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シナリオ詳細

二重救出作戦

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ジェシカ・ランバートのケース
「さあ、観念して皆を解放しなさい!」
 自慢の槍を振るいながら、ジェシカ・ランバートは声を張り上げた。
 深緑は、とある森林内にある洞窟内部。
 天然自然の産物であるその洞窟は、今は誘拐犯たちのアジトと化していた。
 傭兵として、ジェシカは奴隷として連れされられてしまった幻想種たちの救出を依頼されていた。
 正義感の強いジェシカにとって、人が不幸になることなどは見過ごせないものだ。勢いのままに、さっそく敵のアジトへと突入。こうして大立ち回りを演じているわけだ。
 勝算は充分にあった。ジェシカとて、多くの研鑽を積み、様々な修羅場をくぐってきた立派な傭兵だ。だが、少しばかりの見通しの甘さが、ジェシカにはあった。
「おっと、観念するのはお前の方だ」
 先ほどまでジェシカと剣戟の応酬を繰り広げていたリーダー格の男が、にい、と笑って見せた。そのまま、視線を己の背後へとやる。怪訝な表情をしたジェシカが視線を追ってみれば、そこには喉元に刃物を突き付けられた、幻想種の少女の姿があった。
「お前みたいな正義感バカには効くだろうよ。さぁ、このまま暴れるか、あいつが死ぬのがいいか、どっちかを選びな」
「卑怯な……!」
 悔しげにうめきながら、ジェシカは歯噛みした。抵抗すれば、少女は殺されるだろう。奴隷としてとらえられた幻想種たちは、まだ多く残っている。奴らにしてみれば、一人、使い物にならなくなろうが、大した痛手にはならない。
「……わかった、降参する。だから、その子は殺さないで」
 今はひとまず、奴らの言いなりになるしかあるまい……ジェシカは槍を足元に置くと、両手をあげて無抵抗の意を示した。
「賢明な判断だ。安心しな。お前さんもちゃんと高値で売り払ってやるよ」
 下卑た笑みを浮かべながら、男はジェシカの下へと近づく。
 男が奇妙な砂をジェシカへと振りかけると、ジェシカの意識はそこで途切れた。

●二重救出
「近頃、深緑国民の誘拐事件が多発しています。先日も、誘拐犯の一味と思わしき連中のアジト発見し、傭兵の方に調査と解決を依頼したのですが……」
 と、イレギュラーズ達へ、依頼主の男性は告げた。
 近頃、深緑の幻想種たちが誘拐され、他国に奴隷として売り払われているという事件が多発しているのだという。
 今回の依頼主も、そう言った状況から、一般の傭兵に事件の解決を依頼したようなのだが……。
「実は、件の傭兵さんからの連絡が途絶えてしまって……偵察に出た者からの話によれば、賊どもに捕縛されてしまったようなのです」
 このまま手をこまねいていれば、次なる襲撃を察して誘拐犯たちがアジトを変えてしまうかもしれないし、最悪国外脱出から、被害者たちが奴隷として売り払われかねない。
 となれば、もはや一刻の猶予もあるまい。
「お願いします、速やかに誘拐犯一味のアジトへと向かい、捕らわれた幻想種たち、そして傭兵さんを救出していただきたいのです」
 幻想種たちの事はもちろん、捕らえられたという傭兵たちの安否も心配だ。
 イレギュラーズ達は速やかに作戦を開始した。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 捕えられてしまった幻想種たち、そして傭兵、ジェシカ・ランバート。
 敵のアジトへと向かい、彼女たちを救出。そして脱出してください。

●成功条件
 捕えられた幻想種、およびジェシカ・ランバートの救出

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 深緑は森林地帯に存在する、天然洞窟が舞台になります。
 洞窟内は充分に広く、誘拐犯たちが明かりを設置しているため、活動するのに支障はないものとします。
 洞窟内の奥に、誘拐された幻想種、そしてジェシカが捕らえられています。
 彼女たちを見つけ出し、脱出することが成功条件です。
 洞窟内には、見張りの誘拐犯たちが、数名のグループを作って徘徊しています。
 彼らを撃退し、幻想種たちとジェシカを救出しましょう。
 また、脱出時には、誘拐犯のリーダーをはじめとする、やや強めの敵とエンカウントすることになります。

