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シナリオ詳細

銀の君を求むる
銀の君を求むる

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●使う者、使われる者
 幻想で起きた銀髪の女性を狙う事件。
 それは『何でも願いを叶える銀糸』の噂を発端に起きたものだったが、事件を追う最中、同じように銀髪の女性を狙う魔種の存在が明るみにでた。
 魔種レオニス。
 今は亡き幻想貴族レオニス・アルバ・アンジェール四世の姿をもった魔種は、イレギュラーズの一人である『なぜか自分の本が売られてました』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)を求め今も幻想国内を彷徨っていた。
「銀の髪の君……ああ、どこに、どこにいる……」
 ゆらりと歩いていた魔種レオニス。その前に、妖艶な影が躍り出た。
「こんなところにいたのね。
 ダメじゃない、与えた仕事はしっかりこなしてくれなくちゃ」
 魔種を前にして余裕たっぷりに話すこの女は――当然、魔種である。
 魔種、妖槍のルミーラ。イレギュラーズとも面識のある、『色欲』に連なる隻腕の女戦士である。
 ルミーラは片腕でくるくると長槍を遊ばせながらレオニスに笑いかける。
「私が噂を流して、事件の規模を広げる。貴方はそれを乗じて事件を起こし強者を誘い出す。相手をするに十分な者達――そうイレギュラーズなんかが現れたら私の元におびき寄せる。
 そう決めたわよね? 魔種として立場の悪い――同じ『色欲』に連なる貴方の世話をしてあげたんだから、しっかりやってくれなきゃ困るわよ」
 肩を竦めるルミーラはしかしあまり気にした風ではない。レオニスの状態が万全ではないということを承知しているということだ。
「居たんだ……」
「居た? 誰が?」
「銀の髪の君……僕が探していた……大事な、彼女が――」
「わお。それはおめでとう。それで? その銀の髪の君はどうしたのかしら? 殺しちゃったのかしら?」
 戯けて言うルミーラに、レオニスが怒りの感情を見せる。
「殺すものかっ、僕は彼女を娶ると約束したんだっ……邪魔が入ったんだ、僕とも渡りあえる彼女の仲間が……」
 レオニスの言葉にルミーラは眼を輝かせる。
「へぇ……やっと”縁”が回ってきたって感じじゃない。
 いいわ、お膳立てしてあげる。その銀の髪の君を誘い出しましょう」
 ルミーラは妖艶な笑みを浮かべると、レオニスを連れて歩き出す。
 魔種の企みが動き出そうとしていた。


「望みを叶える銀糸の噂について、新しい情報が入ったわ」
 『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)はローレットを訪れたシフォリィを見かけるとそう切り出した。
「噂の出所がいまいち掴めないけれど、なんでも銀糸の在処がわかったとか。
 幻想北部の鉱山の採掘場らしいのだけれど……」
「どうにも怪しいですね、そんな場所に銀の糸があっても気づかないと思いますが」
「ええ、それに噂に釣られた欲深い連中が、採掘場に向かったきり戻ってこないようでね、どうにも怪しいから調査してみたら、例の魔種が待ち構えていたそうよ」
 例の魔種――レオニスであることはすぐに気づく。シフォリィは心臓が跳ねるのを感じた。
「シフォリィちゃん達を誘っているとしか思えないわ。正直、あまり勧められないのだけれど、鉱山のある地方の領主から鉱山に向かった者の行方の調査を依頼されているの」
 つまり、ローレットとしては誰かが調査に向かわなければならないというわけだ。
 で、あれば。レオニスの死の真相を確かめるためにも、自分が行かなければとシフォリィは思った。
「気をつけて欲しいのは、噂がシフォリィちゃん達特異運命座標ちゃんたちを誘き出すものだとすれば、その噂を撒いたと目される『隻腕の女戦士』も魔種、もしくは魔種に連なる相手だと言うことになるわ。
 最悪の場合二人を相手取ることにもなるでしょう。引き際は見誤らないようにね」
 リリィはそう言うと、依頼書をシフォリィに手渡す。
「レオニスさん……私は――」
 シフォリィは一人呟くと、仲間と共に準備に向かった。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 銀の君を待ち続ける魔種。そしてイレギュラーズとの再戦を望む魔種。
 二体の魔種が策謀巡らせイレギュラーズを待ちます。

