクダイスキ!)
ちょっと食いしん坊な彼女だが、美味しい物を作りたいというその心意気は本物だ。
まず作る物は、当日でも作り置きですぐに出せるチョップドサラダだ。
「さてと、玉葱は微塵切りにすると目に沁みますので……」
電子レンジでチンするのが一番早く効率的だろう。
エルは温めた玉葱を難なく微塵に切り刻んでいく。
「黒羽さんが仕入れた立派な野菜を私が心を込めて調理しましょう」
包丁とまな板から心地良い音が立ち、トマトとキュウリは一口サイズに切られていく。
野菜のざく切りが一通り終わったら、エルは調味料に取り掛かった。
「調味料は、ゴリョウさんお勧めの物を使いましょう。塩、黒胡椒、砂糖、酢、サラダ油を混ぜて……。うん、いい感じにドレッシングも完成です!」
鉄平を呼んで、一緒に試食して貰った結果……合格だった!
「なあ、エルさん? もう一品、特製のサイドメニューとして何か作れねぇか?」
エルは腕を組んで考えて結論に至る。
「それならオレンジキャロットラペはどうでしょう? 保存や作り易さの関係からチョップドサラダを作りましたけれど、開店前日にラぺも作りますか?」
「おう、頼むぜ。今からまかない飯出すが食うか?」
「わあ、本当ですか? ゴリョウさんのBBQソースとロクさんのロバ肉がいいですね!」
エルには相応のまかない報酬が美味しく出たのであった。
新規オープンなので、店の外装と内装にも拘った方が良いとの提案もあった。
その提案をした人物はゼファー(p3p007625)だ。
まずはまっさらな店舗の外観をじっくりと観察して方向性を考える。
「大衆向けで皆のためって路線で行くならやっぱり親しみやすいルックスが合いそうだわ! 逆にダーク系の色で固めちゃうと、どーにも高級感っていうか堅苦しさ出ちゃう気がするのよね?」
ゼファーはレンガやウッドのタイルを買い集め早速改装に取り組んだ。
明るい色調のレンガ柄のタイルを店の外壁に一枚ずつ丁寧に張っていく。
真昼の森林をイメージするウッド柄のタイルはテーブルやカウンター席へ飾り付ける。
照明も取り換えて、全体的に清潔で鮮明な白系の色調で統一する。
「うん、こんなもん? 親しみやすい雰囲気っていいわね! 異世界の『おーるどあめりかん』ってやつ?」
ここはステーキ屋なので、休憩の合間には……。
「おう、お疲れ! まかないステーキできたぞ?」
「ああ! これが労働の味! 至福!!」
ゼファーは感激しながら海鮮魔物のステーキを有難く頬張るのであった。
店前にて萌えなゴスメイド姿でビラを配るのは『勿忘草に想いを託して』羽瀬川 瑠璃(p3p000833)だ。
「とつげき☆ステーキがプレオープンします! どんな世代にでも愛されるステーキです! ぜひ、開店日にはお立ち寄りを!」
実は今、配っているビラは彼女の手作りだ。
ビラの中央には美味しそうなステーキが可愛らしく大きく描かれている。
ビラの枠には女性的な感性の装飾柄が美しく施されている。
流石にメイド服の美少女なだけありその手の層には刺さる物があるらしい。
ビラもそれなりにはけるが、ここでもう一手、宣伝を強化する。
「とつげき☆ステーキではこ~んなに美味しいステーキが食べられます! 鉄帝牛、ロリババア肉、海鮮魔物肉、どれも最高の味でお出しします!」
彼女の背後には鉄平に仕込まれた黒羽がステーキを仏頂面で焼いている。
実際にその場で焼いた肉を一口、二口、と瑠璃が微笑ましく美味しそうに頬張る。
その直後、試食宣伝の効果は抜群で客層が我先にと群がって来た。
プレオープン当日が今から楽しみだ。
●当日
開店前からかなりの盛況だ。
まだ昼前であるが、店前では長蛇の列が出来上がっていた。
整理係を買って出たのはゼファーだ。
「はいはい、それじゃ、みんなしっかり並んでね! 列は乱さず、順番を守って。ステーキは充分にあるから焦らなくていいのよ!」
かなりの長さの列だ。最後尾の待ち時間もかなりの長さが想定されるだろう。
もう1人の整理係であるリュグナーが整理券を配り始める。
「ほら、整理券だ。これがあれば列を抜けても時間をおいて戻れる故にな」
親切にも整理券を配るリュグナーは心の中では悪魔のように笑っていた。
(――なに、掴んだ獲物は決して逃がしたりはしない)
待ち時間が長期化すると共に客同士の喧嘩も発生。
何やら列を乱した等の理由で客達が口論を始めた。
トラブルに対処するべくゼファーが急いで駆けつける。
「モメたって早くありつけるわけじゃないわ。それに怒りながら食べるご飯なんてきっと美味しくないんだから」
彼女が仲裁すると一時期は静かになったものの、他の客も喧嘩を始めて……。
そこへ今度はリュグナーが死神の鎌を抱えて殺気立ち現れる。
「ルールは守ってもらおうか? ほう、そんなにステーキの具材になりたいか?」
以後、お客様は喧嘩する事なく仲良く整列した。
ついに開店の時だ。
20席程の店内は既に満員で注文が殺到する。
皆、気合を入れてそれぞれの持ち場に就く。
「ロリババアステーキ定食入りました!」
瑠璃から注文が入る事を告げられると、ロクは張り切って調理に掛かる。
え? そんな手じゃ肉焼けないって?