●エネミーデータ
 誘拐犯 ×15
  特徴
   イレギュラーズ達より弱い程度の戦闘能力を持つ、一般的な犯罪者です。
   個体により近距離~中距離物理攻撃スキル、中距離~遠距離物理攻撃スキルを持ちます。
   一斉に戦うわけではなく、数名のグループで、洞窟内を徘徊しています。

 精鋭誘拐犯 ×4
  特徴
   上記誘拐犯よりはやや強い、程度の戦闘能力を持つ、精鋭の犯罪者です。
   中距離~遠距離レンジの物理攻撃スキルを使用します。
   メタ的な情報になりますが、この敵とは、目標救出後、脱出中に、誘拐犯リーダーと共に遭遇することになります。

 誘拐犯リーダー ×1
  特徴
   精鋭誘拐犯よりは強い、程度の戦闘能力を持つ、誘拐犯たちのリーダーです。
   近距離レンジによる、出血を伴う物理攻撃スキルを使用してきます。
   メタ的な情報になりますが、この敵とは、目標救出後、脱出時に、精鋭誘拐犯と共に遭遇することになります。

●NPCデータ
 ジェシカ・ランバート
  特徴
   近接タイプの軽装ファイター。高めの回避力と命中が売り。
   幻想種たちと同じ檻の中に閉じ込められています。
   救出後、特に指示がなければ、幻想種たちを護るように行動します。
   なお、ジェシカの武器は、閉じ込められている檻の近くに、無造作に放置されています。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加お待ちしております。

  • 二重救出作戦完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年09月09日 20時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
銀城 黒羽(p3p000505)
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)
わるいおおかみさん
久住・舞花(p3p005056)
氷月玲瓏
フィール・ティル・レイストーム(p3p007311)
特異運命座標
加賀・栄龍(p3p007422)
鳳の英雄

リプレイ

●アジトへ
 深緑。とある階層にある、緑香る、過ごしやすくも穏やかな森林の中。
 長閑さを感じさせる気候ではあったが、その中に、人の悪意が潜んでいる。
 イレギュラーズ達が向かったのは、そんな森林地帯にある洞窟である。情報通りならば、そこには誘拐された幻想種たち、そしてジェシカ・ランバートが捕らわれた、誘拐犯たちのアジトたる洞窟が存在するはずである。
 木々をかき分け、イレギュラーズ達は一路、洞窟を目指す。
「もう……何で捕まってるかなぁ……!」
 そう呟くのは、『平原の穴掘り人』ニーニア・リーカー(p3p002058)だ。平静さを努めているものの、その内心には些かの焦りが見られていて、それは急ぐように交互する足の動きに現れている。足元に咲いた小さな花を知らず、蹴り付け、ニーニアは先を急いだ。ニーニアの言葉は、捕らわれのジェシカに向けられての事である。
「おっと、少し足元に気をつけると良い。はやる気持ちはわかるけれど、それでは大切なものを見落としかねないよ?」
 些か演技がかったように、『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)が告げる。ニーニアは一瞬、ハッとした様子を見せてから、眼鏡をあげて、眉間に手をやった。
「ごめん……ちょっと、焦ってたみたい」
「謝ることではないさ」
 ダカタールは肩をすくめて見せた。
「お友達……なんですよね? ジェシカさんとは」
 『なぜか自分の本が売られてました』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)が声をあげるのへ、ニーニアは頷く。
「うん、ジェスちゃん……あ、これは、僕がジェシカちゃんの事をそう呼んでるんだけど、ジェスちゃんとは、幼馴染でね。昔から一緒に遊んだり、無茶したり。……うん、無茶してたなぁ、昔から」
 懐かしさと共に気恥ずかしさから、苦笑するニーニア。
「どうやら、生来の無鉄砲、って奴だな」
 『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)は、にっ、と笑った。その笑みには、馬鹿にした様子は見受けられない。純粋に、気に入った、という事なのだろう。
「とはいえ……今回は少し、相談とかしてほしかったかもね。ああ、責めてるわけじゃないんだけど」
 『特異運命座標』フィール・ティル・レイストーム(p3p007311)が言う。フィールもまた、決してジェシカのような正義感を厭うているわけではない。むしろ好ましく思ってはいたものの、今回は状況が些かよろしくない。
「短期間に連続して起きた誘拐事件……裏に何者かの手があるのは間違いないものね」
 『月下美人』久住・舞花(p3p005056)が続けた。近頃多発する誘拐事件と、今回の件には共通点が多すぎる。となれば、一連の事件の一つとして数えるべきであり、おそらくは、個々の傭兵には些か身に余る事件であるのかもしれない。
「わかってる……けど、ジェスちゃんだからなぁ……」
 ニーニアはこめかみに手をやった。解っていても、ジェシカは突っ走っていたかもしれない、と少しだけ思っていた。
 ニーニアもまた、ジェシカのそう言った性質には好意を持っている。それは当たり前のことだ。昔から二人で活動してきた時から、ジェシカには助けられてきたし、助けもしてきた。
 だがそれはそうとして、一声かけてくれればなぁ、とは思わずにいられなかったりする。人の心は複雑である。
「まぁ、悪はぶっ倒す、って信条なんだろう。解りやすくていいじゃねぇか」
 『人生葉っぱ隊』加賀・栄龍(p3p007422)がケラケラと笑った。喧嘩っ早い所もある栄龍である。なにか通じるところがあるかもしれない。
「さて、その悪のアジトのお出まし、って所だな」
 『ド根性ヒューマン』銀城 黒羽(p3p000505)のいう通り、イレギュラーズ達の進む先に、天然自然のものであろう、大きな洞窟の姿が現れた。
 身を隠してよく見て見れば、如何にも胡散臭い風体の男たちが数名、洞窟の中へと消えていくのが見えた。
 入り口から見た限りであるが、内部は明るい。どうやら松明の類が設置されているようで、大元は自然のものであっても、些か人の手が入っているらしい。
「さて……いよいよだ。全員、準備は良いな?」
 黒羽の言葉に、イレギュラーズ達は頷いた。
「さぁ、いこう。お片付けの時間だ」
 ダカタールの言葉を合図に、一行は洞窟へと侵入した。