 なお、こちらはシフォリィ・シリア・アルテロンド (p3p000174)さんの関係者依頼となります。

●注意事項
 この依頼に参加する純種は『原罪の呼び声』の影響を受け、反転する危険性があります。
 また、この依頼では”パンドラの残量に拠らない死亡判定”があり得ます。予めご了承の上、ご参加ください。

●依頼達成条件
 行方不明者を見つける(生死は問わない)。
 シフォリィ・シリア・アルテロンドの生存(反転は死亡扱い)。

■オプション
 魔種レオニスを撃破する。

●情報確度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報は全て信頼出来ますが、情報にない出来事も起きるかも知れません。

●魔種レオニスについて
 シフォリィの元婚約者レオニスの姿をした魔種。
 元婚約者であるレオニス同等の卓越した剣技を持ち、また魔種としての強靱さを併せ持つ。
 その行動は一貫して銀の髪の君――シフォリィを狙うことにあり、邪魔する者には力を倍加させ排除しようと動く。
 当然、狂気拡散による『原罪の呼び声』も起こりうるでしょう。

●魔種『妖槍』のルミーラについて
 過去魔種チェレネントラの起こした事件の折、イレギュラーズと戦い片腕を失った魔種。
 ハーモニアの女で年齢不詳。青から赤に変化している長い髪を持つ。
 妖艶な雰囲気に凜々しさを併せ持ち、傍目に美人ではあるが命を奪い合うことに性的興奮を覚える変態である。
 その戦闘行為が残虐であればあるほど興奮するらしい。その為、彼女と戦うものは両者ともに生半可な傷では済まなくなるようだ。

 銀糸の噂を流した張本人であり、その目的はイレギュラーズ(もしくは同等の敵)との戦いであった。
 魔種レオニスの待つ採掘場に姿は確認できない。

●戦闘地域について
 幻想北部にある鉱山の採掘場での戦闘になります。
 山に囲まれた平地での戦闘になります。大きな岩など障害物に利用できるシチュエーションです。

 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • 銀の君を求むるLv:15以上完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2019年09月23日 14時05分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)
死神二振
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
朝を呼ぶ剱
ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
砂竜すら魅了するモノ
焔宮 鳴(p3p000246)
救世の炎
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
希望の聖星
雨宮 利香(p3p001254)
雨宿りの
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
最強砲台
シュラ・シルバー(p3p007302)
魔眼破り