だがご安心。ロクは獣種の変化能力で人間の美女に変身出来るのだ。
「さあ、ロリババアを焼いて焼いて焼きまくるわたしの神業をとくと見よ!」
『ロバ飼育入門書』をマスターしている上に鉄平からの訓練も受けた。
今、ロクは厨房のエースと化して、凄まじい勢いで至極のロリババアステーキを仕上げていくのである。
ロクがメインならば、エルのサポートも引けを取らない。
ステーキ定食の注文が入ると同時にポテトフライを作り始めた。
馬鈴薯の芽を切り、アク抜きで水に2度さらし、水気を取ったら、カラッと揚げる。
寡黙だがエルは真剣にポテトフライを丁寧に揚げていく。
(ステーキが焼き上げるのに合わせて揚げていきます! 揚げたては美味しいからね)
多忙な彼女はさらに野菜スープとサラダの用意も同時にこなす。
定食なので、肉とサイドが出来たらご飯も欠かせない。
練達釜でふっくらと炊き上げた『夜さり恋』を豪快に盛るのはゴリョウだ。
ソースは甘口という注文が入ったので、お手製の甘口ソースを完成した肉に盛り付ける。
肉の調理は鉄平とロクに譲ったゴリョウだが、彼はサポートとしても有能だ。
ライス係の傍ら、調味料やドリンクの補充に皿洗いもこなすのだ。
一方、ゼフィラは裏方に回っているので厨房にいる各仲間の仕事を手伝う。
ロクが調理する肉が足りなくなれば肉の補充を。
エルがスープとサラダまで手が回らない時は彼女の代わりに支給する。
ゴリョウが使用する調味料やドリンクが切れたら倉庫から箱ごと運んで来た。
「わりぃが、調味料で買い出して欲しいのがあるんだが?」
ゴリョウはメモ書きに必要な分を記した上、ゼフィラに渡す。
「任された。私が買い出しに行ってこよう」
郊外の商店街へ向かい、必要分は買い揃える事ができた。
ゼフィラは大量の物品を抱えて店に戻り、ふとこんな事を思う。
(病弱の以前だったら、とても考えられない働きをしているね、今の私)
厨房も戦場だが、ホールもやはり戦場と化していた。
凄まじい勢いで回転する注文に対して、黒羽はホールと厨房を激しく行き来する。
両手には各ステーキ定食を抱えて大忙しで給仕をするが爽やかな笑顔も忘れない。
しかもこの客数相手に2人でホールを回すのは至難の業だ。
そこでヘルパーを事前に導入していた。
「こいつはメイドロボの橘さんだ。メイドロボが給仕なんていかにも『練達』っぽいだろ?」
黒羽のナイス提案に鉄平はゴーサインを出していた。
重い料理を数運ぶ等の力仕事は黒羽かロボが率先して行い、瑠璃の方は呈茶に取り組む。
折角、黒羽が業者と交渉して用意してくれたお茶の数々だ。
緑茶も麦茶も烏龍茶もほうじ茶も丁寧に丹精込めて、1滴ずつ心を込めて給仕する。
緑茶を淹れて貰ったとある客が瑠璃に質問する。
「今日はメイドじゃないんだ?」
瑠璃は赤面しながらもあたふたと答える。
「あ、あれは宣伝の時だけですよ! 本日は開店日ですのでお店の制服です!」
もっとも、店員側に落ち度はなかったとしても、難癖を付けてくる客も中にはいて……。
「お姉ちゃん? 今から遊ぼうぜ?」
「申し訳ございませんが、お客様。今は仕事中です!」
それでも柄の悪い男客が瑠璃に遊べと絡むので……。
険悪になった店の雰囲気の中、黒羽が静かに、怒りを秘めて、注意を始める。
「うちの店員に何か失礼があったのならば謝ります」
「失礼な奴だ! この姉ちゃんは借りていくぞ」
客が瑠璃の手首を掴もうとしたその時、黒羽が即座に力強く客の手を取り上げる。
「ここはお店です。他のお客様にも迷惑ですからご退場願います」
黒羽は敬語で控えめの態度だが内に秘めた迫力がある。
彼の威圧に負けた柄の悪い客はその場に居辛くなり逃げ出した。
嫌な客を追い出してくれたので客席からは拍手と歓声が上がった。
瑠璃からも黒羽に照れて一言。
「助かりました。ありがとうございます」
黒羽も柄になく照れる。
「あぁ、ま、仕事の続きするか?」
●宴
初日は大盛況で閉店した。
「打ち上げやらないの? やるよね? めでたき開店日だもんね、もちろんやるよね!?」
ロクの勢いある提案により本日の最後には店を貸切で打ち上げだ。
打ち上げではゴリョウが鉄板の前に立ち、ロクは食べるのが専門になる。
「鉄平の旦那から盗んだ肉焼き技術を披露させてもらうぜ。ぶはははっ、より洗練された焼き方でおめぇさんらの腹を満たしてやろう!」
それなら我もとリュグナーが肉焼き側に立候補する。