●洞窟内の攻防
 薄暗い洞窟を、一条の閃光が迸る。
 横走りの雷――フィールの放つライトニングが、内部にいた見張りの男を討ち貫いた。
「がっ……!?」
 悲鳴を上げて痙攣する男に、ジェイクの放つ光柱が突き刺さり、トドメとなった。
「侵入者か……!」
 うろたえるように刃を構える二人の賊。だが、その一方はすぐさま口を紡ぐことになる。その賊の瞳が移したものは、白銀色の刃が、花弁のように散る瞬間である。
「正解です……っ!」
 流麗なる剣技を披露するのは、シフォリィだ。意識を吹き飛ばされん勢いの斬撃を、どうにかギリギリで踏みとどまった賊が、反撃を繰り出そうとするが、
「そのまま寝ていなさい」
 舞花の『斬魔刀』、その鞘が力強く振るわれて、賊を昏倒させる。
「畜生!」
 狂乱状態に陥った最後の賊が、でたらめに刃を振るうのを、
「おっと、静かにしてもらおうかな」
 ダカタールが笑い、受け止めた。その隙をついた栄龍の斬撃が、
「応。どこを見てる? 畜生共。お前等の相手は俺だ」
 賊を切り裂く。
 その音を最期に、果たして洞窟には、元の静寂が戻った。
「これで、情報通りならほとんど倒したことになりますが……」
 シフォリィが言う。
 洞窟に潜入してから一行は数回にわたってエンカウントした敵を撃退しつつ、先に進んでいた。その総数は、15人。情報通りなら、敵の総数は20人であるので、その半数以上を撃退した形になる。
 道中は、黒羽のエコーロケーションや、ニーニアのファミリアーの手助けもあり、危なげなく進んで行った。
「この先、反射が早いな……行き止まり……小部屋かもしれねぇ、なにかありそうだ」
 黒羽の言葉に、ニーニアが頷く。先行するファミリアーは、鍵のかけられたと思わしき扉と、その傍らに無造作に放り捨てられていた、槍のようなものを発見した。
「ジェスちゃんの……!」
「という事は、当たりか?」
 ニーニアの言葉に、ジェイクが続いた。一行は慎重に歩を進める。果たしてその先には、ファミリアーが見た物と同様、行き止まりに小さな扉が見て取れる。
 扉の近くには槍が転がっていて、ニーニアが改めて確認すれば、それはジェシカのものであることに間違いはない様であった。
「あたりにカギはある?」
 舞花が尋ねるのへ、答えたのはダカタールである。
「おっと、道中の野良犬から聞いておけばよかったかな? だが、この程度なら御覧のとおり、さ」
 ダカタールはあっさりと、そのカギを開錠してみせた。どうやら、さほど強固なものではなかったらしい。
「罠、という事もある。開けるなら注意しないとね」
 念のため、と言った様子で、フィールが告げた。
「俺が開けよう」
 何かあった場合でも、黒羽なら安心だろう。仲間達は頷き、黒羽がゆっくりと扉を開く――。
「今だッ! このおぉっ!」
 途端! 扉より小柄な影が飛び出してきた! 黒羽はとっさに身を引いて、人影へ対して、思わず脚をかける形をとってしまう。
「えっ! ちょ、とおぉっ!?」
 素っ頓狂な声をあげて、人影はバランスを崩した。そのまま前方につんのめり、正面にいたニーニアに、抱き着く格好になってしまう。
「わ、わ、何!? 何!?」
「何、じゃないよ! ――ジェスちゃん!」
 慌てふためく人影へと、声をかけるニーニア。人影がその声に、大慌てで顔をあげる。松明の明かりに照らされたその顔は、まさに探し人であるジェシカ・ランバートであった。
「ニア!? ニアだ! やったーっ!」
 そのままぎゅう、と勢いよくニーニアを抱きしめるジェシカ。
「うえええっ、ちょ、強い! 強いから!」
 パシパシとジェシカの背中を叩くニーニア。それを意に介さず、ジェシカはニーニアを抱きしめ続ける。
「えーと、ジェシカさん……で、間違いない?」
 舞花が尋ねるのへ、ジェシカが頷く。
「ええ。……って、アレ? もしかして、ニアの保護者さん?」
「保護者が必要なのはジェスちゃんの方でしょ?」
 たまらずニーニアが、ジェシカを引きはがす。ニーニアはた深くため息をついてみせた。
「というか、なんで捕まってるの……? どうせ何も考えないで突っ込んできたんでしょ?」
 あはは、とそっぽを向いてみるジェシカ。
「で、でも! きっとニアなら何とかしてくれる、って信じてたから!」
「それ、ごまかす時にいつも言うよね!」
 二人の喧々諤々とした言い合いが続く中、栄龍は小部屋の中をあらためてみた。恐らく七畳程度の部屋の中には、6人の幻想種たちが、不安げな表情を見せて此方を警戒している。
「あんまり怯えないでくれ。救助に来たんだ、俺たちは……捕まったのはお前等だけか?」
 その問いに、幻想種たちはこくこくと頷く。
「生きている様で何よりだよ、馨しきレディ達。パンとワインを添えたくなったが、帰って焼肉でも食べるとするよ」
 ダカタールは芝居がかった調子で笑ってみせる。
「どうやら、手錠の類もつけられてはいないようです……長居は無用ですね」
 シフォリィの言葉に、仲間達は頷いた。拘束具などは見受けられなかったが、これは件の『砂』の力を過信しての事だろうか。
 さて、言い合いを続けていた二人を見てみれば、此方へと頷いてみせる。おそらくニーニアが折れたのだろう。些かの疲れが、ニーニアから見て取れた。
「ジェスちゃん、これ」
 ニーニアが、槍をジェシカへと手渡す。
「あ、私の!」
 受け取って、ジェシカは槍を軽く振り回して見せた。その様からは、体力の低下などは見受けられない。気合も充分、と言った様子だ。
「……っとと、一応、私は下がっておくね。そのかわり、あの子たちの事は任せて」
 幻想種たちの下へと向かうジェシカであったが、しかしニーニアはそれを引き留めた。
「大丈夫だよ。後ろは僕が支えるから、ジェスちゃんは前に出て。……いつも通りに、ね?」
 その言葉に、ジェシカは嬉しそうに、笑顔を見せた。