リプレイ

●乱戦
 戦場は整然としながらも乱戦の直中にあった。
 銀糸の噂の終着点。鉱山の採掘場でイレギュラーズを待ち構えるように居たのは魔種レオニスに間違いなかった。
 行方不明者の捜索としての依頼だが、周囲にその姿を見つけることはできない――否、それらしい影はあった。レオニスの背後、鉱山内部への入口の先だ。だがその真贋を確かめるには、目の前の魔種を抜く必要があった。
 それ以上に、目の前の魔種は『朝を呼ぶ剱』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)にとって看過できない相手であり、過去との決着をつける必要があったのだ。
「来てくれたんだね! 銀の髪の君!」
 シフォリィを見つけ、喜色に顔を綻ばせるレオニスは、周囲のイレギュラーズを邪魔者と断じて、戦闘行動に移る。イレギュラーズもまた魔種レオニスの討伐は望むところと、即時戦闘へと入っていった。
 問題はすぐ後のことだった。
「お邪魔させてもらうわ。私、”彼”とそこのお嬢さんをくっつける恋のキューピッド役なの。お邪魔虫は一人残さず潰させてもらおうかしら」
 大方の予想通り、銀糸の噂を流した『隻腕の女戦士』が戦場へと乱入する。
 妖槍のルミーラ。
 『色欲』に連なる魔種の一人である。
「彼女のペースに乗せられないで! 僕たちの目的を忘れないように!」
 『ムスティおじーちゃん』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)はルミーラと戦闘経験のある数少ない一人だ。ルミーラの戦い方、嗜好性をよく理解していた。
「僕が抑えに入ります――!」
「ベークさん、フォローします!」
 ムスティスラーフに助言を貰いながら、『見た目は鯛焼き中身は魚類』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)と『炎嵐に舞う妖狐』焔宮 鳴(p3p000246)がルミーラの抑えに回る。他のイレギュラーズは、その隙に魔種レオニスへと攻撃を集中させる。
 短期決戦。それがイレギュラーズが導き出した魔種二体に対する対策だった。
 問題となるのは、魔種との力量差がそれを可能とするかどうかだ。
「恋路の中に入るのは好みじゃないんですが……魔種とあらば……お覚悟を!」
 魔種レオニスの動きをよく抑圧していたのは『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)だ。夢魔の口づけは心の隙間からレオニスの精神をかき乱しその動きを狂わしていった。
「仲間を脅かすのは、見逃せないんですよ……!」
 そうしてレオニスの行動を阻害したところに、『大剣メイド』シュラ・シルバー(p3p007302)の紅蓮の大剣が振り下ろされる。重厚な一撃はそれだけで相手を脅かすに足るものだ。事実魔種レオニスは細身の剣で受けきることが困難な一撃に、難儀しているようにも思えた。
 畳みかける様に、『黒のガンブレイダー』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)とシフォリィがレオニスへと技を放っていく。
 普通の人間相手ならば、致命打ともなる連続攻撃だ。肉を裂く手応えを感じられるはずだった――だが、魔種レオニス肌に触れると同時硬く弾かれる感触が返ってくる。
 蒼鉛――ビスマス結晶の光彩が見えた。それは形を変えるように――維持するように――魔種レオニスの身体を形作る。
 ビスマスに保護される魔種レオニスが剣技を振るう。卓越した技量は戦闘経験豊富なイレギュラーズに匹敵するばかりか、それを凌駕する技の冴えを魅せ、イレギュラーズは舌を巻かざるを得ない。
 また、魔種レオニスを援護するルミーラの攻撃が厄介極まりなかった。
 ベークと鳴は想定以上にルミーラを抑えることに成功していた。それは疑いようもない。しかしそれだけの働きをしていながらも、合間合間に放たれるルミーラの雷槍がイレギュラーズ達を貫いき苦しめていったのだ。
「あはは、耐えるねぇ! でもいつまで持つかしら!?」
「お前達を倒すその時まで――持たせてみせるさ」
 『希望の聖星』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)が回復の魔力を編みながら言葉にする。希望的な言葉ではあるが、それはウィリアムには相応しい。
 戦いは魔種レオニス組とルミーラ組で分かれてはいるも、その位置取りは刻々と変化し乱戦である。
 イレギュラーズの想定した短期決戦は、徐々に崩れ始めていた。