「焦がさねぇようにな?」
鉄平に見て貰いながら上手に各種ステーキを焼き上げる。
「無論、我も食おう。我ら自慢のステーキを」
焼く側の3人もロクも焼いては即食べる。
順次仕上がるステーキを前にゼファーがお皿を持って並ぶ。
「私は当然、血沸き肉躍るレアーの鉄帝牛で!」
程良い生焼きの牛肉を頬張りゼファーが満足そうだ。
エルも列に並び、ステーキ盛り合わせを皿ごと受け取り笑みが零れる。
「ステーキは素敵なご馳走で大好きです! この甘辛い特製ソースやお米と一緒に食べるのが至福のひと時です。……ふう、おかわり!」
仲間達が次々とステーキを平らげる様を見てゼフィラは小さく笑った。
「ふふっ、私も是非とも参加しようか。……うむ。まさかステーキ屋の手伝いをしてこんなに沢山食べられるとは思ってなかったよ。召喚されて良かった」
瑠璃も女子達の輪に入り共に楽しく食べるが、ある事を思い出してはっとする。
「あら? 黒羽さんは?」
そう心配していた所、黒羽が遅れてやって来た。
「わりぃ。これだけの黒字だ。帳簿の記帳をある程度済ませた後でと思ってな。……俺もステーキ食いてぇ」
瑠璃がステーキ盛りの皿を黒羽の元へ差し出す。
「沢山あります。今日はお腹いっぱいになるまで好きなだけ食べましょう?」
「おう、ありがとな」
ステーキ屋の打ち上げでは、皆が最高に楽しい夜を過ごした。
皆の手伝いは初日までだが、今日をきっかけにとつげき☆ステーキは今後も絶好調だ。
今回の依頼は、熱いステーキを通して熱く仲を深める交流にもなった事だろう。
了
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
この度はシナリオへのご参加ありがとうございました。
今回の執筆はハングリー精神が大事なシナリオである事を学びました。
だって、お腹いっぱいの状態ですと、美味しそうなステーキのお話は書けなくなりますから。
GMコメント
●目標
「とつげき☆ステーキ」(ステーキ屋)を開店日当日までお手伝いする。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●ロケーション
『練達』首都郊外に「とつげき☆ステーキ」というステーキ屋が開店されます。
お客さんが20人ぐらい座れる割と小さなステーキ屋としてのスタートです。
建物は近代的なビルの中にある1Fのフロアです。厨房は奥にあります。
今回のシナリオはこの店を主な舞台として話が進みます。
●お手伝い
ステーキ屋開店へ向けて、以下の事に取り組んでみましょう。
以下のリストは飽くまで参考例であり、必ずしもこの通りにしなくても良いです。
以下の事以外でもステーキ屋開店に必要な事であれば基本的に採用します。
大きく分けて「開店準備」と「開店当日」の2か所に「リプレイ」は描写される予定です。
「プレイング」では両方書いて送る方が「リプレイ」で描写されやすくて良いかと思います。
<開店準備編>
どんなステーキが良いでしょうか? 牛? 豚? 鳥? 魚介類? 野菜? 魔物?
ステーキソースの味はどうしますか? 辛口? 甘口? 普通? どんな味?
どうやって仕入れますか? どこかから購入? 直接の狩り?
看板メニューは何でしょうか?
サイドメニューやドリンクは何でしょうか?
お昼と夜でメニューは変えますか?
開店前に試食はしますか?
お店の外装や内装はどうしますか?
宣伝はどうしますか?
<開店当日編>
当日の役割分担はどうされますか?
開店日は並ぶ事でしょう。整列はどうしますか?
接客は誰がやりますか? 調理や調理補助は誰がやりますか?
お客さん同士のトラブル等があったらどう対処しますか?
初日終了後、打ち上げをしますか?
●その他
・NPC達は特に「プレイング」で指定がなければ背景と化します。
・何かの事情で人材の補充が必要な場合、ローレットのモブNPCを使えます。
・食材や材料等のアイテムが必要な場合、鉄平おじさんが負担するか、ローレットからの支援を受けられます。
・アルコールを飲む場合は20歳以上のPCさんに限ります。
●GMより
ステーキ(特に立ち食い)が大好きなGM、ヤガ・ガラスです。
今は食欲の秋ですが、私の心は常に食欲の秋です。
さあ、共にステーキへ向かって突撃しましょう!
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