●脱出、決戦
「ところで、例の青い粉なんだが、何か心当たりはねぇか?」
 洞窟からの脱出の道中で、黒羽がジェシカへと尋ねる。しかしジェシカは頭を振って見せた。
「あの、いきなり意識を失っちゃう奴だよね? ううん……あ、たしか、ザントマンからもらった、みたいなことを、見張りが言っていた気がするよ」
「やっぱり、ザントマン関連か」
 ジェイクが唸るのへ、ジェシカは呻いた。
「もしかして、結構大事になってる感じなのかな」
「少なくとも、この手の誘拐事件が多発しているのは確かだよ」
 フィールの言葉に、ジェシカは頭を抱えて見せた。
「うあー、それじゃあ、ちゃんと解決できてたら、結構賞金とか出たかもしれないのね……」
 悔しげにうめくジェシカ。
「たくましいお嬢さんだ」
 ダカタールが肩をすくめてみせる。
「――ストップ。反射が……正面、誰かいるな?」
 黒羽が仲間を制する。果たして、それは正解であった。正面より現れたのは、五人の男たち……誘拐犯の中でも、リーダー格の集団だろう。
「チッ、少し留守にしてみたら、まさか空き巣に狙われるたぁな」
 リーダーであろう、男が忌々しそうに声をあげる。
「空き巣、とは不本意な言い方ですね」
 シフォリィがゆっくりと、その手を剣へと伸ばした。仲間達もまた、合わせるように各々の獲物へと手を伸ばす。戦いは、避けられまい。
「結構な美人に……なんだ、幻想種もいるじゃねぇか。お前らも、いい金になるだろうな」
 ぶしつけに叩きつけられる、商品として品定めされる視線……フィールは嫌悪を抱きつつ、背後に控える幻想種たちを庇って見せた。
「下衆とはこのことだね……!」
「品性で飯が食える身分じゃぁなくてな。おい、やるぞ!」
 男の号令に従い、四人の配下が一斉に刃を手にした。
「この間のお礼、覚悟しなさいよ!」
 ジェシカが槍を構え、啖呵を切るのへ、男は笑った。
「お前さんも出てきてたのか。ま、二度手間になるが、もう一度牢にぶち込んで、ちゃんと売り払ってやるさ!」
 その言葉を合図に、両者は一斉に動き出した。
「ボクたちを商品などと言わせない!」
 フィールの手に輝くのは、翠緑色の光の刀だ。それを振るえば、風の刃が形成され、悪しきを切り裂くべく放たれる。
「くそ、なんだこれは!?」
 護衛の男の一人に、風の刃が放たれ、その身を深く斬りつける。
「俺もお前達と同じ穴の狢さ……お前たちのやることを咎めることは出来ねえし、卑怯とも思わねぇ。だが、これが今の俺の仕事だ!」
 ジェイクは戦場を駆けながら、手にした銃を打ち鳴らす。弾丸の雨が激しく降り注ぎ、賊たちの足を止めた。
「人を攫い私腹を肥やそうとする卑怯者達よ! この私シフォリィ・シリア・アルテロンドが相手します!」
 刃を掲げ、突進するシフォリィ。リーダー格の男が、嘲笑の笑みを浮かべた。
「お前も正義バカかい!」