●色欲の誘い
 魔種と対面して戦うことは、ただ傍に立つだけで命を磨り減らしていくようなものだと、ベークは感じていた。
「甘い香りのするボウヤ。必死に私を抑えて、可愛いものね。食べてしまいたいくらいよ」
 対する魔種ルミーラはそうした命のやりとりがさも楽しいと言うように邪悪に笑みを浮かべる。血は歓喜の表れで、嗚咽は祝福の聖歌であると、自らの欲情を隠すことなく発散させていく。それは狂気となって周囲をかき乱し、脳裏に不協和音を響かせていた。
「ベークさん! 相手にすることないですよ!」
「わかっています。魔種の考えなんて理解できませんからね」
 ソウルストライクを放つ鳴の言葉に頷くベークが防備を固める。二人の役割はとにかくルミーラを魔種レオニス側へと近づけさせないことにある。
「戦闘による高揚感。命を奪い合うという熱情を理解できないなんて、悲しいわね。
 ……しかし、少し飽きたわね。そっちのお嬢ちゃんの殺意は凄く感じて嬉しいけれど、抑え込まれて一方的なのはつまらないわ。
 かといって全力でも出したら……”彼”の獲物も奪いかねないしね」
 ルミーラが魔種レオニスの方を見て、そうぼやくように言う。
 ルミーラが全力を出していないことは、ムスティスラーフの助言からも感じ取れていた。それは好都合とも言えた。油断してもらってる分にはこちらに利がある。更に言えば、諦めて撤退してくれれば、それに越したことはなかった。
 だから、ルミーラが槍の構えを解いたことで、僅かながらに希望を感じたのだが――
「ところで、私の目的は貴方達と本気で殺し合うことにあったのだけれど、”彼”の目的は理解しているのかしら?」
「シフォリィさんを手に入れることでしょう」
「そして、殺すのじゃないですか? 他の銀髪の少女のように」
 ベークと鳴の言葉に、ルミーラが頷き笑う。
「間違ってないけれどね、じゃあ手に入れるってどうすると思う? 二人きりになることかしら。……違うわ。”彼”の根源的な目的は変わらないけれど表面的な目的はレオニスとかいう男の願望そのものだから――婚約者を娶る。並び立つものとして手に入れようとしてるのよ」
 それはつまり――
「まさか……!」
 鳴がシフォリィの方へ移動しようとするのをルミーラの変角自在の槍が阻止する。
「邪魔はさせないわ。邪魔者は少ない方がいいからね。
 そこで見てると良いわ。大切なお仲間が魔種に落ちる瞬間をね――!」
 原罪の呼び声。
 それこそが、この場にシフォリィを誘い込んだ理由に他ならないと、ルミーラは笑った。
 色欲の呼び声は戦いの最中シフォリィの精神を汚染していった。
 あり得たかもしれないレオニスとの逢瀬。肉欲の快楽に溺れる爛れ腐敗した日々の情景。高貴なものであればあるほど、抑圧された欲望が反転衝動となって襲い来る。
「おいで、銀の髪の君。二人で――共に並んで歩もう!」
 レオニスの差し出した手に、シフォリィの手が伸びようとしていた。
「させない――!!」
 利香が魔種レオニスへと肉薄する。疾風の如く加速する乱舞が魔種レオニスの身体に浮かぶビスマスを削りとっていく。だが魔種レオニスは最小の動きで致命打を避け、手にした剣で反撃を行う。差し出した手はそのままで。
「なら受け流すことのできない力で――!」
 シュラが大剣を大きく振りかぶる。闘気が刀身を包み込むと、容赦なく振り下ろした。
「誓いのときだというのに無粋な連中がァァ――!!」
 邪魔をされたレオニスが、その凶刃を振るう。致命傷を避ける為にシュラは大きく下がらざるを得なかった。
「目を醒ませ、シフォリィ!」
 魔種レオニスへと肉薄し、刃を交え押し合うクロバ。上げた声は、しかしシフォリィには届かなかった。
「どけェェ――ッ!!」
 腹部を蹴り飛ばされたクロバが吹き飛ぶ。
 静寂の中今一度差し出される手。伸びていく白い指。
 その手をシフォリィは――

●明日の約束を果たすため

 このままこの手を取れば亡くしたはずのあの人は還ってきて、そしてきっと何度も組み敷かれた辛い思いでも、失われた愛も――全てが色欲に塗れた堕落した日々によって上塗りされていくだろう。
 それも良いかと思った。抗うのを諦めて、それを求めてしまっても良いんじゃないかって。
 けれどその時、脳裏に響く声があって。
 だから、私は――

 手が止まった。
 否、手を止めていた。
 シフォリィは自ら魔種レオニスへと差し出した右手を自らの左手で掴み引き留めていた。
「銀の髪の君……なぜ……?」
 心底理解出来ないように、魔種レオニスの端正な顔立ちが歪んでいく。
 シフォリィは自らの意思で右手を抱き留めて、そして顔を上げていった。
「ごめんなさい、私は、貴方とともにいけません。
 今度、クロバさん達と一緒に、焼肉へいくんです」
 それはちっぽけな――あまりにもちっぽけな約束だ。
 けれどそんな日常的な約束こそが、過去の楔を解き放つ、未来への道標に他ならなかった。
「……は? ……肉? 焼き肉?」
 何を言っているのだと困惑する魔種レオニスが首を横に振るう。違う、こんな訳がない、と自身の記憶との齟齬を補間できずに困惑する。
「くく、傑作だな……」
 仲間の傷を癒やしながらウィリアムが笑う。釣られて仲間達にも笑みが零れた。
「な、なんですか、私は真剣に――」
「ああ、そうだろうな。花より団子って感じだもんな、お前」
 クロバにそう肩を叩かれて頬膨らますシフォリィ。
「なら、お肉のためにも、ここは勝ちを拾わないとね!」
 利香の言葉に、イレギュラーズ達が頷いた。
 シフォリィが魔種への反転を拒否したことで、状況は――少なくとも勢いというものは、間違いなくイレギュラーズ達に分があっただろう。
 魔種レオニスは困惑し、鈍い動きのまま防戦に徹することとなる。
「狙いははずれたようですね」
 ベークは無数の槍をその身に受けながら、相対するルミーラに言う。魔種レオニスの目的は果たされないのだと、勝ちを誇るように。
 器用に片手で槍を振るうルミーラは「確かに」と、自分達の失策を認めるようだった。このタイミングでベークの回復を行うムスティスラーフがルミーラへと言葉を投げかけた。
「どうだい、ここらで停戦というのは? この戦いは互いに得るものがないだろう?」
 それはルミーラの性格をよく理解しているものだ。
 全力での殺し合いを求めるルミーラは、この戦いにフラストレーションが溜まっている。魔種レオニスとどういう関係にあるかは不明だが、少なくともシフォリィの反転如何まで付き合ったのだから、もう義理立てする理由もないと見越したのだ。
「そうねぇ……おじいちゃんの言うようにこれ以上はあんまり燃えないわよね。
 消耗した相手に全力をだしてもつまらないし。帰ってあげてもいいわよ」
 そう言うルミーラはしかし構えを解こうとしない。そして続く言葉は、歓迎しないものであった。
「――なんてね、戦い始めた以上私の高ぶりは止められないわよ!!」
 高らかに宣言し、手にした槍を掲げれば、妖槍が展開される。肥大化し分岐し、分裂し、イレギュラーズ達全てをを取り囲むように配列された。
「妖槍展開だ! みんな気をつけて!」
 ムスティスラーフが警戒を促すも、時は既に遅い。
(避けれない――! なら――!!)
 瞬時に回避不能を悟った鳴が超反射神経をもって、命を奪い取ろうと走る槍に攻撃を加え叩き落としていく。
「わお、アグレッシブ! でも、それで全て落としきれるほど、この極限のステージは甘くないわよ!」
 ルミーラの言葉通り、槍の乱舞は留まることを知らず、シフォリィを含めイレギュラーズ全員が飲まれるように串刺されてしまう。
「まだ終わりじゃないでしょう? 立ちなさい! 貴方も何時までも狼狽えてないで力尽くで麗しの銀の君をものにしなさいな」
「くっ……なんて奴ですか」
 ルミーラに叱責され魔種レオニスが立ち直ると、状況は完全に不利となっていた。
 色欲に狂った二人の魔種を相手に、戦いは最後の時を迎える。