 振るわれる刃を、男は体をひねって回避。手にした鋭い長剣で、逆にシフォリィへと切りかかる。シフォリィはそれを、獲物ではじき返した。
「貴方達に、誰かを守ろうとしたジェシカさんを、そのように笑う資格はありません!」
「ははッ! そうかいっ!」
 斬撃の応酬は続く。一方、舞花の斬魔刀の刃が、蒼き彗星のごとく煌いた。その神速の貫きが護衛の一人を貫き、意識を失わせる。
「ジェスちゃん、右手の方向! 手薄だよ!」
 ニーニアの言葉に応じ、その方に潜む護衛へと飛び込んだのは、ジェシカである。
「もう、遠慮も手加減もしてあげないからねっ!」
 振るわれる旋風の如き槍の一撃が、護衛の足元を強かに打ち付けた。ぐぇ、と悲鳴を上げて護衛が倒れ伏すところへ、追い打ちをかけるようにげこり、とカエルの鳴き声が響いた。護衛の男は奇声を上げながら立ち上がると、その衝動のままに、ダカタールへと襲い掛かる。
「かくして獲物は罠の中に、か」
 小ばかにしたような笑みを浮かべるダカタール。その言葉を裏付けるように、護衛の前方へと立ちはだかる、一人の男の影があった。
「応、畜生共の掃除は任せな」
 力強く、護衛の顔面を殴りつける、栄龍。護衛の男はそれで、意識を手放した。
「誘拐犯のリーダーともあろう御方が随分と軟弱な攻撃ばっかしてくれるじゃねぇの」
 リーダーの男の行動を遮りつつ、黒羽が言った。
「挑発か! わかっちゃいるが、頭にくるのはどうしようもねぇな!」
 笑いながらも、リーダーの男が刃を振るう。黒羽は『不倒の闘気』でそれを受け止めながら、にいっ、と笑って見せる。
「だから温いんだよ。所詮は畜生以下の外道ってところかぁ!?」
「ほざけよ!」
 一方、護衛の数は半数に減じている。
「貫け、雷よ!」
 フィールの放つ雷が、護衛の男の身体を貫き、動きを止めた。
「こいつで、お前は終わりだ」
 そこへジェイクの銃弾が突き刺さり、男の意識を刈り取る。
「ならば、これで残る一人、ね」
 呟きながら、舞花の斬撃が残る護衛を切り裂く。ぎゃ、と悲鳴を上げて、護衛の足がとまり、
「ジェスちゃん!」
「おっけー、これで、最後っ!」
 ニーニアの指示を受けたジェシカの槍が護衛を貫き、トドメとなった。
「残るは、あなただけです!」
 シフォリィがその刃を煌かせる。
「ちぃ……役に立たねぇ連中が……!」
 リーダーの男は悔しげにうめいた。戦局は、完全にイレギュラーズの方へと傾いていた。もはや防戦一方、どうにか倒れぬように必死に動くリーダーの男の刃を、シフォリィは強く弾き飛ばした。ハッとする男の喉元へ、シフォリィが刃を突きつける。
「ここまでです。投降するのならば、命までは奪いません」
「クソが……!」
 悔しげにうめきつつも、もはや男に抵抗する力は残されていない。男は両手をあげ、投降の意を示したのであった。