●靡く銀糸を天へと送り
(まずいですね……これは――)
 シフォリィは剣に縋りながら、状況の悪さを明確に自覚していた。ルミーラの妖槍によって多くのイレギュラーズが傷付きパンドラに縋っている。その上で魔種二体は健在なのだ。
 魔種は人ならぬ大敵であり、根本的に力の実数が違う。状況的にはもはや全滅必至の状態と言わざるを得ない。
 短期決戦を望んだイレギュラーズだが、それまでに倒しきれなかった時点で――魔種達の目論見が外れたのと同じように――イレギュラーズ達もまた失策していたと言える。
(私の事情に仲間を巻き込んでしまった……)
 顔を伏せるシフォリィに魔種レオニスが邪悪に声を掛ける。
「ああ……銀の髪の君。そう悲しい顔はしないで。きっとさっきのは気の迷いだったんだ。もう一度僕と繋がろう、そうしたらきっと――」
 狂気を振りまいて魔種レオニスが迫る。
「いい加減しつっこいよ――!」
「シフォリィ下がれ……お前だけでも逃げ延びろ」
「負けるわけにはいかない――」
 シフォリィの前に立ちはだかったが故に、魔種レオニスの斬撃を受けて利香が倒れ伏す。回復に専念するウィリアムもまた凶刃に倒れた。最後までシフォリィを庇ったベークも遂に力尽きる。
「あなたは……なんとなく。なんとなくなんですが、許せないんですよ!」
「やらせない絶対に!!」
「無駄に足掻くなァ! お前達は終わりだァ! 彼女は僕のものだァ!」
 シュラの横薙ぎの大剣を腕で弾き、鳴の一撃を食らいながら、魔種レオニスが剣を振るう。胸元を大きく切り裂く致命の一撃をシュラは受け、鳴もまた多段の斬撃を前に倒れた。
「殲滅だ。僕の邪魔を、僕から銀の髪の君を奪う奴等は全員殲滅だァ!! お前も! お前もォ!! 全員殺してくれるゥ!!」
「さぁさ立つんだよ! もっと私を楽しませておくれっ!」
 圧倒的な魔種の力を前に多くの仲間が傷付き倒れた。絶体絶命の状況を前にシフォリィが顔を曇らせる。
「そんな顔をするな。前を向いていろ。絶対に決着は付けさせてやる」
 クロバの言葉に、ハッと顔を上げるシフォリィ。言葉を置き去りに黒い死神が魔種レオニス、そしてルーミラへと疾走を見せる。
 逆転の奇跡。
 全滅という運命の終わりを目の前にされたとき、絶対的な絶望の中で、可能性を求める特異運命座標としての本能。
 それをイレギュラーズ達は求めていて――それを担うだけの覚悟と想いを持つ者は、ただ一人いた。クロバだ。
 ――見て見ぬふりはできないと、クロバは決心していた。手助けなんてなくともシフォリィはきっと魔種を討ち果たして決着をつけられただろう。
 その強さを、美しいと感じた。故に、それを守る為に、シフォリィがそれを果たす為にクロバは全てを賭けられるのだ、と自身の可能性を燃焼させていく。
「……焼肉」
「えっ?」
 敵を見据えたままクロバがぽつりと呟いた。
「お前のおごりだからな? 覚悟しとけ、俺は、俺達は喰うぞ?」
「クロバさん、貴方まさか――」
 クロバが走る。多くの者が倒れて意識を失っている中、ムスティスラーフが最後の力を振り絞り其れを援護する。
(過去は過去だ。亡霊の出る幕なんてここにはない。
 邪魔だ、お前がいる限り、”彼女”が心から笑えない――!)


 燃焼し尽くされた可能性が漆黒赤熱の極大エネルギーとなってクロバの武器に纏われる。
(どうせ笑われるなら全部成し遂げてからが良い。そうだろう、相棒!!)
「――お前がァ! お前かァ――ッ!!!」
「あはは! そう言うのを待ってたんだよ――ッ!!」
「消えちまえぇぇ――ッ!!」
 叩きつけた奇跡纏う斬撃のエネルギーに魔種レオニスは抗うこともできず両断された。返す刀がルミーラの妖槍ごと身体を薙ぎ払う――!
 ビスマス結晶、そして禍々しい妖槍がエネルギーに飲み込まれ、消滅する。クロバは力尽きるように倒れた。
「クロバさん!!」
 駆け寄ったシフォリィにクロバが口の端を吊り上げてみせる。
「――おごり忘れんなよ」
「……本当に変な人ですね」
 クスリと笑ったシフォリィは空を仰ぐ。
 しばらくの後、意識を取り戻した仲間達。傷の手当てをした利香とウィリアム、そしてシュラが鉱山の奥で声をあげた、どうやら行方不明者の死体を見つけたようだった。
「レオニスさん、私は、明日を生きていきます」
 言葉と決意。それを確かめるように事の始まりである銀の髪を束ねて掴んで――シフォリィは一思いに髪を切った。肩のあたりまで短くなったシフォリィに仲間達が驚きの声をあげた。
「この髪はレオニスさんの愛した私の象徴だから。
 せめて、過去の私が天で共にあれるように――」
 伸ばした手の先から銀糸が風に吹かれて空へと昇る。
 過去の想いと共に願いを込めて――

成否

大成功

MVP

クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)
死神二振

状態異常

ベーク・シー・ドリーム(p3p000209) [重傷]
砂竜すら魅了するモノ
焔宮 鳴(p3p000246) [重傷]
救世の炎
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619) [重傷]
最強砲台
シュラ・シルバー(p3p007302) [重傷]
魔眼破り

あとがき

 依頼お疲れ様でした。

 MVPは奇跡を起こしたクロバさんへ送ります。

 みんなでお肉食べて下さいね。ありがとうございました。

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