 ――戦闘完了後。命のある賊たちをまとめて縛り上げ、一行は洞窟の出口を目指す。
「うーん、やっぱり皆、強いのね。私もまだまだかぁ」
 ジェシカがそう言うのへ、ニーニアは肩をすくめた。
「ジェスちゃんはそれ以前に、もうちょっと考えて行動してよ」
 ジェシカが明後日の方向を向くのへ、ニーニアがため息をつく。
「ま、さっきも言ったが、そう言う思い切りのいいやつも嫌いじゃないぜ」
 ジェイクがそう言うのへ、シフォリィは笑った。
「ふふ、そうですね」
「ボクも、まぁ、嫌いじゃないよ」
 フィールもそう告げる。
「しかし……やはりザントマン、か。一体何をたくらんでいるかしらね」
 舞花の言葉に、イレギュラーズ達は黙考する。未だ敵の狙いは、完全には見えない。
「笛吹ではなく眠り男か、はてさて、どのような相手なのやら」
 ダカタールが肩をすくめ、
「まだわからねぇ……が、いずれ会う時があるだろう」
 黒羽の言葉に、栄龍は頷いた。
 やがて一行を、明るく穏やかな深緑の森林が出迎えてくれた。
 この地にはびこる悪意の根は、まだ根深い。
 しかし、その根を根絶することは、きっとできるのだと。
 そんな風に思わせる景色だった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 捕らわれの幻想種たちは、皆様の活躍により無事に解放されました。
 ジェシカさんですが、皆さんと共に戦ったことでその強さを目の当たりにし、感化されたらしく、さらに強くなるべく修行を続けるそうですよ。

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